説明

近接センサ

【課題】物品収納空間に差し込まれた被検出体を精度良く検出し易い近接センサを提供する。
【解決手段】物品収納空間Dに差し込まれた被検出体8との間に静電容量を形成するセンサ構造体Bと、被検出体8の差し込みを前記静電容量に基づいて検出するセンサ回路Cとを有し、センサ構造体Bが、物品収納空間Dの側方に配設してある第1検知電極9と、第1検知電極9に並設してある第2検知電極10と、第1及び第2検知電極10を物品収納空間側とは逆の側から物品収納空間Dの全体に亘って静電遮蔽する遮蔽電極11とを備え、センサ回路Cは、被検出体8と第1検知電極9との間に形成される第1静電容量Caと、被検出体8と第2検知電極10との間に形成される第2静電容量Cbとに基づいて、物品収納空間Dに差し込まれた被検出体8を検出可能に設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検出体との間に静電容量を形成するセンサ構造体と、前記被検出体を前記静電容量に基づいて検出するセンサ回路とを有し、前記センサ構造体が、第1検知電極と、前記第1検知電極に並設してある第2検知電極と、前記第1及び第2検知電極を静電遮蔽する遮蔽電極とを備え、前記センサ回路は、前記被検出体と前記第1検知電極との間に形成される第1静電容量と、前記被検出体と前記第2検知電極との間に形成される第2静電容量とに基づいて、前記被検出体を検出可能に設けてある近接センサに関する。
【背景技術】
【0002】
上記近接センサでは、従来、第1及び第2検知電極の寸法に応じた大きさの遮蔽電極を備えたセンサ構造体を設けてある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4578980号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば自動車のドア内側に設けてあるドアポケットのような物品収納空間において、その物品収納空間に差し込まれた人体の手指などの被検出体を検出可能な近接センサを設置するために、上述の従来のセンサ構造体を設けてあると、遮蔽電極の大きさが物品収納空間の大きさに比べて小さくなる場合がある。
この場合、第1及び第2検知電極に対して物品収納空間の側とは逆の側に存在する物体、例えばドア本体などの収納物とは異なる物体と物品収納空間の収納物とが容量結合して大きな静電容量を形成し、その物体を物品収納空間に差し込まれた被検出体として誤検出するおそれがある。
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであって、物品収納空間に差し込まれた被検出体を精度良く検出できる近接センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による近接センサの第1特徴構成は、物品収納空間に差し込まれた被検出体との間に静電容量を形成するセンサ構造体と、前記物品収納空間への前記被検出体の差し込みを前記静電容量に基づいて検出するセンサ回路とを有し、前記センサ構造体が、前記物品収納空間の側方に配設してある第1検知電極と、前記第1検知電極に並設してある第2検知電極と、前記第1及び第2検知電極を前記物品収納空間の側とは逆の側から前記物品収納空間の全体に亘って静電遮蔽する遮蔽電極とを備え、前記センサ回路は、前記被検出体と前記第1検知電極との間に形成される第1静電容量と、前記被検出体と前記第2検知電極との間に形成される第2静電容量とに基づいて、前記物品収納空間に差し込まれた前記被検出体を検出可能に設けてある点にある。
【0006】
本構成の近接センサは、センサ構造体が、物品収納空間の側方に配設してある第1検知電極と、第1検知電極に並設してある第2検知電極と、第1及び第2検知電極を物品収納空間の側とは逆の側から物品収納空間の全体に亘って静電遮蔽する遮蔽電極とを備えている。
このため、第1及び第2検知電極の物品収納空間の側とは逆の側に存在する物体と物品収納空間の収納物との容量結合による大きな静電容量の形成を抑制することができ、その物体を物品収納空間に差し込まれた被検出体として誤検出するおそれがない。
したがって、本構成の近接センサであれば、物品収納空間に差し込まれた被検出体を精度良く検出し易い。
【0007】
本発明の第2特徴構成は、前記物品収納空間の収納口を、前記第1検知電極と前記第2検知電極との並設方向に沿う一端側に形成してあり、前記第1検知電極を、前記収納口の側に片寄らせて配設してある点にある。
【0008】
本構成のように、第1検知電極を収納口の側に片寄らせることで、物品収納空間の全域に対して第1検知電極を設ける必要がなくなり、その小型化(電極面積の小面積化)を図ることができる。
しかも、物品収納空間の収納口は被検出体が差し込まれる部位であるから、被検出体の検出精度を高く維持することができる。
【0009】
本発明による近接センサの第3特徴構成は、物品収納空間に差し込まれた被検出体との間に静電容量を形成するセンサ構造体と、前記物品収納空間への前記被検出体の差し込みを前記静電容量に基づいて検出するセンサ回路とを有し、前記センサ構造体が、第1検知電極と、前記第1検知電極に並設してある第2検知電極と、前記第1及び第2検知電極を前記物品収納空間の側とは逆の側から静電遮蔽する遮蔽電極とを、前記物品収納空間の収納口よりも前記被検出体の差し込み方向の上手側に備え、前記センサ回路は、前記被検出体と前記第1検知電極との間に形成される第1静電容量と、前記被検出体と前記第2検知電極との間に形成される第2静電容量とに基づいて、前記物品収納空間に差し込まれた前記被検出体を検出可能に設けてある点にある。
【0010】
本構成の近接センサは、センサ構造体が、第1検知電極と、第1検知電極に並設してある第2検知電極と、第1及び第2検知電極を物品収納空間の側とは逆の側から静電遮蔽する遮蔽電極とを、物品収納空間の収納口よりも被検出体の差し込み方向の上手側に備えている。
このため、第1及び第2検知電極の物品収納空間の側とは逆の側に存在する物体と物品収納空間の収納物との容量結合による大きな静電容量の形成を抑制することができ、その物体を物品収納空間に差し込まれた被検出体として誤検出するおそれがない。
特に、第1検知電極と第2検知電極と遮蔽電極とを物品収納空間の収納口よりも被検出体の差し込み方向の上手側に備えているので、収納口から差し込まれる直前の被検出体を検出して、その検出情報に基づいて、例えば物品収納空間を照らすランプの点灯・消灯動作をタイミング良く制御することが可能になる。
したがって、本構成の近接センサであれば、物品収納空間に差し込まれた被検出体を早いタイミングで精度良く検出し易い。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】近接センサが設けられている自動車のドアポケットを示す斜視図である。
【図2】ドアポケットの概略断面図と近接センサの回路図である。
【図3】第2実施形態を示すドアポケットの概略断面図と近接センサの回路図である。
【図4】第3実施形態を示すドアポケットの概略断面図と近接センサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
〔第1実施形態〕
図1,図2は、本発明による近接センサAを装備してある物品収納空間としての自動車のドアポケットDを示す。
ドアポケットDは、鋼製外装板1の内側に樹脂などの非導電性材料で形成された内装材2を備えたドアパネル3の内側(内装材2の側)に、樹脂などの非導電性材料で形成されたポケット形成部材4を取り付けてその内側に形成してある。
【0013】
ドアポケットDは、上方に開口する収納口5と、ドアポケットDの内部を照らすドアポケットランプ6と、ドアポケットランプ6の点灯・消灯動作を制御するランプ制御部7とを備えている。
【0014】
近接センサAは、収納口5からドアポケットDに差し込まれた被検出体としての例えば人体の手指8を検出可能に設けてある。
ランプ制御部7は、ドアポケットDに差し込まれた手指8の近接センサAによる検出情報に基づいてドアポケットランプ6の点灯・消灯動作を制御する。
【0015】
近接センサAは、ドアポケットDに差し込まれた手指8との間に静電容量を形成するセンサ構造体Bと、ドアポケットDへの手指8の差し込みをセンサ構造体Bに形成された静電容量に基づいて検出するセンサ回路Cとを有している。
【0016】
センサ構造体Bは、ドアポケットDのドアパネル側横側方に上下方向に沿わせて配設してある矩形板状の第1検知電極9と、第1検知電極9の外周側に上下方向に沿わせて並設してある矩形枠板状の第2検知電極10と、第1及び第2検知電極9,10をドアポケットDの側とは逆の側からドアポケットDの全体に亘って静電遮蔽する矩形板状の遮蔽電極11とをドアパネル3の内装材2に備えている。
したがって、収納口5は、ドアポケットDの第1検知電極9と第2検知電極10との並設方向に沿う上方の一端側に形成してある。
【0017】
第1検知電極9は、ドアポケットDの収納物Eよりも大きな電極面積を有し、ドアポケットDに差し込まれた手指8との間に大きな静電容量を形成する。
このため、第1検知電極9は、ドアポケットDのドアパネル3の側を全面に亘って覆うようにドアポケットDの寸法を越える寸法で形成して、ドアポケットDと外装板1との間の内装材部分に設けてある。
【0018】
第2検知電極10は、第1検知電極9の外周端縁を板面に沿う方向で一定間隔を隔てて一連に囲む環状に形成して第1検知電極9と面一に配設してあり、電波や環境雑音などの外来雑音を検知する雑音抑止電極を構成している。
【0019】
第2検知電極10は、第1検知電極9の対接地容量に対して充分小さな対接地容量となるように、第1検知電極9よりも充分小さな電極面積を有している。
第1及び第2検知電極9,10は、外来雑音に対して同じレベルで検出することができる電極長を備えている。
【0020】
遮蔽電極11は、ドアポケットDに差し込まれた手指8以外のドアパネル3の外側の人体や外装板1などの影響を排除できるように、第2検知電極10の外周寸法と同じか第2検知電極10よりも大きな寸法に形成して配設して、第1及び第2検知電極9,10を挟んでドアポケットDの側とは反対側に、第1及び第2検知電極9,10に対して一定間隔で平行な上下方向に沿う姿勢で内装材部分に設けてある。
したがって、ドアポケットDに収納された収納物Eとドアパネル3の外側の人体や外装板1などとの容量結合による大きな静電容量の形成を抑制することができる。
【0021】
センサ回路Cは、図2に示すように、ドアポケットDに差し込まれた手指8と第1検知電極9との間に形成される第1静電容量Caと、ドアポケットDに差し込まれた手指8と第2検知電極10との間に形成される第2静電容量Cbとに基づいて、ドアポケットDに差し込まれた手指8を検出可能に設けてある。
すなわち、センサ回路Cは、第1容量検出回路12、第2容量検出回路13、差検出回路14、遮蔽電圧印加回路15、タイミング制御回路16などを備えている。
【0022】
第1及び第2検出電極9,10の夫々は、共通接地電位(共通基準電位)GNDに対して第1及び第2静電容量(対接地容量)Ca,Cbを形成する。
第1静電容量Caは、第1容量検出回路12により検出(測定)され、第2静電容量Cbは、第2容量検出回路13により検出(測定)される。
第1及び第2容量検出回路12,13の夫々は、スイッチドキャパシタ動作により第1,第2静電容量Ca,Cbを検出する。
【0023】
第1及び第2容量検出回路12,13により検出された第1及び第2静電容量Ca,Cbは、差検出回路14に入力される。
差検出回路14は、第1静電容量Caと第2静電容量Cbとの差Vo(Ca−Cb)を、手指8のドアポケットDへの差し込みの有無を反映する検出情報としてランプ制御部7に出力する。
【0024】
遮蔽電極11には、遮蔽電圧印加回路15により、第1及び第2検出電極9,10と同じ電位となるように遮蔽電圧が印加される。
したがって、容量検出回路12,13は、第1及び第2検出電極9,10と遮蔽電極11に同じ電位を与えながら第1及び第2静電容量Ca,Cbを検出するので、第1及び第2検出電極9,10と遮蔽電極11との間では電荷の充放電が行われず、その間での静電容量は等価的にキャンセルされる。
【0025】
タイミング制御回路16は、第1及び第2静電容量Ca,Cbを検出(測定)する間だけ遮蔽電圧が遮蔽電極11に印加されるように、第1及び第2容量検出回路12,13と遮蔽電圧印加回路15とタイミング同期させる。
【0026】
第1静電容量Caと第2静電容量Cbとの差Voは、手指8がドアポケットDに差し込まれていない状態では小さく、手指8がドアポケットDに差し込まれるに伴って増大する。
したがって、ランプ制御部7は、入力された差Voが所定の値以上になることにより、手指8のドアポケットDへの差し込みを検出して、ドアポケットランプ6を点灯させ、入力された差Voが所定の値未満になることにより、手指8のドアポケットDからの抜き出しを検出して、ドアポケットランプ6を消灯させる。
【0027】
〔第2実施形態〕
図3は本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、第1検知電極9を、収納口5の側に片寄らせて配設してある。
すなわち、センサ構造体Bは、ドアポケットDのドアパネル側横側方のうちの収納口5の側に片寄らせて上下方向に沿わせて配設してある矩形板状の第1検知電極9と、第1検知電極9の下側に上下方向に沿わせて並設してある矩形板状の第2検知電極10と、第1及び第2検知電極9,10をドアポケットDの側とは逆の側からドアポケットDの全体に亘って静電遮蔽する遮蔽電極11とを内装材2に備えている。
第2検知電極10は、第1検知電極9よりも充分小さな電極面積を有する帯板状に形成してある。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0028】
〔第3実施形態〕
図4は本発明の別実施形態を示す。
本実施形態では、センサ構造体Bが、第1検知電極9と、第1検知電極9を囲むように当該第1検知電極9に並設してある第2検知電極10と、第1及び第2検知電極9,10をドアポケットDの側とは逆の側から静電遮蔽する遮蔽電極11とを、ドアポケットDの収納口5よりも手指8の差し込み方向の上手側、つまり、収納口5の直上方に沿って収納口5よりも高い位置のドアパネル部分に備えている。
その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0029】
〔その他の実施形態〕
1.本発明による近接センサAは、センサ構造体Bが物品収納空間Dの下面側側方に配設してある第1検知電極9を備えていてもよい。
2.本発明による近接センサAは、第1静電容量Caと第2静電容量Cbとの合計容量に基づいて、物品収納空間Dに差し込まれた被検出体8を検出可能に設けてあってもよい。
3.本発明による近接センサAは、ドアポケット以外の例えば箱の内部空間などの各種物品収納空間Dに差し込まれた被検出体8を検出可能に設けてあってもよい。
4.本発明による近接センサAは、物品収納空間Dの収納口5を、水平方向に沿う一端側に形成してあってもよい。
5.本発明による近接センサAは、物品収納空間Dに差し込まれた人体の手指以外の各種被検出体8を検出可能に設けてあってもよい。
【符号の説明】
【0030】
5 収納口
8 被検出体
9 第1検知電極
10 第2検知電極
11 遮蔽電極
B センサ構造体
C センサ回路
D 物品収納空間
Ca 第1静電容量
Cb 第2静電容量

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品収納空間に差し込まれた被検出体との間に静電容量を形成するセンサ構造体と、
前記物品収納空間への前記被検出体の差し込みを前記静電容量に基づいて検出するセンサ回路とを有し、
前記センサ構造体が、前記物品収納空間の側方に配設してある第1検知電極と、前記第1検知電極に並設してある第2検知電極と、前記第1及び第2検知電極を前記物品収納空間の側とは逆の側から前記物品収納空間の全体に亘って静電遮蔽する遮蔽電極とを備え、
前記センサ回路は、前記被検出体と前記第1検知電極との間に形成される第1静電容量と、前記被検出体と前記第2検知電極との間に形成される第2静電容量とに基づいて、前記物品収納空間に差し込まれた前記被検出体を検出可能に設けてある近接センサ。
【請求項2】
前記物品収納空間の収納口を、前記第1検知電極と前記第2検知電極との並設方向に沿う一端側に形成してあり、
前記第1検知電極を、前記収納口の側に片寄らせて配設してある請求項1記載の近接センサ。
【請求項3】
物品収納空間に差し込まれた被検出体との間に静電容量を形成するセンサ構造体と、
前記物品収納空間への前記被検出体の差し込みを前記静電容量に基づいて検出するセンサ回路とを有し、
前記センサ構造体が、第1検知電極と、前記第1検知電極に並設してある第2検知電極と、前記第1及び第2検知電極を前記物品収納空間の側とは逆の側から静電遮蔽する遮蔽電極とを、前記物品収納空間の収納口よりも前記被検出体の差し込み方向の上手側に備え、
前記センサ回路は、前記被検出体と前記第1検知電極との間に形成される第1静電容量と、前記被検出体と前記第2検知電極との間に形成される第2静電容量とに基づいて、前記物品収納空間に差し込まれた前記被検出体を検出可能に設けてある近接センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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