説明

送信装置制御デバイス

【課題】アンテナ出力特性を考慮して端子電力を制御することによって、アンテナから出力される電波の輻射電力の周波数依存特性を低減し、受信精度を向上させる送信装置制御デバイスを提供する。
【解決手段】本発明の送信装置制御デバイス1は、データ信号を増幅する増幅器2と、増幅器2の出力信号を受けて送信信号を出力するアンテナ3と、増幅器2からの出力信号の電力(以下、「端子電力」という)を、アンテナ3の出力特性に基づく所定条件によって、制御する制御部4と、を備え、所定条件は、アンテナ3からの出力される送信信号の電力(以下、「輻射電力」という)の値を、所定周波数帯域において一定の範囲に収める補正値を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナを通じて電波を出力する送信装置に用いられ、送信装置に備わるアンテナの輻射特性に対応して、広い帯域に渡って所定レベル以上の輻射出力を可能とする送信装置制御デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を出力してデータを送信する送信装置は、様々な用途、場面で用いられている。特に、携帯電話機やスマートフォンをはじめとした携帯端末の普及で、電波を送受信する送信装置、受信装置、送受信装置が様々に用いられている。例えば、自動車で用いられるFMトランスミッター、無線LAN装置、無線ハードディスクドライブ、無線電波を用いるパソコン周辺機器などが、電波の送信および受信の少なくとも一方を用いて、データを通信する。
【0003】
このような電波を用いる送信装置は、搬送波が乗じられた電波を、アンテナを通じて送信する。このとき、送信装置は、データ信号に対して必要な変調を行う変調部、変調されたデータ信号を規格により定まる周波数の搬送波を乗じて電波を生成する乗算部、電波を所定レベルに引き上げる高周波アンプ(以下、「RFアンプ」という)を備える。また、RFアンプから出力される電波の電力を調整する調整部を更に備えることもある。
【0004】
図12は、従来技術における送信装置の一部のブロック図である。送信装置800は、データ信号の生成や処理に関る他の要素を含んでいるが、図12では、説明の便宜のために省略している。送信装置800は、データ信号を変調して搬送波を乗じる変復調部801、RFアンプ803の出力を調整する調整部802、電波の電力を所定レベルに増幅するRFアンプ803、RFアンプ803で増幅された電波を出力するアンテナ804と、を備える。送信装置800は、このアンテナ804を通じて、受信装置に電波を送信する。
【0005】
ここで、RFアンプ803での出力は、位置Aにおいて測定される。この位置Aで出力される出力信号の電力は、「端子電力」として定義される。一方、RFアンプ803からアンテナ804を通じて外界に出力される電波は、位置Bにおいて測定される。この位置Bで出力される送信信号の電力は、「輻射電力」として定義される。調整部802およびRFアンプ803は、最終的にアンテナ804から出力される送信信号の電力を調整している。しかしながら、アンテナ804をはじめとして、送信装置に用いられるアンテナは指向特性のみならず出力特性を有している。この出力特性は、周波数帯域に依存して、電波である送信信号の出力電力を変動させてしまう。
【0006】
図13は、アンテナの出力特性を示す説明図である。図13の曲線Cは、アンテナの出力特性を示す。このアンテナは、図12のアンテナ804でもよいし、送信装置に用いられる一般的なアンテナであってもよい。曲線Cから明らかな通り、アンテナの出力特性は、ある周波数帯域に出力レベルのピークがあり、この周波数帯域以外においては、出力レベルが低下する傾向を有している。
【0007】
一方、図14は、RFアンプ803の出力である位置Aでの端子電力を示す説明図である。RFアンプ803は、送受信に必要となる周波数帯域全体(この周波数帯域全体がチャネルに分割されて使用されることが多い)に渡って、略フラットになるように、端子電力を調整する。図14から明らかなように、端子電力は、周波数帯域の異なるチャネル1からチャネル7に渡って、略フラットになるように調整されている。受信装置は、受信する電波において、チャネル1〜チャネル7のいずれかのチャネルを必要に応じて用いるので、送信装置では、図14のようにチャネル1〜チャネル7のいずれにおいても所定の端子電力となるように調整部802が出力電力を調整する。
【0008】
しかしながら、端子電力が図14のように通信に用いられる周波数帯域全体に渡って(すなわちチャネル1〜チャネル7に渡って)一定以上であるにも関らず、送信装置800が出力する最終的な電波は、図13のアンテナ出力特性によって変動してしまう。すなわち、輻射電力(図12における位置Bでの電波の出力電力)は、アンテナ出力特性に依存してしまう。
【0009】
図15は、従来技術におけるアンテナ出力特性によって変動した輻射電力を示す説明図である。位置Bにおける送信信号は、RFアンプ803からの出力がアンテナ804を通って出力されるので、アンテナ出力特性が乗じられた電波となる。このため、アンテナ出力特性のピーク位置にあるチャネル3,4などは、高い輻射電力を示すが、両端のチャネル1、チャネル7などは、低い輻射電力を示すことになる。例えば、問題なく受信できる輻射電力(この輻射電力による電波を、受信装置は受信することになるので)の閾値が図15の破線である場合には、受信装置は、チャネル3、チャネル4、チャネル5の電波を受信可能であるが、チャネル2およびチャネル6の電波を受信するのは難しくなり、チャネル1およびチャネル7の送信信号を受信するのは不可能に近くなる。
【0010】
このように、従来技術においては送信装置のRFアンプでの端子電力に対して、アンテナの出力特性が乗じられることで、実際にアンテナ804から出力される送信信号の輻射電力は、周波数帯域(チャネル)によって、受信困難となる問題が生じていた。このような問題を解決するため、いくつかの技術提案がなされている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2009−205237号公報
【特許文献2】特開2010−154421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1は、外部アンテナに増幅して出力する電力増幅部と、電力増幅部に電源を供給する安定化電源と、送信指示信号により電力増幅部の増幅時間を指示するパルス信号を送出するモジュール制御回路と、モジュール制御回路と電力増幅部及び安定化電源を収納する送受信モジュールと、電源供給線路を介して安定化電源に出力電圧を可変して電源を供給する制御端子を有する直流可変電圧源と、直流可変電圧源の制御端子及びモジュール制御回路に同時に送信指示信号を送出する制御装置とを備え、直流可変電圧源は送信指示信号の送出期間中は直流出力電圧を昇圧するアンテナ装置を開示する。
【0013】
すなわち、特許文献1は、送信パルスによって大きなパルス電流の消費がある場合の電源電圧の低下を防止して、電源により供給される電圧のばらつきを防止する技術を提案している。
【0014】
しかしながら、特許文献1に開示される技術は、外部アンテナに到達する信号の電力への対応を考慮しているだけである。すなわち、電源電圧などへの考慮を有しているものの、アンテナ出力特性によって生じる、輻射電力の周波数帯域依存性への改善を考慮するものではない。このため、図15で示すような従来技術において生じるアンテナ出力特性に起因して生じる輻射電力の問題が解決されない。
【0015】
特許文献2は、アンテナ端子とトランスパータ端子の両方を備える送信装置において、送信回路部から出力される信号(図12における端子電力を有する信号に該当する)が、アンテナ端子から出力される場合とトランスパータ端子から出力される場合とで、アンテナ端子およびトランスパータ端子のそれぞれの補正値で増幅器の調整を制御する技術を開示する。
【0016】
しかしながら、特許文献2は、アンテナ端子に基づく補正値によって増幅器の調整を行う場合でも、これは部品のばらつきやトランスパータとの特性との違いなどを考慮したものであり、周波数依存性のあるアンテナ出力特性を補正することを考慮したものではない。このため、特許文献2の技術も、特許文献1の技術と同様に、アンテナ出力特性によって生じる輻射電力の周波数依存性を低減することができない問題がある。
【0017】
以上のように、提案されている技術は、アンテナに到達する電波の電力(図12で示される位置Aでの端子電力)を調整したり制御したりする際に、アンテナの出力特性を考慮しないままであるか、ピーク出力やトータル出力を増加させることを考慮しているか、受信装置の工夫で受信精度を上げるようにしているか、のいずれかである。
【0018】
すなわち、アンテナに到達する端子電力を、予めアンテナ出力特性に基づいて制御することで、実際にアンテナから出力される電波の輻射電力の周波数依存性を低減することが求められる。
【0019】
本発明は上記の課題に鑑み、アンテナ出力特性を考慮して端子電力を制御することによって、アンテナから出力される電波の輻射電力の周波数依存特性を低減し、受信精度を向上させる送信装置制御デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題に鑑み、本発明の送信装置制御デバイスは、データ信号を増幅する増幅器と、増幅器の出力信号を受けて送信信号を出力するアンテナと、増幅器からの出力信号の電力(以下、「端子電力」という)を、アンテナの出力特性に基づく所定条件によって、制御する制御部と、を備え、所定条件は、アンテナからの出力される送信信号の電力(以下、「輻射電力」という)の値を、所定周波数帯域において一定の範囲に収める補正値を含む。
【発明の効果】
【0021】
本発明の送信装置制御デバイスは、周波数依存性に基づくアンテナ出力特性に対応して端子電力を定めることができる。この結果、アンテナ出力特性の影響を受けて出力される電波の輻射電力の、周波数依存性を低減することができる。すなわち、アンテナから出力される電波は、周波数に依存することが少ないままに、一定の幅に収まる電力を示すようになる。
【0022】
また、送信装置制御デバイスによって送信装置から出力される電波が、周波数に依存せず一定の電力を有するので、受信装置における受信精度が向上する。特に、周波数帯域を切り替えながら受信する受信装置は、その受信帯域の選択肢が広がるので、受信装置のユーザーにとって便宜が高まる。
【0023】
これらの結果、無線通信による送受信装置を含む様々なアプリケーションの使用勝手が高まり、これらの普及が更に促される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の形態1における送信装置制御デバイスのブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における送信装置制御デバイスからの送信信号の輻射電力を示すグラフである。
【図3】本発明の実施の形態1における制御部による端子電力の制御を示すグラフである。
【図4】本発明の実施の形態1におけるアンテナの出力特性の模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1における送信信号の輻射電力を示すグラフである。
【図6】発明の実施の形態1における送信信号の輻射電力を示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態2における送信装置制御デバイスのブロック図である。
【図8】本発明の実施の形態2における通信装置の通信状態を示す模式図である。
【図9】本発明の実施の形態2における受信装置で受信する送信信号の輻射電力を示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態2における制御後の端子電力のグラフである。
【図11】本発明の実施の形態2における無線機器のブロック図である。
【図12】従来技術における送信装置の一部のブロック図である。
【図13】アンテナの出力特性を示す説明図である。
【図14】RFアンプ803の出力である位置Aでの端子電力を示す説明図である。
【図15】従来技術におけるアンテナ出力特性によって変動した輻射電力を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の発明に係る送信装置制御デバイスは、データ信号を増幅する増幅器と、増幅器の出力信号を受けて送信信号を出力するアンテナと、増幅器からの出力信号の電力(以下、「端子電力」という)を、アンテナの出力特性に基づく所定条件によって、制御する制御部と、を備え、所定条件は、アンテナからの出力される送信信号の電力(以下、「輻射電力」という)の値を、所定周波数帯域において一定の範囲に収める補正値を含む。
【0026】
この構成により、送信装置制御デバイスは、アンテナの出力特性の変動を受けても、所定周波数帯域での輻射電力の周波数依存性を低減できる。
【0027】
本発明の第2の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1の発明に加えて、制御部は、所定条件に基づいて、所定周波数帯域における輻射電力の値を、略同一に収める。
【0028】
この構成により、送信装置制御デバイスは、アンテナの出力特性に関らず、出力する送信信号の輻射電力を一定にできる。結果として、受信において、受信が困難となる帯域が生じにくくなる。
【0029】
本発明の第3の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1又は第2の発明に加えて、制御部は、増幅器の出力信号に、補正値を乗じる。
【0030】
この構成により、制御部は、増幅器の出力信号の端子電力を、容易に制御できる。
【0031】
本発明の第4の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第3のいずれかの発明に加えて、補正値は、アンテナの出力特性と対称となる曲線に対応する。
【0032】
この構成により、送信装置制御デバイスは、アンテナから出力される送信信号の輻射電力を、一定のレベルに収めることができる。
【0033】
本発明の第5の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第4の発明に加えて、補正値は、アンテナの出力特性と逆特性となる。
【0034】
この構成により、送信装置制御デバイスは、アンテナから出力される送信信号の輻射電力を、ほぼ一定のレベルに収めることができる。
【0035】
本発明の第6の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第5のいずれかの発明に加えて、制御部は、増幅器へ入力する入力信号および増幅器から出力する出力信号の少なくとも一方の電力を制御する。
【0036】
この構成により、制御部は、送信装置の構成に合わせて、端子電力を制御できる。
【0037】
本発明の第7の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第6のいずれかの発明に加えて、補正値は、増幅器に接続されるアンテナ毎に得られる出力特性に基づいて、定められる。
【0038】
この構成により、制御部は、アンテナの種類や構成に適した補正値を用いることができる。この結果、アンテナの出力特性に依存しない輻射電力が実現できる。
【0039】
本発明の第8の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第7のいずれかの発明に加えて、補正値は、増幅器に接続されるアンテナの部品ばらつきに対応する調整を受けることが可能である。
【0040】
この構成により、制御部はより正確な補正値を用いることができる。
【0041】
本発明の第9の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第8のいずれかの発明に加えて、補正値は、アンテナからの送信信号を受信する受信装置での受信状態に基づく調整を受けることが可能である。
【0042】
この構成により、制御部は、受信状態にダイナミックに対応した端子電力の制御ができる。
【0043】
本発明の第10の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、補正値を記憶する記憶部を更に備える。
【0044】
この構成により、補正値がプログラマブルになる。
【0045】
本発明の第11の発明に係る送信装置制御デバイスでは、第1から第10のいずれかの発明に加えて、制御部は、マイクロプロセッサの少なくとも一部の機能によって実現される。
【0046】
この構成により、送信装置制御デバイスは、送信装置が備える要素を有効活用できる。
【0047】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0048】
(実施の形態1)
【0049】
(全体概要)
まず、実施の形態1における送信装置制御デバイスの全体概要を、図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における送信装置制御デバイスのブロック図である。送信装置制御デバイス1は、増幅器2と、アンテナ3と、制御部4とを備える。
【0050】
増幅器2は、データ信号を増幅する。例えばRFアンプや低ノイズアンプなどが、増幅器2として使用される。アンテナ3は、増幅器2の出力信号を受けて送信信号を出力する。すなわち、アンテナ3の前段では増幅器2によって増幅された信号そのものである出力信号が存在し、アンテナ3の後段ではアンテナ3によって発信される電波となっている送信信号が存在する。
【0051】
制御部4は、増幅器2からの出力信号の電力(以下、「端子電力」といい、図1における位置Eでの電力を示す)を、アンテナ3の出力特性に基づく所定条件によって、制御する。このとき、所定条件は、アンテナ3から出力される送信信号の電力(以下、「輻射電力」といい、図1における位置Fを示す)の値を、所定周波数帯域において一定の範囲に収める補正値を含んでいる。
【0052】
実施の形態1における送信装置制御デバイス1は、このような構成を有することで、アンテナ3の出力特性によって生じうる送信信号の周波数に依存する輻射電力のばらつきを防止できる。
【0053】
ここで、輻射電力を、所定周波数帯域において、一定の範囲に収めるとは、図2に示されるような状態である。図2は、本発明の実施の形態1における送信装置制御デバイスからの送信信号の輻射電力を示すグラフである。図2のグラフにおいて、チャネル1からチャネル7までの帯域が、所定周波数帯域である。この所定周波数帯域は、例えばある無線通信を行なうアプリケーションにおいて許可されている帯域を示す。例えば、FMラジオに許されている周波数帯域や、無線LANに許されている周波数帯域である。この所定周波数帯域を使用するアプリケーションは、送信装置および受信装置の送受信状況や送受信の仕様に応じて、チャネル1からチャネル7までのいずれのチャネルを使用するかを選択する。
【0054】
例えば、アプリケーションが車載のFMトランスミッターの場合には、搭載している車が位置する場所において、FMラジオで使用されていないチャネルを、このFMトランスミッターは探索する。例えば、チャネル1、2、4〜6が、FMラジオに使用されている場合には、FMトランスミッターは、空いている帯域であるチャネル3、7を使用する必要がある。あるいは、携帯電話機、コードレス電話機、ワイヤレスLAN、RF−ID機器といったアプリケーションも、規格で定められる所定周波数帯域に含まれるチャネルにおいて、空いているチャネル(使用されていないチャネルや優先的に使用できるチャネルなど)を使用する。
【0055】
ここで、従来技術の送信装置においては、増幅器の出力における端子電力がチャネルに関らず一定となるように、増幅器が出力信号を出力する。従来技術の図14で説明したような状態である。ここでアンテナは、周波数に依存してそのゲインが変化する出力特性を有しているので、増幅器が出力する出力信号の端子電力が一定であると、最終的にアンテナから出力される送信信号の輻射電力は、アンテナ出力特性によって強弱が生じてしまう。通常の送信装置のアンテナは、小低周波数帯域の中央周波数付近を、そのゲインのピークとするように調整されていることが多い。このため、従来技術の送信装置のアンテナから出力される送信信号は、図15に示されるように、所定周波数帯域の両端に近いチャネルの輻射電力が小さくなってしまうことがある。場合によっては、送信装置からの送信信号を受信する受信装置は、この小さくなった輻射電力に対応するチャネルの電波を、受信できない(受信できないもしくは受信できても復調できない)ことが生じる。
【0056】
例えば、上述のように、チャネル3とチャネル7しか空いていない場合には、チャネル7を選択しても、受信できない状態になってしまう。また、チャネル3の電波は受信可能であるが、FMトランスミッターやワイヤレスLANといったアプリケーションは、当然ながら空いているチャネル3に集中するので、チャネル3に通信が集中する結果、通信ができなくなるアプリケーションも生じてしまう。すなわち、所定周波数帯域として許可されているチャネル1〜チャネル7の全てが、通信に活用できていないことが生じている。
【0057】
これに対して、図2に示されるように、アンテナ3から出力される送信信号の輻射電力が一定の幅に収められるようになると、実際に電波として通信される送信信号は、チャネル1〜チャネル7のいずれであっても、受信可能なレベルを有している。このため、例えばチャネル3とチャネル7が空いているチャネルである場合には、受信装置は、チャネル3およびチャネル7のいずれも選択でき、受信・復調することができるようになる。この結果、所定周波数帯域を使用して通信を行なうアプリケーションは、所定周波数帯域に含まれる全てのチャネルを有効活用できることになる。これにより、例えばアンテナ3の最高出力を抑えることもしやすくなるので(従来技術では、全てのチャネルの輻射電力が、なるべく閾値を越えるようにするために、規格や規制で許される上限まで、アンテナの最高出力を上げる必要があった)、送信装置や受信装置そのものの設計融通性も高くなる。
【0058】
制御部4は、アンテナ3から出力される送信信号の輻射電力が、図2のように一定の幅に収まるように、増幅器2の出力信号の端子電力を制御する。このためには、制御部4は、アンテナ3の出力特性(図2の曲線G)と対称となる特性を有する端子電力に制御する。すなわち、制御部4は、増幅器2の出力信号を、図3のように制御しておくことが好ましい。図3は、本発明の実施の形態1における制御部による端子電力の制御を示すグラフである。
【0059】
図2の曲線Gは、アンテナ3の出力特性である。このため、制御部4は、曲線Gと対称となる曲線に対応した端子電力となるように、端子電力を制御する。より具体的には、制御部4は、曲線Hと対称となる曲線Hに対応する補正値を、所定条件として端子電力を制御する。図3の曲線Hは、上述の通り、アンテナ3の出力特性に対応する曲線Gと対称となる曲線である。制御部4が制御に用いる補正値は、この曲線Hに対応する。増幅器2の出力信号の端子電力が、図3のように制御されておくことで(すなわち、所定周波数帯域の両端にあるチャネル1とチャネル7の端子電力が大きく、中央付近のチャネル3,4の端子電力が小さくなるように制御される)、最終的にアンテナの出力特性が乗じられた後の送信信号の輻射電力は、図2に示されるように、一定の幅に収まるようになる。
【0060】
制御部4によって、端子電力が予め制御されておくことで、出力される送信信号の輻射電力が、一定の幅の電力値に収まるようになる。図2に示されるような輻射電力を有する送信信号が、送信装置から出力されることで、チャネル1〜チャネル7のいずれかが、非常に低い輻射電力を有することになることにならない。こうなると、受信装置は、所定周波数帯域に含まれるチャネル1〜チャネル7のいずれを選択することも(そのチャネルが空いていれば)できるようになる。このため、送信装置を用いるアプリケーションは、周波数使用効率を高めることができ、通信トラフィックの緩和および受信性能の向上を実現できる。
【0061】
次に、各部の詳細について説明する。
【0062】
(変復調部)
変復調部5は、送信装置制御デバイスから出力される基礎となるデータ信号を、生成する。例えば、送信装置が画像信号を送信する場合には、画像データをデジタルデータ化したデータが、周波数変調、位相変調、振幅変調などを受けて符号化される。この符号化された信号に必要な搬送波が乗じられてデータ信号が生成される。変復調部5は、このデータ信号を生成する。
【0063】
また、変復調部5は、送信装置が送信信号を出力する場合には、データを変調することでデータ信号を生成するが、受信装置に用いられて受信信号を受信する場合には、受信信号を復調して、もとのデータを得る。送信装置制御デバイス1は、送信のみを行う送信装置に用いられることもあるし、送信と受信を兼用する送受信装置に用いられることもある。また、変調に対応する復調は、同じアルゴリズムや規格を用いる。例えば、変調が、PSK変調やQPSK変調を用いる場合には、復調もこのPSK変調に対応するPSK復調、QPSK変調に対応するQPSK復調を用いる。このため、変復調部5は、用いられる装置の必要性に応じて、変調および復調の少なくとも一方を実行する。
【0064】
なお、送信装置制御デバイス1は、この変復調部5を必須要素とするわけではない。変復調部5は、送信装置制御デバイス1と別途に設けられても良く、送信装置や送受信装置に含まれる変復調部5からのデータ信号を、送信装置制御デバイス1が受け取ることができればよい。
【0065】
(増幅器)
増幅器2は、変復調部5からのデータ信号を増幅する。データ信号は、ベースバンドICなどの半導体集積回路などで生成されるので、半導体集積回路で使用される電力や電圧に従った電力や電圧を有している。この電力や電圧のままでは、搬送波を乗じた電波となっても、アンテナ3から出力される際には非常に微弱な電波となってしまう。このため、増幅器2が、データ信号の電力や電圧を増幅して、アンテナ3からの電波を十分な電力とする。
【0066】
増幅器2は、RFアンプ、オペアンプなどのアンプを用いて、データ信号を増幅すればよい。ここで用いられるRFアンプやオペアンプは、公知技術として知られている要素が用いられればよい。また、送信装置の規格で使用されることが要求される仕様を有する増幅要素が用いられればよい。
【0067】
増幅器2は、制御部4からの制御に基づいて、データ信号を増幅する。この制御部4からの制御に基づいてデータ信号を増幅すると、例えば、図3に示されるようなチャネルごとの端子電力となる。すなわち、増幅器2は、増幅器2の定める仕様のみでなく、制御部4が定める仕様によっても、データ信号の増幅処理を行う。
【0068】
増幅器2は、制御部4からの制御を受けるので、一般的な増幅器2と制御部4とが別個に設けられてもよい。あるいは、増幅器2と制御部4とが一つの要素として設計・製造されて、送信装置制御デバイス1に組み込まれても良い。また、増幅器2そのものには、増幅レベルの調整を行うための調整装置が設けられていることもある。この場合には、制御部4は、この調整装置を制御するための制御信号を出力するような機能を有していても良い。あるいは、制御部4は、増幅器2に含まれる調整装置に含まれても良い。例えば、調整装置は、プログラマブルであるのであれば、このプログラムを設定することで、増幅器2は、図3のような端子電力に対応するように、データ信号を増幅できる。
【0069】
なお、後述するように、増幅器2は、増幅器2の出力を制御する場合と、増幅器2に入力する信号を制御する場合とがありえる。このため、増幅器2は、制御部4の制御を受けるだけでなく、制御された後のデータ信号をただ増幅するだけの場合と、を有している。このため、制御部4が増幅器2を制御する場合においては、増幅器2は、制御部4の制御を受けつつ、データ信号を増幅する。制御部4が増幅器2に入力する信号を制御する場合においては、増幅器2は、データ信号を増幅する。
【0070】
以上のように、制御部4の制御にも関連しつつ、増幅器2は、データ信号を増幅して出力する。
【0071】
(アンテナ)
アンテナ3は、増幅器2の出力信号を送信信号にして電波として出力する。増幅器2は、データ信号を増幅して出力信号をアンテナ3に出力する。アンテナ3は、この出力信号をアンテナ3の素材と構造を基に、電波として送信信号を出力する。アンテナ3は、送信信号の波長に基づいて定まる長さや形状を、有している。例えば、波長の2分の1である半波長や4分の1である1/4波長などの長さを有していることが好ましい。
【0072】
また、アンテナ3は、いわゆる金属製の棒状部材によって形成されるアンテナ部材を有してもよいし、電子部品であるチップアンテナやコイルアンテナを備えても良いし、電子基板に印刷されたパターンによるパターンアンテナを備えても良い。一般的な送信装置や無線機器で用いられるアンテナ部材が、アンテナ3として使用されれば良い。
【0073】
アンテナ3は、そのインピーダンスや周波数によって、出力特性を有する。この出力特性は、ピークとなる輻射電力と周波数帯域に依存する輻射電力の変化を有している。アンテナ3そのものが有するインピーダンス特性、アンテナ3とグランド面との電位関係、アンテナ3に接続される電子部品のインピーダンス特性などに基づいて、アンテナ3は、このような周波数依存性のある出力特性を有する。
【0074】
図4は、本発明の実施の形態1におけるアンテナの出力特性の模式図である。図2に示したアンテナ3の出力特性と同様のものである。曲線Gは、アンテナ3の出力特性を示している。アンテナ3は、インピーダンス特性によって、ピーク値を示すピーク周波数が決定される。図4では、位置Iがピーク周波数である。このピーク周波数に応じて、曲線Gのように、周波数帯域において、輻射電力が段々と変化する出力特性を有することになる。すなわち、アンテナ3は、どのようなアンテナを用いても、周波数に依存しないフラットな輻射電力となる出力特性を有することはできない。
【0075】
曲線Gのような出力特性を有することになるので、アンテナ3によって出力される送信信号の輻射電力は、この曲線Gが乗じられた状態とならざるを得ない。実施の形態1の送信装置制御デバイス1は、制御部4によって予めアンテナ3に入力する出力信号をこの曲線Gを考慮した状態に制御しているので、最終的に出力される送信信号は、図2のように制御されている。但し、アンテナ3は、曲線Gのような出力特性を有さざるを得ない。制御部4は、この曲線Gに表される出力特性を逆に活用して、送信信号の輻射電力の周波数依存性を低減させている。
【0076】
アンテナ3は、送信装置と一体で設けられても良いし別体で設けられても良い。また、アンテナ3は、図1においては、増幅器2などと別体として示されている。アンテナ3は、独立した部材であるのでこのように別体であることが多い。しかし、例えば増幅器2を備えるアンテナ3のように、アンテナ3と増幅器2とが一体であってもよい。あるいは、アンテナ3を制御する要素が、増幅器2や制御部4の機能の少なくとも一部を備えていても良く、この場合には、アンテナ3と他の要素の一部(もしくは全部)が、一体となった要素として把握されることもありえる。図1に示される実施の形態1における送信装置制御デバイス1は、図1に示される通りの要素に分離して把握されなければならないものではない。これは、増幅器2、制御部4、変復調部5のすべてにおいて同様である。
【0077】
(制御部)
制御部4は、増幅器2の出力信号の電力である端子電力を制御する。このとき、図2に示すように、アンテナ3から出力される送信信号の輻射電力が一定の範囲に収まる補正値を有する所定条件によって、端子電力を制御する。すなわち、制御部4は、最終的にアンテナ3から出力される送信信号の輻射電力の値が、所定周波数帯域においては、一定の幅に収まるように、端子電力を制御する。すなわち、アンテナ3の出力特性に応じた補正値を、制御部4は予め有しておき、この補正値を用いて、端子電力を制御する。
【0078】
制御部4は、アンテナ3に入力する増幅器2の出力信号を、アンテナ3の出力特性に合わせて制御する。これは、図3に示されるとおりである。すなわち、制御部4は、増幅器2の出力信号の端子電力を、所定周波数帯域において図3に示されるように制御する。アンテナ3の出力特性は、曲線Gに示されるような曲線を有している。この曲線Gと対称となる曲線Hのような補正値を用いて制御部4は、出力信号の端子電力を制御する。すなわち、出力信号に対して、曲線Hによる補正値を乗算することで、図3のチャネル1〜チャネル7に示されるような端子電力に制御する。図3に示されるような端子電力の状態になった後で、この出力信号に、アンテナ3の出力特性である曲線G(図4)が乗算される。この結果、アンテナ3は、図5に示されるような輻射電力を有する送信信号を出力するようになる。図5は、本発明の実施の形態1における送信信号の輻射電力を示すグラフである。
【0079】
図5に示されるように、送信信号の輻射電力は、チャネル1〜チャネル7において、一定の幅に収まるようになっている。チャネル1〜チャネル7の全てが、一定の幅に収まることで、この電波を受信する受信装置は、チャネル1〜チャネル7のいずれをも受信できるようになり、所定周波数帯域が、有効に活用できる。
【0080】
ここで、制御部4は、増幅器2へ入力する入力信号および増幅器2から出力する出力信号の少なくとも一方の電力を制御する。制御部4は、増幅器2から出力される出力信号が、図3のような端子電力を有するように制御する。すなわち、最終的にアンテナ3に入力する出力信号が、図3に示される端子電力を有していればよい。このため、制御部4は、増幅器2に入力する信号を、図3のような端子電力(絶対値ではなく、チャネル1〜7のそれぞれの端子電力の相違が、図3のような傾向を示せばよい)に制御してもよい。増幅器2に入力する信号が、チャネル1〜チャネル7において、図3のような傾向を有していれば、増幅器2で増幅されたチャネル1〜チャネル7のそれぞれの信号は、この傾向を維持したまま増幅される。結果として、増幅器2は、アンテナ3の出力特性に対応した端子電力を有する出力信号を、アンテナ3に出力できる。
【0081】
一方、制御部4は、増幅器2に対して制御を行い、増幅器2から出力される出力信号が、図3のような端子電力を有するように制御してもよい。この場合にも、増幅器2は、アンテナ3の出力特性に対応する端子電力を有する出力信号を出力できるようになる。
【0082】
制御部4は、アンテナ3の出力特性に基づく補正値を用いて増幅器2の出力信号の端子電力を制御する。このとき、図6に示されるようにアンテナ3から出力される送信信号の輻射電力の値が、略同一に収まるように制御することも好適である。図6は、本発明の実施の形態1における送信信号の輻射電力を示すグラフである。略同一といっても、完全な同一を要求しているのではなく、大体同じ値に収まる程度を示している。輻射電力が略同一となるためには、アンテナ3の出力特性と略完全な対称性を有する補正値を、制御部4が増幅器2の出力信号に乗じればよい。このとき、アンテナ3の出力特性はアンテナ3の測定により得られるので、制御部4は、この得られたアンテナ3の出力特性から算出される補正値を有しておけばよい。
【0083】
また、略完全な対称性は、アンテナ3の出力特性の逆特性によって把握されても良い。アンテナ3の出力特性の逆特性から得られる補正値を制御部4は有しておき、制御部4は、この逆特性に対応する補正値を、増幅器2の出力信号に乗じることで、図6に示されるようなチャネル1〜チャネル7までの輻射電力が略同一の値に収まる送信信号を得る。
【0084】
あるいは、制御部4は、ある特定のチャネルの輻射電力が他のチャネルの輻射電力よりも大きくなるように、増幅器2の出力信号を制御してもよい。例えば、所定周波数帯域に、チャネル1〜チャネル7までが含まれている場合に、あるチャネルのみが頻繁に使用されることがある。例えば、送信装置制御デバイス1が、FMトランスミッターに使用される場合には、FMトランスミッターは、FMラジオで使用されていないチャネルを利用する。FMラジオは、送受信精度を上げるために、特定のチャネルに偏ることが多く、FMトランスミッターを使用する場合に特定のチャネルが空きチャネルとなることがある。例えば、図6などに示されるチャネル1やチャネル7など、所定周波数帯域の端部におけるチャネルが空きやすくなることも多い。
【0085】
このような場合には、制御部4は、アンテナ3からの送信信号の輻射電力において、チャネル1とチャネル7の輻射電力が、他のチャネルの輻射電力よりも大きくなるように、制御部4が制御することも好適である。すなわち、制御部4は、チャネル1とチャネル7の端子電力を、非常に大きくなるように制御しておく。この結果、送信装置制御デバイス1を用いる送信装置は、空きやすいチャネルでの送受信が容易となる。もちろん、チャネル1、チャネル7の制御は、一例である。
【0086】
(補正値)
補正値は、アンテナ3の出力特性から得られる。送信装置制御デバイス1に用いられるアンテナ3の出力特性が予め測定されておくことで、補正値が得られる。このとき、アンテナ3は、種類(構造、機能等による種類や品番による種類など)毎に出力特性が測定されても良い。この場合には、補正値は、アンテナ3の種類に応じる。すなわち、同じ種類のアンテナ3であれば、補正値は同一である。
【0087】
あるいは、送信装置制御デバイス1に用いられるアンテナ3ごとに、出力特性が測定されても良い。この場合には、補正値は、アンテナ3のそれぞれに応じて、制御部4において記憶されることになる。後者の場合には、送信装置の特性や製造ばらつきにも対応できるメリットがあるが、開発コストが増加する。この場合には、前者のようにアンテナ3の種類ごとに補正値を定めても良い。
【0088】
また、後者のように、使用されるアンテナ3ごとに出力特性が測定された上で補正値が算出されなくとも、アンテナ3の部品ばらつきに対応する調整を、補正値が受けることでもよい。例えば、制御部4は、アンテナ3の種類に対応する補正値を有している。補正値は、アンテナ3の種類に対応する補正値を有しているが、アンテナ3の部品ばらつきを考慮した調整を受けて、補正値を調整しても良い。例えば、アンテナ3の経験的な部品ばらつきを考慮したり、送受信における送受信精度に基づいて調整したりといった作業を、制御部4が行っても良い。
【0089】
送信装置制御デバイス1が使用される送信装置や受信装置は、送受信における精度を検出できる。制御部4は、この送受信精度を受け取って、送受信精度に基づく調整レベルを決定できる。決定された調整レベルによって、制御部4は、補正値を制御する。
【0090】
なお、制御部4は、送信装置制御デバイス1や送信装置が備えるマイクロプロセッサの機能の少なくとも一部によって実現されても良い。送信装置や送受信装置は、マイクロプロセッサを備えていることが通常である。マイクロプロセッサは、メモリに記憶されているプログラムを読み出すことで、様々な機能を実行できる。このとき、制御部4の機能がプログラムとしてメモリに記憶されておけば、マイクロプロセッサは、制御部4の機能を実現できる。すなわち、制御部4は、マイクロプロセッサとマイクロプロセッサが実行するプログラムによって、その機能が実現される。
【0091】
なお、このマイクロプロセッサは、制御部4以外の要素の機能(例えば変復調部5の機能)を実現しても良く、送信装置等において必要となる汎用のマイクロプロセッサが、制御部4の機能を実現すればよい。
【0092】
以上のように、制御部4は、補正値を用いて出力信号を制御する。この制御によってアンテナ3の出力特性によって輻射電力が閾値以下に低減するチャネルが発生することを防止できる。
【0093】
実施の形態1の送信装置制御デバイス1は、アンテナの出力特性に関らず輻射電力の弱くなるチャネルを生じさせない。結果として、割り当てられている所定周波数帯域を有効活用した通信を実現できる。
【0094】
(実施の形態2)
【0095】
次に実施の形態2について説明する。実施の形態2では、送信装置制御デバイス1における他の工夫等について説明する。
【0096】
(記憶部)
送信装置制御デバイス1は、補正値を記憶する記憶部を更に備えても良い。図7は、本発明の実施の形態2における送信装置制御デバイスのブロック図である。送信装置制御デバイス1は、記憶部8を備えている。記憶部8は、制御部4が使用する補正値を記憶している。補正値は、離散値であったり数式で示されたりするが、記憶部8は、この離散値や数式を補正値として記憶する。
【0097】
記憶部8は、記憶する補正値を制御部4に出力可能である。あるいは、制御部4は、記憶部8の記憶する補正値を読み出すことができる。記憶部8が制御部4と別個に備わり、補正値を記憶することで、補正値がプログラマブルになる。記憶部8は、外部からその内容を書き換え可能である。例えば、送信装置の他の要素から書き換えを受けることも可能であるし、送信装置の外部から書き換えを受けることも可能である。
【0098】
記憶部8が、その記憶値を書き換え可能であることで、送信装置制御デバイス1にとって最適な補正値を常にアップデートできるメリットがある。例えば、ある送信装置制御デバイス1には、ある補正値が用いられている。これは、送信装置制御デバイス1の設計時に最適と判断された補正値である。しかしながら、送信装置制御デバイス1を使用する送信装置の規格の変更や、使用地域の変更などによって、所定周波数帯域に含まれるチャネルの内、使用頻度の高いチャネルが変動することもある。この場合には、補正値が書き換えられることで、使用頻度の高いチャネルの輻射電力が高くなるように制御されることが好ましい。
【0099】
例えば、変復調部5が、送信精度や受信精度を検出し、この送信精度や受信精度から、いずれのチャネルの輻射電力を高くすることが必要であるかを検出する。この検出に応じて、補正値の変更が必要になることがある。変復調部5は、補正値の変更を記憶部8に対して命令し、記憶部8に記憶される補正値が書き換えられる。制御部4は、書き換えられた補正値を用いて、増幅器2の出力信号の端子電力を制御できるようになる。この結果、送受信状態の変化に合わせた送信信号を、送信装置制御デバイス1は、出力できるようになる。
【0100】
記憶部8が外部から書き換えられる場合には、送信装置を使用するユーザーが、スイッチ等の操作やプログラムの操作を通じて、記憶部8の補正値を書き換える。
【0101】
以上のように、記憶部8が備わって、補正値がアップデートできることも、送信装置制御デバイス1が様々な場面で使用されることにとって好適である。
【0102】
(ダイナミックな制御)
制御部4は、送信装置に使用される送信装置制御デバイス1に備わる。制御部4は、送信装置制御デバイス1のアンテナ3の出力特性に基づいて得られる補正値によって、増幅器2の出力信号の端子電力を制御する。すなわち、送信装置のみに着目した静的な制御である。
【0103】
実施の形態1で説明した通り、制御部4の制御によって、アンテナ3から出力される送信信号は、周波数による輻射電力の差異が少ない。しかしながら、この制御は、送信装置およびアンテナ3の特性に基づいて行われている。実際の送受信状態の時間的変動を考慮したものではない。
【0104】
例えば、送受信の状態変化によっては、所定周波数帯域のある帯域の受信状態が極めて悪くなったり、良くなったりなどの変動が、時間的に生じることがある。受信環境によって、あるチャネルの受信状態が極めて劣化することなどがある。この場合には、図2のように、一定の幅に収まる輻射電力を有する送信信号が出力されていたとしても、極めて劣化したチャネルの送信信号を、受信装置は受信することが困難となる。
【0105】
送信装置と受信装置とは、通信を通じて、お互いの情報をやり取りする。図8は、本発明の実施の形態2における通信装置の通信状態を示す模式図である。送信装置10と受信装置20とが、無線信号を用いて通信を行なっている。なお、送信装置10および受信装置20のそれぞれは、送信および受信の両方の機能を持っていても良い。
【0106】
送信装置10は、送信装置制御デバイス1を備え、アンテナ3から出力される送信信号の輻射電力を、所定周波数帯域において一定の幅に収まるように制御している。すなわち、所定周波数帯域に含まれる複数のチャネルのそれぞれは、アンテナ3から出力される際には、他のチャネルの輻射電力との相違が大きくなく、受信環境を考慮しない場合には、全てのチャネルが、受信可能な閾値を超える輻射電力を有している。受信装置20は、アンテナ23で、送信装置10から送信される送信信号を受信する。受信部21は、アンテナ23で受信した信号を受信処理する。復調部22は、受信した信号を復調して、必要なデータを取り出す。
【0107】
このとき、受信部21や復調部22は、受信状態を判断できる。受信環境の変化や他の通信状態の変化によって受信状態は変動することがあり、受信部21や復調部22は、この受信状態の変化を検出できる。例えば、あるチャネルを用いて通信している際に、受信環境の変化によって、このチャネルの受信状態が極めて劣化することも生じる。この場合には、送信装置10および受信装置20は、他のチャネルに通信を切り替えることが好適である。しかしながら、他のチャネルが空いていない場合には、チャネルの切り替えができない。
【0108】
図9は、本発明の実施の形態2における受信装置で受信する送信信号の輻射電力を示すグラフである。例えば、送信装置10と受信装置20は、チャネル3を用いて通信を行なっている。このとき、受信環境の変化によってチャネル3の輻射電力が低下することがある。図9は、チャネル3の輻射電力が低下した状態を示している。チャネル3の輻射電力は、受信可能な閾値を下回っている。
【0109】
この場合には、受信装置20は、このチャネル3の輻射電力が不十分であることを判断し、その旨を送信装置10に通知する。送信装置10は、使用しているチャネル3の輻射電力が低下している(受信装置20において)ことに基づき、チャネル3の輻射電力を増加させる。このとき、送信装置制御デバイス1は、増幅器2の出力信号の電力である端子電力を制御する。例えば、送信装置制御デバイス1は、図10に示されるように、端子電力において、チャネル3の値を、大きくする。図10は、本発明の実施の形態2における制御後の端子電力のグラフである。本来は、アンテナ3の出力特性に合わせてチャネル3の端子電力を小さくしておくことが適当であるが、チャネル3の輻射電力が不足していることに基づき、端子電力の際にその値を大きくする。この結果、アンテナ3から出力される送信信号におけるチャネル3の輻射電力は十分な値となり、受信装置20は、チャネル3の信号を確実に受信できるようになる。
【0110】
このとき、制御部4は、増幅器2の出力を補正する補正値を、受信装置20での受信状態に基づく調整を受けることで、図10のような端子電力の制御を行える。
【0111】
以上のように、送信装置制御デバイス1は、受信装置20での受信状態の変化に対して、ダイナミックに端子電力を制御することができる。
【0112】
(送信装置制御デバイスの適用)
実施の形態1、2で説明した送信装置制御デバイス1は、様々な機器や装置に適用される。図11は、本発明の実施の形態2における無線機器のブロック図である。
【0113】
無線機器30は、実施の形態1,2で説明した送信装置制御デバイス1と、送信装置制御デバイス1にデータ信号を出力する送信回路31と、送信装置制御デバイス1および送信回路31の少なくとも一方を制御する制御回路32を備える。送信回路31から出力されるデータ信号を、送信装置制御デバイス1は、アンテナ3から送信信号として出力する。このとき、実施の形態1,2で説明したように、アンテナ3の出力特性に基づいて、端子電力が制御される。この結果、無線機器30は、所定周波数帯域において、送信信号の輻射電力の周波数依存性を低減できる。
【0114】
このように、送信装置制御デバイス1を備える無線機器30は、アンテナ3の出力特性に関らず、所定周波数帯域における送信信号の輻射電力の差異を低減できる。この結果、無線機器30は、使用が許可されている所定周波数帯域を有効活用して通信を行なうことができる。
【0115】
ここで、無線機器30は、ラジオマイク、トランシーバー、コードレス電話機、コンピュータペリフェラル機器、ワイヤレススピーカ、ワイヤレスマイク、無線医療機器、FMトランスミッター、RF−ID機器およびワイヤレス給電機器の少なくとも一つであることも好適である。これらの機器は、所定周波数帯域を用いて無線通信を行なう。この場合も、これらの無線機器30は、送信装置制御デバイス1を備えているので、所定周波数帯域を有効活用できる。
【0116】
このように、送信装置制御デバイス1は様々な無線機器や通信装置に適用が可能であり、適用された無線機器や通信機器は、所定周波数帯域を有効活用して、最適な無線通信を実行できる。
【0117】
なお、実施の形態1〜2で説明された送信装置制御デバイスは、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0118】
1 送信装置制御デバイス
2 増幅器
3 アンテナ
4 制御部
5 変復調部
8 記憶部
10 送信装置
20 受信装置
21 受信部
22 復調部
30 無線機器
31 送信回路
32 制御回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ信号を増幅する増幅器と、
前記増幅器の出力信号を受けて送信信号を出力するアンテナと、
前記増幅器からの出力信号の電力(以下、「端子電力」という)を、前記アンテナの出力特性に基づく所定条件によって、制御する制御部と、を備え、
前記所定条件は、前記アンテナからの出力される送信信号の電力(以下、「輻射電力」という)の値を、所定周波数帯域において一定の範囲に収める補正値を含む、送信装置制御デバイス。
【請求項2】
前記制御部は、前記所定条件に基づいて、前記所定周波数帯域における前記輻射電力の値を、略同一に収める、請求項1記載の送信装置制御デバイス。
【請求項3】
前記制御部は、前記増幅器の出力信号に、前記補正値を乗じる、請求項1又は2記載の送信装置制御デバイス。
【請求項4】
前記補正値は、前記アンテナの出力特性と対称となる曲線に対応する、請求項1から3のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項5】
前記補正値は、前記アンテナの出力特性と逆特性となる、請求項4記載の送信装置制御デバイス。
【請求項6】
前記制御部は、前記増幅器へ入力する入力信号および前記増幅器から出力する出力信号の少なくとも一方の電力を制御する、請求項1から5のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項7】
前記補正値は、前記増幅器に接続されるアンテナ毎に得られる出力特性に基づいて、定められる、請求項1から6のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項8】
前記補正値は、前記増幅器に接続されるアンテナの部品ばらつきに対応する調整を受けることが可能である、請求項1から7のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項9】
前記補正値は、前記アンテナからの送信信号を受信する受信装置での受信状態に基づく調整を受けることが可能である、請求項1から8のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項10】
前記補正値を記憶する記憶部を更に備える、請求項1から9のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項11】
前記制御部は、マイクロプロセッサの少なくとも一部の機能によって実現される、請求項1から10のいずれか記載の送信装置制御デバイス。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか記載の送信装置制御デバイスと、
前記送信装置制御デバイスにデータ信号を出力する、送信回路と、
前記送信装置制御デバイスおよび前記送信回路の少なくとも一方を制御する制御回路と、を備える無線機器。
【請求項13】
前記無線機器は、ラジオマイク、トランシーバー、コードレス電話機、コンピュータペリフェラル機器、ワイヤレススピーカ、ワイヤレスマイク、無線医療機器、FMトランスミッター、RF−ID機器およびワイヤレス給電機器の少なくとも一つである、請求項12記載の無線機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−38561(P2013−38561A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−172441(P2011−172441)
【出願日】平成23年8月6日(2011.8.6)
【出願人】(511146794)株式会社Braveridge (2)
【Fターム(参考)】