説明

送気管及び過給器

【課題】配管スペースをコンパクト化可能な送気管、及びその送気管を備える過給器を提供する。
【解決手段】送気管15は、第1端部153aと第2端部153bとを有する筒状の曲管部153と、第1方向に沿って延びる第1直管部152と、第2方向に沿って延びる第2直管部153とを備える。曲管部153の断面形状は、第3方向において長辺を有する矩形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送気管及びその送気管を備える過給器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジン室などの狭い空間内に送気管を配管する場合、送気管が周辺部材と干渉しないように、送気管を折り曲げる手法が広く用いられている。
例えば、特許文献1では、建設機械のエンジン室内において、エアクリーナと過給器とに連通する送気管が、過給器に近接する位置で折り曲げられている。これにより、送気管が周辺部材と干渉することが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−240431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の送気管は一様な円筒形状に形成されているので、送気管のうち折り曲げられた部分が周辺部材に向かって突出してしまう。そのため、送気管の配管スペースをコンパクト化するにも限界がある。
本発明は上述の状況に鑑みてなされたものであり、配管スペースをコンパクト化可能な送気管、及びその送気管を備える過給器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1の態様に係る送気管は、第1端部と、第2端部と、第1端部及び第2端部に連通する矩形管部と、を有する筒状の曲管部と、第1方向に沿って第1端部から延びており、第1外径を有する円筒状の第1直管部と、第1方向と交差する第2方向に沿って第2端部から延びており、第2外径を有する円筒状の第2直管部と、を備える。前記曲管部の中心軸に垂直な切断面における曲管部の断面形状は、第1方向及び第2方向と直交する第3方向において長辺を有する矩形状である。
【0006】
本発明の第1の態様に係る送気管によれば、曲管部の断面形状は、第3方向において長辺を有する矩形状である。そのため、曲管部の断面形状が円形である場合に比べて、送気管を曲管部においてコンパクトに折り曲げることができる。従って、送気管の配管スペースをコンパクト化することができる。また、曲管部の断面形状が楕円形などである場合に比べて、曲管部の強度を向上させることができる。
【0007】
本発明の第2の態様に係る送気管は、本発明の第2の態様に係り、第3方向から見た場合における第1端部の外側縁は、第1曲率半径で曲がっており、第3方向から見た場合における第2端部の外側縁は、第1曲率半径とは異なる第2曲率半径で曲がっている。
本発明の第2の態様に係る送気管によれば、曲管部における折れ曲がりの自由度を向上することができる。そのため、送気管の配管スペースをコンパクト化しつつ、周辺部材との干渉を効果的に回避することができる。
【0008】
本発明の第3の態様に係る送気管は、本発明の第3の態様に係り、第3方向から見た場合における第1端部と第2端部との間の矩形管部の外側縁は、矩形管部の外側縁は、直線的に延びる。
本発明の第3の態様に係る送気管によれば、矩形管部の外側縁が曲がっている場合に比べて、曲管部が周辺部材に向かって突出することを抑制できる。従って、送気管をよりコンパクトに折り曲げることができる。
【0009】
本発明の第4の態様に係る送気管は、本発明の第3又は第4の態様に係り、第3方向から見た場合における曲管部の内側縁は、第1曲率半径及び第2曲率半径よりも小さい第3曲率半径で曲がっている。
【0010】
本発明の第5の態様に係る送気管は、本発明の第5の態様に係り、第3曲率半径は、第2外径の40%以上である。
本発明の第5の態様に係る送気管によれば、曲管部内における空気の進行方向が急峻に曲げられることを抑制できる。そのため、送気管から流出する空気の速度ばらつきを小さくすることができる。
【0011】
本発明の第6の態様に係る過給器は、コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、コンプレッサ内に空気を送る吸入管と、第1乃至第6の態様のいずれかにの送気管と、を備える。第2直管部は、吸入管に連結される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配管スペースをコンパクト化可能な送気管、及びその送気管を備える過給器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係るターボ過給器10の構成を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る送気管15の構成を示す平面図である。
【図3】実施形態に係る送気管15の径方向における断面図である。
【図4】図2の部分拡大図である。
【図5】実施例に係るシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(ターボ過給器10の構成)
実施形態に係るターボ過給器10の構成について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係るターボ過給器10の構成を示す斜視図である。なお、図1では、ターボ過給器10が送気管15を介してエアクリーナ20に接続された状態が示されている。
ターボ過給器10は、コンプレッサハウジング11と、吸入管12と、タービンハウジング13と、センターハウジング14と、を有する。
【0015】
コンプレッサハウジング11は、図示しないコンプレッサインペラを収容する。吸入管12は、コンプレッサハウジング11に連結されている。吸入管12は、送気管15から流入する空気をコンプレッサインペラに送る。タービンハウジング13は、図示しないタービンホイールを収容する。タービンホイールは、図示しないシャフトを介してコンプレッサインペラに連結されている。センターハウジング14は、コンプレッサハウジング11とタービンハウジング13の間に配置され、シャフトを収容している。
【0016】
送気管15は、吸入管12とエアクリーナ20の出口管20aとに連結されるゴム管である。具体的に、送気管15は、出口管20aに連結される出口管接続部151と、吸入管12に連結される第2直管部154と、を有する。送気管15の構成については後述する。
また、送気管15は、図示しない周辺部材との干渉を回避するために、吸入管12及び出口管20aそれぞれに近接する位置で折り曲げられている。
【0017】
(送気管15の構成)
実施形態に係る送気管15の構成について、図面を参照しながら説明する。図2は、実施形態に係る送気管15の構成を示す平面図である。図3は、実施形態に係る送気管15(曲管部153を含む)の中心軸Cに垂直な切断面における断面図である。ただし、図2は、第1方向及び第2方向と直交する第3方向から見た場合における送気管15の平面図である。第1方向とは、第1直管部152の中心線に平行な方向であり、第2方向とは、第2直管部154の中心線に平行な方向である。第3方向とは、図2の紙面に垂直な方向である。また、以下の説明において、外周Sとは、送気管15の周方向に沿った外周のことである。
【0018】
送気管15は、出口管接続部151と、第1直管部152と、曲管部153と、第2直管部154と、によって構成されている。
出口管接続部151は、上述の通りエアクリーナ20の出口管20aに連結される。出口管接続部151は、出口管20aからの流入する空気を受け入れる流入口T1を有する。
【0019】
第1直管部152は、出口管接続部151と曲管部153とに連通する。第1直管部152は、第1方向に沿って直線的に延びる直管であり、一様な円筒状に形成されている。具体的に、第1直管部152は、図3(a)に示すように、一様な第1外径R1と一様な第1内径r1とを有する。すなわち、第1直管部152の外周S1の曲がり方は一様である。図3(a)は、第1直管部152の径方向断面図、すなわち、図2のA−A断面図である。
【0020】
曲管部153は、第1直管部152と第2直管部154とに連通する。曲管部153は、第1直管部152から第2直管部154に向かって折り曲げられた筒状の曲管である。曲管部153は、第1端部153aと、第2端部153bと、矩形管部153cと、を有する。第1端部153aは、第1直管部152と矩形管部153cとに連通する。第2端部153bは、第2直管部154と矩形管部153cとに連通する。矩形管部153cは、第1端部153aと第2端部153bとに連通する。
【0021】
ここで、曲管部153は、一様な円筒状ではなく、第3方向において扁平に形成されている。
具体的に、第1端部153aの断面形状は、図2のB−B断面図である図3(b)に示すように、第3方向に長軸を有する略楕円形状である。具体的には、中心軸Cを含む平面において第3方向と直交する第4方向における第1端部153aの幅A1は、第1外径R1より小さく、第3方向における第1端部153aの高さB1は、第1直管部152の第1外径R1と略同一である。また、第1端部153aの外周S2のうち第4方向両端部は、第3方向に沿って直線状に形成されている。このように、第1端部153aの断面形状は、第1直管部152の断面形状に比べて、第3方向において扁平である。
【0022】
また、矩形管部153cの断面形状は、図2のC−C断面図である図3(c)に示すように、第3方向に長辺を有する矩形状である。具体的には、第4方向における矩形管部153cの幅A2は、第1端部153aの幅A1及び第2端部153bの幅A3より小さく、第3方向における矩形管部153cの高さB2は第1外形R1と第2外径R2(>R1)との間の大きさである。また、矩形管部153cの外周S3のうち第4方向両端部は、第3方向に沿って直線状に形成され、矩形管部153cの外周S3のうち第3方向両端部は、第4方向に沿って直線状に形成されている。このように、矩形管部153cの断面形状は、第1直管部152の断面形状に比べて、第3方向において扁平である。
【0023】
さらに、第2端部153bの断面形状は、図2のD−D断面図である図3(d)に示すように、第3方向に長軸を有する略楕円形状である。具体的には、第4方向における第2端部153bの幅A3は、第2直管部154の第2外径R2より小さく、第3方向における第2端部153bの高さB3は、第2直管部154の第2外径R2と略同一である。また、第2端部153bの外周S4のうち第4方向両端部は、第3方向に沿って直線状に形成されている。このように、第2端部153bの断面形状は、第2直管部154の断面形状に比べて、第3方向において扁平である。
このように、曲管部153は、全体として第3方向において扁平に形成されているが、一様に扁平に形成されているものではない。曲管部153は、第1端部153aにおいて円筒状から矩形状に徐々に変形されるとともに、第2端部153bにおいて矩形状から円筒状に徐々に変形されている。
【0024】
第2直管部154は、上述の通り吸入管12に連結される。第2直管部154は、空気が流出する流出口T2を有する。第2直管部154は、第2方向に沿って直線的に延びる直管であり、一様な円筒状に形成されている。具体的に、第2直管部154は、図3(e)に示すように、一様な第2外径R2(>R1)と一様な第2内径r2(>r1)とを有する。すなわち、第2直管部154の外周S4の曲がり方は、第1直管部152の外周S1と同様、曲管部153の外周(外周S2,S3,S4を含む)の曲がり方よりも急である。図3(e)は、図2のE−E断面図である。
【0025】
(曲管部153における折れ曲がり)
実施形態に係る曲管部153における折れ曲がりについて、図面を参照しながら説明する。図4は、図2の部分拡大図であり、第3方向から見た場合における曲管部153の平面図である。なお、以下の説明において、外側縁Pとは、送気管15の延在方向に沿った外側縁のことある。
【0026】
第1端部153aの外側縁P1は、中心点X1を中心として第1曲率半径Y1で曲がっている。第2端部153bの外側縁P2は、中心点X2を中心として第2曲率半径Y2で曲がっている。矩形管部153cの外側縁P3は、直線的に延びており、曲がっていない。本実施形態において、第1曲率半径Y1は、第2曲率半径Y2とは異なる曲率半径であり、第2曲率半径Y2よりも大きい。
【0027】
また、曲管部153の内側縁Qは、中心点X3を中心として第3曲率半径Y3で曲がっている。本実施形態において、第3曲率半径Y3は、第1曲率半径Y1及び第2曲率半径Y2よりも小さい。また、第3曲率半径Y3は、第1直管部152及び第2直管部154の第2外径R2の40%以上である。
【0028】
(送気管15の製造方法)
まず、組立型のチューブ内側に分割可能な中子をセットする。次に、チューブゴムを押し出して組立型に挿入する。次に、挿入されたチューブゴムに補強材をラッピングして加硫する。最後に、組立型を分解した後、中子を分割しながら抜き取る。
【0029】
(作用及び効果)
(1)実施形態に係る送気管15において、曲管部153の断面形状は、第3方向において長辺を有する矩形状である。そのため、曲管部153の断面形状が円形である場合に比べて、送気管15を曲管部153においてコンパクトに折り曲げることができる。従って、送気管15の配管スペースをコンパクト化することができる。また、曲管部153の断面形状が楕円形などである場合に比べて、曲管部153の強度を向上させることができる。このような効果は、ターボ過給器10の吸入力によって内部で負圧が発生する送気管15において特に有用である。
【0030】
(2)第1端部153aの外側縁P1に係る第1曲率半径Y1は、第2端部153bの外側縁P2に係る第2曲率半径Y2とは異なっている。そのため、曲管部153における折れ曲がりの自由度を向上することができる。そのため、送気管15の配管スペースをコンパクト化しつつ、周辺部材との干渉を効果的に回避することができる。
(3)矩形管部153cの外側縁P3は、直線的に延びている。そのため、矩形管部153cの外側縁P3が曲がっている場合に比べて、曲管部153が周辺部材に向かって突出することを抑制できる。従って、送気管15をよりコンパクトに折り曲げることができる。
【0031】
(4)曲管部153の内側縁Qは、第1曲率半径Y1及び第2曲率半径Y2よりも小さい第3曲率半径Y3で曲がっている。第3曲率半径Y3は、第2直管部154の第2外径R2の40%以上である。
このように、第3曲率半径Y3を第2外径R2の40%以上に設定することによって、曲管部153内における空気の進行方向が急峻に曲げられることを抑制できる。そのため、送気管15の流出口T2から流出する空気の速度ばらつきを小さくすることができる。従って、コンプレッサハウジング11内のコンプレッサインペラにおけるハンチングを抑えられるので、コンプレッサインペラが損傷することを抑制できる。
【0032】
(その他の実施形態)
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
(A)上記実施形態において、送気管15は、ゴム管であることとしたが、これに限られるものではない。送気管15は、例えば鋳型によって形成される鋳造品であってもよい。
【0033】
(B)上記実施形態において、送気管15は、ターボ過給器10に設けられるものとしたが、これに限られるものではない。例えば、送気管15は、スーパーチャージャー式の過給器、ディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel particulate filter)処理装置、選択還元触媒(Selective Catalytic Reduction)処理装置などに設けられていてもよい。
(C)上記実施形態において、送気管15は、吸入管側に設けられるものとしたが、これに限られるものではない。送気管15は、排気管側に設けられていてもよい。
【0034】
(D)上記実施形態において、第1直管部152の第1外径R1は第2直管部154の第2外径R2より大きく、第1直管部152の第1内径r1は第2直管部154の第2内径r2より大きいこととしたが、これに限られるものではない。第1外径R1は、第2外径R2より小さくても、また、同じであってもよい。同様に、第1内径r1は、第2内径r2より小さくても、また、同じであってもよい。
【実施例】
【0035】
実施例に係る送気管と従来例に係る送気管それぞれをターボ過給器に適用した場合において、コンプレッサインペラに当たる空気の速度ばらつきをシミュレーションした。なお、従来例に係る送気管としては、一様な外径を有する円筒管を用いた。
図5(a)は、実施例に係る送気管を適用した場合におけるシミュレーション結果である。図5(b)は、従来例に係る送気管を適用した場合におけるシミュレーション結果である。図5に示すように、実施例に係る送気管によれば、従来例に係る送気管に比べて、空気の速度ばらつき(最大流速と最小流速との差)を1/2程度まで小さくできることが判った。従って、上記実施形態に係る送気管15によれば、安定した空気の供給が行えることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、配管スペースをコンパクト化可能な送気管を提供できるので、配管分野において有用である。
【符号の説明】
【0037】
10 ターボ過給器
11 コンプレッサハウジング
12 吸入管
13 タービンハウジング
14 センターハウジング
15 送気管
151 出口管接続部
152 第1直管部
153 曲管部
153a 第1端部
153b 第2端部
153c 矩形管部
154 第2直管部
20 エアクリーナ
20a 出口管
S 送気管15の周方向に沿った外周縁
P 送気管15の延在方向に沿った外側縁
Q 曲管部153の延在方向に沿った内側縁
A 第4方向における幅
B 第3方向における高さ
C 送気管15の中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端部と、第2端部と、前記第1端部及び前記第2端部に連通する矩形管部と、を有する筒状の曲管部と、
第1方向に沿って前記第1端部から延びており、第1外径を有する円筒状の第1直管部と、
前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記第2端部から延びており、第2外径を有する円筒状の第2直管部と、
を備え、
前記曲管部の中心軸に垂直な切断面における前記矩形管部の断面形状は、前記第1方向及び前記第2方向と直交する第3方向において長辺を有する矩形状である、
送気管。
【請求項2】
前記第3方向から見た場合における前記第1端部の外側縁は、第1曲率半径で曲がっており、
前記第3方向から見た場合における前記第2端部の外側縁は、前記第1曲率半径とは異なる第2曲率半径で曲がっている、
請求項1に記載の送気管。
【請求項3】
前記第3方向から見た場合における前記矩形管部の外側縁は、直線的に延びる、
請求項2に記載の送気管。
【請求項4】
前記第3方向から見た場合における前記曲管部の内側縁は、前記第1曲率半径及び前記第2曲率半径よりも小さい第3曲率半径で曲がっている、
請求項2又は3に記載の送気管。
【請求項5】
前記第3曲率半径は、前記第2外径の40%以上である、
請求項4に記載の送気管。
【請求項6】
コンプレッサインペラを収容するコンプレッサハウジングと、
前記コンプレッサ内に空気を送る吸入管と、
請求項1乃至5のいずれかに記載の送気管と、
を備え、
前記第2直管部は、前記吸入管に連結される、
過給器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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