説明

迷惑電話防止システム

【課題】 迷惑な電話に対し、着信者から発信者に対してペナルティを課すことができるシステムを提供する。
【解決手段】 通信網と、通信網利用料金を管理する課金システムが備えるサーバーと、通信網に接続されるユーザー機とから構成され、発信者の電話番号には事業者識別データが付加される。課金システムが備えるサーバーには、電話番号に対する通信要求を受信する通信要求受信手段と、発信者の発信者識別データを識別する発信者識別手段と、識別された発信者についての信用情報を含む情報を照会する発信者照会手段と、発信者を照会した結果、着信者のユーザー機における着信が認められる場合には、発信者と着信者のユーザー機との間で通信を確立する通信制御手段と、発信者に対するペナルティ課金をするか否かを判定する課金判定手段と、課金判定データに基づき発信者に対する課金処理を行う課金処理手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IP電話を利用した迷惑電話防止・課金システムに関し、特に通信網としてインターネットを利用したIP電話での通信において、通信を中継する課金システムを設けることにより、課金システムの中継によって通信が確立する専用の電話番号により、課金処理を用いた迷惑電話の防止を行えるシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、会社の代表・部署直通電話には業務とは関係のない、勧誘電話が頻繁にかかってくる。そのための応対も大変であり、着信者から発信者に対してペナルティを課せられないため、何度でも執拗にかけてくる。会社の電話であるから公開しないわけにもいかず、基本的には着信規制がかけられないため、これといった対策はとれない。
【0003】
【特許文献1】特開平5−30193号公報
【0004】
このような問題を解決するために、従来の一般加入電話において、迷惑電話を防止するための様々な技術が提案されている。
たとえば特開平5−30193「悪意呼規制接続方式」においては、特定個人識別番号を持つ電話利用者からのいたずら電話着信を防止する技術が提案されている。
着信側の交換機は、着信接続時、着信加入者の電話番号と共に発信側から送信されるサービス加入者ごとに付与されたユニーク番号である個人識別番号を受信する。着信加入者から着信呼が悪意呼であることを示すフッキング情報及び所定の特殊番号を受信したとき、受信した個人識別番号をデータベースに登録し、該当する個人識別番号からの通話を悪意の電話として着信を防止するものである。
しかしながら、この方式を用いた場合には、迷惑電話の発信者を登録しなければならず、新規の発信者から電話がかかってきた場合には対応が不可能である。
【0005】
【特許文献2】特開平11−164017号公報
【0006】
特開平11−164017「着信接続システム」においては、迷惑電話の被害を受けている加入者に対して電話番号の変更という措置を取らなくても、パスワード規制により迷惑電話の着信を規制することができる着信接続システムが提案されている。
発信者と着信加入者間を接続する交換機であって、着信要求時にパスワードの投入を発信者に要求し、着信加入者が事前に登録していたパスワードと発信者が投入したパスワードを照合し、一致している時に着信制御を行なう機能を持つことにより、ある端末への着信要求時に、パスワード管理部は該当加入者のパスワード情報テーブルを検索し、投入されたパスワードが登録されているパスワードと同じであれば、前記着信要求のあった着信端末への着信を行なうように構成したものである。
この場合には、パスワードが合致しなければならないので、迷惑電話をかけてくる発信者にパスワードが知られない限り、迷惑電話を防止することはできる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、パスワードは着信者側が設定するものであり、パスワードを知らない限りは善意のものであっても通話をすることができないので、着信者はパスワードを知りうる限りの善意の発信者に知らせておかなければならず、事実上は不可能であり、さらに新規にかかってくる可能性のある善意の発信者の通話を受けることができないために、実用上の難点がある。
【0008】
【特許文献3】特開平8−18697号公報
【0009】

特開平8−18697「通信システム」においては、公衆回線網により通信を行う通信システムに関し、間違った通話に対しては課金せず、あるいは加入者からの依頼に応じて、いたずら電話あるいは不特定多数の人から殺到する間違い電話に対しては無条件には接続しないようにする技術が提案されている。
交換機が発信側の加入者端末装置と受信側の加入者端末装置との接続制御を行う際に、回線接続時間を検出し加入者端末装置に課金するかあるいは課金しないかを判定し、接続時間が該保留時間以内の場合には課金を行わない構成を備える。
しかしながら、本発明は、着信者側が通話料金を負担する契約において実現することが可能なものである。通常は、発信者側が通信料金を負担するものであり、こうした場合には適用することができない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明においては、上記の様々な課題を解決し、電話番号を公開して着信規制をかけないという通常想定される状態においても、迷惑な電話に対し、着信者から発信者に対してペナルティを課すことができるシステムを提供することを目的とする。
さらに今日ではインターネットを利用したIP電話の開発が進んでおり、本発明においては、IP電話においては接続事業者を中継して電話通信が行われるために、中継するサーバーにおいて、課金処理や着信規制をすることにより、迷惑電話の発信者の身元の確認や、ペナルティとしての課金の支払の保証などを可能にしつつ、前記の迷惑電話の防止が可能なシステムを提供することをも目的とする。
【0011】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明においては、
通信網と、通信網利用料金を管理する課金システムが備えるサーバーと、通信網に接続される発信者及び着信者のユーザー機とから構成されるシステムであって、
前記の課金システムには、発信者から着信者に対する通信要求を中継するために、課金システムと契約した発信者の電話番号に付加されて用いられる事業者識別番号または機関ドメイン名等の事業者識別データが設定されており、
課金システム、または発信者あるいは着信者が利用するアクセスポイント等の通信網における中継点が備えるサーバーには、発信者のユーザー機から発信された着信者のユーザー機に対する通信要求を受信する通信要求受信手段と、
通信要求に含まれる、発信者の電話番号に付加された発信者識別データを識別する発信者識別手段と、
識別された発信者についての信用情報を含む情報を照会する発信者照会手段と、
発信者を照会した結果、着信者のユーザー機における着信が認められる場合には、発信者と着信者のユーザー機との間で通信を確立する通信制御手段と、
発信者に対するペナルティ課金をするか否かを判定する課金判定手段と、
課金判定データに基づき発信者に対する課金処理を行う課金処理手段とを備える、迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0012】
また、上記課題を解決するため、請求項2に記載の発明においては、
通信網はIP電話網その他の電話網、電子メール通信網、ファクシミリ通信網、またはデータ通信網である、請求項1に記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0013】
また、上記課題を解決するため、請求項3に記載の発明においては、
前記の発信者識別データは、クレジット会社や通信会社等の課金システムの事業者識別データが付加された、IP電話番号その他の電話番号または電子メールアドレス、ファクシミリ番号、またはデータ通信用の識別番号である、請求項1または2のいずれかに記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0014】
また、上記課題を解決するため、請求項4に記載の発明においては、
電話番号の内の事業者識別データを除く着信者の電話番号は、公衆回線交換網において使用可能な電話番号であって、IP電話専用の番号と公衆回線交換網の番号とを共通して利用可能な、請求項3に記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0015】
また、上記課題を解決するため、請求項5に記載の発明においては、
前記の通信制御手段は、IP電話番号に含まれる事業者識別データその他の発信者識別データに基づき着信許可をするか否かの判定を行う、請求項1〜4に記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0016】
また、上記課題を解決するため、請求項6に記載の発明においては、
前記の通信課金システムにはさらに、
着信者のユーザー機から発信者に対するペナルティ課金指示を受信する課金指示受信手段が備えられ、
勧誘電話・迷惑電話などに対する発信者へのペナルティ課金の指示を、着信者側から送出可能な、請求項1〜5のいずれかに記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0017】
また、上記課題を解決するため、請求項7に記載の発明においては、
着信者のユーザー機には、ペナルティ課金の指示を送出するための課金指示送出手段が備えられた、請求項6に記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0018】
また、上記課題を解決するため、請求項8に記載の発明においては、
前記の通信課金システムにはさらに、
着信許可をする際に、発信者に対し課金システムに関する案内を送出する課金案内手段が備えられた、請求項1〜7のいずれかに記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としている。
【0019】
また、上記課題を解決するため、請求項9に記載の発明においては、
前記の課金指示はあらかじめ定める所定の口座への寄付その他の、発信者から他者への課金金額の金額移転指示である、請求項1〜8のいずれかに記載の迷惑電話防止システムであることを特徴としているであることを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)を公開して着信規制をかけない通常想定される状態においても、迷惑な電話(または電子メール、データ通信)に対し、着信者から発信者に対してペナルティを課すことができるシステムを提供することができる。
さらに本発明によれば、IP電話においては接続事業者を中継して電話通信が行われるために、中継するサーバーにおいて、特定の機関ドメイン名や事業者番号等を用いてサーバーにおいて課金処理や着信規制をすることにより、迷惑電話の発信者の身元の確認や、ペナルティとしての課金の支払の保証などを可能にしつつ、前記の迷惑電話の防止が可能なシステムを提供することができる。
また、一般加入電話の通話に相当するIP電話に限らず、IP電話の技術を利用して行われる各種通信等においても着信者側からペナルティ課金が行えるシステムとして使うことができる。たとえば電子メールであれば、クレジット会社等の公知の機関ドメインを持つメールアドレスとすることで、支払保証・身元確認が行われ、「迷惑メール」を受信したら機関ドメインに「寄付要請メール」を出してペナルティ課金を行うことができる。また不要なデータが送信されてくるなどの「迷惑データ通信」を受信したらペナルティ課金を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
本発明は、通信網と、通信網利用料金を管理する課金システムが備えるサーバーと、通信網に接続されるユーザー機とから構成されるシステムである。
図1は、本発明のシステムの基本的な構成の一例を示すシステム構成図である。
図1においては、本発明の課金システムを介して通信を行なう、通信網を含む全体構成を示しており、通信網としてはIP電話網により、IP電話同士の間で発信者から着信者への通信が行なわれるシステム形態、およびIP電話と従来の一般加入電話に対し発信者から着信者への通信が行なわれるシステム形態の双方における通信を、発信者が契約した課金システムのサーバーが仲介・制御するシステム構成を示している。
【0022】
IP電話同士の間での通信は、図1において、IPネットワークを通信網として利用し、IP電話端末同士が通信する形態として示されており、通信を確立するために、課金システムのサーバーが仲介・制御を行う。
IP電話と従来の一般加入電話との間での通信は、図1において、IPネットワークとゲートウェイを介して、電話網を通信網として利用し、交換機の中継により通信する一般加入電話とIP電話端末との間で通信する形態として示されている。この場合にも、課金システムのサーバーが仲介・制御を行う。
【0023】
課金システムは、クレジットカード会社、その他の課金処理を行う機関であり、課金処理を行うためには、課金される発信者ユーザーのデータをあらかじめ備えている。たとえば、クレジットカード会社を例に取れば、ユーザー名、ユーザーの住所や連絡先、クレジットカード番号、引き落し金融機関口座、暗証番号などである。またユーザーデータに関連付けられて、課金金額や利用明細、利用履歴、その他のデータが記憶蓄積されている。
また、クレジットカード会社以外の金融機関、各種の決済処理機関などである場合にも同様のデータが記憶管理される。
【0024】
課金システムは1つの事業者(クレジットカード会社等)だけでもよく、その場合には課金システムのサーバーが発信者と受信者とを結ぶ通信網において一つであり、着信者も本発明のシステムを利用して発信することがある場合には、発信者と着信者とは同じ課金システムを利用する必要があり、したがって同じ事業者にユーザー登録等をする必要がある。この場合には発信者はユーザー登録によりその事業者を識別する事業者識別番号の付加された電話番号を取得する必要がある。
あるいは複数の課金システムが存在し、ユーザーはいずれかの課金システムと契約をして利用する形態であってもよい。、この場合には、クレジットカード会社や、あるいは発信者、着信者が加入するインターネット・サービス・プロバイダー(ISP)などがそれぞれ課金システムのサーバーを設けることにより、ユーザーはいずれかの事業者と契約してユーザー登録を行い利用することができるようになる。
【0025】
また、図1においては発信者が加入するインターネットサービスプロバイダー(ISP)とクレジットカード会社等の課金システムとが別個に設けられている例を示しているが、ISPが課金処理を行うようにして、アクセスポイントと連携して課金システムを設けるようにしてもよい。
【0026】
次に、本発明の別の実施形態の一例について説明する。
図2は、本発明のシステムの別の基本的な構成の一例を示すシステム構成図である。
図2においては、本発明の課金システムを介して通信を行なう、通信網を含む全体構成を示しており、従来の一般加入電話を利用する発信者から他の一般加入電話を利用する着信者またはIP電話を利用する着信者との間で通信が行なわれるシステムにおける通信を、課金システムのサーバーが仲介・制御するシステム構成を示している。
【0027】
一般加入電話を利用する発信者ユーザーも、電話料金を管理する電話会社やこれと提携する事業者などが課金システムを設けることにより、これら事業者に加入・契約をして課金情報が管理され、本発明のシステムを利用をすることができる。通信を確立するために、課金システムのサーバーが仲介・制御を行う。従来の一般加入電話からIP電話に対する通信は、図2において、IPネットワークとゲートウェイを介して、電話網を通信網として利用し、交換機の中継により通信する一般加入電話とIP電話端末との間で通信する形態として示されている。
本発明のシステムにおいては、前記の課金システムには、発信者から着信者に対する通信要求を中継するために、課金システムと契約した発信者の電話番号に付加されて用いられる事業者識別番号または機関ドメイン名等の事業者識別データが設定されている。
【0028】
ここで、電話番号、電子メールアドレスまたはデータ通信用の識別番号について説明する。ここで電話番号またはデータ通信用識別番号にはファクシミリ通信に用いる番号を含む。
電話契約において、クレジット会社・電話会社等の課金システムは、本発明のシステムを利用する発信者との支払契約を結ぶことにより、電話通話時の相手である着信者側から発信者である電話契約者に支払請求を行えるようにしたものである。
【0029】
発信者は、前記の契約により、課金システムの事業者識別データの付加された電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)を自分の電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)として利用する。具体的にはクレジット会社・電話会社等の課金システムを識別する事業者番号、課金システムが備えるサーバーを識別する機関ドメイン名などの事業者識別データ付加される。あるいはこれらと一対一に対応させて変換可能な数字、文字、記号などからなる電話番号、あるいはIPアドレスなどを含むことができる。つまり、事業者識別データを付加してない電話番号であっても、電話番号から事業者を識別できればよい。
【0030】
着信者も、同様の契約により、課金システムの事業者識別データの付加された電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)を自分の電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)として利用することができる。
【0031】
IP電話の番号計画については、IPネットワークへのアクセス形態の多様化・ブロードバンド化等により、昨今、様々な形態のIP電話サービスが登場していることから、これら新たなサービスに適した番号について検討され、日本国ではIP電話に「050-xxxx-xxxx」という11桁の番号を割り当てることが決定されている。「050」に続く4桁の数字は,事業者を識別するコードとして用いられる。ただし、すべてのIP電話サービスが「050」で始まる番号体系になるとは限らない。加入電話並みの通話品質であると評価されれば,加入電話と同じ番号体系を事業者が選択できるようになることが決定されている。
【0032】
IP電話の番号は、IP電話加入者を識別するための番号のことであり、一般加入電話からIP電話加入者に着信させるIP電話サービスを提供するためには、このIP電話の番号が必要となる。
電話網における電話番号が、呼のルーティングのために用いられる物理的な番号であるのに対して、IP電話における電話番号は、一般加入電話からのダイヤルを可能とするために、実際にルーティングを行うIPアドレス等に対応付けられる論理的な番号である。
また、従来IP電話が一般加入電話から着信するには,専用アダプタなどが必要であったが、一般加入電話の交換機などがIP電話の電話番号を認識できるようになるためにIP電話も加入電話から着信できるようになる。
【0033】
図4は、IP電話の様々な接続形態を示す図である。
図4において、一般加入電話からIP電話端末に対し接続する接続形態、IP電話端末からIP電話端末に対し接続する接続形態の場合には、着信側のIP電話端末を識別するための番号が必要となり、具体的な番号として050番号+(「市外局番+市内局番+加入者番号」で構成される固定電話の番号)が利用される。
さらに、VIP技術の発展やIPネットワークへのアクセス回線が多様化・ブロードバンド化等により、固定電話相当のサービスとは異なる様々なIP電話による通信サービスも想定される状況となっており、今後新規に登場するサービスにおいても本発明のシステムを利用することができる。
【0034】
図5は、図1に示したシステム構成において、IP電話において用いられる着信者の電話番号を説明するための図である。図5において、符号aで示される領域は、IPネットワークを通信網として利用し、IP電話端末同士が通信する形態であり、ITU−T勧告E.164で規定される国際公衆電気通信番号を用いれば、外国からの着信も可能である。
また、図5において、符号bで示される領域は、IPネットワークとゲートウェイを介して、電話網を通信網として利用し、交換機の中継により通信する一般加入電話とIP電話端末との間で通信する形態であり、発着呼がIPネットワークに閉じている場合は、電話網等と相互接続されているか否かにかかわらず、数字以外のアルファベット等を用いてもよい。
本発明のシステムにおいては、前記の通り、電話番号には、IP電話番号のほか、IPアドレス、ドメイン名を含むIP電話番号、その他の電話番号の形態、ファクシミリ通信のFAX番号、データ通信用の識別番号が含まれるので、電話番号の様々な形態には限定されない。
【0035】
本発明において、発信者が着信者宛に通信をしようとしてダイヤルする際に、発信者の電話番号には、クレジット会社や通信会社等の課金システムの事業者識別番号や機関ドメイン名などの事業者識別データが付与されていることが必要である。そのため、本発明のシステムを利用して発信するユーザーは、事前にクレジット会社や通信会社等の課金システムと契約することにより、身元が明らかにされ支払能力などがあることが課金システム側に認識される。契約により発信をするユーザーに、事業者識別データが付加された電話番号が割り当てられる。
また、事業者識別データを除く着信者の電話番号は、公衆回線交換網の電話番号であって、IP電話専用の番号と公衆回線交換網の番号とを共通して利用可能にすることができる。
【0036】
例えば、具体的な番号としては、IP電話番号として050番号を利用すると共に、さらにクレジットカード会社などの課金システムを識別する事業者番号(たとえば数桁の数字)が付加された番号となり、「050+事業者識別番号+電話番号」などである。
また、電話番号(または電子メールアドレス)の別の構成としては、クレジットカード会社等の公知の機関ドメインを持つ「03+電話番号+@abc.ph.jp」などのIP電話番号を利用することもできる。機関ドメイン名(ここではabc.ph.jp)が付加された電話番号(または電子メールアドレス)を構成し、機関ドメイン名を含む着信者への発信は本発明の課金システムのサーバーが中継するようにすることもできる。
【0037】
また、事業者識別データを除く発信者の電話番号は、公衆回線交換網において使用可能な電話番号であって、IP電話専用の番号と公衆回線交換網の番号とを共通して利用可能にすることができるが、この場合には、事業者識別データを除いた電話番号を発信した発信者から、着信者に対して直接迷惑電話がかかってくるおそれが生じることがありうるが、後述する通信制御手段により発信者の身元確認やペナルティ課金の支払保証ができない場合には着信拒否をすることができる。
【0038】
次に、課金システムが備えるサーバーの構成について説明する。
図3は、クレジットカード会社などの金融機関や通信会社など、本発明のシステムを提供する課金システムのサーバーの構成の一例を示すブロック図である。
課金システムが備えるサーバーは、ユーザー機から発信された専用電話番号を含む相手先の電話番号に対する通信要求を受信する通信要求受信手段を備えている。
発信者が電話番号(03−1234−5678@abc.ph.jp)から着信者に対し発信した場合に、電話番号に付加された事業者識別データによって、該当する課金システム(事業者)が識別され、前記のサーバーに中継され、発信者からの当該通信要求を通信要求受信手段が受信する。
通信要求受信手段が受信するデータには、発信者の電話番号と、着信者の電話番号と、発信者識別情報とが少なくとも含まれる。
【0039】
次に、課金システムが備えるサーバーは、着信者ユーザー機に対して通信を行う発信者の発信者識別データを識別する発信者識別手段を備えている。
前記の発信者識別手段は、通信要求受信手段が受信したデータから、発信者識別情報を抽出する。発信者識別情報は、発信者のIP電話その他の電話番号であるが、これには一般加入電話の電話番号、IP電話番号のほか、IPアドレス、ドメイン名を含むIP電話番号、電子メールアドレス、その他の発信者識別情報が含まれ、また発信者のユーザーIDやパスワードなどの認証情報、その他の識別情報を含んでいてもよい。
既存の電話網においては、発信者IDは信頼性の高い発信者の認証方法として広く一般に認識されているが、IPネットワークにおいては、なりすましによる発信者IDの詐称が想定される。しかしながら、本発明のシステムにおいては、課金システムのサーバーにおいて、発信者ユーザーのデータベースへの照会を行うことにより、発信者の身元の確認や支払保証・支払能力などの信用情報の確認がとれなければ着信者ユーザー機への着信拒否をすることができる。
【0040】
次に、課金システムが備えるサーバーは、識別された発信者についての信用情報を含む情報を照会する発信者照会手段を備えている。
発信者照会手段は、前記の発信者識別情報に基づき、発信者情報記憶手段を参照して該当する発信者を識別する。
ここで発信者情報記憶手段は、発信者の身元と支払保証を含むデータを記憶して、これを抽出し着信者に中継し通知して確認してもらうためのものである。
具体的には、発信者情報記憶手段は、課金システムがクレジットカード会社等の金融機関の場合には、クレジットカード加入者などのユーザーのデータベースであり、課金システムが電話会社などの通信会社の場合には、利用契約をしているユーザーのデータベースである。
課金システムが備えるサーバーは、発信者を照会した結果ユーザー機における着信が認められる場合には、発信者とユーザー機との間で通信を確立する通信制御手段を備えている。着信が認められる場合とは、課金システムと契約の契約を発信者が行いユーザー登録されている場合であり、さらに料金の支払状況などの信用情報を照会して判定することもできる。
前記の通信制御手段は、通信要求に含まれる発信者識別データに基づき着信許可をするか否かの判定を行う。
【0041】
前記の発信者の識別の結果、クレジットカード加入者などのユーザーのデータベース、通信会社と利用契約をしているユーザーのデータベースなどの発信者情報記憶手段に、該当する発信者のデータが存在し、かつ支払事故などの事故履歴等がない場合には、着信者ユーザー機に対する着信許可を行い、通信を中継するために着信者のユーザー機に対し発信者識別情報を含むデータを中継する。
次に、課金システムが備えるサーバーは、発信者に対するペナルティ課金をするか否かを判定する課金判定手段を備えている。
課金判定手段は、識別された発信者に対し課金処理をするか否かを判定するものであり、課金処理をするか否かの判定は、後述する着信者ユーザー機からの課金指示の受信による判定や、自動的にサーバーにおいて判定する方法を採用することができる。サーバーにおいて自動的に判定する場合には、着信者ユーザーがあらかじめ、着信のすべてに対し課金処理をする、あるいは特定の発信者からの着信のすべてに対し課金処理をする、などのデータをサーバーに記憶させておくことにより、判定を行うことができる。
【0042】
発信者はペナルティ課金が発生する可能性を承知の上でダイヤルすることになる。
着信者ユーザー機からの課金指示の受信による判定をする場合には、着信者側からみれば、「03−1234−5678@abc.ph.jp」などのIP電話番号を確認し、もし電話番号から身元と支払保証の確認ができない場合には着信許否をする。
また、通話をしてみた結果、勧誘電話・迷惑電話であったなら、ペナルティ課金が着信者側で行える。ここで、支払保証が確実であれば、発信者が不明であっても、着信させてもよい。
【0043】
なお、発信者に対し、本発明のシステムのシステム案内をするために、サーバーにおいて着信者の電話番号に対する着信があった場合には、前記の通信課金システムにはさらに、着信許可をする際に、発信者に対し課金システムに関する案内を送出する課金案内手段が備えられていれば、音声案内などにより、課金される可能性を発信者に対し通知することができる。
着信者ユーザー機から課金指示を送信することによりサーバーにおいて課金の判定をする場合には、ユーザーが迷惑電話と判定して課金指示を送出した際には課金がされることを案内する。また、自動的にサーバーにおいて判定する方法を採用することもでき、その場合にはたとえば通信を切断しないと課金がされる、あるいは着信者ユーザー機への中継をした時点で課金がされることを案内する。
【0044】
次に、課金システムが備えるサーバーは、課金判定データに基づき発信者に対する課金処理を行う課金処理手段を備えている。
課金処理は、クレジットカード会社などの金融機関の場合には、サービス利用料金の加算であり、電話会社などの通信会社などの場合にもサービス利用料金の加算として、請求される金額への加算処理として行うことができる。
次に、着信者ユーザーが課金指示を送出する場合には、前記の通信課金システムにはさらに、着信者ユーザー機から発信者に対するペナルティ課金指示を受信する課金指示受信手段が備えられ、勧誘電話・迷惑電話などに対する発信者へのペナルティ課金の指示を、着信者側から送出可能にされている。
この場合において、着信者ユーザー機には、ペナルティ課金の指示を送出するための課金指示送出手段が備えられていることが望ましい。
【0045】
以下、本発明の基本的な処理の流れについて説明する。
図6及び図7は、本発明の基本的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。なおここに示す処理の流れは一例であって、これに限定されるものではない。
初めに、発信者が本発明のシステムを利用するための前提として、IP電話に出る前に、発信者は課金システムと契約をして、事業者識別情報が付加された電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)を割り当てられることにより、料金の支払保証および身元確認が行われている。すなわち、クレジットカード加入者などのユーザーのデータベース、通信会社と利用契約をしているユーザーのデータベースなどの発信者情報記憶手段に、該当する発信者のデータが存在し、かつ支払事故などの事故履歴等がない場合に、発信者からの着信が許可される。
発信者のユーザー機(例:03−1234−5678@abc.ph.jp)から、着信者の電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)に通話をするために発信する(S100)。
発信者の電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)には、事業者識別データが付加されており(例:@abc.ph.jp)、該当する課金システムのサーバーにおいて、通信要求受信手段が受信する(S101)。
サーバーにおいては、発信者識別手段が、通信要求に含まれている発信者識別情報を抽出する(S102)。発信者識別情報は、前記のように発信者の電話番号などである。
次いで、抽出された発信者識別情報に基づき、発信者照会手段が、発信者情報記憶手段を参照し(S103)、通信の中継を許可する発信者情報が記憶されているか否かを判定し(S104)、該当する発信者のデータが記憶されていない場合や、支払事故などの履歴がある場合には通信中継を不許可にする。
該当する発信者のデータが記憶されている場合には、発信者識別情報を抽出する(S105)。
発信者識別情報の抽出により、発信者から着信者への通信の中継を許可するが、発信者に対し課金がされる可能性があるので、着信者との通信の確立前に本発明のシステムの案内を音声案内などによりすることが望ましい。
課金案内手段が、課金システムの説明(例:着信者が課金指示をすれば、課金・所定の口座等への寄付などをさせられる旨)を案内する(S106)。課金の指示は、着信者が不要な勧誘その他の迷惑電話であるとして課金を指示した場合に、発信者に対してペナルティ課金が加算される課金形態や、課金金額を所定の口座、たとえばユニセフなどへの寄付とされるような課金形態、着信者の通話料金に充当されるような課金形態などを採用することができる。図8は、寄付ボタンとしてユーザー機に備えられる、課金指示送出手段の一例を示す図である。
【0046】
発信者のユーザー機においてシステムの案内に同意しない場合には通信の中継が拒否される。同意した場合には(S107)、通信制御手段が、着信者のユーザー機に通信を中継し(S108)、着信者のユーザー機において呼出音が鳴るなどにより着信者に通信通知する(S109)。着信者が受話器をとる等の操作により、発信者から着信者への通信が確立し(S110)、通信・通話が行われる(S111)。
着信者は、勧誘などの不快な電話であった場合、IP電話機の寄付ボタンを押すなどして、相手に寄付させる。IP電話機には寄付ボタンが備えられている。いざ通話をして勧誘電話であったなら、相手に対するペナルティとして寄付ボタンを押し、ユニセフ等の団体に寄付したり、着信者に送金する仕組みとなっている。
【0047】
サーバーにおいては、着信者からの課金指示を課金指示受信手段が受信することにより、着信者が課金指示を送出したか否かを判定する(S112)。課金指示が送出されなければ、通信終了後に通信を切断し(S113)、通常の通話料金の課金が行われるが、ペナルティ課金や、寄付ボタンを押す等の課金指示による寄付などは行われない。
サーバーにおいて、着信者からの課金指示を課金指示受信手段が受信することにより、着信者が課金指示を送出したかことを判定した場合には(S112)、課金判定手段がペナルティ課金することを判定する(S114)。
課金処理手段が、発信者識別情報に基づき課金情報記憶手段を参照し(S115)、課金情報記憶手段の発信者の課金金額に加算する(S116)。課金指示が所定の寄付指示である場合には、(S117)課金金額は所定の口座等に加算され、寄付ではない場合には課金金額を課金システムが収納する等により、発信者に対するペナルティ課金が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
以上詳細に説明したように、本発明によれば、電話番号(または電子メールアドレス、データ通信用の識別番号)を公開して着信規制をかけない通常想定される状態においても、迷惑な電話(または電子メール、データ通信)に対し、着信者から発信者に対してペナルティを課すことができるシステムを提供することができる。
さらに本発明によれば、IP電話においては接続事業者を中継して電話通信が行われるために、中継するサーバーにおいて、特定の機関ドメイン名や事業者番号等を用いてサーバーにおいて課金処理や着信規制をすることにより、迷惑電話の発信者の身元の確認や、ペナルティとしての課金の支払の保証などを可能にしつつ、前記の迷惑電話の防止が可能なシステムを提供することができる。
また、一般加入電話の通話に相当するIP電話に限らず、IP電話の技術を利用して行われる各種通信等においても着信者側からペナルティ課金が行えるシステムとして使うことができる。たとえば電子メールであれば、クレジット会社等の公知の機関ドメインを持つメールアドレスとすることで、支払保証・身元確認が行われ、「迷惑メール」を受信したら機関ドメインに「寄付要請メール」を出してペナルティ課金を行うことができる。また不要なデータが送信されてくるなどの「迷惑データ通信」を受信したらペナルティ課金を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明のシステムの基本的な構成の一例を示すシステム構成図である。
【図2】本発明のシステムの別の基本的な構成の一例を示すシステム構成図である。
【図3】IP電話の様々な接続形態を示す図である。
【図4】図1に示したシステム構成において、IP電話において用いられる着信者の電話番号を説明するための図である。
【図5】クレジットカード会社などの金融機関や通信会社など、本発明のシステムを提供する課金システムのサーバーの構成の一例を示すブロック図である。
【図6】本発明の基本的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図7】本発明の基本的な処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【図8】寄付ボタンとしてユーザー機に備えられる、課金指示送出手段の一例を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信網と、通信網利用料金を管理する課金システムが備えるサーバーと、通信網に接続される発信者及び着信者のユーザー機とから構成されるシステムであって、
前記の課金システムには、発信者から着信者に対する通信要求を中継するために、課金システムと契約した発信者の電話番号に付加されて用いられる事業者識別番号または機関ドメイン名等の事業者識別データが設定されており、
課金システム、または発信者あるいは着信者が利用するアクセスポイント等の通信網における中継点が備えるサーバーには、発信者のユーザー機から発信された着信者のユーザー機に対する通信要求を受信する通信要求受信手段と、
通信要求に含まれる、発信者の電話番号に付加された発信者識別データを識別する発信者識別手段と、
識別された発信者についての信用情報を含む情報を照会する発信者照会手段と、
発信者を照会した結果、着信者のユーザー機における着信が認められる場合には、発信者と着信者のユーザー機との間で通信を確立する通信制御手段と、
発信者に対するペナルティ課金をするか否かを判定する課金判定手段と、
課金判定データに基づき発信者に対する課金処理を行う課金処理手段とを備えることを特徴とする、迷惑電話防止システム。
【請求項2】
通信網はIP電話網その他の電話網または電子メール通信網、ファクシミリ通信網、またはデータ通信網であることを特徴とする、請求項1に記載の迷惑電話防止システム。
【請求項3】
前記の発信者識別データは、クレジット会社や通信会社等の課金システムの事業者識別データが付加された、IP電話番号その他の電話番号、電子メールアドレス、ファクシミリ番号、またはデータ通信用の識別番号であることを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の迷惑電話防止システム。
【請求項4】
電話番号の内の事業者識別データを除く着信者の電話番号は、公衆回線交換網において使用可能な電話番号であって、IP電話専用の番号と公衆回線交換網の番号とを共通して利用可能なことを特徴とする、請求項3に記載の迷惑電話防止システム。
【請求項5】
前記の通信制御手段は、IP電話番号に含まれる事業者識別データその他の発信者識別データに基づき着信許可をするか否かの判定を行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の迷惑電話防止システム。
【請求項6】
前記の通信課金システムにはさらに、
着信者のユーザー機から発信者に対するペナルティ課金指示を受信する課金指示受信手段が備えられ、
勧誘電話・迷惑電話などに対する発信者へのペナルティ課金の指示を、着信者側から送出可能なことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の迷惑電話防止システム。
【請求項7】
着信者のユーザー機には、ペナルティ課金の指示を送出するための課金指示送出手段が備えられたことを特徴とする、請求項6に記載の迷惑電話防止システム。
【請求項8】
前記の通信課金システムにはさらに、
着信許可をする際に、発信者に対し課金システムに関する案内を送出する課金案内手段が備えられたことを特徴とする、請求項1〜7のいずれかに記載の迷惑電話防止システム。
【請求項9】
前記の課金指示はあらかじめ定める所定の口座への寄付その他の、発信者から他者への課金金額の金額移転指示であることを特徴とする、請求項1〜8のいずれかに記載の迷惑電話防止システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2011−244508(P2011−244508A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−196615(P2011−196615)
【出願日】平成23年9月9日(2011.9.9)
【分割の表示】特願2009−242447(P2009−242447)の分割
【原出願日】平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願人】(504385339)
【Fターム(参考)】