説明

近接センサ

【課題】低い電力で動作し、かつ、被検物体を高精度で検出することを可能とする近接センサを提供する。
【解決手段】近接センサ1aは、発振器2と、発振器2の信号に基づいて交流信号Eaを放射する送信アンテナ3と、交流信号Ebを受信する受信アンテナ4と、受信アンテナ4に接続された共振器5を備える。共振器5は、例えば水晶振動子を用いて構成される。また、近接センサ1aは、発振器2の出力と共振器5の一方の端子とを接続するバッファ6と抵抗7を備える。共振器5は発振器2の発振周波数で予め励振される。さらに、近接センサ1aは、共振器5の出力を増幅する増幅器8と、発振器2の出力信号で、受信アンテナ4で受信した信号を位相検波する位相検波器9を備える。さらに、近接センサ1aは、位相検波器9の出力を平滑化するLPF10と、出力端子11を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の位置を検出する近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2つのアンテナを備え、一方のアンテナから交流電磁界を発生し、他方のアンテナでこれを受信し、受信した信号を位相検波する構成を持ち、物体の位置や移動を検出する所謂近接センサが提案されている(例えば、特許文献1および2参照)。
【0003】
図20は、特許文献1および2に記載の従来の近接センサの構成を示す回路図である。従来の近接センサでは、発振器102の信号に基づいて送信アンテナ103から交流信号Eaを送信するとともに、交流信号Ebを受信アンテナ104で回路に取り込む。また従来の近接センサは、受信アンテナ104で回路に取り込んだ信号を増幅器108で直接増幅した後、位相検波器109により発振器102の信号で検波する。
【0004】
さらに従来の近接センサは、位相検波器109の出力をLPF110で直流化して、被検査領域における電磁波の変化を直流電圧の変化として出力端子111から出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−275629号公報(第3−5頁、図1)
【特許文献2】特開2007−171031号公報(第4−6頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来技術では、以下のような問題がある。上述した現象は非常に微弱であるため、アンテナの性質もしくは被検物体と電波の相互作用の性質から、高周波でなければ充分な利得が得ることができない。よって、近接センサとして充分な検出感度を得る為には、特許文献1、2のいずれの方式も、非常に高い周波数の信号を発振器102から発生する必要がある。低周波を意識した特許文献1においても最低HF帯という高い周波数を想定し、特許文献2においてはGHz帯を想定している。
【0007】
一方、高周波信号を発生させる為には大きなエネルギーを投入しなければならず、回路全般に高周波信号に対応する為の消費電力の大きな回路構成を用いなければならない問題がある。
【0008】
そこで、本発明は上記課題を解決し、低い電力で動作し、かつ、被検物体を高精度で検出することを可能とする近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、本発明の近接センサは下記記載の構成を採用するものである。
【0010】
本発明の近接センサは、交流信号発生源と、交流信号発生源の信号に基づいて電波を送信する送信アンテナと、電波を受信する受信アンテナと、受信アンテナに接続された共振素子と、交流信号発生源の信号で、受信アンテナで受信した信号を位相検波する位相検波手段と、を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、共振素子は、交流信号源の信号に基づいて予め励振されることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、共振素子は、交流信号源の信号に基づいて、電気的結合により予め励振されることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、共振素子は、交流信号源の信号に基づいて、機械的結合により予め励振されることを特徴とする。
【0012】
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、共振素子は、振動子を備えて構成されることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、交流信号発生源は振動子を有する発振器であり、共振素子の振動子と発振器の振動子とが一体に形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、振動子は、水晶振動子、セラミック振動子またはMEMS振動子であることを特徴とする。
【0013】
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、共振素子は、LC共振回路を備えて構成されることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、共振素子の両端からの出力を差動増幅し、受信アンテナで受信した信号として出力する差動増幅手段を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、交流信号発生源と送信アンテナとの間に、交流信号発生源の回路の電源を昇圧する昇圧手段と、交流信号発生源の信号を、昇圧手段で昇圧された電源系で増幅する増幅手段と、を備えることを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、送信アンテナと受信アンテナのいずれか一方は棒状のアンテナであり、他方はリング状のアンテナであることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、リング状のアンテナは、同心円状の複数のリングが接合された形状を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、リング状のアンテナは、複数回巻かれたコイル状の形状を備えることを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、棒状アンテナの先端部は、複数回巻かれたコイル状の形状を備えることを特徴とする。
【0015】
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、透明基板を備え、送信アンテナと受信アンテナとは、透明基板上に透明電極で形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、送信アンテナと受信アンテナは、互いに同心円のリング状に形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、送信アンテナと受信アンテナは、互いに同心円の円弧状に形成されたことを特徴とする。
【0016】
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、透明基板は矩形状であり、送信アンテナと受信アンテナは、透明電基板の角部に、2つの辺に跨って1/4の円弧状に形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、透明基板は矩形状であり、送信アンテナと受信アンテナは、透明基板の辺部に、1/2の円弧状に形成されたことを特徴とする。
さらに、本発明の近接センサは、前述した構成に加えて、送信アンテナと受信アンテナの少なくとも一方が、二重以上のパターンで形成されたことを特徴する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の近接センサは、受信アンテナに接続された共振素子を備え、受信アンテナで受信した信号を用いて共振素子を励振し、共振素子に溜め込まれた信号を用いて位相検波を行う。これにより、アンテナで受信した信号をそのまま用いて位相検波を行う従来技術と比較して、感度を増大させ、即ち高いS/Nで被検物体までの距離情報を検出することが可能となる。
【0018】
また、本発明の近接センサは、交流信号発生源から発生する信号を低周波とすることができるため、高周波信号を用いる必要のある従来技術と比較して、簡単な回路構成で、低い電力で動作させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施例1の近接センサの構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施例2の近接センサの構成を示す回路図である。
【図3】本発明の実施例3の近接センサの構成を示す回路図である。
【図4】複合振導体を模式的に示す記号図である。
【図5】複合振動体の構成例を示す平面図である。
【図6】複合振動体の構成例を示す断面図である。
【図7】本発明の実施例4の近接センサの構成を示す回路図である。
【図8】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図9】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図10】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図11】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図12】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図13】送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図14】被検物体の接近距離に対するセンサの出力電圧を示す説明図である。
【図15】透明基板上に形成した送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図16】透明基板上に形成した送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図17】透明基板上に形成した送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図18】透明基板上に形成した送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図19】透明基板上に形成した送信アンテナおよび受信アンテナの構成例を示す説明図である。
【図20】従来の近接センサの構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[実施例1:図1]
まず、本発明の実施例1の近接センサの構成について説明する。図1は実施例1の近接センサ1aの構成を示す回路図である。図1に示すように近接センサ1aは、発振器2と、該発振器2で生成した低周波信号に基づいて交流信号Eaを被検査領域へ放射する送信アンテナ3を備える。
【0021】
発振器2は、交流信号発生源の一例であり、例えば水晶振動子を用いて構成される。送信アンテナ3から放射される交流信号Eaは、その周波数及び強度の安定性が当該近接センサとしての出力の安定性を左右するので、周波数の安定度が高く、温度や経時変化等に
対して安定な水晶振動子を用いるのが望ましい。
【0022】
例えば、携帯機器などに使用されることを想定して低消費電力の構成を目指す為、VLF帯の発振を可能とする音叉型水晶振動子を用いる。また、水晶と云えども、−40℃〜85℃等の広い使用温度範囲に対しては発振のインピーダンスは10%以上変化するので、発振振幅を安定化させるAGC回路を備えた構成とすることが望ましい。
【0023】
また、水晶振動子以外では、PZT薄膜等の圧電素子とセラミックで構成した振動子(セラミック振動子)、同じくPZT薄膜等の圧電素子をMEMSで構成した振動体表面に形成したMEMS振動子、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶またはランガサイトを用いた振動子などを用いて、発振器2を構成してもよい。
【0024】
また、近接センサ1aは、被検査領域からの交流信号Ebを受信する受信アンテナ4と、受信アンテナ4に接続された共振器5を備える。受信アンテナ4に接続された共振器5の他端は、基準電圧にクランプされている。共振器5は、受信アンテナ4で受信した交流信号Ebにより励振される。
【0025】
この共振器5は、出来るだけエネルギー損失が小さなもので構成される。共振器5は、例えば、発振器2の周波数に近い共振周波数を持つ水晶振動子を用いて構成される。水晶振動子は振動時のエネルギー損失が少ないため、微小な電磁波の変化を減衰することなく長い時間間隔で溜め込むことが出来る。
【0026】
水晶振動子以外では、発振器2と同様に、PZT薄膜等の圧電素子とセラミックで構成した振動子(セラミック振動子)、同じくPZT薄膜等の圧電素子をMEMSで構成した振動体表面に形成したMEMS振動子、タンタル酸リチウム単結晶、ニオブ酸リチウム単結晶またはランガサイトを用いた振動子などを用いて共振器5を構成してもよい。
【0027】
さらに、シリコンプロセスを用いて超小型の振動体を構成し、容量を用いて電気機械結合を実現した振動子、発振器2の周波数に近い共振周波数を持つLC共振回路などを用いて共振器5を構成してもよい。小型化を考慮すれば、静電容量型MEMS振動子も有望である。
【0028】
また、近接センサ1aは、発振器2の出力と共振器5の一方の端子とを接続するバッファ6と抵抗7を備える。この構成により、共振器5は発振器2の発振周波数で予め励振される(以下、この振動を予励振と呼ぶ)。
【0029】
ここで、発振器2の発振周波数と共振器5の共振周波数が近い程、予励振は効率的に行われる(以下、発振器2の発振周波数と共振器5の共振周波数の差を離調度と呼ぶ)。しかし、離調度が非常に近接しているか完全に一致していると、うなり又は共振が起こり、検波後の出力に影響を与えてしまうため望ましくない。離調度は、整流して直流電圧を出力する為には少なくとも、後述する整流用LPF10のカットオフ周波数より大きく取っておく必要がある。
【0030】
バッファ6は、発振器2へ後段の回路からの影響が及ぶのを避ける為に設けられる。抵抗7は発振器2と共振器5の結合抵抗であり、共振器5を発振器2へ適度に結合させる抵抗値のものが用いられる。抵抗7の値が小さすぎると電気的結合が強くなりすぎて共振器5の振幅はバッファ6の出力で決まってしまい、受信アンテナ4からの信号を反映しなくなる。一方、抵抗7の値が大きすぎると電気的結合が弱すぎて予励振が充分に行われず共振器5の効果が失われる。このため、抵抗7の抵抗値の選択は重要である。共振器5に、共振周波数が数十kHzの水晶振動子を用いた場合、抵抗7の抵抗値は0.5〜1MΩ程度が適当である。
【0031】
さらに、近接センサ1aは、共振器5の出力を増幅する増幅器8と、発振器2の出力信号で、受信アンテナ4で受信した信号を位相検波する位相検波器9を備える。さらに、近接センサ1aは、位相検波器9の出力を平滑化するLPF(ローパスフィルタ)10と、出力端子11を備える。
【0032】
次に、上述した構成を備える近接センサ1aの動作について説明する。
まず、発振器2により低周波信号を発生させ、送信アンテナ3により被検査領域へ交流信号Eaを放射する。送信アンテナ3から放射した交流信号Eaは、被検査領域に、この領域に存在する大気,誘電体および導体等により決定される電磁界を形成する。受信アンテナ4は、被検査領域に形成される電磁界に応じた交流信号Ebを受信する。
【0033】
この時、被検査領域に存在する物が一切動かなければ、送信アンテナ3が送信する交流信号Eaが形成する電磁界は定常的な状態となり、受信アンテナ4が受信する交流信号Ebは安定した位相と振幅を持つ。しかし、この領域へ例えば人間の指等の適度な誘電率を備えた被検査物体Oが浸入すると、電磁界が擾乱を受けて変化する。この結果受信アンテナ4が受信する交流信号Ebの位相と振幅が変化する。
【0034】
共振器5が例えば水晶振動子を備えて構成される場合、受信アンテナ4から取り込まれる交流信号Ebによる電流は極めて小さいため、停止した水晶振動子を交流信号Ebによる電流のみで指定した周波数に励振することは難しい。このため、上述したように本実施例では、受信アンテナ4から取り込まれる電流と同じ周波数で共振器5の水晶振動子を予励振する。
【0035】
共振器5の水晶振動子が予励振された状態では、受信アンテナ4で受信した交流信号Ebは共振器5の水晶振動子に取り込まれ、水晶振動子に蓄積される。数万のQ値を持つ水晶振動子の場合、水晶振動子に蓄積された情報は数万倍の大きさに積分された状態となる。
【0036】
受信アンテナ4からの情報を蓄積した共振器5の振動は、増幅器8により電気的に増幅される。増幅器8の出力は、位相検波器9により発振器2の周波数で位相検波され、LPF10により平滑化され、出力端子11から直流電圧の変化として出力される。
【0037】
上述したように、被検査領域に例えば人間の指等の適度な誘電率を備えた被検物体Oが浸入すると、電磁界が擾乱を受けて変化する。この結果受信アンテナ4が受信する交流信号Ebの位相と振幅は変化するので位相検波器9の出力は変化し、これを平滑化する平滑器10からの直流出力は変化する。この直流出力の変化によって被検物体Oの存在、運動を知る事が出来る。
【0038】
ここで注意を要するのは、送信アンテナ3により形成される被検査領域の電磁界は、被検査領域の物体の配置により変化し、また、送信アンテナ3と受信アンテナ4から見た被検査領域は、電磁波の形成される範囲と解釈すると、原理的には無限遠方にまで及んでしまう。よって、本実施例の近接センサがノイズに埋もれないで感知できる領域を被検査領域と定義し、送信アンテナ3と受信アンテナ4を設置した環境での出力をバックグラウンドとし、被検査物体Oによる電磁波の擾乱による変化はこのバックグラウンド出力からの変化として捉える必要がある。
【0039】
本実施例の近接センサ1aは、上述したように、受信アンテナ4で受信した交流信号Ebを用いて共振器5を励振し、共振器5に溜め込まれた信号を用いて位相検波を行う。こ
れにより、アンテナで受信した交流信号をそのまま用いて位相検波する従来技術と比較して、感度を増大させ(即ち高いS/Nで)、被検物体Oまでの距離情報を高精度で検出することが可能となる。
【0040】
また、本実施例の近接センサ1aは、発振器2から発生する信号を低周波(例えばVLF帯)とすることができるため、高周波信号を用いる必要のある従来技術と比較して、簡単な回路構成と低い電力で動作させることが可能となる。
【0041】
さらに、本実施例の近接センサ1aは、共振器5が、例えば水晶振動子を備えて構成され、この水晶振動子が予励振されることにより、受信アンテナ4で受信する交流信号Ebが微弱であっても、被検物体Oまでの距離情報を高精度で検出することが可能となる。
【0042】
次に、本発明の近接センサの他の実施例について説明をする。以下の説明においては、既に説明した同一の構成には同一の符号を付与しており、その詳細な説明は省略し、構成が異なる点についてのみ説明する。
【0043】
[実施例2:図2]
本発明の実施例2の近接センサについて説明する。図2は実施例2の近接センサ1bの構成を示す回路図である。図2に示すように、実施例2の近接センサ1bは、共振器5の受信アンテナ4側の端子に接続された増幅器8に加えて、共振器5の他方の端子に接続された反転増幅器12を備え、さらに増幅器8と反転増幅器12の出力を差動増幅する差動増幅器13を備えることを特徴とする。
【0044】
共振器5は、共振周波数から離れた周波数の信号を入力すると、他方の端子からは、入力した信号からほぼ反転した位相の信号を出力する。従って、増幅器8と反転増幅器12からは、ほぼ同相の交流信号が出力される。
【0045】
増幅器8からは、受信アンテナ4で受信した信号が、予励振に応じた信号に重畳されて出力される。これに対して反転増幅器12からは、受信アンテナ4で受信した信号の影響を受けない予励振に応じた信号が出力される。このため、増幅器8と反転増幅器12の出力の差を取る差動増幅器13からは、予励振による振幅は含まれず、受信アンテナ4で受信した信号のみが出力される。
【0046】
一般に、検波前の交流の状態での電圧振幅を大きく取っておくと、検波用の参照信号と被検波信号間の位相ノイズ等に起因して検波時に発生するノイズを低く抑え、S/Nの高い検波が可能である。図1に示す実施例1の近接センサ1aでは、検出信号より遥かに大きな振幅の予励振に起因する信号が、増幅器8の出力に重畳している為、検波前増幅率を大きくとる事ができないと言う問題がある。
【0047】
これに対して、図2に示す実施例2の近接センサ1bでは、予励振による信号を、差動増幅器13により取り除いているので、差動増幅器13からの出力信号の振幅は、受信アンテナ4から入力し、共振器5で積分した信号のみであり、予励振により振幅が嵩上げされていない。
従って、検出信号は、予励振の振幅の飽和を気にせずに、その後段で増幅することが可能であり、原理的には検波前増幅率を最大に採る事ができる。その結果更に高いS/Nを持つ近接センサを構成することができる。
【0048】
図2では、差動増幅器13に入力する参照用の信号を生成するために、反転増幅器12を用いる例を示した。しかし、発振器2の発振周波数と共振器5の共振周波数とが接近している場合(即ち離調度が小さい場合)、共振器5の性質等によって、共振器5の両端か
らの出力の位相差が180度とならない。この場合は、反転増幅器12の代わりに移相器を用いて増幅器8の出力と該移相器の位相をほぼ一致させておく必要がある。
【0049】
実施例2の近接センサ1bの被検物体Oの距離検出の動作は、上述した実施例1と同様である。実施例2の近接センサ1bは、実施例1の近接センサ1aと同様に、受信アンテナ4で受信した交流信号Ebを用いて共振器5を励振し、共振器5に溜め込まれた信号を用いて位相検波を行うことにより、被検物体Oまでの距離情報を高精度で検出することが可能となる。また、発振器2から発生する信号を低周波とすることができるため、簡単な回路構成で、低い電力で動作させることが可能となる。
【0050】
[実施例3:図3〜図6]
次に、本発明の実施例3の近接センサについて説明する。図3は実施例3の近接センサ1cの構成を示す回路図である。実施例3の近接センサ1cは、発振器2による共振器5の予励振を機械的に行うことを特徴する。図2に示す抵抗7と同様な働きをすることを示すため、図3では、発振器2により共振器5を予励振させる機械結合14を、回路に置き換えて模式的に示している。
【0051】
以下では、発振器2による共振器5の予励振を機械的に行う構成として、発振器2と共振器5がそれぞれ水晶振動子を用いて構成されるとともに、発振器2と共振器5の水晶振動子が一体に形成された例を示す。
【0052】
図4は、発振器2と共振器5の水晶振動子が機械的に結合して一体に形成された複合振動体20を模式的に示す電気的記号図である。図4に示すように、複合振動体20は、発振器2を構成する振動子21と共振器5を構成する振動子22とが、機械的結合23で結合される。図4の機械的結合23は、図3の機械的結合14と同等の概念である。
図4に示す複合振動体20は4端子の素子であり、振動子21に電極211、222が形成され、振動子22に電極221、222が形成される。
【0053】
図4に示した複合振動体の具体的な形状の例を、複合振動体20aとして、図5および図6に示す。図5は、複合振動体20aの平面図であり、図6は、図5のA−A’断面図である。複合振動体20aは、例えば、厚さ100μmから200μm程度のZカット水晶板からウエットエッチング操作で加工される。
【0054】
図5に示すように、複合振動体20aは、幅、断面形状など、形状が互いにわずかに異なる脚21aLと脚21aRを有する。また複合振動体20aは、脚21aLと脚21aRの間に位置する中央脚22aを有する。中央脚22aは、脚21aL、21aRと異なる幅で設計されている。脚21aL、21aRおよび中央脚22aは一方の端部で基部24に接合されており、複合振動体20aは、水晶の光学軸即ちZ軸の方向から眺めるとアルファベットのEのような形状をしている。
【0055】
図6に示すように、脚21aLの光学軸方向に垂直な両側面と、脚21aRの電気軸方向に垂直な両側面には、それぞれ電極211が形成される。また、脚21aLの電気軸方向に垂直な両側面と、脚21aRの光学軸方向に垂直な両側面には、それぞれ電極212が形成される。脚21aLと脚21aRは、図4に示す振動子21を構成する。
また、中央の脚22aの電気軸方向に垂直な両側面に電極221が形成され、中央脚22aの光学軸方向に垂直な両側面に電極222が形成される。脚22aは図4に示す振動子22を構成する。
【0056】
Zカットで切り出された水晶振動子は、電気軸方向に電界をかけると機械軸方向に脚が伸び縮みし、機械軸方向に脚を伸び縮みさせると電気軸方向に電界を生じる。よって、複
合振動体20aは、電極211および電極212間に交流を印加すると、図5の矢印Bに示すように脚21aLと脚21aRが音叉型屈曲振動を行う。この屈曲振動の固有周波数は、脚21aLと脚21aRの幅と長さでおよそ定まる。また、脚21aLと脚21aRが音叉型屈曲振動をするとき、電極211と電極212間には、交流電流が発生する。
【0057】
脚21aLと脚21aRが音叉型屈曲振動をするとき、脚21aLと脚21aRは互いにわずかに形状が異なるためバランスせず、複合振動体20aは全体が僅かな振動を行う。この複合振動体20a全体の振動の影響で、中央の脚22aは、図5の矢印Cに示すように、全ての脚を含む平面内で脚の伸びた方向と直交する方向に僅かに振動する。
【0058】
この脚22aの僅かな振動が、上述した機械的結合14、23により引き起こされた振動である。脚22aが僅かに振動することにより、電極221と電極222の間に、脚21aLと脚21aRの発振周波数で微弱電流が発生する。これが予励振である。この現象は次のように言うことが出来る。複合振動体20aにおいて、両側の脚21aLと脚21aRは振動子21を構成し、この振動は弱い機械結合により別の振動体22(脚22a)を励振する。脚21aLと脚21aRの幅と、脚22aの幅は、例えば、その固有周波数の差である離調度が数百Hzになるように設計する。
【0059】
また上記では、脚21aLと脚21aRは形状が互いにわずかに異なるとしたが、脚21aLと脚21aRを互いに同じ長さ・太さになるように設計しても、水晶の音叉形状の工作精度には限界があるため、脚21aLと脚21aRは形状が互いにわずかに異なる。このため上述したように、脚21aLと脚21aRの振動は互いにバランスせず、複合振動体20a全体が振動し、この振動の影響で中央の脚22aが振動する。
【0060】
さらに注意をしておかなければならないのは、振動子21(脚21aL、脚21aR)が発振している状態で複合振動体20aを光学軸方向に回転すると、コリオリ力により回転速度に比例した励振が振動子22(脚22a)の振動に重畳し、近接センサの出力が誤ったものとなってしまう。これを避ける為に、光学軸の回転する方向のモーメントが小さくなるように各々の脚(脚21aL、脚21aR、脚22a)の間隔を狭めて構成し、基部24をしっかりと固定する。
【0061】
実施例3の近接センサ1cの被検物体Oの距離検出の動作は、上述した実施例1と同様である。実施例3の近接センサ1cも、実施例1の近接センサ1aと同様に、受信アンテナ4で受信した交流信号Ebを用いて共振器5を励振し、共振器5に溜め込まれた信号を用いて位相検波を行うことにより、被検物体Oまでの距離情報を高精度で検出することが可能となる。また、発振器2から発生する信号を低周波とすることができるため、簡単な回路構成で、低い電力で動作させることが可能となる。
【0062】
また、実施例3の近接センサ1cは、上述したように、共振器5の予励振を機械的に行う構成であり、受信アンテナ4と発振器2とは電気的に結合していない。このため、受信アンテナ4と発振器2とが電気的に結合している実施例1、2と比較して、発振器2の出力信号により受信アンテナ4で受信した交流信号Ebが阻害されることなく、高い感度で被検物体Oまでの距離情報を検出することが可能となる。
【0063】
また、実施例3の近接センサ1cは、発振器2を構成する振動子21と共振器5を構成する振動子22とが、複合振動体20として一体に構成されるため、装置を小型化することが可能となる。
【0064】
図4から図6では、発振器2と共振器5がそれぞれ水晶振動子を用いて構成されるとともに、発振器2と共振器5の水晶振動子が複合振動体20として一体に形成された例を示
した。しかし本発明はこれに限定されるものではなく、発振器2と共振器5が、それぞれセラミック振動子、MEMS振動子等の水晶振動子以外の振動子を備えて構成されるとともに、発振器2と共振器5の振動子が複合振動体として一体に形成されても良い。
【0065】
[実施例4:図7]
次に、本発明の実施例4の近接センサについて説明する。図7は実施例4の近接センサ1dの構成を示す回路図である。図7に示すように、実施例4の近接センサ1dは、実施例3の近接センサ1cの構成において、発振器2と送信アンテナ3の間に、発振器2の回路の電源を昇圧する昇圧回路30と、昇圧回路30で昇圧された電源系で交流信号発生源の信号を増幅する増幅回路31と、を備える。昇圧回路30は昇圧手段の一例であり、増幅回路31は増幅手段の一例である。
このような構成とすることにより、発振器2から出力する信号が昇圧回路30および増幅回路31により電圧増幅され、本装置が使用する電源電圧に比べて電圧増幅された該信号に基づいて送信アンテナ3により強い電磁波の交流信号Eaが被検査領域へ放射される。
【0066】
よって、実施例4の近接センサ1dは、使用する電源の電圧が例えば3V及び5Vといった低い電源電圧であっても、実施例3の近接センサ1cと比較して、広い被検査領域で被検物体Oの距離検出を行うことが可能となる。
なお、図7に示す実施例4では、実施例3の近接センサ1cの構成において昇圧回路30を備える例示したが、実施例1の近接センサ1aまたは実施例2の近接センサ1bの構成において、発振器2と送信アンテナ3の間に昇圧回路30を備える構成でもよい。
【0067】
[送信アンテナおよび受信アンテナの構成例:図8〜図19]
次に、上述した各実施例の近接センサに用いられる送信アンテナ3および受信アンテナ4の構成について説明する。図8から図13は、送信アンテナ3および受信アンテナ4の構成の説明図である。
【0068】
上述した各実施例の近接センサにおいて、送信アンテナ3および受信アンテナ4の配置には工夫を要する。アンテナの効率を考えると、図8に示すように平面状の送信アンテナ3a、受信アンテナ4aを平行に配置し、または図9に示すように各々を棒状の送信アンテナ3b、受信アンテナ4bを平行に配置し、各アンテナの間の空間領域に被検物体が接近するのを検知する構成が、最も電磁波の伝わり方の変化が大きく、センサとしての感度が大きい。また、配線部の信号の受信、送信への影響を抑えるため、配線部には、シールド15、16を設けることが望ましい。
【0069】
しかしながら、図8および図9に示すアンテナの構成では、被検物体とアンテナとの距離が同じであっても、アンテナに対する被検物体の移動方向が異なると、近接センサの出力が異なるものとなってしまう。
以下に、図10から図13を用いて、近接センサの出力がアンテナに対する被検物体の移動方向に依存せず、アンテナと被検物体の距離に依存する送信アンテナ3および受信アンテナ4の構成について説明する。
【0070】
図10に示すアンテナの構成は、棒状の送信アンテナ3cと、この棒状の送信アンテナ3cが延びた方向に垂直な面内で、棒状の送信アンテナ3cから等しい距離に配置されたリング状の受信アンテナ4cと、を備える。棒状の送信アンテナ3cには、先端の微小部分を除く箇所にシールド15が設けられ、リング状の受信アンテナ4cには、リング部を除く箇所にシールド16が設けられる。
【0071】
図10に示す構成のアンテナでは、送信アンテナ3cから送信される電磁波は、送信ア
ンテナ3cの棒状部分を中心として対称となる。また、図10に示す構成のアンテナでは、受信アンテナ4cのリング径を小さくすると、送信アンテナ3cから受信アンテナ4cに形成される電磁界は、所定の距離だけ離れた位置からは中心対称とみることができる。
よって、図10に示す構成のアンテナは、近接センサの出力がアンテナに対する被検物体の移動方向に依存せず、アンテナと被検物体の距離に依存するものとすることができる。
【0072】
図11に示す構成のアンテナは、図10に示す構成のアンテナにおいて、同心円状の複数のリングが接合された受信アンテナ4dを備える。図12に示す構成のアンテナは、図10に示す構成のアンテナにおいて、複数回巻かれたコイル状の受信アンテナ4eを備える。図11、図12のような構成にすることで、アンテナの受信感度を向上させることが可能となる。アンテナの受信感度は、リングの数に応じて増加する。
【0073】
図13に示す構成のアンテナは、図12に示す構成のアンテナにおいて、複数回巻かれたコイル状の先端部を有する送信アンテナ3dを備える。このように構成することにより、送信アンテナとして機能する領域を増加させ、送信アンテナの出力を向上させることができる。この送信アンテナ3dと、図10から図12に示す受信アンテナ4c、4dとを組み合わせても良い。
【0074】
図14は、図13に示す構成のアンテナを備えた実施例3の近接センサ1cを用いて実験を行い、その実験結果として得られた、アンテナに近づけた披検物体と当該センサの出力電圧の関係を示す。披検物体として人の指を用いている。図14において、横軸(X軸)はアンテナの中心部から被検物体までの距離を示し、縦軸(Y軸)に当該センサの出力電圧を示す。図14の実線は当該センサの出力を示し、破線はY=3000/X−50で近似した線を示している。
【0075】
この実験に用いた近接センサの出力は直流である。図14では、出力電圧を、この近接センサから被検物体が充分離れている時の出力値からの差分値で示してある。この実験に用いた近接センサの出力は2mVrms程度のノイズを持っており、図14に示す様に5cmを越える距離では出力はノイズに埋もれて、測定不能となってしまう。
【0076】
また図14に示すように、この実験に用いた近接センサの出力は、被検物体のアンテナの中心からの距離にほぼ反比例することが確認できる。このように、被検物体の距離に出力が反比例することは、この近接センサによる距離の検出動作が、静電場ではなく電磁波に起因するものであることを裏付ける。
【0077】
また、この実験に用いた近接センサでは、発振器2の出力が5Vの電圧振幅では、約5cm以内の距離の被検物体を充分なS/Nで検出できることが確認できた。仮に、本発明の近接センサで発振器2の出力を100Vの電圧振幅としたときは、約1m以内の距離の被検物体を充分なS/Nで検出できる。
【0078】
図10から図13では、棒状の送信アンテナ3とリング状の受信アンテナ4を備える例を示したが、送信アンテナ3をリング形状とし、受信アンテナ4を棒状としてもよい。
図8から図13を用いて説明した送信アンテナ3と受信アンテナ4は、設置環境にあまり制限が課せられない場合に感度に最適化したアンテナの構成である。
【0079】
ところで、最近はディスプレイ上に描写された映像情報と連動した入力装置、即ちタッチパネルと呼ばれる入力装置の必要性が増大している。本発明の近接センサの送信アンテナおよび受信アンテナをディスプレイ上に配置すれば、ディスプレイ上の3次元領域に位置する被検物体の位置を検出し、この被検物体の3次元の位置情報に応じて機器への入力
を制御することにより、入力装置を構成することが出来る。
【0080】
以下に、このような入力装置を構成するため透明基板上にITO等の透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4について説明する。図15は、透明基板上に透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4の第1の構成例である。
【0081】
図15に示すアンテナの構成は、ガラス又は樹脂等の透明基板25上に、ITO等の透明電極を用いて透明な配線によりリング状に形成された送信アンテナ3fと受信アンテナ4fとを備える。受信アンテナ4fのパターンが送信アンテナ3fのパターンを囲って、同心円状に形成される。このように送信アンテナおよび受信アンテナを同心円のリング状に形成することにより、図10から図13に示すアンテナ構成と同様に、アンテナに対する被検物体の移動方向に依存せず、アンテナと被検物体の距離に依存した近接センサの出力を得ることが出来る。
【0082】
また、送信アンテナ3fと受信アンテナ4fから、近接センサを構成する図示しない回路部に接続するための配線を行う必要があるが、配線部の信号の受信、送信への影響を抑えるため、配線部には、シールド15、16を設けることが望ましい。
図15では、送信アンテナと受信アンテナが一つのリング状のパターンで形成される例を示したが、送信アンテナと受信アンテナの一方または両方を、二重以上のリング状のパターンで形成しても良い。アンテナの受信感度は、各アンテナのリングの数を増やすことにより向上させることができる。
【0083】
通常、ディスプレイの領域は矩形である。この矩形領域上の3次元空間に位置する物体を、例えば4つの近接センサで検出する場合、各近接センサのアンテナを矩形領域の角部に配置するのが合理的である。
【0084】
ここで、前述したように、本発明の近接センサの出力は、被検物体とアンテナ中心との距離に反比例するため、アンテナのリングの中心近傍はセンサの出力が大きくなりすぎてしまう。また、アンテナのリングの中心近傍は、感度が距離に反比例する状況が歪んでいる特異領域でもある。よって、リングの中心近傍は検出には不向きである。
【0085】
しかし、図15に示す構成のアンテナを矩形領域の角部に配置すると、アンテナのリングの中心近傍が角部から内側に位置することとなる。また、感度を上げるために大きなリングでアンテナを形成すると、アンテナのリングの中心近傍は更に内側に位置することとなる。
すなわち、図15に示す構成のアンテナを矩形領域の角部に配置しても、検出には不向きなリングの中心近傍が矩形領域の角部から内側に位置することとなり、ディスプレイ領域上の3次元空間に位置する物体を正しく検出できない問題がある。
【0086】
図16は、このような問題を解決するための構成であり、透明基板上に透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4の第2の構成例である。図16に示すアンテナの構成では、透明基板25の角部に、ITO等の透明電極を用いた透明な配線により、1/4の円弧状の送信アンテナ3g1と受信アンテナ4g1とが透明基板25の2つの辺に跨って形成される。受信アンテナ4g1のパターンが送信アンテナ3g1のパターンを囲って同心円の円弧状に形成される。
【0087】
送信アンテナ3g1と受信アンテナ4g1のそれぞれから、接続端子27、28を介して、近接センサを構成する図示しない回路部に接続するための配線が行われる。配線部の信号の受信、送信への影響を抑えるため、配線部には、シールド15、16を設けること
が望ましい。
【0088】
送信アンテナ3g2−3g4と受信アンテナ4g2−4g4も同様に、透明基板25の他の角部に1/4の円弧状パターンで形成される。受信アンテナ4g2−4g4のパターンが送信アンテナ3g2−3g4のパターンを囲って、同心円の円弧状に形成される。
ここで、送信アンテナ3g2と受信アンテナ4g2、送信アンテナ3g3と受信アンテナ4g3、送信アンテナ3g4と受信アンテナ4g4は、それぞれ別々の近接センサを構成する回路部に接続される。図16では、送信アンテナ3g1と受信アンテナ4g1からの配線のみを示している。
【0089】
図16に示す構成例では、送信アンテナと受信アンテナを1/4の円弧状に形成することにより、検出には不向きなリングの中心近傍を矩形領域の角部に位置することができる。これにより、ディスプレイ領域上の3次元空間に位置する物体を正しく検出することが可能となる。
【0090】
また、図16に示す構成例では、送信アンテナおよび受信アンテナを同心円の円弧状に形成することにより、矩形領域の内側に対しては、アンテナに対する被検物体の移動方向に依存せず、アンテナと被検物体の距離に依存した近接センサの出力を得ることが出来る。
【0091】
図17は、透明基板上に透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4の第3の構成例である。図17に示すアンテナの構成では、透明基板25上に、ITO等の透明電極を用いた透明な配線により、円弧状の送信アンテナ3h1−3h4と受信アンテナ4h1−4h4とが形成される。受信アンテナ4h1−4h4のパターンが送信アンテナ3h1−3h4のパターンを囲って、透明基板25の角部に2つの辺に跨って同心円の円弧状に形成される。
【0092】
送信アンテナ3h1と受信アンテナ4h1、送信アンテナ3h2と受信アンテナ4h2、送信アンテナ3h3と受信アンテナ4h3、送信アンテナ3h4と受信アンテナ4h4は、それぞれ別々の近接センサを構成する回路部に接続される。図17では、送信アンテナ3h1と受信アンテナ4h1からの配線のみを示している。
【0093】
図17ではディスプレイの表示部の境界をBで示している。表示部の境界Bは透明基板25の端部から所定長さだけ内側に位置している。また、送信アンテナ3h1−3h4と受信アンテナ4h1−4h4の円弧の中心部C1−C4は、それぞれ表示部の角部に位置している。送信アンテナ3h1−3h4と受信アンテナ4h1−4h4は1/4より大きい円弧で、表示部の境界Bを超えて透明基板25の端部まで形成されている。
【0094】
これにより、図17に示す構成のアンテナでは、図16に示す1/4の円弧で形成されたアンテナと比較して、表示部の領域に対する感度の歪を抑え、精度良く被検物体の位置を検出することが可能となる。
【0095】
図18は、透明基板上に透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4の第4の構成例である。図18に示すアンテナの構成では、透明基板25上に、ITO等の透明電極を用いた透明な配線により、送信アンテナ3i1−3i4と受信アンテナ4i1−4i4とが、それぞれ二重の1/4の円弧状パターンで形成される。また、受信アンテナ4g1−4g4のパターンが送信アンテナ3g1−3g4のパターンを囲って、表示部の境界Bの角部に同心円の円弧状で形成される。
【0096】
送信アンテナ3i1と受信アンテナ4i1、送信アンテナ3i2と受信アンテナ4i2
、送信アンテナ3i3と受信アンテナ4i3、送信アンテナ3i4と受信アンテナ4i4は、それぞれ別々の近接センサを構成する回路部に接続される。図18では、送信アンテナ3i1と受信アンテナ4i1からの配線のみを示している。
【0097】
図18に示す構成のアンテナでは、送信アンテナ3i1−3i4と受信アンテナ4i1−4i4とが、それぞれ二重の1/4の円弧状パターンで形成されことにより、アンテナの受信感度を向上させることが可能となる。アンテナの受信感度は、各アンテナの円弧状パターンリングの数を増やすことにより向上させることができる。
図18では、送信アンテナと受信アンテナの両方が二重の円弧パターンで形成される例を示したが、いずれか一方のアンテナのみを二重の円弧パターンで形成してもよい。また、送信アンテナと受信アンテナの一方または両方を、三重以上の円弧パターンで形成しても良い。
【0098】
図19は、透明基板上に透明電極を用いて形成した送信アンテナ3および受信アンテナ4の第5の構成例である。
図19に示すアンテナの構成では、図18と同様に、透明基板25の角部にITO等の透明電極を用いた透明な配線により、送信アンテナ3j1−3j4と受信アンテナ4j1−4j4とが、それぞれ二重の1/4の円弧状パターンで形成される。
【0099】
送信アンテナ3j1と受信アンテナ4j1、送信アンテナ3j2と受信アンテナ4j2、送信アンテナ3j3と受信アンテナ4j3、送信アンテナ3j4と受信アンテナ4j4は、それぞれ別々の近接センサを構成する回路部に接続される。図19では、送信アンテナ3j1と受信アンテナ4j1からの配線のみを示している。
【0100】
図19に示すアンテナ構成では、さらに、透明基板25の辺部に二重の1/2の円弧状パターンで形成された送信アンテナ3j5−3j6と受信アンテナ4j5−4j6とを備える。受信アンテナ4j5−4j6のパターンが送信アンテナ3j5−3j6のパターンを囲って、表示部の境界Bの角部に同心円の円弧状で形成される。
送信アンテナ3j5と受信アンテナ4j5、送信アンテナ3j6と受信アンテナ4j6は、それぞれ別々の近接センサを構成する回路部に接続される。
【0101】
図19のような構成とすることにより、透明基板の角部にのみアンテナが配置される図16−図18の構成と比較して、より広い被検査領域の物体の検出を行うことが可能となる。
図19では、送信アンテナと受信アンテナの両方が二重の円弧パターンで形成される例を示したが、いずれか一方または両方のアンテナを一つの円弧パターンで形成してもよい。
図15から図19では、受信アンテナ4が送信アンテナ3を囲って形成される例を示したが、送信アンテナ3が受信アンテナ4を囲って形成してもよい。
【0102】
本発明の近接センサにおいて、図15から図19に示すような、透明基板上に透明電極で形成された送信アンテナおよび受信アンテナを用い、このアンテナをディスプレイ上に配置することにより、ディスプレイ上の3次元領域に位置する被検物体の位置を検出し、この被検物体の3次元の位置情報に応じて機器への入力を制御する入力装置を構成することが出来る。
【符号の説明】
【0103】
1a、1b、1c、1d 近接センサ
2 発振器
3、3a、3b、3c、3d、3f、3g1−3g4、3h1−3h4、3i1−3i
4、3j1−3j6 発信アンテナ
4、4a、4b、4c、4d、4e、4f、4g1−4g4、4h1−4h4、4i1−4i4、4j1−4j6 受信アンテナ
5 共振器
6 バッファ
7 抵抗
8 増幅器
9 位相検波器
10 LPF
11 出力端子
12 反転増幅器
13 差動増幅器
14、23 機械結合
15、16 シールド
20、20a 複合振動体
21、22 振動子
211、212、221、222 電極
21aL、21aR、22a 脚
24 基部
25 透明基板
27 接続端子
28 接続端子
30 昇圧回路
31 増幅回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流信号発生源と、
前記交流信号発生源の信号に基づいて電波を送信する送信アンテナと、
電波を受信する受信アンテナと、
前記受信アンテナに接続された共振素子と、
前記交流信号発生源の信号で、前記受信アンテナで受信した信号を位相検波する位相検波手段と、を備える
ことを特徴とする近接センサ。
【請求項2】
前記共振素子は、前記交流信号源の信号に基づいて予め励振される
ことを特徴とする請求項1に記載の近接センサ。
【請求項3】
前記共振素子は、前記交流信号源の信号に基づいて、電気的結合により予め励振される
ことを特徴とする請求項2に記載の近接センサ。
【請求項4】
前記共振素子は、前記交流信号源の信号に基づいて、機械的結合により予め励振される
ことを特徴とする請求項2に記載の近接センサ。
【請求項5】
前記共振素子は、振動子を備えて構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の近接センサ。
【請求項6】
前記交流信号発生源は振動子を有する発振器であり、
前記共振素子の振動子と前記発振器の振動子とが一体に形成された
ことを特徴とする請求項5に記載の近接センサ。
【請求項7】
前記振動子は、水晶振動子、セラミック振動子またはMEMS振動子である
ことを特徴とする請求項5または6に記載の近接センサ。
【請求項8】
前記共振素子は、LC共振回路を備えて構成される
ことを特徴とする請求項1または2に記載の近接センサ。
【請求項9】
前記共振素子の両端からの出力を差動増幅し、前記受信アンテナで受信した信号として出力する差動増幅手段を備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項10】
前記交流信号発生源と前記送信アンテナとの間に、
前記交流信号発生源の回路の電源を昇圧する昇圧手段と、
前記交流信号発生源の信号を、前記昇圧手段で昇圧された電源系で増幅する増幅手段と、を備える
ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項11】
前記送信アンテナと前記受信アンテナのいずれか一方は棒状のアンテナであり、他方はリング状のアンテナである
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項12】
前記リング状のアンテナは、同心円状の複数のリングが接合された形状を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の近接センサ。
【請求項13】
前記リング状のアンテナは、複数回巻かれたコイル状の形状を備える
ことを特徴とする請求項10に記載の近接センサ。
【請求項14】
前記棒状アンテナの先端部は、複数回巻かれたコイル状の形状を備える
ことを特徴とする請求項10から12のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項15】
透明基板を備え、
前記送信アンテナと前記受信アンテナとは、前記透明基板上に透明電極で形成された
ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の近接センサ。
【請求項16】
前記送信アンテナと前記受信アンテナは、互いに同心円のリング状に形成された
ことを特徴とする請求項14に記載の近接センサ。
【請求項17】
前記送信アンテナと前記受信アンテナは、互いに同心円の円弧状に形成された
ことを特徴とする請求項14に記載の近接センサ。
【請求項18】
前記透明基板は矩形状であり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナは、前記透明電基板の角部に、2つの辺に跨って1/4の円弧状に形成された
ことを特徴とする請求項16に記載の近接センサ。
【請求項19】
前記透明基板は矩形状であり、
前記送信アンテナと前記受信アンテナは、前記透明基板の辺部に、1/2の円弧状に形成された
ことを特徴とする請求項16に記載の近接センサ。
【請求項20】
前記送信アンテナと前記受信アンテナの少なくとも一方が、二重以上のパターンで形成された
ことを特徴する請求項15から19のいずれか1項に記載の近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2012−122726(P2012−122726A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−177906(P2009−177906)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000001960)シチズンホールディングス株式会社 (1,939)
【Fターム(参考)】