説明

農薬製剤およびその製造法

【課題】製造加工着色時にネライストキシン系農薬殺虫性成分を分解することがなく、十分な農薬効力が担保された農薬製剤の提供。
【解決手段】加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に、ネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融することにより、ネライストキシン系農薬殺虫成分が分解することなく十分な農薬効力が担保された、黒色炭素質粉末で着色された農薬製剤を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ネライストキシン系農薬殺虫成分、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂および黒色炭素質粉末を含有する農薬製剤、およびその製造法に関する。更に詳細には、ネライストキシン系農薬殺虫成分、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂および黒色炭素質粉末からなる農薬製剤であって黒色炭素質粉末で色付けされた農薬製剤、およびネライストキシン系農薬殺虫成分が分解することなく、十分な農薬効力を担保された黒色炭素質粉末で色付けされた農薬製剤を製造する製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
農薬製剤は、環境中、特に暗色の土壌に処理することが多く、着色され、処理した際目立たない暗い色の製剤が現場の農家の人々に好まれる。また、カルタップ塩酸塩、チオシクラムシュウ酸塩等のネライストキシン系農薬殺虫成分は、pHの変動や、熱、光等に対して不安定であり、製剤の製造工程で着色する際、着色剤の種類によっては分解してしまうことがある。
【0003】
特許文献1に記載されているように、カルタップ塩酸塩を用いた製剤では着色剤として、例えば、シアニングリーンG(商品名、住友化学工業社製)が使用されている。しかしながら、農薬活性成分を高温で加工して農薬製剤を調製するには、この着色剤は適切ではない。また、特許文献1では、活性炭が担体として使用されているが、これは、農薬活性成分を担持するためのものであり、農薬製剤の着色を目的としたものではない。
【0004】
特許文献2には、害虫忌避剤を配合することも出来る、黒色炭素粉末を含有する雑草発生抑制剤が示されている。しかしながら、黒色炭素粉末による黒色化は太陽光の遮断と太陽熱の吸収を目的としており、農薬活性成分との相性に関しては言及されていない。同様に、特許文献3には、害虫忌避剤を配合することも出来る、カーボンブラックを含有する多機能性マルチングフィルムが示されているが、ここでも農薬活性成分との相性に関しては言及されていない。
【0005】
【特許文献1】特開平8−175903号公報
【特許文献2】特開2000−327501号公報
【特許文献3】特開平8−214714号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するもので、製造加工時のネライストキシン系農薬殺虫性成分の分解がほとんど起こらず、十分な農薬効力が担保された色付きの農薬製剤およびその製造法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、これらの課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に至ったものである。
即ち、本発明は、ネライストキシン系農薬殺虫成分、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂および黒色炭素質粉末を含有する農薬製剤に関する。具体的には、この農薬製剤は、加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に、ネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融して得られるものである。
更に本発明は、加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に、ネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融して、黒色炭素質粉末により色付けされた農薬製剤を製造することを特徴とする農薬製剤の製造法に関する。この製造法は、ネライストキシン系農薬殺虫成分が分解することなく、十分な農薬効力が担保された農薬製剤の製造法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の農薬製剤は、ネライストキシン系農薬殺虫成分、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂および黒色炭素質粉末を含有する農薬製剤であり、より具体的には、加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂にネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融して得られるものである。着色剤に黒色炭素質粉末を用いることで、製造加工時のネライストキシン系農薬殺虫成分が分解することがないために、十分な農薬効力が担保され、色付けされた農薬製剤を有利にかつ効果的に得る事が出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下に、本発明の農薬製剤についてより詳しく説明する。
本発明の農薬製剤は、ネライストキシン系農薬殺虫成分、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂および黒色炭素粉末を含有する色付けされた農薬製剤である。
本発明で使用するネライストキシン系農薬殺虫活性成分としては、カルタップ塩酸塩(1,3−ジカルバモイルチオ−2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパン塩酸塩)(融点:179〜180℃)、チオシクラムシュウ酸塩(5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩)(融点:125〜128℃)、ベスルタップ等が挙げられる。好ましくは、カルタップ塩酸塩、チオシクラムシュウ酸塩が挙げられる。含有量としては農薬製剤中に3〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜25重量%である。
【0010】
ネライストキシン系農薬殺虫成分以外にも、本発明の製剤においては、以下の農薬殺虫殺菌活性成分も、ネライストキシン系農薬殺虫成分に対して分解面での影響を与えない範囲であれば併用することが出来る。具体的には例えば次のようなものが挙げられるがこれに限定されるものではない。例えば農薬殺虫成分では、N−[(6−クロロ−3−ピリジニル)メチル]−N−エチル−N’−メチル−2−ニトロ−1,1−エテンジアミン(一般名:ニテンピラム)、(RS)−1−メチル−2−ニトロ−3−(テトラヒドロ−3−フリルメチル)グアニジン(一般名:ジノテフラン)、(E)−N−[(6−クロロ−3−ピリジル)メチル]−N’−シアノ−N−メチルアセトアミジン(一般名:アセタミプリド)、3−(2−クロロ−1,3−チアゾール−5−イルメチル)−5−メチル−1,3,5−オキサジアジナン−4−イリデン(ニトロ)アミン(一般名:チアメトキサム)等のネオニコチノイド系農薬殺虫成分;2−(1−メチルプロピル)−フェニル−N−メチルカーバメート(一般名:フェノブカルブ)、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニル=N−[N−[2−(エトキシカルボニル)エチル]−N−イソプロピルフェナモイル]−N−メチルカーバメート (一般名:ベンフラカルブ)、「2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル=N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカーバメート(一般名:カルボスルファン)等のカーバメート系農薬殺虫成分;5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−α,α,α−トリフルオロ−p−トリル)−4−エチルスルフィニルピラゾール−3−カルボニトリル(一般名:エチプロール)、5−アミノ−1−(2,6−ジクロロ−4−トリフルオロメチルフェニル)−3−シアノ−4−トリフルオロメチルスルフィニルピラゾール(一般名:フィプロニル)等のフェニルピラゾール系農薬殺虫成分;(E)−4,5−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ピリジルメチレンアミノ)−1,2,4−トリアジン−3(2H)−オン(一般名:ピメトロジン)ピリジンアゾメチン系等が挙げられる。また、農薬殺菌成分では、[5−アミノ−2−メチル−6−(2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシシクロヘキシロキシ)テトラヒドロピラン−3−イル]アミノ−α−イミノ酢酸(一般名:カスガマイシン)、5−メチル−1,2,4−トリアゾロ[3,4−b]ベンゾチアゾール(一般名:トリシクラゾール)、あるいは3’−クロロ−4,4’−ジメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキサニリド(チアジニル)等のチアジアゾール系農薬殺菌成分が挙げられる。これらのなかでも、2−(1−メチルプロピル)−フェニル−N−メチルカーバメート(一般名:フェノブカルブ)、2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニル=N−[N−[2−(エトキシカルボニル)エチル]−N−イソプロピルフェナモイル]−N−メチルカーバメート(一般名:ベンフラカルブ)、「2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾ[b]フラニル=N−ジブチルアミノチオ−N−メチルカーバメート(一般名:カルボスルファン)等のカーバメート系農薬殺虫成分や3’−クロロ−4,4’−ジメチル−1,2,3−チアジアゾール−5−カルボキサニリド(チアジニル)等のチアジアゾール系農薬殺虫成分が好ましい。これらの農薬殺虫成分や農薬殺菌成分の含有量としては農薬製剤中に3〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは5〜20重量%である。これらの農薬殺虫成分や農薬殺菌成分は市場から容易に入手することが出来、また特許文献等に記載の方法で容易に合成することも出来る(例えば、チオシクラムシュウ酸塩:CN 1706822A、DD 296685A、フェノブカルブ:CN 1234395A、トリシクラゾール:特開昭62−96493号公報)。
【0011】
本発明で使用する熱可塑性生分解性プラスチック樹脂は、好ましくは、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン/ブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネート/アジペートからなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性生分解性プラスチック樹脂である。具体的には例えばポリエチレンサクシネート(代表的なものとしては、商品名ルナーレSE−P、日本触媒社製)、ポリカプロラクトン(代表的なものとしては、商品名CELGREEN PH7、ダイセル化学工業社製)、ポリブチレンサクシネート(代表的なものとしては、商品名ビオノーレ1000、(昭和高分子社製))、ポリブチレンサクシネート/アジペート(代表的なものとしては商品名ビオノーレ3000、昭和高分子社製)等があり、任意に組み合わせて使用することもできる。これら熱可塑性生分解性プラスチック樹脂の中でも、ポリカプロラクトンが好ましい。
これらの熱可塑性生分解性プラスチック樹脂は、包有する農薬活性成分の環境中への溶出を抑えることが出来る。製剤中の含有量は50〜93重量%が好ましく、特に65〜87重量%が好ましい。
【0012】
本発明に使用する黒色炭素質粉末は、例えば粉末状活性炭やカーボンブラックがある。上記粉末状活性炭は、原料によりヤシ殻系、木質系、石炭系に分類できるが、本発明では、いずれも使用することが出来る。一方、カーボンブラックはその原料や製法によりガスブラック、アセチレンブラック等に分類されるが、本発明では、いずれも使用することが出来る。これら黒色炭素質粉末の中でも、カーボンブラックが好ましく、特に三菱カーボンブラック(三菱化学社製)が好ましい。
これらの黒色炭素質粉末は、製造加工時のネライストキシン系農薬殺虫性成分をほとんど分解せずに、農薬製剤を色付けすることができる。製剤中の含有量は0.05〜5.0重量%が好ましい。
【0013】
本発明の農薬製剤には、フィラーとして以下のものを、安定性を崩さない範囲であれば使用できる。これらは、農薬製剤を物理的に、または、化学的に最適化し、実際の使用場面での使い勝手を良くすることが出来る。フィラーとしては、例えば下記のものが挙げられるがこれに限定されるものではない。鉱物質である、クレー、珪石、タルク、炭酸カルシウム、軽石、珪藻土、バーミキュライト、アタパルジャイト、アッシュメントおよびホワイトカーボンなどが挙げられ、一般的に農薬水和剤、粒剤に利用される、いわゆる増量剤や担体の一種またはそれ以上を使用できる。また有機物質としてはショ糖、コーンコブ等や農薬活性成分の安定性等を考慮して、酸化防止剤であるフェノール系酸化防止剤や、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ビタミンE系酸化防止剤等や紫外線吸収剤である二酸化チタンなどの無機化合物系紫外線吸収剤、べンゾトリアゾールやベンゾフェノン系の有機化合物系紫外線吸収剤等やホワイトカーボンに吸着させた界面活性剤等も内部構造を粗くする効果が同様にあり、これらも使用できる。界面活性剤の例としては農薬製剤に通常使用されるノニオン系イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が一般的に挙げられる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンフェニルエーテルポリマー、ポリオキシエチレンアルキレンアリールフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー等のノニオン系イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテルサルフエート、リグニンスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩等の陰イオン性界面活性剤、アルキルベタイン、第四級アンモニウム塩等の陽イオン性界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられる。
【0014】
本発明の色付き農薬製剤の形体は、例えば水和剤、顆粒水和剤、粒剤、粉剤等が挙げられる。
本発明の色付けされた農薬製剤は、加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に、ネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融し、次いで必要に応じて、適当に成形、冷却・破砕・篩別等を行うことにより製造することができる。具体的には例えば以下の工程により製造することができるが、類似の機械や工程を適応することができ、これに限定されるものではない。
【0015】
工程1:溶融混合
熱可塑性生分解性プラスチック樹脂を、溶融温度より少し高めに設定した例えば6インチテストロール機(機械名、西村工機社製、溶融機)にてロール状に溶融させ、ネライストキシン系農薬殺虫性成分の少なくとも1種類の農薬活性成分、フィラー、黒色炭素粉末を、融点以上になった溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に添加し、十分に均一混練した後、プレス機にてシート化する。なお、溶融加温温度は農薬活性成分の分解温度を考慮し、分解温度以下で溶融する。通常、90℃〜150℃の範囲で溶融加温する。
【0016】
工程2:成形
溶融混合の後、得られた均一な混合物を、例えばラボプラストミル(機械名、東洋精機製作所社製、成型機)にて加熱造粒する。造粒機の種類は、目的とする造粒物の形状、粒子径等を考慮して、適宜選択する。具体的には、粒状成型物を得るためには、所望する粒径に相応したスクリーンを備えた押し出し成型部品等が例示される。造粒する温度は、用いる熱可塑性生分解性プラスチック樹脂が溶融する温度以上で且つ含有するネライストキシン系農薬殺虫性成分が分解しない温度で対応する。通常90℃〜150℃の範囲の温度が好ましい。
【0017】
工程3:冷却・破砕・篩別等
得られた成型物を放冷し、破砕が必要で有れば所望する粒径に相応したスクリーンを備えた破砕機等にて破砕し、必要により篩別して、目的とする形状、粒径の製剤とする。得られた製剤の粒径は、例えば育苗箱水稲用粒剤で100〜1000μm、一般粒剤で300〜1700μm、粉剤で15μm前後、フロアブルで1〜15μmが好ましい。
【0018】
次に実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。また実施例においてネライストキシン系農薬殺虫成分として供試したチオシクラムシュウ酸塩の純度は約87.8重量%、フェノブカルブの濃度は50.9重量%、トリシクラゾールの濃度は95.0重量%、チアジニルの濃度は97.7重量%であった。製造に関しては、上記した製造機器を利用した。
【0019】
実施例1
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DLクレー10重量部(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径 約25μm)およびカーボンブラック(商品名、三菱化学社製、カーボン)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)77.8重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩の粒剤を得た。チオシクラムシュウ酸塩の粒剤中の理論上の含有量は10.3重量%である。
【0020】
実施例2
チオシクラムシュウ酸塩11.4重量部、フェノブカルブ8.4重量部、およびカーボンブラック(商品名、三菱化学社製、カーボン)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)79.5重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩およびフェノブカルブの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、フェノブカルブ5.4重量%である。
【0021】
実施例3
チオシクラムシュウ酸塩11.4重量部、トリシクラゾール8.4重量部、およびカーボンブラック(商品名、三菱化学社製、カーボン)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)79.5重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩およびトリシクラゾールの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、トリシクラゾール8.0重量%である。
【0022】
実施例4
チオシクラムシュウ酸塩11.4重量部、チアジニル12.3重量部、およびカーボンブラック(商品名、三菱化学社製、カーボン)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)79.5重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩およびチアジニルの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、チアジニル11.7重量%である。
【0023】
実施例5
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、トリシクラゾール6.3重量部、フェノブカルブ19.7重両部、およびカーボンブラック(商品名、三菱化学社製、カーボン)0.2重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)62.1重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩トリシクラゾールおよびフェノブカルブの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、トリシクラゾール6.0重量%、フェノブカルブ10.0重量%である。
【0024】
比較例1
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DLクレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径 約25μm)10重量部および食用赤色三号アルミニウムレーキ(商品名、ダイワ化成製、水酸化アルミニウム)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)77.8重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩の粒剤を得た。チオシクラムシュウ酸塩の粒剤中の理論上の含有量は10.3重量%である。
【0025】
比較例2
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DLクレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径 約25μm)10重量部およびバイフェロックス130M(商品名、バイエル社製、酸化鉄)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)77.8重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩の粒剤を得た。チオシクラムシュウ酸塩の粒剤中の理論上の含有量は10.3重量%である。
【0026】
比較例3
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DLクレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径 約25μm)10重量部およびバイフェロックス318(商品名、バイエル社製、酸化鉄)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)77.8重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩の粒剤を得た。チオシクラムシュウ酸塩の粒剤中の理論上の含有量は10.3重量%である。
【0027】
比較例4
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、DLクレー(商品名、日東製粉社製、クレー、平均粒子径 約25μm)10重量部およびバイフェロックス686(商品名、バイエル社製、酸化鉄)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)77.8重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩の粒剤を得た。チオシクラムシュウ酸塩の粒剤中の理論上の含有量は10.3重量%である。
【0028】
比較例5
チオシクラムシュウ酸塩11.4重量部、フェノブカルブ8.4重量部、フェノブカルブおよび食用赤色三号アルミニウムレーキ(商品名、ダイワ化成製、水酸化アルミニウム)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)79.5重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩およびフェノブカルブの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、フェノブカルブ5.4重量%である。
【0029】
比較例6
チオシクラムシュウ酸塩11.4重量部、トリシクラゾール8.4重量部、および食用赤色三号アルミニウムレーキ(商品名、ダイワ化成製、水酸化アルミニウム)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)79.5重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩およびトリシクラゾールの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、トリシクラゾール8.0重量%である。
【0030】
比較例7
チオシクラムシュウ酸塩11.4重量部、チアジニル12.3重量部、および食用赤色三号アルミニウムレーキ(商品名、ダイワ化成製、水酸化アルミニウム)0.5重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)79.5重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩の粒剤を得た。チオシクラムシュウ酸塩およびチアジニルの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、チアジニル11.7重量%である。
【0031】
比較例8
チオシクラムシュウ酸塩11.7重量部、トリシクラゾール6.3重量部、フェノブカルブ19.7重両部、および食用赤色三号アルミニウムレーキ(商品名、ダイワ化成製、水酸化アルミニウム)0.2重量部を、約130℃に熱して溶融させたCELGREEN PH7(商品名、ダイセル化学社製、ポリカプロラクトン樹脂)53.0重量部に溶融機にて混合溶融し、スクリーン径0.8mmの加温押出造粒機にて押出し、篩別し、粒径約1.0mmのチオシクラムシュウ酸塩、トリシクラゾールおよびフェノブカルブの混合粒剤を得た。粒剤中の理論上の含有量は、チオシクラムシュウ酸塩10.0重量%、トリシクラゾール6.0重量%、フェノブカルブ10.0重量%である。
【0032】
試験例1:チオシクラムシュウ酸塩等の分解
上記の実施例1から5ならびに比較例1から8で得られた粒剤について、粒剤中のチオシクラムシュウ酸塩、フェノブカルブ、トリシクラゾールおよびチアジニルの含有量をHPLCにて測定し、加熱加工されたことによるチオシクラムシュウ酸塩、フェノブカルブ、トリシクラゾールおよびチアジニル分解率を求めた。試験結果は表1に記載した。
【表1】

【0033】
表1より、実施例1から5は、比較例1から8に比べ、チオシクラムシュウ酸塩の安定性を崩さずに着色された農薬製剤が得られたことを示している。また特にフェノブカルブに関しても実施例1から5は良好な安定性を示している。
【0034】
試験例2:水稲苗箱処理の効力評価
実施例1から5ならびに比較例1から8で得られた粒剤のうち、チオシクラムシュウ酸塩の分解が無かったものについて、水稲を利用した効力試験を実施した。
すなわち、水田土壌70mlを入れた一万分の一アールワグネルポットの中央部分に粒剤17mgを処理し、2葉期の稲苗5本を植えた後温室内に置いた。処理42日後に、コブノメイガ3齢幼虫を5頭放虫し、3日後に生死を調査した。4連制で実施。試験結果は表2に示した。
【表2】

【0035】
表2より、本発明の粒剤は、農薬殺虫成分の効力が十分に発揮されることが分かる。
【0036】
以上の試験例1および2の結果から明らかなように、着色剤に黒色炭素質粉末を用いることで、製造加工時のネラシストキシン系農薬殺虫成分等が分解することがないために、十分な農薬効力が担保され、色付けされた農薬製剤を有利にかつ効果的に得る事が出来る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ネライストキシン系農薬殺虫成分、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂および黒色炭素質粉末を含有する農薬製剤。
【請求項2】
加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に、ネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融して得られる請求項1の農薬製剤。
【請求項3】
黒色炭素質粉末により色付けされた請求項1または2の農薬製剤。
【請求項4】
黒色炭素質粉末がカーボンブラックである請求項1から3のいずれかの農薬製剤。
【請求項5】
熱可塑性生分解性プラスチック樹脂が、ポリエチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン/ブチレンサクシネートおよびポリブチレンサクシネート/アジペートからなる群から選ばれる1種以上の熱可塑性生分解性プラスチック樹脂である請求項1から4のいずれかの農薬製剤。
【請求項6】
ネライストキシン系農薬殺虫成分が、1,3−ジカルバモイルチオ−2−(N,N−ジメチルアミノ)−プロパン塩酸塩(カルタップ塩酸塩)および5−ジメチルアミノ−1,2,3−トリチアンシュウ酸塩(チオシクラムシュウ酸塩)から選ばれる1種以上である請求項1から5のいずれかの農薬製剤。
【請求項7】
製剤中に、ネライストキシン系農薬殺虫成分3〜30重量%、熱可塑性生分解性プラスチック樹脂50〜93重量%、カーボンブラック0.05〜5.0重量%を含有する請求項1から6のいずれかの農薬製剤。
【請求項8】
熱可塑性生分解性プラスチック樹脂がポリカプロラクトンである請求項1から7のいずれかの農薬製剤。
【請求項9】
さらにフィラーを含有する請求項1から8のいずれかの農薬製剤。
【請求項10】
さらにカーバメート系農薬殺虫成分および/またはチアジアゾール系農薬殺菌成分を含有する請求項1から9のいずれかの農薬製剤。
【請求項11】
加熱溶融した熱可塑性生分解性プラスチック樹脂に、ネライストキシン系農薬殺虫成分および黒色炭素質粉末を混合溶融して、黒色炭素質粉末により色付けされた農薬製剤を製造することを特徴とする農薬製剤の製造法。
【請求項12】
ネライストキシン系農薬殺虫成分が分解することのない請求項11の農薬製剤の製造法。

【公開番号】特開2007−254462(P2007−254462A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−40154(P2007−40154)
【出願日】平成19年2月21日(2007.2.21)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【出願人】(392029074)日東化成工業株式会社 (8)
【Fターム(参考)】