説明

近接場光導波路の製造方法および近接場光導波路

【課題】広範囲、均一かつ3次元的に分散された金属ナノ粒子を、安定して保持可能な近接場光導波路の製造方法およびこの製造方法による近接場光導波路を提供する。
【解決手段】限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜14を形成する工程と、有機物16で被覆される金属ナノ粒子18を生成する工程と、基板12上を接着膜14で被覆する工程と、金属ナノ粒子18を接着膜14上に堆積する工程とを有することを特徴とする近接場光導波路10の製造方法およびこの製造方法による近接場光導波路10。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属ナノ粒子が3次元的に分散された近接場光導波路の製造方法およびこの製造方法による近接場光導波路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ナノテクノロジー技術の進展によって、プローブの先端に発生する伝播しない光(近接場光)の利用を試みる実験が頻繁に行われている。例えば、これまで半導体リソグラフィー技術によって量子サイズのドットを有する近接場光導波路を形成して、このドット間に近接場を導波させる試みが行われている。また、電磁気学的な計算シミュレーションによるドット間の近接場光導波の検証が行われている。これらの結果から、近接場光がドット間を導波してゆくことが明らかとなっている。
【0003】
しかし、半導体リソグラフィーによる微細な量子ドット形成は産業的にはコストが高く、近接場光を用いるデバイスの産業化への移行の妨げとなっている。このため、より安価に近接場光導波路を製造する技術が希求されている。そこで、有機物に被覆された金属ナノ粒子を用いた近接場光導波路用材料の製造方法が報告されている(例えば、非特許文献1)。
【非特許文献1】T.Teranishi,S.Hasegawa,T.Shimizu and M.Miyake,“Heat−Induced Size Evolution of Gold Nanoparticles in the Solid State,”Adv.Mater.(2001),13,No.22,pp1699−1701.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
もっとも、従来の、有機物に被覆された金属ナノ粒子を用いる技術は、粒子膜生成の確認をTEMグリッドによって行っている。特に、特許文献1においては透過型電子線顕微鏡(TEM)用のグリッド上に作製した単層の粒子の膜によって行われている。このようにして作製した粒子膜は、粒子がTEMグリッド上に付着したわずか1層の膜となる。また、この手法で得られる粒子層は100nm以下の極小範囲に限定されたものである。
【0005】
本発明は、上記事情を考慮してなされたものであり、その目的とするところは、広範囲、均一かつ3次元的に分散された金属ナノ粒子を、安定して保持可能な近接場光導波路の製造方法およびこの製造方法による近接場光導波路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の近接場光導波路の製造方法は、限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜を形成する工程と、有機物で被覆される金属ナノ粒子を生成する工程と、基板上を前記接着膜で被覆する工程と、前記金属ナノ粒子を前記接着膜上に堆積する工程とを有することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記堆積する工程の後に、前記金属ナノ粒子を加熱する工程を有することが望ましい。
【0008】
ここで、前記加熱する工程における加熱温度が、前記金属ナノ粒子の熱分析による転位温度±25℃であることが望ましい。
【0009】
ここで、前記接着膜が硝酸セルロースまたは酢酸セルロースからなることが望ましい。
【0010】
ここで、前記金属ナノ粒子の平均粒径が、0.8nm以上8nm以下であることが望ましい。
【0011】
ここで、前記金属ナノ粒子が金(Au)ナノ粒子であり前記有機物がチオール誘導体であること、または、前記金属ナノ粒子が銀(Ag)ナノ粒子であり前記有機物がカルボン酸誘導体であることが望ましい。
【0012】
ここで、前記被覆する工程と、前記堆積する工程との間に、前記接着膜上にレジストパターンを形成する工程を有することが望ましい。
【0013】
本発明の一態様の近接場光導波路は、基板と、前記基板上の、限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜と、前記接着膜上の、有機物中に分散された金属ナノ粒子からなる金属ナノ粒子膜を有し、前記金属ナノ粒子膜の一部が、前記接着膜の内部に侵入していることを特徴とする。
【0014】
ここで、前記接着膜が硝酸セルロースまたは酢酸セルロースからなることが望ましい。
【0015】
ここで、前記金属ナノ粒子の平均粒径が、0.8nm以上8nm以下であることが望ましい。
【0016】
ここで、前記金属ナノ粒子が金(Au)ナノ粒子であり前記有機物がチオール誘導体であること、または、前記金属ナノ粒子が銀(Ag)ナノ粒子であり前記有機物がカルボン酸誘導体であることが望ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、広範囲、均一かつ3次元的に分散された金属ナノ粒子を、安定して保持可能な近接場光導波路の製造方法およびこの製造方法による近接場光導波路を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態の近接場光導波路の製造方法および近接場光導波路について説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態の近接場光導波路の製造方法は、限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜を形成する工程と、有機物で被覆される金属ナノ粒子を生成する工程と、基板上を接着膜で被覆する工程と、金属ナノ粒子を接着膜上に堆積する工程とを有する。
【0020】
なお、ここで限外ろ過特性または逆浸透特性とは一般的に膜が2nm前後の粒子透過性を有する場合のことを指す。2nmを境に呼び名が変わるが、これは逆浸透特性を有する膜が海水の淡水化処理のために用いられた歴史に由来する。一方の限外ろ過特性はこれよりも大きなサイズの粒子を透過する特性の場合を指す。したがって、呼び名は違っても双方とも数nm前後の粒子の透過性を有していることに変わりは無く、粒子サイズによる明確な境界定義がなされているわけではない。本明細書においては、限外ろ過特性または逆浸透特性を有するとは、数nm前後の粒子の透過性を有することを意味するものとする。
【0021】
また、本命明細書中金属ナノ粒子とは、1000nm未満、好ましくは10nm以下のサイズ(粒径)を有する金属粒子を意味するものとする。
【0022】
以下、本実施の形態の近接場光導波路の製造方法について、より詳細に説明する。
【0023】
まず、例えば、石英ガラスやシリコンからなる基板を準備する。ここで、基板として、可視光に対して透明な基板を用いれば、後に記載するように製造される金属ナノ粒子膜の特性検査を容易にすることが可能となる。
【0024】
次に、限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜を形成する。ここで接着膜の材料としては、限外ろ過特性または逆浸透特性を有している膜であれば特に限定されないが、基板に対する良好な接着性を得る観点からは、弾性を有した高分子体であることが望ましい。
【0025】
例えば、高分子体として、硝酸セルロース、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、芳香族ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリビニールフォルマール、ポリスルホン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリアクリロニトリルが一般的には用いられるが、この中でも硝酸セルロースが好ましい。
【0026】
硝酸セルロースは容易に有機溶媒に溶解した状態となり、基板上で薄膜を形成する観点から利便性が最も優れている。また、可視光領域において高い透明性を有する膜が形成できる点からも近接場光導波路のような光学関連素材としては望ましい。
【0027】
もっとも、接着膜として、限外ろ過特性または逆浸透特性を有するセラミックスを適用することを本実施の形態は排除するわけではない。
【0028】
次に、有機物で被覆される金属ナノ粒子を生成する。金属ナノ粒子としては、例えば、金ナノ粒子や銀ナノ粒子等が適用可能である。そして、金属ナノ粒子の平均粒径は、0.8nm以上8nm以下であることが望ましい。この範囲を上回ると、製造される近接場光導波路の近接場光導波特性が劣化し始めるからである。また、この範囲を下回る金属ナノ粒子の生成は困難だからである。
【0029】
次に、洗浄された基板上を、先に形成した接着膜で被覆する。例えば、接着膜を水面に展開して基板上に被覆する方法を取ることが可能である。
【0030】
次に、有機物で被覆される金属ナノ粒子を、基板上を被覆する接着膜の上に堆積する。ここで、金属ナノ粒子を溶媒中に溶解または分散して塗布することが望ましい。これによって、均一な塗布が可能となると共に、下地の接着膜への金属ナノ粒子の浸透が容易となるからである。
【0031】
上述のように、溶媒中に溶解または分散した金属ナノ粒子を塗布した場合、金属ナノ粒子の一部は、接着膜が粒子の透過性を有することにより、容易に接着膜中に浸透する。そして、溶媒が気化した後、浸透した金属ナノ粒子は接着膜内部に固定化される。
【0032】
接着膜外部、すなわち、接着膜上部に堆積した金属ナノ粒子は有機物で被覆されているため、溶媒が気化した後、金属ナノ粒子表面の有機物を介して互いに接続されている。そして、この有機物を介して、接着膜内部に浸透した金属ナノ粒子とも連続的につながることになる。
【0033】
本実施の形態の製造方法により、従来行われていたシランカップリング剤などによる基板表面の改質処理に比べて、基板による十分な金属ナノ粒子保持能力を得ることができ、金属ナノ粒子の3次元方向への堆積が可能となる。そして、従来、100nm角程度のサイズでしか形成できなかった金属ナノ粒子膜を、少なくとも数cm角以上の基板の上に形成することが可能となる。
【0034】
以上の製造方法により形成される近接場光導波路の概念断面図を図1に示す。図1に示すように、近接場光導波路10は、基板12と、基板12上の、限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜14と、接着膜14上の、有機物16中に分散された金属ナノ粒子18からなる金属ナノ粒子膜20を有している。そして、金属ナノ粒子膜20の一部が接着膜14との界面から、接着膜14の内部に侵入している。
【0035】
この近接場光導波路10は、例えば、金属ナノ粒子膜20の一端から近接場光を入射し、金属ナノ粒子18間を局在化した近接場光を伝播させ、金属ナノ粒子膜20の他端から出射させることで近接場光導波路として機能する。
【0036】
そして、この近接場光導波路10は、上述のように、金属ナノ粒子膜20の一部が接着膜14との界面から、接着膜14の内部に侵入していることにより、金属ナノ粒子膜20の基板12および接着膜14への接着性が極めて高い。したがって、デバイスとして使用される場合にも、外部ストレスによる金属ナノ粒子膜のはがれが生じにくい。したがって、高い動作信頼性を確保することが可能となる。
【0037】
なお、本実施の形態の近接場光導波路の製造方法において、金属ナノ粒子を接着膜上に堆積する工程の後に、金属ナノ粒子を加熱する工程を有することが望ましい。図2はある条件化における金属ナノ粒子堆積後の金属ナノ粒子膜の表面TEM写真である。図2に示すように、金属ナノ粒子の粒径よりもサイズの大きな二次凝集体が見られる。
【0038】
このような二次凝集体が見られる場合、金属ナノ粒子を接着膜上に堆積した後、基板上の金属ナノ粒子を、例えば、ホットプレートやオーブンで加熱する。図3は、加熱後の金属ナノ粒子膜の表面TEM写真である。図3に示すように、二次凝集体が消滅し、金属ナノ粒子の均一分散を得ることができる。
【0039】
また、加熱する工程における加熱温度が、金属ナノ粒子の熱分析による転位温度±25℃であることが望ましい。なお、この場合の適切な加熱温度は、金属ナノ粒子によって異なる。金属ナノ粒子の転位点(転位温度)、すなわち、示差走査熱量測定器で得られる変曲点となる温度は、金属ナノ粒子の金属種、金属ナノ粒子を被覆する有機物の性質、さらには有機物部分を含む金属ナノ粒子の粒径によって異なるため、一概に決定することはできない。
【0040】
もっとも、熱量測定型の熱分析により、金属ナノ粒子の転位点(転位温度)を求めることが可能である。そして、この転位温度±25℃で加熱することにより、金属ナノ粒子の良好な均一分散が得られる。この温度を下回ると、二次凝集体が消滅しきらないおそれがある。また、この温度を上回ると、金属ナノ粒子の融着が生ずるおそれがある。
【0041】
図4は、転位点よりも数十℃高い温度で過熱した場合の金属ナノ粒子膜の表面TEM写真である。図4に示すように金属ナノ粒子の融着が生ずる。なお、この融着が生ずる温度は、重量測定型の熱分析により決定することが可能である。
【0042】
また、本実施の形態の近接場光導波路の製造方法および近接場光導波路において、基板および接着膜を可視光に対し透明な物質を用いることが望ましい。可視光に対し透明な物質を用いることによって、製造中あるいは製造後の可視光による検査が容易になるからである。
【0043】
例えば、基板として石英ガラス、接着膜としてアモルファス状態のセルロース膜を適用することできる。この組み合わせの場合、基板と接着膜の光吸収量は、金属ナノ粒子膜の光吸収量を大幅に下回る。したがって、金属ナノ粒子膜自体の光吸収量を精度よく測定することが可能となる。
【0044】
上述のように、本実施の形態の金属ナノ粒子膜は、加熱温度に対して状態が敏感に変化する。したがって、基板および接着膜を可視光に対し透明な物質を用いることは、製造中または輸送中に、意図しない加熱が生じた場合の影響を判別する上で極めて有効に作用する。
【0045】
図5に、ある条件において接着膜上に金属ナノ粒子を堆積した後、金属ナノ粒子を加熱しない場合(図2に相当)、120℃の加熱を行った場合(図3に相当)、転位点以上である150℃の加熱を行った場合(図4に相当)の試料の光吸収量測定結果を示す。転位点を超えた高温によって金属ナノ粒子の形状が変化した場合には、金属ナノ粒子自体の吸収量が著しく変化し、容易にその変化を捉えることができる。
【0046】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態の近接場光導波路の製造方法は、基板上を接着膜で被覆する工程と、金属ナノ粒子を接着膜上に堆積する工程との間に、接着膜上にレジストパターンを形成する工程を有すること以外は、第1の実施の形態と同様である。したがって、第1の実施の形態と重複する記述については、記載を省略する。
【0047】
まず、第1の実施の形態と同様にして、基板上を接着膜で被覆する。この後、例えば、スピンコータでレジストを接着膜上に塗布する。その後、マスク(レチクル)を用いて、光をレジスト上に照射した後、レジストを現像し所望のレジストパターンを得る。
【0048】
その後、金属ナノ粒子を接着膜上に堆積させた後、レジストを剥離することで、レジストのなかった部分にのみ金属ナノ粒子膜を残す。この方法により、基板上に所望のパターンを有する近接光導波路を形成することが可能となる。
【0049】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。実施の形態の説明においては、近接場光導波路の製造方法、近接場光導波路等で、本発明の説明に直接必要としない部分等については記載を省略したが、必要とされる近接場光導波路の製造方法、近接場光導波路等に関わる要素を適宜選択して用いることができる。
【0050】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての近接場光導波路の製造方法、近接場光導波路は、本発明の範囲に包含される。本発明の範囲は、特許請求の範囲およびその均等物の範囲によって定義されるものである。
【実施例】
【0051】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
【0052】
(実施例1)
ドデカンチオール(和光純薬)、テトラクロロ金酸四水和物(和光純薬)、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロミド(東京化成)を用意し、常温でトルエンと水の混濁液からナノ粒子の合成を行った。金属の還元には水素化ホウ素ナトリウム(和光純薬)を用いた。テトラクロロ金酸四水和物1等量に対して、ドデカンチオール1等量、テトラ−n−オクチルアンモニウムブロミド2等量、水素化ホウ素ナトリウムは10等量分を用いた。溶媒は、水3に対してトルエン5の割合とした。3時間反応させた後、有機層を取り出して濃縮し、アルコールで析出させた。析出した黒色固体をろ過して回収した。黒色固体を熱重量/示差熱同時分析測定器および示差走査熱量測定器(TG−DTA6200EXSTAR6000/セイコーインスツルメンツ製、SSC5200DSC220C/セイコーインスツルメンツ製)を用いて窒素雰囲気下において上限温度500℃で熱分析測定(TG−DTA)行った結果、重量は25.9%減少した。上限温度250℃で熱量分析(DSC)を行った結果、その転移温度は124.4℃であった。
【0053】
厚さ1mm、縦横25mm角の透明なガラス基板を用意し、コロジオン溶液(関東化学、5%液)を70%と酢酸イソアミル30%に調整して、水面に展開して基板表面を被覆した。塗布後、60℃で2時間乾燥させた。これによって、ガラス基板上に接着膜となる硝酸セルロース膜を形成した。
【0054】
先の合成から得られた黒色固体(ドデカンチオールを配位子とした2nmの金ナノ粒子)をトルエンに溶解させた溶液をコロジオン膜上に塗布した。基板は40℃に加熱し、溶媒を蒸発させた。このようにして作製した基板を120℃、150℃にそれぞれオーブンで1時間加熱した。
【0055】
この基板に850nmのレーザ光を照射して透過光を観察した。また分光光度計によって加熱前、120℃加熱後、150℃加熱後の3つの試料に対して、300−850nmの吸収量を測定した。結果は図5に示す。次に、超薄切片法により基板に対して水平方向へ切断して、電子ビームによる透過像(表面TEM写真)を取得した。図2が加熱前、図3が120℃加熱後、図4が150℃加熱後である。
【0056】
図5に示すように、金(Au)のプラズモン吸収が、加熱なし、および、120℃加熱後の試料で確認された。特に、120℃加熱後の試料で吸収が顕著であった。また、120℃加熱後の試料で、金ナノ粒子の、チオール誘導体である有機物中の均一な分散が確認された(図3)。金ナノ粒子の平均粒径は約2nmであった。
【0057】
(実施例2)
実施例1と同様の方法で、ガラス基板上に硝酸セルロース膜を形成した。i線レジスト(THMR−iP5720HP、東京応化工業)を塗布して90℃に加熱した。ラインマスクパターン(ライン幅1μm)に従った露光を行い、ディベロッパー(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液)で露光部を剥離した。100℃で加熱を行った。その後、実施例1記載の黒色固体を塗布して乾燥させた。再度、120℃で熱処理を行い、次いで露光を行った。ディベロッパーで残ったレジストを剥離した。
【0058】
ガラス基板上にパターニングされた金ナノ粒子膜が形成できた。
【0059】
(実施例3)
メルカプトコハク酸と金からなるナノ粒子(田中貴金属MSA、ロット番号051007−1、AuMSAコロイド溶液1.5wt%)を実施例1記載の方法で作製したセルロース膜の上に塗布した。溶媒が気化させた後、薄切片法により基板に対して垂直方向へ切断して、電子ビームによる透過像(断面TEM写真)を取得した。結果を図6に示す。基板上12の接着膜14上に、3次元的に高密度に金ナノ粒子が均一分散している金属ナノ粒子膜20が存在することが確認された。また、金属ナノ粒子膜20の一部が、接着膜14内部に侵入していることも確認された。金ナノ粒子の平均粒径は約5nmであった。
【0060】
(実施例4)
エタノール中にテトラクロロ金酸四水和物(和光純薬)、チオジグリコール(関東化学)およびトリフェニルホスフィン(和光試薬)を加えた。3時間攪拌した後、アセトンで析出させた。固体を乾燥させて1規定の水酸化ナトリウム溶液に溶解させて、ヨウ化ナトリウムを加えた。クロロホルムで分液して抽出を行った。固体を取り出し、エタノール中で1等量の水素化ホウ素ナトリウムによる還元を行った。赤茶色の溶液を得た。
【0061】
接着膜のセルロース膜は酢酸セルロースを20%、アセトン69%、水10%、過塩素酸マグネシウムを1%で配合して、ガラスの状に塗布した。
【0062】
先の合成で得られた赤茶色の溶液を、セルロース膜の上に塗布した。0℃付近でアセトンの揮発を行い、氷水中に1時間浸漬した。この後、80℃で1時間加熱処理を行った。
【0063】
実施例1および実施例3同様、基板上の接着膜上に、高密度に金ナノ粒子が均一分散している金属ナノ粒子膜が存在することが確認された。
【0064】
(実施例5)
クロロトリフェニルホスフィン金1.00gを55mlのエタノールに溶解させた。そこへ等モルの水素化ホウ素ナトリウムを加えて室温で2時間撹拌を続けた。この反応液を1Lのへキサンに加えて撹拌を続けた。沈殿した茶褐色の固体をろ集して、へキサンで洗浄した後、クロロホルム1に対してヘキサン1を混合した溶媒で再度洗浄を行った。さらにクロロホルム3に対してヘキサン1を混合した溶媒で洗浄した。この粒子を実施例1記載のセルロース膜上に塗布し、実施例1と同様の処理を行った。
【0065】
実施例1および実施例3同様、基板上の接着膜上に、高密度に金ナノ粒子が均一分散している金属ナノ粒子膜が存在することが確認された。金ナノ粒子の平均粒径は約0.8nmであった。
【0066】
(実施例6)
ラウリン酸Na16.7gに硝酸銀12.7gを200mlの2−プロパノールに溶解させて室温で6時間攪拌を続けた。薄桃色の白色固体、ラウリン酸Agを得た。このラウリン酸Ag6.18gを100mlのフラスコに入れた。トリエチルアミン58mlを加えて、80℃で2時間反応させた。白い銀のカルボン酸塩がブラウン色に変化した。常温に戻した後、アセトン中に反応液を注いだ。ブラウン色の粘性固体が析出した。しばらく攪拌を続けて固体から粘性が消失したのを確認した。アセトン中に分散した固体を濾集した。ブラウン色の固体を0.1g得た。その後、実施例1と同様の方法で、ガラス基板上のセルロース膜の上にこの黒色固体を塗布した。
【0067】
基板上の接着膜上に、3次元的に高密度に銀ナノ粒子が、カルボン酸誘導体からなる有機物中に均一分散している金属ナノ粒子膜が存在することが確認された。
【0068】
(比較例)
実施例1記載の方法で黒色固体を得た。次にガラス基板にKBM3103(信越化学製)10wt%溶液を塗布して100℃で加熱した。黒色固体を溶媒に溶かして、ガラス基板上に塗布した。次に、超薄切片法により基板に対して断面方向へ切断して、電子ビームによる透過像を取得した。結果を図7に示す。
【0069】
金ナノ粒子の金属ナノ粒子膜20は基板12上に2次元的、かつ、不均一に存在するのみであった。
【0070】
以上、実施例および比較例により、本発明を用いることで、広範囲、均一かつ3次元的に分散された金属ナノ粒子を、安定して保持可能な近接場光導波路が製造できることが明らかになった。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】第1の実施の形態の近接場光導波路の概念断面図。
【図2】第1の実施の形態および実施例1の金属ナノ粒子膜の表面TEM写真。
【図3】第1の実施の形態および実施例1の金属ナノ粒子膜の表面TEM写真。
【図4】第1の実施の形態および実施例1の金属ナノ粒子膜の表面TEM写真。
【図5】第1の実施の形態および実施例1の光吸収量測定結果を示す図。
【図6】実施例3の近接場光導波路の断面TEM写真。
【図7】比較例の近接場光導波路の断面TEM写真。
【符号の説明】
【0072】
10 近接場光導波路
12 基板
14 接着膜
16 有機物
18 金属ナノ粒子
20 金属ナノ粒子膜


【特許請求の範囲】
【請求項1】
限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜を形成する工程と、
有機物で被覆される金属ナノ粒子を生成する工程と、
基板上を前記接着膜で被覆する工程と、
前記金属ナノ粒子を前記接着膜上に堆積する工程と
を有することを特徴とする近接場光導波路の製造方法。
【請求項2】
前記堆積する工程の後に、前記金属ナノ粒子を加熱する工程を有することを特徴とする請求項1記載の近接場光導波路の製造方法。
【請求項3】
前記加熱する工程における加熱温度が、前記金属ナノ粒子の熱分析による転位温度±25℃であることを特徴とする請求項2記載の近接場光導波路の製造方法。
【請求項4】
前記接着膜が硝酸セルロースまたは酢酸セルロースからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3いずれか一項に記載の近接場光導波路の製造方法。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子の平均粒径が、0.8nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項4いずれか一項に記載の近接場光導波路の製造方法。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子が金(Au)ナノ粒子であり前記有機物がチオール誘導体であること、または、前記金属ナノ粒子が銀(Ag)ナノ粒子であり前記有機物がカルボン酸誘導体であることを特徴とする請求項1ないし請求項5いずれか一項に記載の近接場光導波路の製造方法。
【請求項7】
前記被覆する工程と、前記堆積する工程との間に、前記接着膜上にレジストパターンを形成する工程を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6いずれか一項に記載の近接場光導波路の製造方法。
【請求項8】
基板と、
前記基板上の、限外ろ過特性または逆浸透特性を有する接着膜と、
前記接着膜上の、有機物中に分散された金属ナノ粒子からなる金属ナノ粒子膜を有し、
前記金属ナノ粒子膜の一部が、前記接着膜の内部に侵入していることを特徴とする近接場光導波路。
【請求項9】
前記接着膜が硝酸セルロースまたは酢酸セルロースからなることを特徴とする請求項8記載の近接場光導波路。
【請求項10】
前記金属ナノ粒子の平均粒径が、0.8nm以上8nm以下であることを特徴とする請求項8または請求項9記載の近接場光導波路。
【請求項11】
前記前記金属ナノ粒子が金(Au)ナノ粒子であり前記有機物がチオール誘導体であること、または、前記金属ナノ粒子が銀(Ag)ナノ粒子であり前記有機物がカルボン酸誘導体であることを特徴とする請求項8ないし請求項10いずれか一項に記載の近接場光導波路。

【図1】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−92686(P2009−92686A)
【公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−260108(P2007−260108)
【出願日】平成19年10月3日(2007.10.3)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成19年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「低損失オプティカル新機能部材技術開発」産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】