説明

送りねじ装置

【課題】より効率的にねじ溝を加振することによって、ねじ溝に発生する摩擦力を低減することが可能な送りねじ装置を提供することを目的とする。
【解決手段】送りねじ装置1は、外周面にねじ溝11が形成された軸部材10と、内周面にねじ溝が形成されたナット部材20と、ナット部材20のねじ溝を振動させる振動発生部材41とを備える。ナット部材20のねじ溝は、軸部材10のねじ溝11と噛み合う軸方向範囲L2において、軸方向に離間して設けられた複数のねじ溝部21a,22aにより構成される。振動発生部材41は、複数のねじ溝部21a,22aの間に介在して固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転運動により移動体を直線運動させる送りねじ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
送りねじ装置は、工作機械や自動車などの様々な分野において、移動体を直線方向に位置決めを行う機械要素として使用されている。この送りねじ装置は、軸部材とナット部材にそれぞれ形成されたねじ溝を直接的に噛み合わせ、または複数のボールを介して間接的に噛み合わせ、回転運動を直線運動に変換して移動体を移動させている。また、送りねじ装置には、軸部材を回転させてナット部材を直線運動させるものと、ナット部材を回転させて軸部材を直線運動させるものがある。何れの構成においても、送りねじ装置は、回転運動させる部材の回転量に応じて移動体を位置決めしている。
【0003】
このような送りねじ装置の軸部材およびナット部材において、噛み合っている各ねじ溝には摩擦力が発生している。ねじ溝に発生する摩擦力は、必要となる回転駆動力や位置決め精度、装置の耐久性などに影響するおそれがあるため、なるべく低減させることが好適である。そこで、例えば、特許文献1,2には、高周波振動を発生する加振装置を用いた摩擦力の低減方法が開示されている。この方法によると、加振装置により、軸部材またはナット部材を加振することで、ねじ溝に発生する摩擦力を低減できるものとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−238540号公報
【特許文献2】特開2005−256954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような加振装置を用いて摩擦力を低減させる送りねじ装置においては、加振する際の周波数や振幅の設定、高周波振動を発生させる振動発生部材をどのように配置するかによって、その効果が大きく変動することがある。また、加振装置についても小型化などの要請があるため、より効率的にねじ溝を加振して摩擦力を低減させることが求められている。
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、より効率的にねじ溝を加振することによって、ねじ溝に発生する摩擦力を低減することが可能な送りねじ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、請求項1に係る発明によると、外周面にねじ溝が形成された軸部材と、内周面に前記軸部材の前記ねじ溝と噛み合うねじ溝が形成されたナット部材と、前記軸部材および前記ナット部材のうち一方部材に固定され、当該一方部材の前記ねじ溝を振動させる振動発生部材と、を備え、前記一方部材の前記ねじ溝は、前記軸部材および前記ナット部材のうち他方部材の前記ねじ溝と噛み合う軸方向範囲において、軸方向に離間して設けられた複数のねじ溝部により構成され、前記振動発生部材は、複数の前記ねじ溝部の間に介在して固定される。
【0007】
請求項2に係る発明によると、請求項1において、前記一方部材は、別体に形成され複数の前記ねじ溝部を設けられた複数のねじ溝部本体と、複数の当該ねじ溝本体を一体的に連結する連結部と、を有する。
請求項3に係る発明によると、請求項1または2において、前記軸部材の前記ねじ溝の軸方向長さが前記ナット部材の前記ねじ溝の軸方向長さよりも長い場合に、前記ナット部材を前記一方部材とする。
【発明の効果】
【0008】
請求項1に係る発明によると、軸部材およびナット部材のうち振動発生部材が固定される一方部材のねじ溝は、軸方向に離間した複数のねじ溝部により構成されている。そして、振動発生部材が複数のねじ溝部の間に介在して固定される構成としている。これにより、複数のねじ溝部のうち何れかのねじ溝部が基準となり、その他のねじ溝部を振動発生部材により加振することができる。従来においては、例えば、特許文献1では軸部材の端部から加振し、特許文献2ではナット部材の端部から加振する構成としている。このような従来の構成では、振動発生部材が、配置される軸部材またはナット部材を基準として振動すると、十分に軸部材またはナット部材を加振できないことが懸念される。これに対して、本発明では、上述のように、少なくとも何れかのねじ溝部が基準となるため、より効率的にねじ溝を加振することができる。よって、ねじ溝に発生する摩擦力を低減することができる。
【0009】
また、ねじ溝を構成する複数のねじ溝部は、振動発生部材が固定されない側の他方部材のねじ溝と噛み合う軸方向範囲において離間するものとしている。つまり、このような複数のねじ溝部の間に介在する振動発生部材は、各ねじ溝が噛み合う軸方向範囲の内側に位置することになる。そのため、振動発生部材から効率的に振動がそれぞれのねじ溝部に伝達されるので、確実にねじ溝に発生する摩擦力を低減することができる。
【0010】
請求項2に係る発明によると、振動発生部材が固定される一方部材は、別体に形成された複数のねじ溝部本体を連結部により一体的に連結している。これにより、ねじ溝部を設けられた複数のねじ溝部本体のうち何れかのねじ溝部本体が基準となり、その他のねじ溝部本体を振動発生部材により加振することができる。よって、確実にねじ溝部を加振し、摩擦力を低減することができる。
【0011】
請求項3に係る発明によると、ナット部材に振動発生部材を固定する構成としている。送りねじ装置は、軸部材に対してナット部材が相対的に直線運動することにより、移動体を位置決めしている。また、用途にもよるが一般に、軸部材のねじ溝の軸方向長さがナット部材のねじ溝の軸方向長さよりも長い場合が多い。そのため、ナット部材のねじ溝を軸方向に離間した複数のねじ溝部により構成することで、その間に介在する振動発生部材は、常に加振の対象であるねじ溝の近傍に位置することになり、効率的に加振することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】第一実施形態:送りねじ装置の全体を示す断面図である。
【図2】軸部材とナット部材の噛み合いを示す拡大断面図である。
【図3】第二実施形態:軸部材とナット部材の噛み合いを示す拡大断面図である。
【図4】第三実施形態:軸部材とナット部材の噛み合いを示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の送りねじ装置を具体化した実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
<第一実施形態>
(送りねじ装置1の構成)
本実施形態の送りねじ装置1について、図1および図2を参照して説明する。送りねじ装置1は、図1に示すように、軸部材10と、ナット部材20と、駆動装置30と、加振装置40を備えている。また、本実施形態において、送りねじ装置1は、軸部材10を駆動装置30により回転させて、ナット部材20を直線運動させる構成としている。これにより、ナット部材20に設けられた移動体2は、ナット部材20の直線運動に伴って軸方向に移動し、駆動装置30の制御により所定の軸方向位置に位置決めされる。
【0015】
軸部材10は、軸方向に延びる円柱状部材であり、その外周面に一方側の端部から他方側の端部に亘ってねじ溝である雄ねじ11が形成されている。また、軸部材10は、複数の軸受により回転可能に支持され、後述する駆動装置30により回転駆動する。
【0016】
ナット部材20は、図1および図2に示すように、第一ナット本体21と、第二ナット本体22と、連結部23を有している。第一ナット本体21は、環状からなり内周面にねじ溝である雌ねじ21aが設けられている。第二ナット本体22は、第一ナット本体21と同様に、環状からなり内周面にねじ溝である雌ねじ22aが設けられている。第一ナット本体21および第二ナット本体22は、別体に形成された部材であり、送りねじ装置1における軸方向に離間して配置されている。
【0017】
そして、各雌ねじ21a,22aは、軸部材10の雄ねじ11とそれぞれ噛み合っている。このような構成からなる第一ナット本体21および第二ナット本体22は、本発明の「ねじ溝部本体」相当するものである。そして、ナット部材20のねじ溝は、軸方向に離間しても設けられた複数のねじ溝部である各雌ねじ21a,22aにより構成されている。
【0018】
連結部23は、複数のねじ溝部本体に相当する第一ナット本体21および第二ナット本体22を一体的に連結する部材である。本実施形態においては、第一ナット本体21および第二ナット本体22に設けられた貫通孔を挿通し、ボルト締結により両部材を連結している。また、連結部23は、環状からなる第一ナット本体21および第二ナット本体22の周方向に等間隔で複数設けられている。そして、連結部23は、第一ナット本体21に対する第二ナット本体22の周方向の相対移動を規制して回転駆動力を伝達可能とするとともに、微小な軸方向の相対移動を許容している。
【0019】
このような構成からなるナット部材20は、軸部材10と互いのねじ溝で噛み合い、回転運動を直線運動に変換可能としている。そして、ナット部材20は、軸部材10が回転すると、その回転量に応じて、第二ナット本体22の外周側に設置された移動体2とともに軸方向に移動する。ここで、移動体2の可動域を十分に確保するために、図1および図2に示すように、軸部材10のねじ溝に相当する雄ねじ11の軸方向長さL1は、ナット部材20のねじ溝に相当する各雌ねじ21a,22aの軸方向長さL2よりも長く形成されている。この軸方向長さL2は、軸部材10とナット部材20の各ねじ溝(雄ねじ11,雌ねじ21a,22a)が噛み合う軸方向範囲と等しい。
【0020】
駆動装置30は、軸部材10を回転駆動させるものであって、モータ31とカップリング32を有する。モータ31は、図示しない制御装置に連結され、当該制御装置からモータアンプなどを介して供給される電流によって所定の位相まで回転する電動機である。また、モータ31は、送りねじ装置1において回転可能に支持された軸部材の一端とカップリング32を介して連結されている。これにより、モータ31の回転駆動が軸部材10に伝達されるようになっている。
【0021】
加振装置40は、送りねじ装置1においてナット部材20を加振するものであって、圧電素子41とアンプ42を有する。圧電素子41は、印加された電圧によって振動する素子であり、本発明の「振動発生部材」に相当する。この圧電素子41は、図示しない制御装置にアンプ42を介して連結され、制御装置により印加される信号電圧によって所定の振幅および振動数で振動する。
【0022】
また、圧電素子41は、ナット部材20の第一ナット本体21および第二ナット本体22の隙間において周方向に複数配置され、連結部23によって両部材21,22に挟持されるように固定されている。このように、振動発生部材である圧電素子41は、ナット部材20のねじ溝(各雌ねじ21a,22a)の間に介在して固定される構成となっている。
【0023】
(送りねじ装置1による作用および効果)
上述した送りねじ装置1によると、駆動装置30により所定の回転量だけ軸部材10を回転させて、軸部材10と噛み合うナット部材20を軸方向に移動させる。これにより、ナット部材20に設置された移動体2を所定の軸方向位置に位置決めする。また、送りねじ装置1の軸部材10およびナット部材20において、噛み合っている雄ねじ11および各雌ねじ21a,22aには摩擦力が発生している。
【0024】
そこで、送りねじ装置1は、ナット部材20のねじ溝(雌ねじ21a,22a)を加振装置40によって加振することにより、上記の摩擦力の低減を図っている。そして、本実施形態の送りねじ装置1は、振動発生部材である圧電素子41をナット部材20に固定するものとしている。さらに、ナット部材20のねじ溝が軸方向に離間した雌ねじ21aおよび雌ねじ22aにより構成されるものとし、圧電素子41をこれらの間に介在して固定される構成としている。
【0025】
このような構成において、加振装置40がアンプ42を介して圧電素子41に信号電圧を印加すると、圧電素子41が固定された第一ナット本体21および第二ナット本体22が相対的に振動する。軸部材10の雄ねじ11との噛合力や移動体2から受ける反力などにも影響されるが、第一ナット本体21および第二ナット本体22のうち一方が基準となり、他方が振動することも想定される。何れにしても、少なくとも一方が振動することにより、ナット部材20のねじ溝を構成する各雌ねじ21a,22aのうち少なくとも一方を加振することができる。これにより、軸部材10のねじ溝(雄ねじ11)とナット部材20のねじ溝に発生する摩擦力を低減することができる。
【0026】
さらに、送りねじ装置1は、圧電素子41が軸方向に離間した雌ねじ21aおよび雌ねじ22aの間に介在するものとした。これにより、圧電素子41は、雄ねじ11と各雌ねじ21a,22aが噛み合う軸方向範囲L2の内側に位置することになる。そのため、圧電素子41から効率的に振動がナット部材20のねじ溝部に相当する各雌ねじ21a,22aに伝達されるので、確実にねじ溝に発生する摩擦力を低減することができる。
【0027】
また、圧電素子41が固定されるナット部材20は、別体に形成された複数の第一ナット本体21および第二ナット本体22を連結部23により一体的に連結して構成される。これにより、雌ねじ21aを設けられた第一ナット本体21および雌ねじ22aを設けられた第二ナット本体22のうち何れかの一方が基準となり、他方を圧電素子41により加振することができる。よって、確実にナット部材20のねじ溝部を加振し、摩擦力を低減することができる。
【0028】
ここで、送りねじ装置1は、本実施形態において、軸部材10に対してナット部材20が相対的に直線運動することにより、移動体2を位置決めするものとした。この場合に、用途にもよるが一般に、軸部材10の雄ねじ11の軸方向長さL1がナット部材20のねじ溝(雌ねじ21a,22a)の軸方向長さL2よりも長い場合が多い。そのため、ナット部材20のねじ溝を軸方向に離間した雌ねじ21aおよび雌ねじ22aにより構成することで、その間に介在する圧電素子41は、常に加振の対象である雌ねじ21a,22aの近傍に位置することになり、効率的に加振することができる。
【0029】
<第二実施形態>
本実施形態の送りねじ装置101について、図3を参照して説明する。本実施形態における送りねじ装置101は、主として、第一実施形態とナット部材の構成が相違する。その他の共通する構成については、第一実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0030】
送りねじ装置101は、軸部材10と、ナット部材120と、駆動装置30と、加振装置40を備えている。ナット部材120は、図3に示すように、複数の雌ねじ124a〜124cと、複数の凹部125a,125bを有している。このナット部材120は、第一実施形態のナット部材20とは異なり、一体部材として形成されている。ナット部材120は、環状からなり内周面にねじ溝である複数の雌ねじ124a〜124cが異なる軸方向位置に設けられている。複数の雌ねじ124a〜124cは、軸部材10の外周面に形成された雄ねじ11とそれぞれ噛み合っている。各雌ねじ124a〜124cは、ナット部材120に設けられた複数のねじ溝部に相当する。
【0031】
また、ナット部材120は、内周面において全周に亘って形成された複数の凹部125a,125bが各雌ねじ124a〜124cの間に形成されている。これにより、各雌ねじ124a〜124cは、凹部125a,125bの軸方向幅の分だけ軸方向に離間している。また、各凹部125a,125bは、その底面とナット部材120の外周面までの所定距離となるように設計される。これにより、各雌ねじ124a〜124cが設けられた各部位の間での回転駆動力を伝達可能とするとともに、微小な軸方向の相対移動を許容している。
【0032】
そして、送りねじ装置101は、加振装置40の圧電素子41を複数の凹部125a,125bにそれぞれ配置している。これにより、送りねじ装置101は、ナット部材120に固定された圧電素子41が、制御装置により印加される信号電圧によって所定の振動をナット部材120のねじ溝(雌ねじ124a〜124c)に伝搬して加振する構成となっている。このような構成の送りねじ装置101によると、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0033】
また、本実施形態では、異なる軸方向位置に形成された凹部125a,125bにそれぞれ圧電素子41を配置する構成とした。これは、用途などによって適宜設定されたナット部材120の軸方向長さと、圧電素子41の加振能力を勘案したものであって、さらに圧電素子41を異なる軸方向位置に配置する構成としてもよい。
【0034】
<第三実施形態>
本実施形態の送りねじ装置201について、図4を参照して説明する。本実施形態における送りねじ装置201は、主として、第一実施形態と振動発生部材の配置する部材が異なり、これに伴い軸部材およびナット部材の構成が相違する。その他の共通する構成については、第一実施形態と実質的に同一であるため、詳細な説明を省略する。以下、相違点のみについて説明する。
【0035】
送りねじ装置201は、軸部材210と、ナット部材220と、駆動装置30と、加振装置40を備えている。軸部材210は、図4に示すように、第一軸本体212と、第二軸本体213と、連結部214を有している。第一軸本体212は、外周面にねじ溝である雄ねじ212aが設けられている。第二軸本体213は、第一軸本体212と同様に、外周面にねじ溝である雄ねじ213aが設けられている。第一軸本体212および第二軸本体213は、別体に形成された部材であり送りねじ装置201における軸方向に離間して配置されている。
【0036】
そして、各雄ねじ212a,213aは、後述するナット部材220の雌ねじ220aとそれぞれ噛み合っている。このような構成からなる第一軸本体212および第二軸本体213は、本発明の「ねじ溝部本体」に相当するものである。そして、軸部材210のねじ溝は、軸方向に離間して設けられた複数のねじ溝部である各雄ねじ212a,213aにより構成されている。
【0037】
連結部214は、複数のねじ溝部本体に相当する第一軸本体212および第二軸本体213を一体的に連結する部材である。本実施形態においては、第一軸本体212および第二軸本体213の対向する端面に設けられた圧入孔に圧入されて両部材を連結している。また、連結部214は、円柱状からなる第一軸本体212および第二軸本体213の周方向に等間隔で複数設けられている。そして、連結部214は、第一軸本体212に対する第二軸本体213の周方向の相対移動を規制して回転駆動力を伝達可能とするとともに、微小な軸方向の相対移動を許容している。
【0038】
ナット部材220は、環状からなり内周面にねじ溝である雌ねじ220aが設けられている。雌ねじ220aは、第一軸本体212の雄ねじ212aおよび第二軸本体213の雄ねじ213aと噛み合っている。このような構成からなるナット部材220は、軸部材210の回転に伴い、その回転量に応じてナット部材220に設置された移動体2とともに軸方向に移動する。
【0039】
また、本実施形態において、ナット部材220は、雌ねじ220aが軸部材210の雄ねじ212aおよび雄ねじ213aと常に噛み合っている軸方向範囲を可動範囲としている。つまり、ナット部材220の可動範囲は、ナット部材220の雌ねじ220aの軸方向長さL3から第一軸本体212と第二軸本体213の軸方向の離間距離L4を差し引いた距離となる。このように、軸部材210のねじ溝は、ナット部材220のねじ溝(雌ねじ220a)と噛み合う軸方向範囲L3において、軸方向に離間して設けられた複数のねじ溝部(雄ねじ212a,213a)により構成されていることになる。
【0040】
そして、送りねじ装置201は、加振装置40の圧電素子41を第一軸本体212と第二軸本体213の間に配置している。これにより、送りねじ装置201は、軸部材210に固定された圧電素子41が、制御装置により印加される信号電圧によって所定の振動を軸部材210のねじ溝(雄ねじ212a,213a)に伝搬して加振する構成となっている。このような構成の送りねじ装置201によると、第一実施形態と同様の効果を奏する。
【0041】
<実施形態の変形態様>
実施形態(第一実施形態〜第三実施形態)において、振動発生部材として圧電素子41を例示して説明した。これに対して、振動発生部材は、軸部材のねじ溝またはナット部材のねじ溝を加振できるものであれば、圧電効果を利用した振動子以外であっても適用することができる。また、実施形態において、送りねじ装置1,101,201は、軸部材を回転させてナット部材を直線運動させる構成とした。これに対して、送りねじ装置は、駆動装置によりナット部材を回転させて軸部材を直線運動させてもよい。
【0042】
さらに、軸部材のねじ溝とナット部材のねじ溝が直接的に噛み合う構成を例示して説明した。これに対して、送りねじ装置は、軸部材とナット部材にそれぞれ形成されたねじ溝を、複数のボールを介して間接的に噛み合わせたボールねじ装置としてもよい。この場合は、軸部材の外周面に形成されたボールの軌道溝がねじ溝に相当し、当該軌道溝とボールにより雄ねじが形成される。何れの構成においても本発明を適用することで、同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0043】
1,101,201:送りねじ装置、 2:移動体
10,210:軸部材、 11:雄ねじ(ねじ溝)
212:第一軸本体(ねじ溝部本体)、 213:第二軸本体(ねじ溝部本体)
212a,213a(ねじ溝部、ねじ溝)、 214:連結部
20,120,220:ナット部材、 21:第一ナット本体(ねじ溝部本体)
22:第二ナット本体(ねじ溝部本体)
21a,22a,220a:雌ねじ(ねじ溝部、ねじ溝)、 23:連結部
124a〜124c:雌ねじ、 125a,125b:凹部
30:駆動装置、 31:モータ、 32:カップリング
40:加振装置、 41:圧電素子(振動発生部材)、 42:アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周面にねじ溝が形成された軸部材と、
内周面に前記軸部材の前記ねじ溝と噛み合うねじ溝が形成されたナット部材と、
前記軸部材および前記ナット部材のうち一方部材に固定され、当該一方部材の前記ねじ溝を振動させる振動発生部材と、を備え、
前記一方部材の前記ねじ溝は、前記軸部材および前記ナット部材のうち他方部材の前記ねじ溝と噛み合う軸方向範囲において、軸方向に離間して設けられた複数のねじ溝部により構成され、
前記振動発生部材は、複数の前記ねじ溝部の間に介在して固定される送りねじ装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記一方部材は、別体に形成され複数の前記ねじ溝部を設けられた複数のねじ溝部本体と、複数の当該ねじ溝本体を一体的に連結する連結部と、を有する送りねじ装置。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記軸部材の前記ねじ溝の軸方向長さが前記ナット部材の前記ねじ溝の軸方向長さよりも長い場合に、前記ナット部材を前記一方部材とする送りねじ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−96479(P2013−96479A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−238713(P2011−238713)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】