説明

送液装置

【課題】チューブの寸法が変動しても、必要最小限の押圧力でチューブを潰して、トルク変動や脱調の発生を防止しつつ適正な送液を行う。
【解決手段】周方向に間隔をあけた軸線回りに回転可能に支持された複数のローラ3aを周方向に回転駆動するロータ3と、該ロータ3の半径方向外方に対向配置され、ローラ3aとの間に可撓性材料からなるチューブ2を径方向に挟む押さえ部材4と、該押さえ部材4とロータ3との距離を変更する距離調節部5とを備え、該距離調節部5が、押さえ部材4に設けられチューブ2を介してロータ3から受ける圧力を検出する圧力センサ9と、該圧力センサ9により検出された圧力に基づいて押さえ部材4とロータ3との距離を設定する制御部10とを備える送液装置1を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送液装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ペリスタルティックポンプのように、弾性変形可能なチューブを径方向に挟むようにローラと押し当て面とを配置して、ローラと押し当て面との間でチューブを径方向に潰しながら、その潰す位置をチューブの長手方向に移動させることで、チューブ内の液体に送りをかける送液装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
この送液装置においてはローラを押し当て面方向に付勢するバネを設けることにより、チューブの部品精度のばらつきを吸収することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−261864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の送液装置では、バネの弾性変形によりローラの回転半径を変化させるので、チューブの寸法がばらついてもチューブの内径を完全に潰しながらローラを回転させることができる。しかしながら、特に、チューブの外径が大きくかつ肉厚が厚いチューブを潰す場合には、バネの弾性変形量が大きくなって、押し付け圧力が増大するため、ローラがチューブを潰しているときと潰していないときとで、ローラを回転させるモータのトルク変動が大きいという不都合がある。また、過度のトルク変動が発生する場合には、モータが脱調する場合もあるという問題がある。
【0005】
本は発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、チューブの寸法が変動しても、必要最小限の押圧力でチューブを潰して、トルク変動や脱調の発生を防止しつつ適正な送液を行うことができる送液装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、周方向に間隔をあけた軸線回りに回転可能に支持された複数のローラを周方向に回転駆動するロータと、該ロータの半径方向外方に対向配置され、前記ローラとの間に可撓性材料からなるチューブを径方向に挟む押さえ部材と、該押さえ部材と前記ロータとの距離を変更する距離調節部とを備え、該距離調節部が、前記押さえ部材に設けられ前記チューブを介して前記ロータから受ける圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサにより検出された圧力に基づいて前記押さえ部材と前記ロータとの距離を設定する制御部とを備える送液装置を提供する。
【0007】
本発明によれば、チューブを径方向に挟んで配置されるローラと押さえ部材との距離を距離調節部によって近接させて行くと、押さえ部材に設けられた圧力センサにより検出される圧力値が変動していく。チューブが潰れる過程では、大きな圧力変動はないが、チューブが完全に潰れてチューブの内径が密着した時点で大きな圧力変動が発生する。したがって、この位置においてローラが回転させられるように、制御部が、押さえ部材とロータとの距離を設定することによって、ロータの回転中にローラの回転半径を変動させずに済み、ロータの回転時におけるトルク変動や脱調の発生を未然に防止して、適正な送液を行うことができる。
【0008】
上記発明においては、前記制御部が、前記押さえ部材と前記ロータとの間にチューブを配置して、前記押さえ部材と前記ロータとを一定速度で近接させたときに、前記圧力センサにより検出された圧力の変化率が、不連続に変化した位置に、前記押さえ部材と前記ロータとの距離を設定することとしてもよい。
このようにすることで、制御部は、不連続な圧力変動によってチューブが完全に潰れた位置を精度よく検出して、適正な送液を行うことができる押さえ部材とロータとの距離を簡易に設定することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、チューブの寸法が変動しても、必要最小限の押圧力でチューブを潰して、トルク変動や脱調の発生を防止しつつ適正な送液を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る送液装置を示す模式的な全体構成図である。
【図2】図1の送液装置に設置されるチューブの(a)自由状態、(b)潰れた状態をそれぞれ示す横断面図である。
【図3】図1の送液装置の間隔変更機構によるロータの位置と圧力センサにより検出される圧力との関係を示すグラフである。
【図4】図1の送液装置の間隔変更機構の設定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る送液装置1について、図面を参照しながら以下に説明する。
本実施形態に係る送液装置1は、図1に示されるように、送液を行うための可撓性材料からなるチューブ2を径方向に挟む位置に配置されるロータ3および押さえ部材4と、これらロータ3と押さえ部材4との相対距離を調節する距離調節部5とを備えている。チューブ2には、送液する液体を貯留する液体容器6と、液体の送液先となる目的容器7とがそれぞれ端部に接続されている。
【0012】
ロータ3は、周方向に間隔をあけて複数、例えば、3個のローラ3aを備え、該ローラ3aを周方向に回転駆動するようになっている。各ローラ3aは、ロータ3の回転軸線に平行な軸線回りに回転自在に支持されている。
押さえ部材4は、ロータ3の外径寸法より若干大きな内径寸法を有する円弧内面4aを備えている。
【0013】
距離調節部5は、ロータ3を押さえ部材4に対して近接、離間する方向に移動可能に支持する間隔変更機構8と、押さえ部材4に設けられた圧力センサ9と、該圧力センサ9から出力される圧力値に基づいて、間隔変更機構8を制御する制御部10とを備えている。
【0014】
圧力センサ9は、押さえ部材4とローラ3aとの間にチューブ2が挟まれたときに、チューブ2を介してローラ3aから受ける圧力を検出するようになっている。
制御部10は、押さえ部材4とロータ3との間にチューブ2が挟まれた初期状態において、間隔変更機構8を作動させて、ロータ3を一定速度で押さえ部材4に近接させ、その際に圧力センサ9により検出される圧力を監視するようになっている。
【0015】
具体的には、図2(a)に示されるように、チューブ2が潰れていない状態から押さえ部材4に対してロータ3を近接させていくと、チューブ2の剛性分だけ圧力センサ9により検出される圧力は徐々に増加していく。そして、図2(b)に示されるように、チューブ2の内径が完全に潰れて密着した時点で、図3に示されるように、圧力センサ9により検出される圧力は不連続に増加するように変化するようになる。したがって、制御部10は、この圧力が不連続に変化する位置X2にロータ3を設定するように間隔変更機構8を制御するようになっている。
【0016】
このように構成された本実施形態に係る送液装置1の作用について以下に説明する。
本実施形態に係る送液装置1を用いて送液を行うには、図4に示されるように、間隔変更機構8を作動させて、押さえ部材4に対してロータ3を十分に離間させた位置に配置し、いずれかのローラ3aが圧力センサ9に対向する位置となるようにロータ3の回転位置を調節し、ローラ3aと圧力センサ9との隙間に、可撓性材料からなるチューブ2を、隙間が形成されるように配置する(ステップS1)。
【0017】
次いで、制御部10は、間隔変更機構8を作動させて、押さえ部材4に対して近接する方向に一定速度でロータ3を移動させ(ステップS2)、押さえ部材4に配置された圧力センサ9により検出される圧力を監視する。そして、制御部10は、圧力センサ9により検出された圧力が不連続に変化したか否かを判定し(ステップS3)、圧力が2回目に不連続に変化する位置X2を監視する(ステップS4)。
【0018】
すなわち、圧力が1回目に不連続に変化する位置X1は、図2(a)に示されるように、押さえ部材4とローラ3aとの隙間が、丁度、自由状態のチューブ2の直径寸法に一致して、チューブ2の外面が圧力センサ9に押し付けられた時点である。そして、圧力が2回目に不連続に変化する位置X2は、図2(b)に示されるように、押さえ部材4とローラ3aとの隙間が、チューブ2の肉厚2枚分、すなわち、内径が完全に潰れて密着したチューブ2の外径寸法と一致した時点である。したがって、制御部10は、間隔変更機構8を作動させて、この圧力が2回目に不連続に変化した位置X2に、ロータ3を戻すように設定する(ステップS5)。
【0019】
これにより、チューブ2の寸法のばらつき等が存在しても、チューブ2の内径が完全に潰れて密着する位置で、ローラ3aの回転半径を変動させることなくロータ3を回転駆動することができ、トルク変動や脱調の発生を未然に防止できるという利点がある。また、チューブ2の内径が完全に潰れる位置で回転駆動されるので、チューブ2の内部の液体を漏れなく効率よく送液することができる。
【0020】
なお、本実施形態に係る送液装置1においては、間隔変更機構8が、押さえ部材4を固定して、ロータ3aを移動させることとしたが、ロータ3aを固定して押さえ部材4を移動させることにしてもよい。
また、ローラ3aの数を3個としたが、これに限定されるものではない
【0021】
さらに、自由状態においてほぼ円形断面が維持されるチューブ2を使用する場合には、上述した1回目に不連続に圧力が変化する位置X1においてチューブ2の外径寸法を検出でき、2回目に不連続に圧力が変化する位置X2においてチューブ2の肉厚寸法を検出できる。したがって、これを利用してチューブ2の内径寸法、すなわち、内断面積を算出することができ、制御部10が、内断面積に応じてロータ3の回転速度を調節することにしてもよい。このようにすることで、チューブ2がばらついても、送液量を変動させずに送液することができるという利点がある。
【符号の説明】
【0022】
1 送液装置
2 チューブ
3 ロータ
3a ローラ
4 押さえ部材
5 距離調節部
9 圧力センサ
10 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周方向に間隔をあけた軸線回りに回転可能に支持された複数のローラを周方向に回転駆動するロータと、
該ロータの半径方向外方に対向配置され、前記ローラとの間に可撓性材料からなるチューブを径方向に挟む押さえ部材と、
該押さえ部材と前記ロータとの距離を変更する距離調節部とを備え、
該距離調節部が、前記押さえ部材に設けられ前記チューブを介して前記ロータから受ける圧力を検出する圧力センサと、該圧力センサにより検出された圧力に基づいて前記押さえ部材と前記ロータとの距離を設定する制御部とを備える送液装置。
【請求項2】
前記制御部が、前記押さえ部材と前記ロータとの間にチューブを配置して、前記押さえ部材と前記ロータとを一定速度で近接させたときに、前記圧力センサにより検出された圧力の変化率が、不連続に変化した位置に、前記押さえ部材と前記ロータとの距離を設定する請求項1に記載の送液装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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