送信機およびそれに使用可能な半導体集積回路
【課題】EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕を確保する。
【解決手段】送信機は、ディジタル変調器10、ランプ生成器14、ディジタル乗算器Mult、D/A変換器15、PLL11、AM変調器13を具備する。変調器10は送信データに応答してディジタル振幅R、ディジタル位相θを生成する。ランプ生成器のランプ制御信号にMultが応答して、その出力がD/A変換器に供給され、その出力がAM変調器に供給される。PLLのRFキャリア信号がAM変調器に伝達され、EDGE方式のRF送信信号が生成される。送信タイムスロットの前半のランプアップ動作でD/A変換器のアナログ信号が増加して、後半のランプダウン動作でアナログ信号が減少する。ランプアップ・ダウン動作で送信電力が所定値よりも低い状態では、AM変調器のゲインは低い値に制御される。
【解決手段】送信機は、ディジタル変調器10、ランプ生成器14、ディジタル乗算器Mult、D/A変換器15、PLL11、AM変調器13を具備する。変調器10は送信データに応答してディジタル振幅R、ディジタル位相θを生成する。ランプ生成器のランプ制御信号にMultが応答して、その出力がD/A変換器に供給され、その出力がAM変調器に供給される。PLLのRFキャリア信号がAM変調器に伝達され、EDGE方式のRF送信信号が生成される。送信タイムスロットの前半のランプアップ動作でD/A変換器のアナログ信号が増加して、後半のランプダウン動作でアナログ信号が減少する。ランプアップ・ダウン動作で送信電力が所定値よりも低い状態では、AM変調器のゲインは低い値に制御される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機およびそれに使用可能な半導体集積回路に関するもので、特にEDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とするのに有益な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末のような通信端末機器で、複数のタイムスロットのそれぞれのタイムスロットを、アイドル状態と、基地局からの受信動作と、前記基地局への送信動作とのいずれかに設定可能である時分割多重アクセス(TDMA)方式が知られている。尚、TDMAは、Time-Division Multiple Accessの略称である。このTDMA方式のひとつとして、位相変調のみを使用するGSM方式もしくはGMSK方式が知られている。尚、GSMは、Global System for Mobile Communicationsの略称である。また、GMSKは、Gaussian minimum Shift Keyingの略称である。このGSM方式もしくはGMSK方式と比較して、通信データ転送レートを改善する方式も知られている。この改善方式として、位相変調と伴に振幅変調を使用するEDGE方式も、最近注目されている。尚、EDGEは、Enhanced Data for GSM Evolution;Enhanced Data for GPRSの略称であって、GPRSはGeneral Packet Radio Serviceの略称である。
【0003】
EDGE方式を実現する方法としては、送信すべき送信信号を位相成分と振幅成分とに分離した後、位相制御ループと振幅制御ループでそれぞれフィードバック制御を行い、フィードバック制御の後の位相成分と振幅成分とをアンプで合成するポーラループ方式が知られている。
【0004】
下記非特許文献1には、位相制御ループと振幅制御ループとを有し、EDGE方式の送信機能をサポートするポーラループトランスミッターが記載されている。携帯電話において電力効率は重要な市場課題であり、ポーラループ方式ではRFパワーアンプが飽和近くで動作することにより、電力効率が良いと言う利点があると記載されている。また、このRFパワーアンプの飽和動作からのポーラループ方式の付加的な利点は、低雑音特性であると記載されている。
【0005】
また、下記非特許文献2には、EDGEトランスミッターとしてのいくつかの回路とアーキテクチャーとが紹介されている。
【0006】
1番目のアーキテクチャーは、RF電力増幅器(PA)の前にてポーラ変調(PM;Polar Modulation)を行う方式である。この方式では、変調器(Modulator)から生成されるディジタル位相信号とディジタル振幅信号とは、ΣΔ変調器とD/A変換器とにそれぞれ入力される。ΣΔ変調器の出力信号はフェーズロックドループ(PLL) の一方の入力端子に供給され、PLLの出力信号は電圧制御発振器(VCO)に供給され、VCOの出力信号はPLLの他方の入力端子とミキサーの一方の入力端子とに供給される。D/A変換器のアナログ出力信号はローパスフィルタを介してミキサーの他方の入力端子に供給されて、ミキサーの出力信号はドライバーとRF電力増幅器(PA)とアイソレーターとを介してアンテナに供給される。
【0007】
次の2番目のアーキテクチャーは、オープンループ方式のRF電力増幅器(PA)の振幅制御を行うポーラトランスミッター(Polar transmitter)の方式である。この2番目のアーキテクチャーでは、1番目のアーキテクチャーのミキサーとドライバーとが省略され、D/A変換器のアナログ出力信号はローパスフィルタを介してRF電力増幅器(PA)に直接供給される。従って、RF電力増幅器(PA)ではアナログ制御入力端子を介してバイアス電流またはコレクタ電圧またはその両者が制御されて、RF電力増幅器(PA)での振幅変調が直接実行される。
【0008】
また3番目のアーキテクチャーはポーラループトランスミッター(Polar loop transmitter)であり、I、Q送信ベースバンド信号が供給される変調器の出力端子から生成される送信中間周波数信号(IF)はフェーズロックドループ(PLL)と振幅制御ループの一方の入力端子とに供給される。PLLの出力信号は電圧制御発振器(VCO)の制御入力に供給され、VCOの出力信号はRF電力増幅器(PA)のRF信号入力端子に供給される。振幅制御ループの出力信号はRF電力増幅器(PA)の制御入力端子に供給されて、ダウンコンバージョンゲイン制御器の一方の入力端子と他方の入力端子にRF電力増幅器(PA)のRF出力信号と電力制御信号とがそれぞれ供給される。ダウンコンバージョンゲイン制御器の中間周波数出力信号はPLLの負帰還端子と振幅制御ループの負帰還端子に供給されて、振幅制御ループの出力信号によりRF電力増幅器(PA)の利得が制御される。
【0009】
更に、下記非特許文献3には、ポーラ変調(Polar Modulation)トランスミッターが記載されている。このトランスミッターでは、ディジタル送信データはFIFOメモリに格納され、FIFOメモリはI、Q送信ディジタルベースバンド信号を生成するEDGE方式I、Qマッピィングユニットに供給される。このI、Q送信ディジタルベースバンド信号は、それらを振幅成分と位相成分とに変換するディジタルCORDICシステムに供給される。尚、CORDICは、Coordinate Rotation Digital Calculation)の略称である。
【0010】
またトランスミッターにはRF電力増幅器(PA)のランプ動作を行うためのランプディジタル制御信号を生成する生成器が含まれ、ランプディジタル制御信号とディジタルCORDICシステムの振幅成分であるディジタル振幅情報とがディジタル乗算器に供給される。このディジタル乗算器の出力から生成されるディジタル振幅変調情報は、D/A変換器を介してRF電力増幅器(PA)の電源電圧を制御するレギュレータに供給される。ディジタルCORDICシステムの位相成分であるディジタル周波数変調情報は、ディジタルPLLのフラクショナル分周器に供給される。
【0011】
また更に下記非特許文献4には、下記非特許文献3に記載のポーラ変調(Polar Modulation)トランスミッターと異なるポーラ変調器(Polar Modulator)トランスミッターが記載されている。下記非特許文献4に記載のトランスミッターでは、ディジタル乗算器の出力から生成されるディジタル振幅変調情報はD/A変換器を介して下記非特許文献3に記載のようにRF電力増幅器(PA)の電源電圧を制御するレギュレータに供給されるのではなく、アナログ乗算器に供給される。このアナログ乗算器の出力端子はRF電力増幅器(PA)のRF信号入力端子に接続されて、アナログ乗算器の入力端子はPLLの発振器の出力と分周器の入力とに接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Earl McCune, “High−Efficiency, Multi−Mode, Multi−Band Terminal Power Amplifiers”, IEEE microwave magazine, March 2005, PP.44〜55.
【非特許文献2】Tirdad Sowlati et al, “Quad−Band GSM/GPRS/EDGE Polar Loop Transmitter”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.39, NO.12, DECEMBER 2004, PP.2179〜2189.
【非特許文献3】Alex W. Hietala, ”A Quad−Band 8PSK/GMSK Polar Transceiver“, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.41, NO.5, MAY 2006, PP.1133〜1141.
【非特許文献4】Christian Mayer, “A Robst GSM/EDGE Transmitter Using Polar Modulation Techniques”, The European Conference on Wireless Technology, 2005, 3−4 Oct, 2005, PP.93〜96.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者等は本発明に先立って、ベースバンド信号処理LSIとの間でディジタルRFインターフェースが可能なGSM/EDGE/WCDMAのマルチモードおよびマルチバンドの送受信機能をサポートする次世代のRF信号処理大規模半導体集積回路の研究・開発に従事した。
【0014】
この研究・開発では、次世代のRF信号処理大規模半導体集積回路の多機能化に伴って、回路規模の削減と消費電力の削減が必要とされた。その検討の結果、上記非特許文献4に記載のポーラ変調器(Polar Modulator)トランスミッターの採用が検討された。
【0015】
図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【0016】
図1に示すポーラ変調器トランスミッターは、RF信号処理半導体集積回路(以下、RFICと言う)1、バラン2、RFパワーモジュール3によって構成されている。
【0017】
RFIC1は、ディジタル変調器10、フェーズロックドループ11、バッファ/分周器12、AM変調器13、ランプ生成器14、ディジタル減算器Sub、ディジタル乗算器Mult、D/A変換器15、A/D変換器16、スイッチSW1、ローパスフィルタ17、18を含んでいる。
【0018】
ディジタル送信データTx_Dataが供給されるディジタル変調器10は、上記非特許文献3に記載のディジタルCORDICシステムと同様に、ディジタル振幅成分Rとディジタル位相成分θとを出力する。ディジタル振幅成分Rはディジタル乗算器Multの一方の入力端子に供給され、ディジタル位相成分θはオールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11の一方の入力端子に供給される。
【0019】
RFパワーモジュール3に含まれたRF電力増幅器(PA)31のランプアップ動作とランプダウン動作とのために、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1のディジタルRFインターフェースを介してランプデータRamp_Dataがランプ生成器14の入力端子に供給される。従って、ランプ生成器14の出力端子から生成されるランプ制御ディジタル信号が、ディジタル減算器Subの一方の入力端子に供給される。一方、RFパワーモジュール3のRF電力検出器(DET)32はRF電力増幅器(PA)31の出力端子の送信出力電力Poutのレベルを検出するので、RF電力検出器(DET)32のアナログ送信出力検出電圧VdetはA/D変換器16の入力端子に供給される。その結果、A/D変換器16の出力端子のディジタル送信出力検出信号はディジタル減算器Subの他方の入力端子に供給されて、ディジタル減算器Subのディジタル出力信号はディジタル乗算器Multの他方の入力端子に供給される。また、ディジタル乗算器Multの出力端子のディジタル乗算出力信号はD/A変換器15の入力端子に供給されて、D/A変換器15のアナログ出力信号はスイッチSW1の入力端子に供給される。GSM方式のGMSK送信モードでは、スイッチSW1の一方の出力端子のアナログ信号はローパスフィルタ18を介して自動パワー制御電圧VapcとしてRF電力増幅器(PA)31に供給される。一方、EDGE方式の送信モードでは、スイッチSW1の他方の出力端子のアナログ信号は、ローパスフィルタ17を介してAM変調器13の一方の入力端子に供給される。
【0020】
オールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11の一方の入力端子には、ディジタル変調器10から生成されるディジタル位相成分θが供給される。このオールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11は、図1の下に示すように、位相比較機能を持つ位相ディジタル変換器111、ディジタルループフィルタ112、ディジタル制御発振器113、フラクショナル分周器114、ΣΔ変調器115を含んでいる。
【0021】
位相ディジタル変換器111の一方の入力端子に基準用発振器(図示せず)から生成される安定な周波数に制御された基準周波数信号REFが供給される一方、位相ディジタル変換器111の他方の入力端子にはフラクショナル分周器114を介してディジタル制御発振器113の発振出力信号が負帰還で供給される。更に、位相ディジタル変換器111のディジタル変換出力信号はディジタルループフィルタ112を介してディジタル制御発振器113の発振制御入力端子に供給され、ディジタル制御発振器113の発振出力信号の周波数が制御される。また、ディジタル制御発振器113の発振出力信号を位相ディジタル変換器111の他方の入力端子に負帰還するのに際して、フラクショナル分周器114は2個の分周比1/N、1/(N+1)を持つものである。通常では、ΣΔ変調器115のディジタル出力信号“0”に応答してフラクショナル分周器114の分周比は一方の値1/Nに設定される一方、ΣΔ変調器115からディジタル出力信号“1”が生成されると、フラクショナル分周器114の分周比は他方の値1/(N+1)に設定される。また、ディジタル変調器10から供給されるディジタル位相成分θに応答してΣΔ変調器115は、所定のデューティーレシオでディジタル出力信号“1”を生成する。従って、オールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11では、所定のデューティーレシオと2個の分周比1/N、1/(N+1)とによって、平均分周比が少数以下の値に設定される。その結果、ADPLL11は、極めて高い周波数解像度でディジタル制御発振器113の発振出力信号の周波数を精密に制御することが可能な周波数シンセサイザとして機能することができる。
【0022】
ディジタル制御発振器113の発振出力信号は、バッファ/分周器12を介してAM変調器13の他方の入力端子に供給される。また、ディジタル制御発振器113の発振出力信号の周波数は、略2GHzの値に設定されている。従って、図1のポーラ変調器トランスミッターが略1GHzのローバンド(GSM850、GSM900)の送信周波数の送信出力電力Poutを生成する場合には、バッファ/分周器12は分周数2の分周器として動作する。また、図1のポーラ変調器トランスミッターが略2GHzのハイバンド(DCS1800、PCS1900)の送信周波数の送信出力電力Poutを生成する場合には、バッファ/分周器12は分周数1のバッファとして動作する。
【0023】
従って、図1に示したポーラ変調器トランスミッターがEDGE方式の送信モードを実行する際に、AM変調器13は、ディジタル変調器10からのディジタル位相成分θに応答する位相変調搬送波信号の振幅をAM変調制御信号に従って変調するものである。このAM変調制御信号は、ディジタル変調器10のディジタル振幅成分Rとランプ生成器14のランプ制御ディジタル信号とのディジタル乗算器Multによるディジタル乗算出力のD/A変換器15によるアナログ変換出力信号を含んでいる。また位相変調搬送波信号は、ディジタル変調器10からのディジタル位相成分θに応答するADPLL11のディジタル制御発振器113の発振出力信号である。
【0024】
AM変調器13の差動出力端子に生成されるRF送信差動出力信号は、バラン2によってシングルエンド形式のRF送信信号に変換される。尚、バラン2は、良く知られているように、平衡差動入力信号を非平衡シングルエンド出力信号に変換する機能を有するものである。バラン2から生成されるシングルエンドRF送信信号はRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31によって増幅され、RF電力増幅器(PA)31の送信出力電力Poutはアンテナスイッチ等を内蔵するフロントエンドモジュール(FEM)と送信アンテナとを介して基地局に送信されるものである。
【0025】
図2は、図1に示すポーラ変調器トランスミッターを構成するRFIC1とRFパワーモジュール3と、アンテナスイッチ等を内蔵するフロントエンドモジュール(FEM)4と送信アンテナ5によって、GSM/EDGEのマルチモードおよびハイ/ローのマルチバンドの送信機能を持つ携帯電話通信端末が構成される様子を示す図である。
【0026】
尚、図2には、RFIC1の出力端子からRFパワーモジュール3の入力端子に供給される最小送信入力電力Mini_Pinが示されるとともに、RFパワーモジュール3のオフ時とオン時の利得と、フロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時とオン時の利得とが示されている。
【0027】
図3は、図2に示す携帯電話通信端末のポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【0028】
すなわち、TDMA(時分割多重アクセス)方式では、冒頭で説明したように、複数のタイムスロットを、アイドル状態、基地局からの受信動作、基地局への送信動作のいずれかに設定変更することが可能となる。特に、他のタイムスロットから送信動作タイムスロットに切り換える際には、3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格で定められた上昇レートで、RF送信信号の信号強度が増加されなければならない。この時のRF送信信号の信号強度の増加は、ランプアップと呼ばれる。ランプアップの上昇レートが3GPP規格よりも大きい場合は、不要輻射が増大して隣接チャンネル電力漏洩レシオ(ACPR:Adjacent Channel Leakage Power Ratio)が増大する。逆に、送信動作タイムスロットから他のタイムスロットに切り換える際も、3GPP規格で定められた低下レートでRF送信信号の信号強度が減少されなければならない。この時のRF送信信号の信号強度の減少は、ランプダウンと呼ばれる。ランプダウンの低下レートが3GPP規格よりも大きい場合には、やはり不要輻射が増大して隣接チャンネル電力漏洩レシオ(ACPR)が増大する。このランプアップおよびランプダウンのためのランプ電圧が、ベースバンド信号処理LSIからのディジタルランプデータから生成される。
【0029】
図3に示すように、送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時に、RF送信信号の信号強度の増加は特性L31と特性L32の間で変化することが3GPP規格で定められている。また更に送信動作タイムスロットTx−slotの後半のランプダウン時に、RF送信信号の信号強度の減少は特性L31と特性L32の間で変化することが3GPP規格で定められている。尚、図3の横軸は、時間経過[μSec]を示し、図3の縦軸は送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]を示す。図3の特性L31と特性L32の間で3GPP規格で定められたRF送信信号の変化は、タイムマスク仕様と呼ばれている。
【0030】
図3に示す送信スロットのランプアップ動作およびランプダウン動作では、2つの制御方式が検討された。最初の制御方式は、図3の<case1>に示すように、ランプアップに際して、最初にRFパワーモジュール(PA)3がオフ状態からオン状態に切り換えられ、次にフロントエンドモジュール(FEM)4がオフ状態からオン状態に切り換えられる。またランプダウンに際して、最初にフロントエンドモジュール(FEM)4がオン状態からオフ状態に切り換えられて、次にRFパワーモジュール(PA)3がオン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0031】
図3の<case1>に示した最初の制御方式では、ランプアップ開始の直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は、−41dBm+30dB−20dB=−31dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができない。
【0032】
更に、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、ランプアップ開始の直後の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−41dBm+30dB−2dB=−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができない。
【0033】
また、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、その後のランプアップでの送信電力[dBm]はタイムマスク仕様の規格を満足できるが、ランプダウン終了の直前の10μSecの期間では送信電力[dBm]は−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができない。
【0034】
更に、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、ランプダウン終了の直後の期間で送信電力[dBm]は−31dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができない。
【0035】
次の制御方式は、図3の<case2>に示すように、ランプアップに際しては、最初にフロントエンドモジュール(FEM)4がオフ状態からオン状態に切り換えられて、次にRFパワーモジュール(PA)3がオフ状態からオン状態に切り換えられる。またランプダウンに際して、最初にRFパワーモジュール(PA)3がオン状態からオフ状態に切り換えられ、次にフロントエンドモジュール(FEM)4がオン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0036】
図3の<case2>に示した制御方式では、ランプアップ開始の直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオフ時の利得−30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は、−41dBm−30dB−20dB=−91dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができる。
【0037】
更に、図3の<case2>に示した制御方式では、ランプアップ開始の直後の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオフ時の利得−30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−41dBm−30dB−2dB=−73dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。
【0038】
また、図3の<case2>に示した制御方式では、その後のランプアップの8μSecの期間での送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−41dBm+30dB−2dB=−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmを十分満足することができる。
【0039】
また、その後のランプダウンの8μSecの期間でも送信電力[dBm]は−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmを十分満足でき、ランプダウン終了の直前の10μSecの期間では送信電力[dBm]は−73dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。
【0040】
更に、図3の<case2>に示した制御方式では、ランプダウン終了の直後の期間で送信電力[dBm]は−91dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができる。
【0041】
以上説明したように、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時および後半のランプダウン時にタイムマスク仕様の規格を満足することができない。
【0042】
それに対して図3の<case2>に示した制御方式によれば、送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時および後半のランプダウン時にタイムマスク仕様の規格を一応満足できるが、回路定数の偏差でタイムマスク仕様の規格を違反する危険性がある。すなわち、図3の<case2>に示した制御方式では、ランプアップ時のRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31のオフからオンへのスイッチングトランジェントノイズが、オン状態のフロントエンドモジュール(FEM)4を介して送信アンテナ5に伝達される危険性が高い。また、ランプアップ時と同様にランプダウン時のRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31のオンからオフへのスイッチングトランジェントノイズも、オン状態のフロントエンドモジュール(FEM)4を介して送信アンテナ5に伝達される危険性が高い。
【0043】
その結果、図3に示すように、ランプアップ時の記号P_ruで示した部分とランプダウン時の記号P_rdで示した部分とで、<case2>の制御方式はタイムマスク仕様の規格を満足するための動作余裕が不足している。
【0044】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等の検討の結果、なされたものである。
【0045】
従って、本発明の目的とするところは、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることにある。
【0046】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0048】
すなわち、本発明の代表的なディジタル変調器(10)、ランプ生成器(14)、ディジタル乗算器(Mult)、D/A変換器(15)、PLL(11)、AM変調器(13)を具備するEDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機である。
【0049】
前記ディジタル変調器(10)は、送信データ(Tx_Data)に応答して、ディジタル振幅成分(R)とディジタル位相成分(θ)を生成する。前記ディジタル振幅成分(R)は前記ディジタル乗算器(Mult)に供給され、前記ディジタル位相成分(θ)は前記PLL(11)の一方の入力端子に供給され、前記PLL(11)の他方の入力端子には基準周波数信号(REF)が供給される。
【0050】
前記ランプ生成器(14)は、ランプデータ(Ramp_Data)に応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成する。前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器(Mult)が応答して、前記ディジタル乗算器(Mult)の出力信号が前記D/A変換器(15)の入力端子に供給される。
【0051】
前記D/A変換器(15)のアナログ出力信号は、前記AM変調器(13)に供給される。
【0052】
前記PLL(11)の発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器(13)に伝達され、前記AM変調器(13)の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成される(図1、図4参照)。
【0053】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロット(Tx−slot)の前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が増加する。前記送信動作タイムスロット(Tx−slot)の後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が減少する。
【0054】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値(−7dBm)よりも低い状態では、前記AM変調器(13)のゲイン(Gain_AMMOD)は低い値(Gain(Low))に制御される(図5(C)、図8、図9参照)。
【発明の効果】
【0055】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0056】
すなわち、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すポーラ変調器トランスミッターを構成するRFIC1とRFパワーモジュール3と、アンテナスイッチ等を内蔵するフロントエンドモジュール(FEM)4と送信アンテナ5によって、GSM/EDGEのマルチモードおよびハイ/ローのマルチバンドの送信機能を持つ携帯電話通信端末が構成される様子を示す図である。
【図3】図3は、図2に示す携帯電話通信端末のポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【図5】図5は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの各部の波形を示す図である。
【図6】図6は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の構成を示す図である。
【図7】図7は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【図8】図8は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのAM変調器13の動作を示す図である。
【図9】図9は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターで時分割多重アクセス(TDMA)に従ってタイムスロットをアイドル状態や受信動作や送信動作の各種の動作モードが設定される様子を説明するタイミングチャートの図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのEDGE方式の送信モードでの動作シーケンスを説明する図である。
【図12】図12は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【図13】図13は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態3によるマルチバンドに対応するためのポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【図15】図15は、図14に示すRFIC1にてAM変調器13の素子ペア偏差によって約4mVのDCオフセットが発生した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【図16】図16は第1AM変調器133の極性反転の前後の2回のDCオフセットキャリブレーション動作を実施することによって、入力DCオフセットを略2mV以下に低減した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態4によるマルチバンドに対応する携帯電話の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0059】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、ディジタル変調器(10)と、ランプ生成器(14)と、ディジタル乗算器(Mult)と、D/A変換器(15)と、フェーズロックドループ(11)と、AM変調器(13)とを具備するEDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機である。
【0060】
前記ディジタル変調器(10)は、送信データ(Tx_Data)に応答して、ディジタル振幅成分(R)とディジタル位相成分(θ)とを生成する。
【0061】
前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル振幅成分(R)は前記ディジタル乗算器(Mult)の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル位相成分(θ)は前記フェーズロックドループ(11)の一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループ(11)の他方の入力端子には基準周波数信号(REF)が供給される。
【0062】
前記ランプ生成器(14)は、ランプデータ(Ramp_Data)に応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成する。
【0063】
前記ランプ生成器(14)から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器(Mult)の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器(Mult)の出力信号が前記D/A変換器(15)の入力端子に供給される。
【0064】
前記D/A変換器(15)のアナログ出力信号は、前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給可能とされている。
【0065】
前記フェーズロックドループ(11)の発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器(13)の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器(13)の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能である(図1、図4参照)。
【0066】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロット(Tx−slot)の前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が増加するものである。
【0067】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロット(Tx−slot)の後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が減少するものである。
【0068】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値(−7dBm)よりも低い状態では、前記AM変調器(13)のゲイン(Gain_AMMOD)は低い値(Gain(Low))に制御される。
【0069】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値(−7dBm)よりも高い状態では、前記AM変調器(13)の前記ゲイン(Gain_AMMOD)は前記低い値よりも大きな高い値(Gain(High))に制御される(図5(C)、図8、図9参照)。
【0070】
前記実施の形態によれば、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることが可能となる。
【0071】
好適な実施の形態は、前記ランプデータ(Ramp_Data)と基準ランプデータ(Ref_Ramp_Data)とを比較する制御ユニット(19)を更に具備する。
【0072】
前記基準ランプデータ(Ref_Ramp_Data)は前記送信電力の前記所定値に対応するものであり、前記ランプデータの値が前記基準ランプデータの値よりも大きな場合に前記制御ユニット(19)の出力信号によって前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである。
【0073】
他の好適な実施の形態では、前記ランプアップ動作に関連した所定周波数のクロック信号のパルスの第1のカウントアップの完了に応答して前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである。
【0074】
更に前記ランプダウン動作に関連した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの第2のカウントアップの完了に応答して前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである(図11参照)。
【0075】
より好適な実施の形態では、前記ランプアップ動作は、ランプアップスタート命令(Ramp_Up Start)によって制御される。
【0076】
前記ランプアップスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第1のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである。
【0077】
前記ランプダウン動作は、ランプダウンスタート命令(Ramp_Down Start)によって制御される。
【0078】
前記ランプダウンスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第2のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである(図11参照)。
【0079】
また別の好適な実施の形態では、前記AM変調器(13)はギルバートセルを構成する第1のトランジスタペア(M1、M2)と第2のトランジスタペア(M3、M4)と第3のトランジスタペア(M5、M6)とを含む。
【0080】
前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の両制御電極には、前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である非反転入力信号(AMMODi/p(T) )と反転入力信号(AMMODi/p(B) )とが供給される。
【0081】
前記第2のトランジスタペア(M3、M4)および前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の制御電極には、前記フェーズロックドループの前記発振出力信号に基づく前記RFキャリア信号である非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給される(図6参照)。
【0082】
具体的な実施の形態では、前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号とのDCオフセット電圧差と前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号との交流振幅成分とは、前記ランプデータの前記値の増加に比例して増加するものである。
【0083】
他の具体的な実施の形態では、前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の入力電極は、抵抗ペア(R1、R2)を介して接地電位に接続されている。
【0084】
前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の一方の出力電極と他方の出力電極は、前記第2のトランジスタペア(M3、M4)の両入力電極と前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の両入力電極とにそれぞれ接続されている。
【0085】
前記第2のトランジスタペア(M3、M4)の一方の出力電極と前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の一方の出力電極とは、前記AM変調器(13)の一方の出力端子に共通に接続されている。
【0086】
前記第2のトランジスタペア(M3、M4)の他方の出力電極と前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の他方の出力電極とは、前記AM変調器(13)の他方の出力端子に共通に接続されている。
【0087】
より具体的な実施の形態では、前記AM変調器(13)の前記ゲインの制御は、前記抵抗ペア(R1、R2)の抵抗値の制御もしくは前記第1のトランジスタペア(M1、M2)のトランジスタグループペア(M11、M12…M1N、M21、M22…M2N)の並列接続数の制御によって実現されるものである(図6、図7、図12参照)。
【0088】
他のより具体的な実施の形態では、前記AM変調器(13)の前記ゲインの制御は、前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の前記出力電極の信号を交流接地ノード(Vdd)にパイパスする素子(M7、M8、M9、M10)を含むゲイン制御回路(132)によって制御される(図13参照)。
【0089】
別の具体的な一つの実施の形態は、前記AM変調器(13)の前記一方の出力端子と前記他方の出力端子との間の出力DCオフセット電圧を検出するDCオフセット電圧測定回路(136)を更に具備する。
【0090】
前記DCオフセット電圧測定回路は、DCオフセットキャリブレーション動作の間に、前記出力DCオフセット電圧が最小となるように、前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の前記両制御電極に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号の間の入力DCオフセット電圧を調整可能に構成されている(図14参照)。
【0091】
最も具体的な一つの実施の形態では、前記DCオフセット電圧測定回路による前記DCオフセットキャリブレーション動作は、前記送信動作タイムスロットに先行するアイドルモードまたは前記送信動作タイムスロットの直前のタイミングにて実行可能とされたものである。
【0092】
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態は、EDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機に使用可能であって、ディジタル変調器(10)と、ランプ生成器(14)と、ディジタル乗算器(Mult)と、D/A変換器(15)と、フェーズロックドループ(11)と、AM変調器(13)とを具備する半導体集積回路(1)である。
【0093】
前記ディジタル変調器(10)は、送信データ(Tx_Data)に応答して、ディジタル振幅成分(R)とディジタル位相成分(θ)とを生成する。
【0094】
前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル振幅成分(R)は前記ディジタル乗算器(Mult)の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル位相成分(θ)は前記フェーズロックドループ(11)の一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループ(11)の他方の入力端子には基準周波数信号(REF)が供給される。
【0095】
前記ランプ生成器(14)は、ランプデータ(Ramp_Data)に応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成する。
【0096】
前記ランプ生成器(14)から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器(Mult)の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器(Mult)の出力信号が前記D/A変換器(15)の入力端子に供給される。
【0097】
前記D/A変換器(15)のアナログ出力信号は、前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給可能とされている。
【0098】
前記フェーズロックドループ(11)の発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器(13)の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器(13)の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能である(図1、図4参照)。
【0099】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロット(Tx−slot)の前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が増加するものである。
【0100】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロット(Tx−slot)の後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が減少するものである。
【0101】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値(−7dBm)よりも低い状態では、前記AM変調器(13)のゲイン(Gain_AMMOD)は低い値(Gain(Low))に制御される。
【0102】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値(−7dBm)よりも高い状態では、前記AM変調器(13)の前記ゲイン(Gain_AMMOD)は前記低い値よりも大きな高い値(Gain(High))に制御される(図5(C)、図8、図9参照)。
【0103】
前記実施の形態によれば、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることが可能となる。
【0104】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0105】
[実施の形態1]
《ポーラ変調器トランスミッターの構成》
図4は、本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【0106】
図4に示すポーラ変調器トランスミッターは、図1のポーラ変調器トランスミッターと同様に、RFIC1、バラン2、RFパワーモジュール3によって構成されている。
【0107】
図4のRFIC1は、図1のRFIC1と同様に、ディジタル変調器10、フェーズロックドループ11、バッファ/分周器12、AM変調器13、ランプ生成器14、ディジタル減算器Sub、ディジタル乗算器Mult、D/A変換器15、A/D変換器16、スイッチSW1、ローパスフィルタ17、18を含んでいる。図4のRFIC1のフェーズロックドループ11は、図4には示されていないが、図1と同様に位相ディジタル変換器111、ディジタルループフィルタ112、ディジタル制御発振器113、フラクショナル分周器114、ΣΔ変調器115を含んでいる。
【0108】
図4のRFIC1は、図1のRFIC1に含まれていない制御ユニット19が追加されている。この制御ユニット19の一方の入力端子と他方の入力端子に、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1のディジタルRFインターフェースを介してランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_Dataと基準ランプデータRef_Ramp_Dataとがそれぞれ供給される。基準ランプデータRef_Ramp_Dataは、時分割多重アクセス方式の送信スロットでのランプアップ終了の直前およびランプダウン開始の直後の送信アンテナ5の入力での電力レベル(−7dBm)に対応するものである。
【0109】
ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合には、制御ユニット19から生成される低レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してAM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値に設定される。しかし、ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成される高レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してAM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値に設定される。
【0110】
《ポーラ変調器トランスミッターの各部の波形》
図5は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの各部の波形を示す図である。
【0111】
図5(A)、図5(B)、図5(C)の各横軸は、ランプデータRamp_Dataの値を示している。また更に、図5(A)の縦軸はディジタル乗算器Multのディジタル出力信号Output_Multのアナログ表示値を示し、図5(B)の縦軸はD/A変換器15の2つのアナログ出力信号を示し、図5(C)の縦軸はAM変調器13のゲインGain_AMMODを示している。
【0112】
図5(A)に示すように、ディジタル乗算器Multのディジタル出力信号Output_Multはディジタル変調器11から生成されるディジタル振幅成分Rの直流成分R_dcと交流成分R_acとを含んでいる。ランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して、ディジタル乗算器Multのディジタル出力信号Output_Multの直流成分R_dcと交流振幅成分R_acとは増加するものとなる。
【0113】
図5(B)に示すようにD/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号は、AM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)となるものである。D/A変換器15の特徴的な動作として、2つのアナログ変換出力信号のDCオフセット差と交流振幅成分はランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して増加するものである。すなわち、D/A変換器15の一方のアナログ変換出力信号としてのAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)のDC成分はランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して上昇するのに対して、D/A変換器15の他方のアナログ変換出力信号としてのAM変調器13の反転入力信号AMMODi/p(B)のDC成分はランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して低下するものである。
【0114】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0115】
《AM変調器の構成》
図6は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の構成を示す図である。
【0116】
図6に示すように、AM変調器13はギルバートセル(Gilbert Cell)を構成する6個のNチャンネルMOSトランジスタM1〜M6を含んでいる。まずトランジスタペアM1、M2のソースは、それぞれ抵抗R1、R2を介して、接地電位に接続されている。抵抗R1、R2の抵抗値は、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntに応答して制御可能とされている。トランジスタM1のゲートとトランジスタM2のゲートには、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号である非反転入力信号AMMODi/p(T)と反転入力信号AMMODi/p(B)とがそれぞれ供給される。
【0117】
トランジスタM1のドレインはトランジスタペアM3、M4のソースに接続されている一方、トランジスタM2のドレインはトランジスタペアM5、M6のソースに接続されている。トランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは容量C1とバッファ122とを介して分周器121から非反転送信RFキャリア信号が供給される一方、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは容量C2とバッファ122とを介して分周器121から反転送信RFキャリア信号が供給される。更に、トランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは抵抗R3を介して容量C3に接続され、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは抵抗R4を介して容量C4に接続され、容量C3の両端間と容量C4の両端間とにそれぞれ略等しいバイアス電圧Vb3、Vb4が供給される。
【0118】
またトランジスタM3のドレインとトランジスタM5のドレインとはインダクターL1を介して外部電源Ext.Vddに接続される一方、トランジスタM4のドレインとトランジスタM6のドレインとはインダクターL2を介して外部電源Ext.Vddに接続される。インダクターL1の一端とインダクターL2の一端とは外部電源Ext.Vddに接続される一方、インダクターL1の他端とインダクターL2の他端とは容量C5の一端と他端とにそれぞれ接続される。容量C5の一端と他端とは容量C6の一端と容量C7の一端とにそれぞれ接続される一方、容量C6の他端と容量C7の他端とは容量C8の一端と他端にそれぞれ接続される。また、容量C8の一端と他端とはバラン2の平衡差動入力端子としての一方の入力端子と他方の入力端子とにそれぞれ接続され、バラン2の非平衡シングルエンド出力信号はRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)に供給される。
【0119】
非反転送信RFキャリア信号の正の半サイクルの期間に、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM3を介してインダクターL1に流れ、トランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM6を介してインダクターL2に流れる。反転送信RFキャリア信号の正の半サイクルの期間に、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM4を介してインダクターL2に流れ、トランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM5を介してインダクターL1に流れる。その結果、D/A変換器15のアナログ送信振幅成分は、分周器121からバッファ122を介して非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給されるAM変調器13によってRF送信信号にアップコンバートされることができる。
【0120】
尚、図6に示したギルバートセル(Gilbert Cell)で構成されたAM変調器13では、トランジスタペアM1、M2のゲートのバイアス電圧が等しく、トランジスタペアM1、M2のペア性および抵抗R1、R2のペア性が理想状態の際には、トランジスタペアM3、M4の両ドレインの差動交流信号はトランジスタペアM5、M6の両ドレインの差動交流信号によって完全にキャンセルされる。この完全なキャンセルの状態で、AM変調器13の出力パワーは理想的な最小出力パワーとなる。またトランジスタペアM1のゲートのバイアス電圧がトランジスタペアM2のゲートのバイアス電圧よりも高くなるのに応答して、トランジスタペアM3、M4の両ドレインの差動交流信号はトランジスタペアM5、M6の両ドレインの差動交流信号によりキャンセルされなくなるので、AM変調器13の出力パワーは理想的な最小出力パワーから増加する。
【0121】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは低レベルとされる。従って、低レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して抵抗R1、R2は大きな抵抗値に設定され、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは高レベルとされる。従って、高レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して抵抗R1、R2は小さな抵抗値に設定され、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0122】
図7は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【0123】
図7に示すAM変調器13が、図6に示すAM変調器13と相違するのは、最初に図6の可変抵抗R1、R2が図7では固定抵抗R1、R2に置換されている点である。次に、図6のトランジスタペアM1、M2が図7ではトランジスタグループペアM11、M12…M1N、M21、M22…M2Nに置換され、このトランジスタグループペアの並列接続数がゲイン制御信号Gain_Cntに応答して変化することである。
【0124】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは低レベルとされる。従って、低レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してトランジスタグループペアの並列接続数は小さな値に設定されて、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは高レベルとされる。従って、高レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してトランジスタグループペアの並列接続数は大きな値に設定され、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0125】
図12は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【0126】
図12に示すAM変調器13が、図6に示すAM変調器13と相違するのは、図6の可変抵抗R1、R2が図12では複数の固定抵抗R11、R12…R1N、R21、R22…R2Nと複数のスイッチSW11、SW12…SW1N、SW21、SW22…SW2Nに置換されている点である。
【0127】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成される多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntはハイレベル“1”のビット数は少なく、ローレベル“0”のビット数は大きな状態とされる。従って、この状態の多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntはローレベル“0”のビット数は少なく、ハイレベル“1”のビット数は大きな状態とされる。従って、この状態の多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0128】
図13は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【0129】
図13に示すAM変調器13が、図6に示すAM変調器13と相違するのは、まず図6の可変抵抗R1、R2が図13では複数の固定抵抗R1、R2に置換されている点である。次に図13に示すAM変調器13に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntによって制御されるゲイン制御回路132が追加されている点である。
【0130】
ゲイン制御回路132は、第1のトランジスタペアM7、M8、第2のトランジスタペアM9、M10、3個の容量C9、C10、C11、2個の抵抗R5、R6、バイアス電圧Vbb、スイッチ132_SWを含んでいる。
【0131】
AM変調器13のトランジスタM1のドレインはゲイン制御回路132の第1のトランジスタペアM7、M8のソースに接続されている一方、AM変調器13のトランジスタM2のドレインはゲイン制御回路132の第2のトランジスタペアM9、M10のソースに接続されている。トランジスタM7のゲートとトランジスタM10のゲートとは容量C9とバッファ122とを介して分周器121から非反転送信RFキャリア信号が供給される一方、トランジスタM8のゲートとトランジスタM9のゲートとは容量C10とバッファ122とを介して分周器121から反転送信RFキャリア信号が供給される。更にトランジスタM7のゲートとトランジスタM10のゲートとは抵抗R5を介してバイアス電圧Vbbに接続に接続され、トランジスタM8ゲートとトランジスタM9のゲートとは抵抗R6を介してバイアス電圧Vbbに接続される。また、バイアス電圧Vbbの両端間に、容量C11とスイッチ132_SWとが並列接続されている。また、バイアス電圧Vbbの電圧は、バイアス電圧Vb3、Vb4の電圧と略等しく設定されている。更に、スイッチ132_SWは、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntによって制御される。またトランジスタM7のドレインとトランジスタM9のドレインは電源電圧Vddに接続される一方、トランジスタM8のドレインとトランジスタM10のドレインも電源電圧Vddに接続される。
【0132】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntはローレベル“0”の状態とされる。従って、この状態のゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、スイッチ132_SWはオフ状態に制御され、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とは、AM変調器13のトランジスタペアM3、M4とゲイン制御回路132のトランジスタペアM7、M8にそれぞれ略等しい分流量で分流される。この時には、トランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とは、AM変調器13のトランジスタペアM5、M6とゲイン制御回路132のトランジスタペアM9、M10にそれぞれ略等しい分流量で分流される。従って、この状態のゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。
【0133】
しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntはハイレベル“1”の状態とされる。従ってゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、スイッチ132_SWはオン状態に制御され、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分は、ゲイン制御回路132のトランジスタペアM7、M8に分流されることなく、AM変調器13のトランジスタペアM3、M4のみに流入される。またこの時にトランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とは、ゲイン制御回路132のトランジスタペアQM9、M10に分流されることなく、AM変調器13のトランジスタペアM5、M6のみ流入される。従って、この状態のゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0134】
《AM変調器13の動作》
図8は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのAM変調器13の動作を示す図である。
【0135】
図8の横軸は、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号であるAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)と反転入力信号AMMODi/p(B)とのDCオフセット差である。上述したように、このDCオフセット差と交流振幅成分は、ランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して増加するものである。
【0136】
図8の縦軸は、AM変調器13の出力パワーである。図8の縦軸に示したAM変調器13の出力パワーに、RFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31のオン時の利得+30dBmとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとを加算すると、送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]となる。
【0137】
図8では、AM変調器13のゲインGain_AMMODが高い値Gain(High)に設定された場合でのAM変調器13の出力パワーが特性L1で示される一方、AM変調器13のゲインGain_AMMODが低い値Gain(Low)に設定された場合でのAM変調器13の出力パワーが特性L2で示されている。また図8には、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターでのAM変調器13の実際の出力パワーが特性L3で示されている。図8で特性L1と特性L2との切り換りは、図8の横軸のDCオフセット差が略10mVの時に発生している。この略10mVのDCオフセット差は、ランプ生成器14に供給される基準ランプデータRef_Ramp_Dataに対応するものである。
【0138】
ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合には、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号のDCオフセット差と交流振幅成分とは小さな値となっている。この時のAM変調器13の実際の出力パワーが特性L3は、低ゲインGain(Low)のAM変調器13の出力パワーが特性L2によって決定される。しかし、ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きい場合には、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号のDCオフセット差と交流振幅成分は大きな値となっている。この時のAM変調器13の実際の出力パワーが特性L3は、高ゲインGain(High)のAM変調器13の出力パワーが特性L1により決定される。
【0139】
《EDGE方式の送信モードの送信スロットの動作》
図9は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【0140】
図9にも、タイムマスク仕様により3GPP規格で定められた送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時のRF送信信号の信号強度の増加上限特性L91と増加下限特性L92とが示され、送信動作タイムスロットTx−slotの後半のランプダウン時のRF送信信号の信号強度の減少上限特性L91と減少下限特性L92とが示されている。
【0141】
図9に示したEDGE方式の送信モードの送信スロットの制御方式も、図3で説明した<case1>と同一の制御方式<case1>が採用されている。図9に示すように、ランプアップに際して、最初にRFパワーモジュール(PA)3がオフ状態からオン状態に切り換えられ、次にフロントエンドモジュール(FEM)4がオフ状態からオン状態に切り換えられる。またランプダウンに際して、最初にフロントエンドモジュール(FEM)4がオン状態からオフ状態に切り換えられて、次にRFパワーモジュール(PA)3がオン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0142】
図4に示した本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターはEDGE方式の送信モードで図3の制御方式<case1>を採用しているので、図3に関して説明したようにランプアップ直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足する必要がある。ランプアップ直前では、RFパワーモジュール3はオンとされてオン時の利得+30dBを持ち、フロントエンドモジュール(FEM)4はオフとされてオフ時の利得−20dBを持っている。従って、図4のポーラ変調器トランスミッターのRFIC1のランプアップ直前のAM変調器13の最小出力パワーの目標値は、−48dBm−30dB+20dB=−58dBmとなる。この−58dBmの目標値のランプアップ直前のAM変調器13の最小出力パワーは、図8に示されている。図8の特性L1は−58dBmの目標値を満足できないので、ランプデータRamp_Dataが基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合には、低ゲインのAM変調器13の出力パワーが特性L2によって決定されるものである。すなわち、図8の特性L1では、AM変調器13の最小出力パワーは、−53dBmまでしか低下しない。それに対して、図8の特性L2では、AM変調器13の最小出力パワーは、−65dBmまで低下することができる。
【0143】
従って、図9に示したEDGE方式の送信モードでランプアップ開始の直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、図8の特性L2のAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−20dB=−55dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmも満足することができる。
【0144】
更に、図9に示したEDGE方式の送信モードでランプアップ開始の直後の10μSecの期間の最初の送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、図8の特性L2に示すAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−2dB=−37dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。
【0145】
また、図9に示したEDGE方式の送信モードでは、その後のランプアップの8μSecの期間の略中間のタイミングで送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]が所定値−7dBmまで増加する。すなわち、送信電力[dBm]が所定値−7dBmまで増加したタイミングで、ランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_Dataは、所定値−7dBmに対応する基準ランプデータRef_Ramp_Dataの値よりも大きくなる。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態から特性L1の高Gain(High)の状態に切り換えられる。
【0146】
すなわち、ランプアップの8μSecの期間の略中間のタイミングの図8の特性L2(L3)から特性L1への切り換えによって、AM変調器13の出力パワーは略−47dBmから−35dBmに変化する。この時の送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、AM変調器13の出力パワーの−35dBmと、RFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBと、フロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−35dBm+30dB−2dB=−7dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−1dBmも満足することができる。その後のランプアップ動作での送信電力[dBm]でも、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。
【0147】
また、送信動作タイムスロットTx−slotの後半のランプダウン開始の直後の10μSecの期間でも送信電力[dBm]は、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。また、その後のランプダウンの8μSecの期間の略中間のタイミングにて、送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]が所定値−7dBm以下に減少する。すなわち、送信電力[dBm]が所定値−7dBm以下に減少したタイミングで、ランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_Dataは、所定値−7dBmに対応する基準ランプデータRef_Ramp_Dataの値よりも小さくなる。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L1の高Gain(High)の状態から特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態に切り換えられる。従って、ランプダウン終了の直前の送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、図8の特性L2のAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−2dB=−37dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。更に、ランプダウン終了の直後の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、図8の特性L2のAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−20dB=−55dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmも満足することができる。
【0148】
尚、図9の特性L93は、上述した図4の本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターがEDGE方式の送信モードで制御方式<case1>を採用することで、ランプアップおよびランプダウンで上限特性L91と下限特性L92とによって決定されるタイムマスク仕様の規格を満足できることを示すものである。
【0149】
[実施の形態2]
《ポーラ変調器トランスミッターの他の構成》
本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターの他の構成を、図4を使用して説明する。
【0150】
本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターにおいては、AM変調器13のゲインを制御するゲイン制御信号Gain_Cntを生成する制御ユニット19には、RFIC1の各種の動作モードを設定するための動作コマンドが供給される。
【0151】
《各種の動作モード》
図10は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターで時分割多重アクセス(TDMA)に従ってタイムスロットをアイドル状態や受信動作や送信動作の各種の動作モードが設定される様子を説明するタイミングチャートの図である。
【0152】
《電源投入直後のアイドルモード》
本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1が搭載された携帯電話通信端末の電源が投入されると、例えばWord4と呼ばれるコマンドがディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1の内部の各種の制御レジスタがリセット状態とされて、RFIC1はコマンドを待つスリープ状態であるアイドルモードの動作モードに設定される。
【0153】
《ウォームアップモード》
次に例えばWord1と呼ばれるウォームアップコマンドが、ディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1のオールディジタルフェーズロックループ(ADPLL)11が起動され、ADPLL11内部のディジタル制御発振器113の発振動作が開始される。このウォームアップコマンドWord1には、次の動作モードの受信または送信を指示するビットも含まれ、ディジタル制御発振器113が複数の周波数バンドで動作する場合には、使用する周波数バンドが選択されることによって、ADPLL11はロック状態に遷移する。
【0154】
《受信モード》
その後、例えばWord2と呼ばれる受信コマンドが、ディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1は受信モードに設定され、RFIC1のRF受信回路システムはRF受信信号の増幅と復調の信号処理を行って、受信ベースバンド信号がRFIC1からディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIに供給される。受信が終了すると、Word1と呼ばれるウォームアップコマンドがディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。従って、RFIC1は、ウォームアップモードに遷移する。
【0155】
《送信モード》
その後、例えばWord3と呼ばれる送信コマンドが、ディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1は送信モードに設定され、RFIC1のRF送信回路システムは変調とRF送信信号の増幅を行い、RF送信信号がRFIC1からRFパワーモジュール3内のRF電力増幅器(PA)に供給される。送信が終了すると、Word1と呼ばれるウォームアップコマンドがディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。
【0156】
《EDGE送信モードの送信動作》
図11は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのEDGE方式の送信モードでの動作シーケンスを説明する図である。尚、図11に示すEDGE方式の送信モードの動作シーケンスは、図10に示したタイムチャートでWord3と呼ばれる送信コマンドに応答して開始される送信モードの詳細を示すものである。
【0157】
《送信データアップロード命令》
図11の時刻T1で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介しRFIC1へ送信データアップロード命令Tx_data Up_Loadが転送され、ディジタルベースバンド送信信号の送信データTx_Dataも転送される。この送信データTx_Dataは168シンボルの有効データであり、RFIC1のディジタルRFインターフェースの内蔵RAMやデータレジスタ等の内部メモリに保持される。
【0158】
GSMのデータ通信では、送受信ベースバンド信号の1シンボルは4ビットで構成される。1シンボルの最後の4ビット目が“1”であれば、EDGE送信データであり、最初の3ビットはAM変調による振幅を示している。また1シンボルの最後の4ビット目が“0”であれば、位相変調のみを使用するGMSK送信データであり、最初の3ビットは例えば“111(オール“1”)”の一定振幅である。GSMのデータ通信では、1シンボルの4ビットの1ビットはクォータービット(quarter bit)と呼ばれる。また、26MHzのシステムクロック周波数を使用している場合は、1クォータービット(1Qb)は923.08ナノ秒の時間を示している。
【0159】
《送信モードオン命令》
図11の時刻T2では、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介して送信モードオン命令Tx_Mode ONが、RFIC1へ転送される。すると、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターの動作が開始される。また、RFパワーモジュール3内部のRF電力増幅器(PA)に電源電圧やバイアス電圧の投入を開始するためのRF電力増幅器活性化信号PA_ONが、ローレベルからハイレベルに変化する。
【0160】
《送信データ内部転送命令》
図11の時刻T3で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介して送信データ内部転送命令Tx_Data ONが、RFIC1へ転送される。時刻T3から所定の遅延時間が経過すると、RFIC1の内蔵RAMやデータレジスタ等の内部メモリに保持された送信データTx_Dataの168シンボルの有効データの読み出しが開始される。
【0161】
《ランプアップスタート命令》
図11の時刻T4にて、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介してランプアップスタート命令Ramp_Up Startが、RFIC1へ転送される。すると、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1の内蔵RAMやデータレジスタの内部メモリへのランプアップのためのディジタルランプデータRamp_Up Dataのロードが開始される。従って、ロードされたディジタルランプデータRamp_Up Dataのディジタル値の増加に応答して、図4の本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのランプ生成器14の入力端子に供給されるランプデータRamp_Dataのディジタル値が決定される。
【0162】
またランプ生成器14の出力端子のランプ制御ディジタル信号は、ディジタル減算器Subとディジタル乗算器Multを介してD/A変換器15の入力端子に供給される。従って、AM変調器13の一方の入力端子に供給されるD/A変換器15のアナログ出力信号Output_DACは、ディジタルランプデータRamp_Up Dataのディジタル値の増加に応答して増加する。
【0163】
またランプアップスタート命令Ramp_Up Startに応答して、フロントエンドモジュール(FEM)4の動作を開始するフロントエンドモジュール活性化信号FEM_ONがローレベルからハイレベルに変化する。
【0164】
一方、制御ユニット19は、図11の時刻T4のタイミングで供給されるランプアップスタート命令Ramp_Up Startに応答して周波数26MHzのシステムクロックパルスのカウントを開始するものである。制御ユニット19は13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(13×0.923μSec=11.999μSec≒12μSec)の経過後に、AM変調器13の他方の入力端子に供給されるゲイン制御信号Gain_Cntをローレベルからハイレベルに切り換える。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態から特性L1の高Gain(High)の状態に切り換えられる。また13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)は、図9に示すランプアップ開始の直後の10μSecの期間とその後のランプアップの8μSecの期間の略1/4の期間2μSecの期間との合計12μSecに対応しており、AM変調器13の特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態から特性L1の高Gain(High)の状態へのゲイン切り換えは、ランプアップ開始タイミングT4から10〜18μSecの期間内に行うことを意味するものである。
【0165】
その結果、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)のタイミングの図8の特性L2(L3)から特性L1への切り換えによって、AM変調器13の出力パワーは略−47dBmから−35dBmに変化する。図9に示すランプアップ動作と同様に、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)の直後のタイミングの送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、AM変調器13の出力パワーの−35dBmと、RFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBと、フロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−35dBm+30dB−2dB=−7dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmも満足することができる。その後のランプアップ動作での送信電力[dBm]でも、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。
【0166】
《ランプアップ完了後の送信データの送信》
図11の時刻T5のランプアップ完了から時刻T6のランプダウンスタートの間で、合計148シンボルの転送データの送信が行われる。この合計148シンボルの転送データは、ディジタル変調器10に供給されるEDGE方式の送信データTx_Dataに対応したものである。
【0167】
《ランプダウンスタート命令》
図11の時刻T6で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介してランプダウンスタート命令Ramp_Down Startが、RFIC1へ転送される。すると、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1の内蔵RAMやデータレジスタの内部メモリへのランプダウンのためのディジタルランプデータRamp_Down Dataのロードが開始される。その結果、時刻T4から時刻T5の間のRFIC1の内部動作シーケンスと同様な内部動作シーケンスが、時刻T6から時刻T7の間に実行される。従って、ランプダウンのためのディジタルランプデータRamp_Down Dataのディジタル値の減少に応答して、AM変調器13の一方の入力端子に供給されるD/A変換器15のアナログ出力信号Output_DACは、減少する。
【0168】
一方、制御ユニット19は、図11の時刻T6のタイミングで供給されるランプダウンスタート命令Ramp_Down Startに応答して周波数26MHzのシステムクロックパルスのカウントを開始するものである。制御ユニット19は図11の時刻T7の送信モードオフTx_Mode OFFのタイミングよりも13クォータービット(13Qb)のカウントアップ時間(≒12μSec)先行するタイミングで、AM変調器13の他方の入力端子に供給されるゲイン制御信号Gain_Cntをハイレベルからローレベルに切り換える。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L1の高Gain(High)の状態から特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態に切り換えられる。また13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)は、図9に示したランプダウン終了の直前の10μSecの期間とその後のランプダウンの8μSecの期間の略1/4の期間2μSecの期間との合計12μSecに対応しており、AM変調器13の特性L1の高Gain(High)の状態から特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態へのゲイン切り換えはランプダウン開始タイミングT6から10〜18μSecの期間内に行うことを意味するものである。
【0169】
その結果、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)のタイミングの図8の特性L1から特性L2(L3)への切り換えによって、AM変調器13の出力パワーは略−35dBmから−47dBmに変化する。図9に示すランプダウン動作と同様に、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)の直前のタイミングの送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、AM変調器13の出力パワーの−35dBmと、RFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBと、フロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−35dBm+30dB−2dB=−7dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmも満足することができる。その後のランプダウン動作での送信電力[dBm]でも、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。
【0170】
またランプダウンスタート命令Ramp_Down Startに応答して、フロントエンドモジュール(FEM)4の動作を所定の遅延時間の経過後に停止するためフロントエンドモジュール活性化信号FEM_ONがハイレベルからにローレベル変化する。
【0171】
《送信モードオフ命令》
図11の時刻T7で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介して送信モードオフ命令Tx_Mode OFFが、RFIC1へ転送される。すると、RFパワーモジュール3内部のRF電力増幅器(PA)に電源電圧やバイアス電圧の供給を停止するためのRF電力増幅器活性化信号PA_ONが、ハイレベルからローレベルに変化する。
【0172】
[実施の形態3]
《マルチバンドに対応するポーラ変調器トランスミッターの構成》
図14は、本発明の実施の形態3によるマルチバンドに対応するためのポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【0173】
図14に示すポーラ変調器トランスミッターは、図4のポーラ変調器トランスミッターと同様に、RFIC1、バラン2、RFパワーモジュール3によって構成されている。
【0174】
図14のRFIC1では、図示されていないが図1のRFIC4と同様に、ディジタル変調器10とフェーズロックドループ11とランプ生成器14とディジタル減算器Subとディジタル乗算器MultとD/A変換器15とA/D変換器16とスイッチSW1とローパスフィルタ17、18とが含まれている。また図14のRFIC1のフェーズロックドループ11は、図示されていないが、図1と同様に位相ディジタル変換器111とディジタルループフィルタ112とディジタル制御発振器113とフラクショナル分周器114とΣΔ変調器115とを含んでいる。
【0175】
特に、図14のRFIC1に内蔵されるAM変調器13は、略1GHzのローバンド(GSM850、GSM900)に対応するための第1AM変調器133と略2GHzのハイバンド(DCS1800、PCS1900)に対応するための第2AM変調器134とを含んでいる。
【0176】
略1GHzのローバンドに対応するための第1AM変調器133は、図7に示したAM変調器13と同様にトランジスタグループペアM11、M12…M1N、M21、M22…M2Nの並列接続数がゲイン制御信号Gain_Cntに応答して変化する方式とされている。
【0177】
第1AM変調器133のトランジスタM11、M12…M1NのゲートとトランジスタM22…M2Nのゲートには、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号である非反転入力信号AMMODi/p(T)と反転入力信号AMMODi/p(B)とがそれぞれ供給される。第1AM変調器133のトランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは容量C1とバッファ122とを介して分周器121から非反転送信RFキャリア信号が供給される一方、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは容量C2とバッファ122とを介して分周器121から反転送信RFキャリア信号が供給される。更に、トランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは抵抗R3を介して容量C3に接続され、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは抵抗R4を介して容量C4に接続され、容量C3の両端間と容量C4の両端間とにそれぞれ略等しいバイアス電圧Vb3、Vb4が供給される。また、略2GHzのハイバンドに対応するための第2AM変調器134も、第1AM変調器133と同様に構成されることができる。
【0178】
AM変調器13は、第1AM変調器133の差動出力端子と第2AM変調器134の差動出力端子に接続されたDCオフセット電圧測定回路136とDCオフセット電圧測定コントローラ135とを含んでいる。DCオフセット電圧測定回路136は、第1と第2のスイッチペアsw1、sw2と、差動増幅器AMPと、電圧比較器CMPを含んでいる。差動増幅器AMPの差動入力端子は、第1のスイッチペアsw1を介して第1AM変調器133の差動出力端子と接続され、第2のスイッチペアsw2を介して第2AM変調器134の差動出力端子に接続されている。差動増幅器AMPの差動出力信号は電圧比較器CMPの差動入力端子に供給され、電圧比較器CMPの出力信号Amdccal_outはレジスタ21に格納される。
【0179】
AM変調器13のDCオフセット電圧測定回路136の差動増幅器AMPと電圧比較器CMPを制御するDCオフセット電圧測定コントローラ135に、制御レジスタ22から各種の制御信号が供給される。この各種の制御信号は、キャリブレーションオン信号Amdccal_on、極性信号Calo_pol等を含んでいる。また、D/A変換器15に内蔵されたクロック生成器clockから生成されるキャリブレーションクロックAmdccal_clkが電圧比較器CMPに供給される。更に、制御レジスタ22から極性変更信号Polarity changeが、AM変調器13でバイアス電圧Vb3、Vb4を生成するバイアス電圧生成器に供給される。レジスタ21、22は、バス24を介して他の制御レジスタ23に接続されている。他の制御レジスタ23から生成されるバッファ遮断信号Buffer_offが、バッファ122に供給される。また他の制御レジスタ23から生成される8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlがD/A変換器15に内蔵された可変電圧源に供給される。
【0180】
《AM変調器13のDCオフセットキャリブレーション》
本発明の上述した種々の実施の形態では、送信スロットのランプアップ終了の直前やランプダウンの開始の直後にAM変調器13のゲインGain_AMMODを切り換えることによって送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とするものである。
【0181】
しかしながら、このようにAM変調器13のゲインGain_AMMODの切り換えを行ったとしても、AM変調器13を構成する素子(特に、トランジスタ差動対ペア(M11、M21)、(M12、M22)、(M1N、M2N)、抵抗ペアR1、R2等)のペア偏差によって入力DCオフセットが発生した場合には、AM変調器13の最小出力パワーが制限されてしまうと言う問題が本発明者等の検討によって明らかとされた。
【0182】
図15は、図14に示すRFIC1にてAM変調器13の素子ペア偏差によって約4mVの入力DCオフセットが発生した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【0183】
図14に示すRFIC1で、ランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_dataの値の低下に応答して、D/A変換器15からの2つのアナログ変換出力信号Output_DACのDCオフセット電圧差が減少する。しかし、図15に示すように、AM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)のDCオフセット電圧差が約4mVの入力DCオフセット電圧差以下に減少しても、AM変調器13の出力パワーが減少することができない。
【0184】
図14に示すAM変調器13でも、トランジスタペアM11、M12…M1N、M2、M22…M2Nのゲートのバイアス電圧が等しい際には、トランジスタペアM3、M4の両ドレインの差動交流信号はトランジスタペアM5、M6の両ドレインの差動交流信号により完全にキャンセルされる。この完全なキャンセルの状態で、AM変調器13の出力パワーは理想的な最小出力パワーとなる。しかし、AM変調器13の約4mVの入力DCオフセット電圧差によって、完全なキャンセルの状態での最小出力パワーを得ることができない。その結果、図15に示すようにAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)のDCオフセット電圧差が約4mVの入力DCオフセット電圧差以下に減少しても、AM変調器13の出力パワーが減少できず、AM変調器13の最小出力パワーの目標値−58dBmを満足することができない。
【0185】
そこで、図14に示した本発明の実施の形態3によるRFIC1ではAM変調器13の最小出力パワーを更に低下させるために、送信動作のタイムスロットに先行して、例えば電源投入直後のアイドルモードにてDCオフセットキャリブレーション動作が実行されるものであり、電源電圧や温度依存性等も考慮して送信動作のタイムスロット直前のタイミングで毎回DCオフセットキャリブレーションを実行することも可能である。
【0186】
このDCオフセットキャリブレーション動作では、他の制御レジスタ23からD/A変換器15に内蔵の可変電圧源に供給される8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlが、更新される。D/A変換器15に内蔵の可変電圧源は、8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlに応答して、−127mVから+127mVの可変電圧を生成する。従って、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号の出力DCオフセット電圧差が変化され、AM変調器13の第1AM変調器133の差動出力端子のDCオフセット電圧がDCオフセット電圧測定回路136の差動増幅器AMPと電圧比較器CMPとによって測定される。測定されるAM変調器13の第1AM変調器133の差動出力端子のDCオフセット電圧が最小となるように、8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlによってD/A変換器15に内蔵の可変電圧源の可変電圧レベルが設定される。
【0187】
具体的な実施の形態では、DCオフセットキャリブレーション動作は、第1AM変調器133のトランジスタペアM3、M4とトランジスタペアM5、M6とのゲートのバイアス電圧Vb3、Vb4の極性(電圧大小関係)が反転される。この極性反転は、制御レジスタ22からAM変調器13のバイアス電圧Vb3、Vb4を生成するバイアス電圧生成器に供給される極性変更信号Polarity changeのレベル反転によって可能となる。従って、極性反転の前後で2回のDCオフセットキャリブレーション動作が実施され、2回のDCオフセットキャリブレーション動作の校正結果であるD/A変換器15の可変電圧源の可変電圧レベルが平均化される。従って、AM変調器13のDCオフセット電圧測定回路136の差動増幅器AMPと電圧比較器CMPの回路定数の偏差による影響が軽減されることができる。
【0188】
尚、2回のDCオフセットキャリブレーション動作の間では、制御レジスタ23から生成されるバッファ遮断信号Buffer_offがバッファ122に供給されることによって、バッファ122は遮断状態に制御される。従って、2回のDCオフセットキャリブレーション動作の間にて、分周器121からの非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とがトランジスタペアM3、M4、M5、M6のゲートに伝達されることが禁止される。
【0189】
以上のDCオフセットキャリブレーション動作によって、略1GHzのローバンド(GSM850、GSM900)に対応するためのAM変調器13の第1AM変調器133のDCオフセットキャリブレーションが完了する。次に、略2GHzのハイバンド(DCS1800、PCS1900)に対応するためのAM変調器13の第2AM変調器134のDCオフセットキャリブレーションを、上述の第1AM変調器133のためのDCオフセットキャリブレーション動作と同様に実行することができる。例えば、D/A変換器15内部に第2AM変調器134のための第2の可変電圧源を配置して、この第2の可変電圧源の可変電圧レベルを2回のDCオフセットキャリブレーション動作による平均化で設定することができる。また、第2AM変調器134のDCオフセットキャリブレーションは、送信動作のタイムスロットに先行して、例えば電源投入直後のアイドルモードにて実行できるものであり、電源電圧や温度依存性等も考慮して送信動作のタイムスロット直前のタイミングで毎回DCオフセットキャリブレーションを実行することも可能である。
【0190】
図16は、上述の第1AM変調器133の極性反転の前後の2回のDCオフセットキャリブレーション動作を実施することによって、入力DCオフセットを略2mV以下に低減した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【0191】
極性反転の前後の2回のDCオフセットキャリブレーション動作の結果、図16に示すようにAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)のDCオフセット電圧差が約2mVの入力DCオフセット電圧差まで減少することができ、AM変調器13の出力パワーが減少することができて、AM変調器13の最小出力パワーの目標値−58dBmを満足することができる。
【0192】
[実施の形態4]
《携帯電話の構成》
図17は、本発明の実施の形態4によるマルチバンドに対応する携帯電話の構成を示すブロック図である。
【0193】
図17に示すマルチバンドに対応する携帯電話は、上記で説明した本発明の実施の形態1から実施の形態3のいずれかによるEDGE送信のためのポーラ変調器トランスミッターを含むRFIC1、ベースバンド信号処理LSI6、RFパワーモジュール(PM)3、アナログフロントエンドモジュール(FEM)4、アンテナ(ANT)5を含むものである。
【0194】
図17では、携帯電話の送受信用アンテナ(ANT)5にはアナログフロントエンドモジュール(FEM)4の共通の入出力端子が接続されている。またRFIC1からアナログフロントエンドモジュール(FEM)4へ、フロントエンドモジュール活性化信号FEM_ONが供給される。送受信用アンテナ(ANT)5からアナログフロントエンドモジュール(FEM)4の共通の入出力端子へのRF信号の流れは携帯電話の受信動作RXとなり、共通の入出力端子から送受信用アンテナ(ANT)5へのRF信号の流れは携帯電話の送信動作TXとなる。
【0195】
RFIC1はベースバンド信号処理LSI6からの送信ベースバンド信号をRF送信信号に周波数アップコンバージョンを行い、逆に、送受信用アンテナ(ANT)5で受信されたRF受信信号を受信ベースバンド信号に周波数ダウンコンバージョンを行いベースバンド信号処理LSI6に供給する。
【0196】
GMSK通信とEDGE通信のためにアナログフロントエンドモジュール(FEM)4内部のアンテナスイッチは共通の入出力端子と送信端子Tx1、Tx2、受信端子Rx1、Rx2、Rx3、Rx4のいずれかの端子との間で信号経路を確立して、受信動作RXと送信動作TXのいずれかを行う。RF信号の受送信動作のためのスイッチはHEMT(高電子移動度トランジスタ)で構成され、アンテナスイッチはGaAs等の化合物半導体を使用したマイクロウェーブモノリシック集積回路(MMIC)で構成されている。このアンテナスイッチMMICは受信動作RXと送信動作TXとのいずれかのために確立した信号経路以外の信号経路のインピーダンスを極めて高い値に設定することで、必要なアイソレーションが得られるものである。アンテナスイッチの分野では、共通の入出力端子はシングルポール(Single Pole)と呼ばれ、送信端子Tx1、Tx2と、受信端子Rx1、Rx2、Rx3、Rx4の合計6個の端子は6スロー(6 throw)と呼ばれる。従って、このアンテナスイッチのMMICは、シングルポール6スロー(SP6T;Single Pole 6 throw)型のスイッチである。
【0197】
一方、WCDMA通信の符号分割多重アクセス(CDMA:Code-Division Multiple Access)のためにアナログフロントエンドモジュール(FEM)4内部のテュプレクサーは、共通の入出力端子と送信端子Tx3との間の送信動作TXと共通の入出力端子と受信端子Rx5との間の受信動作RXとの並列信号経路を確立するものである。
【0198】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx5からは2110〜2170MHzのWCDMAのBandIのRF受信入力信号もしくは1930〜1990MHzのWCDMAのBandIIのRF受信入力信号が出力され、RFIC1のWCDMA受信ユニット141に供給される。
【0199】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx4から1930〜1990MHzのPCS1900のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。尚、PCSは、Personal Communication Systemの略である。
【0200】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx3から1805〜1880MHzのDCS1800のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。尚、DCSは、Digital Cellular Systemの略である。
【0201】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx2からは925〜960MHzのGSM900のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。
【0202】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx1からは869〜894MHzのGSM850のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。
【0203】
WCDMA受信ユニット111もしくはGSM/EDGE受信ユニット142により生成される受信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145を介してA/D変換・D/A変換ユニット146のA/D変換器に供給される。従って、A/D変換・D/A変換ユニット116のA/D変換器からは低電圧差動信号インターフェース(LVDS/IF)の受信ディジタルベースバンド信号が生成され、ベースバンド信号処理LSI6のディジタルRFインターフェースDig RFに供給される。尚、LVDSは、Low Voltage Differential Signalingの略である。
【0204】
RFIC1とベースバンド信号処理LSI6との間のディジタルRFインターフェースDig RFでは、システムクロック信号Sysclkやシステムクロックイネーブル信号Sysclkenと言ったDigRF仕様に準拠した信号が含まれている。
【0205】
ベースバンド信号処理LSI6からの低圧差動信号インターフェース(LVDS/IF)の送信ディジタルベースバンド信号がA/D変換・D/A変換ユニット146のD/A変換器に供給される。従って、A/D変換・D/A変換ユニット146のD/A変換器の出力の送信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145に供給される。また、GSM方式もしくはEDGE方式の送信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145からGSM/EDGE送信ユニット143に供給される。このGSM/EDGE送信ユニット143は、上記で説明した本発明の実施の形態1から実施の形態3のいずれかによるEDGE送信のためのポーラ変調器トランスミッターを含むものである。
【0206】
GSM/EDGE送信ユニット143から生成される824〜849MHzのGSM850のRF送信出力信号もしくは880〜915MHzのGSM900のRF送信出力信号は、送信端子Tx1とRFパワーモジュール(PM)3の第1RF電力増幅器PA1とアナログフロントエンドモジュール(FEM)4と送受信用アンテナ(ANT)5とを介して基地局に送信される。
【0207】
GSM/EDGE送信ユニット143から生成される1710〜1785MHzのDCS1800のRF送信出力信号と1850〜1910MHzのPCS1900のRF送信出力信号は、送信端子Tx2とRFパワーモジュール(PM)3の第2RF電力増幅器PA2とアナログフロントエンドモジュール(FEM)4と送受信用アンテナ(ANT)5とを介して基地局に送信される。
【0208】
また、WCDMA方式の送信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145からWCDMA送信ユニット114に供給される。1920〜1980MHzのWCDMAのBandIのRF送信信号もしくは1850〜1910MHzのWCDMAのBandIIのRF送信信号は、送信端子Tx2とRFパワーモジュール(PM)3の第3RF電力増幅器PA3とアナログフロントエンドモジュール(FEM)4と送受信用アンテナ(ANT)5とを介して基地局に送信される。
【0209】
また、RFIC1からRFパワーモジュール(PM)3へ、自動パワー制御電圧VapcとRF電力増幅器活性化信号PA_ONと周波数バンド選択信号Band_selとが供給されている。
【0210】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0211】
[他の実施の形態]
例えば、図4のRFIC1において、フェーズロックドループ11は、オールディジタルフェーズロックドループに限定されるものではない。すなわち、フェーズロックドループ11にて、位相ディジタル変換器111は位相比較器に置換されることができ、ディジタルループフィルター112はアナログループフィルターに置換されることができ、ディジタル制御発振器113は電圧制御発振器(VCO)に置換されることができる。
【0212】
また、図6でAM変調器13のギルバートセルのトランジスタM1〜M6はNチャンネルMOSトランジスタに限定されるものではなく、NPNバイポーラトランジスタに置換されることも可能である。
【0213】
更に、図17において、RFIC1とベースバンド信号処理LSI6との間のインターフェースはディジタルRFインターフェースに限定されるものではなく、両者の間でアナログ受信ベースバンド信号とアナログ送信ベースバンド信号とが伝達されるアナログインターフェースを採用することも可能である。
【0214】
また、例えば図6においてRFIC出力は差動形式で外付けインダクターL1、L2とバラン2とを使用してシングルエンド形式のRF送信信号に変換しているが、インダクターやバランをRFIC1に内蔵してRFIC1からシングルエンド形式のRF送信信号を出力することも可能である。
【符号の説明】
【0215】
1…RF信号処理半導体集積回路(RFIC)
2…バラン
3…RFパワーモジュール
31…RF電力増幅器(PA)
32…RF電力検出器(DET)
4…フロントエンドモジュール(FEM)
5…送信アンテナ
6…ベースバンド信号処理LSI
10…ディジタル変調器
11…オールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)
12…バッファ/分周器
13…AM変調器
14…ランプ生成器
Sub…ディジタル減算器
Mult…ディジタル乗算器
15…D/A変換器
16…A/D変換器
SW1…スイッチ
17、18…ローパスフィルタ
19…制御ユニット
111…位相ディジタル変換器
112…ディジタルループフィルタ
113…ディジタル制御発振器
114…フラクショナル分周器
115…ΣΔ変調器
【技術分野】
【0001】
本発明は、送信機およびそれに使用可能な半導体集積回路に関するもので、特にEDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とするのに有益な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話端末のような通信端末機器で、複数のタイムスロットのそれぞれのタイムスロットを、アイドル状態と、基地局からの受信動作と、前記基地局への送信動作とのいずれかに設定可能である時分割多重アクセス(TDMA)方式が知られている。尚、TDMAは、Time-Division Multiple Accessの略称である。このTDMA方式のひとつとして、位相変調のみを使用するGSM方式もしくはGMSK方式が知られている。尚、GSMは、Global System for Mobile Communicationsの略称である。また、GMSKは、Gaussian minimum Shift Keyingの略称である。このGSM方式もしくはGMSK方式と比較して、通信データ転送レートを改善する方式も知られている。この改善方式として、位相変調と伴に振幅変調を使用するEDGE方式も、最近注目されている。尚、EDGEは、Enhanced Data for GSM Evolution;Enhanced Data for GPRSの略称であって、GPRSはGeneral Packet Radio Serviceの略称である。
【0003】
EDGE方式を実現する方法としては、送信すべき送信信号を位相成分と振幅成分とに分離した後、位相制御ループと振幅制御ループでそれぞれフィードバック制御を行い、フィードバック制御の後の位相成分と振幅成分とをアンプで合成するポーラループ方式が知られている。
【0004】
下記非特許文献1には、位相制御ループと振幅制御ループとを有し、EDGE方式の送信機能をサポートするポーラループトランスミッターが記載されている。携帯電話において電力効率は重要な市場課題であり、ポーラループ方式ではRFパワーアンプが飽和近くで動作することにより、電力効率が良いと言う利点があると記載されている。また、このRFパワーアンプの飽和動作からのポーラループ方式の付加的な利点は、低雑音特性であると記載されている。
【0005】
また、下記非特許文献2には、EDGEトランスミッターとしてのいくつかの回路とアーキテクチャーとが紹介されている。
【0006】
1番目のアーキテクチャーは、RF電力増幅器(PA)の前にてポーラ変調(PM;Polar Modulation)を行う方式である。この方式では、変調器(Modulator)から生成されるディジタル位相信号とディジタル振幅信号とは、ΣΔ変調器とD/A変換器とにそれぞれ入力される。ΣΔ変調器の出力信号はフェーズロックドループ(PLL) の一方の入力端子に供給され、PLLの出力信号は電圧制御発振器(VCO)に供給され、VCOの出力信号はPLLの他方の入力端子とミキサーの一方の入力端子とに供給される。D/A変換器のアナログ出力信号はローパスフィルタを介してミキサーの他方の入力端子に供給されて、ミキサーの出力信号はドライバーとRF電力増幅器(PA)とアイソレーターとを介してアンテナに供給される。
【0007】
次の2番目のアーキテクチャーは、オープンループ方式のRF電力増幅器(PA)の振幅制御を行うポーラトランスミッター(Polar transmitter)の方式である。この2番目のアーキテクチャーでは、1番目のアーキテクチャーのミキサーとドライバーとが省略され、D/A変換器のアナログ出力信号はローパスフィルタを介してRF電力増幅器(PA)に直接供給される。従って、RF電力増幅器(PA)ではアナログ制御入力端子を介してバイアス電流またはコレクタ電圧またはその両者が制御されて、RF電力増幅器(PA)での振幅変調が直接実行される。
【0008】
また3番目のアーキテクチャーはポーラループトランスミッター(Polar loop transmitter)であり、I、Q送信ベースバンド信号が供給される変調器の出力端子から生成される送信中間周波数信号(IF)はフェーズロックドループ(PLL)と振幅制御ループの一方の入力端子とに供給される。PLLの出力信号は電圧制御発振器(VCO)の制御入力に供給され、VCOの出力信号はRF電力増幅器(PA)のRF信号入力端子に供給される。振幅制御ループの出力信号はRF電力増幅器(PA)の制御入力端子に供給されて、ダウンコンバージョンゲイン制御器の一方の入力端子と他方の入力端子にRF電力増幅器(PA)のRF出力信号と電力制御信号とがそれぞれ供給される。ダウンコンバージョンゲイン制御器の中間周波数出力信号はPLLの負帰還端子と振幅制御ループの負帰還端子に供給されて、振幅制御ループの出力信号によりRF電力増幅器(PA)の利得が制御される。
【0009】
更に、下記非特許文献3には、ポーラ変調(Polar Modulation)トランスミッターが記載されている。このトランスミッターでは、ディジタル送信データはFIFOメモリに格納され、FIFOメモリはI、Q送信ディジタルベースバンド信号を生成するEDGE方式I、Qマッピィングユニットに供給される。このI、Q送信ディジタルベースバンド信号は、それらを振幅成分と位相成分とに変換するディジタルCORDICシステムに供給される。尚、CORDICは、Coordinate Rotation Digital Calculation)の略称である。
【0010】
またトランスミッターにはRF電力増幅器(PA)のランプ動作を行うためのランプディジタル制御信号を生成する生成器が含まれ、ランプディジタル制御信号とディジタルCORDICシステムの振幅成分であるディジタル振幅情報とがディジタル乗算器に供給される。このディジタル乗算器の出力から生成されるディジタル振幅変調情報は、D/A変換器を介してRF電力増幅器(PA)の電源電圧を制御するレギュレータに供給される。ディジタルCORDICシステムの位相成分であるディジタル周波数変調情報は、ディジタルPLLのフラクショナル分周器に供給される。
【0011】
また更に下記非特許文献4には、下記非特許文献3に記載のポーラ変調(Polar Modulation)トランスミッターと異なるポーラ変調器(Polar Modulator)トランスミッターが記載されている。下記非特許文献4に記載のトランスミッターでは、ディジタル乗算器の出力から生成されるディジタル振幅変調情報はD/A変換器を介して下記非特許文献3に記載のようにRF電力増幅器(PA)の電源電圧を制御するレギュレータに供給されるのではなく、アナログ乗算器に供給される。このアナログ乗算器の出力端子はRF電力増幅器(PA)のRF信号入力端子に接続されて、アナログ乗算器の入力端子はPLLの発振器の出力と分周器の入力とに接続されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Earl McCune, “High−Efficiency, Multi−Mode, Multi−Band Terminal Power Amplifiers”, IEEE microwave magazine, March 2005, PP.44〜55.
【非特許文献2】Tirdad Sowlati et al, “Quad−Band GSM/GPRS/EDGE Polar Loop Transmitter”, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.39, NO.12, DECEMBER 2004, PP.2179〜2189.
【非特許文献3】Alex W. Hietala, ”A Quad−Band 8PSK/GMSK Polar Transceiver“, IEEE JOURNAL OF SOLID−STATE CIRCUITS, VOL.41, NO.5, MAY 2006, PP.1133〜1141.
【非特許文献4】Christian Mayer, “A Robst GSM/EDGE Transmitter Using Polar Modulation Techniques”, The European Conference on Wireless Technology, 2005, 3−4 Oct, 2005, PP.93〜96.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明者等は本発明に先立って、ベースバンド信号処理LSIとの間でディジタルRFインターフェースが可能なGSM/EDGE/WCDMAのマルチモードおよびマルチバンドの送受信機能をサポートする次世代のRF信号処理大規模半導体集積回路の研究・開発に従事した。
【0014】
この研究・開発では、次世代のRF信号処理大規模半導体集積回路の多機能化に伴って、回路規模の削減と消費電力の削減が必要とされた。その検討の結果、上記非特許文献4に記載のポーラ変調器(Polar Modulator)トランスミッターの採用が検討された。
【0015】
図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【0016】
図1に示すポーラ変調器トランスミッターは、RF信号処理半導体集積回路(以下、RFICと言う)1、バラン2、RFパワーモジュール3によって構成されている。
【0017】
RFIC1は、ディジタル変調器10、フェーズロックドループ11、バッファ/分周器12、AM変調器13、ランプ生成器14、ディジタル減算器Sub、ディジタル乗算器Mult、D/A変換器15、A/D変換器16、スイッチSW1、ローパスフィルタ17、18を含んでいる。
【0018】
ディジタル送信データTx_Dataが供給されるディジタル変調器10は、上記非特許文献3に記載のディジタルCORDICシステムと同様に、ディジタル振幅成分Rとディジタル位相成分θとを出力する。ディジタル振幅成分Rはディジタル乗算器Multの一方の入力端子に供給され、ディジタル位相成分θはオールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11の一方の入力端子に供給される。
【0019】
RFパワーモジュール3に含まれたRF電力増幅器(PA)31のランプアップ動作とランプダウン動作とのために、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1のディジタルRFインターフェースを介してランプデータRamp_Dataがランプ生成器14の入力端子に供給される。従って、ランプ生成器14の出力端子から生成されるランプ制御ディジタル信号が、ディジタル減算器Subの一方の入力端子に供給される。一方、RFパワーモジュール3のRF電力検出器(DET)32はRF電力増幅器(PA)31の出力端子の送信出力電力Poutのレベルを検出するので、RF電力検出器(DET)32のアナログ送信出力検出電圧VdetはA/D変換器16の入力端子に供給される。その結果、A/D変換器16の出力端子のディジタル送信出力検出信号はディジタル減算器Subの他方の入力端子に供給されて、ディジタル減算器Subのディジタル出力信号はディジタル乗算器Multの他方の入力端子に供給される。また、ディジタル乗算器Multの出力端子のディジタル乗算出力信号はD/A変換器15の入力端子に供給されて、D/A変換器15のアナログ出力信号はスイッチSW1の入力端子に供給される。GSM方式のGMSK送信モードでは、スイッチSW1の一方の出力端子のアナログ信号はローパスフィルタ18を介して自動パワー制御電圧VapcとしてRF電力増幅器(PA)31に供給される。一方、EDGE方式の送信モードでは、スイッチSW1の他方の出力端子のアナログ信号は、ローパスフィルタ17を介してAM変調器13の一方の入力端子に供給される。
【0020】
オールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11の一方の入力端子には、ディジタル変調器10から生成されるディジタル位相成分θが供給される。このオールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11は、図1の下に示すように、位相比較機能を持つ位相ディジタル変換器111、ディジタルループフィルタ112、ディジタル制御発振器113、フラクショナル分周器114、ΣΔ変調器115を含んでいる。
【0021】
位相ディジタル変換器111の一方の入力端子に基準用発振器(図示せず)から生成される安定な周波数に制御された基準周波数信号REFが供給される一方、位相ディジタル変換器111の他方の入力端子にはフラクショナル分周器114を介してディジタル制御発振器113の発振出力信号が負帰還で供給される。更に、位相ディジタル変換器111のディジタル変換出力信号はディジタルループフィルタ112を介してディジタル制御発振器113の発振制御入力端子に供給され、ディジタル制御発振器113の発振出力信号の周波数が制御される。また、ディジタル制御発振器113の発振出力信号を位相ディジタル変換器111の他方の入力端子に負帰還するのに際して、フラクショナル分周器114は2個の分周比1/N、1/(N+1)を持つものである。通常では、ΣΔ変調器115のディジタル出力信号“0”に応答してフラクショナル分周器114の分周比は一方の値1/Nに設定される一方、ΣΔ変調器115からディジタル出力信号“1”が生成されると、フラクショナル分周器114の分周比は他方の値1/(N+1)に設定される。また、ディジタル変調器10から供給されるディジタル位相成分θに応答してΣΔ変調器115は、所定のデューティーレシオでディジタル出力信号“1”を生成する。従って、オールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)11では、所定のデューティーレシオと2個の分周比1/N、1/(N+1)とによって、平均分周比が少数以下の値に設定される。その結果、ADPLL11は、極めて高い周波数解像度でディジタル制御発振器113の発振出力信号の周波数を精密に制御することが可能な周波数シンセサイザとして機能することができる。
【0022】
ディジタル制御発振器113の発振出力信号は、バッファ/分周器12を介してAM変調器13の他方の入力端子に供給される。また、ディジタル制御発振器113の発振出力信号の周波数は、略2GHzの値に設定されている。従って、図1のポーラ変調器トランスミッターが略1GHzのローバンド(GSM850、GSM900)の送信周波数の送信出力電力Poutを生成する場合には、バッファ/分周器12は分周数2の分周器として動作する。また、図1のポーラ変調器トランスミッターが略2GHzのハイバンド(DCS1800、PCS1900)の送信周波数の送信出力電力Poutを生成する場合には、バッファ/分周器12は分周数1のバッファとして動作する。
【0023】
従って、図1に示したポーラ変調器トランスミッターがEDGE方式の送信モードを実行する際に、AM変調器13は、ディジタル変調器10からのディジタル位相成分θに応答する位相変調搬送波信号の振幅をAM変調制御信号に従って変調するものである。このAM変調制御信号は、ディジタル変調器10のディジタル振幅成分Rとランプ生成器14のランプ制御ディジタル信号とのディジタル乗算器Multによるディジタル乗算出力のD/A変換器15によるアナログ変換出力信号を含んでいる。また位相変調搬送波信号は、ディジタル変調器10からのディジタル位相成分θに応答するADPLL11のディジタル制御発振器113の発振出力信号である。
【0024】
AM変調器13の差動出力端子に生成されるRF送信差動出力信号は、バラン2によってシングルエンド形式のRF送信信号に変換される。尚、バラン2は、良く知られているように、平衡差動入力信号を非平衡シングルエンド出力信号に変換する機能を有するものである。バラン2から生成されるシングルエンドRF送信信号はRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31によって増幅され、RF電力増幅器(PA)31の送信出力電力Poutはアンテナスイッチ等を内蔵するフロントエンドモジュール(FEM)と送信アンテナとを介して基地局に送信されるものである。
【0025】
図2は、図1に示すポーラ変調器トランスミッターを構成するRFIC1とRFパワーモジュール3と、アンテナスイッチ等を内蔵するフロントエンドモジュール(FEM)4と送信アンテナ5によって、GSM/EDGEのマルチモードおよびハイ/ローのマルチバンドの送信機能を持つ携帯電話通信端末が構成される様子を示す図である。
【0026】
尚、図2には、RFIC1の出力端子からRFパワーモジュール3の入力端子に供給される最小送信入力電力Mini_Pinが示されるとともに、RFパワーモジュール3のオフ時とオン時の利得と、フロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時とオン時の利得とが示されている。
【0027】
図3は、図2に示す携帯電話通信端末のポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【0028】
すなわち、TDMA(時分割多重アクセス)方式では、冒頭で説明したように、複数のタイムスロットを、アイドル状態、基地局からの受信動作、基地局への送信動作のいずれかに設定変更することが可能となる。特に、他のタイムスロットから送信動作タイムスロットに切り換える際には、3GPP(3rd Generation Partnership Project)規格で定められた上昇レートで、RF送信信号の信号強度が増加されなければならない。この時のRF送信信号の信号強度の増加は、ランプアップと呼ばれる。ランプアップの上昇レートが3GPP規格よりも大きい場合は、不要輻射が増大して隣接チャンネル電力漏洩レシオ(ACPR:Adjacent Channel Leakage Power Ratio)が増大する。逆に、送信動作タイムスロットから他のタイムスロットに切り換える際も、3GPP規格で定められた低下レートでRF送信信号の信号強度が減少されなければならない。この時のRF送信信号の信号強度の減少は、ランプダウンと呼ばれる。ランプダウンの低下レートが3GPP規格よりも大きい場合には、やはり不要輻射が増大して隣接チャンネル電力漏洩レシオ(ACPR)が増大する。このランプアップおよびランプダウンのためのランプ電圧が、ベースバンド信号処理LSIからのディジタルランプデータから生成される。
【0029】
図3に示すように、送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時に、RF送信信号の信号強度の増加は特性L31と特性L32の間で変化することが3GPP規格で定められている。また更に送信動作タイムスロットTx−slotの後半のランプダウン時に、RF送信信号の信号強度の減少は特性L31と特性L32の間で変化することが3GPP規格で定められている。尚、図3の横軸は、時間経過[μSec]を示し、図3の縦軸は送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]を示す。図3の特性L31と特性L32の間で3GPP規格で定められたRF送信信号の変化は、タイムマスク仕様と呼ばれている。
【0030】
図3に示す送信スロットのランプアップ動作およびランプダウン動作では、2つの制御方式が検討された。最初の制御方式は、図3の<case1>に示すように、ランプアップに際して、最初にRFパワーモジュール(PA)3がオフ状態からオン状態に切り換えられ、次にフロントエンドモジュール(FEM)4がオフ状態からオン状態に切り換えられる。またランプダウンに際して、最初にフロントエンドモジュール(FEM)4がオン状態からオフ状態に切り換えられて、次にRFパワーモジュール(PA)3がオン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0031】
図3の<case1>に示した最初の制御方式では、ランプアップ開始の直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は、−41dBm+30dB−20dB=−31dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができない。
【0032】
更に、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、ランプアップ開始の直後の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−41dBm+30dB−2dB=−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができない。
【0033】
また、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、その後のランプアップでの送信電力[dBm]はタイムマスク仕様の規格を満足できるが、ランプダウン終了の直前の10μSecの期間では送信電力[dBm]は−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができない。
【0034】
更に、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、ランプダウン終了の直後の期間で送信電力[dBm]は−31dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができない。
【0035】
次の制御方式は、図3の<case2>に示すように、ランプアップに際しては、最初にフロントエンドモジュール(FEM)4がオフ状態からオン状態に切り換えられて、次にRFパワーモジュール(PA)3がオフ状態からオン状態に切り換えられる。またランプダウンに際して、最初にRFパワーモジュール(PA)3がオン状態からオフ状態に切り換えられ、次にフロントエンドモジュール(FEM)4がオン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0036】
図3の<case2>に示した制御方式では、ランプアップ開始の直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオフ時の利得−30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は、−41dBm−30dB−20dB=−91dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができる。
【0037】
更に、図3の<case2>に示した制御方式では、ランプアップ開始の直後の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオフ時の利得−30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−41dBm−30dB−2dB=−73dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。
【0038】
また、図3の<case2>に示した制御方式では、その後のランプアップの8μSecの期間での送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、最小送信入力電力Mini_Pinの−41dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−41dBm+30dB−2dB=−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmを十分満足することができる。
【0039】
また、その後のランプダウンの8μSecの期間でも送信電力[dBm]は−13dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmを十分満足でき、ランプダウン終了の直前の10μSecの期間では送信電力[dBm]は−73dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。
【0040】
更に、図3の<case2>に示した制御方式では、ランプダウン終了の直後の期間で送信電力[dBm]は−91dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足することができる。
【0041】
以上説明したように、図3の<case1>に示した最初の制御方式では、送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時および後半のランプダウン時にタイムマスク仕様の規格を満足することができない。
【0042】
それに対して図3の<case2>に示した制御方式によれば、送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時および後半のランプダウン時にタイムマスク仕様の規格を一応満足できるが、回路定数の偏差でタイムマスク仕様の規格を違反する危険性がある。すなわち、図3の<case2>に示した制御方式では、ランプアップ時のRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31のオフからオンへのスイッチングトランジェントノイズが、オン状態のフロントエンドモジュール(FEM)4を介して送信アンテナ5に伝達される危険性が高い。また、ランプアップ時と同様にランプダウン時のRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31のオンからオフへのスイッチングトランジェントノイズも、オン状態のフロントエンドモジュール(FEM)4を介して送信アンテナ5に伝達される危険性が高い。
【0043】
その結果、図3に示すように、ランプアップ時の記号P_ruで示した部分とランプダウン時の記号P_rdで示した部分とで、<case2>の制御方式はタイムマスク仕様の規格を満足するための動作余裕が不足している。
【0044】
本発明は、以上のような本発明に先立った本発明者等の検討の結果、なされたものである。
【0045】
従って、本発明の目的とするところは、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることにある。
【0046】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0047】
本願において開示される発明のうちの代表的なものについて簡単に説明すれば下記のとおりである。
【0048】
すなわち、本発明の代表的なディジタル変調器(10)、ランプ生成器(14)、ディジタル乗算器(Mult)、D/A変換器(15)、PLL(11)、AM変調器(13)を具備するEDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機である。
【0049】
前記ディジタル変調器(10)は、送信データ(Tx_Data)に応答して、ディジタル振幅成分(R)とディジタル位相成分(θ)を生成する。前記ディジタル振幅成分(R)は前記ディジタル乗算器(Mult)に供給され、前記ディジタル位相成分(θ)は前記PLL(11)の一方の入力端子に供給され、前記PLL(11)の他方の入力端子には基準周波数信号(REF)が供給される。
【0050】
前記ランプ生成器(14)は、ランプデータ(Ramp_Data)に応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成する。前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器(Mult)が応答して、前記ディジタル乗算器(Mult)の出力信号が前記D/A変換器(15)の入力端子に供給される。
【0051】
前記D/A変換器(15)のアナログ出力信号は、前記AM変調器(13)に供給される。
【0052】
前記PLL(11)の発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器(13)に伝達され、前記AM変調器(13)の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成される(図1、図4参照)。
【0053】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロット(Tx−slot)の前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が増加する。前記送信動作タイムスロット(Tx−slot)の後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が減少する。
【0054】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値(−7dBm)よりも低い状態では、前記AM変調器(13)のゲイン(Gain_AMMOD)は低い値(Gain(Low))に制御される(図5(C)、図8、図9参照)。
【発明の効果】
【0055】
本願において開示される発明のうち代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0056】
すなわち、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】図1は、本発明に先立って本発明者等によって検討されたポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【図2】図2は、図1に示すポーラ変調器トランスミッターを構成するRFIC1とRFパワーモジュール3と、アンテナスイッチ等を内蔵するフロントエンドモジュール(FEM)4と送信アンテナ5によって、GSM/EDGEのマルチモードおよびハイ/ローのマルチバンドの送信機能を持つ携帯電話通信端末が構成される様子を示す図である。
【図3】図3は、図2に示す携帯電話通信端末のポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【図5】図5は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの各部の波形を示す図である。
【図6】図6は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の構成を示す図である。
【図7】図7は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【図8】図8は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのAM変調器13の動作を示す図である。
【図9】図9は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターで時分割多重アクセス(TDMA)に従ってタイムスロットをアイドル状態や受信動作や送信動作の各種の動作モードが設定される様子を説明するタイミングチャートの図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのEDGE方式の送信モードでの動作シーケンスを説明する図である。
【図12】図12は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【図13】図13は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【図14】図14は、本発明の実施の形態3によるマルチバンドに対応するためのポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【図15】図15は、図14に示すRFIC1にてAM変調器13の素子ペア偏差によって約4mVのDCオフセットが発生した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【図16】図16は第1AM変調器133の極性反転の前後の2回のDCオフセットキャリブレーション動作を実施することによって、入力DCオフセットを略2mV以下に低減した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【図17】図17は、本発明の実施の形態4によるマルチバンドに対応する携帯電話の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
1.実施の形態の概要
先ず、本願において開示される発明の代表的な実施の形態について概要を説明する。代表的な実施の形態についての概要説明で括弧を付して参照する図面の参照符号はそれが付された構成要素の概念に含まれるものを例示するに過ぎない。
【0059】
〔1〕本発明の代表的な実施の形態は、ディジタル変調器(10)と、ランプ生成器(14)と、ディジタル乗算器(Mult)と、D/A変換器(15)と、フェーズロックドループ(11)と、AM変調器(13)とを具備するEDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機である。
【0060】
前記ディジタル変調器(10)は、送信データ(Tx_Data)に応答して、ディジタル振幅成分(R)とディジタル位相成分(θ)とを生成する。
【0061】
前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル振幅成分(R)は前記ディジタル乗算器(Mult)の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル位相成分(θ)は前記フェーズロックドループ(11)の一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループ(11)の他方の入力端子には基準周波数信号(REF)が供給される。
【0062】
前記ランプ生成器(14)は、ランプデータ(Ramp_Data)に応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成する。
【0063】
前記ランプ生成器(14)から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器(Mult)の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器(Mult)の出力信号が前記D/A変換器(15)の入力端子に供給される。
【0064】
前記D/A変換器(15)のアナログ出力信号は、前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給可能とされている。
【0065】
前記フェーズロックドループ(11)の発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器(13)の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器(13)の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能である(図1、図4参照)。
【0066】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロット(Tx−slot)の前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が増加するものである。
【0067】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロット(Tx−slot)の後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が減少するものである。
【0068】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値(−7dBm)よりも低い状態では、前記AM変調器(13)のゲイン(Gain_AMMOD)は低い値(Gain(Low))に制御される。
【0069】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値(−7dBm)よりも高い状態では、前記AM変調器(13)の前記ゲイン(Gain_AMMOD)は前記低い値よりも大きな高い値(Gain(High))に制御される(図5(C)、図8、図9参照)。
【0070】
前記実施の形態によれば、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることが可能となる。
【0071】
好適な実施の形態は、前記ランプデータ(Ramp_Data)と基準ランプデータ(Ref_Ramp_Data)とを比較する制御ユニット(19)を更に具備する。
【0072】
前記基準ランプデータ(Ref_Ramp_Data)は前記送信電力の前記所定値に対応するものであり、前記ランプデータの値が前記基準ランプデータの値よりも大きな場合に前記制御ユニット(19)の出力信号によって前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである。
【0073】
他の好適な実施の形態では、前記ランプアップ動作に関連した所定周波数のクロック信号のパルスの第1のカウントアップの完了に応答して前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである。
【0074】
更に前記ランプダウン動作に関連した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの第2のカウントアップの完了に応答して前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである(図11参照)。
【0075】
より好適な実施の形態では、前記ランプアップ動作は、ランプアップスタート命令(Ramp_Up Start)によって制御される。
【0076】
前記ランプアップスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第1のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである。
【0077】
前記ランプダウン動作は、ランプダウンスタート命令(Ramp_Down Start)によって制御される。
【0078】
前記ランプダウンスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第2のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器(13)の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである(図11参照)。
【0079】
また別の好適な実施の形態では、前記AM変調器(13)はギルバートセルを構成する第1のトランジスタペア(M1、M2)と第2のトランジスタペア(M3、M4)と第3のトランジスタペア(M5、M6)とを含む。
【0080】
前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の両制御電極には、前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である非反転入力信号(AMMODi/p(T) )と反転入力信号(AMMODi/p(B) )とが供給される。
【0081】
前記第2のトランジスタペア(M3、M4)および前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の制御電極には、前記フェーズロックドループの前記発振出力信号に基づく前記RFキャリア信号である非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給される(図6参照)。
【0082】
具体的な実施の形態では、前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号とのDCオフセット電圧差と前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号との交流振幅成分とは、前記ランプデータの前記値の増加に比例して増加するものである。
【0083】
他の具体的な実施の形態では、前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の入力電極は、抵抗ペア(R1、R2)を介して接地電位に接続されている。
【0084】
前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の一方の出力電極と他方の出力電極は、前記第2のトランジスタペア(M3、M4)の両入力電極と前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の両入力電極とにそれぞれ接続されている。
【0085】
前記第2のトランジスタペア(M3、M4)の一方の出力電極と前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の一方の出力電極とは、前記AM変調器(13)の一方の出力端子に共通に接続されている。
【0086】
前記第2のトランジスタペア(M3、M4)の他方の出力電極と前記第3のトランジスタペア(M5、M6)の他方の出力電極とは、前記AM変調器(13)の他方の出力端子に共通に接続されている。
【0087】
より具体的な実施の形態では、前記AM変調器(13)の前記ゲインの制御は、前記抵抗ペア(R1、R2)の抵抗値の制御もしくは前記第1のトランジスタペア(M1、M2)のトランジスタグループペア(M11、M12…M1N、M21、M22…M2N)の並列接続数の制御によって実現されるものである(図6、図7、図12参照)。
【0088】
他のより具体的な実施の形態では、前記AM変調器(13)の前記ゲインの制御は、前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の前記出力電極の信号を交流接地ノード(Vdd)にパイパスする素子(M7、M8、M9、M10)を含むゲイン制御回路(132)によって制御される(図13参照)。
【0089】
別の具体的な一つの実施の形態は、前記AM変調器(13)の前記一方の出力端子と前記他方の出力端子との間の出力DCオフセット電圧を検出するDCオフセット電圧測定回路(136)を更に具備する。
【0090】
前記DCオフセット電圧測定回路は、DCオフセットキャリブレーション動作の間に、前記出力DCオフセット電圧が最小となるように、前記第1のトランジスタペア(M1、M2)の前記両制御電極に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号の間の入力DCオフセット電圧を調整可能に構成されている(図14参照)。
【0091】
最も具体的な一つの実施の形態では、前記DCオフセット電圧測定回路による前記DCオフセットキャリブレーション動作は、前記送信動作タイムスロットに先行するアイドルモードまたは前記送信動作タイムスロットの直前のタイミングにて実行可能とされたものである。
【0092】
〔2〕本発明の別の観点の代表的な実施の形態は、EDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機に使用可能であって、ディジタル変調器(10)と、ランプ生成器(14)と、ディジタル乗算器(Mult)と、D/A変換器(15)と、フェーズロックドループ(11)と、AM変調器(13)とを具備する半導体集積回路(1)である。
【0093】
前記ディジタル変調器(10)は、送信データ(Tx_Data)に応答して、ディジタル振幅成分(R)とディジタル位相成分(θ)とを生成する。
【0094】
前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル振幅成分(R)は前記ディジタル乗算器(Mult)の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器(10)から生成される前記ディジタル位相成分(θ)は前記フェーズロックドループ(11)の一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループ(11)の他方の入力端子には基準周波数信号(REF)が供給される。
【0095】
前記ランプ生成器(14)は、ランプデータ(Ramp_Data)に応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成する。
【0096】
前記ランプ生成器(14)から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器(Mult)の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器(Mult)の出力信号が前記D/A変換器(15)の入力端子に供給される。
【0097】
前記D/A変換器(15)のアナログ出力信号は、前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給可能とされている。
【0098】
前記フェーズロックドループ(11)の発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器(13)の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器(13)の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能である(図1、図4参照)。
【0099】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロット(Tx−slot)の前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が増加するものである。
【0100】
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロット(Tx−slot)の後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器(14)に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器(13)の一方の入力端子に供給される前記D/A変換器(15)の前記アナログ出力信号が減少するものである。
【0101】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値(−7dBm)よりも低い状態では、前記AM変調器(13)のゲイン(Gain_AMMOD)は低い値(Gain(Low))に制御される。
【0102】
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値(−7dBm)よりも高い状態では、前記AM変調器(13)の前記ゲイン(Gain_AMMOD)は前記低い値よりも大きな高い値(Gain(High))に制御される(図5(C)、図8、図9参照)。
【0103】
前記実施の形態によれば、EDGE方式のRF送信に際して時分割多重アクセス方式の送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とすることが可能となる。
【0104】
2.実施の形態の詳細
次に、実施の形態について更に詳述する。尚、発明を実施するための最良の形態を説明するための全図において、前記の図と同一の機能を有する部品には同一の符号を付して、その繰り返しの説明は省略する。
【0105】
[実施の形態1]
《ポーラ変調器トランスミッターの構成》
図4は、本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【0106】
図4に示すポーラ変調器トランスミッターは、図1のポーラ変調器トランスミッターと同様に、RFIC1、バラン2、RFパワーモジュール3によって構成されている。
【0107】
図4のRFIC1は、図1のRFIC1と同様に、ディジタル変調器10、フェーズロックドループ11、バッファ/分周器12、AM変調器13、ランプ生成器14、ディジタル減算器Sub、ディジタル乗算器Mult、D/A変換器15、A/D変換器16、スイッチSW1、ローパスフィルタ17、18を含んでいる。図4のRFIC1のフェーズロックドループ11は、図4には示されていないが、図1と同様に位相ディジタル変換器111、ディジタルループフィルタ112、ディジタル制御発振器113、フラクショナル分周器114、ΣΔ変調器115を含んでいる。
【0108】
図4のRFIC1は、図1のRFIC1に含まれていない制御ユニット19が追加されている。この制御ユニット19の一方の入力端子と他方の入力端子に、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1のディジタルRFインターフェースを介してランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_Dataと基準ランプデータRef_Ramp_Dataとがそれぞれ供給される。基準ランプデータRef_Ramp_Dataは、時分割多重アクセス方式の送信スロットでのランプアップ終了の直前およびランプダウン開始の直後の送信アンテナ5の入力での電力レベル(−7dBm)に対応するものである。
【0109】
ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合には、制御ユニット19から生成される低レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してAM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値に設定される。しかし、ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成される高レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してAM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値に設定される。
【0110】
《ポーラ変調器トランスミッターの各部の波形》
図5は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターの各部の波形を示す図である。
【0111】
図5(A)、図5(B)、図5(C)の各横軸は、ランプデータRamp_Dataの値を示している。また更に、図5(A)の縦軸はディジタル乗算器Multのディジタル出力信号Output_Multのアナログ表示値を示し、図5(B)の縦軸はD/A変換器15の2つのアナログ出力信号を示し、図5(C)の縦軸はAM変調器13のゲインGain_AMMODを示している。
【0112】
図5(A)に示すように、ディジタル乗算器Multのディジタル出力信号Output_Multはディジタル変調器11から生成されるディジタル振幅成分Rの直流成分R_dcと交流成分R_acとを含んでいる。ランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して、ディジタル乗算器Multのディジタル出力信号Output_Multの直流成分R_dcと交流振幅成分R_acとは増加するものとなる。
【0113】
図5(B)に示すようにD/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号は、AM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)となるものである。D/A変換器15の特徴的な動作として、2つのアナログ変換出力信号のDCオフセット差と交流振幅成分はランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して増加するものである。すなわち、D/A変換器15の一方のアナログ変換出力信号としてのAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)のDC成分はランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して上昇するのに対して、D/A変換器15の他方のアナログ変換出力信号としてのAM変調器13の反転入力信号AMMODi/p(B)のDC成分はランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して低下するものである。
【0114】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0115】
《AM変調器の構成》
図6は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の構成を示す図である。
【0116】
図6に示すように、AM変調器13はギルバートセル(Gilbert Cell)を構成する6個のNチャンネルMOSトランジスタM1〜M6を含んでいる。まずトランジスタペアM1、M2のソースは、それぞれ抵抗R1、R2を介して、接地電位に接続されている。抵抗R1、R2の抵抗値は、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntに応答して制御可能とされている。トランジスタM1のゲートとトランジスタM2のゲートには、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号である非反転入力信号AMMODi/p(T)と反転入力信号AMMODi/p(B)とがそれぞれ供給される。
【0117】
トランジスタM1のドレインはトランジスタペアM3、M4のソースに接続されている一方、トランジスタM2のドレインはトランジスタペアM5、M6のソースに接続されている。トランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは容量C1とバッファ122とを介して分周器121から非反転送信RFキャリア信号が供給される一方、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは容量C2とバッファ122とを介して分周器121から反転送信RFキャリア信号が供給される。更に、トランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは抵抗R3を介して容量C3に接続され、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは抵抗R4を介して容量C4に接続され、容量C3の両端間と容量C4の両端間とにそれぞれ略等しいバイアス電圧Vb3、Vb4が供給される。
【0118】
またトランジスタM3のドレインとトランジスタM5のドレインとはインダクターL1を介して外部電源Ext.Vddに接続される一方、トランジスタM4のドレインとトランジスタM6のドレインとはインダクターL2を介して外部電源Ext.Vddに接続される。インダクターL1の一端とインダクターL2の一端とは外部電源Ext.Vddに接続される一方、インダクターL1の他端とインダクターL2の他端とは容量C5の一端と他端とにそれぞれ接続される。容量C5の一端と他端とは容量C6の一端と容量C7の一端とにそれぞれ接続される一方、容量C6の他端と容量C7の他端とは容量C8の一端と他端にそれぞれ接続される。また、容量C8の一端と他端とはバラン2の平衡差動入力端子としての一方の入力端子と他方の入力端子とにそれぞれ接続され、バラン2の非平衡シングルエンド出力信号はRFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)に供給される。
【0119】
非反転送信RFキャリア信号の正の半サイクルの期間に、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM3を介してインダクターL1に流れ、トランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM6を介してインダクターL2に流れる。反転送信RFキャリア信号の正の半サイクルの期間に、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM4を介してインダクターL2に流れ、トランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とはトランジスタM5を介してインダクターL1に流れる。その結果、D/A変換器15のアナログ送信振幅成分は、分周器121からバッファ122を介して非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給されるAM変調器13によってRF送信信号にアップコンバートされることができる。
【0120】
尚、図6に示したギルバートセル(Gilbert Cell)で構成されたAM変調器13では、トランジスタペアM1、M2のゲートのバイアス電圧が等しく、トランジスタペアM1、M2のペア性および抵抗R1、R2のペア性が理想状態の際には、トランジスタペアM3、M4の両ドレインの差動交流信号はトランジスタペアM5、M6の両ドレインの差動交流信号によって完全にキャンセルされる。この完全なキャンセルの状態で、AM変調器13の出力パワーは理想的な最小出力パワーとなる。またトランジスタペアM1のゲートのバイアス電圧がトランジスタペアM2のゲートのバイアス電圧よりも高くなるのに応答して、トランジスタペアM3、M4の両ドレインの差動交流信号はトランジスタペアM5、M6の両ドレインの差動交流信号によりキャンセルされなくなるので、AM変調器13の出力パワーは理想的な最小出力パワーから増加する。
【0121】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは低レベルとされる。従って、低レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して抵抗R1、R2は大きな抵抗値に設定され、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは高レベルとされる。従って、高レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して抵抗R1、R2は小さな抵抗値に設定され、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0122】
図7は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【0123】
図7に示すAM変調器13が、図6に示すAM変調器13と相違するのは、最初に図6の可変抵抗R1、R2が図7では固定抵抗R1、R2に置換されている点である。次に、図6のトランジスタペアM1、M2が図7ではトランジスタグループペアM11、M12…M1N、M21、M22…M2Nに置換され、このトランジスタグループペアの並列接続数がゲイン制御信号Gain_Cntに応答して変化することである。
【0124】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは低レベルとされる。従って、低レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してトランジスタグループペアの並列接続数は小さな値に設定されて、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntは高レベルとされる。従って、高レベルのゲイン制御信号Gain_Cntに応答してトランジスタグループペアの並列接続数は大きな値に設定され、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0125】
図12は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【0126】
図12に示すAM変調器13が、図6に示すAM変調器13と相違するのは、図6の可変抵抗R1、R2が図12では複数の固定抵抗R11、R12…R1N、R21、R22…R2Nと複数のスイッチSW11、SW12…SW1N、SW21、SW22…SW2Nに置換されている点である。
【0127】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成される多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntはハイレベル“1”のビット数は少なく、ローレベル“0”のビット数は大きな状態とされる。従って、この状態の多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntはローレベル“0”のビット数は少なく、ハイレベル“1”のビット数は大きな状態とされる。従って、この状態の多ビットのゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0128】
図13は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1に含まれたAM変調器13の他の構成を示す図である。
【0129】
図13に示すAM変調器13が、図6に示すAM変調器13と相違するのは、まず図6の可変抵抗R1、R2が図13では複数の固定抵抗R1、R2に置換されている点である。次に図13に示すAM変調器13に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntによって制御されるゲイン制御回路132が追加されている点である。
【0130】
ゲイン制御回路132は、第1のトランジスタペアM7、M8、第2のトランジスタペアM9、M10、3個の容量C9、C10、C11、2個の抵抗R5、R6、バイアス電圧Vbb、スイッチ132_SWを含んでいる。
【0131】
AM変調器13のトランジスタM1のドレインはゲイン制御回路132の第1のトランジスタペアM7、M8のソースに接続されている一方、AM変調器13のトランジスタM2のドレインはゲイン制御回路132の第2のトランジスタペアM9、M10のソースに接続されている。トランジスタM7のゲートとトランジスタM10のゲートとは容量C9とバッファ122とを介して分周器121から非反転送信RFキャリア信号が供給される一方、トランジスタM8のゲートとトランジスタM9のゲートとは容量C10とバッファ122とを介して分周器121から反転送信RFキャリア信号が供給される。更にトランジスタM7のゲートとトランジスタM10のゲートとは抵抗R5を介してバイアス電圧Vbbに接続に接続され、トランジスタM8ゲートとトランジスタM9のゲートとは抵抗R6を介してバイアス電圧Vbbに接続される。また、バイアス電圧Vbbの両端間に、容量C11とスイッチ132_SWとが並列接続されている。また、バイアス電圧Vbbの電圧は、バイアス電圧Vb3、Vb4の電圧と略等しく設定されている。更に、スイッチ132_SWは、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntによって制御される。またトランジスタM7のドレインとトランジスタM9のドレインは電源電圧Vddに接続される一方、トランジスタM8のドレインとトランジスタM10のドレインも電源電圧Vddに接続される。
【0132】
図5(C)に示すようにランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合に、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntはローレベル“0”の状態とされる。従って、この状態のゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、スイッチ132_SWはオフ状態に制御され、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とは、AM変調器13のトランジスタペアM3、M4とゲイン制御回路132のトランジスタペアM7、M8にそれぞれ略等しい分流量で分流される。この時には、トランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とは、AM変調器13のトランジスタペアM5、M6とゲイン制御回路132のトランジスタペアM9、M10にそれぞれ略等しい分流量で分流される。従って、この状態のゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは低い値Gain(Low)に設定される。
【0133】
しかしランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きくなると、制御ユニット19から生成されるゲイン制御信号Gain_Cntはハイレベル“1”の状態とされる。従ってゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、スイッチ132_SWはオン状態に制御され、トランジスタM1のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分は、ゲイン制御回路132のトランジスタペアM7、M8に分流されることなく、AM変調器13のトランジスタペアM3、M4のみに流入される。またこの時にトランジスタM2のドレイン電流のDC成分と交流振幅成分とは、ゲイン制御回路132のトランジスタペアQM9、M10に分流されることなく、AM変調器13のトランジスタペアM5、M6のみ流入される。従って、この状態のゲイン制御信号Gain_Cntに応答して、AM変調器13のゲインGain_AMMODは高い値Gain(High)に設定される。
【0134】
《AM変調器13の動作》
図8は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターのAM変調器13の動作を示す図である。
【0135】
図8の横軸は、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号であるAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)と反転入力信号AMMODi/p(B)とのDCオフセット差である。上述したように、このDCオフセット差と交流振幅成分は、ランプデータRamp_Dataの値の増加に比例して増加するものである。
【0136】
図8の縦軸は、AM変調器13の出力パワーである。図8の縦軸に示したAM変調器13の出力パワーに、RFパワーモジュール3のRF電力増幅器(PA)31のオン時の利得+30dBmとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとを加算すると、送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]となる。
【0137】
図8では、AM変調器13のゲインGain_AMMODが高い値Gain(High)に設定された場合でのAM変調器13の出力パワーが特性L1で示される一方、AM変調器13のゲインGain_AMMODが低い値Gain(Low)に設定された場合でのAM変調器13の出力パワーが特性L2で示されている。また図8には、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターでのAM変調器13の実際の出力パワーが特性L3で示されている。図8で特性L1と特性L2との切り換りは、図8の横軸のDCオフセット差が略10mVの時に発生している。この略10mVのDCオフセット差は、ランプ生成器14に供給される基準ランプデータRef_Ramp_Dataに対応するものである。
【0138】
ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合には、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号のDCオフセット差と交流振幅成分とは小さな値となっている。この時のAM変調器13の実際の出力パワーが特性L3は、低ゲインGain(Low)のAM変調器13の出力パワーが特性L2によって決定される。しかし、ランプデータRamp_Dataの値が基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも大きい場合には、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号のDCオフセット差と交流振幅成分は大きな値となっている。この時のAM変調器13の実際の出力パワーが特性L3は、高ゲインGain(High)のAM変調器13の出力パワーが特性L1により決定される。
【0139】
《EDGE方式の送信モードの送信スロットの動作》
図9は、図4に示す本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターによるEDGE方式の送信モードの送信スロットにおけるランプアップ動作とランプダウン動作を説明する図である。
【0140】
図9にも、タイムマスク仕様により3GPP規格で定められた送信動作タイムスロットTx−slotの前半のランプアップ時のRF送信信号の信号強度の増加上限特性L91と増加下限特性L92とが示され、送信動作タイムスロットTx−slotの後半のランプダウン時のRF送信信号の信号強度の減少上限特性L91と減少下限特性L92とが示されている。
【0141】
図9に示したEDGE方式の送信モードの送信スロットの制御方式も、図3で説明した<case1>と同一の制御方式<case1>が採用されている。図9に示すように、ランプアップに際して、最初にRFパワーモジュール(PA)3がオフ状態からオン状態に切り換えられ、次にフロントエンドモジュール(FEM)4がオフ状態からオン状態に切り換えられる。またランプダウンに際して、最初にフロントエンドモジュール(FEM)4がオン状態からオフ状態に切り換えられて、次にRFパワーモジュール(PA)3がオン状態からオフ状態に切り換えられる。
【0142】
図4に示した本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターはEDGE方式の送信モードで図3の制御方式<case1>を採用しているので、図3に関して説明したようにランプアップ直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、タイムマスク仕様の規格−48dBmを満足する必要がある。ランプアップ直前では、RFパワーモジュール3はオンとされてオン時の利得+30dBを持ち、フロントエンドモジュール(FEM)4はオフとされてオフ時の利得−20dBを持っている。従って、図4のポーラ変調器トランスミッターのRFIC1のランプアップ直前のAM変調器13の最小出力パワーの目標値は、−48dBm−30dB+20dB=−58dBmとなる。この−58dBmの目標値のランプアップ直前のAM変調器13の最小出力パワーは、図8に示されている。図8の特性L1は−58dBmの目標値を満足できないので、ランプデータRamp_Dataが基準ランプデータRef_Ramp_Dataよりも小さい場合には、低ゲインのAM変調器13の出力パワーが特性L2によって決定されるものである。すなわち、図8の特性L1では、AM変調器13の最小出力パワーは、−53dBmまでしか低下しない。それに対して、図8の特性L2では、AM変調器13の最小出力パワーは、−65dBmまで低下することができる。
【0143】
従って、図9に示したEDGE方式の送信モードでランプアップ開始の直前の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、図8の特性L2のAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−20dB=−55dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmも満足することができる。
【0144】
更に、図9に示したEDGE方式の送信モードでランプアップ開始の直後の10μSecの期間の最初の送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、図8の特性L2に示すAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−2dB=−37dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。
【0145】
また、図9に示したEDGE方式の送信モードでは、その後のランプアップの8μSecの期間の略中間のタイミングで送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]が所定値−7dBmまで増加する。すなわち、送信電力[dBm]が所定値−7dBmまで増加したタイミングで、ランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_Dataは、所定値−7dBmに対応する基準ランプデータRef_Ramp_Dataの値よりも大きくなる。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態から特性L1の高Gain(High)の状態に切り換えられる。
【0146】
すなわち、ランプアップの8μSecの期間の略中間のタイミングの図8の特性L2(L3)から特性L1への切り換えによって、AM変調器13の出力パワーは略−47dBmから−35dBmに変化する。この時の送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、AM変調器13の出力パワーの−35dBmと、RFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBと、フロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−35dBm+30dB−2dB=−7dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−1dBmも満足することができる。その後のランプアップ動作での送信電力[dBm]でも、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。
【0147】
また、送信動作タイムスロットTx−slotの後半のランプダウン開始の直後の10μSecの期間でも送信電力[dBm]は、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。また、その後のランプダウンの8μSecの期間の略中間のタイミングにて、送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]が所定値−7dBm以下に減少する。すなわち、送信電力[dBm]が所定値−7dBm以下に減少したタイミングで、ランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_Dataは、所定値−7dBmに対応する基準ランプデータRef_Ramp_Dataの値よりも小さくなる。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L1の高Gain(High)の状態から特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態に切り換えられる。従って、ランプダウン終了の直前の送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、図8の特性L2のAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−2dB=−37dBmとなって、タイムマスク仕様の規格−20dBmも満足することができる。更に、ランプダウン終了の直後の送信アンテナ5の入力での送信電力[dBm]は、図8の特性L2のAM変調器13の最小出力パワーの−65dBmとRFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBとフロントエンドモジュール(FEM)4のオフ時の利得−20dBとの合計となる。この合計は−65dBm+30dB−20dB=−55dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−48dBmも満足することができる。
【0148】
尚、図9の特性L93は、上述した図4の本発明の実施の形態1によるポーラ変調器トランスミッターがEDGE方式の送信モードで制御方式<case1>を採用することで、ランプアップおよびランプダウンで上限特性L91と下限特性L92とによって決定されるタイムマスク仕様の規格を満足できることを示すものである。
【0149】
[実施の形態2]
《ポーラ変調器トランスミッターの他の構成》
本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターの他の構成を、図4を使用して説明する。
【0150】
本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターにおいては、AM変調器13のゲインを制御するゲイン制御信号Gain_Cntを生成する制御ユニット19には、RFIC1の各種の動作モードを設定するための動作コマンドが供給される。
【0151】
《各種の動作モード》
図10は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターで時分割多重アクセス(TDMA)に従ってタイムスロットをアイドル状態や受信動作や送信動作の各種の動作モードが設定される様子を説明するタイミングチャートの図である。
【0152】
《電源投入直後のアイドルモード》
本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのRFIC1が搭載された携帯電話通信端末の電源が投入されると、例えばWord4と呼ばれるコマンドがディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1の内部の各種の制御レジスタがリセット状態とされて、RFIC1はコマンドを待つスリープ状態であるアイドルモードの動作モードに設定される。
【0153】
《ウォームアップモード》
次に例えばWord1と呼ばれるウォームアップコマンドが、ディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1のオールディジタルフェーズロックループ(ADPLL)11が起動され、ADPLL11内部のディジタル制御発振器113の発振動作が開始される。このウォームアップコマンドWord1には、次の動作モードの受信または送信を指示するビットも含まれ、ディジタル制御発振器113が複数の周波数バンドで動作する場合には、使用する周波数バンドが選択されることによって、ADPLL11はロック状態に遷移する。
【0154】
《受信モード》
その後、例えばWord2と呼ばれる受信コマンドが、ディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1は受信モードに設定され、RFIC1のRF受信回路システムはRF受信信号の増幅と復調の信号処理を行って、受信ベースバンド信号がRFIC1からディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIに供給される。受信が終了すると、Word1と呼ばれるウォームアップコマンドがディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。従って、RFIC1は、ウォームアップモードに遷移する。
【0155】
《送信モード》
その後、例えばWord3と呼ばれる送信コマンドが、ディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。すると、RFIC1は送信モードに設定され、RFIC1のRF送信回路システムは変調とRF送信信号の増幅を行い、RF送信信号がRFIC1からRFパワーモジュール3内のRF電力増幅器(PA)に供給される。送信が終了すると、Word1と呼ばれるウォームアップコマンドがディジタルRFインターフェースを介してベースバンド信号処理LSIから制御ユニット19に供給される。
【0156】
《EDGE送信モードの送信動作》
図11は、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのEDGE方式の送信モードでの動作シーケンスを説明する図である。尚、図11に示すEDGE方式の送信モードの動作シーケンスは、図10に示したタイムチャートでWord3と呼ばれる送信コマンドに応答して開始される送信モードの詳細を示すものである。
【0157】
《送信データアップロード命令》
図11の時刻T1で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介しRFIC1へ送信データアップロード命令Tx_data Up_Loadが転送され、ディジタルベースバンド送信信号の送信データTx_Dataも転送される。この送信データTx_Dataは168シンボルの有効データであり、RFIC1のディジタルRFインターフェースの内蔵RAMやデータレジスタ等の内部メモリに保持される。
【0158】
GSMのデータ通信では、送受信ベースバンド信号の1シンボルは4ビットで構成される。1シンボルの最後の4ビット目が“1”であれば、EDGE送信データであり、最初の3ビットはAM変調による振幅を示している。また1シンボルの最後の4ビット目が“0”であれば、位相変調のみを使用するGMSK送信データであり、最初の3ビットは例えば“111(オール“1”)”の一定振幅である。GSMのデータ通信では、1シンボルの4ビットの1ビットはクォータービット(quarter bit)と呼ばれる。また、26MHzのシステムクロック周波数を使用している場合は、1クォータービット(1Qb)は923.08ナノ秒の時間を示している。
【0159】
《送信モードオン命令》
図11の時刻T2では、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介して送信モードオン命令Tx_Mode ONが、RFIC1へ転送される。すると、本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターの動作が開始される。また、RFパワーモジュール3内部のRF電力増幅器(PA)に電源電圧やバイアス電圧の投入を開始するためのRF電力増幅器活性化信号PA_ONが、ローレベルからハイレベルに変化する。
【0160】
《送信データ内部転送命令》
図11の時刻T3で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介して送信データ内部転送命令Tx_Data ONが、RFIC1へ転送される。時刻T3から所定の遅延時間が経過すると、RFIC1の内蔵RAMやデータレジスタ等の内部メモリに保持された送信データTx_Dataの168シンボルの有効データの読み出しが開始される。
【0161】
《ランプアップスタート命令》
図11の時刻T4にて、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介してランプアップスタート命令Ramp_Up Startが、RFIC1へ転送される。すると、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1の内蔵RAMやデータレジスタの内部メモリへのランプアップのためのディジタルランプデータRamp_Up Dataのロードが開始される。従って、ロードされたディジタルランプデータRamp_Up Dataのディジタル値の増加に応答して、図4の本発明の実施の形態2によるポーラ変調器トランスミッターのランプ生成器14の入力端子に供給されるランプデータRamp_Dataのディジタル値が決定される。
【0162】
またランプ生成器14の出力端子のランプ制御ディジタル信号は、ディジタル減算器Subとディジタル乗算器Multを介してD/A変換器15の入力端子に供給される。従って、AM変調器13の一方の入力端子に供給されるD/A変換器15のアナログ出力信号Output_DACは、ディジタルランプデータRamp_Up Dataのディジタル値の増加に応答して増加する。
【0163】
またランプアップスタート命令Ramp_Up Startに応答して、フロントエンドモジュール(FEM)4の動作を開始するフロントエンドモジュール活性化信号FEM_ONがローレベルからハイレベルに変化する。
【0164】
一方、制御ユニット19は、図11の時刻T4のタイミングで供給されるランプアップスタート命令Ramp_Up Startに応答して周波数26MHzのシステムクロックパルスのカウントを開始するものである。制御ユニット19は13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(13×0.923μSec=11.999μSec≒12μSec)の経過後に、AM変調器13の他方の入力端子に供給されるゲイン制御信号Gain_Cntをローレベルからハイレベルに切り換える。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態から特性L1の高Gain(High)の状態に切り換えられる。また13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)は、図9に示すランプアップ開始の直後の10μSecの期間とその後のランプアップの8μSecの期間の略1/4の期間2μSecの期間との合計12μSecに対応しており、AM変調器13の特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態から特性L1の高Gain(High)の状態へのゲイン切り換えは、ランプアップ開始タイミングT4から10〜18μSecの期間内に行うことを意味するものである。
【0165】
その結果、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)のタイミングの図8の特性L2(L3)から特性L1への切り換えによって、AM変調器13の出力パワーは略−47dBmから−35dBmに変化する。図9に示すランプアップ動作と同様に、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)の直後のタイミングの送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、AM変調器13の出力パワーの−35dBmと、RFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBと、フロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−35dBm+30dB−2dB=−7dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmも満足することができる。その後のランプアップ動作での送信電力[dBm]でも、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。
【0166】
《ランプアップ完了後の送信データの送信》
図11の時刻T5のランプアップ完了から時刻T6のランプダウンスタートの間で、合計148シンボルの転送データの送信が行われる。この合計148シンボルの転送データは、ディジタル変調器10に供給されるEDGE方式の送信データTx_Dataに対応したものである。
【0167】
《ランプダウンスタート命令》
図11の時刻T6で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介してランプダウンスタート命令Ramp_Down Startが、RFIC1へ転送される。すると、ベースバンド信号処理LSIからRFIC1の内蔵RAMやデータレジスタの内部メモリへのランプダウンのためのディジタルランプデータRamp_Down Dataのロードが開始される。その結果、時刻T4から時刻T5の間のRFIC1の内部動作シーケンスと同様な内部動作シーケンスが、時刻T6から時刻T7の間に実行される。従って、ランプダウンのためのディジタルランプデータRamp_Down Dataのディジタル値の減少に応答して、AM変調器13の一方の入力端子に供給されるD/A変換器15のアナログ出力信号Output_DACは、減少する。
【0168】
一方、制御ユニット19は、図11の時刻T6のタイミングで供給されるランプダウンスタート命令Ramp_Down Startに応答して周波数26MHzのシステムクロックパルスのカウントを開始するものである。制御ユニット19は図11の時刻T7の送信モードオフTx_Mode OFFのタイミングよりも13クォータービット(13Qb)のカウントアップ時間(≒12μSec)先行するタイミングで、AM変調器13の他方の入力端子に供給されるゲイン制御信号Gain_Cntをハイレベルからローレベルに切り換える。従って、図8に示すようにAM変調器13のゲインGain_AMMODは、特性L1の高Gain(High)の状態から特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態に切り換えられる。また13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)は、図9に示したランプダウン終了の直前の10μSecの期間とその後のランプダウンの8μSecの期間の略1/4の期間2μSecの期間との合計12μSecに対応しており、AM変調器13の特性L1の高Gain(High)の状態から特性L2(L3)の低Gain(Low)の状態へのゲイン切り換えはランプダウン開始タイミングT6から10〜18μSecの期間内に行うことを意味するものである。
【0169】
その結果、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)のタイミングの図8の特性L1から特性L2(L3)への切り換えによって、AM変調器13の出力パワーは略−35dBmから−47dBmに変化する。図9に示すランプダウン動作と同様に、13クォータービット(13Qb)に対応するカウントアップ時間(≒12μSec)の直前のタイミングの送信アンテナ5の入力の送信電力[dBm]は、AM変調器13の出力パワーの−35dBmと、RFパワーモジュール3のオン時の利得+30dBと、フロントエンドモジュール(FEM)4のオン時の利得−2dBとの合計となる。この合計は−35dBm+30dB−2dB=−7dBmとなり、タイムマスク仕様の規格−1dBmも満足することができる。その後のランプダウン動作での送信電力[dBm]でも、タイムマスク仕様の規格を満足することができる。
【0170】
またランプダウンスタート命令Ramp_Down Startに応答して、フロントエンドモジュール(FEM)4の動作を所定の遅延時間の経過後に停止するためフロントエンドモジュール活性化信号FEM_ONがハイレベルからにローレベル変化する。
【0171】
《送信モードオフ命令》
図11の時刻T7で、ベースバンド信号処理LSIからディジタルRFインターフェースを介して送信モードオフ命令Tx_Mode OFFが、RFIC1へ転送される。すると、RFパワーモジュール3内部のRF電力増幅器(PA)に電源電圧やバイアス電圧の供給を停止するためのRF電力増幅器活性化信号PA_ONが、ハイレベルからローレベルに変化する。
【0172】
[実施の形態3]
《マルチバンドに対応するポーラ変調器トランスミッターの構成》
図14は、本発明の実施の形態3によるマルチバンドに対応するためのポーラ変調器トランスミッターの構成を示す図である。
【0173】
図14に示すポーラ変調器トランスミッターは、図4のポーラ変調器トランスミッターと同様に、RFIC1、バラン2、RFパワーモジュール3によって構成されている。
【0174】
図14のRFIC1では、図示されていないが図1のRFIC4と同様に、ディジタル変調器10とフェーズロックドループ11とランプ生成器14とディジタル減算器Subとディジタル乗算器MultとD/A変換器15とA/D変換器16とスイッチSW1とローパスフィルタ17、18とが含まれている。また図14のRFIC1のフェーズロックドループ11は、図示されていないが、図1と同様に位相ディジタル変換器111とディジタルループフィルタ112とディジタル制御発振器113とフラクショナル分周器114とΣΔ変調器115とを含んでいる。
【0175】
特に、図14のRFIC1に内蔵されるAM変調器13は、略1GHzのローバンド(GSM850、GSM900)に対応するための第1AM変調器133と略2GHzのハイバンド(DCS1800、PCS1900)に対応するための第2AM変調器134とを含んでいる。
【0176】
略1GHzのローバンドに対応するための第1AM変調器133は、図7に示したAM変調器13と同様にトランジスタグループペアM11、M12…M1N、M21、M22…M2Nの並列接続数がゲイン制御信号Gain_Cntに応答して変化する方式とされている。
【0177】
第1AM変調器133のトランジスタM11、M12…M1NのゲートとトランジスタM22…M2Nのゲートには、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号である非反転入力信号AMMODi/p(T)と反転入力信号AMMODi/p(B)とがそれぞれ供給される。第1AM変調器133のトランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは容量C1とバッファ122とを介して分周器121から非反転送信RFキャリア信号が供給される一方、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは容量C2とバッファ122とを介して分周器121から反転送信RFキャリア信号が供給される。更に、トランジスタM3のゲートとトランジスタM6のゲートとは抵抗R3を介して容量C3に接続され、トランジスタM4のゲートとトランジスタM5のゲートとは抵抗R4を介して容量C4に接続され、容量C3の両端間と容量C4の両端間とにそれぞれ略等しいバイアス電圧Vb3、Vb4が供給される。また、略2GHzのハイバンドに対応するための第2AM変調器134も、第1AM変調器133と同様に構成されることができる。
【0178】
AM変調器13は、第1AM変調器133の差動出力端子と第2AM変調器134の差動出力端子に接続されたDCオフセット電圧測定回路136とDCオフセット電圧測定コントローラ135とを含んでいる。DCオフセット電圧測定回路136は、第1と第2のスイッチペアsw1、sw2と、差動増幅器AMPと、電圧比較器CMPを含んでいる。差動増幅器AMPの差動入力端子は、第1のスイッチペアsw1を介して第1AM変調器133の差動出力端子と接続され、第2のスイッチペアsw2を介して第2AM変調器134の差動出力端子に接続されている。差動増幅器AMPの差動出力信号は電圧比較器CMPの差動入力端子に供給され、電圧比較器CMPの出力信号Amdccal_outはレジスタ21に格納される。
【0179】
AM変調器13のDCオフセット電圧測定回路136の差動増幅器AMPと電圧比較器CMPを制御するDCオフセット電圧測定コントローラ135に、制御レジスタ22から各種の制御信号が供給される。この各種の制御信号は、キャリブレーションオン信号Amdccal_on、極性信号Calo_pol等を含んでいる。また、D/A変換器15に内蔵されたクロック生成器clockから生成されるキャリブレーションクロックAmdccal_clkが電圧比較器CMPに供給される。更に、制御レジスタ22から極性変更信号Polarity changeが、AM変調器13でバイアス電圧Vb3、Vb4を生成するバイアス電圧生成器に供給される。レジスタ21、22は、バス24を介して他の制御レジスタ23に接続されている。他の制御レジスタ23から生成されるバッファ遮断信号Buffer_offが、バッファ122に供給される。また他の制御レジスタ23から生成される8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlがD/A変換器15に内蔵された可変電圧源に供給される。
【0180】
《AM変調器13のDCオフセットキャリブレーション》
本発明の上述した種々の実施の形態では、送信スロットのランプアップ終了の直前やランプダウンの開始の直後にAM変調器13のゲインGain_AMMODを切り換えることによって送信スロットでのタイムマスク仕様の規格を満足する際の動作余裕の確保を容易とするものである。
【0181】
しかしながら、このようにAM変調器13のゲインGain_AMMODの切り換えを行ったとしても、AM変調器13を構成する素子(特に、トランジスタ差動対ペア(M11、M21)、(M12、M22)、(M1N、M2N)、抵抗ペアR1、R2等)のペア偏差によって入力DCオフセットが発生した場合には、AM変調器13の最小出力パワーが制限されてしまうと言う問題が本発明者等の検討によって明らかとされた。
【0182】
図15は、図14に示すRFIC1にてAM変調器13の素子ペア偏差によって約4mVの入力DCオフセットが発生した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【0183】
図14に示すRFIC1で、ランプ生成器14に供給されるランプデータRamp_dataの値の低下に応答して、D/A変換器15からの2つのアナログ変換出力信号Output_DACのDCオフセット電圧差が減少する。しかし、図15に示すように、AM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)のDCオフセット電圧差が約4mVの入力DCオフセット電圧差以下に減少しても、AM変調器13の出力パワーが減少することができない。
【0184】
図14に示すAM変調器13でも、トランジスタペアM11、M12…M1N、M2、M22…M2Nのゲートのバイアス電圧が等しい際には、トランジスタペアM3、M4の両ドレインの差動交流信号はトランジスタペアM5、M6の両ドレインの差動交流信号により完全にキャンセルされる。この完全なキャンセルの状態で、AM変調器13の出力パワーは理想的な最小出力パワーとなる。しかし、AM変調器13の約4mVの入力DCオフセット電圧差によって、完全なキャンセルの状態での最小出力パワーを得ることができない。その結果、図15に示すようにAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)のDCオフセット電圧差が約4mVの入力DCオフセット電圧差以下に減少しても、AM変調器13の出力パワーが減少できず、AM変調器13の最小出力パワーの目標値−58dBmを満足することができない。
【0185】
そこで、図14に示した本発明の実施の形態3によるRFIC1ではAM変調器13の最小出力パワーを更に低下させるために、送信動作のタイムスロットに先行して、例えば電源投入直後のアイドルモードにてDCオフセットキャリブレーション動作が実行されるものであり、電源電圧や温度依存性等も考慮して送信動作のタイムスロット直前のタイミングで毎回DCオフセットキャリブレーションを実行することも可能である。
【0186】
このDCオフセットキャリブレーション動作では、他の制御レジスタ23からD/A変換器15に内蔵の可変電圧源に供給される8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlが、更新される。D/A変換器15に内蔵の可変電圧源は、8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlに応答して、−127mVから+127mVの可変電圧を生成する。従って、D/A変換器15の2つのアナログ変換出力信号の出力DCオフセット電圧差が変化され、AM変調器13の第1AM変調器133の差動出力端子のDCオフセット電圧がDCオフセット電圧測定回路136の差動増幅器AMPと電圧比較器CMPとによって測定される。測定されるAM変調器13の第1AM変調器133の差動出力端子のDCオフセット電圧が最小となるように、8ビットのDCオフセット制御信号DC−offset controlによってD/A変換器15に内蔵の可変電圧源の可変電圧レベルが設定される。
【0187】
具体的な実施の形態では、DCオフセットキャリブレーション動作は、第1AM変調器133のトランジスタペアM3、M4とトランジスタペアM5、M6とのゲートのバイアス電圧Vb3、Vb4の極性(電圧大小関係)が反転される。この極性反転は、制御レジスタ22からAM変調器13のバイアス電圧Vb3、Vb4を生成するバイアス電圧生成器に供給される極性変更信号Polarity changeのレベル反転によって可能となる。従って、極性反転の前後で2回のDCオフセットキャリブレーション動作が実施され、2回のDCオフセットキャリブレーション動作の校正結果であるD/A変換器15の可変電圧源の可変電圧レベルが平均化される。従って、AM変調器13のDCオフセット電圧測定回路136の差動増幅器AMPと電圧比較器CMPの回路定数の偏差による影響が軽減されることができる。
【0188】
尚、2回のDCオフセットキャリブレーション動作の間では、制御レジスタ23から生成されるバッファ遮断信号Buffer_offがバッファ122に供給されることによって、バッファ122は遮断状態に制御される。従って、2回のDCオフセットキャリブレーション動作の間にて、分周器121からの非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とがトランジスタペアM3、M4、M5、M6のゲートに伝達されることが禁止される。
【0189】
以上のDCオフセットキャリブレーション動作によって、略1GHzのローバンド(GSM850、GSM900)に対応するためのAM変調器13の第1AM変調器133のDCオフセットキャリブレーションが完了する。次に、略2GHzのハイバンド(DCS1800、PCS1900)に対応するためのAM変調器13の第2AM変調器134のDCオフセットキャリブレーションを、上述の第1AM変調器133のためのDCオフセットキャリブレーション動作と同様に実行することができる。例えば、D/A変換器15内部に第2AM変調器134のための第2の可変電圧源を配置して、この第2の可変電圧源の可変電圧レベルを2回のDCオフセットキャリブレーション動作による平均化で設定することができる。また、第2AM変調器134のDCオフセットキャリブレーションは、送信動作のタイムスロットに先行して、例えば電源投入直後のアイドルモードにて実行できるものであり、電源電圧や温度依存性等も考慮して送信動作のタイムスロット直前のタイミングで毎回DCオフセットキャリブレーションを実行することも可能である。
【0190】
図16は、上述の第1AM変調器133の極性反転の前後の2回のDCオフセットキャリブレーション動作を実施することによって、入力DCオフセットを略2mV以下に低減した場合のAM変調器13の動作を示す図である。
【0191】
極性反転の前後の2回のDCオフセットキャリブレーション動作の結果、図16に示すようにAM変調器13の非反転入力信号AMMODi/p(T)、反転入力信号AMMODi/p(B)のDCオフセット電圧差が約2mVの入力DCオフセット電圧差まで減少することができ、AM変調器13の出力パワーが減少することができて、AM変調器13の最小出力パワーの目標値−58dBmを満足することができる。
【0192】
[実施の形態4]
《携帯電話の構成》
図17は、本発明の実施の形態4によるマルチバンドに対応する携帯電話の構成を示すブロック図である。
【0193】
図17に示すマルチバンドに対応する携帯電話は、上記で説明した本発明の実施の形態1から実施の形態3のいずれかによるEDGE送信のためのポーラ変調器トランスミッターを含むRFIC1、ベースバンド信号処理LSI6、RFパワーモジュール(PM)3、アナログフロントエンドモジュール(FEM)4、アンテナ(ANT)5を含むものである。
【0194】
図17では、携帯電話の送受信用アンテナ(ANT)5にはアナログフロントエンドモジュール(FEM)4の共通の入出力端子が接続されている。またRFIC1からアナログフロントエンドモジュール(FEM)4へ、フロントエンドモジュール活性化信号FEM_ONが供給される。送受信用アンテナ(ANT)5からアナログフロントエンドモジュール(FEM)4の共通の入出力端子へのRF信号の流れは携帯電話の受信動作RXとなり、共通の入出力端子から送受信用アンテナ(ANT)5へのRF信号の流れは携帯電話の送信動作TXとなる。
【0195】
RFIC1はベースバンド信号処理LSI6からの送信ベースバンド信号をRF送信信号に周波数アップコンバージョンを行い、逆に、送受信用アンテナ(ANT)5で受信されたRF受信信号を受信ベースバンド信号に周波数ダウンコンバージョンを行いベースバンド信号処理LSI6に供給する。
【0196】
GMSK通信とEDGE通信のためにアナログフロントエンドモジュール(FEM)4内部のアンテナスイッチは共通の入出力端子と送信端子Tx1、Tx2、受信端子Rx1、Rx2、Rx3、Rx4のいずれかの端子との間で信号経路を確立して、受信動作RXと送信動作TXのいずれかを行う。RF信号の受送信動作のためのスイッチはHEMT(高電子移動度トランジスタ)で構成され、アンテナスイッチはGaAs等の化合物半導体を使用したマイクロウェーブモノリシック集積回路(MMIC)で構成されている。このアンテナスイッチMMICは受信動作RXと送信動作TXとのいずれかのために確立した信号経路以外の信号経路のインピーダンスを極めて高い値に設定することで、必要なアイソレーションが得られるものである。アンテナスイッチの分野では、共通の入出力端子はシングルポール(Single Pole)と呼ばれ、送信端子Tx1、Tx2と、受信端子Rx1、Rx2、Rx3、Rx4の合計6個の端子は6スロー(6 throw)と呼ばれる。従って、このアンテナスイッチのMMICは、シングルポール6スロー(SP6T;Single Pole 6 throw)型のスイッチである。
【0197】
一方、WCDMA通信の符号分割多重アクセス(CDMA:Code-Division Multiple Access)のためにアナログフロントエンドモジュール(FEM)4内部のテュプレクサーは、共通の入出力端子と送信端子Tx3との間の送信動作TXと共通の入出力端子と受信端子Rx5との間の受信動作RXとの並列信号経路を確立するものである。
【0198】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx5からは2110〜2170MHzのWCDMAのBandIのRF受信入力信号もしくは1930〜1990MHzのWCDMAのBandIIのRF受信入力信号が出力され、RFIC1のWCDMA受信ユニット141に供給される。
【0199】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx4から1930〜1990MHzのPCS1900のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。尚、PCSは、Personal Communication Systemの略である。
【0200】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx3から1805〜1880MHzのDCS1800のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。尚、DCSは、Digital Cellular Systemの略である。
【0201】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx2からは925〜960MHzのGSM900のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。
【0202】
アナログフロントエンドモジュール(FEM)4の受信端子Rx1からは869〜894MHzのGSM850のRF受信入力信号が出力され、RFIC1のGSM/EDGE受信ユニット142に供給される。
【0203】
WCDMA受信ユニット111もしくはGSM/EDGE受信ユニット142により生成される受信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145を介してA/D変換・D/A変換ユニット146のA/D変換器に供給される。従って、A/D変換・D/A変換ユニット116のA/D変換器からは低電圧差動信号インターフェース(LVDS/IF)の受信ディジタルベースバンド信号が生成され、ベースバンド信号処理LSI6のディジタルRFインターフェースDig RFに供給される。尚、LVDSは、Low Voltage Differential Signalingの略である。
【0204】
RFIC1とベースバンド信号処理LSI6との間のディジタルRFインターフェースDig RFでは、システムクロック信号Sysclkやシステムクロックイネーブル信号Sysclkenと言ったDigRF仕様に準拠した信号が含まれている。
【0205】
ベースバンド信号処理LSI6からの低圧差動信号インターフェース(LVDS/IF)の送信ディジタルベースバンド信号がA/D変換・D/A変換ユニット146のD/A変換器に供給される。従って、A/D変換・D/A変換ユニット146のD/A変換器の出力の送信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145に供給される。また、GSM方式もしくはEDGE方式の送信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145からGSM/EDGE送信ユニット143に供給される。このGSM/EDGE送信ユニット143は、上記で説明した本発明の実施の形態1から実施の形態3のいずれかによるEDGE送信のためのポーラ変調器トランスミッターを含むものである。
【0206】
GSM/EDGE送信ユニット143から生成される824〜849MHzのGSM850のRF送信出力信号もしくは880〜915MHzのGSM900のRF送信出力信号は、送信端子Tx1とRFパワーモジュール(PM)3の第1RF電力増幅器PA1とアナログフロントエンドモジュール(FEM)4と送受信用アンテナ(ANT)5とを介して基地局に送信される。
【0207】
GSM/EDGE送信ユニット143から生成される1710〜1785MHzのDCS1800のRF送信出力信号と1850〜1910MHzのPCS1900のRF送信出力信号は、送信端子Tx2とRFパワーモジュール(PM)3の第2RF電力増幅器PA2とアナログフロントエンドモジュール(FEM)4と送受信用アンテナ(ANT)5とを介して基地局に送信される。
【0208】
また、WCDMA方式の送信アナログベースバンド信号は、アナログフロントエンドユニット(AFE)145からWCDMA送信ユニット114に供給される。1920〜1980MHzのWCDMAのBandIのRF送信信号もしくは1850〜1910MHzのWCDMAのBandIIのRF送信信号は、送信端子Tx2とRFパワーモジュール(PM)3の第3RF電力増幅器PA3とアナログフロントエンドモジュール(FEM)4と送受信用アンテナ(ANT)5とを介して基地局に送信される。
【0209】
また、RFIC1からRFパワーモジュール(PM)3へ、自動パワー制御電圧VapcとRF電力増幅器活性化信号PA_ONと周波数バンド選択信号Band_selとが供給されている。
【0210】
以上、本発明者によってなされた発明を種々の実施の形態に基づいて具体的に説明したが、本発明はそれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能であることは言うまでもない。
【0211】
[他の実施の形態]
例えば、図4のRFIC1において、フェーズロックドループ11は、オールディジタルフェーズロックドループに限定されるものではない。すなわち、フェーズロックドループ11にて、位相ディジタル変換器111は位相比較器に置換されることができ、ディジタルループフィルター112はアナログループフィルターに置換されることができ、ディジタル制御発振器113は電圧制御発振器(VCO)に置換されることができる。
【0212】
また、図6でAM変調器13のギルバートセルのトランジスタM1〜M6はNチャンネルMOSトランジスタに限定されるものではなく、NPNバイポーラトランジスタに置換されることも可能である。
【0213】
更に、図17において、RFIC1とベースバンド信号処理LSI6との間のインターフェースはディジタルRFインターフェースに限定されるものではなく、両者の間でアナログ受信ベースバンド信号とアナログ送信ベースバンド信号とが伝達されるアナログインターフェースを採用することも可能である。
【0214】
また、例えば図6においてRFIC出力は差動形式で外付けインダクターL1、L2とバラン2とを使用してシングルエンド形式のRF送信信号に変換しているが、インダクターやバランをRFIC1に内蔵してRFIC1からシングルエンド形式のRF送信信号を出力することも可能である。
【符号の説明】
【0215】
1…RF信号処理半導体集積回路(RFIC)
2…バラン
3…RFパワーモジュール
31…RF電力増幅器(PA)
32…RF電力検出器(DET)
4…フロントエンドモジュール(FEM)
5…送信アンテナ
6…ベースバンド信号処理LSI
10…ディジタル変調器
11…オールディジタルフェーズロックドループ(ADPLL)
12…バッファ/分周器
13…AM変調器
14…ランプ生成器
Sub…ディジタル減算器
Mult…ディジタル乗算器
15…D/A変換器
16…A/D変換器
SW1…スイッチ
17、18…ローパスフィルタ
19…制御ユニット
111…位相ディジタル変換器
112…ディジタルループフィルタ
113…ディジタル制御発振器
114…フラクショナル分周器
115…ΣΔ変調器
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル変調器と、ランプ生成器と、ディジタル乗算器と、D/A変換器と、フェーズロックドループと、AM変調器とを具備するEDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機であって、
前記ディジタル変調器は、送信データに応答して、ディジタル振幅成分とディジタル位相成分とを生成して、
前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル振幅成分は前記ディジタル乗算器の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル位相成分は前記フェーズロックドループの一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループの他方の入力端子には基準周波数信号が供給され、
前記ランプ生成器は、ランプデータに応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成して、
前記ランプ生成器から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器の出力信号が前記D/A変換器の入力端子に供給され、
前記D/A変換器のアナログ出力信号は、前記AM変調器の一方の入力端子に供給可能とされており、
前記フェーズロックドループの発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能であり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロットの前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が増加するものであり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロットの後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が減少するものであり、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値よりも低い状態では、前記AM変調器のゲインは低い値に制御され、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値よりも高い状態では、前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値よりも大きな高い値に制御される送信機。
【請求項2】
前記ランプデータと基準ランプデータとを比較する制御ユニットを更に具備して、
前記基準ランプデータは前記送信電力の前記所定値に対応するものであり、前記ランプデータの値が前記基準ランプデータの値よりも大きな場合に前記制御ユニットの出力信号によって前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記ランプアップ動作に関連した所定周波数のクロック信号のパルスの第1のカウントアップの完了に応答して前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
更に前記ランプダウン動作に関連した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの第2のカウントアップの完了に応答して前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項1に記載の送信機。
【請求項4】
前記ランプアップ動作は、ランプアップスタート命令によって制御され、
前記ランプアップスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第1のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
前記ランプダウン動作は、ランプダウンスタート命令によって制御され、
前記ランプダウンスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第2のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項3に記載の送信機。
【請求項5】
前記AM変調器は、ギルバートセルを構成する第1のトランジスタペアと第2のトランジスタペアと第3のトランジスタペアとを含み、
前記第1のトランジスタペアの両制御電極には、前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である非反転入力信号と反転入力信号とが供給され、
前記第2のトランジスタペアおよび前記第3のトランジスタペアの制御電極には、前記フェーズロックドループの前記発振出力信号に基づく前記RFキャリア信号である非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給される請求項1に記載の送信機。
【請求項6】
前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号とのDCオフセット電圧差と前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号との交流振幅成分とは、前記ランプデータの前記値の増加に比例して増加するものである請求項5に記載の送信機。
【請求項7】
前記第1のトランジスタペアの入力電極は、抵抗ペアを介して接地電位に接続され、
前記第1のトランジスタペアの一方の出力電極と他方の出力電極は、前記第2のトランジスタペアの両入力電極と前記第3のトランジスタペアの両入力電極とにそれぞれ接続され、
前記第2のトランジスタペアの一方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの一方の出力電極とは、前記AM変調器の一方の出力端子に共通に接続され、
前記第2のトランジスタペアの他方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの他方の出力電極とは、前記AM変調器の他方の出力端子に共通に接続されている請求項6に記載の送信機。
【請求項8】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記抵抗ペアの抵抗値の制御もしくは前記第1のトランジスタペアのトランジスタグループペアの並列接続数の制御によって実現されるものである請求項7に記載の送信機。
【請求項9】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記第1のトランジスタペアの前記出力電極の信号を交流接地ノードにパイパスする素子を含むゲイン制御回路によって制御されるものである請求項7に記載の送信機。
【請求項10】
前記AM変調器の前記一方の出力端子と前記他方の出力端子との間の出力DCオフセット電圧を検出するDCオフセット電圧測定回路を更に具備して、
前記DCオフセット電圧測定回路は、DCオフセットキャリブレーション動作の間に、前記出力DCオフセット電圧が最小となるように、前記第1のトランジスタペアの前記両制御電極に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号の間の入力DCオフセット電圧を調整可能に構成されている請求項7に記載の送信機。
【請求項11】
前記DCオフセット電圧測定回路による前記DCオフセットキャリブレーション動作は、前記送信動作タイムスロットに先行するアイドルモードまたは前記送信動作タイムスロットの直前のタイミングにて実行可能とされたものである請求項10に記載の送信機。
【請求項12】
EDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機に使用可能であって、ディジタル変調器と、ランプ生成器と、ディジタル乗算器と、D/A変換器と、フェーズロックドループと、AM変調器とを具備する半導体集積回路であって、
前記ディジタル変調器は、送信データに応答して、ディジタル振幅成分とディジタル位相成分とを生成して、
前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル振幅成分は前記ディジタル乗算器の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル位相成分は前記フェーズロックドループの一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループの他方の入力端子には基準周波数信号が供給され、
前記ランプ生成器は、ランプデータに応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成して、
前記ランプ生成器から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器の出力信号が前記D/A変換器の入力端子に供給され、
前記D/A変換器のアナログ出力信号は、前記AM変調器の一方の入力端子に供給可能とされており、
前記フェーズロックドループの発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能であり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロットの前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が増加するものであり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロットの後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が減少するものであり、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値よりも低い状態では、前記AM変調器のゲインは低い値に制御され、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値よりも高い状態では、前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値よりも大きな高い値に制御される半導体集積回路。
【請求項13】
前記ランプデータと基準ランプデータとを比較する制御ユニットを更に具備して、
前記基準ランプデータは前記送信電力の前記所定値に対応するものであり、前記ランプデータの値が前記基準ランプデータの値よりも大きな場合に前記制御ユニットの出力信号によって前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項14】
前記ランプアップ動作に関連した所定周波数のクロック信号のパルスの第1のカウントアップの完了に応答して前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
更に前記ランプダウン動作に関連した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの第2のカウントアップの完了に応答して前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項15】
前記ランプアップ動作は、ランプアップスタート命令によって制御され、
前記ランプアップスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第1のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
前記ランプダウン動作は、ランプダウンスタート命令によって制御され、
前記ランプダウンスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第2のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項14に記載の半導体集積回路。
【請求項16】
前記AM変調器は、ギルバートセルを構成する第1のトランジスタペアと第2のトランジスタペアと第3のトランジスタペアとを含み、
前記第1のトランジスタペアの両制御電極には、前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である非反転入力信号と反転入力信号とが供給され、
前記第2のトランジスタペアおよび前記第3のトランジスタペアの制御電極には、前記フェーズロックドループの前記発振出力信号に基づく前記RFキャリア信号である非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給される請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項17】
前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号とのDCオフセット電圧差と前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号との交流振幅成分とは、前記ランプデータの前記値の増加に比例して増加するものである請求項16に記載の半導体集積回路。
【請求項18】
前記第1のトランジスタペアの入力電極は、抵抗ペアを介して接地電位に接続され、
前記第1のトランジスタペアの一方の出力電極と他方の出力電極は、前記第2のトランジスタペアの両入力電極と前記第3のトランジスタペアの両入力電極とにそれぞれ接続され、
前記第2のトランジスタペアの一方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの一方の出力電極とは、前記AM変調器の一方の出力端子に共通に接続され、
前記第2のトランジスタペアの他方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの他方の出力電極とは、前記AM変調器の他方の出力端子に共通に接続されている請求項17に記載の半導体集積回路。
【請求項19】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記抵抗ペアの抵抗値の制御もしくは前記第1のトランジスタペアのトランジスタグループペアの並列接続数の制御によって実現されるものである請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項20】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記第1のトランジスタペアの前記出力電極の信号を交流接地ノードにパイパスする素子を含むゲイン制御回路によって制御されるものである請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項21】
前記AM変調器の前記一方の出力端子と前記他方の出力端子との間の出力DCオフセット電圧を検出するDCオフセット電圧測定回路を更に具備して、
前記DCオフセット電圧測定回路は、DCオフセットキャリブレーション動作の間に、前記出力DCオフセット電圧が最小となるように、前記第1のトランジスタペアの前記両制御電極に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号の間の入力DCオフセット電圧を調整可能に構成されている請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項22】
前記DCオフセット電圧測定回路による前記DCオフセットキャリブレーション動作は、前記送信動作タイムスロットに先行するアイドルモードまたは前記送信動作タイムスロットの直前のタイミングにて実行可能とされたものである請求項21に記載の半導体集積回路。
【請求項1】
ディジタル変調器と、ランプ生成器と、ディジタル乗算器と、D/A変換器と、フェーズロックドループと、AM変調器とを具備するEDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機であって、
前記ディジタル変調器は、送信データに応答して、ディジタル振幅成分とディジタル位相成分とを生成して、
前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル振幅成分は前記ディジタル乗算器の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル位相成分は前記フェーズロックドループの一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループの他方の入力端子には基準周波数信号が供給され、
前記ランプ生成器は、ランプデータに応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成して、
前記ランプ生成器から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器の出力信号が前記D/A変換器の入力端子に供給され、
前記D/A変換器のアナログ出力信号は、前記AM変調器の一方の入力端子に供給可能とされており、
前記フェーズロックドループの発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能であり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロットの前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が増加するものであり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロットの後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が減少するものであり、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値よりも低い状態では、前記AM変調器のゲインは低い値に制御され、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値よりも高い状態では、前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値よりも大きな高い値に制御される送信機。
【請求項2】
前記ランプデータと基準ランプデータとを比較する制御ユニットを更に具備して、
前記基準ランプデータは前記送信電力の前記所定値に対応するものであり、前記ランプデータの値が前記基準ランプデータの値よりも大きな場合に前記制御ユニットの出力信号によって前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである請求項1に記載の送信機。
【請求項3】
前記ランプアップ動作に関連した所定周波数のクロック信号のパルスの第1のカウントアップの完了に応答して前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
更に前記ランプダウン動作に関連した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの第2のカウントアップの完了に応答して前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項1に記載の送信機。
【請求項4】
前記ランプアップ動作は、ランプアップスタート命令によって制御され、
前記ランプアップスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第1のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
前記ランプダウン動作は、ランプダウンスタート命令によって制御され、
前記ランプダウンスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第2のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項3に記載の送信機。
【請求項5】
前記AM変調器は、ギルバートセルを構成する第1のトランジスタペアと第2のトランジスタペアと第3のトランジスタペアとを含み、
前記第1のトランジスタペアの両制御電極には、前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である非反転入力信号と反転入力信号とが供給され、
前記第2のトランジスタペアおよび前記第3のトランジスタペアの制御電極には、前記フェーズロックドループの前記発振出力信号に基づく前記RFキャリア信号である非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給される請求項1に記載の送信機。
【請求項6】
前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号とのDCオフセット電圧差と前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号との交流振幅成分とは、前記ランプデータの前記値の増加に比例して増加するものである請求項5に記載の送信機。
【請求項7】
前記第1のトランジスタペアの入力電極は、抵抗ペアを介して接地電位に接続され、
前記第1のトランジスタペアの一方の出力電極と他方の出力電極は、前記第2のトランジスタペアの両入力電極と前記第3のトランジスタペアの両入力電極とにそれぞれ接続され、
前記第2のトランジスタペアの一方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの一方の出力電極とは、前記AM変調器の一方の出力端子に共通に接続され、
前記第2のトランジスタペアの他方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの他方の出力電極とは、前記AM変調器の他方の出力端子に共通に接続されている請求項6に記載の送信機。
【請求項8】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記抵抗ペアの抵抗値の制御もしくは前記第1のトランジスタペアのトランジスタグループペアの並列接続数の制御によって実現されるものである請求項7に記載の送信機。
【請求項9】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記第1のトランジスタペアの前記出力電極の信号を交流接地ノードにパイパスする素子を含むゲイン制御回路によって制御されるものである請求項7に記載の送信機。
【請求項10】
前記AM変調器の前記一方の出力端子と前記他方の出力端子との間の出力DCオフセット電圧を検出するDCオフセット電圧測定回路を更に具備して、
前記DCオフセット電圧測定回路は、DCオフセットキャリブレーション動作の間に、前記出力DCオフセット電圧が最小となるように、前記第1のトランジスタペアの前記両制御電極に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号の間の入力DCオフセット電圧を調整可能に構成されている請求項7に記載の送信機。
【請求項11】
前記DCオフセット電圧測定回路による前記DCオフセットキャリブレーション動作は、前記送信動作タイムスロットに先行するアイドルモードまたは前記送信動作タイムスロットの直前のタイミングにて実行可能とされたものである請求項10に記載の送信機。
【請求項12】
EDGE方式のRF送信信号を生成可能な送信機に使用可能であって、ディジタル変調器と、ランプ生成器と、ディジタル乗算器と、D/A変換器と、フェーズロックドループと、AM変調器とを具備する半導体集積回路であって、
前記ディジタル変調器は、送信データに応答して、ディジタル振幅成分とディジタル位相成分とを生成して、
前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル振幅成分は前記ディジタル乗算器の一方の入力端子に供給され、前記ディジタル変調器から生成される前記ディジタル位相成分は前記フェーズロックドループの一方の入力端子に供給され、前記フェーズロックドループの他方の入力端子には基準周波数信号が供給され、
前記ランプ生成器は、ランプデータに応答して、ランプ制御ディジタル制御信号を生成して、
前記ランプ生成器から生成される前記ランプ制御ディジタル制御信号に前記ディジタル乗算器の他方の入力端子が応答して、前記ディジタル乗算器の出力信号が前記D/A変換器の入力端子に供給され、
前記D/A変換器のアナログ出力信号は、前記AM変調器の一方の入力端子に供給可能とされており、
前記フェーズロックドループの発振出力信号に基づくRFキャリア信号が前記AM変調器の他方の入力端子に伝達可能とされることにより、前記AM変調器の出力端子から前記EDGE方式の前記RF送信信号が生成可能であり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の送信動作タイムスロットの前半のランプアップ動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が増加するものであり、
前記EDGE方式の前記RF送信信号の前記送信動作タイムスロットの後半のランプダウン動作では、前記ランプ生成器に供給される前記ランプデータに応答して前記AM変調器の前記一方の入力端子に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号が減少するものであり、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の送信電力が所定値よりも低い状態では、前記AM変調器のゲインは低い値に制御され、
前記ランプアップ動作および前記ランプダウン動作で、前記送信機の前記送信電力が前記所定値よりも高い状態では、前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値よりも大きな高い値に制御される半導体集積回路。
【請求項13】
前記ランプデータと基準ランプデータとを比較する制御ユニットを更に具備して、
前記基準ランプデータは前記送信電力の前記所定値に対応するものであり、前記ランプデータの値が前記基準ランプデータの値よりも大きな場合に前記制御ユニットの出力信号によって前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものである請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項14】
前記ランプアップ動作に関連した所定周波数のクロック信号のパルスの第1のカウントアップの完了に応答して前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
更に前記ランプダウン動作に関連した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの第2のカウントアップの完了に応答して前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項15】
前記ランプアップ動作は、ランプアップスタート命令によって制御され、
前記ランプアップスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第1のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプアップ動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記高い値に制御されるものであり、
前記ランプダウン動作は、ランプダウンスタート命令によって制御され、
前記ランプダウンスタート命令によって開始した前記所定周波数の前記クロック信号の前記パルスの前記第2のカウントアップの前記完了に応答して、前記ランプダウン動作の間に前記AM変調器の前記ゲインは前記低い値に制御されるものである請求項14に記載の半導体集積回路。
【請求項16】
前記AM変調器は、ギルバートセルを構成する第1のトランジスタペアと第2のトランジスタペアと第3のトランジスタペアとを含み、
前記第1のトランジスタペアの両制御電極には、前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である非反転入力信号と反転入力信号とが供給され、
前記第2のトランジスタペアおよび前記第3のトランジスタペアの制御電極には、前記フェーズロックドループの前記発振出力信号に基づく前記RFキャリア信号である非反転送信RFキャリア信号と反転送信RFキャリア信号とが供給される請求項12に記載の半導体集積回路。
【請求項17】
前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号とのDCオフセット電圧差と前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号との交流振幅成分とは、前記ランプデータの前記値の増加に比例して増加するものである請求項16に記載の半導体集積回路。
【請求項18】
前記第1のトランジスタペアの入力電極は、抵抗ペアを介して接地電位に接続され、
前記第1のトランジスタペアの一方の出力電極と他方の出力電極は、前記第2のトランジスタペアの両入力電極と前記第3のトランジスタペアの両入力電極とにそれぞれ接続され、
前記第2のトランジスタペアの一方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの一方の出力電極とは、前記AM変調器の一方の出力端子に共通に接続され、
前記第2のトランジスタペアの他方の出力電極と前記第3のトランジスタペアの他方の出力電極とは、前記AM変調器の他方の出力端子に共通に接続されている請求項17に記載の半導体集積回路。
【請求項19】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記抵抗ペアの抵抗値の制御もしくは前記第1のトランジスタペアのトランジスタグループペアの並列接続数の制御によって実現されるものである請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項20】
前記AM変調器の前記ゲインの制御は、前記第1のトランジスタペアの前記出力電極の信号を交流接地ノードにパイパスする素子を含むゲイン制御回路によって制御されるものである請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項21】
前記AM変調器の前記一方の出力端子と前記他方の出力端子との間の出力DCオフセット電圧を検出するDCオフセット電圧測定回路を更に具備して、
前記DCオフセット電圧測定回路は、DCオフセットキャリブレーション動作の間に、前記出力DCオフセット電圧が最小となるように、前記第1のトランジスタペアの前記両制御電極に供給される前記D/A変換器の前記アナログ出力信号である前記非反転入力信号と前記反転入力信号の間の入力DCオフセット電圧を調整可能に構成されている請求項18に記載の半導体集積回路。
【請求項22】
前記DCオフセット電圧測定回路による前記DCオフセットキャリブレーション動作は、前記送信動作タイムスロットに先行するアイドルモードまたは前記送信動作タイムスロットの直前のタイミングにて実行可能とされたものである請求項21に記載の半導体集積回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
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【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−245673(P2010−245673A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−89969(P2009−89969)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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