説明

近赤外用石英系イメージファイバおよびその製造方法

【課題】血管内に挿入可能で構造が最適化され、高コントラストで、解像度が高く、高NAで、近赤外領域における画像診断の精度を向上する。
【解決手段】共通クラッド2と、共通クラッド2を貫通する複数のコア1とを備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、コア1にGe、共通クラッド2が純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、共通クラッド2に対するコア1の中心軸での比屈折率差Δは3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが4.5μm〜10μmであり、クラッド厚が0.5μm〜3.5μmであり、ファイバ径が500μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバおよびその製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近赤外可視光領域(約1000nm〜約2000nm程度)の光を伝送するイメージファイバおよびその製造方法に関するもので、特に、近赤外用石英系イメージファイバを利用した血管内視鏡などでの使用に好適な近赤外用石英系イメージファイバおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の外科手術においては、血液によって観察を妨害されない分野、例えば関節内視鏡、腹腔鏡、子宮内視鏡、尿管内視鏡、結腸内視鏡においては、可視光画像を直接観察することができることから、可視光イメージファイバを適用することができる。
【0003】
血液によって満たされている環境下では、可視光イメージファイバを適用することによっては不透明な画像しか観察することができない。そのため、間接的な診断方法、例えば、X線蛍光透視鏡、磁気共鳴映像法(MRI:Magnetic Resonance Imaging)、超音波診断法などが適用されている。
【0004】
近赤外用石英系イメージファイバおよびそれを用いた極細径内視鏡については、既に開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、カットオフ波長LP11を使用する近赤外域外にNA、コア径を設定することを提案している。具体的には、特許文献1に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、カットオフ波長は1.2μmより短く、NA値は0.3〜0.5、コア径は0.5〜3μm、コア/クラッド径比は1.5〜5に設定することが提案されている。また、特許文献1に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、イメージ伝送用の波長範囲は、0.6〜1.2μmの領域である。
さらに、血液中における赤外光領域のイメージングについても、開示されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2においては、血液中のヘモグロビンによる赤外光の散乱を考慮したイメージファイバ結合型赤外イメージング装置および方法が示されているが、
イメージファイバの具体的構造については、開示されていない。
【特許文献1】特開平8−240728号公報
【特許文献2】米国特許第6,178,346号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、従来の可視光領域を対象とするイメージファイバを波長1.6μmの近赤外波長領域で使用した場合、全く画像を検出することができないことを見出した。
【0006】
従来の可視光領域を対象とするイメージファイバを近赤外波長領域で使用する場合、コア間のクロストークが大きく、近赤外波長領域において画像を観測することはできない。
【0007】
また、近赤外波長領域におけるイメージ伝送特性に対する構造として最適化されていない従来のイメージファイバの場合、損失特性は、図16のラインAのように表されて、例えば、約1000nm〜約2000nmの波長範囲の近赤外波長領域においては、損失が大きく、全く画像を観測することができない。
【0008】
本発明の目的は、血管内に挿入可能な近赤外領域におけるイメージファイバとして構造が最適化され、コントラストが高く、解像度が高く、高NAで、近赤外領域における画像診断の精度を向上することができる近赤外用石英系イメージファイバおよびその製造方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、血管内に挿入して血液中において、近赤外光イメージの観察が可能で、例えば冠状動脈の閉塞部位のその場観察、心臓内の弁の手術、血管内損傷の治療、冠状動脈血栓症の治療、肺動脈塞栓症の治療、大動脈内カテーテル挿入その場観察、眼球内血管内観察などに適当することができる近赤外用石英系イメージファイバおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明の一態様によれば、共通クラッドと、前記共通クラッドを貫通する複数のコアとを備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、イメージ伝送可能なことを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバが提供される。
【0011】
本発明の他の態様によれば、共通クラッドと、前記共通クラッドを貫通する複数のコアとを備え、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、イメージ伝送可能なことを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバが提供される。
【0012】
本発明の他の態様によれば、共通クラッドと、前記共通クラッドを貫通する複数のコアとを備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、u01、w01をLP01モードの固有値、Zをイメージファイバの長さ、βをLP01モードの伝播定数、Kmをm次の第2種変形ベッセル関数、Vを規格化周波数、λを光の波長、n1を前記コアの中心軸における屈折率、n2を前記共通クラッドの屈折率として、
B=|[{−2u0120(2w01D/d)}/{V212(w01)}]・Z/β|
V=πd(n12−n22)1/2/λ
で表されるクロストークパラメータBが、前記波長領域において、1000以下を満たすことを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバが提供される。
【0013】
本発明の他の態様によれば、共通クラッドと、前記共通クラッドを貫通する複数のコアとを備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、
前記共通クラッドに対する前記コアの中心軸での比屈折率差Δは3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、ファイバ径が500μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバが提供される。
【0014】
本発明の他の態様によれば、共通クラッドと、前記共通クラッドを貫通する複数のコアとを備え、1000nm〜1300nmの波長領域において、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、前記共通クラッドに対する前記コアの中心軸での比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが4.5〜6μmであり、ファイバ径が300μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバが提供される。
【0015】
本発明の他の態様によれば、共通クラッドと、前記共通クラッドを貫通する複数のコアとを備え、1500nm〜2000nmの波長領域において、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、前記共通クラッドに対する前記コアの中心軸での比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが6μm〜10μmであり、ファイバ径が500μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバが提供される。
【0016】
本発明の他の態様によれば、SiCl4及びGeCl4を出発原料として、石英コアプリフォームスートを作製する工程と、前記プリフォームスートを焼結炉にて、加熱して透明ガラス化し、ガラスロッドを形成する工程と、前記ガラスロッドの外周に、外付け法若しくはジャケット法により、近赤外用石英系イメージファイバの共通クラッドとなるフッ素添加ガラス若しくは純粋石英ガラスを形成し、光ファイバプリフォームを形成する工程と、前記光ファイバプリフォームを線引きして、光ファイバ素線を作成する工程と、前記光ファイバ素線を所定の長さで切断し、2000本〜10000本の光ファイバ素線を形成する工程と、前記光ファイバ素線を所定の石英管に挿入し、線引きして、外径500μm以下の近赤外用石英系イメージファイバを作製する工程とを有することを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明の近赤外用石英系イメージファイバおよびその製造方法によれば、血管内に挿入可能な近赤外領域におけるイメージファイバとして構造が最適化され、コントラストが高く、解像度が高く、高NAで、近赤外領域における画像診断の精度を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、現実のものとは異なることに留意すべきである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0019】
また、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0020】
また、添付図面は、実施形態に係る近赤外用石英系イメージファイバを模式的に示しているに過ぎない。このため、マルチコアの各コアの直径とクラッドの直径との比率等が、現実に設計される通りに表されているとは限らないことに留意すべきである。特に、コアの断面は添付図面では真円として描かれているが、現実には楕円形状や多角形等に変形している場合もある。さらに、添付図面ではコアが六方最稠密状に配置されているが、これに限定されない。
【0021】
[第1の実施の形態]
(近赤外用石英系イメージファイバの基本構成)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの模式的断面構造図を示す。
【0022】
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ10は、図1に示すように、画像伝送用のイメージサークル12と、イメージサークル12の外周を覆う石英ガラスジャケット14と、さらに石英ガラスジャケット14の外周を覆う被覆層16とから構成されている。
【0023】
イメージサークル12は、図1中に拡大して示すように、光の伝搬を許容し、近赤外用石英系イメージファイバ10の画素として機能する複数のコア1と、これら複数のコア1が貫通する共通クラッド2とから構成する。
【0024】
共通クラッド2は、複数のコア1に共有されている。イメージサークル12の直径は、例えば約1000μm程度以下であり、望ましくは500μm以下、更に望ましくは、例えば約300μm以下である。
【0025】
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ10を血管内に挿入して使用する場合、イメージサークル12の直径として太いものを使用することは難しいからである。また、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ10には、フレキシビリティーが要求される。
【0026】
上記のイメージサークル12の中に、例えば約2000個〜3万個程度のコア1が形成されている。このような構成により、近赤外用石英系イメージファイバ10の端面に結像された画像が各画素に空間的に分割されて他の端面に伝送され、当該他の端面に画像を形成することができる。
【0027】
図2は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバのコア1および共通クラッド2の屈折率分布を示す。
【0028】
コア1は、屈折率上昇剤である、例えば酸化ゲルマニウム(GeO2)が添加された石英で構成され、図2に示すように、その中心部(中心軸)で添加量が最大となる凸状の屈折率分布を有する。この屈折率分布は屈折率分布係数αが、例えば、約2.0〜約3.0程度で表される分布である。
【0029】
また、コア1の直径dは、例えば約0.5μm〜約10μm程度であり、隣り合う2つのコア1の中心間の間隔(コア間隔)Dは、例えば約3.0μm〜約15μm程度であり、構造パラメータD/dの値は、例えば約1.02〜約5.0程度である。
【0030】
さらに、近赤外用石英系イメージファイバ10は、例えば、約0.30以上約0.45以下の開口数(NA)を有している。
【0031】
なお、屈折率分布係数αとは、以下の式のαである。
【0032】
n(r)=n1[1−2Δ(2r/d)α1/2 (0≦2r≦d)
ここで、n(r)はコア1の中心軸からの距離rにおける屈折率、n1はコア1の中心軸における屈折率、Δは共通クラッド2に対するコア1の中心軸での比屈折率差を表す。共通クラッド2は、純粋な石英または屈折率降下剤である、例えばフッ素(F)若しくはボロン(B)が添加された石英で構成される。共通クラッド2では、屈折率は略一定である。
【0033】
なお、コアの直径d、コア間隔D、構造パラメータD/d、およびクラッド厚(D−d)/2の具体的な値の決定方法については、図5乃至図15を用いて、後に詳述する。
【0034】
(製造方法)
このような近赤外用石英系イメージファイバ10は、以下のように作製することができる。
【0035】
(a)まず、VAD(Vapor-phase Axial Desposition)法により、上述の屈折率分布係数αを満たすように、例えばゲルマニウム(Ge)が添加された石英コアプリフォームスートを作製する。
【0036】
(b)次に、このプリフォームスートを焼結炉にて加熱して透明ガラス化し、コア用ガラスロッドを得る。
【0037】
(c)次に、このコア用ガラスロッドの外周に、プラズマ外付け法又はスート外付け法により、近赤外用石英系イメージファイバ10の共通クラッド2となる石英ガラス層またはフッ素添加ガラス層またはボロン添加ガラス層を形成して光ファイバ母材を得る。PCVD(Plasma Chemical Vapor Deposition)法やMCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法により、フッ素ドープ管やボロンドープ管を作り、石英ガラスジャケット14を設けても良い。
【0038】
(d)次に、この光ファイバ母材を線引きして、外径が、約数百μmの光ファイバ素線を作製する。
【0039】
(e)その後、この光ファイバ素線を所定の長さで切断し、例えば、約1000本〜約30,000本程度の光ファイバ素線を得る。
【0040】
(f)次に、これらの光ファイバ素線を所定の石英管に挿入し、これを線引きすることにより、外径約100μm〜約600μm程度の近赤外用石英系イメージファイバを作製する。
【0041】
(g)最後に、その周囲に厚さ約20μm〜約100μm程度の被覆層16を形成することにより、近赤外用石英系イメージファイバ10が得られる。
【0042】
(近赤外光領域における測定結果)
図3は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ(ファイバ径300μm)を適用した近赤外用イメージカメラを用いて撮影した波長1.6μm帯における画像例である。コントラストCの値として約0.5以上を確保して、画像を観測した例を示している。
【0043】
同様に、図4は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ(ファイバ径500μm)を適用した近赤外用イメージカメラを用いて撮影した波長1.6μm帯における画像例である。コントラストCの値として約0.5以上を確保して、画像を観測した例を示している。
【0044】
図3および図4の例では、ファイバ径を相対的に大きなものを用いて観測したが、ファイバ径が500μm以下であっても同様にコントラストを確保しつつ波長1.6μm帯における画像を観測可能である。
【0045】
一方、図3乃至図4の観測系と同様の条件で、従来の可視用のイメージファイバを適用した近赤外用イメージカメラを用いて撮影した波長1.6μm帯における画像例では、全くコントラストがとれず、画像を観測することはできなかった(図示省略)。
【0046】
続いて、近赤外用石英系イメージファイバ10についての実用上重要な特性、すなわち、解像度やコントラストについて説明する。解像度に影響するパラメータの一つにコア間隔Dがある。隣接するコアどうしの間隔が狭いほど物理的な解像度は大きくなるが、この間隔が狭くなりすぎると、クロストークが発生する。クロストークが大きくなると、光の滲みが生じ、コントラストが低下する。
【0047】
近赤外用石英系イメージファイバ10では、着色はあまり問題とならないが、屈折率分布との兼ね合いで、適度な解像度とコントラストとをバランスよく実現できるよう近赤外用石英系イメージファイバ10を設計する必要がある。
【0048】
(解像度)
一般に、解像度(分解能)は、白黒ピッチの縞がどの程度の細かさまで判別できるかで決定される。また、イメージファイバの解像度は、視野内で判別できる白黒の縞の最大組数(lp:line pair)で決定される。
【0049】
図5は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの解像度(空間周波数)(lp/mm)と画素数(ピクセル)との関係を示す図である。
【0050】
上記の通り、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ10は、血管内に挿入して使用するため、イメージファイバのファイバ径は、例えば約500μm以下であることが必要である。一方、解像度(lp/mm)は、物体を判別するのに最低限20(lp/mm)以上は必要である。
【0051】
したがって、図5に示すように、イメージファイバのファイバ径が、例えば約500μmの場合、血管内での血栓などを識別するためには、最低20(lp/mm),画素数にして2000画素以上は必要である。よって、コア間隔Dに制限が加わる。
【0052】
図6は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、イメージファイバのファイバ径をパラメータとして表した画素数(ピクセル)とコア間隔Dの関係を示す。
【0053】
図6から明らかなように、ファイバ径を700μmとすると、画素数2000(ピクセル)以上とするためには、コア間隔Dは13.5μm以下とする必要があり、ファイバ径を500μmとすると、画素数2000(ピクセル)以上とするためには、コア間隔Dは10μm以下とする必要があり、ファイバ径を300μmとすると、画素数2000(ピクセル)以上とするためには、コア間隔Dは6μm以下とする必要がある。
【0054】
(コントラスト)
一般に、コントラストCは、明るい部分の輝度Xbと、暗い部分の輝度Xdを測定し、C=(Xb−Xd)/(Xb+Xd)・100(%)で決定される。
【0055】
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、コントラストCの基準値としては、使用波長領域において、0.5以上であることが望ましい。これを実現するためには、各画素間のクロストークを抑えることが必要となる。すなわち、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、屈折率分布係数α、比屈折率差Δ、コア間隔D、およびコアの直径dで決まる構造上の最適値がある。
【0056】
近赤外用石英系イメージファイバにおいては、可視光領域用石英系イメージファイバと全く異なる構造パラメータが最適値となる。可視光領域用石英系イメージファイバでは、近赤外光領域では全く見えなくなる。即ち、コントラスト零である。コントラストCは、後述するクロストークパラメータBと密接に関係しているため、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、以下のクロストークパラメータBを用いて構造パラメータとの関係を調べた。
【0057】
(透過率)
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、その特性上、使用波長領域での透過率が高い方が望ましい。観測される画像の明るさに影響するからである。
【0058】
本発明者らは、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、最適化された構造を有する場合には、図16のBラインに示すように、約1000nm〜約1300nmおよび約1500nm〜約2000nmの2つの近赤外波長領域において血液中のヘモグロビンに対して有効な窓領域が存在し、損失を抑制することができる。
【0059】
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいては、損失特性は、約0.5dB/m以下であり、さらに約0.2dB/m以下であることが望ましい。このような2つの近赤外波長領域における低損失性能は、石英系でかつ適切な構造により実現することができる。石英系のイメージファイバであっても、構造が最適化されていない場合には、図16中のAラインに示すように、低損失を実現することはできない。さらに、多成分系ファイバやプラスチック系ファイバでは損失が高く、上記約1000nm〜約1300nmおよび約1500nm〜約2000nmの2つの近赤外波長領域での透過率は低い。
【0060】
(クロストークパラメータ)
複数のコアと共通クラッドを備えたマルチコア構造のイメージファイバにおいて、コアのピッチが小さくなるとクロストークが生じることは一般に知られている。このクロストークを表すパラメータとして、クロストークパラメータBが知られている。
【0061】
クロストークパラメータBについては、例えば細野敏夫著の論文「イメージファイバの伝送特性」電子通信学会論文誌、1983年11月、Vol.J66−C、No.11、pp.843−850の中で詳細に論じられている。すなわち、クロストークパラメータBは、次式で定義される。
【0062】
B=|[{−2u0120(2w01D/d)}/{V212(w01)}]・Z/β|
V=πd(n12−n22)1/2/λ
ここで、u01、w01はLP01モードの固有値、Dはコア間隔、dはコアの直径、Zはイメージファイバの長さ、βはLP01モードの伝播定数、Kmはm次の第2種変形ベッセル関数、Vは規格化周波数、λは光の波長、n1はコア1の中心軸における屈折率、n2は共通クラッド2の屈折率である。
【0063】
本発明の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいても、複数のコア1と共通クラッド2を備え、コアの直径d、コアのピッチ(コア間隔)Dを備えることから、クロストークパラメータは上式と同様に表すことができる。
【0064】
クロストークを減らすには、クロストークパラメータBの値は小さいほど望ましいが、Bの値が小さくなると明るさが減るため、クロストークパラメータBの下限値は、実際上は制限される。実際の近赤外用石英系イメージファイバ10では、製造上の誤差(光ファイバ素線の素線径のばらつきやこれらの光ファイバ素線を所定の石英管に挿入し、これを線引きすることにより、近赤外用石英系イメージファイバを形成する際の外径のばらつきなど)、屈折率の揺らぎ、内部の残存応力などの原因により設計値からずれる。
【0065】
本発明の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいても、上式で表されるクロストークパラメータBにより、コントラストCとの間には相関関係を見出すことができる。
【0066】
(配列)
本発明の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、コア1を共通クラッド2中に、整列して配置するのではなく、ランダムに配列とすることもクロストークを減らす上では有効である。
【0067】
(各構造における波長とクロストークパラメータ)
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、ファイバパラメータとクロストークパラメータB(コントラストCに相当)との関係を以下に説明する。
【0068】
―波長λをパラメータとするD/dとDの関係―
図7は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを4.5%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したD/dとコア間隔Dの関係を示す。
【0069】
また、図8は、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したD/dとコア間隔Dの関係を示す。
【0070】
また、図9は、比屈折率差Δを3.0%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したD/dとコア間隔Dの関係を示す。
【0071】
図7乃至図9において、各曲線の内側の範囲(斜線部分)に構造パラメータD/dとdの関係が存在する場合、クロストークパラメータBは1000よりも小さくなる。すなわち、クロストークが小さくなり、結果としてコントラストが良好となる。例えば、クロストークパラメータBの値が1000であることは、コントラストCの値が0.5程度に相当する。
【0072】
図7乃至図9の結果より、約1000nm〜約1300nm及び約1500nm〜約2000nmの波長領域において、比屈折率差Δが約0.3〜約0.45%程度であり、構造パラメータD/dが約1.02〜約3.0程度であることが望ましい。
【0073】
図7乃至図8に示すように、波長λが2.0μmのラインに注目すると、コア間隔Dが約10μm以下の要求範囲を満足する構造パラメータD/dの値は、約1.02〜約3.0程度であるからである。
【0074】
上記波長範囲において、クロストークパラメータBを約1000以上に設定し、コントラストCの値を約0.5以上にすることができる。
【0075】
尚、図7乃至図9のパラメータ設定において、屈折率分布係数αの値は、2.2に設定し、また、ファイバ長Zの値は、1mに設定し、具体的な製造条件および使用条件に適合させている。
【0076】
―波長λをパラメータとするコアの直径dとコア間隔Dの関係―
図10は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを4.5%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したコアの直径dとコア間隔Dの関係を示す。
【0077】
また、図11は、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したコアの直径dとコア間隔Dの関係を示す。
【0078】
また、図12は、比屈折率差Δを3.0%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したコアの直径dとコア間隔Dの関係を示す。
【0079】
図10乃至図12において、各曲線の内側の範囲(斜線部分)に、コアの直径dとコア間隔Dの関係が存在する場合、クロストークパラメータBは1000よりも小さくなる。すなわち、クロストークが小さくなり、結果としてコントラストが良好となる。例えば、クロストークパラメータBの値が1000であることは、コントラストCの値が0.5程度に相当する。
【0080】
図10乃至図12の結果より、約1000nm〜約1300nm及び約1500nm〜約2000nmの波長領域において、比屈折率差Δが約0.3%〜約0.45%程度であり、コアの直径dは、約1.5μm〜約4.5μm程度であることが望ましい。
【0081】
図10に示すように、波長λが1.1μmのラインに注目すると、ファイバ径300μmにおけるコア間隔Dが約6μm以下の要求範囲を満足する構造パラメータdの値は、約4.5μm程度以下であるからである。波長λが2.0μmのラインに注目すると、ファイバ径500μmにおけるコア間隔Dが約10μm以下の要求範囲を満足する構造パラメータdの値は、約4.5μm程度以下であるからである。この結果より、上記D/dの範囲(約1.02〜約3.0程度)と組み合わせると、コア間隔Dが約4.5μm〜約10μmであることが望ましい。
【0082】
上記波長範囲にて、クロストークパラメータBを1000以上に設定し、コントラストCの値を0.5以上にすることができる。
【0083】
なお、図10乃至図12のパラメータ設定において、屈折率分布係数αの値は、2.2に設定し、また、ファイバ長Zの値は、1mに設定し、具体的な製造条件および使用条件に適合させている。
【0084】
―波長λをパラメータとするクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係―
図13は、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを4.5%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係を示す。
【0085】
また、図14は、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係を示す。
【0086】
また、図15は、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係を示す。
【0087】
図13乃至図15において、各曲線の内側の範囲(斜線部分)に、クラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係が存在する場合、クロストークパラメータBは1000よりも小さくなる。すなわち、クロストークが小さくなり、結果としてコントラストが良好となる。例えば、クロストークパラメータBの値が1000であることは、コントラストCの値が0.5程度に相当する。
【0088】
図13乃至図15の結果より、約1000nm〜約1300nm及び約1500nm〜約2000nmの波長領域において、比屈折率差Δが約0.3〜約0.45%程度であり、コアの直径dが約1.5μm〜約4.5μm程度であることから、コア間隔Dが約4.5μm〜約10μmであり、クラッド厚さ(D−d)/2の値が約0.5μm〜約3.5μm程度であることが望ましい。
【0089】
図15に示すように、波長λが1.1μmのラインに注目すると、ファイバ径300μmにおけるコア間隔Dが約6μm以下の要求範囲を満足するクラッド厚(D−d)/2の値が約3.5μm程度以下であり、ファイバ径500μmにおけるコア間隔Dが約10μm以下の要求範囲を満足するクラッド厚(D−d)/2の値が0.5μm以上である。
【0090】
上記波長範囲にて、クロストークパラメータBを1000以上に設定し、コントラストCの値を0.5以上にすることができる。
【0091】
なお、図13乃至図15のパラメータ設定において、屈折率分布係数αの値は、2.2に設定し、また、ファイバ長Zの値は、1mに設定し、具体的な製造条件および使用条件に適合させている。
【0092】
上記の議論より、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバをファイバ径300μm以下で構成する場合には、以下の構成を採用することができる。すなわち、共通クラッド2と、共通クラッド2を貫通する複数のコア1とを備え、1000nm〜1300nmの波長領域において、コア1にGe、共通クラッド2が純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、共通クラッド2に対するコア1の中心軸での比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが4.5〜6μmであることを特徴とする。
【0093】
同様に、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバをファイバ径500μm以下で構成する場合には、以下の構成を採用することができる。すなわち、共通クラッド2と、共通クラッド2を貫通する複数のコア1とを備え、1500nm〜2000nmの波長領域において、コア1にGe、共通クラッド2が純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、共通クラッド2に対するコア1の中心軸での比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが6μm〜10μmであることを特徴とする。
【0094】
(損失特性)
図16は、近赤外領域において構造が最適化された,本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの損失特性(ラインB)と、近赤外領域において構造が最適化されていない可視光用のイメージファイバの損失特性(ラインA)の比較図である。
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの損失特性(ラインB)によれば、波長約1300nm〜約1500nmの範囲において、最大損失約1.4dB/mの急峻な損失のピークが存在する.一方、波長約1000nm〜約約1300nmおよび波長約1500nm〜約2000nmの範囲には有効な窓領域が存在し、近赤外用石英系イメージファイバの損失特性も約0.5dB/m以下とすることができ、更に望ましくは約0.2dB/m以下とすることができる。
【0095】
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバは、血管中において使用することから、近赤外光の血液中におけるヘモグロビンの散乱損失を考慮する必要があるが、実験結果によれば、図16に示すように、1300nm〜1500nmの波長範囲における水分による吸収ピークが顕著であった。これは、特許文献4に記載されているように、近赤外光領域として、1000nm〜1300nmおよび1500nm〜2000nmの範囲においては、損失の少ない窓領域が存在するためである。
【0096】
したがって、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバによって、上記の通り、このような損失の少ない近赤外の波長範囲1000nm〜1300nmおよび1500nm〜2000nmにおいて、構造の最適化を実施することができる。
【0097】
以下、具体的な実施例に基づく本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの製造方法について説明する。
【0098】
(実施例)
(a)まず、既知のVAD法により、SiCl4及びGeCl4を出発原料として、石英コアプリフォームスートを作製した。
【0099】
(b)次に、このプリフォームスートを焼結炉にて、加熱して透明ガラス化し、ガラスロッドを得た。
【0100】
(c)次に、このガラスロッドの外周に、外付け法若しくはジャケット法により、近赤外用石英系イメージファイバの共通クラッド2となるフッ素添加ガラス若しくは純粋石英ガラスを形成し、光ファイバ母材(光ファイバプリフォーム)を得た。
【0101】
(d)次に、この光ファイバプリフォームを線引きして、外径が約150μmの光ファイバ素線を作成した。
【0102】
(e)その後、この光ファイバ素線を所定の長さで切断し、約2000〜約10,000本程度の光ファイバ素線を得た。
【0103】
(f)次に、これらの光ファイバ素線を所定の石英管に挿入し、これを線引きすることにより、外径約500μm程度の近赤外用石英系イメージファイバ10を作製した。
【0104】
以上より、開口数NAの高い(例えば、NA:0.2以上)ファイバで、波長約1000nm〜約1300nm、および波長約1500nm〜約2000nm程度の範囲におけるイメージ伝送を高コントラストで実現することができる。
【0105】
さらに、クラッドとコアとの比屈折率差Δが望ましくは約3%〜約4.5%程度、屈折率分布係数αが約2.0〜3.0程度であり、コア間隔Dとコアの直径dの比(D/d)が約1.02〜約3.0程度であり、コア間隔Dが約4.5μm〜約10μm程度であり、コアの直径が約1.5μm〜約4.5μm程度であり、クラッド厚が約0.5μm〜約3.5μm程度の構造を備えることにより、波長約1000nm〜約1300nm、および波長約1500nm〜約2000nm程度の範囲において、コントラストが高く、解像度が高い、近赤外用石英系イメージファイバ10を得ることができる。
【0106】
この近赤外用石英系イメージファイバ10では、波長約1000nm〜約1300nm、および波長約1500nm〜約2000nm程度の範囲において、観察部位からの観察画像を高い解像度で取得することができる。
【0107】
以上説明した通り、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ10によれば、血管内に挿入可能な近赤外領域におけるイメージファイバとして構造が最適化され、高コントラストで、解像度が高く、高NAで、観察対象の生体組織からの画像を観察することができ、近赤外領域における画像診断の精度を向上することができる。
【0108】
また、本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバによれば、コアとクラッドの比率を制限したことにより、血管内に挿入可能な近赤外用石英イメージファイバを作製することが可能となる。
【0109】
本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバは、血管内に挿入して血液中において、近赤外光イメージの観察が可能であることから、例えば冠状動脈の閉塞部位のその場観察、心臓内の弁の手術、血管内損傷の治療、冠状動脈血栓症の治療、肺動脈塞栓症の治療、大動脈内カテーテル挿入その場観察、眼球内血管内観察などに適当することができる。
【0110】
[その他の実施の形態]
上記のように、本発明は第1の実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。
【0111】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態などを含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の実施の形態に係る光ファイバは、近赤外領域(約1000nm〜約2000nm程度)の光を伝送する近赤外用石英系イメージファイバであることから、血管内に挿入可能な近赤外領域におけるイメージファイバとして血管内視鏡など、特に医療分野、生体計測分野など幅広い応用分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの模式的断面構造図。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバのコアおよび共通クラッドの屈折率分布を示す図。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ(ファイバ径640μm)を適用した近赤外用イメージカメラを用いて撮影した波長1.6μm帯における画像例であって、コントラストの値として約0.5以上を確保して、画像を観測した例。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバ(ファイバ径960μm)を適用した近赤外用イメージカメラを用いて撮影した波長1.6μm帯における画像例であって、コントラストの値として約0.5以上を確保して、画像を観測した例。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバの解像度(空間周波数)(lp/mm)と画素数(ピクセル)との関係を説明する図。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、イメージファイバのファイバ径をパラメータとして表した画素数(ピクセル)とコア間隔Dの関係を説明する図。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを4.5%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表した構造パラメータD/dとコア間隔Dの関係を説明する図。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表した構造パラメータD/dとコア間隔Dの関係を説明する図。
【図9】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを3.0%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表した構造パラメータD/dとコア間隔Dの関係を説明する図。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを4.5%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したコアの直径dとコア間隔Dの関係を説明する図。
【図11】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したコアの直径dとコア間隔Dの関係を説明する図。
【図12】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを3.0%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したコアの直径dとコア間隔Dの関係を説明する図。
【図13】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを4.5%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係を説明する図。
【図14】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係を説明する図。
【図15】本発明の第1の実施の形態に係る近赤外用石英系イメージファイバにおいて、比屈折率差Δを3.8%、屈折率分布係数αを2.2、クロストークパラメータBを1000とした時の、波長λをパラメータとして表したクラッド厚さ(D−d)/2とコア間隔Dの関係を説明する図。
【図16】構造が最適化された,本発明の第1の実施の形態に係る近赤外石英系イメージファイバの損失特性と、構造が最適化されていない従来のイメージファイバの損失特性。
【符号の説明】
【0114】
1…コア
2…共通クラッド
10…近赤外用石英系イメージファイバ
12…イメージサークル
14…石英ガラスジャケット
16…被覆層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通クラッドと、
前記共通クラッドを貫通する複数のコアと
を備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、イメージ伝送可能なことを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項2】
共通クラッドと、
前記共通クラッドを貫通する複数のコアと
を備え、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、イメージ伝送可能なことを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項3】
前記波長領域において、コントラストの値が、0.5以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項4】
前記波長領域において、損失が、0.5dB/m以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項5】
前記複数のコアは、前記共通クラッド内において、ランダムに配列されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項6】
共通クラッドと、
前記共通クラッドを貫通する複数のコアと
を備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、
01、w01をLP01モードの固有値、Zをイメージファイバの長さ、βをLP01モードの伝播定数、Kmをm次の第2種変形ベッセル関数、Vを規格化周波数、λを光の波長、n1を前記コアの中心軸における屈折率、n2を前記共通クラッドの屈折率として、
B=|[{−2u0120(2w01D/d)}/{V212(w01)}]・Z/β|
V=πd(n12−n22)1/2/λ
で表されるクロストークパラメータBが、前記波長領域において、1000以下を満たすことを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項7】
前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含むことを特徴とする請求項6に記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項8】
前記波長領域において、コントラストの値が、0.5以上であることを特徴とする請求項6または7に記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項9】
前記波長領域において、損失が、0.5dB/m以下であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項10】
前記複数のコアは、前記共通クラッド内において、ランダムに配列されることを特徴とする請求項6乃至9のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項11】
共通クラッドと、
前記共通クラッドを貫通する複数のコアと
を備え、1000nm〜1300nm及び1500nm〜2000nmの波長領域において、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、
前記共通クラッドに対する前記コアの中心軸での比屈折率差Δは3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、ファイバ径が500μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項12】
コア間隔Dが4.5μm〜10μmであり、コアの直径dが1.5μm〜4.5μmであることを特徴とする請求項11に記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項13】
コア間隔Dが4.5μm〜10μmであり、クラッド厚が0.5μm〜3.5μmであることを特徴とする請求項11に記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項14】
前記波長領域において、コントラストの値が、0.5以上であることを特徴とする請求項11乃至13のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項15】
前記波長領域において、損失が、0.5dB/m以下であることを特徴とする請求項11乃至14のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項16】
前記複数のコアは、前記共通クラッド内において、ランダムに配列されることを特徴とする請求項11乃至15のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項17】
共通クラッドと、
前記共通クラッドを貫通する複数のコアと
を備え、1000nm〜1300nmの波長領域において、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、前記共通クラッドに対する前記コアの中心軸での比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが4.5〜6μmであり、ファイバ径が300μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項18】
共通クラッドと、
前記共通クラッドを貫通する複数のコアと
を備え、1500nm〜2000nmの波長領域において、前記コアにGe、前記共通クラッドが純粋石英または純粋石英にFまたはBを含み、前記共通クラッドに対する前記コアの中心軸での比屈折率差Δが3.0%〜4.5%であり、コア間隔Dとコアの直径dの比D/dが1.02〜3.0であり、コア間隔Dが6μm〜10μmであり、ファイバ径が500μm以下であることを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項19】
n(r)をコアの中心軸からの距離rにおける屈折率、n1をコアの中心軸における屈折率、Δを共通クラッドに対するコアの中心軸での比屈折率差とし、
n(r)=n1[1−2Δ(2r/d)α1/2 (0≦2r≦d)
で表される屈折率分布係数αは、2.0〜3.0であることを特徴とする請求項1乃至18のいずれかに記載の近赤外用石英系イメージファイバ。
【請求項20】
SiCl4及びGeCl4を出発原料として、石英コアプリフォームスートを作製する工程と、
前記プリフォームスートを焼結炉にて、加熱して透明ガラス化し、ガラスロッドを形成する工程と、
前記ガラスロッドの外周に、外付け法若しくはジャケット法により、近赤外用石英系イメージファイバの共通クラッドとなるフッ素添加ガラス若しくは純粋石英ガラスを形成し、光ファイバプリフォームを形成する工程と、
前記光ファイバプリフォームを線引きして、光ファイバ素線を作成する工程と、
前記光ファイバ素線を所定の長さで切断し、2000本〜10000本の光ファイバ素線を形成する工程と、
前記光ファイバ素線を所定の石英管に挿入し、線引きして、外径500μm以下の近赤外用石英系イメージファイバを作製する工程
とを有することを特徴とする近赤外用石英系イメージファイバの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2008−310042(P2008−310042A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−157841(P2007−157841)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【Fターム(参考)】