説明

送信装置、電子機器および電子機器の遠隔制御システム

【課題】信頼性が高く、しかも安定して電子機器を遠隔制御する技術を提供する。
【解決手段】コマンドデータが書き込まれた8ビットの第1データコードと、8ビットの第2データコードとが結合されたリモコン信号が用いられるが、第2データコードの後半4ビットのビット列には識別コード(拡張コード)が書き込まれており、識別コードに応じて第1データコードに対応する処理の動作を制御可能となっている。また、第2データコードは上記した識別コード以外に第1データコード(コマンドデータ)の誤り検出符号としてCRCが書き込まれているため、ノイズなどの外乱の影響によって第1データコードが変化したとしても、第1データコードの誤りを検出することができる。よって、高い信頼性で、かつ安定して電子機器を遠隔制御することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リモコン信号を用いてプリンターなどの電子機器を遠隔制御する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プリンターなどの電子機器を遠隔制御するために、リモコン信号を用いた遠隔制御システムが従来より提供されている。この遠隔制御システムでは、リモコン信号を送信するリモートコントロール(以下「リモコン」と称し、本発明の「送信装置」に相当)を電子機器に付属させるとともに、電子機器に内蔵した受信装置によりリモコンから出力されるリモコン信号を受信し、当該リモコン信号に含まれるコマンドデータに応じた処理を電子機器が実行する。
【0003】
このようなリモコン信号として、例えばNECフォーマットの信号が多く利用されている。このリモコン信号は、リーダーコードに続いてカスタムコード(16ビット)、データコード(8ビット)およびデータコードの論理反転値(8ビット)を含んでいる(図3(a)参照)。これらのコードのうちカスタムコードはNEC社により管理されており、同社に申請して取得することができるものであり、原則として1社に対して1コードとなっている。また、データコードには、電子機器へのコマンドデータなどが書き込まれて送信される。なお、データコードの論理反転値(8ビット)は上記コマンドデータを確認するためのものである。
【0004】
ところで、リモコン技術は元々1つの送信装置で1つの受信装置を内蔵した電子機器を遠隔制御するために発展しており、基本的に送信装置と受信装置とが1対1で対応した状態で使用されることを前提としている。しかしながら、同一メーカーの電子機器を複数台同時に使用するケースが発生し、不都合が生じる場合があった。例えば、同一メーカーのプリンターをオフィスの同一フロアに複数台設置した場合、所望のプリンターを作動させるために当該プリンターに付属されたリモコンを操作したとしても、同リモコンから出力されたリモコン信号がフロアに設置されている他のプリンターに受信され、有効な信号として認識されてしまい、これらのプリンターがリモコンを操作したオペレータの意図とは反して作動してしまう可能性がある。
【0005】
ここで、カスタムコードを複数個取得することができれば、フロア内のプリンターの各々に個別のカスタムコードを付与して対応することが可能であるが、上記したようにカスタムコードは基本的に1社に1コードに制限されているため、上記対応を採用することはできない。そこで、例えば特許文献1に記載されているように、NECフォーマット上でデータコードの論理反転値(8ビット)を書き込むように決められているデータコード(本発明の「第2データコード」に相当)を本来と別の目的で使用することが考えられる。つまり、同一フロア内のプリンターの各々に個別の識別コードを付与しておき、当該データコードにプリンターを識別するための識別コードを書き込み当該リモコン信号を送信することで当該識別コードを有するプリンターのみを作動させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−163979号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように各電子機器に識別コードを持たせることは非常に合理的な解決方法である。しかしながら、電子機器が受信したリモコン信号に含まれるコマンドデータが正しいものであるか否かの確認を行うことができないことは、電子機器を高い信頼性で、安定して遠隔制御することができないという問題を発生させてしまう。また、オフィスの蛍光灯や他の電子機器から発生するノイズによりリモコン信号に含まれる識別コードが書き換わってしまう可能性もあり、信頼性を高めるためには、識別コードを確認するための手段も望まれる。
【0008】
この発明にかかる幾つかの態様は、上記した課題のうち少なくとも1つを解決することで信頼性が高く、しかも安定して電子機器を遠隔制御する技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明にかかる送信装置の一態様は、電子機器に実行させる処理の内容を示すコマンドデータを第1データコードに書き込み、第1データコードと同一ビット数Nを有する第2データコード中の1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列に第1データコードの誤り検出符号を書き込むとともに、残りのビット列に電子機器の動作に関連する拡張コードを書き込み、第1データコードと第2データコードとを結合したリモコン信号を電子機器に送信して電子機器の動作を制御することを特徴としている。
【0010】
この発明にかかる電子機器の一態様は、コマンドデータが書き込まれた第1データコードと、第1データコードと同一ビット数Nで1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列に第1データコードの誤り検出符号が書き込まれるとともに残りのビット列に電子機器の動作に関連する拡張コードが書き込まれた第2データコードとを結合したリモコン信号を受信する受信部と、受信部で受信したリモコン信号に含まれる第1データコードに応じた処理を実行する処理部と、受信部で受信したリモコン信号中の拡張コードに応じて第1データコードに対応する処理の動作を制御する制御部とを備えたことを特徴としている。
【0011】
この発明にかかる電子機器の遠隔操作システムの一態様は、コマンドデータが書き込まれた第1データコードと、第1データコードと同一ビット数Nの第2データコードとを結合したリモコン信号を送信する送信装置と、送信装置から送信されたリモコン信号を受信する受信部を有し、受信部で受信したリモコン信号に含まれる第1データコードに応じた処理を実行可能な電子機器とを備え、送信装置は、第2データコード中の1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列に第1データコードの誤り検出符号を書き込むとともに、残りのビット列に電子機器の動作に関連する拡張コードを書き込み、電子機器は、受信したリモコン信号に含まれる第1データコードの誤り検出符号と、受信したリモコン信号に含まれる誤り検出符合とを比較することで、受信したリモコン信号に含まれる第1データコードでの誤りの有無を判定するとともに、受信したリモコン信号に含まれる拡張コードに応じて第1データコードに対応する処理の動作を制御することを特徴としている。
【0012】
このように構成された発明(送信装置、電子機器および電子機器の遠隔制御システム)では、コマンドデータが書き込まれた第1データコードと、第1データコードと同一ビット数Nの第2データコードとを結合したリモコン信号が用いられている。当該リモコン信号を受信した電子機器はコマンドデータ(第1データコード)に対応した処理を実行可能となっているが、同リモコン信号には拡張コードが含まれており、拡張コードに応じて第1データコードに対応する処理の動作を制御可能となっている。したがって、1台の送信装置から出力されたリモコン信号が複数台の電子機器に受信される場合であっても、各電子機器を適切に遠隔制御することができる。例えば、拡張コードを上気した識別コードとして用いることができる。この場合、電子機器がリモコン信号を受け取ったとしても、拡張コード(識別コード)が同電子機器に対応するものでないとき、同電子機器による第1データコードに対応する処理を制限することが可能となる。また、第2データコードには上記した拡張コード以外に第1データコードの誤り検出符号が含まれているため、ノイズなどの外乱の影響によって第1データコードが変化したとしても、それを検出することができる。よって、高い信頼性で、かつ安定して電子機器を遠隔制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明にかかる電子機器の遠隔制御システムの一実施形態を示す斜視図。
【図2】図1のフォトプリンターおよび赤外線リモコンの電気的構成を示すブロック図。
【図3】図1の遠隔制御システムで用いるリモコン信号のフォーマットを示す図。
【図4】赤外線リモコンによるデータ送信処理を示すフローチャート。
【図5】リモコン信号を受信したフォトプリンターの受信処理を示すフローチャート。
【図6】赤外線リモコンによるフォトプリンターの遠隔制御態様を示す模式図。
【図7】本発明の他の実施形態で用いるリモコン信号のフォーマットを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は本発明の電子機器の一実施形態であるフォトプリンターと、本発明の送信装置の一実施形態である赤外線リモコンとで構成されるフォトプリンターの遠隔制御システムを示す斜視図である。また、図2は図1のフォトプリンターおよび赤外線リモコンの電気的構成を示すブロック図である。このフォトプリンター10では、プリンター本体12の内部にはプリント機構が内蔵されており、フォトプリンター10の全体の制御を司るコントローラー70(図2参照)からの動作指令に応じて用紙への印刷を実行する。そして、こうして印刷された用紙がプリンター本体12の前面に排紙される。一方、赤外線リモコン100は、ユーザーによる入力操作に応じてフォトプリンター10を制御するための制御信号としてリモコン信号を生成してフォトプリンター10に送信する。そして、当該リモコン信号を受信したフォトプリンター10はリモコン信号に含まれるコマンドデータ(第1データコード)に応じた処理を実行する。このように図1に示すフォトプリンター10を赤外線リモコン100により遠隔操作可能となっており、フォトプリンター10および赤外線リモコン100で本発明にかかる「電子機器の遠隔制御システム」が構成されている。また、コントローラー70が本発明の「制御部」に相当し、プリント機構が本発明の「処理部」に相当している。以下、赤外線リモコン100およびフォトプリンター10の構成をそれぞれ説明した後で、赤外線リモコン100による遠隔制御動作について説明する。
【0015】
赤外線リモコン100では、図1に示すように、リモコン本体101に複数のボタン102が配置されており、当該ボタン102を介してユーザーが特定のフォトプリンター10を遠隔制御したり、オフィスの同一フロアに設置された複数のフォトプリンター10を一括して遠隔制御することが可能となっている。このリモコン本体101の内部には、図2に示すように、CPU110、CRCモジュール111およびバッテリー112が設けられている。このCPU110は、ユーザーによる入力操作に基づいて制御対象であるフォトプリンター10のリモコン信号を生成する。このリモコン信号を生成するために、CPU110は図示省略されたROMに格納されたプログラムを実行し、リモコン信号に盛り込むべきコードを作成するコード生成部110aとして、またリモコン信号を送信するリモコン信号送信部110bとして機能する。また、CRCモジュール111は、リモコン信号に含まれる第1データコードを生成多項式という計算式で処理して一定のビット数の検査用データを作成するモジュールであり、本実施形態ではCRC4を用いて4ビットのビット列からなるCRC(Cyclic Redundancy Check:巡回冗長検査)を作成している。なお、本実施形態で用いるリモコン信号およびCRCの詳細、ならびにコード生成などについては後で詳述する。
【0016】
また、CPU110のコード生成部110aにより生成されたリモコン信号はリモコン信号送信部110bに与えられ、当該リモコン信号送信部110bはリモコン信号に基づき発光素子120を駆動して当該リモコン信号をフォトプリンター10に対して送信する。
【0017】
次に、上記のように構成された赤外線リモコン100による遠隔制御対象となるフォトプリンター10の構成について説明する。このプリンター本体12の前面には、図1に示すように、前面扉14が開閉自在に取り付けられている。この前面扉14はプリンター本体12の前面を開閉するための蓋である。そして、開状態のときには、プリンター本体12の内部に設けられたプリント機構(図示省略)から排紙される用紙を受けるための排紙トレイとして機能する。また、プリンター本体12の前面に設けられた各種のメモリーカードスロット16をユーザーが利用可能な状態となる。つまり、この状態でユーザーは印刷対象となる画像ファイルを記憶したメモリーカードをメモリーカードスロット16に差し込むことができる。画像ファイルデータを記憶する外部記憶媒体としてはメモリーカードに限定されず、USBメモリーやディスク媒体など他のものであってもよい。また、画像を記憶したデジタルカメラや携帯電話などの電子機器を本フォトプリンター10にケーブルや赤外線を利用した通信によって接続し外部記憶媒体として機能させてもよい。
【0018】
また、メモリーカードスロット16の側方には、ユーザーによる入力操作に基づいて赤外線リモコン100から送信されるリモコン信号を受光して、受光した赤外線をリモコン信号として後述するリモコン信号受信部71aに出力する受光センサー(本発明の「受信部」に相当)18が設けられている。なお、受光センサー18の近傍には、上記したように、デジタルカメラや携帯電話などの電子機器との赤外線を利用した通信を可能とする、例えばIrDA(Infrared Data Association)規格の受光センサーが設けられている。
【0019】
また、プリンター本体12の上面には操作パネル20が設けられる一方、プリンター本体12の上面における奥の一辺に対してカバー30が開閉自在に取り付けられている。このカバー30は、プリンター本体12の上面を覆うことのできる大きさに成形された樹脂板であり、開状態では操作パネル20の表面を外部に露出する(図1参照)。一方、カバー30が閉状態に閉じられると、操作パネル20全体を覆う。
【0020】
この操作パネル20には、文字や図形、記号などを表示する例えばLCDディスプレイにより構成された表示部22と、この表示部22の周囲に配置されたボタン群24とを備えている。ボタン群24は、電源のオンオフを行うための電源ボタン、メインメニュー画面を呼び出すためのメニューボタン、操作を途中でキャンセルしたり用紙への印刷を途中で中断したりするためのキャンセルボタン、用紙への印刷実行を指示するための印刷ボタン、メモリーカードスロット16に挿入されたメモリーカードに編集画像などを保存するための保存ボタン、表示部22に表示された複数の選択肢の中から所望の選択肢を選択したりカーソルを移動したりするときに操作される上下左右の各矢印ボタン、この上下左右の各矢印ボタンの中央に配置され各矢印ボタンによって選択されている選択肢に決定したことを指示するためのOKボタン、表示部22での画面表示を切り替えるための表示切替ボタン、表示部22に表示される左ガイドを選択する左ガイド選択ボタン、表示部22に表示される右ガイドを選択する右ガイド選択ボタン、排紙トレイとしての機能を備えた前面扉14を開く排紙トレイオープンボタンなどで構成されている。
【0021】
また、表示部22の表示内容を確認するために、カバー30には表示部22と同じ大きさの窓32が設けられている。つまり、カバー30が閉状態にあるときにはユーザーはこの窓32を介して表示部22の表示内容を確認することができる。一方、カバー30は開状態のときには、表示部22を図1に示すように好みの角度に調整することが可能となっている。
【0022】
このようにカバー30を開状態としたときには、操作パネル20に対して斜め後方に傾斜した状態でカバー30は保持され、用紙をプリント機構へ供給するためのトレイとして利用可能となっている。また、操作パネル20の奥には、プリント機構の給紙口40が設けられるとともに、ガイド幅が用紙の幅に合うように左右方向にスライド操作される一対の用紙ガイド42が設けられている。そして、給紙口40を介して用紙がプリント機構に送り込まれるとともに、コントローラー70によりプリント機構の各部が制御されて印刷が実行される。
【0023】
このコントローラー70は、図2に示すように、CPU71を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データ、各種プログラムや各種テーブルなどを記憶したROM72、一時的にデータを記憶するRAM73、プリント機構やメモリーカードスロット16などとの通信を可能とするインターフェース(I/F)74、CRCモジュール75などを備えている。また、コントローラー70は、メモリーカードに編集画像などを保存するほか、プリント機構の印刷ヘッド(図示省略)への制御信号や操作パネル20の表示部22への制御信号を出力する。
【0024】
また、コントローラー70には、インターフェース74を通してメモリーカードなどの外部記憶媒体から与えられる画像データに基づく画像を表示部22に表示するために、画像データに対し必要な画像処理を行うための画像処理モジュール76が設けられている。画像処理モジュール76はまた、表示部22に表示させるためのメニュー画面などのプリンター固有の画像に対応する画像データや、アイコンなど、表示部22に表示されるベース画像の一部と置換されて挿入される部分画像に対応する部分書込データなどを生成する機能を有している。
【0025】
画像処理モジュール76から出力されるRGB画像データは、表示部22を表示制御するためのLCDコントローラー77に与えられる。LCDコントローラー77は、図略のVRAM(Video RAM)から読出した画像データに基づく画像を表示部22に表示する。なお、以下では、LCDディスプレイにより構成される表示部22の画素数はWVGA(Wide Video Graphics Array)形式の800ドット×480ドットであり、800ドット分の画素データにより画像データの1ラインが構成されており、480ラインのラインデータにより一の画像が構成される。したがって、画像処理モジュール76から、800ドット×480ドットの大きさを有する表示部22の一画面に相当する画像のRGB画像データなどがLCDコントローラー77に入力されることとなる。なお、各画素の画像データの色解像度は、各色8ビット、合計24ビット(3バイト)のデータサイズで、フルカラー表示可能に構成される。
【0026】
また、CPU71はROM72に格納されたプログラムを実行することによりリモコン信号受信部71aおよび判定部71bとして機能する。このリモコン信号受信部71aは、赤外線リモコン100から赤外線により送信されて、受光センサー18により受光されて出力されたリモコン信号を受信する。そして、リモコン信号受信部71aは受信したリモコン信号をデコードし、リモコン信号に含まれる各種データコードを取得する。また、それらのデータコードの一部はCRCモジュール75に与えられ、CRCが生成される。そして、判定部71bは次に詳述するようにデータコードおよびCRCモジュール75から出力されるCRCに基づき所定の判定処理を行い、リモコン信号受信部71aで受信したリモコン信号が適正なものであると判別されれば、受信されたデータコードに基づいてフォトプリンター10の各部の制御を行う。
【0027】
次に、上記のように構成された赤外線リモコン100およびフォトプリンター10で使用するリモコン信号のフォーマットについて説明した後で、赤外線リモコン100およびフォトプリンター10の動作について説明する。
【0028】
図3はリモコン信号のフォーマットを示す図である。本実施形態では、図3(b)に示すように、いわゆるNECフォーマットの一部を変更した独自のフォーマットを採用している。本実施形態で使用するリモコン信号のフォーマットでは、NECフォーマットと同様に、リーダーコードから始まり、それに続いて16ビットのカスタムコード、8ビットの第1データコードが続いている。これらのうちリーダーコードは9msの期間ON状態が続き、その後に4.5msの期間off状態となったものであり、カスタムコードや第1データコードなどとは波形が大きくことなっており、リーダーコードとカスタムコードとを明確に、しかも容易に識別可能となっている。また、カスタムコードはフォトプリンター10を含む電子機器を製造するメーカーを識別するためのコードであり、上記したように原則1社に対して1コードが設定される。カスタムコードに続く、第1データコードは赤外線リモコン100から電子機器に送られ、当該電子機器に対して所望の動作を実行させるためのコマンドデータである。
【0029】
この第1データコード(コマンドデータ)に続く8ビットの第2データコードがNECフォーマットでは第1データコード(コマンドデータ)の論理反転値となっている。これはリモコン信号を受信して遠隔制御される電子機器での誤動作を防止するためである。これに対し、本実施形態では第2データコードを構成する8ビットのうち前半4ビットのビット列が本発明の「誤り検出符合」の一例であるCRCとなっており、また後半の4ビットのビット列が本発明の「拡張コード」の一例である識別コードとなっている。このCRCは第1データコードをCRCモジュール111に与えることで演算される値であり、誤り検査用データとして機能する。また、識別コードはメーカーやユーザ側で16種類のIDを振り分けたものであり、この実施形態では15種類のフォトプリンター10に対して個別のIDを、また15種類のフォトプリンター10を一括して動作させる旨のIDを設定することが可能となっている。すなわち、フォトプリンター10を製造出荷する段階でフォトプリンター毎に個別動作させるためのIDを設定してもよいし、またはユーザが操作パネル20のボタン群24を操作したり、フォトプリンター10に接続されたコンピュータを操作して事後的に設定するようにしてもよい。例えば後述するように3台のフォトプリンター10を個別動作させたり、一括動作させるために、3台のフォトプリンター10に対し、識別コードとして「0001」、「0010」、「0011」をそれぞれ設定し、また全プリンター10を一括動作させるための識別コードとして「1111」を設定してもよい。なお本実施形態では、第2データコード以外についてはNECフォーマットと同一となるように構成している。
【0030】
図4は赤外線リモコンによるデータ送信処理を示すフローチャートであり、図5はリモコン信号を受信したフォトプリンターの受信処理を示すフローチャートであり、図6は赤外線リモコンによるフォトプリンターの遠隔制御態様を示す模式図である。以下、これらの図面を参照しつつフォトプリンター10の遠隔制御動作について説明する。
【0031】
ユーザーは、フォトプリンター10を遠隔制御する際、赤外線リモコン100の各種ボタン102を操作するが、そのボタン操作に応じてリモコン100ではコード生成部110aがユーザーの希望する処理内容を示すコマンドデータを生成するとともに、当該コマンドデータをCRCモジュール111に与える。これを受けたCRCモジュール111は8ビットのコマンドデータを冗長検査対象データとして入力とし、これをCRC4多項式で演算して得られる4ビットの値(本明細書では、こうした得られた値を「CRC」と称する)を誤り検出符号として生成する(ステップS1)。
【0032】
コード生成部110aは、リーダーコードおよびカスタムコードに続いてコマンドデータを第1データコードとし、さらに上記4ビットのCRCおよび4ビットの識別コードからなる第2データコードを結合してリモコン信号を生成する(ステップS2)。なお、4ビットの識別コードは次のように設定される。例えば図6に示すように、3台のフォトプリンター10を個別に遠隔制御するために、各赤外線リモコン100には識別コードがそれぞれ与えられるとともに、1台の赤外線リモコン100で一括して遠隔制御するために、識別コード「1111」を設定可能となっている。ここでは、理解および説明の便宜から、図6を参照して説明する際、3台のフォトプリンター10のそれぞれを「プリンターPA」、「プリンターPB」および「プリンターPC」と称し、各プリンターPA(識別コード:0001)、プリンターPB(識別コード:0010)およびプリンターPC(識別コード:0011)に付属された赤外線リモコン100のそれぞれを「赤外線リモコンRA」、「赤外線リモコンRB」、「赤外線リモコンRC」と称する。つまり、赤外線リモコンRBでプリンターPBを個別遠隔制御する際には、コード生成部110aはリモコン信号中の識別コードとして「0010」を設定する。また、赤外線リモコンRBで全プリンターPA、PB、PCを一括遠隔制御する際には、コード生成部110aはリモコン信号中の識別コードとして「1111」を設定する。
【0033】
こうしてリモコン信号の生成が完了すると、その信号に基づきリモコン信号送信部110bが発光素子120を駆動して当該リモコン信号をフォトプリンター10に対して送信する(ステップS3)。
【0034】
各フォトプリンター10では受光センサー18でリモコン信号を受信すると、図5に示す受信処理を実行する。ステップS11では、リモコン信号受信部71aにより受信したリモコン信号をデコードし、リモコン信号に含まれるコマンドデータ(第1データコード)を冗長検査対象データとしてCRCモジュール75に入力する。このCRCモジュール75では、CRCモジュール111と同様に、コマンドデータをCRC4多項式で演算し、それにより得られる4ビットのCRCを誤り検出符号として生成する。
【0035】
このCRCは判定部71bに与えられ、判定部71bによりリモコン信号に含まれるCRCと比較する(ステップS12)。そして、赤外線リモコン100で生成されたCRCと、フォトプリンター10で生成されたCRCとが一致しない場合(ステップS13「NO」の場合)には受信したリモコン信号に含まれるデータを破棄する(ステップS14)。つまり、何らの処理も行わず、次のリモコン信号を待つ。
【0036】
一方、ステップS13で「YES」と判定すると、判定部71bはさらにリモコン信号中の識別コードに基づき受信したリモコン信号が当該フォトプリンター10に対するものであるか否かを判定する(ステップS15)。そして、ステップS15で「NO」と判定した際には、ステップS14に進んでデータを破棄する。一方、ステップS15で「YES」と判定した際には、当該フォトプリンター10はリモコン信号中の第1データコードに対応した処理を実行する(ステップS16)。
【0037】
例えば図6(a)に示すように赤外線リモコンRBからリモコン信号を送信してプリンターPBにより印刷動作を実行させようとした場合、リモコン信号の識別コード(第2データコードの後半4ビット)として「0010」が設定されており、当該リモコン信号を受信したプリンターPA、PCの判定部71bは識別コードの不一致を確認し、データを破棄する(ステップS14)。一方、プリンターPBの判定部71bは識別コードの一致を確認し、これに応じてCPU71はプリンターPBの各部を制御して印刷動作を実行する(ステップS16)。
【0038】
また、図6(b)に示すように赤外線リモコンRBからリモコン信号を送信して全プリンターPA、PB、PCにより印刷動作を一括実行させようとした場合、リモコン信号の識別コード(第2データコードの後半4ビット)として「1111」が設定されており、当該リモコン信号を受信した各プリンターPA、PB、PCの判定部71bは、識別コードが一括遠隔制御時の識別コード「1111」と一致することを確認し、これに応じて各プリンターPA、PB、PCで印刷動作が実行される(ステップS16)。
【0039】
以上のように、本実施形態によれば、コマンドデータが書き込まれた8ビットの第1データコードと、8ビットの第2データコードとが結合されたリモコン信号が用いられるが、第2データコードの後半4ビットのビット列には識別コード(拡張コード)が書き込まれており、識別コードに応じて第1データコードに対応する処理の動作を制御可能となっている。したがって、例えば図6(a)に示すように、赤外線リモコンRBから送信されるリモコン信号はプリンターPBのみならず他のプリンターPA、PCにも受信されるが、識別コードがプリンターPA、PCを示す識別コードあるいは一括遠隔制御を示す識別コードではない場合に第1データコードに対応する処理を制限することが可能となる。また、第2データコードは上記した識別コード以外に第1データコード(コマンドデータ)の誤り検出符号としてCRCが書き込まれているため、ノイズなどの外乱の影響によって第1データコードが変化したとしても、第1データコードの誤りを検出することができる。よって、高い信頼性で、かつ安定してフォトプリンター10を遠隔制御することができる。
【0040】
ところで、上記実施形態では、誤り検査対象として第1データコード(コマンドデータ)のCRCを演算しているが、例えば図7に示すように、第2データコードの上位4ビットのビット列に識別コードを書き込むとともに、第1データコードと当該識別コードとを誤り検査対象とし、それらを結合したコードのCRCを演算し、そのCRCを誤り検出符号として用いてもよい。この場合、受信したリモコン信号に含まれる第1データコードと識別コードとを結合したコードのCRCと、受信したリモコン信号に含まれるCRCとを比較することで、受信したリモコン信号に含まれる第1データコードおよび識別コードの誤りの有無を判定することができる。この場合、ノイズなどの外乱により識別コードが変化したとしても、それを確実に検出することができ、信頼性をさらに高めることができる。
【0041】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、3台のプリンターPA、PB、PCについて一括遠隔制御および個別遠隔制御を行う場合について例示して説明したが、上記実施形態では4ビットのビット列からなる識別コードを採用しているため、15台までのプリンター10について一括遠隔制御および個別遠隔制御を行うことが可能である。
【0042】
また、上記実施形態では、CRC4多項式で演算し、それにより得られる4ビットのCRCを誤り検出符号として用いているが、誤り検出符号はこれに限定されるものではなく、Nビットのビット列で構成される第2データコード中において1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列のものを用いることができる。
【0043】
また、上記実施形態では、プリンター10のIDを示す識別コードを本発明の「拡張コード」として用いているが、ユーザー等が任意に設定したコードを拡張コードとして用いてもよい。また、拡張コードのビット数も「4ビット」に限定されるものではなく、誤り検出符号のビット数に応じて設定することができる。
【0044】
また、上記実施形態では、本発明の「電子機器」としてフォトプリンター10を遠隔制御する場合について説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されるものではなく、リモコン信号により遠隔制御可能な電子機器全般に対して本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10、PA、PB、PC…フォトプリンター(電子機器)、 18…受光センサー(受信部)、 70…コントローラー(制御部)、 71…CPU(制御部)、 71a…リモコン信号受信部、 71b…判定部、 72…ROM、 73…RAM、 74…インターフェース、 75、111…CRCモジュール、 76…画像処理モジュール、 77…LCDコントローラー、 100、RA、RB、RC…赤外線リモコン(送信装置)、 120…発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器に実行させる処理の内容を示すコマンドデータを第1データコードに書き込み、前記第1データコードと同一ビット数Nを有する第2データコード中の1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列に前記第1データコードの誤り検出符号を書き込むとともに、残りのビット列に前記電子機器の動作に関連する拡張コードを書き込み、前記第1データコードと前記第2データコードとを結合したリモコン信号を前記電子機器に送信して前記電子機器の動作を制御することを特徴とする送信装置。
【請求項2】
前記誤り検出符合は前記第1データコードと前記拡張コードを結合したコードの誤りを検出するための符号である請求項1に記載の送信装置。
【請求項3】
前記誤り検出符合は巡回冗長検査である請求項1または2に記載の送信装置。
【請求項4】
コマンドデータが書き込まれた第1データコードと、前記第1データコードと同一ビット数Nで1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列に前記第1データコードの誤り検出符号が書き込まれるとともに残りのビット列に前記電子機器の動作に関連する拡張コードが書き込まれた第2データコードとを結合したリモコン信号を受信する受信部と、
前記受信部で受信した前記リモコン信号に含まれる前記第1データコードに応じた処理を実行する処理部と、
前記受信部で受信した前記リモコン信号中の前記拡張コードに応じて前記第1データコードに対応する処理の動作を制御する制御部と
を備えたことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
前記誤り検出符合は前記第1データコードと前記拡張コードを結合したコードの誤りを検出するための符号である請求項4に記載の電子機器。
【請求項6】
前記誤り検出符合は巡回冗長検査である請求項4または5に記載の電子機器。
【請求項7】
コマンドデータが書き込まれた第1データコードと、前記第1データコードと同一ビット数Nの前記第2データコードとを結合したリモコン信号を送信する送信装置と、
前記送信装置から送信された前記リモコン信号を受信する受信部を有し、前記受信部で受信した前記リモコン信号に含まれる前記第1データコードに応じた処理を実行可能な電子機器とを備え、
前記送信装置は、前記第2データコード中の1ビット以上(N−1)ビット以下のビット列に前記第1データコードの誤り検出符号を書き込むとともに、残りのビット列に前記電子機器の動作に関連する拡張コードを書き込み、
前記電子機器は、受信した前記リモコン信号に含まれる前記第1データコードの誤り検出符号と、受信した前記リモコン信号に含まれる前記誤り検出符合とを比較することで、受信した前記リモコン信号に含まれる前記第1データコードでの誤りの有無を判定するとともに、受信した前記リモコン信号に含まれる前記拡張コードに応じて前記第1データコードに対応する処理の動作を制御することを特徴とする電子機器の遠隔制御システム。
【請求項8】
前記誤り検出符合は前記第1データコードと前記拡張コードを結合したコードの誤りを検出するための符号である請求項7に記載の電子機器の遠隔制御システム。
【請求項9】
前記誤り検出符合は巡回冗長検査である請求項7または8に記載の電子機器の遠隔制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−55399(P2011−55399A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−204440(P2009−204440)
【出願日】平成21年9月4日(2009.9.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】