説明

近接照射療法用の製品及び方法

放射性シードとは異なる着色及び直径のスペーサー部材と放射性シードが内部に交互に配置された中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材、並びにその製造及び使用方法。放射性部材は、例えば前立腺癌の治療に使用し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概括的には放射線治療に関する。さらに具体的には、近接照射療法に用いる放射線源並びにかかる線源の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近接照射療法は病変組織の近傍に放射線源を配置する医療の総称であり、患者の体内に放射線源を一時的に刺入(又は挿入)する場合と、永久的に刺入する場合がある。したがって、治療すべき患部の近傍に放射線源が位置する。そのため、周囲又は介在する健常組織の放射線被曝を比較的低くとどめて、患部に高い線量の放射線を投与できるという利点がある。
【0003】
関節炎、並びに乳癌、脳腫瘍、肝臓癌、卵巣癌などの癌を始めとする様々な疾患、特に男性の前立腺癌の治療に近接照射療法を用いることが提案されている(例えば、J.C.Blasko et al., The Urological Clinics of North America, 23, 633−650(1996)及びH.Ragde et al., Cancer, 80, 442−453(1997)参照)。前立腺癌は米国で男性の悪性腫瘍のうち罹患率が最も高い病気であり、その死者数は1995年だけでも44000人を超える。治療には、放射線源を一時的に刺入し、予定期間経過後に摘出するものがある。別法として、放射線源を患者の体内に永久に刺入し、予定期間で崩壊させて不活性な状態とする場合もある。一時刺入法を用いるか永久刺入法を用いるかは、選択するアイソトープ及び治療に要する期間と強度によって決まる。
【0004】
前立腺治療のための永久刺入は、一時線源に比べて半減期が比較的短く、エネルギーの低い放射性同位体を含んでいる。
【0005】
永久刺入し得る線源の例として、ヨウ素−125又はパラジウム−103を放射性同位体として含むものがある。放射性同位体は一般にチタンのようなカプセルに封入されて「シード」を形成しており、これを刺入する。前立腺癌の治療のための一時刺入には、イリジウム−192を放射性同位体として含むものがある。
【0006】
近接照射療法に用いられる従来の放射線源には、いわゆるシードがあるが、これは、例えばチタンの密封容器であり、容器/チャンバ壁を放射線が透過できる密封チャンバ内に放射性同位体が収容されている(米国特許第4323055号及び同第3351049号)。かかるシードは、チャンバ/容器壁部を透過し得る放射線を放出する放射性同位体での使用にしか適していない。したがって、シードは、β線を放出する放射性同位体ではなく、γ線又は低エネルギーX線を放出する放射性同位体と共に用いられる。
【0007】
放射性シードは一般に針に装填され、挿入プロセスをガイドする超音波造影を用いて前立腺などの患部に針を挿入する。放射性シードは、針内に各々独立して配置して針から出して患部に独立に配置するか、或いは、中空の吸収性縫合糸部材に装填することによって紐状に連結される。
【0008】
米国特許第5460592号には、放射性デバイスを移動させるための方法及び装置が開示されている。このデバイスは、可撓性の細長い織物又は編組生体吸収性担体材料の内部に複数の放射性シードを離隔して配置したものからなる。シードを保持する担体材料は加熱すると半硬質化する。放射性シードが内部に配置された所定長の半硬質担体材料を従来の中空金属製送出針又はアプリケータカートリッジに装填すれば、腫瘍のような患部又はその近傍への放射性シードの刺入に用いることができる。
【0009】
編組半硬質生体吸収性縫合糸材料の内部にヨウ素−125シードを中心間距離が0.6〜1.2cmとなるように規則的に配置した商品が、Medi−Physics社からI−125 RAPID Strand(商標)として市販されている。この製品は、口腔、口唇及び舌の癌を始めとする頭頚部癌、脳腫瘍、肺癌、子宮頸癌、膣腫瘍及び前立腺癌などの疾患の治療に使用し得る。
【0010】
この種の縫合糸/放射性シード複合体の利点は、縫合糸材料中での間隔に応じて放射性シードが所定の間隔で患者に刺入又は挿入されることである。生体吸収性材料は患者の体内に徐々に吸収されて、離隔したシードが適所に残る。この所定の間隔と縫合糸の半硬質性は、総放射線量と患者体内のシードから投与させる線量プロファイルを医師が計算するのに役立ち、シードを正確に配置するのにも役立つ。さらに、2以上のシードが一度に刺入されるので、ばらばらのシードを1個1個配置する場合に比べて、刺入に要する時間が短縮される。刺入部位からシードが移動するおそれも低減する(Tapen et al., Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., vol.42(5), p.1063−1067, 1998)。
【0011】
個々のシードによる方法と比べた中空縫合糸複合体のもう1つの利点は、シードがばらばらであると、いったん前立腺などの患部に配置しても、前立腺から体内の肺を始めとする様々な箇所にシードが移動しかねないことである。シードが移動すると刺入の質が低下するだけでなく、患者に害を与えかねない。
【0012】
しかし、中空縫合糸複合体にも、製造時にその配置に導入される放射性シード間の離隔に用いられる間隙のため、長軸強度に限界がある。この間隙部の長軸強度は、縫合糸材料の強度に限界を与える。加熱剛化プロセスで間隙部強度は向上するものの、得られる強度は依然理想的とはいえない。こうした限界のため、縫合糸複合体が刺入針内で詰まり、放射性シードの間の間隙部で縫合糸複合体がつぶれることが時として起こりかねない。こうした状態に陥ると、針を前立腺から抜去して、針に1本1本放射性シードを再装填しなければならない。このような方法の変更は時間がかかり、費用もかさむ。
【0013】
かかる状況を是正する方法が、米国特許第6264600号に開示されている。この米国特許には、複数の放射性シードと中間体スペーサーが交互に配置された中空縫合糸を含む方法及び装置が開示されている。この縫合糸/シード複合体では長軸強度は向上するが、改良の余地が依然幾つか残されている。
【0014】
第一に、縫合糸が刺入針内で詰まるおそれを低減するため長軸強度をさらに一段と高める必要がある。
【0015】
また、中空縫合糸/シード複合体も現在の中空縫合糸/シード/スペーサー複合体も単色であり、アセンブリのシードと間隙部の寸法が異なるだけである。そのため、刺入において複合体を調製する際に不確実性が生じる。現在の取付け具では、重要な放射性シード部から離れた縫合糸複合体の間隙部でしか切断できない。しかし、いったん縫合糸複合体を取付け具から取り外したら、これは不可能となる。
【0016】
最後に、現在の縫合糸/シード/スペーサー複合体では、シードもスペーサーも同じ寸法である。寸法に差がないので、切断はさらに難しくい。
【特許文献1】米国特許第4323055号明細書
【特許文献2】米国特許第3351049号明細書
【特許文献3】米国特許第5460592号明細書
【特許文献4】米国特許第6264600号明細書
【非特許文献1】J.C.Blasko et al., The Urological Clinics of North America, 23, 633−650(1996)
【非特許文献2】H.Ragde et al., Cancer, 80, 442−453(1997)
【非特許文献3】Tapen et al., Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., vol.42(5), p.1063−1067, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、公知の線源の短所が一切なく、好ましくは自動化製造プロセスで製造できる改良放射線源に対するニーズが存在する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
そこで、本発明の一態様では、複数の放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材であって、上記スペーサー部材が、非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは異なる直径を有する放射性部材を提供する。放射性シードとスペーサー部材は、好ましくは、縫合糸部材を加熱して変形させてから冷却することによって、縫合糸部材内部に保持される。
【0019】
本発明の別の態様では、1以上の放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に離隔して配置された1以上のスロットを備える中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材であって、上記スペーサー部材が非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは異なる直径を有する放射性部材を提供する。好ましくは、縫合糸部材は本質的に剛性である。スロットは連続した溝からなるものでもよいし、縫合糸材料に沿って長手方向に離隔した一連の離散開口部からなるものでもよい。好ましくは、放射性シードとスペーサーはヒートシールによって縫合糸部材内にしっかりと保持される。
【0020】
本発明の別の特徴として、放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材の製造方法であって、
a)中空生体吸収性縫合糸部材を準備するステップと、
b)複数の放射性シードを準備するステップと、
c)非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは直径の異なる複数の生体吸収性スペーサー部材を準備するステップと、
d)放射線シードを、縫合糸材料の融点又は軟化点を超える温度に加熱するステップと、
e)加熱したシードとスペーサー部材を所定のパターンで縫合糸部材上に交互に配置して、縫合糸部材を各線源及びスペーサー部材の周囲に溶融又は変形させるステップと、
f)縫合糸部材が各線源及びスペーサー部材の周囲で凝固又は硬化して各線源が適所にしっかりと保持されるように、縫合糸部材を冷却するステップと
を含む方法が提供される。
【0021】
この方法の別の実施形態では、ステップd)及びe)において、縫合糸部材自体を、例えば押出加工後に、(その一体性を失わない温度に)昇温し、次いで放射性シードとスペーサー部材を縫合糸部材上に配置して縫合糸部材の冷却に伴って適所に保持されるようにしてもよい。かかる方法では、放射性シードは低温でもよいし、シード自体を加熱してもよい。
【0022】
ステップe)において、縫合糸部材を放射性シードとスペーサー部材の周囲に変形させる、又はさらに変形させるため、適宜外力を加えてもよい。例えば、加熱プレートを縫合糸部材の外側に当てて、縫合糸部材を放射性シード及びスペーサー部材の周囲にさらに溶融させて、それらが適所に保持されるようにしてもよい。
【0023】
本方法のさらに別の実施形態では、この方法は、放射性部材を滅菌するステップをさらに含む。
【0024】
本発明の別の実施形態では、近接照射療法用放射性部材の使用方法であって、
a)放射性部材を、スペーサー部材の一箇所で、処方された刺入計画に従って所定の長さに切断するステップと、
b)切断した放射性部材を、処方治療領域への刺入に適した中空刺入針のハブ端に、放射性部材全体が針内に収まるように挿入するステップと、
c)放射性部材の先端が針の栓材に到達するまで、スタイレットで放射性部材を中空刺入針に押し込むステップと、
d)装填した刺入針を、患者の処方治療領域に刺入するステップと、
e)刺入針を放射性部材の周囲から抜去して、放射性部材を患者の処方治療領域に残すステップと
を含む方法が提供される。
【0025】
本発明の別の実施形態では、近接照射療法用放射性部材の使用方法であって、
a)刺入針を、患者の処方治療領域に刺入するステップと、
b)放射性部材を、スペーサー部材の一箇所で、処方された刺入計画に従って所定の長さに切断するステップと、
c)放射性部材を後充填装置に装填するステップと、
d)後充填装置内の放射性部材を刺入針に移して刺入針ハブに嵌挿するステップと、
e)スタイレットを利用して、放射性部材を後充填装置から刺入針を介して最終的に患者の体内に進めるステップと、
f)刺入針及び後充填装置を抜去するステップと
を含む方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図面を参照すると、図1は、本発明の一実施形態に係る、中空の細長い生体吸収性縫合糸部材3内に放射性シード2とスペーサー部材1が交互に配置された近接照射療法用の放射性部材の断面図を示す。
【0027】
放射性シード2は通例直径0.5mm〜1mm、長さ4mm〜5mmである。ただし、放射性シードの寸法は種々変更できる。各放射性シードの間のスペーサー部材の長さは一定でもよいし、可変でもよい。スペーサー部材は放射性部材の先縁と後縁のいずれにも存在する。
【0028】
スペーサー部材の着色を用いると、縫合糸部材内の構成要素同士を容易に識別できる配色を生み出すことができる。非染色縫合糸部材3から識別するため、スペーサー部材1は例えば青紫色に染色し得る。縫合糸部材3内の構成要素同士が容易に識別できるように、スペーサー部材1の直径を放射性シード2の直径と異なるサイズ、例えば小さくしてもよい。製造プロセス時に放射性部材に加熱剛化すると、長軸剛性が高まり、縫合糸部材3が内側の放射性シード2及びスペーサー部材1に接着し、さらにスペーサー部材1から色が縫合糸部材3に移って構成要素同士の識別が容易になる。
【0029】
縫合糸部材とスペーサー部材は同じ材料から製造できる。これらは無毒な生体適合性で生体吸収性の材料又はかかる材料の混合物であればよい。本明細書で用いる生体吸収性材料とは、大半が患者の体内で代謝され、最終的には体内から消滅する材料をいう。適当な生体吸収性材料の例として、ポリ(グリコール酸)(PGA)及びポリ(乳酸)(PLA)、グリコール酸及び乳酸のポリマー及びコポリマーのようなグリコール酸又は乳酸のポリエステルアミド、ポリジオキサノンなどとが挙げられる。かかる材料に関しては、米国特許第5460592号にさらに詳細に記載されており、その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。適当な市販ポリマーとして、ポリグリカプロン25(MONCRYL)(商標)、ポリグラクチン910(VICRYL)(商標)、及びポリジオキサノン(PDS II)が挙げられ、これらはすべてEthicon社(米国ニュージャージー州)から市販されている。
【0030】
本発明で使用し得る適当な生体吸収性ポリマー及びポリマー組成物は、以下の特許に記載されており、それらの記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす:吸収性縫合糸としての使用に適した組成物について開示した米国特許第4052988号、ポリグリコリドホモポリマーを含む組成物の吸収性縫合糸としての使用について開示した米国特許第3297033号、ラクチドとグリコリドの高分子量ポリマーを含む組成物について開示した米国特許第2668162号、ラクチドのポリマーとラクチドとグリコリドのコポリマーとを含む組成物について開示した米国特許第2703316号、L(−)ラクチドの光学活性ホモポリマー、つまりポリL−ラクチドを含む組成物について開示した米国特許第2758987号、吸収性縫合糸として有用なL(−)ラクチドとグリコリドのコポリマーの組成物について開示した米国特許第3636956号、環状ジオールと線状ジオールの混合物から誘導される合成吸収性結晶質同形コポリオキシレートポリマーについて開示した米国特許第4141087号、p−ジオキサノンと2,5−モルホリンジオンのコポリマーについて開示した米国特許第4441496号、ポリ(グリコール酸)/ポリ(オキシアルキレン)ABA型トリブロックコポリマーについて開示した米国特許第4452973号、置換安息香酸と二価アルコールとグリコリド及び/又はラクチドのポリエステルについて開示した米国特許第4510295号、吸収性ガラス充填材を含む合成吸収性ポリマーから製造した外科用デバイスについて開示した米国特許第4612923号、ラクチドとグリコリドとポリ(p−ジオキサノン)のコポリマーのブレンドを含む外科用ファスナについて開示した米国特許第4646741号、グリコリドに富むポリマーブレンドから製造した外科用ファスナについて開示した米国特許第4741337号、生体吸収性半結晶質デプシペプチドポリマーについて開示した米国特許第4916209号、生体吸収性の芳香族ポリ無水物ポリマーについて開示した米国特許第5264540号、放射線滅菌可能な吸収性二価アルコールポリマーについて開示した米国特許第4689424号。
【0031】
生体吸収性ポリマー及びポリマー組成物は、生体吸収性ポリマーとポリ(スクシンイミド)からなる充填剤との組成物について開示した米国特許第4473670号(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)、並びに生体吸収性ポリマーと塩化ナトリウム又は塩化カリウムの微細充填剤について開示した米国特許第5521280号(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に記載されているような生体吸収性充填剤を含んでいると、特に有用である。かかる充填剤は、生体吸収性ポリマー及びポリマー組成物の剛性を高める。
【0032】
ポリ(グリコール酸)の融点は230℃〜260℃であり、ガラス転移点は45℃〜50℃である(MSDS(化学物質安全性データシート)、Medisorb(商標)ラクチド/グリコリドポリマー)。これを縫合糸材料として使用する場合、本発明の方法のステップd)及びe)において、スペーサー部材及び/又は縫合糸部材をこのガラス転移温度以上に加熱すべきである。
【0033】
生体吸収性材料は、好ましくは、刺入後約1〜14日間はその一体性を維持すべきである。これは、少なくとも刺入後の短期間、線源の間隔を保持するのに役立つ。本発明の放射性部材を用いると、適切な線量測定を担保し、線源の移動や脱落を最小限に抑えるのにも役立つ。好ましくは、縫合糸部材は、合計約70〜120日で生体組織に完全に吸収されるようにすべきである。
【0034】
「本質的に剛性」とは、縫合糸材料及びスペーサー部材がある程度の構造的一体性を有していて、その使用目的に十分な剛性を有するべきであることを意味する。縫合糸部材及びスペーサー部材は、放射性部材の保管、搬送及び刺入の際に、放射性シード間の間隔を保つ十分な剛性を有するべきである。放射性シードを適所に封じ込めるためシードで加熱したときに縫合糸部材及びスペーサー部材が溶融・変形したときは、冷却時に再び剛化すべきである。
【0035】
さらに、縫合糸部材は細長い形状に賦形できるものとすべきである。好ましくは、いったん細長い形状とした縫合糸部材及びスペーサー部材は、例えば外科用メスなどでの切断が容易なものとすべきである。好ましくは、スペーサー部材の直径を放射性シードの直径と異なるサイズとして、縫合糸材料内でスペーサー部材が容易に識別できるようにする。例えば、スペーサー部材の直径は、放射性シードの直径よりも0.1mm〜0.5mm小さくすることができる。縫合糸部材内の構成要素の識別が容易となる配色を生じさせるため、スペーサー部材に青紫色などの着色を施してもよい。染色したスペーサー部材は、非染色縫合糸部材から容易に識別できる。縫合糸部材は、好ましくは、特殊な保管又は取扱条件を何ら必要とせずに、かなりの貯蔵寿命を有するべきである。縫合糸部材は、例えば蒸気、乾熱、エチレンオキシド、電子ビーム又はガンマ線などの従来の滅菌法、並びにパルス光源殺菌法で滅菌できるものとすべきである。好適な滅菌法はエチレンオキシドである。
【0036】
縫合糸部材は、放射性シードとスペーサー部材を十分に収容できる内径を有するべきである。その断面は適当な形状であればどんな形でもよく、例えば、略円形、1以上の扁平面を有する略円形、或いは四角形若しくは三角形などの略多角形である。本発明の好ましくは縫合糸は、製造の容易さと併せて、送出針の内側と接する縫合糸の表面積を制限して針と縫合糸表面との摩擦による針内での縫合糸の目詰りのおそれを低減するため、略四角形の断面を有する。摩擦の低減は、例えば平坦面が生ずるように円周の一部を扁平にした略円形断面など、1以上の平坦面を有する任意の断面によっても達成できる。適当な縫合糸は、例えば六角形、八角形又は十二角形若しくは十六角形など略多角形の形状のものである。そこで、本発明のもう一つの好ましい縫合糸は略八角形である。略三角形の断面を有する縫合糸も、送出針デバイスの内壁と接する辺が略四角形よりも1つ少ないので、好ましい。
【0037】
縫合糸部材の長さは種々変更できる。好ましくは、1本の放射性部材は2〜15個の放射性シードを含む。
【0038】
針その他の送出デバイスの内面と任意の断面形状をもつ縫合糸との表面接触は、送出デバイスに接する縫合糸表面に適当な表面構造を設けることによって、さらに低減することができる。例えば、縫合糸表面が湾曲している場合、針又は送出デバイスに接する縫合糸表面部にリッジ、球面部その他の突起部を導入することによって表面接触を低減することができる。好ましくは、こうした表面構造は生体適合性又は生分解性縫合糸材料からなる。かかる表面構造の形成に適した方法は、縫合糸に設けられる構造の雌型に構成された表面をもつ加熱金型又はプレス板を適用することからなる。縫合糸表面に加熱金型を適用すると、縫合糸が雌型キャビティに流れ込む。縫合糸を金型から離型して冷却すると、金型の陰像と反転した陽像が縫合糸の表面に形成される。縫合糸の表面にビードやバンプが形成されていると、縫合糸と送出デバイスとして使用される針との接触面積が減り、摩擦が少なくなる。
【0039】
好ましくは、超音波造影法を用いて縫合糸を視認できるようにする。例えば、縫合糸は、超音波視認性を高める役割を果たす音波反射性の粒子又は気泡を含んでいてもよい。縫合糸がポリマーであれば、縫合糸を形成する押出プロセスの際に、例えば押出中のポリマーに気泡を吹き込むことによって、ポリマーに気泡を封入することができる。別法として、押出前に適当な気体雰囲気中でポリマーを(例えば超音波処理によって)攪拌して、ポリマーに気泡を導入することもできる。適当な気体としては、空気、窒素、二酸化炭素、フレオン(登録商標)、パーフルオロブタンなどのフルオロカーボンが挙げられる。
【0040】
別法として、押出の直前に、縫合糸部材を例えば大気圧を超える加圧気体に付して、気体を材料に溶解させてもよい。加温による圧力低下を伴う押出(例えば、周囲圧力及び温度環境への押出)で、気体が膨張して縫合糸部材内部で気泡を形成する。好ましくは、気泡は縫合糸部材の表面又は表面近傍にある。
【0041】
超音波で縫合糸を均一に視認できるようにしても、不均一に視認できるようにしてもよい。例えば、縫合糸のある領域の超音波視認性を他の領域よりも高めてもよい。これは、縫合糸に、音波反射性気泡又は粒子の集団が存在する領域を設けることによって可能となる。
【0042】
縫合糸は、以上に加えて或いはその代替として、その超音波視認性を高める役割を果たす粒子を含んでいてもよい。適当な粒子としては、金属(例えばチタン又はアルミニウム)の粒子、ガラス、シリカ、酸化鉄鉱物、砂、粘土、テフロン(登録商標)などのプラスチック、米国特許第5741522号及び同第5776496号(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に記載されている粒度の均一な多孔質非凝集粒子、米国特許第5648095号(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されているような中空マイクロカプセル又は中実マイクロスフェア、及び、縮合糖、縮合アミノ酸、又はPEG(ポリエチレングリコール)のマイクロスフェアが挙げられる。
【0043】
本発明の造影法視認性(例えば超音波視認性)の放射性部材を近接照射療法に用いる利点は、信号及び画像の読取り、測定及び分析が適当なコンピュータソフトウェアで十分迅速に行えるので医師がリアルタイム線量測定を行えることである。これは、臨床上の観点から患者と医療従事者の双方に有益である。ただし、本発明の部材は、放射性シードの造影法視認性によって得られる情報を用いるあらゆるタイプの線量測定マッピングを伴う方法に使用し得る。
【0044】
さらに、医師は手術中に、現場の既存の同じ造影技術(例えば超音波)を用いて、器官(例えば、前立腺)の位置及び大きさと放射性シードの配置を共に確認することができる。そのため、線源の実際の刺入位置に基づいて線量パターンを計算し直す必要が生じた場合に、追加の放射性シードを刺入する必要があるか否かを医師が計算することができる。
【0045】
縫合糸部材の全体的寸法は、送出針又はアプリケータカートリッジの内側に縫合糸部材が収まるようにすべきである。例えば、薄肉針の内径が0.102cm(0.040インチ)であれば、縫合糸の有効最大径は好ましくは0.102cm(0.040インチ)未満として、縫合糸が針から送出できるようにする。
【0046】
縫合糸は、線源の周囲に断面が均一又は不均一になるように分布させることができる。例えば、線源が略円柱状の放射性シードの場合、縫合糸内面の断面形状は好ましくは実質的に丸くできる。別の実施形態では、内面は略四角形であってもよい。
【0047】
放射線源として、従来のあらゆる放射性シードを使用し得る。例えば、米国特許第5404309号、同第4784116号、同第4702228号、同第4323055号及び同第3351049号に開示された放射性シードなどが挙げられ、これらの米国特許の記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。「シード」とは、放射性同位体が収容又は封入された密閉容器(例えば金属容器)を意味する。適当な生体適合性容器材料として、チタン、金、白金及びステンレス鋼のような金属又は合金、ポリエステル及びビニルポリマーのようなプラスチック、並びにポリウレタン、ポリエチレン及びポリ(酢酸ビニル)のようなポリマー、グラファイトのような複合材料、ケイ素酸化物含有マトリックスのようなガラス、その他任意の生体適合性材料が挙げられる。チタン及びステンレス鋼が好ましい容器材料である。
【0048】
放射性シードは、適当な放射性同位体をポリマー又はセラミックマトリックスに封入したものでもよい。
【0049】
代表的な放射性シードの形状は略円柱状である。代表的なシードの寸法は長さ約4.5mm、直径約0.8mmである。
【0050】
近接照射療法での使用に適したいかなる放射性同位体も放射性シードに使用し得る。非限定的な具体例としては、パラジウム−103、ヨウ素−125、ストロンチウム−89、硫黄−35、セシウム−131、金−198、ツリウム−170、クロム−56、ヒ素−73、イットリウム−90、リン−32及びこれらの混合物が挙げられる。特に好ましい放射性同位体はパラジウム−103及びヨウ素−125である。本発明で用いる放射性シードには、2種類以上の放射性同位体が存在していてもよい。
【0051】
放射性シードとスペーサー部材は、好ましくは、細長い縫合糸部材の長軸方向に直線的に装填される。縫合糸に対する放射性シードの配向は、縫合糸及び放射性シードの全体的大きさ及び形状によって左右される。放射性シードの形状が略円柱状、例えば従来型のシードであれば、その長手方向軸を、好ましくは細長い縫合糸自体の長手方向軸と平行に配向させる。好ましくは、放射性シードは規則的に、例えば0.6〜1.2cmの間隔、好ましくは約1cmの間隔で配置する。線源を前立腺癌の治療のため刺入する場合、約1cmの間隔が好ましい。シードとシードの間に、適当な長さのスペーサー部材を配置する。特定の用途に用いられる放射性シードの数は、使用する縫合糸部材の長さによって左右される。好ましくは、放射性シードは、医療スタッフが特定の用途に望ましい長さに切断又は折り取ることができる長ストリップとして準備する。
【0052】
好ましくは、1本の縫合糸内のすべての放射性シードは同じ放射性同位体を含有し、及び/又は同じ放射線強度のものである。1本の縫合糸に2種類以上の線源、又は2以上の強度の線源が含まれている場合には、線量が予測できるように異なる放射性シードを規則的パターンで配置すべきである。
【0053】
好ましくは、放射性部材を治具に挿入して治具アセンブリとすることができる。かかる治具は、米国特許第5460592号に開示されており、その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。図2は、放射性部材の放射性シード2と、治具4内におけるその配置を示す。治具4は、後段の製造(剛化)ステップ、運搬、さらには刺入用セグメントの準備(切断)のため、放射性シード2とスペーサー部材1を定位置に配置することができる。
【0054】
次いで、治具アセンブリを乾燥加熱する。乾燥加熱によって、縫合糸部材は剛性となる。この剛化プロセスは160℃〜190℃で60〜90分間実施できる。
【0055】
本発明のさらに別の特徴として、放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材の製造方法であって、
a)内部に長手方向の溝又はスロットを有する細長い好ましくは単一ストランドの生体吸収性縫合糸部材を準備するステップと、
b)複数の放射性シードを準備するステップと、
c)非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは直径の異なる複数の生体吸収性スペーサー部材を準備するステップと、
d)放射性シード及びスペーサー部材が溝内にしっかりと保持されるように、放射性シード及びスペーサー部材を縫合糸部材の溝内に逐次又は同時に配置するステップと
を含む方法が提供される。
【0056】
好ましくは、溝又はスロットは、縫合糸断面の平坦面とは正反対の側に設けられる。例えば、縫合糸が実質的に丸くて1つの扁平面をもつ場合、溝又はスロットはその平坦面の反対側に配置される。こうすると、例えば製造時に簡単に配向させることができ、平坦面を基準として用いてスリットが最も上にくるように縫合糸部材を配向させることができるので、線源を簡単に溝に押し込むことができる。
【0057】
好ましくは、溝又はスロットは、いったんその中に線源を配置したら線源がしっかりと保持される形状とする。例えば、線源を開口部から押込んで適所に「挟持」しなければならないように溝の開口部を溝自体及び線源の幅よりも若干狭くして、いったん押し込めば溝に保持されるようにしてもよい。例えば、縫合糸の長軸に沿って溝開口部に隣接した溝の内側にレール又は細長いリップを形成して、放射性シード及びスペーサー部材がいったんレール又はリップを越えて押込まれたら、レール又はリップによって溝内の所定の位置に保持されるようにしてもよい。別法として、線源を溝内の適所に保持するため、適度な間隔をおいた一連の突起部(例えばノブ又はタブ)を溝開口部のすぐ内側に設けてもよい。好ましくは、レール、リップ又は突起部は溝開口部の両側に形成される。
【0058】
上記の構成の別法又は追加として、適当な生体適合性接着剤で放射性シード及びスペーサー部材を適所に保持してもよい。例えば、適当な接着剤又は樹脂のビードを線源と共に溝に入れ、接着剤又は樹脂を乾燥させるか、或いは硬化法を用いて乾燥させる。適当な生体適合性接着剤は当技術分野で公知であり、例えば、Tra−Bond US製の二液型エポキシ接着剤Tra−Bond 2105のようなエポキシ接着剤(Chem. Eng. News, 8 Dec 1997, 75(49) p40参照。その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)、特開平05−017499号公報(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されたチロシン−及びリシン−含有ヘプタペプチド及びポリペプチド、米国特許第5015677号(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されたポリフェノール系タンパク質由来の接着剤、Proc. IUPAC, I.U.P.A.C., Macromol. Symp., 28th(1982),395(その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)に開示されたポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)と5%の5−メタクリロキシエチル無水トリメリト酸を部分酸化トリブチルボランと共に含む接着剤組成物のような歯科用セメント接着剤、ポリ(プロピルメタクリレート)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート−コ−エチルメタクリレート)及びシリコーンゲル(Proc. SPIE−Int. Soc. Opt. Eng, (1998), 3258, 164−168参照。その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)が挙げられる。
【0059】
上記の構成の別法又は追加として、例えば、線源の最も幅の広い部分よりも上に位置する溝縁部の上部を、1枚以上の加熱プレート、バッフル、フランジ又は偏向部材(例えば縫合糸の軸に平行で放射性シードの投影半径に実質的に垂直に配向した2枚の板で、互いに実質的に垂直な2枚の板)を接触させて、溝縁部との相互作用によって溝の開口部を狭くする圧縮ステップの適用によって、溝両側の縁部を外力の印加によって同時に変形又は狭窄させてもよい。これは溝に線源を配置した後に実施できる。別法として、上述のように溝に圧縮力が加わるように構成した回転式加熱ローラ又はホイールを使用してもよい。この圧縮を行うために、ローラ又はホイールの縁部を凹状にしてよい。圧縮は連続的に実施し得る。
【0060】
別法として、溝に線源を配置した後、加熱プレートを用いて溝の縁部を折り曲げることもできる。縫合糸材料の溝開口において、溝の縁部は溝の底面に実質的に垂直にすることができる。溝の縁部は、線源の中間点、例えば線源を溝に配置した状態で線源を端部から見ると線源の最も幅の広い部分(略円形の線源であればその直径など)を超えて延在してもよい。溝に線源を配置した状態で、加熱プレート、バッフル、フランジ又は偏向部材を垂直な溝縁部の上又は横から当てて、線源の最も幅広部分よりも上の垂直縁部に接触させる。すると、加熱プレートによって垂直な溝縁部が軟化し、機械的力で縁部が線源上に折り曲げられるので、線源を適所に挟時することができる。加熱プレートを取除けば、折り曲がった縁部が冷却され、溝付き縫合糸の適所に線源をしっかりと保持することができる。
【0061】
別の実施形態では、溝の上方縁部に圧縮力を印加するように構成された加熱回転式ホイール又はローラを用いて、放射性シードを配置した後の溝の開口部を狭めることができる。溝の所定の位置に1以上の放射性シード及びスペーサー部材を備えた縫合糸を、加熱回転式ホイール又はローラの下で供給して、ホイール又はローラの一部を縫合糸の溝開口部近傍の領域に接触させて、その部分を軟化又は溶融させて、線源の周囲に変形させることによって、線源を所定の位置に保持することができる。好ましくは、縫合糸と接するホイール又はローラの一部を凹面にして、溝両側の縁部を同時に変形又は狭窄させて、内部に線源が収容された完全又は部分的に閉じたチューブを形成するようにしてもよい。縫合糸の所定部分とホイール又はローラとの接触は、ホイール又はローラが回転するので、一時的なものとすることができる。適宜、縫合糸を強制的に湾曲させてホイール又はローラの円周に追従させて張力下に保持して、縫合糸を延伸、圧縮又はさらに成形してもよい。
【0062】
縫合糸は、連続法でホイール又はローラの下で供給してもよい。適宜、縫合糸に接するホイール又はローラの一部は雄型又は雌型を含んでいてもよく、縫合糸と接触したときに反転模倣、例えば隆起部又はバンプを含む模様が縫合糸に転写されるようにしてもよい。
【0063】
別法として、又はこれに追加して、放射性シード及びスペーサー部材を装填した後、その放射性シード及びスペーサー部材を溝又は独立した開口部内で適所に保持するため、その縫合糸を、Vicryl(登録商標)ブレイドなどの適当なコーティングで被うことができる。
【0064】
製造プロセスの最後に、放射性部材を適当な長さに切断すれば、米国特許第5460592号に開示されているような治具に各々独立して装填することができる。治具アセンブリは、上述の実施形態で説明したように乾熱プロセスで剛化することができる。
【0065】
適宜、本発明の放射性部材は製造現場から使用現場に輸送するため遮蔽される。好ましくは、包装後の製品は、オートクレーブ、ガンマ線照射、エチレンオキシド滅菌、又はパルス光源滅菌のような従来の滅菌法で滅菌する。次いで、製品を無菌ユニットとして製造現場から使用現場に輸送し、包装及び遮蔽から取出せば、すぐに使用できる状態にある。
【0066】
本発明の放射性部材は、頭頚部癌(口腔、口唇及び舌の癌を含む)、脳腫瘍、肺癌、子宮頸癌、膣腫瘍及び前立腺癌を始めとする疾患の治療に使用し得る。本放射性部材は、一次治療(例えば、前立腺癌又は切除不可能な腫瘍の治療)に使用できるし、原発腫瘍切除後の残存病変の治療に使用することもできる。本放射性部材は、外部照射療法、化学療法又はホルモン療法などの他の治療法と同時又はそれらの完後に使用することもできる。
【0067】
本発明の放射性部材は単独で使用することもできるし、或いは別個の放射線源(例えばシード)と併用することもできる。
【0068】
本発明の別の態様として、例えば癌又は関節炎、特に前立腺癌のような、放射線治療に敏感な病気の治療方法であって、内部に放射線源が離隔して配置された本質的に剛性の細長い単一ストランドの生体吸収性縫合糸部材を含む放射性部材を患者体内の治療すべき部位又はその近傍に、治療に有効な線量が到達するのに十分な期間、配置することを含む方法が提供される。
【0069】
好ましい一実施形態では、放射性部材を、適当な造影技術、好ましくは超音波造影法をリアルタイム線量測定装置と併用して視認できるようにする。
【0070】
本発明の放射性部材は、図3に示すように、適当な長さの縫合糸を中空針の先端部に入れ、スタイレットを針に挿入することによって患者に刺入することができる。針5を患者に挿入し、スタイレット越しに引き抜いて、縫合糸を適所に残す。刺入法については、例えばA.van’t Riet et al., Int. J. Radiation Oncology Biol. Phys., Vol.24, p.555−558,1992を参照されたい。その記載内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0071】
例えば、放射性部材7を、処方刺入計画に従って所要の長さに調製する。その調製には、放射性部材を包装及び無菌遮蔽から取出し、処方長さにカットするステップが含まれる。処方長さにカットした放射性部材を次にハブ端部6を通して刺入針に挿入し、アセンブリ全体が針5内に完全に収容される位置まで挿入する。次いで、放射性部材をその先端が骨蝋のような針の栓材に達するまで、スタイレットで中空刺入針に押込む。装填した刺入針を前立腺のような患者の処方治療領域に刺入する。その後、刺入針を抜去して、放射性部材を処方治療領域に残す。放射性部材は、直ぐに調製及び使用ができるように、滅菌状態で提供される。
【0072】
別の刺入針装填法として、図4に示すような後充填(アフターローディング)装置の使用が挙げられる。この実施形態では、術前の刺入計画に従って、放射性部材を装填する前に、刺入針5を例えば前立腺のような患者の処方治療領域に刺入することができる。次に、処方長さに調製された放射性部材7を後充填装置8に装填して、放射性部材を一時的に収容する。必要なときに、放射性部材を刺入針に移して刺入針ハブに嵌挿する。次いで、スタイレットを用いて放射性部材を後充填装置を通して針に、最終的に患者の体内に前進させる。
【0073】
本明細書に開示した特定の実施形態は本発明の幾つかの態様を例示することを目的としたものであり、本明細書及び特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない。あらゆる均等な実施形態は本発明の技術的範囲に属する。実際、本明細書の以上の説明から、本明細書に例示及び記載した実施形態以外にも様々な変形が可能であることは当業者には明らかであろう。かかる変形も特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の改良縫合糸複合体の断面図。
【図2】細長いシード縫合糸部材と、第1及び第2の凹部を横断するナイフ刃スロットを備えた治具部材の第1及び第2の凹部に配置された放射性シードの部分分解図。
【図3】患者に刺入する前に、製造した放射性部材のセグメントを近接照射療法用針に装填するところを示す図で。
【図4】製造したデバイスのセグメントを後充填装置に装填し、次いで患者への刺入時に近接照射療法用針に装填するところを示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材であって、上記スペーサー部材が、非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは異なる直径を有する、放射性部材。
【請求項2】
前記スペーサー部材の直径が放射性シードよりも0.1mm〜0.5mm小さい、請求項1記載の放射性部材。
【請求項3】
前記スペーサー部材が青紫色に染色されている、請求項1記載の放射性部材。
【請求項4】
縫合糸部材がポリ(グリコール酸)、ポリ(乳酸)、グリコール酸もしくは乳酸のポリエステルアミド、又はポリジオキサノンを含む、請求項1記載の放射性部材。
【請求項5】
担体材料の断面が略円形である、請求項1記載の放射性部材。
【請求項6】
担体の断面が少なくとも1つの平坦面を有することを特徴とする、請求項1記載の放射性部材。
【請求項7】
担体の断面が略多角形、好ましくは略八角形、四角形又は三角形である、請求項1記載の放射性部材。
【請求項8】
担体が超音波反射性の粒子又は気泡を含む、請求項1記載の放射性部材。
【請求項9】
1以上の放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に離隔して配置された1以上のスロットを備える中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材であって、上記スペーサー部材が非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは異なる直径を有する、放射性部材。
【請求項10】
放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材の製造方法であって、
a)中空生体吸収性縫合糸部材を準備するステップと、
b)複数の放射性シードを準備するステップと、
c)非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは直径の異なる複数の生体吸収性スペーサー部材を準備するステップと、
d)放射線源を、縫合糸材料の融点又は軟化点を超える温度に加熱するステップと、
e)加熱した線源とスペーサー部材を所定のパターンで縫合糸部材上に交互に配置して、縫合糸部材を各線源及びスペーサー部材の周囲に溶融又は変形させるステップと、
f)縫合糸部材が各線源及びスペーサー部材の周囲で凝固又は硬化して各線源が適所にしっかりと保持されるように、縫合糸部材を冷却するステップと
を含む方法。
【請求項11】
前記スペーサー部材の直径が放射性シードよりも0.1mm〜0.5mm小さい、請求項10記載の方法。
【請求項12】
前記スペーサー部材の色が青紫色に染色されている、請求項10記載の方法。
【請求項13】
前記放射性部材を滅菌するステップをさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項14】
放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材の製造方法であって、
a)好ましくは単一ストランドの生体吸収性縫合糸部材であって、その融点又は軟化点を超える温度にある縫合糸部材を準備するステップと、
b)複数の放射性シードを準備するステップと、
c)非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは直径の異なる複数の生体吸収性スペーサー部材を準備するステップと、
d)適宜、放射性シード及び/又はスペーサー部材を、縫合糸部材の融点又は軟化点を超える温度に加熱するステップと、
e)(適宜加熱した)放射性シード及びスペーサー部材を縫合糸部材上に交互に配置して、縫合糸部材を放射性シード及びスペーサー部材の周囲に溶融又は変形させるステップと、
f)縫合糸部材が各線源及びスペーサー部材の周囲で凝固又は硬化して各放射性シードとスペーサー部材が適所にしっかりと保持されるように、縫合糸部材を冷却するステップと
を含む方法。
【請求項15】
放射性シードとスペーサー部材とが内部に交互に配置された中空の細長い生体吸収性縫合糸部材を含む近接照射療法用の放射性部材の製造方法であって、
a)内部に長手方向の溝又はスロットを有する細長い好ましくは単一ストランドの生体吸収性縫合糸部材を準備するステップと、
b)複数の放射性シードを準備するステップと、
c)非染色放射性シードとは異なる色に染色され、放射性シードとは直径の異なる複数の生体吸収性スペーサー部材を準備するステップと、
d)放射性シード及びスペーサー部材が溝内にしっかりと保持されるように、放射性シード及びスペーサー部材を縫合糸部材の溝内に逐次又は同時に配置するステップと
を含む方法。
【請求項16】
生体適合性接着剤又は樹脂を用いて放射性シード及びスペーサー部材を溝内に保持する、請求項15記載の方法。
【請求項17】
1以上のレール、リップ、タブ又はノブによって放射性シード及びスペーサー部材を溝内に保持する、請求項15記載の方法。
【請求項18】
各放射性シード及びスペーサー部材が溝内にしっかりと保持されるように放射性シード及びスペーサー部材周囲の溝の縁部を変形させるための外力を印加する手段を提供するステップをさらに含む、請求項15記載の方法。
【請求項19】
前記手段が、加熱プレート、フランジ、ホイール又はローラを含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記手段が凹面を含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
放射線治療に敏感な病気の治療方法であって、請求項1記載の放射性部材を患者体内の治療すべき部位又はその近傍に、治療に有効な線量が到達するのに十分な期間、配置することを含む方法。
【請求項22】
治療すべき病気が前立腺癌である、請求項21記載の治療方法。
【請求項23】
適当なイメージング技術をリアルタイム線量測定装置と併用して放射性部材をイメージングする、請求項22記載の方法。
【請求項24】
前記イメージング技術が超音波造影を含む、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ホイール又は治具に装填された請求項1記載の放射性部材。
【請求項26】
前記ホイール又は治具が遮蔽されている、請求項25記載の放射性部材。
【請求項27】
近接照射療法用放射性部材の使用方法であって、
a)放射性部材を、スペーサー部材の一箇所で、処方された刺入計画に従って所定の長さに切断するステップと、
b)切断した放射性部材を、処方治療領域への刺入に適した中空刺入針のハブ端に、放射性部材全体が針内に収まるように挿入するステップと、
c)放射性部材の先端が針の栓材に到達するまで、スタイレットで放射性部材を中空刺入針に押し込むステップと、
d)装填した刺入針を、患者の処方治療領域に刺入するステップと、
e)刺入針を放射性部材の周囲から抜去して、放射性部材を患者の処方治療領域に残すステップと
を含む方法。
【請求項28】
近接照射療法用放射性部材の使用方法であって、
a)刺入針を、患者の処方治療領域に刺入するステップと、
b)放射性部材を、スペーサー部材の一箇所で、処方された刺入計画に従って所定の長さに切断するステップと、
c)放射性部材を後充填装置に装填するステップと、
d)後充填装置内の放射性部材を刺入針に移して刺入針ハブに嵌挿するステップと、
e)スタイレットを利用して、放射性部材を後充填装置から刺入針を介して最終的に患者の体内に進めるステップと、
f)刺入針及び後充填装置を抜去するステップと
を含む方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2006−520644(P2006−520644A)
【公表日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−507253(P2006−507253)
【出願日】平成16年3月17日(2004.3.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/008084
【国際公開番号】WO2004/082762
【国際公開日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(500436053)メディ−フィジックス・インコーポレイテッド (18)
【Fターム(参考)】