説明

送りねじを有する偏心ねじポンプ

【課題】 所要の吐出量の媒体を常に安定して供給することができ,異なる媒体に対しても常に低い駆動力のみが必要とされる送りねじを有する偏心ねじポンプを提案する。
【解決手段】 偏心ねじポンプは,ロータが,追加的なねじ開始部を設けたステータ内で回動可能に配置され,かつ,送りねじ(10)により包囲した結合シャフトを介して駆動源に結合されている。送りねじ(10)は,一ピッチについて少なくとも2個の開口部(24)を有するねじ部(14)を具え,これらの開口部(24)間に位置するウェブ(26)が結合シャフトに結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ネジロータの吸込み領域に中粘度又は高粘度の媒体を供給するための送りねじを有する偏心ねじポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドイツ特許出願公開第10160335号公報(特許文献1)は,送りねじをポンプロータの手前側でポンプハウジング内に配置した偏心ねじポンプを開示している。この送りねじは,その内周面全体によりねじコアに結合している。
【特許文献1】ドイツ特許出願公開第10160335号公報
【0003】
ドイツ特許出願公開第10118071号公報(特許文献2)は,結合ロッドの周りに中空ねじを配置した偏心ねじポンプを開示している。この中空ねじは,その駆動側でディスクに結合されている。ねじロータの吸込み側領域でに位置する他端部は,ジョイント又は結合ロッドに結合されるものではない。
【特許文献2】ドイツ特許出願公開第10118071号公報
【0004】
ドイツ特許第1277819号明細書(特許文献3)は,乾燥した物質を液体と混合した後,ポンプに供給するミキサ装置を開示している。そのため,一端部がモータに接続され,他端部がねじポンプに接続された混合ねじを,貯蔵容器の領域内に着座させる。液体を,貯蔵容器及びポンプの間のねじ領域に流入させる。送りねじは,ヘリカルの帯状部材により構成され,4個のブレース部材のみにより混合ねじに一端部で結合されている。
【特許文献3】ドイツ特許第1277819号明細書
【0005】
ドイツ特許第4318177号公報(特許文献4)も,混合及び送り装置を開示している。この場合,乾燥した物質がホッパーを経由して混合ねじ領域に供給され,その混合ねじ領域には液体供給配管も導入されている。混合操作の後,混合物がねじポンプにより搬送される。混合ねじ自体は,中実ねじを設けた領域と,パドル及びウェブ状の混合部材を設けた領域とで構成されている。
【特許文献4】ドイツ特許第4318177号公報
【0006】
上述した何れのポンプも,それぞれ所定の供給量に応じて設計されている。そのため,吸込み側のポンプ領域に対して,常に適当な量の媒体を供給する必要がある。したがって,実際のねじ,すなわち偏心ねじポンプの上流側に配置される送りねじは,ポンプ容量の数倍の容積を供給できるものとする必要がある。その結果,吸込み側領域におけるスタッフィングスペースにバックアップ効果が生じ,ねじの上方に位置するホッパー内部にブリッジが形成される懸念がある。このようなバックアップ効果を考慮して,送りねじを実際に要求される以上に大きな駆動力で駆動しなければならない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって,本発明が解決しようとする課題は,所要の吐出量の媒体を常に安定して供給することができ,異なる媒体に対しても常に低い駆動力のみが必要とされる送りねじを有する偏心ねじポンプを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は,本発明によれば,請求項1に記載した特徴によって解決されるものである。また,本発明の好適な実施形態は,従属請求項に記載したとおりである。
【0009】
ポンプロータと駆動源との間の送りねじの対応する構成に基づき,従来技術が本発明の課題の一部しか解決できないことが判明した。
【0010】
言うまでもなく,本発明による構成は,圧送すべき製品の種類及び粘度,場合によっては固体材料の物性に依存するものである。
【0011】
本発明の一実施形態において,送りねじは一ピッチについて少なくとも2個の開口部を有し,これらの開口部間のウェブがねじの谷部において結合シャフトに結合している。製品の粘度如何によっては,開口部の個数を4以上に増加させ,これにより媒体の戻り流れを容易に生じさせると共により均一な混合を生じさせて,ブリッジの形成をポンプの吸込み側端部において防止するのが実用的である場合がある。
【0012】
本発明により送りねじに開口部を設けたことに基づき,媒体の性状に応じて従来技術よりも低損失・低出力の駆動源を使用することが可能である。
【0013】
本発明による利点を結合領域においても達成するため,ねじを当該結合領域を超えて延在させる。そのために,結合ロッドとして用いられるパイプに帯状のパイプセグメントを設け,これらのパイプセグメントをねじに結合する。パイプセグメントを個数において開口部と対応させれば,パイプセグメントを結合するために対応する個数のウェブが配置されることとなる。
【0014】
媒体の戻り流れのためには開口部の個数のみならず,その面積も重要な役割を演じる。そのため,本発明の一実施形態では開口部の高さを,ねじ山高さの30%〜70%とする。低粘度物質の場合には,開口部の高さを,ねじ山高さの20%〜60%の範囲内で適宜に設定することができる。
【0015】
例示的な実施形態について示すとおり,開口部の幅は,戻り流れの均一性及びねじに対する荷重の均一性に鑑み,ウェブの幅と対応させる。高粘度物質の場合には,開口部の幅をウェブの幅よりも大として戻り流れ特性を改善させる必要がある。また,低粘度物質の場合には,ブリッジが形成される可能性が比較的に低いので,ウェブの幅を開口部の幅よりも大とすることが可能である。
【0016】
媒体の戻り流れ特性を改善し,かつ,停滞効果を抑制するため,ウェブにねじの傾斜と逆向きの曲がれ方向を規定する傾斜を持たせて結合シャフトに沿う流れ特性を向上させることが可能である。
【0017】
ねじに要求される構成に応じて,ウェブを30°〜120°だけ相互にオフセットさせることができる。送りねじを結合シャフトの全長に亘って安定化させるため,パイプセグメントの長さをねじ部の進路に対応させることができる。
【0018】
送りねじを結合シャフトに対して容易に結合可能とするため,送りねじを複数部品から構成することができる。これらの部品は,通常行われる溶接作業の間,良好に取り扱うことが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下,本発明を図示の好適な実施形態に基づいて更に詳述する。
【0020】
図1は,ねじパイプ12を有する送りねじ10の一実施形態を示す。ねじパイプ12の外周面には,ねじ部14が溶接されている。ねじパイプ12の両端部16,18には,ねじ部14を締結するためのパイプセグメント20が設けられている。各パイプセグメント20は,ねじ部14が終始する軸線方向位置において終止する。パイプセグメント20の領域内で,図示しない継手のための結合部材が両端に設けられている。ねじ部14は,平坦な帯状材料から製造されるものである。
【0021】
ねじ部14のより具体的な構成を図2に示す。同図から明らかなとおり,ねじ部14には,開口部24と,ウェブ26とが設けられている。ウェブ26のねじ谷部34は,例えば溶接によりパイプセグメント20又は結合シャフト32に固定されている。ロータ領域からの媒体は,送りねじ10の開口部を通過し,ねじパイプに密接に沿ってポンプ吸込み口に向けて軸線方向に戻されるが,ねじ部14はその端面28により媒体をポンプロータに向けて圧送する。ポンプロータは,一部のみを図示した継手によって送りねじ10に確動接触し,この継手は結合部22に締結されている。
【0022】
図3は,高粘度媒体を対象とする送りねじにおける開口部24及びウェブ26の配置例を示す。この場合には,開口部24の開口面積が大きいため,媒体の非常に良好な戻し流れ特性が実現され,スタッフィングスペース内における滞留圧をポンプの吐出特性に効果的に適合させることが可能である。これにより,媒体の脱水化やブリッジ形成傾向を緩和し,高い駆動力の必要性を回避することが可能である。
【0023】
図3に示す例においては,開口部24がウェブ26よりも幅広とされている。開口部24は相互に90°の角度でオフセット配置されており,したがってねじの一ピッチについて4個の開口部24と,4個のウェブ26とが設けられることとなる。開口部24の高さは,ねじの高さの約50%である。
【0024】
他の実施形態に係る送りねじ10を図4及び5に示す。この場合には,駆動部材として結合シャフト32が設けられている。ねじ部14は結合部材30間の領域内で結合シャフト32上に溶接され,結合部材は他の実施形態におけると同様に個別的なねじセグメントでこうせいされている。ねじ部14の上記実施例は,例えば低粘度媒体を対象とするものである。開口部24の開口面積と対比して端面28の面積が大きいため,より多量の媒体をロータ領域に流入させることができる。それにも拘らず,開口部24の寸法が小さいため,高い駆動力は必要とされない。
【0025】
図4及び5における送りねじ10の開口部24の配置と,その寸法を図6に示す。ねじ部14には,その一ピッチにつき,互いに120°の角度でオフセット配置された3個の開口部24が設けられている。
【0026】
図7〜9は,送りねじ10におけるねじ部14の他の配置例を示す。
【0027】
図7に示す例は,各6個の開口部24及びウェブ26を均等に配置したものである。開口部24の高さHDはねじ部14の高さHSの50%である。また,開口部24の幅BDはねじ部14の幅BSに対応している。
【0028】
図8に示す例は,各4個の開口部24及びウェブ26を均等に配置したものである。開口部24の幅BDはねじ部14の幅BSよりも大とされている。さらに,開口部24の高さHDはねじ部14の高さHSの50%である。
【0029】
図9に示す一点鎖線は,開口部24の高さHDとねじ部14の高さHSとの異なる関係を示す。開口部24は,互いに120°の間隔で3個がオフセット配置されたものである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の一実施例に係る偏心ねじポンプの送りねじを示す側面図である。
【図2】同送りねじの斜視図である。
【図3】同送りねじの横断面図である。
【図4】本発明の他の実施例に係る偏心ねじポンプにおける,結合部を両側に設けた送りねじを示す斜視図である。
【図5】同送りねじの側面図である。
【図6】同送りねじの横断面図である。
【図7】6個の開口部を有する送りねじの横断面図である。
【図8】4個の開口部を有する送りねじの横断面図である。
【図9】結合ロッドからの距離を異ならせた送りねじの横断面図である。
【符号の説明】
【0031】
10 送りねじ
12 ねじパイプ
14 ねじ部
16,18 結合シャフト端部
20 パイプセグメント
22 結合部
24 開口部
26 ウェブ
28 端面
30 結合部材
32 結合シャフト
34 ねじの谷部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏心的に回動するロータを具える偏心ねじポンプであって,該ロータが,追加的なねじ開始部を設けたステータ内で回動可能に配置され,かつ,該ロータが結合シャフトを介して駆動源に結合され,該結合シャフトが送りねじにより包囲されている偏心ねじポンプにおいて,
前記送りねじ(10)が,一ピッチについて少なくとも2個の開口部(24)を有するねじ部(14)を具え,該開口部(24)の間に位置するウェブ(26)が前記結合シャフトに結合されていることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の偏心ねじポンプであって,前記送りねじ(10)が,一ピッチについて少なくとも4個の開口部(24)を有ことを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の偏心ねじポンプであって,前記結合シャフトがねじパイプ(12)を有し,該ねじパイプ(12)上にストリップ状のパイプセグメント(20)が,その一端を送りねじ(10)の長手方向軸線と平行に向けて配置され,該送りねじ(10)が前記ねじ部(14)に結合されていることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項4】
請求項3に記載の偏心ねじポンプであって,前記パイプセグメント(20)が,個数において前記開口部(24)と対応していることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項5】
請求項1,2又は4に記載の偏心ねじポンプであって,前記開口部(24)の高さ(HD)が,前記ねじ部(24)の高さ(HS)の20%〜70%であることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載の偏心ねじポンプであって,前記開口部(24)の高さ(HD)が,前記ねじ部(24)の高さ(HS)の30%〜60%であることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項7】
請求項3又は4に記載の偏心ねじポンプであって,前記パイプセグメント(20)が,偏心ねじポンプの作動状態において,結合部材(30)をカバーすることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の偏心ねじポンプであって,前記開口部(24)の幅(BD)が,前記結合シャフトに結合された前記ウェブ(26)の幅(BS)に対応していることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項9】
請求項1〜7の何れか一項に記載の偏心ねじポンプであって,前記開口部(24)の幅(BD)が,前記ウェブ(26)の幅(BS)よりも大であることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項10】
請求項1〜8の何れか一項に記載の偏心ねじポンプであって,前記ウェブ(26)の幅(BS)が,前記開口部(24)の幅(BD)よりも大であることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の偏心ねじポンプであって,前記ウェブ(26)が,ねじ部の傾斜と逆向きの傾斜を有することを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の偏心ねじポンプであって,前記ウェブ(26)が,30°〜120°だけ相互にオフセットしていることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項13】
請求項7記載の偏心ねじポンプであって,前記パイプセグメント(20)の長さが,前記ねじ部(14)の進路に対応していることを特徴とする偏心ねじポンプ。
【請求項14】
請求項1〜13の何れか一項に記載の偏心ねじポンプであって,前記ねじ部(14)が複数部品よりなることを特徴とする偏心ねじポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−38907(P2008−38907A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200610(P2007−200610)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(505061713)ネッチュ−モーノプンペン ゲーエムベーハー (6)
【Fターム(参考)】