説明

送信システム、送信機及び送信機監視制御方法

【課題】省スペース化且つコスト低減を実現する送信システム、送信機及び送信機監視制御方法を提供する。
【解決手段】放送信号を送信する水冷送信機1、冷媒液の流量及び圧力を検知して、その流量及び圧力を調整しながら、水冷送信機1内に冷媒液を循環させるポンプ2を具備し、水冷送信機1は、電力増幅器A1〜A3、電力増幅器A1〜A3の出力を合成するコンバイナーA4、ポンプ2から送られる冷媒液の流量を調節するバルブ4i、電力増幅器A1〜A3及びコンバイナーA4の状態を監視し、その監視結果に基づいてバルブ41〜44を制御する監視制御部5を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、水冷装置を備える送信システム、送信機及び送信機監視制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、テレビ放送用の送信システムでは、送信機の冷却機構として水冷装置が用いられている。この水冷装置は送信機本体とは別個に設置され、ポンプによって送信機内部の発熱部と送信機外部の熱交換器との間で冷媒液を循環させることで、送信機内部の熱を冷媒液によって外部に熱輸送する。この水冷装置は送信機本体とは別個に監視装置を備える。この監視装置によってポンプや熱交換器などの動作状態を監視すると共に、送信機本体から起動情報などの情報を受け取り、これらの情報に基づいてポンプや熱交換器、ひいては冷媒液の循環を瞬時に遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)等の駆動制御を行っている。
【0003】
そこで、従来では、製造コストの低減及び水冷装置監視機能のシンプル化を実現するため、水冷装置における情報系の監視項目を送信機本体側の監視装置に組み込んで、遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)等、必要最低限の機能を水冷装置側へ残す工夫がなされてきた。しかしながら、残した部分の機能が多く、また、その組み立てコストの影響もあり、それほどコスト低減には繋がらなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−51425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のように、従来の送信システムでは、情報系の監視項目を送信機側の監視装置へ汲み込み、遮断器(MCCB:Molded Case Circuit Breaker)等、必要最低限の機能を水冷装置側へ残す工夫がなされているものの、残した部分の機能が多く、また、その組み立てコストの影響もあり、それほどコスト低減には繋がらなかった。
【0006】
そこで、本実施形態は、上記を鑑みてなされたもので、省スペース化且つコスト低減を実現することのできる送信システム、送信機及び送信機監視制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本実施形態に係る送信システムは、信号の送信時に発熱する発熱部を備える送信機と、前記送信機外部に設置され、冷媒液の冷却を行う熱交換器と、前記送信機内部と前記熱交換器との間で前記冷媒液を循環させるための配管と、前記配管内の冷媒液を循環させて熱輸送を行うポンプとを具備し、前記ポンプは前記冷媒液の流量及び圧力を監視し、それぞれの監視結果に基づいて前記流量及び圧力を制御する態様とする。
【0008】
また、本実施形態に係る送信機は、上記実施形態の送信システムで用いられる送信機において、信号の送信時に発熱する発熱部と、前記発熱部で発生する熱を前記配管内の冷媒液に取り込ませる熱処理手段と、前記送信機内部の配管内の冷媒液の流量を調節するバルブと、前記発熱部の状態を監視し、前記バルブを制御する監視制御手段とを具備する態様とする。
【0009】
また、本実施形態に係る送信機制御方法は、上記実施形態の送信機に用いられる監視制御方法において、前記発熱部の動作情報及び温度情報を取得し、取得した動作情報及び温度情報に基づいて前記冷媒液の流量を計算し、前記流量の計算結果に基づいて前記バルブの流量を制御する態様とする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本実施形態に係る送信システムの構成を示す図である。
【図2】図1に示す送信機の処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】ポンプを送信機の外部に独立して設置する場合の送信システムの構成を示す図である。
【図4】ポンプと熱交換器を一体化した場合の送信システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は、本実施形態に係る送信システムを示す図である。この送信システムは、放送信号を送信する水冷送信機1、冷媒液の流量及び圧力を検知して、冷媒液の流量を調整しながら、水冷送信機1内に冷媒液を循環させるポンプ2、冷媒液の温度を検知して放熱させる熱交換器3から構成される。水冷送信機1の内部と熱交換器3との間には、冷媒液を循環させるための配管が形成されている。
【0013】
ここで、本実施形態では、ポンプ2が水冷送信機1の内部に設置される場合の送信システムを示している。水冷送信機1は、電力を放送信号の送信に必要となる値になるまで増幅する電力増幅器(PA:Power Amplifier)A1〜A3)、電力増幅器A1〜A3の出力を合成するコンバイナーA4、ポンプ2から送られる冷媒液の流量を調節するバルブ41〜44、電力増幅器A1〜A3及びコンバイナーA4の状態を監視し、その監視結果に基づいてバルブ41〜44の流量制御を行う監視制御部5、電力増幅器AiA1〜A3により増幅される電力が持つ非線形歪みを補償するエキサイタ(励振器)6を具備する。また、上記電力増幅器A1〜A3及びバルブ41〜44を複数搭載する。さらに、上記監視制御部5はバルブ41〜44を個別に制御すると共に、ポンプ2も制御対象に含む。
【0014】
上記構成において、電力増幅器A1〜A3は電力増幅過程で発熱する。また、コンバイナーA4は入力される電力増幅器Aiの出力が無くなる場合に生じる差分がコンバイナーダミーと呼ばれる部分へ入力される過程で発熱する。この発熱する電力増幅器A1〜A3及びコンバイナーA4をポンプ2で水を循環させることにより冷却する。上記ポンプ2は冷媒液の流量及び圧力を監視し、それぞれの監視結果に基づいて流量及び圧力を制御する機能を備える。
【0015】
次に、上記構成による送信システムにおける送信機の処理の流れについて、図2を参照して説明する。ここでは、説明を簡単にするため、電力増幅器A1〜A3及びコンバイナーA4を発熱部Ai(i=1〜4)とする。
【0016】
図2は、図1に示す送信機の処理の流れを示すフローチャートである。まず、i=1とし(ステップS1)、発熱部A1から動作情報及び温度情報を取得する(ステップS2)。取得した動作情報及び温度情報を元に、冷媒液の流量を計算する(ステップS3)。そして、流量に相当するバルブ4i制御信号を生成して出力する(ステップS4)。これによりバルブ4iでは発熱部A1の動作及び温度に相当する流量制御が行われる。この動作を発熱部A2,A3,A4と繰り返し(ステップS5,S6)、一連の動作を終了する。
【0017】
以上のように、上記第1の実施形態のシステムでは、ポンプ2及びバルブ41〜44を用いて、冷媒液の流量を調節することにより電力増幅器A1〜A3及びコンバイナーA4へ入力されるトータルの冷媒液の流量を減らすことが可能である。また、水冷装置の制御機能をポンプ2に集約するため、従来の送信システムよりも省スペース化を図ることが可能である。設置スペースについても、水冷送信機1の内部にポンプ2を設置するため、省スペース化を図ることが可能である。このとき、ポンプ2が水冷送信機1の内部に設置されることにより、監視制御部5の制御下に入る。これにより、ポンプ2で行う冷媒液の流量及び圧力の検知による流量調整だけでなく、監視制御部5から電力増幅部A1〜A3及びコンバイナーA4の動作情報及び温度情報を取得できるため、より精度の高い水の流量調整が可能である。他にも、ポンプ2の設置に必要な専用のフレームが不要となるため、コスト低減効果も期待できる。さらに、ポンプ2の回転数を低減し、消費電力を抑えて、回転によるポンプ2の劣化を防止し、寿命の延長が期待できる。また、冷媒液の流量に応じて一部のポンプ2を停止させることにより、ポンプ2の回転数を低減する場合と同様の効果が期待できる。
【0018】
(第2の実施形態)
図3は、ポンプ2を外部に独立して設置する場合の送信システムを示す図である。また、図4は、ポンプ2と熱交換器3を一体化した構造とする場合の送信システムを示す図である。図3、図4共にポンプ2が水冷送信機1の外部に設置される場合の送信システムを示している。
【0019】
この構成では、先の実施形態の場合と比較して、省スペース化の点で劣るものの、水冷装置の制御機能をポンプに集約しているため、従来の送信システムよりも省スペース化を図ることが可能である。
【0020】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0021】
1…水冷送信機、2…ポンプ、3…熱変換器、A1〜A3…電力増幅器、A4…コンバイナー、41〜44…バルブ、5…監視制御部、6…エキサイタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
信号の送信時に発熱する発熱部を備える送信機と、
前記送信機外部に設置され、冷媒液の冷却を行う熱交換器と、
前記送信機内部と前記熱交換器との間で前記冷媒液を循環させるための配管と、
前記配管内の冷媒液を循環させて熱輸送を行うポンプと
を具備し、
前記送信機は、
前記発熱部で発生する熱を前記配管内の冷媒液に取り込ませる熱処理手段と、
前記配管内の冷媒液の流量及び圧力を監視し、それぞれの監視結果に基づいてポンプを駆動制御する監視制御手段を備えることを特徴とする送信システム。
【請求項2】
前記送信機は、
さらに、前記送信機内部の配管内の冷媒液の流量を調節するバルブを備え、
前記監視制御手段は、前記発熱部の状態を監視し、その監視結果に基づいて前記バルブを制御することを特徴とする請求項1記載の送信システム。
【請求項3】
前記送信機が前記発熱部を複数備えるとき、
前記熱処理手段及びバルブは前記発熱部毎に設けられ、
前記監視制御手段は、前記発熱部それぞれの状態を監視して、その監視結果に基づいて対応するバルブを個別に制御することを特徴とする請求項1記載の送信システム。
【請求項4】
前記発熱部は、前記信号を電力増幅する電力増幅器または電力増幅された信号を合成する電力合成器であることを特徴とする請求項1記載の送信システム。
【請求項5】
前記熱交換器及びポンプは一体化された構造であることを特徴とする請求項1記載の送信システム。
【請求項6】
信号の送信時に発熱する発熱部を備える送信機において、
前記発熱部と外部に設置された熱交換器との間で前記冷媒液を循環させるための配管と、
前記配管内の冷媒液を循環させて熱輸送を行うポンプと、
前記発熱部で発生する熱を前記配管内の冷媒液に取り込ませる熱処理手段と、
前記配管内の冷媒液の流量及び圧力を監視し、それぞれの監視結果に基づいてポンプを駆動制御する監視制御手段を備えることを特徴とする送信機。
【請求項7】
さらに、前記配管内の冷媒液の流量を調節するバルブを備え、
前記監視制御手段は、前記発熱部の状態を監視し、その監視結果に基づいて前記バルブを制御することを特徴とする請求項6記載の送信機。
【請求項8】
前記発熱部を複数備えるとき、
前記熱処理手段及びバルブは前記発熱部毎に設けられ、
前記監視制御手段は、前記発熱部それぞれの状態を監視し、その監視結果に基づいて対応するバルブを個別に制御することを特徴とする請求項7記載の送信機。
【請求項9】
前記発熱部は、前記信号を電力増幅する電力増幅器または電力増幅された信号を合成する電力合成器であることを特徴とする請求項6記載の送信機。
【請求項10】
信号の送信時に発熱する発熱部と、前記発熱部と外部に設置された熱交換器との間で前記冷媒液を循環させるための配管と、前記配管内の冷媒液を循環させて熱輸送を行うポンプと、記発熱部で発生する熱を前記配管内の冷媒液に取り込ませる熱処理手段とを備える送信機に用いられ、
前記配管内の冷媒液の流量及び圧力を監視し、それぞれの監視結果に基づいてポンプを駆動制御することを特徴とする送信機の監視制御方法。
【請求項11】
前記発熱部の動作情報及び温度情報を取得し、
取得した動作情報及び温度情報に基づいて前記冷媒液の流量を計算し、
前記流量の計算結果に基づいて前記ポンプの流量を制御することを特徴とする送信機の監視制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−65999(P2013−65999A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202659(P2011−202659)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】