説明

近赤外線吸収性能を備えた農業用フィルム

【課題】
近赤外線吸収性及び可視光線透過性を備えた透明樹脂からなる農業用フィルムに関し、近赤外線吸収性能を備えた微粒子の大きさを小さくすると共に、該微粒子を樹脂中に均一分散させた農業用フィルムを提供することにある。
【解決手段】
透明樹脂100重量部に、イオウ0.01 〜 4重量部と、下記一般式(A) の銅化合物2重量部を超えて50重量部以下とを含有したことを特徴とする厚さ10〜200μmの近赤外線を吸収する農業用フィルムを提案する。
一般式(A)
XqCu
(式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可視光線透明性を有し、かつ優れた近赤外線吸収性能を有する、農作物の栽培施設に使用される農業用フィルムに関し、より詳しくは、透明樹脂100重量部に、イオウ0.01 〜 4重量部と、下記一般式(A) の銅化合物2重量部を超えて50重量部以下とを含有し、かつ厚さが10〜200μmである近赤外線を吸収する農業用フィルムであって、該農業用フィルムの構成成分である透明樹脂中に平均粒径0.001〜1μmの硫化銅微粒子が分散している農業用フィルムに関する。
一般式(A)
XqCu
(式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)
【背景技術】
【0002】
近赤外線を吸収し、且つ可視光線を透過する樹脂成形体は、太陽からの熱を遮ることができ、しかも明るさを十分に採り入れることができるため、アーケード、ガレージ、サンルーム、テラス、温室等の屋根材や壁材などの採光材として利用されている。
【0003】
この種の樹脂成形体としては、従来、例えばチウラム系化合物及び/又はジチオカルバメート系化合物と銅化合物とを含有してなる樹脂成形体(特許文献1参照)や、ジチオカルバミン酸銅系化合物と銅化合物とを含有した樹脂成形体(特許文献2参照)などが知られていた。
【0004】
しかし、これらの樹脂成形体は、含有物であるチウラム系化合物やジチオカルバメート系化合物が雨水によって溶出し、環境汚染の原因となる可能性があった。また、溶融成形温度が高くなると、近赤外線吸収性能が低下するという問題も抱えていた。
【0005】
かかる問題点を解決するため、特許文献3に係る発明は、チウラム系化合物を含有しない樹脂成形体として、樹脂に硫黄と所定の銅化合物とを含有させてなる樹脂成形体を提案している。
【0006】
一方、太陽からの光線を十分に透過させ、かつ太陽光からの熱線をある程度遮蔽する必要性のある農業用の透明フィルムとしては、例えば、熱線吸収剤としてナフタロシアニン化合物を含有する被覆材料が知られている(特許文献4及び5参照)。しかしながら、ナフタロシアニン化合物の耐候性や、熱線遮蔽効果の持続性に問題があり、また特許文献6には、熱線遮蔽剤として、微粒子状グラファイトが0.01〜5重量部含有されてなる熱線遮蔽型農業用フィルムが開示されているが、農業用途としての該フィルムの諸性質は必ずしも満足できるものではなかった。
【0007】
【特許文献1】特開平11−181302号公報
【特許文献2】特開平11−349828号公報
【特許文献3】特開2005−97577号公報
【特許文献4】特開2003−265033号公報
【特許文献5】特開2003−265034号公報
【特許文献6】特開2006−141268号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、農業用途として十分な成形加工性、耐久性、近赤外線吸収性、及び可視光線透過性を備え、また、環境汚染の原因となるチウラム系化合物、又はジチオカルバメート系化合物等を含有しない農業用フィルムを提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、以前に上記特許文献3において、透明樹脂100重量部に、イオウ0.004〜2重量部と、下記一般式(A)の銅化合物0.01〜2重量部とを含有したことを特徴とする近赤外線を吸収する透明樹脂組成物を見出している。
一般式(A)
XqCu
(式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Yのいずれかを示す。ここで、Rは、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。)から選ばれる一価基を示し、Yは、− COO、−SO、−SO、−PO、−Oのいずれかを示す。上記qは、1又は2である。)
【0010】
そして、開示された樹脂組成物を含有する樹脂成形体を、ガレージの屋根材等として用いれば、雨水によって含有物が溶出することがないばかりか、近赤外線すなわち熱線の吸収性能に優れるため、太陽熱を遮り、ガレージに駐車した自動車の車内温度上昇を抑えることができ、しかも可視光線透過性にも優れるため、明るさを十分確保することができることを見出している。
【0011】
しかしながら、特許文献3記載の発明は、ガレージの屋根材等の板状物に関する発明であるため、配合量、厚さ、ベース樹脂等の点で農業用フィルムとしては全く応用できないものであった。
【0012】
そこで、本発明者らは、さらに鋭意検討を重ねたところ、上記配合において、銅化合物の含有量を、2重量部を超えて50重量部以下とした透明樹脂組成物を用いて、厚さ10〜200μmとすることにより、農業用フィルムとして、極めて優れた近赤外線吸収性及び可視光線透過性を有することを見出し、本発明を完成するに至った。また、通常入手できる硫化銅(CuS)の粒子径は、小さくとも数μm程度であるが、銅化合物と硫黄とを樹脂と共に溶融混練しながら反応させることにより、肉眼では視認できない大きさの微粒子、すなわち平均粒子径が1μmより小さいナノレベルの硫化銅微粒子を合成することができ、同時に該微粒子を樹脂中に均一分散させることができ、このようにして製造すれば、粒子径が1μm以上のミクロンレベルの硫化銅(CuS)を含有していた従来の樹脂成形体に比べ、近赤外線吸収性及び可視光線透過性をより一層優れたものとすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明は、(1)透明樹脂100重量部に、イオウ0.01 〜 4重量部と、下記一般式(A)の銅化合物2重量部を超えて50重量部以下とを含有し、かつ厚さが10〜200μmであることを特徴とする近赤外線を吸収する農業用フィルムや、
一般式(A)
XqCu
(式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)(2)透明樹脂が、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂から選ばれる1又は2種以上であることを特徴とする前記(1)記載の近赤外線を吸収する農業用フィルムや、(3)一般式(A)の銅化合物が、ステアリン酸銅であることを特徴とする前記(1)又は(2)記載の近赤外線を吸収する農業用フィルムや、(4)透明樹脂中に、平均粒径0.001〜1μmの硫化銅微粒子が分散していることを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれか記載の近赤外線を吸収する農業用フィルムに関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、透明樹脂中に硫化銅微粒子が均一に分散してなる、農業用途として優れた赤外線吸収性及び可視光線透過性を備えた透明樹脂からなる農業用フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明の範囲がこの実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「X〜Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特にことわらない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きく、Yより小さい」の意を包含するものである。
【0016】
本発明の近赤外線を吸収する農業用フィルムとしては、透明樹脂100重量部に、イオウ0.01 〜 4重量部と、下記一般式(A) の銅化合物2重量部を超えて50重量部以下とを含有し、厚さが10〜200μmであれば、特に制限されるものではないが、透明樹脂と、イオウ及び銅化合物を上記割合にて混合し、これら3者が溶融し得る温度に加熱して混練することにより、銅化合物と硫黄とを反応させて硫化銅微粒子、具体的には、平均粒子径が1μmより小さいナノレベルの硫化銅微粒子を合成することができ、同時に該微粒子を樹脂中に均一分散させることができるため、より好ましい。なお、本発明において、硫化銅微粒子の判別は、電子顕微鏡観察により判定することも可能であるが、肉眼による目視にて視認できない大きさであれば当該硫化銅微粒子と判定することができる。すなわち、本発明における「硫化銅微粒子」は、肉眼による目視にて視認できない大きさの硫化銅微粒子ということもでき、より具体的には平均粒子径1μmより小さな硫化銅微粒子であるということもできる。
【0017】
一般式(A)
XqCu
(式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。)
【0018】
上記透明樹脂としては、特に制限されるものではないが、中でもポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の透明な樹脂材料を好適に使用することができ、これらを1又は2種以上混合してもよい。
【0019】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアクリレート、ポリエーテルエーテルケトン等を挙げることができ、メタクリル系樹脂としては、メタクリル酸の各種エステルからなる重合体又は他の単量体との共重合体、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル等の各種メタクリル酸エステルの単独重合体、及びこれらのメタクリル酸エステルと各種アクリル酸エステル、アクリル酸、スチレン、α−メチルスチレン等との共重合体を挙げることができる。
【0020】
ポリ塩化ビニル系樹脂としては、例えば、塩化ビニルの単独重合体、少量のコモノマーを共重合させた塩化ビニル系共重合体、グラフト共重合体等を挙げることができ、これらと塩化ビニリデン樹脂、エチレン・酢酸ビニル共重合体、塩素化ポリエチレン等とのポリマーブレンドでもよい。
【0021】
ポリオレフィン系樹脂としては、α−オレフィンの単独重合体又はα−オレフィンと他の共重合可能な単量体との共重合体を挙げることができ、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン等のポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−4−メチル−1 −ペンテン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体等がある。このうち、密度が0.910〜0.935の低密度ポリエチレンやエチレン−α−オレフィン共重合体、酢酸ビニル含量が30重量%以下のエチレン−酢酸ビニル共重合体が透明性及び耐候性に優れている。なかでも、酢酸ビニルの含量が5重量%〜30重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体は透明性、柔軟性及び耐候性が特に優れている。
【0022】
また上記透明樹脂の中でも、ポリエチレン樹脂、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン樹脂、プロピレン−α−オレフィン共重合体、プロピレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン系樹脂が好ましく、より好ましくはエチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体である。
【0023】
上記硫黄としては、特に限定されるものではなく、市販の硫黄粉末を使用することができ、例えば、鶴見化学株式会社製の硫黄粉末(JIS2級相当品)を用いることができる。
【0024】
上記銅化合物としては、上記の通り、上記一般式(A)で表されるものであれば制限されず、例えば、ステアリン酸銅、硫化銅、フタロシアニル銅、銅アセチルアセトナート等を挙げることができ、中でもステアリン酸銅を用いるのが好ましい。
【0025】
上記銅化合物の配合割合は、上記の通り、透明樹脂100重量部に2重量部を超えて50重量部以下であることを必要とする。含有量が2重量部を超えて50重量部以下であると近赤外線領域の光線吸収性能に優れ、可視光線の透過率が高いものとなる。
【0026】
本発明の近赤外線を吸収する農業用フィルムには、上記以外にも、硫化銅微粒子の効果を損なわない限度において、熱安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、蛍光増白剤、離型剤、アンチブロッキング剤(シリカ、架橋ポリスチレンビーズ等)、軟化剤、帯電防止剤等の添加剤をさらに配合することができる。但し、添加剤は前記物質に限定するものではない。
【0027】
本発明の農業用フィルムの厚みは、上記の通り、10 〜 200μmであることを必要とする。厚さが10μm未満だと、得られるフィルムの機械的強度が低下するだけでなく、近赤外線吸収効果を発現させるのに多量の銅化合物及び硫黄を添加せねばならなくなる。200μmを超えると、高い可視光透過率を保持するためには銅化合物及び硫黄の配合量を少なくする必要があり、製造が困難になる上、裁断、接合、展張作業等が困難になり、取扱い性が低下する。
【0028】
本発明の農業用フィルムは、透明樹脂100重量部に、イオウ0.01〜4重量部と、上記一般式(A) の銅化合物2重量部を超えて50重量部以下とを混合し、これら3者の原料が溶融し得る温度に加熱して混練することにより、銅化合物と硫黄とを反応させて硫化銅微粒子、具体的には、平均粒子径が1μmより小さいナノレベルの硫化銅微粒子を合成し、樹脂中に均一に分散させ、押出することにより製造することができる。なお、原料の混合においては、ベース樹脂と混合する前に、予め銅化合物と硫黄とを予備混合するのが好ましい。このように予め混合することにより、銅化合物の周囲或いは近傍に硫黄を存在させることができ、銅化合物と硫黄との反応率を高めることができ、結果として銅化合物及び硫黄の配合量を少なくすることができ、その分だけ近赤外線吸収性及び可視光線透過性をより一層高めることができる。但し、ベース樹脂と銅化合物と硫黄とを混練機等に一括投入して一括混合するようにしてもよい。
【0029】
上記溶融混練には、剪断効率の高い混練機構を備えた混練機乃至押出機を使用するのが好ましい。例えば一軸押出機、二軸押出機、ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの押出機に「剪断効率の高い混練機構」を付設した押出機などを挙げることができる。
このように剪断効率の高い混練機構を備えた混練機乃至押出押出機を使用して溶融混練すれば、硫化銅の合成反応を促進させることができると共に、合成された硫化銅微粒子をベース樹脂中により均一に分散させることができ、これにより近赤外線吸収性及び可視光線透過性をより一層高めることができる。
【0030】
上記の「剪断効率の高い混練機構を備えた押出機」としては、例えば、混練押出機のスクリュー部分に一種以上のミキシングデバイスを付設してなる混練押出機、具体的には、樹脂のメルトゾーンの入り口部直後にミキシングデバイスを少なくとも一つ以上備えた溶融混練押出機を好ましく例示することができる。この場合、樹脂のメルトゾーンにて、ベース樹脂、銅化合物及び硫黄等は溶融され、ミキシングデバイスにて混練されながら押出口に移送され、この間硫化銅微粒子が合成され樹脂中に分散されることになる。また、回転ブレードと固定ブレードとが交互に多段に重ねてなる構成を有し、各々のブレードの両面に窪みの谷(キャビティー)が放射状に形成されてなる混練分散部を備えた混練押出機なども好ましく例示することができる。
【0031】
なお、通常の押出し機(例えばニーダー、ロール、1軸混練押出し機、2軸混練押出し機など)を使用することも不可能ではないが、粒子の凝集力は粒子径に反比例するため、硫化銅微粒子の平均粒子径が1μm以下、特に平均粒子径100nm以下の微粒子となると、その凝集力はミクロン単位の微粒子の1,000倍以上にもなって凝集結合し易くなるため、ナノ粒子の凝集力を解砕して完全分散させることが難しくなる。
【0032】
このように溶融混練することにより、銅化合物と樹脂とを直接ブレンドすることができるばかりか、樹脂の種類に制約されないというメリットもある。
【0033】
このようにして近赤外線吸収農業用フィルムを製造すれば、樹脂中に硫化銅微粒子が均一に分散してなる近赤外線吸収農業用フィルムを得ることができる。例えば、通常入手できる硫化銅(CuS)としては、小さくとも数μmの粒子であるが、上記の如く銅化合物と硫黄とを溶融混練から押出までの間に反応させて硫化銅(CuS)を合成すると、肉眼では視認できない微粒子、すなわち平均粒子径が1μmより小さいナノオーダーレベルの微粒子(好ましくは、電子顕微鏡観察による平均粒子径100nm以下の微粒子)を合成することができ、しかも該微粒子を均一に分散させることができる。なお、電子顕微鏡観察による平均粒子径とは、電子顕微鏡観察により任意に20個の微粒子を抽出し、各微粒子の最長径の20個平均値をいう。
【0034】
以上のようにして得られた本発明の熱線遮蔽型農業用フィルムは、太陽光からの可視光線を十分透過し、かつ太陽光からの近赤外線の遮蔽効果を向上させることができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例により限定されるものではない。
【0036】
<可視光線透過率、日射透過率の測定方法>
実施例及び比較例で得られたフィルムサンプルについて、分光光度計(島津製作所製UV3150型)を用いて波長300nm〜2100nmの領域の光線透過率(τλ)を測定した。なお、熱線遮蔽板の可視光線透過率(τv、380nm〜780nm)及び日射透過率(τe、300nm〜2100nm)の値をJISR−3106に準じて求めた。
【0037】
[実施例1〜3、比較例1〜3]
ポリオレフィン樹脂(宇部興産(株)製ユメリット 0540F)に、表1に記載の質量分率にて、イオウ粉末(鶴見化学(株)製JIS2級相当品、融点120℃)及びステアリン酸銅(寺田薬泉工業(株)製、融点115〜120℃)を配合し、ラボプラストミルにて、160℃、スクリュー回転数100rpmの条件にて5分間溶融混練し、プレス機械で200μmのシートを作製した。そして、得られたフィルムサンプルについて可視光線透過率、日射透過率を測定し、結果を下記表1に示した。可視光線透過率40%以上かつ日射透過率70%以下のものを○と評価した(表1参照)。また、得られたシートを薄く切断し、電子顕微鏡にて硫化銅微粒子の粒子径を測定した結果(20個平均値)、以下の表1に示すように、いずれも1μm以下であった。
【0038】
【表1】

【0039】
以上より、本発明の農業フィルムは、赤外線吸収性及び可視光線透過性を備えた農業用フィルムであることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂100重量部に、イオウ0.01 〜 4重量部と、下記一般式(A)の銅化合物2重量部を超えて50重量部以下とを含有し、かつ厚さが10〜200μmであることを特徴とする近赤外線を吸収する農業用フィルム。
一般式(A)
XqCu
(式中、Xは、硫黄、フッ素、塩素、−CN 、フタロシアニル基、クロロフィリンナトリウム、ビスアセチルアセトナート、R−Y のいずれかを示す。ここで、R は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、複素環残基(各基は1個以上の置換基を有してもよい。) から選ばれる一価基を示し、Yは、−COO 、−SO 、−SO 、−PO 、−Oのいずれかを示す。qは、1又は2である。)
【請求項2】
透明樹脂が、ポリエステル系樹脂、メタクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂から選ばれる1又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の近赤外線を吸収する農業用フィルム。
【請求項3】
一般式(A)の銅化合物が、ステアリン酸銅であることを特徴とする請求項1又は2記載の近赤外線を吸収する農業用フィルム。
【請求項4】
透明樹脂中に、平均粒径0.001〜1μmの硫化銅微粒子が分散していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか記載の近赤外線を吸収する農業用フィルム。

【公開番号】特開2008−295429(P2008−295429A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−148261(P2007−148261)
【出願日】平成19年6月4日(2007.6.4)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】