説明

近接センサ

【課題】 異なる材質の外殻ケースと組合わせても幾度の特性調整が不要であり、多様な商品仕様に対して容易な商品の設計・生産を実現可能とすること。
【解決手段】 それぞれ複数種類用意された検出端モジュール707、出力回路モジュール709および外殻ケース711の中からそれぞれ任意に選択された1種類ずつを組み合わせてなる近接センサ717である。検出端モジュール707は、外殻ケースの存在が想定される特定周辺領域における導体検知感度を低下させるためのマスク導体700により検知特性が自己完結化された検知コイル組立体(705,701,702)と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする検知回路組立体(703)とを一体化してなり、出荷に先立って特性調整が完結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、金属体等の接近を磁界を介して非接触で検知する誘導型の近接センサに係り、特に、製造コストを抑制しつつ豊富な品揃えを実現できるようにした近接センサおよび近接センサに使用されるモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近接センサの基本構成要素としては、コイルやコアを含む検知コイル組立体、発振回路部、出力回路部、並びに、それらを収める外殻ケース等が挙げられる。ユーザの求める広範な製品仕様に柔軟に対応するためには、メーカー側としては、それらの基本構成要素に関して、できる限り構成部品を集約化して、コストダウンに努めなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
近接センサに関して、構成部品の集約化によるコストダウンを推進する上においては、磁気回路的観点並びに電気回路的観点のいずれにおいても、近接センサ特有の様々な問題点が存在する。
【0004】
磁気回路的観点から見た場合、構成部品の集約化によるコストダウンに関しては、検知コイル組立体の特性や構造等に起因して、次のような問題点が指摘されている。
【0005】
誘導型の近接センサは、金属の接近に感応するための検知コイル組立体を有する。この検知コイル組立体はコイルとフェライトコアとを含んでいる。金属の接近検知は、この検知コイル組立体の特性変化を利用して行われる。近接センサの本体ケース(外殻ケース)には、使用環境の多様性から、真鍮、ステンレス、樹脂等の材質バリエーションが用意されている。近接センサの検知性能は検知コイル組立体の外径によっても変わる。そのため、検知コイル組立体には、円柱タイプのM8(外径約8mm),M12(外径約12mm),M30(外径約30mm)に代表されるように、外径違いの様々なバリエーションが用意されている。
【0006】
誘導型の近接センサにおける検知コイル組立体の検知特性は、本体ケース(外殻ケース)の材質や形状寸法、本体ケースのメッキ厚バラツキ、検知コイル組立体と本体ケースとの組立位置バラツキ等の影響を大きく受ける。その結果、次のような、様々な問題点が発生する。
(1)本体ケース材質や形状、寸法の異なる製品を提供するには、検知コイル組立体および発振回路の個別設計、都度設計を行うことが必要とされ、設計工数やコストの増大、部品集約が困難なことを原因とする部品コストの増大等に繋がる。生産ラインも個別設計になり、複数のラインや工程が必要とされる。
(2)検知距離のバラツキを安定化させるには、検知コイル組立体と本体ケースとの組立位置の高精度化、本体ケースの寸法精度等の高品質化、検知距離の調整方法の工夫等が必要であり、部品コスト、生産工数・コストの増大に繋がる。
【0007】
誘導型の近接センサにおける上記の問題点を検知コイル組立体の幾つかの具体例を挙げてより詳細に検討する。
【0008】
[検知コイル組立体の従来例1]
図23には、金属製本体ケースを使用したシールドタイプ(取り付け金属への埋め込み仕様が可能なものをいう)の検知コイル組立体の構造が示されている。
【0009】
同図において、101は真鍮やステンレス等の金属を使用した円筒状本体ケース(外殻ケース)、101aは本体ケースの外周面に形成された雄ねじ部、102はフェライトコア、103は検知コイルを構成するコイル、104はコア102とコイル103とを収容するための有底円筒状の絶縁性内部ケースである。
【0010】
このような構造の検知コイル組立体にあっては、コイル103、コア102の外周に位置する本体ケース101の材質に応じて、検知コイル組立体の検知特性が大きく変動する。本体ケース101自体も、コイル103の形成する磁界内に置かれるためと推定される。
【0011】
検知コイル組立体の従来例1の検知特性を示すグラフが図24に示されている。このグラフは、M8シールドタイプの検知コイル組立体の測定データに基づいて描かれている。横軸には検知距離(mm)が、又縦軸には検知コイルのコンダクタンスg(μS)がとられている。金属体の接近により検知コイルのコンダクタンスが増加する。近接センサの動作原理は、検知コイルのコンダクタンスgの変化を利用して検知信号を生じさせるものである。同グラフから明らかなように、本体ケース101の材質が樹脂(非金属)、真鍮、ステンレスと異なると、それに連れて、コンダクタンス特性(換言すれば、検知特性)も大きく変動することが分かる。このことからも、本体ケース101の材質に応じた検知回路の回路定数(発振回路の定数、発振振幅に対するしきい値など)を変更することが必要であり、部品の集約化を図ることが困難であることが理解されるであろう。
【0012】
[検知コイル組立体の従来例2]
図25には、金属製本体ケースを使用した非シールドタイプ(取り付け金属への埋め込み使用に適さず、シールドタイプより検知距離が長いものをいう)の検知コイル組立体の構造が示されている。
【0013】
同図において、107は真鍮やステンレス等の金属製の円筒状本体ケース(外殻ケース)、107aは本体ケースの外周面に形成された雄ねじ部、102はフェライトコア、103は検知コイルを構成するコイル、108はコイル103とコア102とを収容する樹脂製の有底円筒状のコイルケースである。図から明らかなように、樹脂製のコイルケース108は金属製の本体ケース107よりも前方へ突き出た構造となっている。
【0014】
このような構造の検知コイル組立体にあっては、コイル103並びにコア102の背面方向に位置する本体ケース107の材質が異なることで、検知コイル組立体の検知特性は大きく異なる。
【0015】
検知コイル組立体の従来例2の検知特性を示すグラフが図26に示されている。このグラフは、M8非シールドタイプの検知コイル組立体の測定データに基づいて描かれている。横軸には検知距離(mm)が、又縦軸には検知コイルのコンダクタンスg(μS)がとられている。金属体の接近により検知コイルのコンダクタンスgが増加する。近接センサの動作原理は、検知コイルのコンダクタンスgの変化を利用して検知信号を生じさせるものである。同グラフから明らかなように、本体ケース107の材質が樹脂(非金属)、真鍮、ステンレスと異なると、それに連れて、コンダクタンス特性(換言すれば、検知特性)も大きく変動することが分かる。このことからも、本体ケース107の材質に応じた検知回路の回路定数(発振回路の定数、発振振幅に対するしきい値など)を変更することが必要であり、部品の集約化を図ることが困難であることが理解されるであろう。
【0016】
次に、電気回路的観点から見た場合、構成部品の集約化によるコストダウンに関しては、検知コイル組立体の特性や構造のみならず、発振回路、出力回路の構成等に起因して、次のような問題点が指摘されている。
【0017】
先に述べたように、誘導型の近接センサにあっては、コイルを含む発振回路は、金属体の接近によってその発振状態が変化するため、その発振状態の変化を検知することで、金属体の検知が行われる。誘導型の近接センサは、検知コイル組立体のコイル外径によっても検知性能が変化するため、外径違いのバリエーションが用意される。そのため、使用するコイル外径毎に又は調整する検知距離毎に、発振回路定数が決められる。
【0018】
一方、金属ワークの有無を検知し、その検知信号で様々なアクチュエータを制御する生産現場等のセンサ応用例を想定すると、近接センサに接続される電源線と信号線の構成は、様々な事情で、直流3線式、直流2線式、交流2線式などが使い分けられている。また、出力形態も、NPN型/PNP型、電圧出力型/電流出力型、検知時駆動型/非検知時駆動型などのように使い分けられている。そのため、近接センサの商品化にあたっては、それぞれの電源形態、出力形態に応じた回路バリエーションが用意される。近接センサの小型化要求のために、昨今、上記のような発振回路、電源・出力回路などを1チップのICに集約化することも行われている。
【0019】
このような背景のために、近接センサの設計を行うにあたっては、いずれかの機能部位を新しくしようとした場合(例えば、検知距離の長距離化、回路の低消費電流化、電源の低電圧駆動化など)、近接センサを構成するすべての回路を1チップICに作り直すことが必要となる。加えて、多様な商品バリエーションに対応するためには、IC周辺の部品定数や、コイル定数なども設計を見直す必要がある。その結果、次のような様々な問題点が指摘されている。
(1)新しい商品の開発コストが膨大になる。
(2)近接センサのユーザの使用条件にあった商品がすぐに提供できない。
(3)商品バリエーションが膨大になり、多種少量生産による生産コスト、管理コスト、部品コスト等のために、生産コストが増大する。
(4)部品が生産中止になる場合の代替え設計・調達作業が膨大になる。
(5)共通する品質課題が生じた場合にすべての商品に素早く対応することがで
きない。
【0020】
誘導型の近接センサにおける上記の問題点を発振乃至出力回路の幾つかの具体例を挙げてより詳細に説明する。
【0021】
[近接センサ回路の従来例1]
図27には、直流3線式近接センサの回路構成が示されている。同図において、200は金属体(例えば、金属製ワーク)、201はカスタムIC、202は発振回路、203は積分回路、204は弁別回路、205は論理回路、206は出力制御回路、207は定電圧回路、208は電源リセット回路、209は短絡保護回路、210は表示回路、211は検知コイル、212は共振回路を形成するコンデンサ、213は調整回路、214は積分回路を形成するコンデンサ、215は出力トランジスタ、216は発光素子、217は第1の電源端子、218は第2の電源端子、219は信号出力端子である。
【0022】
[近接センサ回路の従来例2]
図28には、直流2線式近接センサの回路構成が示されている。同図において、220は金属体(例えば、金属ワーク)、221はカスタムIC、222は発振回路、223は積分回路、224は弁別回路、225は論理回路、226は出力制御回路、227は定電圧回路、228は電源リセット回路、229は短絡保護回路、230は表示回路、231は検知コイル、232は共振回路を形成するコンデンサ、233は調整回路、234は積分回路を形成するコンデンサ、235は出力トランジスタ、236,237は発光素子、238は第1の電源端子、239は第2の電源端子である。
【0023】
上記の従来例1,2は、電源方式の相違を除き、殆どの回路要素が共通であるから、両者を代表して、図28に示される従来例2についてその回路要素の構成及び動作を以下に説明する。
【0024】
検知コイル231は、銅の単線または縒り合わされたリッツ線を適宜巻数だけ巻回したものである。共振コンデンサ232は、検知コイル231と並列に接続されてLC並列共振回路を構成し、発振回路222に接続されている。カスタムIC221は、近接センサの主回路が1チップに内蔵されたIC(集積回路)である。このカスタムIC221には、発振回路222、積分回路223、弁別回路224、論理回路225、出力制御回路226、定電圧回路227、電源リセット回路228、短絡保護回路229、及び表示回路230が組み込まれている。調整回路233は、複数の抵抗が組み合わされた回路で、その一部の抵抗値を付け替えたり、レーザトリミングなどによって変更することで発振回路222のゲインを変更して、近接センサの検知感度を調整可能となっている。積分用コンデンサ234は、積分回路223と組み合わされて、CR積分回路を構成している。出力トランジスタ235は、カスタムIC221から出力される制御信号(CONT)に基づいて、大電流を駆動する。236は動作表示灯で、近接センサの出力動作状態を表示している。237は設定表示灯で、使用環境によって検知距離が変動しても確実に検知できる設定位置であることを表示している。238,239は電源供給端子で、近接センサの外部にコード、コネクタなどを介して導出されている。なお、この例では、2線式近接センサであるため、第1の電源端子238は出力端子も兼ねている。
【0025】
図29には、図28に示される従来例2の発振、積分、弁別回路の具体的回路構成の一例が示されている。また、図30には、図29に示される回路の動作タイムチャートが示されている。
【0026】
それらの図に示されるように、発振回路222の発振電圧(図30の(b)参照)は、積分回路223で平滑される。こうして得られた平滑出力(図30の(c))は、弁別回路224の基準電圧C及びDと比較されて二値化され、これにより二値化信号である検知信号E及びFが生成される(図30の(d),(e)参照)。
【0027】
この検知信号E,Fが論理回路225を経て出力制御回路226へ送られ、出力トランジスタ235を制御し、近接センサの出力238をオン・オフするとともに(図30の(f)参照)、動作表示灯236,設定表示灯237もオン・オフする(図30の(g),(h)参照)。
【0028】
発振回路222は、金属物体の接近距離に応じて概ねリニアに発振振幅が変化する特性を有する。金属物体230が接近していないとき、発振振幅A(図30の(b)参照)は十分大きく、2値化された検知信号E,Fはオフしている(図30の(d),(e)参照)。金属物体230が近づいてくると、接近距離に応じて、発振振幅A、積分出力Bが次第に低下する。積分出力Bが基準電圧C以下になると、検知信号Eはオンする。積分出力Bが基準電圧D以下になると、検知信号Fがオンする。これらの検知信号E,Fが図28に示される論理回路225で論理演算されて、出力制御回路226に送られる。以後、出力制御回路226の作用により、出力トランジスタ235が駆動される。
【0029】
定電圧回路227は、電源端子238,239から電源が供給され、定電圧出力を生成して、各内部回路を駆動するとともに、出力がオンしたときに回路を駆動するために最小限必要な電圧を電源端子に残している。電源リセット回路228は、電源が外部から供給されてから、定電圧出力が安定になるまでの間、出力を禁止している。短絡保護回路229は、出力端子238が直接電源に接続され出力トランジスタ235に過電流が流れたことを検知し、電源リセット回路228を起動し、出力を禁止している。
【0030】
上述の回路構成を前提とすると、コストダウンへ向けての問題点はより一層理解され易いであろう。先に述べたように、近接センサの検知距離はコイル231の外径に大きく依存するため、多くの外径違いの近接センサ品種を用意することが必要となる。また、電源、出力の仕様は、近接センサのユーザの都合に合わせて、直流/交流、3線式(図27)/2線式(図28)、NPN/PNP、ノーマリーオープン/ノーマリークローズ、コード出力/コネクタ出力など数多くの品種を用意することが必要となる。さらに、近接センサを使用する環境にあわせて、金属ケース/樹脂ケース、真鍮/ステンレス、ショートボディ/ロングボディなど数多くの品種を用意することが必要となる。
【0031】
これまで、このような多くの仕様を組み合わせた製品を都度設計し、生産してきたため、メーカー側では膨大な種類の製品を供給しているのが通例である。このような状況下において、多くのユーザから、それぞれの商品について、検知距離を長距離化したり、製品のコストダウンをしたり、品質の改善をしたりのさらなる要求が到来しても、最早メーカー側では、それらすべてに応えていくことは次第に困難となりつつあるのが現状である。
【0032】
例えば、検知距離の長距離化の要請に対しては、そのための発振回路の設計が、電源仕様の異なるカスタムIC201,221それぞれについて必要となる。加えて、異なる外径仕様のコイル毎に、発振回路定数を決める共振コンデンサ232の容量値、調整回路233の抵抗値、積分時定数を決めるための積分コンデンサ234の容量値等を設計していくことも必要になる。その結果、新たに数種類のカスタムICが増え、IC外付け部品も数十種類増えてしまう。加えて、近接センサの検知特性は、本体ケースの材質によっても大きな影響を受ける。例えば、外径がM18のシールドタイプで定格検知距離が7mmの同仕様であっても、金属ケースと樹脂ケースとでは、検知特性に違いが生じるため、同じ検知距離に調整するためには、発振定数を異ならせざるを得ない。このことからも、製品仕様の多様化を維持しつつ、部品の集約化を通じて、製造コストの低減を図る困難性が理解されるであろう。
【0033】
上述した磁気回路的乃至電気回路的な従来構成の問題は、近接センサにおける製造工程にも様々な不都合を与えている。
【0034】
図31は、金属製の本体ケースを使用したシールドタイプ(取り付け金属への埋め込み使用が可能なものをいう)の近接センサにおける従来の製造工程を示す工程図である。
【0035】
同図において、最初の工程(A)では、コイル301と、フェライトコア302と、部品実装基板303とを一体に組み付けることにより、検出端組立体304を製作する。次の工程(B)では、検出端組立体304において、コイル301と部品実装基板303との半田付けを行う。次の工程(C)では、半田付けが完了した検出端組立体304について、動作確認試験(距離検査等)並びに外観検査を行う。次の工程(D)では、コイルケース305にエポキシ樹脂を充填する。次の工程(E)では、エポキシ樹脂が充填されたコイルケース305内に、先ほど完成した検出端組立体304を収納して位置決めする。次の工程(F)では、例えば常温にて一時間程度放置することにより、樹脂を硬化させ、コイルケース付検出端組立体307を完成させる。次の工程(G)では、前の工程で完成したコイルケース付検出端組立体307の動作試験により距離調整を行う。この距離調整は、コイルケース付検出端組立体307をダミーケース307aの中に設置した状態で動作試験を行い、試験結果に基づく調整はチップ抵抗の付け替え等により行う。次の工程(H)では、コイルケース付検出端組立体307にコード308を半田付けして、コード付検出端組立体309を完成する。次の工程(I)では、コード付検出端組立体309と、円筒状の金属製本体ケース310と、コードクランプ311とを一体に組み付けることにより、近接センサ半完成品312を得る。次の工程(J)では、近接センサ半完成品312に樹脂注入並びに硬化させることで、近接センサ完成品313を得る。次の工程(K)では、耐電圧検査並びに特性検査を行って、試験済みの最終製品314を得る。
【0036】
上記の製造工程においては、工程(G)における検知距離調整時には、実際に装着される金属製本体ケースと同じ材質、形状のダミーケース307aに挿入した状態で検知距離調整を行っている。そのため、双方の材質のバラツキ、メッキ厚のバラツキ、さらには、金属ケースに対するケース、コイルの位置バラツキにより、検知距離調整時に調整した検知距離と実際に装着される金属ケースをつけた状態で測定した検知距離に差異が発生することにより、不具合品となり、歩留まりを悪くしたり、手直しが必要となることがある。加えて、金属ケースの材質違いについては、各々別のダミーケースを用意しなければならず、ダミーケースの数が増えたり、段取り替えが多く発生し、無駄が多かった。
【0037】
また、ICが発振回路および出力回路を含んだ形で構成されていたため、発振回路自身は同じであっても出力回路の違いで段取り替え(供給する電源が異なるため)も発生し効率が悪かった。
【0038】
また、検知距離調整工程において、ダミーケース307aを装着した状態で、発振回路を含んだ回路が実装された基板の調整抵抗部分の配線に可変抵抗がついた端子を当てて調整抵抗値を読み取っているが、機器の差及び端子と機器との接続間の抵抗値が異なるため、読み取った抵抗値と実際付けなければならない抵抗値との間に差が発生しており、その差を埋めるために、補正値を決めているが、部品のバラツキやICのバラツキ、組立のバラツキ(コイルとコアの位置バラツキ、コアとケースの位置バラツキ等)により補正する値が変化するため、部品のロット毎、製品のロット毎に都度変更しなければならず、効率が悪かった。また、上記変更に加え、出力形態の違いも加わることにより、頻繁に段取り替えが発生し、生産効率を落としていた。
【0039】
また、検知回路調整工程において、調整抵抗値読み取り設備を導入しているが、設備間でもバラツキが発生しており、本来組み立てる機種と違う機種を組み立てると、調整できなくなるという不具合が発生していた。
【0040】
さらに、検知距離調整工程において、調整抵抗値読み取り設備に他の機器によるノイズの影響を受けており、そのノイズを含めた形で補正値を決めているため、設備の移動時や設備部品の交換時には、都度補正値を変更しなくてはならないため、効率が悪い。
【0041】
この発明は、従来の近接センサにおける以上の問題点に着目してなされたものであり、その目的とするところは、この種の近接センサにおいて、多様な商品仕様に対して容易な商品の設計・生産を可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0042】
この発明の近接センサに使用される検出端モジュールは、コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする発振回路を含む検知回路組立体と、それらの組立体が収納される外殻ケースとを有する近接センサ製品を製造するための1モジュール部品であって、検知コイル組立体と、検知回路組立体と、出力回路組立体と、外殻ケースとのうちで、検知コイル組立体と検知回路組立体とを一体的に結合することによりモジュール部品化してなるものである。検知コイル組立体には、外殻ケースの存在が想定される特定周辺領域における導体検知感度を低下させるためのマスク導体が組み込まれており、かつ、検知回路組立体は、発振回路の発振状態に応じた一定形態の信号を近接センサの物体検知信号として外部へと出力するように仕組まれており、それにより、検知回路組立体から出力された物体検知信号を適宜に利用して出力段回路を構成することにより、近接センサ製品を任意に調製し得るようにしたものである。
【0043】
ここで、『近接センサ』には、検知対象物の接近を判別して判別結果を2値の信号として出力するもの(近接スイッチ)と、検知対象物の接近についてそれ以外の方式で出力するもの、例えば、検知対象物までの距離をアナログ信号や符号化信号として出力するものとがある。
【0044】
このような構成によれば、外殻ケースの有無、形状の相違、材質の相違等に拘わらず、距離と検知出力との関係は殆ど変わらないから、従前のように、外殻ケースに合わせて、機械的乃至電気的設計を個別に行うことが不要となり、様々な仕様の近接センサに対して共通部品を使用することで、部品の集約化を推進して、豊富な品揃えを維持しつつ、製造コストの低減化を図ることが可能となる。
【0045】
本発明の検出端モジュールの好ましい実施形態では、コイル並びにコアを収容するためのコイルケースをさらに有し、マスク導体が、コイルケース内にあって、コイル並びにコアを取り巻く導電性の筒状体乃至環状体とされる。
【0046】
本発明の検出端モジュールの他の好ましい実施形態では、コイル並びにコアを収容するためのコイルケースをさらに有し、マスク導体が、コイルケース内にあって、コイル並びにコアの背面を仕切る導電性閉塞板とされる。
【0047】
このように、マスク導体がコイルケース内に設けられる場合には、コイルケースの壁により内部への浸水が防止または抑制され、結果、マスク導体の防錆性に優れるといった効果を得ることもできる。したがって、例えば、食品業界など常に水がかかるような環境での使用には特に好適であると言えよう。
【0048】
本発明の検出端モジュールの更に他の好ましい実施の形態では、コイル並びにコアを収容するためのコイルケースをさらに有し、マスク導体が、コイルケースの外にあって、コイル並びにコアを取り巻く導電性の筒状体乃至環状体とされる。
【0049】
ここで言う『コイルケースの外にあって』は、マスク導体がコイルケースの内側(内壁面)に露出されていない状態を意味しており、したがって、コイルケースの壁内にマスク導体が埋め込まれているような場合もここで言う「コイルケースの外にあって」に含まれる。
【0050】
マスク導体をコイルケース内に設けた場合、例えば外部から衝撃等が加えられることによりコイルケース403に部分的な亀裂が生じマスク導体が露出してしまったような場合、何らかの静電気放電がマスク導体を経由してセンサ内部回路にも及ぶといった不具合が危惧される。しかしながら、このような態様によれば、仮にそのようにコイルケースに部分的な亀裂が生じたような場合にあっても、マスク導体とセンサ内部回路との間のほとんどの部分には絶縁体であるコイルケースが残存する。このため、センサ内部回路とマスク導体との間の放電を防止することができる。したがって、例えば、金属加工業界、搬送業界など、コイルケースに何らかの機械的ストレスがかかるリスクの高い環境での使用には特に好適であると言えよう。
【0051】
本発明の検出端モジュールの好ましい実施形態では、検知回路組立体には、検出端モジュールとして一体化されたのちにあって、発振回路の発振状態を調整することが可能な調整回路が組み込まれる。
【0052】
本発明の検出端モジュールの好ましい実施形態では、検知回路組立体には、発振状態が規定値に達するとスイッチングする弁別回路が含まれ、この弁別回路の出力が物体検知信号として外部出力される。
【0053】
本発明の検出端モジュールの好ましい実施形態では、検知回路組立体には、発振状態に応じたアナログ信号を出力する回路が組み込まれており、この回路の出力が物体検知信号として外部出力される。
【0054】
本発明の検出端モジュールの好ましい実施形態では、検知回路組立体には、外部から供給される電源電圧を安定化させる定電圧回路が組み込まれる。
【0055】
本発明の検出端モジュールの好ましい実施形態では、絶縁性素材からなる有底筒状容器内に、コイルとコアと検知回路組立体とが収容され、樹脂で一体化される。
【0056】
別の一面から見た本発明の検出端モジュールは、コイル並びにコアを含みかつマスク導体により検知特性を自己完結化された検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする検知回路組立体とを一体的に結合することによりモジュール部品化してなり、かつ出荷に先立って、特性調整が完結している、ことを特徴とするものである。
【0057】
このような態様によれば、予め特性の保証された検出端モジュールの外販によっても、検知精度の良好な製品開発が可能となる。つまり、一旦、特性を調整すれば、もはや本体ケースや取付部材の形状や材質等では特性は変動しないため、購入者は改めて特性調整をしなくても、そのまま、自社の仕様に合わせて近接センサの製造が可能となる。
【0058】
次に、本発明の近接センサ製品は、先に述べたような構成の検出端モジュールと、検出端モジュールから出力される物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力段回路が組み込まれた出力回路組立体をモジュール部品化してなる出力回路モジュールと、を電気的に接続してなることを特徴とするものである。
【0059】
本発明の近接センサ製品の好ましい実施形態では、出力回路モジュールを支持するための出力回路モジュール支持部材と、その一端側に検出端モジュールが取り付けられ他端側に出力回路モジュール支持部材が取り付けられそれにより検出端モジュールと出力回路モジュールとを空間を隔てて保持する筒状の外殻ケースと、検出端モジュールと出力回路モジュールとの間に介在され両モジュールを電気的に接続する接続部材と、が更に具備される。
【0060】
本発明の近接センサ製品にあっては、検出端モジュールと出力回路モジュールとが別の部材であるため、それら両モジュールを外殻ケースを介して一体化する場合には、外殻ケースに対して出力回路モジュールをどのように支持するかを考慮せねばならない。そこで、上記好ましい実施形態では、出力回路モジュールを出力回路モジュール支持部材を介して外殻ケースに支持するようにした。なお、出力回路モジュールは、出力回路モジュール支持部材への取り付けのための部材が予め回路基板に取り付けられている構成のものとしてもよい。
【0061】
このような態様によれば、以下の効果を得ることができる。
(1)接続部材を変更乃至調整することにより、外殻ケースの長さにかかわらず、検出端モジュール、出力回路モジュールおよび出力回路モジュール支持部材は同じ種類のものを使用できる。
(2)適当な長さのフレキシブルな接続部材(検出端モジュールと出力回路モジュールとの間隔に自由度を与えるハーネス等の接続部材)を使用する場合には、外殻ケースの長さにかかわらず、接続部材も同じ種類のものが使用できる。
(3)出力回路は、一般に、コードを伝わって外部から侵入する電気的ノイズの影響を受けやすく、また出力の開閉による発熱を生じ易いが、このような形態によれば、検出端モジュールに含まれる検知回路組立体と出力回路モジュールに含まれる出力回路とが隔てて配置されるから、検知回路組立体に対する電気ノイズや熱の影響を抑制可能となる。
(4)出力回路モジュールが外殻ケースの一端側に配置されるので、出力回路モジュールに近接センサの動作状態を表示する表示灯(LED等)を設けるような場合には、表示灯を外殻ケースの一端部から視認できるような構成とすることも容易である。
【0062】
次に、本発明の近接センサ製品の生産方法は、
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体とを一体化してなる複数種類の検出端モジュールの中から1つの種類の検出端モジュールを選択する第1のステップと、物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた複数種類の出力回路モジュールの中から1つの種類の出力回路モジュールを選択する第2のステップと、第1のステップで選択された検出端モジュールと第2のステップで選択された出力回路モジュールとを接続する第3のステップと、を具備することを特徴とする。
【0063】
このような近接センサの生産方法によれば、検出端モジュールと出力回路モジュールとの組合せに基づき様々な種類の近接センサ製品を調製することができるから、豊富な品揃えを満足させつつも、製造コストの削減並びに商品調製の迅速化が達成される。
【0064】
別の一面から見た本発明の近接センサ製品の生産方法は、コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる複数種類の検出端モジュールの中から1つの種類の検出端モジュールを選択する第1のステップと、前記検出端モジュールと組合せが可能な複数種類の外殻ケースの中から1つの種類の外殻ケースを選択する第2のステップと、第1のステップで選択された検出端モジュールを第2のステップで選択された外殻ケースに取り付ける第3のステップと、を具備することを特徴とする。
【0065】
このような近接センサ製品の生産方法によれば、検出端モジュールと外殻ケースとの組合せに基づき様々な種類の近接センサ製品を調製することができるから、豊富な品揃えを満足させつつも、製造コストの削減並びに商品調製の迅速化が達成される。また、検出端モジュールは、選択された外殻ケースによる検知特性の影響をほとんど受けないものであるため、外殻ケースに適合させるための感度調整も不要であり、これによっても、製造コストの削減並びに商品調製の迅速化が達成可能となる。
【0066】
更に別の一面から見た本発明の近接センサ製品の生産方法は、コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる複数種類の検出端モジュールの中から1つの種類の検出端モジュールを選択する第1のステップと、物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた複数種類の出力回路モジュールの中から1つの種類の出力回路モジュールを選択する第2のステップと、前記検出端モジュールと組合せが可能な複数種類の外殻ケースの中から1つの種類の外殻ケースを選択する第3のステップと、第1のステップで選択された検出端モジュールと第2のステップで選択された出力回路モジュールとを電気的に接続するとともに、第3のステップで選択された外殻ケースを検出端モジュールに取り付ける第4のステップと、を具備することを特徴とする。
【0067】
このような近接センサ製品の生産方法によれば、検出端モジュールと出力回路モジュールと外殻ケースとの組合せに基づき様々な種類の近接センサ製品を調製することができるから、豊富な品揃えを満足させつつも、製造コストの削減並びに商品調製の迅速化が達成される。また、検出端モジュールは、選択された外殻ケースによる検知特性の影響をほとんど受けないものであるため、外殻ケースに適合させるための感度調整も不要であり、これによっても、製造コストの削減並びに商品調製の迅速化が達成可能となる。
【0068】
更に別の一面から見た本発明の近接センサ製品の生産方法は、コイル及びコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる検出端モジュールを用意する第1のステップと、前記検出端モジュールと組合せが可能な複数種類の外殻ケースを用意する第2のステップと、第2のステップで用意された複数種類の外殻ケースの中から1つの種類の外殻ケースを選択する第3のステップと、第3のステップで選択された外殻ケースを第1のステップで用意された検出端モジュールに取り付ける第4のステップと、を具備し、それにより、第3のステップで選択された外殻ケースに適合させるための検出端モジュールの感度を不調整で製品出荷可能としたものである。
【0069】
ここで、『検出端モジュールを用意する』とあるように、この近接センサ製品の生産方法では、検出端モジュールの製造過程については問われない。すなわち、この態様は、例えば、他社から仕入れた出来上がり品としての検出端モジュールを使用して自社で検出端モジュールと外殻ケースとを取り付けるような場合に好適な生産方法であると言える。この方法によっても、選択された外殻ケースに適合させるための検出端モジュールの感度調整が不要となるから、製造コストの削減並びに製品出荷の迅速化が達成される。
【0070】
本発明の近接センサ製品の生産方法における好ましい実施形態は、コイル及びコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる検出端モジュールと、物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた出力回路モジュールと、出力回路モジュールを受け入れるための貫通孔を有し出力回路モジュールを支持する出力回路モジュール支持部材と、その前端側に検出端モジュールが取り付けられ後端側に出力回路モジュール支持部材が取り付けられそれにより検出端モジュールと出力回路モジュールとを空間を隔てて保持する筒状の外殻ケースと、検出端モジュールと出力回路モジュールとの間に介在され両モジュールを電気的に接続するためのフレキシブルな接続部材と、を用意する第1のステップと、第1のステップで用意された検出端モジュールと出力回路モジュールとを接続部材を介して電気的に接続する第2のステップと、第2のステップで出力回路モジュールが電気的に接続された検出端モジュールを、第1のステップで用意された外殻ケースの前端側にて外殻ケースに取り付けることにより、外殻ケースの後端側から出力回路モジュールの一部又は全部を突出させる第3のステップと、第3のステップで外殻ケースの後端側からその一部又は全部が突出された出力回路モジュールを、出力回路モジュール支持部材の貫通孔に挿通させる第4のステップと、第4のステップで出力回路モジュールが貫通された出力回路モジュール支持部材を、外殻ケースの後端側にて外殻ケースに取り付ける第5のステップと、第5のステップを経て外殻ケースの後端側にあって、出力回路モジュール支持部材を貫通して突出する出力回路モジュールを出力回路モジュール支持部材に取り付ける第6のステップと、を具備することを特徴とする。
【0071】
従来一般の近接センサ製品にあっては、検知回路組立体および出力回路組立体は1つの基板上に構成されており、この基板はコイルケース等に固定されていたため、近接センサ製品の生産途中における基板の取り扱いが容易であったと言える。これに対し、本発明に係る近接センサの出力回路モジュールをフレキシブルな接続部材(接続間隔が可変のハーネス等の接続部材)を介して検出端モジュールと接続する場合には、生産過程において接続部材や接続部材と出力回路モジュールとの接続部分に破損を生じさせるような力がかかることも想定され、このような場合には、どのような手順で近接センサ製品を組み立てるべきかを十分に考慮する必要がある。ここで示す実施形態は、このような見地から創案されたものであり、これによれば、無理な力を掛けることなく、検出端モジュールと出力回路モジュールとをフレキシブルな接続部材で接続する近接センサ製品を適切に組み立てることができる。
【0072】
なお、理解を深めるため、この実施形態による近接センサ製品の生産方法について、第3のステップ以下を実施例レベルでより具体的に説明する。第3のステップを終えた段階では、出力回路モジュールはフレキシブルな接続部材を介してのみ他の部材とつながっているので、不安定な支持状態にある。第4のステップでは、出力回路モジュール支持部材がまだ外殻ケースに取り付けられていないため、その貫通孔に出力回路モジュールを容易に挿通することができる。
【0073】
第5のステップでは、出力回路モジュールを貫通孔に通したまま出力回路モジュール支持部材を外殻ケースに取り付けるので、接続部材に無理な力がかかる虞がない。なお、外殻ケースに対し、接続部材を介して出力回路モジュールが接続された検出端モジュールを取り付けるよりも先に、出力回路モジュール支持部材を取り付ける場合には、出力回路モジュールを外殻ケースの前端側から挿入し、反対側(後端側)において出力回路モジュール支持部材の貫通孔に挿通させる、といった若干無理のある方法を採用することとなり兼ねず、この場合には、接続部材に無理な力がかかるおそれが生ずる。なお、第6のステップは、第5のステップと同時または第5ステップよりも先に行うようにしてもよい。
【0074】
より好ましい実施形態では、外殻ケースに対する検出端モジュールの取り付け、外殻ケースに対する出力回路モジュール支持部材の取り付け、および出力回路モジュール支持部材に対する出力回路モジュールの取り付けが完了した後に、外殻ケースの内部に充填樹脂を注入する第7のステップと、充填樹脂が硬化した後に、外部に突出している出力回路モジュールの部分に電気コードをはんだ付けする第8のステップと、がさらに具備される。
【0075】
このような態様によれば、充填樹脂が出力回路モジュールと接続部材とは、外殻ケースの中で動かないように固定されてから、電気コードが出力回路モジュールにはんだ付けされるので、電気コードが接続されることによって及ぼされる力のためにフレキシブルな接続部材や接続部材と基板との接続部が破損するおそれがない。
【0076】
次に、本発明の近接センサの製品化システムは、コイル並びにコアを含みかつマスク導体により検知特性を自己完結化された検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする検知回路組立体と、負荷を駆動するためのパワー素子を有する出力回路組立体と、発振回路の発振状態に応じて出力段回路の動作を制御する制御回路組立体と、を含み、検知コイル組立体と検知回路組立体とは一体化されて検出端モジュールを構成しており、出力回路組立体は出力形式や電源電圧等の製品仕様別にそれぞれ出力回路モジュールを構成しており、さらに、制御回路組立体は、検出端モジュール側又は出力段モジュール側に一括して、若しくは、検出端モジュール側と出力段モジュール側とに適宜分割して組み込まれており、それにより、1の検出端モジュールと、その検出端モジュールに対応する一群の出力回路モジュールから選ばれた1の出力回路モジュールと組み合わせることにより、受注製品を調製し得るようにしたものである。
【0077】
このような近接センサの製品化システムによれば、豊富な品揃えを満足させつつも、製造コスト並びに迅速な商品調製を可能とすることができる。
【0078】
なお、本発明をより具体的な実施例のレベルで考察すると、コイル、コイルが収納されたフェライトコア、真鍮・銅・アルミ等からなる円筒状マスク導体とで構成された検知コイル組立体の検知特性が、本体ケースの材質・形状寸法、及び本体ケースのメッキ厚バラツキ、或いはセンサ部と本体ケースとの組立位置バラツキなどの影響を受けにくくなる(影響が小さくなる)。そのため、本体ケース(材質・形状)が異なっても、同一性能の近接センサが、同一の検出端モジュールで実現できる。その結果、(1)設計工数・コストが低減されること、(2)如何なる本体ケース材質であっても高性能な検知性能が得られること、(3)部品集約ができ、部品コストが低減されること、(4)同一ライン、工程で生産することが可能になること、(5)検知距離のバラツキが小さくできること、(6)センサ部と本体ケースとの組立位置の簡易化が図れること、検知距離の調整方法の簡易化が図れること、と言った様々な効果が得られる。
【0079】
また、円筒状マスク導体を具備することにより、近接センサとしての性能改善効果も得られ、例えば、周囲金属の影響(取り付け部の金属の影響による検知特性変化)が従来構造に比べ低減できるであるとか、相互干渉(近接センサ同士が干渉して誤動作等をおこす)の距離を低減できるといった効果も得られる。
【0080】
また、円筒状マスク導体を安定電位に接地した場合には、外乱ノイズに対するシールド効果が得られるので、従来実施していたノイズ対策(シールド板や、フェライトコアへの蒸着膜)が不要となり、部品コスト、生産工数の低減もできる。
【0081】
次に、上述した近接センサの販売に係るビジネス手法としての機種選定支援方法を示す。本発明の近接センサの機種選定支援方法は、コイル及びコアを含む検知コイル組立体、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体、並びに外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体を一体化してなる検出端モジュールと、物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた出力回路モジュールと、検出端モジュールおよび出力回路モジュールを収納する外殻ケースと、を備える近接センサの機種選定支援方法であって、複数種類の検出端モジュールから選択された1つの検出端モジュール、複数種類の出力回路モジュールから選択された1つの出力回路モジュールおよび複数種類の外殻ケースから選択された1つの外殻ケースの組み合わせによって構成し得る近接センサの機種を識別する情報とその機種の仕様が登録されたデータベースをサーバの記憶装置に用意するステップと、前記サーバと通信する端末装置を介して、顧客に近接センサの機種特定に必要な仕様条件の一部または全部を入力させるステップと、前記端末装置を介して、顧客が入力した仕様条件を満たす近接センサの機種を識別する情報を顧客に提示するステップと、を備えることを特徴とする。
【0082】
従来一般の近接センサにあっては、検知回路および出力回路が1つの回路基板上に構成され、更にこの回路基板に検知コイルが一体化されて1つの複合部品が構成されていた。このため、検知コイル、検知回路および出力回路の何れか1つの仕様が異なるだけでも複合部品全体としてみれば別の仕様となるため、複合部品は別個に設計せねばならない。このことは、受注可能な近接センサの機種数を増やせない要因ともなっている。
【0083】
これに対し、本発明の近接センサの機種選定支援方法にあっては、別個に用意された検出端モジュール、出力回路モジュール、および外殻ケースを様々に組み合わせて近接センサを調製することができるので、受注可能な近接センサの機種数を、検出端モジュールの種類の数、出力回路モジュールの種類の数、および外殻ケースの種類の数に比べてはるかに多く得ることができる。
【0084】
更に、受注した機種が需要の少ない機種や過去に受注歴のない機種、すなわちその機種に使用される検出端モジュール、出力回路モジュール、および外殻ケースの組み合わせが稀なものであっても、各モジュールとケースは他の機種を構成する際使用できるものであるから、それらモジュールやケースを在庫しておいても、維持コスト、生産コスト及び生産リードタイム等に特段の影響はなく、そのような稀な機種であっても無理なく提供することができる。また、近接センサの注文数それ自体が極めて少ないような場合(例えば1個の場合)であっても問題なく対応(提供)することができる。
【0085】
加えて、本発明の機種選定支援方法の実施に使用される検出端モジュールは、外殻ケースによる検知特性の影響をほとんど受けないよう構成されているため、組み合わせる外殻ケースの材質に合わせて検出端モジュールを個別に調整する必要もない。そのため、検出端モジュールを完成した中間製品として在庫しておくことができる、顧客からの注文に応じた仕様の近接センサを迅速に組み立てることができる。
【0086】
なお、本発明の機種選定支援方法において、データベースに登録される仕様は、検出端モジュール、出力回路モジュール、および外殻ケースの技術的に可能な組み合わせの全てまたはそのうちの一部である。すなわち、技術的に不可能な組合せ、或いは技術的には組み合わせ可能ではあるが近接センサ提供者の都合等により不要とされる組合せについては登録しなくてもよいであろう。
【0087】
近接センサの機種特定に必要な仕様条件の入力態様としては、予め用意された複数の仕様項目別にその具体的仕様内容を入力させる態様(選択肢からの選択、任意の語句入力等)や、仕様内容をおおまかに絞り込むための間接情報(近接センサの用途等の情報)を入力させる態様のもの等を挙げることができる。
【0088】
「仕様条件」には、接続方式に関する仕様条件を加えるようにしてもよい。具体的には、コード引き出し(プリワイヤ)タイプかコネクタタイプかに基づく仕様条件、コード引き出しタイプの場合には更にコードの材質や長さに基づく仕様条件、コネクタタイプの場合には更にコネクタ種類に基づく仕様条件等がその一例として挙げられる。
【0089】
この発明の機種選定支援方法においては、いずれかのステップの後若しくはいずれかのステップにおいて又は仕様条件を入力させるステップの前に、近接センサの購入方法の案内をするステップを更に設けるようにしてもよい。
【0090】
この場合、購入方法の案内をするステップでは、その近接センサを購入できる販売店についての情報等を提供することができる。また、顧客側の端末装置を介して顧客の希望する仕様条件を満たす機種を識別する情報を提示した後に、当該提示した機種の購入申し込みを受け付けるようにしてもよい。また、電子メール、電話、ファクシミリまたは郵便による購入申し込み方法の案内をするようにしてもよい。
【0091】
この発明の機種選定支援方法の好ましい実施形態では、機種を識別する情報を提示するステップにおいて、顧客が入力した仕様条件を満たす近接センサの機種が複数あるときには、顧客側の端末装置を介してそれらの機種の一覧を提示し、該端末装置を介してその機種の一覧の中から1つまたは複数の機種を顧客に選択させるステップをさらに有する。
【0092】
このような態様によれば、顧客は、自身の用途にとって重要と考える仕様条件のみを入力し、その後提示された機種の一覧から所望のものを選択するといった手順により機種を特定できるので、1つの機種を特定するために必要なすべての仕様条件を入力しなければならない場合に比べて、入力操作に係る手間暇がはぶかれ、機種選択を容易に行うことができる。
【0093】
ここで更に好ましくは、前記一覧で提示される機種の中に見込み生産による在庫が用意されている機種がある場合には、一覧の中でそのような機種を顧客が識別できるようにして一覧を提示するようにする。
【0094】
『顧客が識別できるように』とあるが、これは、例えば、在庫が用意されている機種であることを示す特定の文字・図形・記号・色彩等を一覧の中に表示するような場合がこれに該当する。このような態様によれば、顧客は、一覧に提示されている機種が在庫の用意されている機種(最も早く入手できる機種)か、受注後生産の機種(入手が数日遅くなる機種)かを知ることができ、それを踏まえて機種の選択をすることができる。
【0095】
また、好ましくは、前記仕様条件を入力させるステップは、機種特定に必要な仕様条件のうちの一部の仕様条件のみの入力が可能であるものとし、前記一覧は、顧客が入力した仕様条件を満たす複数の近接センサの機種を識別する情報とともに、各機種についての前記入力可能な一部の仕様条件に非該当の仕様条件の内容を含むものとする。
【0096】
ここで、「入力可能な一部の仕様条件に非該当の仕様条件」としては、機種選択の観点では通常は重視されない仕様条件を割り当てるのが好ましい。例えば動作形態のノーマリオープンとノーマリクローズとが他の仕様内容にかかわらずほとんどの場合に両方とも用意されているとすれば、そのいずれを選択するかの決定は最後に行えば足りると考えられるため、この場合には、仕様条件を入力させるステップにおいては、ノーマリオープンかノーマリクローズかの入力はできないようにしておくとよいであろう。これにより、顧客は、仕様条件を入力させるステップでは、用途と密接に関係する仕様のみを入力することに注意を集中させることができる。
【0097】
また、この発明の機種選定支援方法において好ましくは、顧客が入力した仕様条件を満たすものとして提示した近接センサの機種について、前記端末装置を介して顧客からの情報提示要求を受け付けるステップと、顧客からの要求に応じて前記端末装置を介して当該近接センサの機種についての特性を示すデータおよび/または外形を示す図面を含む情報を顧客に提示するステップと、が更に具備される。
【0098】
このような態様によれば、顧客は、一覧に提示されている機種についての詳細情報を直ちに確認できるので、機種選定をより的確かつスムーズに行うことが可能となる。
【0099】
なお、上記した機種データベースは、本発明の機種データベース作成方法により好適に作成される。本発明の機種データベース作成方法は、コイル及びコアを含む検知コイル組立体、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体、並びに外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体を一体化してなる検出端モジュールと、物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた出力回路モジュールと、検出端モジュールおよび出力回路モジュールを収納する外殻ケースと、を備える近接センサの複数の機種について各機種の仕様を登録した近接センサの機種データベースの作成方法であって、複数種類の検出端モジュールについて各検出端モジュールの仕様のデータ、複数種類の外殻ケースについて各外殻ケースの仕様のデータおよび複数種類の出力回路モジュールについて各出力回路モジュールの仕様のデータをコンピュータの記憶装置に用意するステップと、検出端モジュールおよび外殻ケースの組合せのうち不適切とされる組合せを指定するための組合せ禁止情報をコンピュータの記憶装置に用意するステップと、禁止情報によって特定される組合せを除いて、各検出端モジュールの仕様のデータ、各外殻ケースの仕様のデータおよび各出力回路モジュールの仕様のデータをコンピュータにより組み合わせて、複数種類の検出端モジュールから選択された1つの検出端モジュール、複数種類の外殻ケースから選択された1つの外殻ケースおよび複数種類の出力回路モジュールから選択された1つの出力回路モジュールの組み合わせによって構成し得る近接センサの各機種についてその仕様が登録された機種データベースを作成するステップと、を備えることを特徴とする。
【0100】
本発明の近接センサの機種データベースの作成方法によれば、膨大な数の近接センサの機種についてのデータベースを迅速、かつ正確に作成することができる。従来の近接センサでは、外径、検知距離、出力形態などの基本的な仕様のいずれかにおいて異なれば、必ず個別に設計した部分があったので、多くの機種で共通に使用できる部品の組み合わせに基づいて機種データベースを自動作成することはできなかった。しかしながら、組み合わせ自由度の高い検出端モジュール、出力回路モジュールおよび外殻ケースを備える本発明に係る近接センサを対象としたこの近接センサの機種データベース作成方法によれば、近接センサの機種データベースをコンピュータプログラムの実行により作成することが可能となる。
【0101】
なお、この近接センサの機種データベースの作成方法においては、接続方式に関する仕様データをさらに用意して、これを含めた機種データベースをコンピュータプログラムの実行により作成するようにしてもよい。
【0102】
またここで、近接センサ製品の1モジュール部品として使用される検出端モジュールは、コイル並びにコアを含みかつマスク導体により検知特性を自己完結化された検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする検知回路組立体とを一体的に結合することによりモジュール部品化してなり、かつ出荷に先立って、特性調整が完結している、ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0103】
以上のように、本発明は、金属体等の接近を磁界を介して非接触で検知する誘導型の近接センサとして有用であり、特に、製造コストを抑制しつつも、ユーザのニーズに柔軟に対応できる豊富な品揃えを実現するのに適している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0104】
以下に、本発明の好適な実施の一形態を添付図面を参照しながら詳細に説明する。
【0105】
本発明の近接センサの主たる特徴は、新規な構成を有する検出端モジュールを使用して製造されている点にある。この検出端モジュールは、コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする発振回路を含む検知回路組立体と、を一体化してなるものである。
【0106】
この検知コイル組立体には、金属製である外殻ケース(本体ケース)の存在が想定される特定周辺領域における導体検知感度を低下させるためのマスク導体が組み込まれている。加えて、検知回路組立体は、発振回路の発振状態に応じた一定形態の信号を近接センサの物体検知信号として外部へと出力するように仕組まれている。
【0107】
そのため、検知回路組立体から出力された物体検知信号を適宜に利用して出力段回路を構成することにより、近接センサから所望の形式の信号を出力し得るようになされている。
【0108】
後に詳細に説明するように、マスク導体の材質としては、真鍮、銅、アルミ等の良導体が使用される。また、その形状は検知コイル組立体を取り巻く筒状体乃至環状体とすることができる。
【0109】
図1には、本発明の検出端モジュールの構成部分である検知コイル組立体404の一実施形態(第1実施形態)が本体ケース(外殻ケース)405とともに示されている。この検知コイル組立体404はシールドタイプを意図したもので、コイル401並びにフェライトコア402を有底円筒状のコイルケース403内に収容してなる。この例では、コイルケース403は、材質として樹脂が使用された絶縁物である。検知コイル組立体404の外周には、円筒状の本体ケース405が圧入外嵌されている。本体ケース405の材質としては、真鍮、ステンレス等の金属、或いは樹脂等を使用することができる。コイルケース403の材質としては、樹脂等の絶縁物が使用されている。
【0110】
コイル401並びにフェライトコア402を取り巻くコイルケース403の内周面には、金属製本体ケース405の存在が想定される特定周辺領域における導体検知感度を低下させるためのマスク導体406が配置されている。この第1実施形態に示されるマスク導体406は円筒形状を有するものであり、その材質としては、真鍮、銅、アルミニウム等の良導体が使用されている。この円筒状マスク導体406は、フェライトコア402とほぼ同程度の全長を有し、コイルケース403の先端側(図では左側)の端部まで押し込まれた状態で配置されている。また、本体ケース405の先端側(図では左側)の端面は、円筒状マスク導体406の先端側の端面よりもやや後退した位置となっている。
【0111】
この例では、円筒状マスク導体406は、コイルケース403の内周面に段差を設けて嵌め込んだ構造になっているが、この段差は無くてもよい。円筒状マスク導体406の配置方法は、コイルケース403に挿入する方法でも良いし、円筒状マスク導体406をコイルケース403にインサート成形する方法でも良い。または、コイルケース403の代わりに、コイル401、フェライトコア402、円筒状マスク導体406及び後述する検出端モジュールに搭載する基板を一体化するように絶縁物で成形する方法でも良い。なお、円筒状マスク導体406を安定電位(グランド)に接地すれば、外乱ノイズに対するシールド効果も得られる。
【0112】
第1実施形態の検知コイル組立体の検知特性を示すグラフが図2に示されている。このグラフは、M8シールドタイプの検知コイル組立体の測定データに基づいて描かれている。横軸には検知距離(mm)が縦軸には検知コイルのコンダクタンスg(μS)がとられている。なお、グラフの詳細(内容、用語の意味等)については、[発明の実施の形態]の項の末尾において解説するので、そちらを参照されたい。
【0113】
同図に示されるように、本体ケース405の材質が樹脂(非金属)、真鍮(黄銅)、ステンレスと異なると、それに連れて、検知コイル組立体404のコンダクタンス特性(換言すれば、検知特性)も変動する。もっとも、図24に示した従来例1の検知特性と比較して明らかなように、本実施の形態の検知コイル組立体の検知特性の変動幅はマスク導体406を有しない従来例1の検知コイル組立体(図23参照)の変動幅に比べて格段に小さくなっていることが理解されるであろう。これは、円筒状マスク導体406を設けたことにより、ケース本体405の存在する限られた領域における導体検知感度が低下したことによるものと推定される。
【0114】
したがって、検知コイル組立体404の検知特性に対する本体ケース405の材質・形状寸法、メッキ厚バラツキ、或いは検知コイル組立体404と本体ケース405との組立位置バラツキなどの影響が小さくなるため、本体ケース405の材質・形状等が異なっても、検知特性の差が小さい近接センサが、同一の検出端モジュール(詳細は後述する)で実現できることとなる。
【0115】
その結果、(1)設計工数・コストが低減できること、(2)部品集約ができ、部品コストが低減できること、(3)近接センサの異なる機種を同一ライン、工程で生産することが可能になること、(4)検知距離のバラツキを小さくできること、(5)センサ部と本体ケースとの組立位置合わせが簡易化できること、(6)検知距離の調整方法の簡易化が図れること、と言ったような様々な効果が得られる。
【0116】
また、円筒状マスク導体406を具備することにより、近接センサとしての性能改善効果も得られ、例えば、周囲金属の影響(取り付け部の金属の影響による検知特性変化)が従来構造に比べ低減できるであるとか、相互干渉(近接センサ同士が干渉して誤動作等をおこす)が起こる距離を低減できるといった効果も得られる。
【0117】
さらに、円筒状マスク導体406を安定電位に接地した場合には、外乱ノイズに対するシールド効果が得られるので、従来実施していたノイズ対策(シールド板や、フェライトコアへの蒸着膜)が不要となり、部品コスト、生産工数の低減も図ることができる。
【0118】
図32は、上記した検知コイル組立体の第1実施形態の変形例を示すものである。上記第1実施形態においては、円筒状マスク導体406をコイルケース403の内側(内周面)に配置する構造としたが、マスク胴体は、同図に示されるように円筒状マスク導体4060としてコイルケース403の外側に設けることもできる。
【0119】
この変形例で示される円筒状マスク導体4060は、先の円筒状マスク導体406よりもやや大きめの内径を有しており、コイルケース403の外周面に形成された段差部403aに嵌め込まれる。全長および本体ケース403の端面に対する先端部の位置(やや前方)は、上記したマスク導体406のそれとほぼ同様である。
【0120】
一方、本体ケース405は、円筒状マスク導体4060の外周面の大部分被覆しつつ外周面先端部分は微かに露出させるように検知コイル組立体404の外周に圧入外嵌される。なお、この態様における検知コイル組立体404の検知特性については、先に図2に示したものとほぼ同様であるから、ここでの説明は省略する。
【0121】
マスク導体をコイルケース403の内周に設けた場合には、例えば外部から衝撃等が加えられることによりコイルケース403に部分的な亀裂が生じマスク導体が露出してしまったような場合には、何らかの静電気放電がマスク導体を経由してセンサ内部回路にも及ぶといった不具合が危惧される。しかしながら、このようにマスク導体4060をコイルケース外に配置すれば、仮にそのようにコイルケース403に部分的な亀裂が生じたような場合にあっても、マスク導体と検知回路組立体との間のほとんどの部分には絶縁体であるコイルケース403が残存するため、センサ内部回路とマスク導体との間の放電を防止することができる。
【0122】
なお、円筒状マスク導体4060は、その外周面が完全に被覆されるようにコイルケース403内に埋め込むようにして設けてもよい。この場合には、上述した放電防止に加え、マスク導体4060に高い防錆性を付与することもできる。
【0123】
なお、この例では、円筒状マスク導体4060を、コイルケース403の外周に段差部403aを設けて嵌め込んだ構造としたが、この段差は無くてもよい。また、円筒状マスク導体4060は、コイルケース403に接着固定するようにしてもよく、または、コイルケース403と一体成形するようにしてもよい。更には、コイルケース403の代わりに、コイル401、フェライトコア402、円筒状マスク導体4060及び後述する検出端モジュールに搭載する基板を一体化するように絶縁物で成形(例えば樹脂モールド)するようにしても良い。
【0124】
また、円筒状マスク導体4060についても、安定電位(グランド)に接地すれば、外乱ノイズに対するシールド効果も得られる。
【0125】
図3には、検知コイル組立体404の他の一実施形態(第2実施形態)が本体ケース405とともに示されている。ここでは、図1で示した第1実施形態とほぼ同一の箇所には同一符号を付してその説明を省略する。なお、コイルケース403の形状等については、第1実施形態と第2実施形態のそれぞれのマスク導体(406,407)の構成相違に基づく多少の違いは認められるが、それらの点については当業者であれば特段の説明は要しないであろう。
【0126】
第2実施形態が第1実施形態と異なる点はマスク導体407の構成にある。このマスク導体407は、円筒状本体部407aの先端部外周に円環状鍔部407bを有する鍔付円筒形状として構成されている。その材質は先のマスク導体406と同様である。
【0127】
なお、この鍔付マスク導体407は、異なる2つの独立した部材(鍔形状部分と円筒形状部分)から構成しても良い。また、この鍔付マスク導体407は、コイルケース403の内周面に段差を設けて嵌め込んだ構造としているがこの段差は無くてもよい。その場合、円環状鍔部407aだけは段差に勘合するようにすればよい。また、鍔付マスク導体407は、第1実施形態で示したマスク導体406のそれと同様に、インサート成形、乃至一体成形等することが可能である。更には、シールド機能についても同様に(グランド接地)して付与することができる。
【0128】
第2実施形態の検知コイル組立体の検知特性を示すグラフが図4に示されている。同図に示されるように、第2実施形態においても、本体ケース405の材質が樹脂(非金属)、真鍮(黄銅)、ステンレスと異なると、それに連れてコンダクタンス特性(検知特性)が変動しているが、その検知特性の変動幅は、マスク導体を有しない従来例1の検知コイル組立体(図23,図24参照)の変動幅に比べて格段に小さくなっているのが理解される。もっとも、この第2実施形態にあっては、鍔付マスク導体407の先端部外周に環状に鍔部407bを形成したことにより、図2に示した第1実施形態の検知コイル組立体404の検知特性よりも一層の変動幅低減が達成されているのが理解されるであろう。
【0129】
図33は上記した検知コイル組立体の第2実施形態の変形例を示すものである。同図に示されるように、第2実施形態においても、鍔付マスク導体をコイルケース403の外側に設けるようにすることができる。
【0130】
この変形例で示される鍔付マスク導体4070は、コイルケース403の外周面に形成された段差部403aに嵌め込まれる。なお、鍔付マスク導体4070の全長、および本体ケース403の端面に対する先端部の位置(やや前方)は、上記した鍔付マスク導体407のそれとほぼ同様である。
【0131】
一方、本体ケース405は、鍔付マスク導体4070の外周面を被覆するとともに鍔部407bの外周面は露出させるように検知コイル組立体404の外周に圧入外嵌される。
【0132】
なお、この変形例における検知コイル組立体404の検知特性については、図4に示したものとほぼ同様であり、また、マスク導体をコイルケース外周に設けたことにより得られる効果またはその応用例については、先の第1実施形態の変形例の説明で示したものと同様に考えることができるから、ここでの重複説明は避けるものとする。
【0133】
図5には、検知コイル組立体404の他の一実施形態(第3実施形態)が本体ケース405とともに示されている。なお、同様に、先に示した第1実施形態または第2実施形態と同一箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0134】
第3実施形態が第1実施形態または第2実施形態と異なる点はマスク導体408の構成にある。第3実施形態に示されるマスク導体408は、円環形状のマスク導体408として構成されている。
【0135】
なお、この円環状マスク導体408は、コイルケース403の内周面先端部に段差を設けて嵌め込んだ構造としているが、第1、第2実施形態と同様、この段差は無くてもよい。また、円環状マスク導体408は、第1,第2実施形態で示したマスク導体406,407のそれと同様に、インサート成形乃至一体成形等することが可能である。更には、シールド機能についても同様に(グランド接地)して付与することができる。
【0136】
特性グラフの図示は省略するが、この第3実施形態にあっても、本体ケース405の材質が異なることによるその検知特性の変動幅はマスク導体を有しない従来例1の検知コイル組立体の変動幅に比べて格段に小さくなる。これも、円環状マスク導体408を設けたことにより、ケース本体405の存在領域における導体検知感度が低下したことによるものと推定される。
【0137】
図34は、上記した検知コイル組立体の第3実施形態の変形例を示すものである。同図に示されるように、この第3実施形態においても円環状マスク導体をコイルケース403の外側に設けるようにすることができる。
【0138】
この変形例で示される円環状マスク導体4080は、コイルケース403の外周面先端部に形成された段差部(嵌合部403a)に嵌め込まれる。一方、本体ケース405は、円環状マスク導体4080の外周面を覆うことなく検知コイル組立体404の外周に圧入外嵌される。
【0139】
なお、この態様における検知コイル組立体404の検知特性については、上記第3実施形態とほぼ同様であり、また、マスク導体をコイルケース外周に設けたことにより得られる効果またはその応用例については、先の第1実施形態の変形例の説明で示したものと同様に考えることができる。
【0140】
図6には、検知コイル組立体404の他の一実施形態(第4実施形態)が本体ケース405とともに示されている。この検知コイル組立体404は非シールドタイプを意図したもので、先に示した第1乃至第3実施形態と比較しても明らかなように、外装ケース405は、コイルケース403の外周面の多くを露出させるようにして該コイルケース403の後端部において圧入外嵌されている。また、この例で使用されるフェライトコア402は、断面T字状であり、コイル403の外側にはフェライトコア402が存在しないため、シールド効果は劣るものの、検知距離(検知性能)が第1乃至第3実施形態のそれよりも向上されている。なお、コイル401,フェライトコア402,コイルケース403,本体ケース405の材質については、第1乃至第3実施形態のものと同様である。
【0141】
第4実施形態においては、円筒形状のマスク導体409が使用されている。このマスク導体409は、コイル401およびフェライトコア402より後方であり、かつその先端側がコイルケース405の先端側より前方に位置するようにしてコイルケース403の内周面に配置されている。なお、マスク導体409の材質についても第1乃至第3実施形態のものと同様である。
【0142】
この円筒状マスク導体409は、コイルケース403の内周面に段差を設けて嵌め込んだ構造としているが、この段差はなくてもよい。また、円筒状マスク導体409は、第1乃至第3実施形態で示したマスク導体(406,407,408)のそれと同様に、インサート成形乃至一体成形等することが可能である。更には、シールド機能についても同様に(グランド接地)して付与することができる。
【0143】
第4実施形態の検知コイル組立体の検知特性を示すグラフが図7に示されている。同図に示されるように、第4実施形態においても、本体ケース405の材質が樹脂(非金属)、真鍮(黄銅)、ステンレスと異なると、それに連れて、コンダクタンス特性(検知特性)が変動しているが、その検知特性は、図26に示した従来例2の検知特性と比較して明らかなように、従来例2の検知コイル組立体(図25参照)の変動幅に比べて格段に小さくなっている。
【0144】
図35は、上記した検知コイル組立体の第4実施形態の変形例を示すものである。同図に示されるように、この第4実施形態においても円筒状マスク導体4090をコイルケース403の外側に設けるようにすることができる。
【0145】
この変形例で示される円筒状マスク導体4090は、コイルケース403の外周面に形成された段差部403aに嵌め込まれる。なお、円筒状マスク導体4090のコイル並びにコアに対する位置は、上記した円筒状マスク導体409のそれとほぼ同様である。一方、本体ケース405は、円筒状マスク導体4090の外周面の半分以上を被覆しつつその外周面先端部は露出させるように検知コイル組立体404の外周に圧入外嵌される。
【0146】
なお、この態様における検知コイル組立体404の検知特性は、図7で示したものとほぼ同様であり、また、マスク導体をコイルケース外周に設けたことにより得られる効果またはその応用例については、先の第1実施形態の変形例の説明で示したものと同様に考えることができる。
【0147】
図8には、検知コイル組立体404の他の一実施形態(第5実施形態)が本体ケース405とともに示されている。この検知コイル組立体も、図6で示した第4実施形態と同様、非シールドタイプを意図したものであり、当該第4実施形態とほぼ同一の箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0148】
第5実施形態が、第4実施形態と異なる点は、マスク導体410の構成にある。この第5実施形態に示されるマスク導体410は、円筒状本体部410aの先端部外周に円環状鍔部410bを有する鍔付円筒形状として構成されている。
【0149】
なお、この鍔付マスク導体410は、異なる2つの独立部材(鍔形状部分と円筒形状部分)から構成しても良い。また、この鍔付マスク導体410は、コイルケース403の内周面に段差を設けて嵌め込んだ構造としているが、この段差は無くてもよい。また、第4実施形態で示したマスク導体409のそれと同様に、インサート成形、乃至一体成形等することが可能である。更には、シールド機能についても同様に(グランド接地)して付与することができる。
【0150】
第5実施形態の検知コイル組立体の検知特性を示すグラフが図9に示されている。同図に示されるように、第5実施形態においても、本体ケース405の材質が樹脂(非金属)、真鍮(黄銅)、ステンレスと異なると、それに連れてコンダクタンス特性(検知特性)が変動しているが、その検知特性の変動幅は、マスク導体を有しない従来例2の検知コイル組立体(図25,図26参照)の変動幅に比べて格段に小さくなっている。もっとも、この第5実施形態にあっては、鍔付マスク導体410の先端部外周に環状に鍔部410bを形成したことにより、図7に示した第4実施形態の検知特性よりも一層の変動幅低減が達成されているのが理解されるであろう。
【0151】
図36は、上記した検知コイル組立体の第5実施形態の変形例を示すものである。同図に示されるように、この第5実施形態においても、鍔付マスク導体をコイルケース403の外側に設けるようにすることができる。
【0152】
この変形例で示される鍔付マスク導体4100は、コイルケース403の外周面に形成された段差部403aに嵌め込まれる。なお、鍔付マスク導体4070のコイル並びにコアに対する位置は、上記した鍔付マスク導体410のそれとほぼ同様である。一方、本体ケース405は、鍔付マスク導体4100の外周面を被覆しつつ鍔部407bの外周面については露出させるように検知コイル組立体404の外周に圧入外嵌される。
【0153】
なお、この態様における検知コイル組立体404の検知特性については、図9に示したものとほぼ同様であり、また、マスク導体をコイルケース外周に設けたことにより得られる効果またはその応用例については、先の第1実施形態の変形例の説明で示したものと同様に考えることができる。
【0154】
図10には、検知コイル組立体404の他の一実施形態(第6実施形態)が本体ケース405とともに示されている。なお、同様に、先に示した第4実施形態または第5実施形態とほぼ同一の箇所には同一符号を付してその説明を省略する。
【0155】
第6実施形態が第4実施形態または第5実施形態と異なる点はマスク導体411の構成にある。すなわち、第6実施形態に示されるマスク導体411は、円環形状のマスク導体411として構成されている。
【0156】
なお、この円環状マスク導体411は、コイルケース403の内周面に段差を設けて嵌め込んだ構造としているが、この段差は無くてもよい。また、円環状マスク導体411は、第4,第5実施形態で示したマスク導体のそれと同様に、インサート成形乃至一体成形等することが可能である。更には、シールド機能についても同様に(グランド接地)して付与することができる。
【0157】
特性グラフの図示は省略するが、この第6実施形態にあっても、本体ケース405の材質が異なることによるその検知特性の変動幅は、マスク導体を有しない従来例2の検知コイル組立体の変動幅に比べて格段に小さくなる。これも、円環状マスク導体411を設けたことにより、ケース本体405の存在領域における導体検知感度が低下したことによるものと推定される。
【0158】
図37は、上記した検知コイル組立体の第6実施形態の変形例を示すものである。同図に示されるように、この第6実施形態においても円環状マスク導体4110をコイルケース403の外側に設けるようにすることができる。
【0159】
この変形例で示される円環状マスク導体4110は、コイルケース403の外周面に形成された段差部(嵌合部403a)に嵌め込まれる。一方、本体ケース405は、円環状マスク導体4110の外周面を覆うことなく検知コイル組立体404の外周に圧入外嵌される。
【0160】
なお、この態様における検知コイル組立体の検知特性は、上記第6実施形態とほぼ同様であり、また、マスク導体をコイルケース外周に設けたことにより得られる効果またはその応用例については、先の第1実施形態の変形例の説明で示したものと同様に考えることができる。
【0161】
図11には、検知コイル組立体404の更に他の一実施形態(第7実施形態)が本体ケース405とともに示されている。この検知コイル組立体は、第4乃至第6実施形態と同様、非シールドタイプを意図したものであるが、それら第4乃至第6実施形態と異なる点はマスク導体412にある。この実施形態に示されるマスク導体412は円盤状を有するものであり、コイルケース403の後部開口を塞ぐようにして、かつ、フェライトコア402の背面にぴったりと接するようにして配置されている。
【0162】
なお、この円盤状マスク導体412の材質は、先に示したマスク導体406〜411と同様であり、また、円盤状マスク導体412を安定電位(グランド)に接地すれば、外乱ノイズに対するシールド効果が得られる。
【0163】
特性グラフは省略するが、この第7実施形態にあっても、本体ケース405の材質が異なることによる検知特性の変動幅は、マスク導体を有しない従来例2の検知コイル組立体の変動幅に比べて格段に小さくなることが確認されている。
【0164】
次に、本発明の検出端モジュールの他の構成部分である検知回路組立体500、並びに、検知回路組立体500と出力回路組立体とを使用して構成された近接センサ回路の全体について、幾つかの例を挙げながら説明する。
【0165】
図12には、本発明に係る検出端モジュールを構成する検知回路組立体の一実施形態(第1実施形態)の回路構成が示されている。同図において、501は発振回路、502は積分回路、503は弁別回路、504は検知コイル、505は共振コンデンサ、506は調整回路、507は積分用コンデンサ、509は出力端子であり、それぞれ図27の従来例における該当回路要素と同様の動作を行うものである。これらの回路要素は適宜に集積化されて、後述するように、図示しない回路基板に搭載され、検知回路組立体500を構成する。
【0166】
508,510は電源供給端子で、検知回路組立体500を駆動する定電圧の供給を外部(出力回路モジュール)から受けるためのものである。509は検知回路組立体500の検知信号出力端子である。511は検知回路組立体500の主要回路要素が1チップに内蔵されたカスタムIC(集積回路)である。
【0167】
発振回路501の発振電圧は、積分回路502で平滑されたのち、弁別回路503において基準電圧と比較され、これにより2値化された検知信号が検知信号出力端子509に現れる。
【0168】
調整回路506は、電源供給端子508,510に所定の定電圧(後述する出力回路モジュールが供給する定電圧値)を供給し、検知回路組立体500を動作可能な状態にしておき、所定の検知感度となるように複数の抵抗の一部を付け替えたり、レーザトリミングなどによって、発振回路501のゲインを調整するために使用される。
【0169】
なお、発振回路501は、金属物体の接近に応じて発振が停止/開始する回路でも、発振振幅は変化せず発振周波数が変化するような回路でもよい。カスタムIC511に内蔵する回路ブロックは、図示例に限定されるものではなく、必要によっては一部をICの外部に取り出してもよい。調整回路506は検知感度のバラツキが大きくなければあえて組み込まなくともよい。調整回路に同時にサーミスタなどを用いた温度補正回路を組み込んでも良い。
【0170】
検知回路組立体500を構成する検知コイル組立体としては、先に、図1乃至図11を参照して説明した検知コイル組立体404の第1乃至第7実施形態(変形例を含む)のいずれかが使用される。このような検知コイル組立体404には、コイル401並びにコア402が含まれており、このコイル401が図12の検知コイル504に相当する。検知回路組立体500に含まれる発振回路501にとって、検知コイル組立体404に含まれるコイル504は共振回路要素となる。
【0171】
図1乃至図11を参照して説明したように、検知コイル組立体404には、本体ケース405の存在が想定される特定周辺領域における導体検知感度を低下させるためのマスク導体が組み込まれている。
【0172】
検知回路組立体500の出力端子509からは、発振回路501の発振状態に応じた一定形態の信号が近接センサの物体検知信号として外部へと出力される。
この検知信号は二値化された信号である。
【0173】
検知回路組立体500の出力端子509から出力された物体検知信号を適宜に利用して出力段回路を構成することにより、近接センサから所望の形式の信号を出力することができる。これについては、後に詳細に説明する。
【0174】
以上説明した図12に示される検知回路組立体によれば、(1)近接センサの検知機能部分を出力回路部分から分離させたので、同一の検知回路組立体500を近接センサの異なる電源仕様・出力形態などに共用できる。加えて、接続するコイルの仕様に応じた発振・調整回路定数とし、また、検知距離もそれぞれの距離に応じて調整することで共用性の高い検出端モジュールが実現できる。
【0175】
さらに、従来近接センサ全体の回路を集積化していたことに比べて、格段に小規模の回路を集積するだけで済み、また、検知仕様の違いに対して異なるICの必要数も少なくできる(1種類の使用数量が大幅に増える)。これによってICの調達コストが大幅に下げられる。また、ICの設計変更、品質改善等が生じても、1つの種類のICを多くの近接センサの機種で共用できるので、多様な商品それぞれに個別で対応することなく、ICや検出端モジュールの変更を行うだけで対応できる場合が多くなる。
【0176】
図13には、本発明に係る検出端モジュールを構成する検知回路組立体の他の一実施形態(第2実施形態)の回路構成が示されている。同図において、501は発振回路、502は積分回路、513は基準閾値の異なる2系統の二値化信号を出力する弁別回路、504は検知コイル、505は共振コンデンサ、506は調整回路、507は積分用コンデンサ、514および515は出力端子、516は定電圧回路であり、それぞれ図27の従来例における該当回路要素と同様の動作を行うものである。これらの回路要素は適宜に集積化されて、後述するように、図示しない回路基板に搭載され、検知回路組立体500を構成する。
【0177】
この第2実施形態においては、検知回路組立体(第1実施形態)500の内部に定電圧回路516を設けたことにより、外部から供給される外部定電圧のわずかな変動に対してもより安定な内部定電圧が得られるため、検知感度をより高精度なものとすることができる。
【0178】
加えて、弁別回路513からは、基準閾値の異なる2系統の二値化信号が得られるため、発振回路の発振状態をより正確に認識することができ、検知対象物体の存在(物体有無のみならず、近いか遠いか等までも)をより精度よく検知することができる。
【0179】
なお、カスタムIC517には、発振回路501、積分回路502、弁別回路513、定電圧回路516が内蔵される。その他の構成については、図12に示された第1実施形態のものと同様であるから、同一符号を付すことにより、説明は省略する。
【0180】
発振回路の検知感度は、駆動する電圧の変動に極めて敏感であるが、第2実施形態の検知回路組立体によれば、検知回路組立体500内に定電圧回路516を設けたので、検知回路組立体500へ電源供給する定電圧が変動しても、検知感度を高精度に安定させることができる(言い換えれば、出力回路モジュールの定電圧はラフな精度で構成してもよい)。
【0181】
これによって、検出端モジュール生産ラインにおいて、検知感度調整時の駆動電源精度をラフに(安価に)でき、後で接続する出力回路モジュールの定電圧出力のばらつきによって、調整された検知感度がずれてしまうようなことは防止できる。
【0182】
図14には、本発明に係る検出端モジュールを構成する検知回路組立体の他の一実施形態(第3実施形態)の回路構成が示されている。同図において、501は発振回路、502は積分回路、504は検知コイル、505は共振コンデンサ、506は調整回路、507は積分用コンデンサ、518は発振回路501の発振状態に応じたアナログ信号を出力する出力端子であり、それぞれ図27の従来例における該当回路要素と同様の動作を行うものである。これらの回路要素は適宜に集積化されて、後述するように、図示しない回路基板に搭載され、検知回路組立体500を構成する。
【0183】
この第3実施形態においては、出力端子518からは積分回路502の出力が二値化されずにそのまま出力される。発振回路501としては、金属物体の接近距離に応じて概ねリニアに発振振幅が変化する特性を有するものが採用されるため、出力端子518に得られる検知信号も金属物体との距離に対して概ねリニアの出力電圧特性を示す。また、このように積分回路502の出力をそのまま外部へ出力するように構成すると、検知回路組立体500の外部で任意の閾値を基準として弁別処理を行うことが可能となり、その分だけ検知距離等に関する設計自由度が増すこととなる。
【0184】
なお、カスタムIC519には、発振回路501並びに積分回路502が内蔵される。その他の構成については、図12に示された第1実施形態のものと同様であるから、同一符号を付すことにより、説明は省略する。
【0185】
以上説明した図14に示される検知回路組立体(第3実施形態)500によれば、検出端モジュールの検知信号出力がアナログ出力(概ねリニア)であるため、出力回路モジュール側で任意に検知感度の調整(設定)ができる。そのため、発振回路定数を変更しないで済むため、多様なユーザニーズに対して、様々な商品提供が容易にできる。また、近接センサからの出力をアナログ出力とすることも可能となる。
【0186】
図15には、本発明に係る検出端モジュールを構成する検知回路組立体の他の一実施形態(第4実施形態)の回路構成が示されている。同図において、501は発振回路、502は積分回路、503は弁別回路、504は検知コイル、509は弁別回路503の二値化出力が検知信号として出力される出力端子、505は共振コンデンサ、506は調整回路、507は積分用コンデンサ、508及び510は電源供給端子、520は弁別回路503の弁別レベルを調整するための弁別レベル可変回路、521は調整用外部抵抗の接続端子、522は調整用可変抵抗である。これらのうちで既に説明済みのものについては、それぞれ図27の従来例における該当回路要素と同様の動作を行うものである。これらの回路要素は適宜に集積化されて、後述するように、図示しない回路基板に搭載され、検知回路組立体500を構成する。
【0187】
この第4実施形態においては、一旦調整された検知回路モジュール500の外部端子521,510の間に、予め設計された検知感度/抵抗値特性に応じた可変レンジを有する可変抵抗522を接続することで、検知感度を微調整することができる。
【0188】
なお、外部端子521からのデータ入力方法は可変抵抗の接続に限られるものではなく、例えば弁別レベル可変回路520にマイコンを組み込んでおき、所定のデータを入力する方法などでも構わない。
【0189】
以上説明した図15に示される検知回路組立体(第4実施形態)500によれば、検出端モジュールで検知感度が調整されているが、ユーザニーズに応じて検知感度を微修正したい場合などに、わざわざ出力回路モジュール側で弁別回路を構成して、検知感度調整をすることなく、容易に商品提供(設計・生産)ができる。
【0190】
図16には、図12に示した検知回路組立体(第1実施形態)500と別途製作した出力回路モジュール(出力回路組立体とも言う)(第1実施形態)とを使用して構成された近接センサの電気回路全体が示されている。
【0191】
なお、検知回路組立体(第1実施形態)500については、既に、図12を参照して詳細に説明したので、構成説明並びに動作説明については、重複を回避する。
【0192】
この出力回路組立体600の第1実施形態は、3線式出力方式に対応されている。すなわち、図において、601は論理回路、602は出力制御回路、603は出力トランジスタ、604,605は出力回路組立体600への電源供給端子、606は近接センサの出力端子、607は定電圧回路、608は短絡保護回路、609は電源リセット回路、610は表示回路、611は動作表示灯、612,614は検知回路組立体600の駆動電源を供給する定電圧端子、613は検知回路組立体の検知信号出力端子509からの信号を受け取るための検知信号入力端子である。621は出力回路組立体600の主要回路が1チップに内蔵されたカスタムIC(集積回路)である。
【0193】
同図において、検知信号入力端子613を介して出力回路組立体600に取り込まれた検知信号は、論理回路601にて論理処理(動作形態がノーマリオープンかノーマリクローズかに対応した反転又は非反転処理)された後、出力制御回路602へと供給される。すると、出力制御回路602の作用により、出力トランジスタ603が動作して、出力端子606に接続された負荷が駆動される。同時に、表示回路610が動作して、動作表示灯611が駆動される。
【0194】
出力トランジスタ603に過電流が流れると、短絡保護回路608が動作して、電源リセット回路609が起動され、出力制御回路602を介して出力トランジスタ603が遮断される。
【0195】
定電圧回路607は出力回路組立体600の各回路並びに検知回路組立体500に対して定電圧電源を供給している。
【0196】
なお、図では、出力段スイッチング素子の出力形式をNPNオープンコレクタ型出力としているが、PNPオープンコレクタ型であったり、また電圧出力型であったりしてもよい。
【0197】
図17には、図12に示した検知回路組立体(第1実施形態)500と別途製作した出力回路組立体(第2実施形態)を使用して構成された近接センサの電気回路全体が示されている。
【0198】
なお、検知回路組立体(第1実施形態)500については、既に、図12を参照して詳細に説明したので、構成説明並びに動作説明については、重複を回避する。
【0199】
この出力回路組立体600の第2実施形態は、直流2線式出力方式に対応されている。すなわち、図において、601は論理回路、602は出力制御回路、603は出力トランジスタ、608は短絡保護回路、609は電源リセット回路、610は表示回路、611は動作表示灯、615,616は出力回路組立体600への電源供給端子兼出力端子、612,614は検知回路組立体500の駆動電源を供給する定電圧端子、613は検知回路組立体500検知信号出力端子509からの信号を受け取る検知信号入力端子、617は定電圧回路である。618は出力回路組立体600の主要回路が1チップに内蔵されたカスタムIC(集積回路)である。
【0200】
同図において、検知信号入力端子613を介して出力回路組立体600に取り込まれた検知信号は、論理回路601にて論理処理された後、出力制御回路602へと供給される。すると、出力制御回路602の作用により、出力トランジスタ603が動作して、出力端子615に接続された負荷が駆動される。同時に、表示回路610が動作して、動作表示灯611が駆動される。
【0201】
定電圧回路617は出力回路組立体600の各回路並びに検知回路組立体500に対して定電圧電源を供給している。なお、図では、出力段スイッチング素子の出力形式を直流2線式出力としているが、交流2線式であってもよい。
【0202】
図18には、図13に示した検知回路組立体(第2実施形態)500と別途製作した出力回路組立体(第3実施形態)を使用して構成された近接センサの電気回路全体が示されている。
【0203】
なお、検知回路組立体(第2実施形態)500については、既に、図13を参照して詳細に説明したので、構成説明並びに動作説明については、重複を回避する。
【0204】
この出力回路組立体600の第3実施形態は、直流2線式出力方式に対応されている。すなわち、図において、602は出力制御回路、603は出力トランジスタ、608は短絡保護回路、609は電源リセット回路、610は表示回路、612,614は検知回路組立体500駆動電源を供給する定電圧端子、615,616は出力回路組立体600への電源供給端子兼出力端子、617は定電圧回路、619は論理回路である。618a,618bは検知回路組立体500の検知信号出力端子514,515からの検知信号を受け取るための検知信号入力端子である。611aは出力動作表示灯で、近接センサの出力動作状態を表示している。611bは設定表示灯で、使用環境によって検知距離が変動しても確実に検知できる設定位置であることを表示している。620は出力回路組立体600の主要回路が1チップに内蔵されて構成されたカスタムIC(集積回路)である。
【0205】
同図において、検知信号入力端子618a,618bを介して出力回路組立体600に取り込まれた検知信号は、論理回路619にて論理処理された後、出力制御回路602へと供給される。すると、出力制御回路602の作用により、出力トランジスタ603が動作して、出力端子615に接続された負荷が駆動される。同時に、出力動作表示灯611aが駆動される。また、出力制御回路602の作用により設定表示灯611bも駆動される。なお、検知対象物体の接近に伴う出力、出力動作表示灯611a、設定表示灯611bの変化は、図30の場合と同様である。定電圧回路617は出力回路組立体600の各回路並びに検知回路組立体500に対して定電圧電源を供給している。
【0206】
図19には、図14に示した検知回路組立体(第3実施形態)500と別途製作した出力回路組立体(第4実施形態)を使用して構成された近接センサの電気回路全体が示されている。
【0207】
なお、検知回路組立体(第3実施形態)500については、既に、図14を参照して詳細に説明したので、構成説明並びに動作説明については、重複を回避する。
【0208】
この出力回路組立体600の第4実施形態は、直流2線式出力方式に対応されている。すなわち、図において、602は出力制御回路、603は出力トランジスタ、608は短絡保護回路、609は電源リセット回路、610は表示回路、612,614は検知回路組立体500駆動電源を供給する定電圧端子、615,616は出力回路組立体600への電源供給端子兼出力端子、617は定電圧回路、619は論理回路である。622は検知回路組立体500の検知信号出力端子518からのアナログ検知信号を受け取るための検知信号入力端子である。611aは出力動作表示灯で、近接センサの出力動作状態を表示している。611bは設定表示灯で、使用環境によって検知距離が変動しても確実に検知できる設定位置であることを表示している。620は出力回路組立体600の主要回路が1チップに内蔵されて構成されたカスタムIC(集積回路)である。
【0209】
同図において、検知信号入力端子622を介して出力回路組立体600に取り込まれたアナログ検知信号は、弁別回路621にて所定閾値を基準に二値化され、さらに、論理回路619にて論理処理された後、出力制御回路602へと供給される。すると、出力制御回路602の作用により、出力トランジスタ603が動作して、出力端子615に接続された負荷が駆動される。同時に、出力動作表示灯611aが駆動される。また、出力制御回路602の作用により設定表示灯611bも駆動される。定電圧回路617は出力回路組立体600の各回路並びに検知回路組立体500に対して定電圧電源を供給している。
【0210】
図20には、図15に示した検知回路組立体(第4実施形態)500と別途製作した出力回路組立体(第2実施形態)を使用して構成された近接センサの電気回路全体が示されている。
【0211】
なお、検知回路組立体(第4実施形態)500については、既に、図15を参照して詳細に説明したので、構成説明並びに動作説明については、重複を回避する。
【0212】
この出力回路組立体600の第2実施形態は、直流2線式出力方式に対応されている。すなわち、図において、601は論理回路、602は出力制御回路、603は出力トランジスタ、608は短絡保護回路、609は電源リセット回路、610は表示回路、611は動作表示灯、615,616は出力回路組立体600への電源供給端子兼出力端子、612,614は検知回路組立体500の駆動電源を供給する定電圧端子、613は検知回路組立体500の検知信号出力端子509からの信号を受け取る検知信号入力端子、617は定電圧回路である。618は出力回路組立体600の主要回路が1チップに内蔵されたカスタムIC(集積回路)である。
【0213】
同図において、検知信号入力端子613を介して出力回路組立体600に取り込まれた検知信号は、論理回路601にて論理処理された後、出力制御回路602へと供給される。このとき、弁別回路503の弁別レベルは可変抵抗522の操作で微妙に調整することができる。そのため、この調整機能を使用することにより、既に調整が完了している検知回路組立体500であっても、さらに、微調整することで、最適な検知距離の設定が可能となる。このような微調整を介して得られた検知信号が端子613に取り込まれると、出力制御回路602の作用により、出力トランジスタ603が動作して、出力端子615に接続された負荷が駆動される。同時に、表示回路610が動作して、動作表示灯611が駆動される。定電圧回路617は出力回路組立体600の各回路並びに検知回路組立体500に対して定電圧電源を供給している。
【0214】
以上説明した図16〜図20からも明らかなように、本発明によれば、電源仕様・出力形態の異なる商品に対しても、同一の検知回路組立体500を使えるため、商品開発・部品調達・生産が容易にできる。その結果、開発コスト低減、開発期間短縮、部品種類数低減、少種大量部品調達による納期管理コスト・部品コストの低減、近接センサの機種の数に比べてはるかに少ない種類の数の検出端モジュールおよび出力回路モジュールを使用することによる生産設備の統一、段取り替えの低減による生産リードタイム短縮・生産コスト低減、と言った様々な効果が得られることとなる。
【0215】
図21には、図12に示した検知回路組立体(第1実施形態)500を2台用意すると共に、別途製作した出力回路組立体(第3実施形態)600を1台用意して構成された近接センサの電気回路全体が示されている。
【0216】
なお、検知回路組立体(第1実施形態)500については、既に、図12を参照して詳細に説明したので、構成説明並びに動作説明については、重複を回避する。
【0217】
図において、630はカスタムIC、631,634は検知回路組立体500に対する安定化電源の供給端子、632,633はそれぞれ検知回路組立体500からの検知信号を受け取る検知信号入力端子、635,636は出力回路組立体600に対する直流電源の供給端子兼出力端子、637は2系統の検知信号の論理演算を行う論理回路、638は出力制御回路、639は出力トランジスタ、640は出力回路組立体600並びに検知回路組立体500の双方に対して安定化直流電源を供給するための定電圧回路、641は短絡保護回路、642は電源リセット回路、643は表示回路、644は動作表示灯である。
【0218】
同図に示されるように、この近接センサ回路にあっては、検知回路組立体(第1実施形態)500を2台並列に接続し、それぞれの定電圧電源供給端子508,510を出力回路組立体600の定電圧端子631,634に接続し、検知信号出力端子509を出力回路組立体600の検知信号入力端子632,633に接続するようにしている。すると、入力端子632,633に与えられた検知信号は論理回路637にて論理処理(例えば、いずれかの検知回路組立体が物体を検知した場合に信号を出力する処理)されて、出力制御回路638へ検知信号が送られる。以降の動作は先に図18を参照して説明した通りである。
【0219】
以上説明した図21に示される回路構成によれば、多点検知のユーザニーズに対して、これまでは2個の近接センサを使っていたが、検知機能が出力回路機能から分離されたことで、複数の検知回路組立体500を組み合わせて、一つの出力回路組立体600に接続することで、1個の出力ブロックに相当する回路が削減できるので、生産コストを低くすることができる。また検知感度が調整された検知回路組立体を組み合わせるだけなので、多点ヘッドを内蔵させた状態でそれぞれの検知感度を揃えて調整するという複雑な調整が必要なくなる。
【0220】
次に、本発明に係る近接センサの特徴点を製品化の観点からより具体的に説明する。今までの説明で、本発明の近接センサは、コイル401、コア402、並びに、マスク導体406〜412を含む特性の完結された検知コイル組立体404と、検知コイル組立体404のコイル401を共振回路要素とする発振回路を含む検知回路組立体500と、負荷を駆動するためのパワー素子を含む出力回路組立体600とを有することが理解されるであろう。
【0221】
ここで、『組立体』なる語の意味は、英語のアセンブリー(assembly)に対応するもので、磁気部品、回路部品、構造部品等を一体に組み付けた状態を指している。本発明が適用された製品化システムでは、それらの組立体はさらに取り扱いが容易なように、幾つかの単位にモジュール化されることが好ましい。
【0222】
具体的には、検知コイル組立体404と検知回路組立体(検知回路搭載の回路基板)500とは、樹脂モールド技術等を利用して物理的に一体化され、これにより検出端モジュールが提供される。
【0223】
これに対して、出力回路組立体600については、それ自体を出力回路モジュールと呼ぶことができる。また、出力回路組立体をケース内で固定するための部材が出力回路組立体に取り付けられる場合にあっては、その部材も含めて出力回路モジュールと呼ぶこともできる。
【0224】
様々な商品バリエーションに柔軟に対応することを考慮すると、検出端モジュールの搭載回路には、少なくとも発振回路部品が含まれるであろう。また、出力回路モジュールの搭載回路には、パワー素子が含まれるであろう。
【0225】
しかし、それ以外の回路要素(特に、積分回路、弁別回路、定電圧回路、論理回路)をどちらのモジュールに含ませるかについては、必ずしも一概には論ぜられない。このことは、先に説明した図12〜図21の回路バリエーションを参照することにより容易に理解されるであろう。なお、出力回路モジュールと制御回路モジュールとに回路機能を分割してそれぞれを別々のモジュールとすることも考慮されるであろう。
【0226】
すなわち、本発明によれば、以下のような、近接センサの製品化システムを実現することができる。この製品化システムでは、コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする発振回路を含む検知回路組立体と、負荷を駆動するためのパワー素子を有する出力回路モジュールと、発振回路の発振状態に応じて出力段回路の動作を制御する制御回路組立体とが用意される。
【0227】
検知コイル組立体と検知回路組立体とは一体化されて検出端モジュールを構成する。このとき、検出端モジュールの検知コイル組立体には、どのようなケース本体が取り付けられても、検知出力が大きく変動しないように、マスク導体が組み込まれることが好ましい。
【0228】
出力回路モジュールは出力形式や電源電圧等の仕様別に用意される。
【0229】
制御回路組立体は、検出端モジュール側又は出力回路モジュール側に一括して組み込まれ、又は検出端モジュール側と出力段モジュール側とに適宜分割して組み込まれ、さらには、それ自体単独で制御回路モジュールを構成する。
【0230】
それにより、1の検出端モジュールと、その検出端モジュールに対応する一群の出力回路モジュールから選ばれた1の出力回路モジュールと組み合わせることにより製品が調製される。
【0231】
本発明による近接センサ製品化システムの具体的な一例に相当する生産工程が図22に示されている。同図において、最初の工程(A)では、コイル701と、フェライトコア702と、小型の長方形基板に発振回路等の回路部品を実装してなる検知回路実装基板703を用意し、それらを一体に組み付けて、組立途中品704を得る。
【0232】
次の工程(B)では、組立途中品704の電気的な接続対象箇所にレーザビーム照射することで、組立途中品704の該当箇所を半田付けする。
【0233】
次の工程(C)では、半田付けが完了した組立途中品704に対して、動作確認試験並びに外観検査を行う。
【0234】
次の工程(D)では、組立途中品704が収容されるべきコイルケース705を用意し、これに例えばポリウレタン樹脂を充填して、モールド一体化の準備を行う。なお、この例では、コイルケース705の外部には、その外周に沿うようにして真鍮、銅、アルミニウム等からなるマスク導体(例えば図3に示した鍔付円筒状マスク導体407)が予め装着されている。
【0235】
次の工程(E)では、樹脂の満たされたコイルケース705内に、組立途中品704を配置する。
【0236】
次の工程(F)では、例えば、常温で1時間程度放置することで樹脂を硬化させ、検出端モジュール706を得る。
【0237】
次の工程(G)では、レーザートリミング技術を利用して、規定の距離で動作が確実に行われるように距離調整を行う。このとき、調整は本体ケースを付けずに行うことができ、従来のように、ダミーケースの装着による様々な問題点を考慮する必要がない。これは、検出端モジュール706にマスク導体が組み込まれていることにより、検知特性が本体ケースの有無に拘わらず、殆ど変動しないからである。
【0238】
以上で、本体ケースの有無が検知特性にあまり影響しないようにした、換言すれば特性完結した検出端モジュール706が完成する。
【0239】
次の工程(H)では、さらに、特性検査を行って、信頼性を担保し、検査済み検出端モジュール707を得る。
【0240】
この検出端モジュール707は、近接センサに使用するための完成した部品として出荷するのにも好適である。また、他の業者によって製造された検出端モジュール707を入手して次の工程(I)から近接センサの製造を開始するようにしてもよい。
【0241】
工程(I)では、以上で得られた検査済み検出端モジュール707と、検知回路と出力回路との接続部材708と、別途製造された出力回路実装基板(出力回路モジュール)709とを用意し、半田又は導電性接着材を使用して、それらを熱圧着して一体化させ、全体回路付組立途中品710を得る。
【0242】
次の工程(J)では、全体回路付組立途中品710と、円筒状本体ケース(金属又は樹脂)711と、出力回路実装基板709(出力回路モジュール)を保持し表示灯(LED)の光を外部に導出するための出力回路モジュール支持部材(コードクランプ)712とを用意し、それらを圧入一体化して、ケース付組立途中品713を得る。
【0243】
次の工程(K)では、以上で得られたケース付組立途中品713に、樹脂注入並びに硬化を行うことで、ケースと部品との一体化を行う。
【0244】
次の工程(L)では、樹脂注入により一体化されたケース付組立途中品713にコード714を半田付けして、コード付組立途中品715を完成する。
【0245】
次の工程(M)では、コード714の引き出し端部にコード保持部(プロテクタ)716を被せることによりプロテクタ成形処理を行ってコード714の保護を確実なものとする。
【0246】
最後の工程(N)では、耐電圧並びに特性検査を行って、近接センサの製品717が完成する。
【0247】
上記工程(A)〜(N)を通じて製作される近接センサの具体的一例を図38〜図44を参照しつつ説明する。
【0248】
図38は、上記工程(A)〜(N)を通じて作成されるシールドタイプの近接センサを示す分解斜視図である。なお、同図に示される符号は、図22で示したものに対応している。
【0249】
この近接センサは、上記工程(A)〜(C)における組立途中品704を構成するコイル(スプール)701、フェライトコア702、及び検知回路組立体703と、工程(D)〜(H)においてこの組立途中品704に装着されて検出端モジュール707(706)を構成するマスク導体700が装着されたコイルケース705と、工程(I)において検知回路組立体703と電気的に接続される出力回路モジュール709と、検知回路組立体703と出力回路モジュール709とを橋渡しして電気的に接続する接続部材708と、工程(J)〜(K)においてコイルケース705と一体化される円筒状本体ケース711と、出力回路モジュール709を保持して本体ケース711と一体化されるコードクランプ(出力回路モジュール支持部材)712と、工程(L)においてこのコードクランプ712に半田付けされるコード714と、工程(M)においてコード714に対するプロテクタとして取り付けられるコード保持部716とを有している。
【0250】
図38に示した検出端モジュール707の詳細構成を図39に示す。同図中(a)は検出端モジュール707の斜視図、図中(b)は検出端モジュール707の中央断面図、図中(c)は図中(b)に示される部分“A”の拡大図、それぞれ示している。
【0251】
なお、図中(b)においてはコイル巻線の図示は省略されている。また、検知回路組立体703については基板断面のみをハッチングで示し、基板上の部品についてはその断面形状のみを概略的に示す。後述する図40乃至図44についても同様とする。
【0252】
図39に示されるように、この例では、有底円筒状のコイルケース705の外周面先端部にはマスク導体700が設けられている。このマスク導体700には、先に図33(第2実施形態の変形例)で示したタイプ(鍔付円筒状)のものが適用されている。図中(b)に示されるように、この例では、マスク導体700の鍔部先端700aは外側に向けて突出されている。このようにマスク導体をコイルケース705の外周面に配置することにより、マスク導体とセンサ内部回路との間での放電を回避している。
【0253】
また、図中(a)に示されるように、この例では、十字形状の検知回路組立体703は、コイルケース705の中央内部に起立状態で配置されているのが確認される。
【0254】
図38に示される近接センサ717の断面図が図40,図41に示されている。
【0255】
なお、同図においては、出力回路モジュール709については、基板断面のみがハッチングで示され、基板上の部品(LED709aを含む)についてはその断面形状のみが概略的に示されている。また、コードクランプ(出力回路モジュール支持部材)712については、一部破断状体でその形状を概略的に示す。後述する図43,図44についても同様とする。
【0256】
この例では、本体ケース711として、全長の短いショートタイプ711A(図40参照)と、全長の長いロングタイプ711B(図41参照)の2タイプのものが用意されている。図40は、ショートタイプ711Aを使用した近接センサ717Aを、図41は、ロングタイプ711Bを使用した近接センサ717Bをそれぞれ示している。
【0257】
図40、図41の比較から明らかであるように、この例では、共通のフレキシブルな接続部材(接続長が可変のハーネス等の接続部材)708を用いることにより、その他の部品構成を変更することなく、ロングタイプ、ショートタイプのいずれの本体ケースをも装着可能としている。なお、いずれのタイプの本体ケースを装着するかについては、近接センサの使用環境等を考慮して適宜決定される。
【0258】
より詳細には、接続部材708は、ポリイミドを基材とし、その上に検出端モジュール707と出力回路基板モジュール709とを電気的に接続するのに必要な本数の平行な配線が形成された接続長が可変のハーネス(フレキシブル基板)である。なお、接続部材708としては、単なるリード線やリジッドなガラスエポキシ基板等を使用することもできる。
【0259】
この例では、接続部材708の中央は山型にフォーミングされている。ショートタイプの本体ケース711Aを装着するときは、図40に示されるように、組み立てられた後の接続部材708はフォーミングされたままの形状を維持している。一方、ロングタイプの本体ケース711Bを装着するときには、接続部材708のフォーミングされた部分がなだらかに延びた状態になる。なお、この例ではショートタイプの本体ケース711Aに適用した場合に、接続部材709が本体ケース711Aの内面に接触しないように配慮されている。
【0260】
このように接続部材708の全長とフォーミング形状とは、ショートタイプの本体ケース711Aとロングタイプの本体ケース711Bの両方に適用できるように予め規定される。したがって、本体ケース711の長さに拘わらず、1種類の接続部材を使用できるので、接続部材の在庫管理とコストダウンが容易になる。また、
【0261】
なお、接続部材は、ロングタイプ711Aとショートタイプ711Bとに対してそれぞれ最適な長さのものを別個に用意するようにしてもよい。例えば長尺なフレキシブル基板のロールからセンサ組立に使用する本体ケースに適した長さの接続部材をその都度切り出して使用するような場合が想定される。
【0262】
なお、コードクランプ712について説明すると、このコードクランプ712は、透明な樹脂で成形されており、この例では、出力回路モジュール709の回路基板上に設けられたLED709aから出た光を外部に導出するように構成されている。すなわち、コードクランプ712には、長方形の孔(貫通孔)が設けられており、ここから回路基板の一部(電気コード714をはんだ付けする部分)が露出している。なお、この回路基板はコードクランプ712に対して熱カシメで固定される。
【0263】
次に、図22で示した工程(A)〜(N)を通じて制作される非シールドタイプの近接センサを図42〜図44に示す。
【0264】
図42は、非シールドタイプの近接センサに係る検出端モジュール707の詳細を示す図である。なお、組立部品(700〜716)の構成は、図38に示したシールドタイプのものと同様である。
【0265】
図42中(a)は非シールドタイプの検出端モジュール707の斜視図、図中(b)は、検出端モジュール707の中央断面図、図中(c)は図中(b)に示される部分“B”の拡大図をそれぞれ示している。
【0266】
この例で使用されるフェライトコア702は、断面T字状であり、コイルスプール701の外側にはフェライトコア702が存在しないため、シールド効果は劣るものの、検知距離(検知性能)がシールドタイプのものよりも向上されている。また、この例では、コイルケース705の外周面後端部には、先に図36(第5実施形態の変形例)で示したタイプ(鍔付円筒状)マスク導体700が設けられている。
【0267】
この非シールドタイプの近接センサの組立断面図を図43,図44に示す。図43は本体ケースとしてショートタイプ711Aを使用した場合を、図44は本体ケースとしてロングタイプ711Bを使用した場合をそれぞれ示している。なお、これらの図に明らかであるように、この非シールドタイプの近接センサにあっては、コイルケース705の先端面が、シールドタイプのそれに比して本体ケース711よりも前方に突出しているのが理解される。
【0268】
非シールドタイプの近接センサにあっても、共通のフレキシブルな接続部材708を用いることにより、その他の部品構成を変更することなく、ロングタイプ、ショートタイプのいずれの本体ケースをも装着可能としている。なお、接続部材708については、シールドタイプで使用したものと同様であるので詳細については省略する。
【0269】
次に、上述した近接センサの販売に係るビジネス手法としての本発明に係る機種選定支援方法について説明する。
【0270】
図45は、機種選定支援方法を実現する一実施例としての機種選定支援システムの全体構成を示す図である。なお、先に概略を説明すると、この機種選定支援システムは、予め用意された複数種の検出端モジュール、出力回路モジュール、並びに本体ケースからそれぞれ1つずつを選択し、それらの組み合わせによって顧客の要求する仕様を満足する近接センサ機種を提供するため、顧客によるセンサ機種の選定をインターネットを通じて支援することを目的としている。
【0271】
同図に示されるように、この機種選定支援システムは、顧客側のコンピュータ端末機1602と、機種選定支援のための後述する各種Webページを顧客側コンピュータ端末機1602に提供する支援サーバ1601と、顧客側コンピュータ1602と支援サーバ1601とを結ぶ通信ネットワーク(インターネット)1600とからなる。
【0272】
支援サーバ1601は、機種仕様データベース1601aを有している。このデータベース1601aには、機種選定支援に係る各種Webページの内容を構成するのに必要な各種仕様データが格納されている。
【0273】
顧客側コンピュータ端末機1602は、市販のパーソナルコンピュータであり、顧客の操作によりブラウザを実行してサーバから提供されるWebページをディスプレイ上に表示する。
【0274】
図46は、本実施の形態の機種選定支援システムで用意されている検出端モジュールの仕様一覧を表形式で示す図である。この例では、同図中、○印に対応する仕様を有する検出端モジュール(全42種類)が用意されている。
【0275】
同図中、“M8”,“M12”,“M18”,“M30”は外径種別、“距離レンジ×1”,“距離レンジ×1.5”,“距離レンジ×2”は、検知距離種別をそれぞれ示している。それぞれの検知距離種別は、さらに、シールド・非シールド、標準周波・異周波の種別に基づきそれぞれ4つに分類されている。
【0276】
例えば左上隅の○印は、コイル外径がM8、距離レンジが1倍、シールド有り、標準周波、という仕様の検出端モジュールを意味している。
【0277】
なお、“M8”は、M8仕様の本体ケースに適合する大きさであることを意味する。M12,M18,M30についても同様である。
【0278】
“シールド”は、シールド仕様(シールドあり)の本体ケースと組み合わせることができることを意味する。“非シールド”は、非シールド仕様(シールドなし)の本体ケースと組み合わせることができることを意味する。
【0279】
“標準周波”,“異周波”は、検知回路の発振周波数に関係する。通常は標準周波に対応する発振周波数の仕様の近接センサが用いられるが、他の近接センサとの相互干渉を避けたい場合に異周波に対応する発振周波数の仕様の近接センサが用いられる。
【0280】
図47は、距離レンジ倍率(×1,×1.5,×2)と検知距離(mm単位)との対応関係を表形式で示す図である。
【0281】
“距離レンジ倍率”は、検知距離の簡便な表現である。図47に示されるように、外径とシールド/非シールドとの組み合わせのそれぞれに対して、距離レンジ1倍、1.5倍、2倍と表現される3種類の検知距離が定められている。
【0282】
図48は本実施形態の機種選定支援システムで用意されている本体ケースの仕様一覧を表形式で示す図である。この例では、同図中、○印に対応する仕様を有する本体ケース(全22種類)が用意されている。
【0283】
同図中、“M8”,“M12”,“M18”,“M30”は外径種別、“ショートボディ”,“ロングボディ”は、本体ケースの長さについての仕様種別をそれぞれ示している。それぞれの仕様種別は、さらに、ステンレス・黄銅、シールド・非シールドの種別に基づきそれぞれ4つに分類されている。
【0284】
なお、“M8”は、本体ケースの外面にM8のメートルネジが形成されていることを意味する。M12,M18,M30についても同様である。
【0285】
“ステンレス”、“黄銅(真鍮)”は、本体ケースの材質種別を示している。
【0286】
“シールド”は、コイルケースの側面部分を覆う形状のシールド用本体ケースであることを意味する。“非シールド”は、検知コイルの側面部分を露出させる形状の非シールド用本体ケースであることを意味する。
【0287】
図49は本実施の形態の機種選定支援システムで用意される出力回路モジュールの仕様一覧を表形式で示す図である。同図中、○印に対応する仕様を有する出力回路モジュールが用意されている。ただし、縦に並んだ○印は同じ種類の出力回路モジュールである。すなわち、出力回路モジュールは、いずれの外径(M8〜M30)に対しても同じものが使用される。したがって、出力回路モジュールの種類の数は表の列の数で表され、同図中に示されるように全部で15種類が用意されている。
【0288】
図中、“PNPオープンコレクタ出力”,“NPNオープンコレクタ出力”“直流2線”,“NPN電圧出力”,“PNP電圧出力”は、出力形態の仕様種別をそれぞれ示している。なお、直流2線以外の仕様は直流3線の出力形態である。
【0289】
更に、上記出力形態に基づく仕様種別は、NO(ノーマリオープン)・NC(ノーマリクローズ)、DC10−30V・DC10−55Vまたは自己診断無し・自己診断有りの種別に基づきそれぞれ4つに分類されている。
【0290】
ここで、“NO(ノーマリオープン)”、“NC(ノーマリクローズ)”は、動作形態の仕様、“DC10−30V”、“DC10−55V”は、使用電圧範囲の仕様をそれぞれ示している。また“自己診断有”、“自己診断無”は、自身(近接センサ)に予め定められた種の故障が発生しているか否かを診断してその結果を外部に報知する機能の有無を表している。
【0291】
本実施の形態では、更に、複数用意された接続方式の中から1つの接続方式を選択して近接センサを構成し得るようにされている。図50には、本実施の形態の機種選定支援システムで用意されている接続方式の仕様一覧が表形式で示されている。
【0292】
同図中、○印に対応する仕様を有する接続方式(全22種類)が用意されている。接続方式は、各外径(M8〜M30)ごとに、プリワイヤ2m,プリワイヤ5m,特殊ケーブル2m,コネクタ中継M12,M12コネクタ4pin,コネクタ中継M8,M8コネクタ4pinのいずれかの仕様を指定することができる。
【0293】
ここで、“プリワイヤ2m”、“プリワイヤ5m”は、それぞれ2m,5mの長さのコードを備えたコード引き出し方式を意味している。“特殊ケーブル2m”は、2mの長さの特殊ケーブルを備えたコード引き出し方式を意味している。“コネクタ中継M12”、“M12コネクタ4pin”、“コネクタ中継M8”、“M8コネクタ4pin”はコネクタ接続方式を意味し、それぞれ使用されるコネクタの種類を表している。
【0294】
機種仕様データベース1601aに格納されるセンサ機種毎のデータの内容が図51に表形式で示されている。
【0295】
同図中、“センサ1”、“センサ2”、“センサ3”は、上述した各部品毎の仕様の組み合わせにより提供可能な近接センサのセンサ機種の通し番号を表す。なお、同図には“センサ3”までしか示されていないが、実際には、センサ機種数は1万以上ある。このデータベースには、すべてのセンサ機種毎にその仕様内容(同図中“項目”の欄で示される検知方式,形状等々)が登録されている。なお、“項目”の欄には、仕様のほかにも、形式(機種の名称、図51では“カタログ形式”と表記)、標準価格、標準在庫機種か受注生産機種かなどの区別等も同時に登録されている。
【0296】
図51で示したデータベース(機種仕様データベース)を作成するための検出端モジュール仕様データ、本体ケース仕様データ、出力回路モジュール仕様データの内容が図52に表形式で示されている。
【0297】
同図中(a)に示されるように、この例では、検出端モジュールの種類ごとの仕様データが用意される。本体ケース、出力回路モジュールについても同様である(図中(b),図中(c)参照)。なお、図示は省略するが、接続方式についても同様に仕様データが用意されている。以下、これらの仕様データを総称してモジュール仕様データという。このモジュール仕様データは、近接センサ提供者側の任意のコンピュータ(図1のサーバに限らない)の記憶装置に記憶されている。
【0298】
図51に示した機種仕様データベースは、検出端モジュール、本体ケース、出力回路モジュール、接続方式の可能な組み合わせに対応して、コンピュータを用いてモジュール仕様データを組み合わせて作成される。以下に、本発明に係る機種仕様データベースの作成方法について説明する。
【0299】
機種仕様データベースの“項目”によってモジュール仕様データの組み合わせ方法は異なる。機種仕様データベースの多くの項目については、検出端モジュール、本体ケース、出力回路モジュールおよび接続方式のいずれかの仕様データの項目の内容がそのままコピーされる。
【0300】
機種仕様データベースの一部の項目については、複数の仕様データの数値を演算して近接センサの仕様の値を求める場合がある。例えば、近接センサの消費電流は検出端モジュールの消費電流と出力回路モジュールの消費電流とを足し合わせることにより求められる。このような場合、機種仕様データベースのどの項目をどのモジュール仕様データの項目からコピーし、機種仕様データベースのどの項目をどのような演算によって求めるかについては予め規則を定めておくようにする。
【0301】
機種仕様データベースの項目の中には、仕様データに基づくのではなく、その内容が別途入力されるものもある。先に述べた標準価格および標準在庫機種か受注生産機種かの区別はその例である。形式については、近接センサの仕様に基づく命名規則を定めて仕様データから自動作成される。
【0302】
検出端モジュール、本体ケース、出力回路モジュール、接続方式のある特定の組み合わせが可能かどうかは、提供者側のコンピュータの記憶装置に記憶された禁止情報を参照して判断される。
【0303】
禁止情報の1つは、検出端モジュールと本体ケースの組み合わせに関するものである。この場合の禁止情報は例えば次の条件であり、そのいずれかに該当する組み合わせは「禁止」とされる。
・「外径(サイズ)が異なる」
・「シールドタイプか非シールドタイプかが異なる」
【0304】
検出端モジュールと出力回路モジュールの組み合わせ、本体ケースと接続方式の組み合わせ、出力回路モジュールと接続方式の組み合わせ、本体ケースと出力回路モジュールの組み合わせについても必要に応じて禁止情報が用意されている。
【0305】
以上説明した機種仕様データベース作成方法を実行するためのコンピュータプログラムが近接センサ提供者側の記憶装置に用意され、このプログラムを実行することにより、機種仕様データベース1601aが作成される。
【0306】
機種選定支援に係るサーバ1601の動作内容の概略が図53のフローチャートに示されている。サーバ1601は、顧客のコンピュータから要求があると、まず、機種選定用Web画面を顧客のコンピュータに送信する(ステップ5301)。
【0307】
顧客側コンピュータ1602で表示される機種選定画面の一例を図54に示す。機種選定画面には、複数の仕様項目(外径・ケース材質,シールド,検知距離等々)が表示される。顧客は、各仕様項目毎に用意されたプルダウンメニューから所望の仕様内容を選択する。なお、同図中右側にプルダウンメニューの表示例として、仕様項目“外径”,“出力形態”についての表示態様を上下に並べて示す。また、各仕様項目毎に用意された仕様内容の一覧を図55に表形式で示す。
【0308】
なお、図55中、仕様項目の1つである“検知距離”は、距離範囲で指定するようになっている。この場合、検知距離仕様が指定された範囲内にある近接センサが検索される。
【0309】
この例では、最初はすべての仕様項目に「指定しない」が表示される。顧客は、自分の用途にとって重要と考える仕様項目だけを入力することができる。顧客は入力が終わったら、図54に示した機種選定画面上の「検索」ボタンをクリックして検索実行を指示する(図53のフローチャート中、ステップ5302)。これにより、サーバ1601は、入力された仕様条件に該当するセンサ機種を機種仕様データベース1601aに検索し、検索結果画面を該当する顧客側コンピュータ1602に送信する(ステップ5304)。
【0310】
顧客側コンピュータ1602で表示される検索結果画面の一例を図56に示す。この例は、入力された仕様条件に該当するセンサ機種が4つあった場合を示している。画面上左側にはセンサ機種の識別情報としての形式名(E2E−X7D1等)が表示されている。
【0311】
図54で示した機種選定画面では動作形態(NO,NC)は入力することができない(入力可能な一部の仕様条件に非該当である)が、図56に示されるように、仕様条件検索結果画面ではこの動作形態(NO,NC)が示されている。また、そのセンサ機種が標準在庫である場合には、項目“標準在庫”の欄にマーク(この例では◎)が示され、優先的にリスト上段に表示される。なお、標準在庫機種のマークがない機種は受注生産機種であり、標準在庫機種より下段に表示される。また、この例では、各機種の納期も表示される。
【0312】
また、この例では、検索結果画面を通じて、「商品の注文は○○株式会社へお願いいたします。」のように、注文方法(購入方法)が案内される。このとき「○○株式会社」の部分はその会社のWebページへのリンクに設定しておく。
【0313】
この検索結果画面上で、顧客により「E2E−X7D1」等の形式名の表示部分がクリックされると、サーバ1601は、選択された形式名で特定される機種の個別情報を送信する(図53のフローチャート中、ステップ5307)。これにより、顧客側コンピュータには機種個別情報画面が表示される。一方、検索結果画面上で顧客により「戻る」ボタンがクリックされた場合には、顧客側コンピュータ端末機1602には、先の機種選定画面(図54)が再度表示される。
【0314】
機種個別情報画面の一例を図57に示す。この画面上では、同図中符号Aで示される仕様表、符号Bで示される検知特性グラフ(対象物体の材質をパラメータとし、横軸が検知距離の一辺の長さ、縦軸が距離のグラフ)、符号Cで示されるタイムチャート(検知距離までの距離を横軸とし、設定表示灯および動作表示灯の点灯/消灯、制御出力のON/OFFを示したグラフ)、符号Dで示される出力回路方式を示す回路図、および符号Eで示される外形寸法図が表示される。なお、この画面上において「戻る」ボタンが選択(クリック)されると、図54に示した検索結果画面が再表示されることとなる。
【0315】
顧客は、このような機種選定支援システムを通じて、自己の所望する近接センサ機種を容易に選定することができる。また、本実施形態で示される機種選定支援システムはインターネットを利用したものであるから、時間を気にせず何人でも気軽に利用することができる。無論、パスワード等を利用して、予め契約されたもののみ利用が可能、といったように利用体系を定めることもできる。
【0316】
なお、機種選定後の商品購入申し込み態様については、種々のものが適用可能である。例えば、この機種選定支援システムを通じて電子メール、電話、ファクシミリまたは郵便等による購入申し込み方法の案内をするようにしてもよい。また他の一例としては、顧客側のコンピュータ1602を介して仕様条件を満たす機種を提示した後に、当該提示した機種の購入申し込みをインターネット上で受け付けるようにしてもよい。この他にも当業者であれば種々のものが想定されるであろう。
【0317】
最後に、図2,図4,図7,及び図9のそれぞれで示した近接センサ(検知コイル組立体)の検知特性グラフの詳細(内容)について説明する。ここでは、本発明をより一層明確なものとするため、これまでの記載と一部重複するが、従来の近接センサ(図58(a)参照)と本発明に係る近接センサのそれぞれについての実測結果に基づく検知特性グラフを示し、両者の比較を通じて本発明の実用性を実施レベルで検証するものとする。
【0318】
図59は従来の近接センサを使用して得られた検知特性グラフを、図60は本発明に係る近接センサを使用して得られた検知特性グラフをそれぞれ示している。なお、従来近接センサには、図58中(a)でその概略が示される検知コイル組立体1000が適用されている。また、本発明に係る近接センサには、先に図36で示した検知コイル組立体404が適用されている。いずれの検知コイル組立体も非シールドタイプのものであり、両者の異なる点はマスク導体4100の有無のみである。
【0319】
検知特性グラフで使われている用語は以下のように定義されている。
「In」:近接センサの検知面から任意の検知対象物体(図58中、符号M1)までの距離(グラフ横軸(mm))
「Ion」:有無検知(2値化)型の近接センサにおいて、出力が反転するときの検知対象物体(同図中、符号M2)までの距離(定格検知距離)
「g」:検知コイル組立体のコイル1001(401)を図58中(b)に示すように共振コンデンサ1006(505)に接続することにより構成されるLC共振回路両端のコンダクタンス値(グラフ縦軸(g))
「gon」:有無検知型の近接センサにおいて、出力が反転するときのコンダクタンス値(閾値)
【0320】
検知特性グラフ(図59、図60)において、「特性a」で示される曲線は本体ケースとして樹脂製のものを使用して測定したときのコンダクタンス値(g)の変化を、「特性b」で示される曲線は黄銅C3604製の本体ケースで測定したときのコンダクタンス値(g)の変化を、「特性c」で示される曲線はステンレスSUS303製の本体ケースで測定したときのコンダクタンス値(g)の変化をそれぞれ示している。
【0321】
また、特性a曲線上の点A、特性b曲線上の点B、並びに特性c曲線上の点Cは、直線In=4(mm)と各特性曲線との交点を示している。また、特性b曲線上の点D、並びに特性c曲線上の点Eは、直線g=gonと各特性曲線との交点を示している。
【0322】
ここでは、樹脂製本体ケースを使用した場合の定格検知距離Ionが4mmとなるように閾値gonを設定した場合を例にとる。
【0323】
図59に示すように、従来近接センサにおいて黄銅製の本体ケースを使用すると、同様の閾値gonの場合、検知距離は特性b曲線上の点Dで示される4.8mmとなる。すなわち、樹脂製本体ケースを使用した場合に比べて0.8mm(△I1)だけ検知距離が長くなる。また、従来近接センサにおいてステンレス製の本体ケースを使用すると、同様の閾値gonの場合、特性c曲線と直線‘(g)=gon’とが交差しない。すなわち、樹脂製本体ケースを使用した場合に比べて∞mm(△I2)だけ検知距離が長くなると言える。
【0324】
このように、従来近接センサにあっては、本体ケースの違いによる検知距離変動△Iが±20%(0.8mm〜∞/4.0mm)以上と大きかったため、黄銅製の本体ケースを取り付けた場合には、閾値gonを△g1(点Aと点Bとのコンダクタンス値の差)増加し、またステンレス製の本体ケースを取り付けた場合には閾値gonを△g2(点Cと点Aとのコンダクタンス値の差)増加することにより、定格検知距離Ion(4mm)を調整させる必要があった。
【0325】
これに対し、図60に示されるように、本発明近接センサにあっては、閾値gonを一定とした場合、黄銅製の本体ケースでは検知距離は3.8mm(点D)、ステンレス製本体ケースでは検知距離は4.2mm(図60点E)であり、樹脂製本体ケースを使用した場合の4mmと比べて、その差は±0.2mm(△I1,△I2)と小さなものである。すなわち、本体ケース材質による検知距離変動△Iが±5%(従来の1/4)が達成されている。このことは、本発明に係る近接センサの検知特性は、従来のマスク導体を有しない近接センサとの比較において、本体ケースの材質にはほとんど影響されないものであることを実証している。
【0326】
このため、本発明にあっては、本体ケース取り付け後、閾値gonを変更して定格検知距離Ionを再調整するといった煩わしい作業が不要となり、結果、先述したような(1)設計工数・コストが低減できること、(2)部品集約ができ、部品コストが低減できること、(3)近接センサの異なる機種を同一ライン、工程で生産することが可能になること、(4)検知距離のバラツキを小さくできること、(5)センサ部と本体ケースとの組立位置合わせが簡易化できること、(6)検知距離の調整方法の簡易化が図れること、と言ったような様々な効果を得ることを可能とした。
【産業上の利用可能性】
【0327】
以上のように、本発明は、金属体等の接近を磁界を介して非接触で検知する誘導型の近接センサとして有用であり、特に、製造コストを抑制しつつも、ユーザのニーズに柔軟に対応できる豊富な品揃えを実現するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0328】
【図1】検知コイル組立体の第1実施形態の構造説明図である。
【図2】検知コイル組立体の第1実施形態(シールドタイプ/円筒形状マスク導体)の検知特性を示すグラフである。
【図3】検知コイル組立体の第2実施形態の構造説明図である。
【図4】検知コイル組立体の第2実施形態(シールドタイプ/鍔付き形状マスク導体)の検知特性を示すグラフである。
【図5】検知コイル組立体の第3実施形態の構造説明図である。
【図6】検知コイル組立体の第4実施形態の構造説明図である。
【図7】検知コイル組立体の第4実施形態(非シールドタイプ/円筒形状マスク導体)の検知特性を示すグラフである。
【図8】検知コイル組立体の第5実施形態の構造説明図である。
【図9】検知コイル組立体の第5実施形態(非シールドタイプ/鍔付き形状マスク導体)の検知特性を示すグラフである。
【図10】検知コイル組立体の第6実施形態の構造説明図である。
【図11】検知コイル組立体の第7実施形態の構造説明図である。
【図12】検知回路組立体の第1実施形態を示す回路図である。
【図13】検知回路組立体の第2実施形態を示す回路図である。
【図14】検知回路組立体の第3実施形態を示す回路図である。
【図15】検知回路組立体の第4実施形態を示す回路図である。
【図16】検知回路組立体(第1実施形態)と出力回路組立体(第1実施形態)とを組み合わせて構成された近接センサ回路の全体構成を示す回路図(その1)である。
【図17】検知回路組立体(第1実施形態)と出力回路組立体(第2実施形態)とを組み合わせて構成された近接センサ回路の全体構成を示す回路図(その2)である。
【図18】検知回路組立体(第2実施形態)と出力回路組立体(第3実施形態)とを組み合わせて構成された近接センサ回路の全体構成を示す回路図(その3)である。
【図19】検知回路組立体(第3実施形態)と出力回路組立体(第4実施形態)とを組み合わせて構成された近接センサ回路の全体構成を示す回路図(その4)である。
【図20】検知回路組立体(第4実施形態)と出力回路組立体(第2実施形態)とを組み合わせて構成された近接センサ回路の全体構成を示す回路図(その5)である。
【図21】2台の検知回路組立体(第1実施形態)と出力回路組立体(第3実施形態)とを組み合わせて構成された近接センサ回路の全体構成を示す回路図(その6)である。
【図22】本発明に係る検出端モジュールを使用した近接センサの製造工程を示す工程図である。
【図23】検知コイル組立体の従来例1の構造説明図である。
【図24】検知コイル組立体の従来例1(シールドタイプ/円筒状部材なし)の場合の検知特性を示すグラフである。
【図25】検知コイル組立体の従来例2の構造説明図である。
【図26】検知コイル組立体の従来例2(非シールドタイプ/円筒状部材なし)の場合の検知特性を示すグラフである。
【図27】従来例1に相当する直流3線式近接センサの回路構成を示すブロック図である。
【図28】従来例2に相当する直流2線式近接センサの回路構成を示すブロック図である。
【図29】従来例2における発振・積分・弁別回路の具体的構成を示す回路図である。
【図30】従来例2における動作タイムチャートである。
【図31】従来の製造工程を示す工程図である。
【図32】検知コイル組立体の第1実施形態の変形例を示す図である。
【図33】検知コイル組立体の第2実施形態の変形例を示す図である。
【図34】検知コイル組立体の第3実施形態の変形例を示す図である。
【図35】検知コイル組立体の第4実施形態の変形例を示す図である。
【図36】検知コイル組立体の第5実施形態の変形例を示す図である。
【図37】検知コイル組立体の第6実施形態の変形例を示す図である。
【図38】本発明の近接センサの生産方法により製作されるシールドタイプの近接センサを示す分解斜視図である。
【図39】本発明の近接センサの生産方法により製作されるシールドタイプの検出端モジュールの詳細構成を示す図である。
【図40】ショートタイプの本体ケースが取り付けられたシールドタイプの近接センサの断面図である。
【図41】ロングタイプの本体ケースが取り付けられたシールドタイプの近接センサの断面図である。
【図42】本発明の近接センサの生産方法により製作される非シールドタイプの検出端モジュールの詳細構成を示す図である。
【図43】ショートタイプの本体ケースが取り付けられた非シールドタイプの近接センサの断面図である。
【図44】ロングタイプの本体ケースが取り付けられた非シールドタイプの近接センサの断面図である。
【図45】本発明の機種選定支援方法を実現するための機種選定支援システムの全体構成を示す図である。
【図46】機種選定支援システムで用意されている検出端モジュールの仕様一覧を表形式で示す図である。
【図47】距離レンジ倍率と検知距離との対応関係を表形式で示す図である。
【図48】機種選定支援システムで用意されている本体ケースの仕様一覧を表形式で示す図である。
【図49】機種選定支援システムで用意されている出力回路モジュールの仕様一覧を表形式で示す図である。
【図50】機種選定支援システムで用意されている接続方式の仕様一覧を表形式で示す図である。
【図51】機種仕様データベースに格納されるセンサ機種毎のデータの内容を表形式で示す図である。
【図52】機種仕様データベースを作成するための検出端モジュール仕様データ、本体ケース仕様データ、出力回路モジュール仕様データの内容を表形式で示す図である。
【図53】機種選定支援システムを構成するサーバの動作内容の概略をフローチャートで示す図である。
【図54】顧客側コンピュータで表示される機種選定画面の一例を示す図である。
【図55】機種選定画面で表示される各仕様項目毎に用意された仕様内容の一覧を表形式で示す図である。
【図56】顧客側コンピュータに表示される検索結果画面の一例を示す図である。
【図57】顧客側コンピュータに表示される機種個別情報画面の一例を示す図である。
【図58】従来の近接センサの検知回路組立体の構成およびグラフで使用される用語を説明するための図である。
【図59】従来の近接センサを使用して得られる検知特性グラフである。
【図60】本発明に係る近接センサを使用して得られる検知特性グラフである。
【符号の説明】
【0329】
401 コイル
402 フェライトコア
403 コイルケース
403a 段差部
404 コイル組立体
405 本体ケース(外殻ケース)
406 マスク導体
407 鍔付マスク導体
407a 円筒状本体部
407b 円環状鍔部
408 円環状マスク導体
409 円筒状マスク導体
410 鍔付マスク導体
410a 円筒状本体部
410b 円環状鍔部
411 円環状マスク導体
412 円盤状マスク導体
500 検知回路組立体
501 発振回路
502 積分回路
503 弁別回路
504 検知コイル
505 共振コンデンサ
506 調整回路
507 積分用コンデンサ
508 電源供給端子
509 出力端子
510 電源供給端子
511 カスタムIC(集積回路)
513 弁別回路
514,515 出力端子
516 定電圧回路
517 カスタムIC
518 出力端子
519 カスタムIC
520 弁別レベル可変回路
521 外部端子
522 調整用可変抵抗
600 出力回路組立体
601 論理回路
602 出力制御回路
603 出力トランジスタ
604,605 電源供給端子
606 出力端子
607 定電圧回路
608 短絡保護回路
609 電源リセット回路
610 表示回路
611 動作表示灯
611a 出力動作表示灯
611b 設定表示灯
612,614 定電圧端子
613 検知信号入力端子
615,616 電源供給端子兼出力端子
617 定電圧回路
618 カスタムIC(集積回路)
618a,618b 検知信号入力端子
619 論理回路
620 カスタムIC(集積回路)
621 カスタムIC(集積回路)
630 カスタムIC(集積回路)
631,634 電源供給端子
632,633 検知信号入力端子
635,636 電源供給端子兼出力端子
637 論理回路
638 出力制御回路
639 出力トランジスタ
640 定電圧回路
641 短絡保護回路
642 電源リセット回路
643 表示回路
644 動作表示灯
700 マスク導体
700a 鍔部先端
701 コイル
702 フェライトコア
703 検知回路実装基板
704 組立途中品
705 コイルケース
706 検出端モジュール
707 検査済み検出端モジュール
708 接続部材
709 出力回路実装基板(出力回路モジュール)
709a LED
710 全体回路付組立途中品
711 円筒状本体ケース
712 出力回路モジュール支持部材(コードクランプ)
713 ケース付組立途中品
714 コード
715 コード付組立途中品
716 コード保持部(プロテクタ)
1001 検知コイル組立体のコイル
1006 共振コンデンサ
1602 顧客側のコンピュータ端末機
1601 支援サーバ
1600 通信ネットワーク(インターネット)
1601a 機種仕様データベース
1000 検知コイル組立体
4060 円筒状マスク導体
4070 鍔付マスク導体
4080 円環状マスク導体
4090 円筒状マスク導体
4100 鍔付マスク導体
4110 円環状マスク導体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする発振回路を含む検知回路組立体と、検知回路組立体から出力される物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力段回路が組み込まれた出力回路組立体と、それらの組立体が収納される外殻ケースとを有する近接センサ製品を製造するための1モジュール部品であって、
前記検知コイル組立体と、前記検知回路組立体と、前記出力回路組立体と、前記外殻ケースとのうちで、前記検知コイル組立体と前記検知回路組立体とを一体的に結合することによりモジュール部品化してなり、
前記検知コイル組立体には、前記外殻ケースの存在が想定される特定周辺領域における導体検知感度を低下させるためのマスク導体が組み込まれており、かつ
前記検知回路組立体は、発振回路の発振状態に応じた一定形態の信号を近接センサの物体検知信号として当該モジュール部品の外部へと出力するように仕組まれており、
それにより、検知回路組立体から出力された物体検知信号を適宜に利用して当該モジュール部品の外部に出力回路組立体を別途構成することにより、近接センサ製品を任意に調製し得るようにした検出端モジュール。
【請求項2】
前記コイル並びにコアを収容するためのコイルケースをさらに有し、
前記マスク導体は、前記コイルケース内にあって、前記コイル並びにコアを取り巻く導電性の筒状体乃至環状体である、請求項1に記載の検出端モジュール。
【請求項3】
前記コイル並びにコアを収容するためのコイルケースをさらに有し、
前記マスク導体は、前記コイルケース内にあって、前記コイル並びにコアの背面を仕切る導電性閉塞板である、請求項1に記載の検出端モジュール。
【請求項4】
前記コイル並びにコアを収容するためのコイルケースをさらに有し、
前記マスク導体は、前記コイルケース外にあって、前記コイル並びにコアを取り巻く導電性の筒状体乃至環状体である、請求項1に記載の検出端モジュール。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載された検出端モジュールと、前記検出端モジュールから出力される物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力段回路が組み込まれた出力回路組立体をモジュール部品化してなる出力回路モジュールと、を電気的に接続してなることを特徴とする近接センサ製品。
【請求項6】
前記出力回路モジュールを支持するための出力回路モジュール支持部材と、
その一端側に前記検出端モジュールが取り付けられ、他端側に前記出力回路モジュール支持部材が取り付けられ、それにより前記検出端モジュールと前記出力回路モジュールとを空間を隔てて保持する筒状の外殻ケースと、
前記検出端モジュールと前記出力回路モジュールとの間に介在され、両モジュールを電気的に接続する接続部材と、
を更に有する請求項5に記載の近接センサ製品。
【請求項7】
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる複数種類の検出端モジュールの中から1つの種類の検出端モジュールを選択する第1のステップと、
物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた複数種類の出力回路モジュールの中から1つの種類の出力回路モジュールを選択する第2のステップと、
前記第1のステップで選択された検出端モジュールと前記第2のステップで選択された出力回路モジュールとを接続する第3のステップと、
を具備することを特徴とする近接センサ製品の生産方法。
【請求項8】
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる複数種類の検出端モジュールの中から1つの種類の検出端モジュールを選択する第1のステップと、
前記検出端モジュールと組合せが可能な複数種類の外殻ケースの中から1つの種類の外殻ケースを選択する第2のステップと、
前記第1のステップで選択された検出端モジュールを前記第2のステップで選択された外殻ケースに取り付ける第3のステップと、
を具備することを特徴とする近接センサ製品の生産方法。
【請求項9】
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる複数種類の検出端モジュールの中から1つの種類の検出端モジュールを選択する第1のステップと、
物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力回路が組み込まれた複数種類の出力回路モジュールの中から1つの種類の出力回路モジュールを選択する第2のステップと、
前記検出端モジュールと組合せが可能な複数種類の外殻ケースの中から1つの種類の外殻ケースを選択する第3のステップと、
前記第1のステップで選択された検出端モジュールと前記第2のステップで選択された出力回路モジュールとを電気的に接続するとともに、前記第3のステップで選択された外殻ケースを前記検出端モジュールに取り付ける第4のステップと、
を具備することを特徴とする近接センサ製品の生産方法。
【請求項10】
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる検出端モジュールを用意する第1のステップと、
前記検出端モジュールと組合せが可能な複数種類の外殻ケースを用意する第2のステップと、
前記第2のステップで用意された複数種類の外殻ケースの中から1つの種類の外殻ケースを選択する第3のステップと、
前記第3のステップで選択された外殻ケースを前記第1のステップで用意された検出端モジュールに取り付ける第4のステップと、
を具備し、それにより、第3のステップで選択された外殻ケースに適合させるための検出端モジュールの感度を不調整で製品出荷可能とした、近接センサ製品の生産方法。
【請求項11】
コイル並びにコアを含む検知コイル組立体と、前記コイルを共振回路要素とする発振回路を含んで当該発振回路の発振状態に応じた物体検知信号を外部へと出力する検知回路組立体と、外殻ケースによる検知特性の影響を低減するためのマスク導体と、を一体化してなる検出端モジュールと、物体検知信号に基づいて出力素子を駆動する出力段回路が組み込まれた出力回路モジュールと、出力回路モジュールを受け入れるための貫通孔を有し出力回路モジュールを支持する出力回路モジュール支持部材と、その前端側に検出端モジュールが取り付けられ後端側に出力回路モジュール支持部材が取り付けられそれにより検出端モジュールと出力回路モジュールとを空間を隔てて保持する筒状の外殻ケースと、検出端モジュールと出力回路モジュールとの間に介在され両モジュールを電気的に接続するためのフレキシブルな接続部材と、を用意する第1のステップと、
前記第1のステップで用意された検出端モジュールと出力回路モジュールとを接続部材を介して電気的に接続する第2のステップと、
前記第2のステップで出力回路モジュールが電気的に接続された検出端モジュールを、前記第1のステップで用意された外殻ケースの前端側にて外殻ケースに取り付けることにより、外殻ケースの後端側から出力回路モジュールの一部又は全部を突出させる第3のステップと、
前記第3のステップで外殻ケースの後端側からその一部又は全部が突出された出力回路モジュールを、出力回路モジュール支持部材の貫通孔に挿通させる第4のステップと、
前記第4のステップで出力回路モジュールが貫通された出力回路モジュール支持部材を、外殻ケースの後端側にて外殻ケースに取り付ける第5のステップと、
前記第5のステップを経て外殻ケースの後端側にあって、出力回路モジュール支持部材を貫通して突出する出力回路モジュールを出力回路モジュール支持部材に取り付ける第6のステップと、
を具備する近接センサ製品の生産方法。
【請求項12】
前記外殻ケースに対する検出端モジュールの取り付け、前記外殻ケースに対する出力回路モジュール支持部材の取り付け、および前記出力回路モジュール支持部材に対する出力回路モジュールの取り付けが完了した後に、外殻ケースの内部に充填樹脂を注入する第7のステップと、
充填樹脂が硬化した後に、外部に突出している出力回路モジュールの部分に電気コードをはんだ付けする第8のステップと、
を更に具備する請求項11に記載の近接センサ製品の生産方法。
【請求項13】
コイル並びにコアを含みかつマスク導体により検知特性を自己完結化された検知コイル組立体と、検知コイル組立体のコイルを共振回路要素とする検知回路組立体とを一体的に結合することによりモジュール部品化してなり、かつ出荷に先立って、特性調整が完結している、ことを特徴とする近接センサ製品の1モジュール部品として使用される検出端モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【公開番号】特開2007−242633(P2007−242633A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133695(P2007−133695)
【出願日】平成19年5月21日(2007.5.21)
【分割の表示】特願2002−574683(P2002−574683)の分割
【原出願日】平成14年3月15日(2002.3.15)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】