送達ビヒクル、生体作用活性物質およびウイルスワクチン
本発明は、動物への生体作用活性薬剤の安全な送達のための組成物および方法に関する。好ましくは、生体作用活性薬剤がワクチンであり、そしてさらに好ましくは生体作用活性薬剤がウイルスである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルスワクチンに例示されるがしかしそれらに限定はされない新規のウイルスワクチンに関する。本発明は、さらに、エーロゾルまたは遊離形態で脊椎動物に送達された場合に、脊椎動物に対して好ましくない作用を有するであろう生体作用活性(bioactive)薬剤の動物、好ましくは脊椎動物への安全な送達のための新規の組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
A型インフルエンザウイルスは通常のインフルエンザを起こしそして米国内での致死率の最大の原因となるウイルスである(非特許文献1)。それは免疫無防備状態の個体が、健全な人々と比較してより重くて致死に至るインフルエンザの事例になりやすいという事実に大きく依存する。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科に属するRNAウイルスである。ウイルスゲノムは、下記のタンパク質をコードする8種の一本鎖RNAセグメントを含んでなる:赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる2種の表面糖タンパク質、M2イオンチャンネルタンパク質、M1マトリックスタンパク質、ウイルスRNAと会合する核タンパク質、および3種のRNAポリメラーゼ(PA、PB1およびPB2)(非特許文献2)。RNAゲノムのエラーを起こし易い性質のために、インフルエンザウイルスは2種の主要な表面タンパク質;HAおよびNA内に変異を蓄積する。A型インフルエンザウイルス群内でHAまたはNA内に存在する抗原性差異に基づいて、16種の異なるHAおよび9種の異なるNAサブタイプが同定されている。遺伝子多様性の第二のレベルは、感染された宿主内で再構築を受けるRNAフラグメントの能力によるものであり、従ってヒトおよび動物起源のRNAセグメントを含むウイルスを創成する(非特許文献3)。
【0003】
インフルエンザウイルスの抗原可変性の結果として、ウイルスエンベロープタンパク質、赤血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N)の組成は常に変化する。この可変性は、動物種内、または種間のいずれかでの伝染の高い効率をしばしば持つウイルスの出現株をもたらすことが多い。さらに重要なことには、ウイルスの新しい株の生成は、感染の恐れがあるヒト集団内では新しい株に対して向かう免疫性が低いかまたは存在しないので、汎流行に導く(非特許文献4)。この理由により、1918−1919年の「スペイン風邪」はこれまで最も致死率が高い汎流行となり、全世界で1億人が死亡したと推定される。
【0004】
最近、種間でのインフルエンザの伝染に関する関心が高くなっている。ヒト集団内で流行する事が見いだされたインフルエンザウイルス株は、主としてHAサブタイプ1、2または3およびNAサブタイプ1または2を発現する。1918年のインフルエンザウイルス汎流行(スペイン風邪)は、H1N1ウイルスにより起きた。この荒廃的な流行感染は、その世紀内で他のもの、例えば、1957年のアジアインフルエンザ(H2N2)および1968年の香港風邪(H3N2)に引き継がれた。H1N1およびH3N2ウイルスの遺伝子変種は、人への感染を続けそして毎年流行を起こしている。A型インフルエンザウイルスのHAおよびNAの他のサブタイプは、水鳥内に維持されている。従って、再構築の過程を通じて、新しいHAサブタイプが鳥類貯蔵庫からヒト集団内に導入される可能性があり、その結果、汎流行的感染を起こす。ヒト内での鳥類インフルエンザウイルスの非効率的な複製は、汎流行的感染の発生に対する主要な障害と考えられている。
【0005】
従来は、ヒトおよび鳥類インフルエンザウイルスはブタ内でのみ再構築されると考えられてきたが、それはブタのみが両方のウイルスにより感染され得る唯一の種であったから
である。しかし、1997年に、鳥類からヒトへの直接感染の最初の事例が確認された。このウイルスは、18人に感染してその中から6人が死亡した(非特許文献4、5)。1997年以後、鳥類インフルエンザの3株からヒト集団への6回の発生があり、そしてH5N1株が最も一般的で死亡の危険がある株として現れた(非特許文献5)。この種交差伝染は、それに対していずれの現在利用できるワクチンでもヒトが防御されない汎流行インフルエンザ株が現れるというリスクをもたらす。
【0006】
新しいインフルエンザウイルス汎流行の可能性に関する関心の増大を考慮して、2種以上のウイルス株に対してヒトを防御できるインフルエンザウイルスワクチンを発見するために大きい努力がなされている。それらの努力は、ウイルスの複製を防止してインフルエンザウイルス感染を処置する効果を有する治療的分子の発見にも向けられている(非特許文献6、7)。この研究は、DNAに基づくワクチン、インフルエンザウイルス株に対してヒトを防御するように作用するRNA干渉分子の開発、およびインフルエンザウイルス株に対して有効な新規の抗ウイルス薬剤の開発を目標としている(非特許文献7、8、9、10)。
【0007】
現在、米国内でヒトに使用するために市場で入手できる2種類のインフルエンザワクチンがある。一つは、筋肉内注入として投与される死ウイルスワクチンであり、その他は鼻噴霧薬として投与される弱毒化ワクチンである。それらのワクチンの両方共に同じウイルスによるその後の感染を中和する抗インフルエンザ抗体を誘発する。しかし、変種抗原エピトープを発現するウイルスの出現株は、現在の抗体により認識されないであろう。従って、毎年異なるワクチンが製造されて投与されなければならない。
【0008】
ウイルスライフサイクルの異なる段階を妨害して作用する抗ウイルス薬剤も利用できる。ウイルスは受容体媒介エンドサイトーシスにより宿主細胞内に入る。エンドソーム内で、低いpHがウイルスとエンドソーム膜の融合の引き金を引きそしてM2イオンチャンネルがH+イオンの流入を許容しそれは細胞質内へのウイルス遺伝子の放出に導く。2種の抗ウイルス薬アマンタジン(amantadine)およびリマンチジン(rimantidine)は双方共にM2イオンチャンネルを遮断し、それによりウイルスの脱外被および細胞質内へのRNA放出を阻止する。第二の種類の抗ウイルス薬剤は、NAに対して作用しそして細胞からの新規の感染粒子のウイルスパッケージングおよび発芽を妨害する。NAは細胞表面上の受容体を含むシアル酸を除去することにより新規に発生したウイルス粒子が他のウイルス粒子と凝集しないかまたは感染された細胞の表面に付着して残留するように作用する。従って、NA阻害剤、例えばオセルタミビル(oseltamivir)およびザナミビル(zanamivir)は、感染された細胞の膜にビリオンを付着したままとさせそして他の細胞への付着、従って感染を防止する。それらの薬剤は、M2に対する天然の耐性株およびNA遮断剤の存在にもかかわらず、汎流行感染の場合にウイルス拡散を封じ込める方法を提供するであろう(非特許文献11、12)。
【0009】
次の汎流行は、これまでヒトに感染していないHAサブタイプを有するウイルスにより起きるであろうことに留意して、ワクチン開発の新しい技術が試験されている。例えば、逆遺伝学が、プラスミド内に候補株のHAおよびNA遺伝子をクローンするために使用されている。次いでマスタードナー株の他の6種の遺伝子と一緒にそれらのプラスミドを用いて細胞がトランスフェクションされる。従って、逆遺伝学により産生されたビリオンは、関係する抗原性分子HAおよびNAの発現をドナー株の特性(高い収率、寒冷適応、弱毒化株)と複合している。逆遺伝学は候補ワクチンを得るために必要な時日をかなり短くする(非特許文献13)。しかし、汎流行が起きた場合に、原因ウイルスは米国に一ヵ月以内に到着するであろう(非特許文献4)。従って、この戦略を用いて有効なワクチンを開発するために必要な時日は十分ではないであろう。逆遺伝学に関連する他の欠点は、8種またはそれ以上のプラスミドを1個の細胞内に同時にトランスフェクションすることおよびワクチン製造に承認されている限られた数の細胞系統に関連する困難である。
【0010】
他の抗ウイルス方法は、インフルエンザウイルス遺伝子の保存された領域に対して向けられる短鎖干渉RNA(siRNA)の使用である。siRNAは長さが21〜26ヌクレオチドでありそして同族mRNAの配列特異性分解を誘導できるRNA二重鎖である。核タンパク質または酸性ポリメラーゼに特異性のsiRNAの静脈内送達は、マウスに感染するとして知られるインフルエンザウイルス株または病原性が高い鳥類株を用いる、例えばH5およびH7サブタイプを用いる致死的チャレンジからマウスを防御することが示された(非特許文献9)。siRNAはインフルエンザウイルスライフサイクルを妨害するけれども、主要な困難はこの技術をヒトに適合させる際に起きる。siRNA配列がどのヒト遺伝子配列とも相補性ではなくそしてウイルス遺伝子の活性を遮断するためにsiRNAがすべての感染された細胞内で十分なレベルで発現されなければならないことは重要である。全体的に、新しい抗ウイルス技術は、新しいインフルエンザウイルスワクチンまたは治療法の開発のために長期的には成功見込みを有するであろう。しかし、非常に短期間でワクチンの数百万の用量の生産という緊急の要求は、それらの技術を用いては解決されない。
【0011】
1997年に始まって、ヒト集団内の高度病原性鳥類ウイルスH5N1の3回のその後の急激な発生:香港2003、ベトナム2004およびタイ2004があった(非特許文献5)。このインフルエンザウイルスサブタイプに向けたワクチンが生産されそして効力および安全性を試験されている。そのワクチンはH5N1に対してヒトを防御できることが報告されている;しかし防御を誘導するために必要な用量(精製された死ウイルスまたは抗原の90μg)は、通常の季節的インフルエンザウイルスワクチンの場合に使用される量の2倍である。さらに、H5N1ワクチンは、4週間の間隔で2回ヒトに投与されなければならない(非特許文献14)。抗H5N1ワクチンの効力を増大しそして抗原の低い用量で対処できるために、異なる戦略、例えばアジュバントの使用またはウイルスの送達の経路の変更が提案されている(非特許文献15)。
【0012】
上記のように、インフルエンザウイルス株に対して向けられた現在利用できるワクチンは、筋肉内注入として投与される不活性(死)ワクチンおよび鼻噴霧として投与される弱毒化生ワクチンを含む。それらのワクチンの両方共に抗ウイルス、すなわちウイルス中和抗体産生をもたらす(非特許文献6)。変種抗原性エピトープを発現するウイルスの出現株は、現存の抗体によっては認識されない。従って、これが選択されたワクチン戦略である場合には、毎年ヒトに対して新規のワクチンが開発および投与されなければならない(非特許文献6、非特許文献7)。インフルエンザウイルスの汎流行株が同定されると、新しい株に対して有効な不活性化ワクチンを開発するために少なくとも六ヵ月が必要と予測されている(非特許文献5、非特許文献7)。インフルエンザウイルスの汎流行性株に対してヒトを防御するワクチンを開発するために、ワクチンは、ウイルスに対する抗体応答を誘発できるのみならず、最適には、ワクチンは数種の汎流行株に対する広いスペクトルの特異性を示すCD8+T細胞応答を誘導しなれければならない。かかるワクチンはウイルスのいずれか一種の汎流行株による実際の感染を防御できないので、それは疾患の重症度を軽減しそれにより感染後の罹患率および致死率を低下させなければならない。
【0013】
いずれかの生体作用活性物質またはワクチンの開発および使用の成功のために重要な問題は、それが動物およびヒトへの使用に安全であるかどうかである。安全性の評価は、二つのレベルで行われなければならない。一方では、生体作用活性物質またはワクチンは、それが投与される動物に対して毒性であってはならない。他方では、生体作用活性物質またはワクチンを取り扱う人員、例えば物質またはワクチンを投与する人員、物質またはワクチンのレシピエント、および投与の間に居るであろうその他の人員は、生体作用活性物質またはその中に含まれるウイルスにより起こされるどのような不利な作用に対してもリ
スクがあってはならない。後者の状況は、生体作用活性物質がトキシンであるかまたはワクチンが生ウイルスを含んでなる場合に特に重要である。本明細書中で提供される開示から明白なように、この問題は、エーロゾル化によるウイルスの拡散を防止する媒体内に生体作用活性物質またはウイルスを内包することにより解決できる。これを考慮して、種々の組成物の従来技術開示をここに本明細書中で再検討する。
【0014】
生体適合性ゲルは、薬剤送達、サイトカイン送達(非特許文献16)、遺伝子治療(非特許文献17)、および組織操作(非特許文献18)のために広範に研究および使用されている。多数の生体適合性ポリマーがイン・ビボで使用されている。ワクチン内包のための最近の研究の大部分は、一段免疫化のための世界保健機構(WHO)による呼びかけに対応する間欠または持続的放出調剤の使用の利益が強調されている(非特許文献19)。抗原を放出できるポリマー性ミクロカプセルは、6カ月を越える期間、哺乳動物内に高い免疫応答を誘導することが示されている(非特許文献20)。それらの調剤による免疫賦活は、アルミニウム塩アジュバントに類似のデポー作用、または抗原提示細胞に直接の抗原送達のいずれかが起きると信じられている。
【0015】
ヒドロゲルは、水が分散媒体であるコロイドゲルとして一般に定義されている。それらは化学的または物理的のいずれかである各種の異なる結合、例えばイオン性もしくは疎水性相互作用または水素結合により架橋されているポリマーから成る。アルギネートは、褐色海藻から抽出された天然に存在する線状多糖類である。それは1−4連結したα−L−グルロン酸およびβ−D−マンヌロン酸残基から成る。アルギネートの異なる起源は、異なるグルロン酸含有量を有し、そしてこれは一方ではアルギネートの性質に影響する。アルギネートは、二価陽イオン、例えばCa2+、Ba2+、Sr2+など(Mg2+を除く)との反応によりヒドロゲルを形成できる。三価陽イオン、例えばAl3+およびFe3+もアルギネートからヒドロゲルを形成するために使用される。それらのヒドロゲルの製造の一般的な方法は、アルギン酸ナトリウム溶液を必要な架橋陽イオンを含む溶液中に滴下して加えることを含む。アルギネート内に内包されたリポソームは、タンパク質送達(非特許文献21、22、特許文献1)について研究されておりそして膵島細胞を含む数種の異なる細胞系統(非特許文献23)および遺伝子操作された繊維芽細胞(非特許文献24、25)は、治療用途のためにアルギネート内に内包されている。近年、アルギネートは、組織工学において骨格として使用されている(非特許文献26)。共有結合されたペプチドを有するアルギネートヒドロゲルは、合成細胞外物質として(非特許文献27、28)および組織バルク化剤として(非特許文献29)研究されている。イオン的に架橋されたアルギネートは、イン・ビトロで時間が経過すると機械的性質を損失し、それは周囲媒体内への架橋イオンの流出によると推測されると報告されている(非特許文献30)。アルギネートの向イオン性ゲル化の方法は、例えば下記の文献に記載のものを含む;非特許文献21、22および31。
【0016】
同様のヒドロゲルは、身体内に普通に見いだされるヒアルロンとしても知られるヒアルロン酸から形成できる。ヒアルロン酸は、D−グルクロン酸およびN−アセチル−D−グルコサミンの負に荷電した線状ポリマーであり、それらの化合物が多価イオンに暴露された場合に形成される(非特許文献32、33)。ヒアルロン酸は、関節修復にしばしば適用されることで証明されるように、高度に生物適合活性であることが知られている(非特許文献34、35)。薬剤送達への使用のこの化合物に関する研究は少ないが、それはそれが生理学的pHで迅速に溶解するからである(非特許文献36)。
【0017】
コラーゲンマトリックスを用いる薬剤の送達は、主としてその固有の生物分解性、弱い抗原性(非特許文献37)および天然生物ポリマー、例えばアルブミンと比較して優れた生物適合性のためにその重要性を増している。コラーゲンマトリックスは、遺伝子治療(非特許文献38)、タンパク質の制御放出(非特許文献39)、抗体(非特許文献40)、抗生物質(非特許文献41)および成長因子、例えば形質転換成長因子−ベータ2(TGF−β2)(非特許文献42)の哺乳動物への送達のための担体として使用されている。コラーゲンマトリックスは、血小板誘導成長因子−B(AdPDGF−B)をコードするアデノウイルスベクターの哺乳動物への送達に使用され(非特許文献43)、そしてイン・ビボおよびイン・ビトロの双方での創傷治癒におけるコードされた導入遺伝子の発現を増加することが見いだされた。クら(非特許文献44)は、コラーゲンのマトリックス内に送達されたヒト血小板誘導体体成長因子Bをコードするアデノウイルスが、アデノウイルスに対して向けられる抗体応答を誘導することを示した。T細胞応答は認められなかった。アデノウイルスを含むコラーゲンゲルは、動物への遺伝子の送達のために別の人により公開されている(非特許文献17)。しかし、それらのゲルは、防御的免疫応答を動物内で誘導する特定の目的のためのワクチン設定には使用されなかった。反対に、ウイルスへの免疫応答がないことがそれらの研究に望まれており、それは応答の存在が動物によるウイルスの拒絶をもたらすと予想され、従って遺伝子送達の望ましい効果が無効になるからであろう。薬剤の制御された放出を行うために、コラーゲンフィブリルは架橋されてマトリックスを形成しなければならない。コラーゲンの個別のフィブリルは、クロムのような三価陽イオン(非特許文献46)またはアルミニウム(非特許文献47)を用いるイオン結合の形式、共有結合架橋剤(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアナート、ポリエポキシ化合物、カルボジイミド)を用いるかまたは物理的処置(乾燥加熱、紫外線への暴露、γ−線照射、またはpH変更)(非特許文献48)のいずれかにより架橋できる。
【0018】
ゼラチンは、ワクチン内の安定剤として使用して成功した少数の物質の一つである(非特許文献49、50)。ゼラチンの生物分解性ナノ粒子は、肺臓疾患の処置のための薬剤を送達するため(非特許文献51)、特異性抗体をゼラチンナノ粒子の表面に接合してT細胞を標的とするため(非特許文献52、53)、および光力学治療製剤(非特許文献54)において使用されている。ゼラチンヒドロゲルは、それらの正に荷電した性質およびそれらの生物分解性のために、新しい遺伝子送達システムとして試験されている(非特許文献55)。ゼラチンの正に荷電した構造は、負に荷電した核酸、タンパク質および薬剤を内包可能とする。それらのゼラチン結合生物分子は、ゼラチンゲルが徐々に分解すると放出される。さらに、レトロウイルスの感染性は、ゼラチンおよびスクロースが添加された場合に、冷凍乾燥により保存できることが示された(非特許文献56)。
【0019】
ボレクらは、合成抗原を用いて動物を免疫化することにより同じ動物種のタンパク質と交差反応する抗体の形成を刺激することも可能と考えた(非特許文献57)。抗原への最初の暴露の後にもたされるアナフィラキシーショックの数例が全世界から報告されている(非特許文献58、59、60)。ハシカ、オタフクカゼ、風疹(MMR)ワクチンを接種されていた年齢17歳の反応は、ワクチンのゼラチン成分に対して向けるIgE抗体の誘発に帰せられた(非特許文献61)。ワクチンの熱安定成分としてのゼラチンとアナフィラキシーとの間の関係を引用する他の報告がある(非特許文献62、63、64、65、66、67)。それらの報告は、ゼラチンの形成が改変された場合(非特許文献68)またはワクチンが完全に除去された場合(非特許文献69)のアレルギー反応の劇的な低下の観察によりさらに支持された。アナフラキシーの報告された症例の大部分は日本からであって、米国ではない(非特許文献70)。ゼラチンをベースにしたワクチンへの過敏性は、ゼラチンアレルギーとHLA−DR9の間の強い会合により起きると示唆されている(非特許文献71、これはアジア集団で独特である;非特許文献72)。プールら(非特許文献70)も、日本において不十分に加水分解されたゼラチンのジフテリア−破傷風−無細胞百日咳(DTaP)ワクチンへの添加が、一部の小児でゼラチンに対する過敏化に貢献して、その後のMMRワクチン接種の際のアナフラキシーのリスクを増大したのではないかと提唱している(非特許文献66)。米国内で製造されたワクチンに使用されたゼラチンは、完全に加水分解されていることが分かっている。
【0020】
種々の巨大分子を哺乳動物細胞内に転移させるための一枚壁ナノチューブ(SWNT)の使用に多くの研究が向けられている。例えば、かかるシステムは、小さいペプチド(非特許文献73)、核酸(非特許文献74)およびタンパク質、例えばストレプタビジン(streptavidine)(非特許文献75)に関連して使用されている。最近、シカムらは、葉酸領域を用いるSWNTの機能性化によるガン細胞の破壊を開発している(非特許文献76)。これは、葉酸受容体腫瘍マーカーを用いて標識されたSWNT内部細胞の内部化をもたらす。ガン細胞の死滅は、近赤外線を用いる細胞の照射により達成された。ナギブらは、炭素ナノチューブ構造の表面が、単に合成後処理を改変することにより種々の生物医学的用途を有するように適合できることを示した(非特許文献77)。同様の結果は、サルバドール−モラレスらによってもかれらの炭素ナノチューブチューブ上のタンパク質吸着に関する研究で報告された(非特許文献78)。最も重要な事は、ペプチドに対するウイルス特異性中和抗体応答を増進するために炭素ナノチューブの官能性化であることがペンタロットらにより示された(非特許文献79)。それらの技術を用いて、送達される化合物は、ナノチューブの外面に結合し次いでナノチューブの大きさが化合物の送達をもたらす。
【0021】
ワクチン技術および一般的に抗ウイルス技術におけるすべての進歩にもかかわらず、ウイルスワクチン、特には安全でありそして迅速で容易に生成できるインフルエンザウイルスワクチンのために当該技術分野で以前から感じられていた必要性は解決されていない。それらのワクチンは、例えばワクチン接種された動物またはヒトがその後のウイルスの有毒株によるチャレンジに対して完全に保護されるように、完全な体液的および細胞的免疫応答を誘発できなければならない。本発明は、この必要を満たす。さらに。致死の可能性がある生体作用活性薬剤、例えば生ウイルスの動物への投与が、薬剤が万一エーロゾル化または漏れても、領域内の他者に不利な影響を与えないであろう。本発明は、かかる薬剤の投与のための組成物および方法を提供して、この問題を解決する。
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【非特許文献64】Kumagai et al.,1997,J.Allergy and Clinical Immunol.100:130−134
【非特許文献65】Sakaguchi and Inouye,1998,Vaccine 16:68−69
【非特許文献66】Nakayama et al.,1999,J.Allergyand Clinical Immunol.103:321−325
【非特許文献67】Sakaguchi et al.,1999,Immunology 96:286−290
【非特許文献68】Nakayama and Aizawa,2000,J.Allergy and Clinical Immunol.106:591−592
【非特許文献69】Kuno−Sakai and Kimura,2003.Biologicals 31:245−249
【非特許文献70】Pool et al.,2002,Pediatrics 110:71
【非特許文献71】Kumagai et al.,2001,Vaccine 19:3273−3276
【非特許文献72】Nakayama and Kumagai,2004,Pediatrics 113:170−171
【非特許文献73】Pantarotto et al.,2004,Chemical Communications,(Cambridge,UK):16−17
【非特許文献74】Lu et al.,2004,Nano Lett.4:2473−2477
【非特許文献75】ShiKam et al.,2004,J.Am.Chem.Soc.126:6850−6851
【非特許文献76】ShiKam et al.,2005,PMAS 102:11600−11605
【非特許文献77】Naguib et al.,2005,Nanotechnology:567−571
【非特許文献78】Salvador−Morales et al.,2006,Mol.Immunol.43−193−201
【非特許文献79】Pantarotto et al.,2003、Chem Biol.10:961−966
【発明の開示】
【0022】
(発明の要約)
本発明は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを含み、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する。
【0023】
本発明は、さらにウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを含み、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内の免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する。
【0024】
ある態様では、ウイルスは生ウイルス、弱毒化ウイルスまたは死ウイルスである。
【0025】
別の態様では、ウイルスは呼吸系ウイルスである。別の局面では、ウイルスは、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞
体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される。
【0026】
好ましくは、ウイルスはオルトミクソウイルスさらに好ましくはインフルエンザウイルスであり、そしてもっとさらに好ましくは、ウイルスはA型インフルエンザウイルスである。ウイルスがA型インフルエンザウイルスである場合に、ウイルスはH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する。さらに好ましくは、A型インフルエンザウイルスは、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する。
【0027】
いくつかの態様では、ワクチンは該A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる。好ましくは、該A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)、さらに好ましくはウイルスの0.005〜500HAU、もっとさらに好ましくはウイルスの0.01〜100HAUである。
【0028】
いくつかの態様では、動物が脊椎動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。
【0029】
本発明のワクチンは、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスから成る群から選択される2種またはそれ以上のメンバーのウイルスの組合せを含んでなってもよい。
【0030】
好ましい態様では、投与の経路が天然ではない経路であり、さらに好ましくは皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される。
【0031】
本発明のワクチンを含んでなるキットも本発明にさらに含まれる。
【0032】
本発明は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンに関し、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルと会合(associate)されている。
【0033】
さらに、本発明は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンに関し、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内の免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルと会合されている。
【0034】
好ましい態様では、ウイルスが該内包ビヒクル内に内包され、そして該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合されてもよい。別の態様では、内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される1種もしくはそれ以上のメンバーを含んでなる。好ましくは、内包ビヒクルがナノチューブ内に装入(load)される。
【0035】
ある態様では、内包ビヒクルがポリマーを含んでなり、そしてさらに好ましくは、動物に投与された場合に毒性ではない。好ましくは、ポリマーが該ウイルスと会合され、それ
により周囲環境内への該ウイルスの放出を遅延させる。
【0036】
好ましい態様では、ポリマーがゲルでありそしてコラーゲンを含んでなってもよい。ポリマーはヒドロゲルであってもよく、そしてアルギネート、ゼラチン、キトサンおよびヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択されてもよい。
【0037】
他の好ましい態様では、ゲルは、コラーゲン、アルギネート、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの1種もしくはそれ以上の組合せを含んでなる。
【0038】
好ましくは、ゲルは架橋されていてもよく、そして追加してゲルはさらに添加剤を含んでなってもよい。好ましい態様では、添加剤がポリエチレングリコールである。
【0039】
別の態様では、内包ビヒクルがミクロカプセルもしくはナノカプセル、またはナノチューブを含んでなる。好ましくは、ナノチューブが直径500nmまたはそれ以下を有する。
【0040】
さらに別の態様では、内包ビヒクルが1種もしくはそれ以上の溶液、粉末またはゲルの組合せを含んでなる。
【0041】
内包ビヒクルは、好ましくは本明細書中の別の箇所に記載のウイルスを含んでなる。
【0042】
動物へのワクチンの送達のためのデバイスもさらに本発明に含まれ、該デバイスは、(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体の量であって、ここで天然でない経路により該動物にウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するためのデバイスを含んでなる。
【0043】
動物へのワクチンの送達のためのデバイスがさらに含まれ、該デバイスは(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御量であって、ここで天然でない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するための送達デバイスを含んでなる。
【0044】
一つの態様では、該送達デバイスが中空チューブを含んでなり、そして好ましくは、該中空チューブが先細の末端を有する。いくつかの態様では、該送達デバイスが針を含んでなる。別の態様では、該中空チューブが場合によりプランジングデバイスに取り付けられ、ここで好ましくは、該プランジングデバイスが注射器、遺伝子ガン、カテーテル、貼付剤、吸入デバイス、または粘膜アプリケーターである。
【0045】
該デバイスは、好ましくは、本明細書中の別の箇所に記載の内包ビヒクルおよびウイルスを含んでなる。好ましくは、ウイルスが該内包ビヒクル内に内包され、そしてさらに好ましくは、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される。
【0046】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法が本発明中にさらに含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体の免疫防御量を、内包ビヒクルと組合せ、それによりワクチンを製造することを含んでなる。
【0047】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法も含まれ、該方法は、ウイルスの免疫防御性の量を内包ビヒクルと組合せ、それにより該ワクチンを製造することを含んでなる。
【0048】
本発明は、動物内にCD8+T細胞免疫防御および/または抗体免疫防御応答を誘発する方法も含む。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発する。
【0049】
さらに、動物内にCD8+T細胞免疫防御応答を誘発する方法が含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発する。
【0050】
それらおよびその他の方法中で、好ましくは、動物が哺乳動物であり、そしてさらに好ましくは、哺乳動物がヒトである。
【0051】
ウイルスにより感染に対して動物を防御する方法がさらに本発明に含まれる。それは、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発し、それにより該感染に対して該動物を防御する。
【0052】
さらに、ウイルスによる感染に対して動物を防御する方法であって、ここで該方法が該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該感染に対して該動物を防御する。
【0053】
動物内のウイルス感染を防御する方法も含まれ、ここで該方法が該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する。
【0054】
さらに、動物内のウイルス感染を防御する方法が提供される、該方法は、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する。
【0055】
動物内のウイルス感染を処置する方法もさらに含まれる。該方法は、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する。
【0056】
動物内のウイルス感染を処置する方法もさらに含まれ、ここで該方法は、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する。
【0057】
本発明は、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を含み、ここで該動物内に疾患を起こさない経路により該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する。
【0058】
本発明は、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物も含み、ここで該動物内に疾患を起こさない経路により該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する。
【0059】
好ましい態様では、経路は天然ではない経路であり、そして皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択されてもよい。生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包され、そして好ましくは、生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される。内包ビヒクルは、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーを含んでなり、そして好ましくは、内包ビヒクルはナノチューブ内に装入される。該内包ビヒクルがポリマーを含んでなってもよく、そして好ましくは、該ポリマーは、動物に投与された場合に毒性ではない。該ポリマーは該生体作用活性薬剤と会合され、それにより周囲環境内への該生体作用活性薬剤の放出を遅延させてもよい。好ましくは、該ポリマーがゲルでありそして好ましくは、該生体作用活性薬剤が微生物およびタンパク質から成る群から選択される。
【0060】
さらに、動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法が含まれる。該方法は生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている。
【0061】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法もさらに含まれる。該方法は生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、さらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている。
【0062】
好ましい態様では、生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される。
【0063】
さらに、生体作用活性薬剤の生物学的に有効な量を含んでなる組成物が本発明に含まれ、ここで、動物内に疾患を起こさない経路により該動物に該生体作用活性薬剤を投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に所望の応答を誘導し、一方ではリスクを低減する。
【0064】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法がさらに本発明内に含まれる。該方法は動物内で所望の応答を誘導し同時にリスクを低減する生体作用活性薬剤の量を含んでなる組成物を該動物に投与することを含んでなり、ここで、該生体作用活性薬剤の投与の経路が該動物内に疾患を起こさない経路であり、そしてさらにここで該生体作用活性薬剤を投与する際に該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されそれにより安全性を上昇する。
【0065】
発明の詳細な説明
本発明は、インフルエンザウイルス感染に対する動物、好ましくは脊椎動物、好ましくは哺乳動物、そしてさらに好ましくはヒトの防御のための組成物および新規のワクチン戦略中でのその使用の発見に関する。しかし、本発明はインフルエンザウイルス感染に対する動物の防御のためのワクチン戦略のみに限定されると解釈されてはならず、より正確には、ある経路により投与された場合に、エーロゾル化あるいは暴露をもたらしそして他の脊椎動物に有害なリスクを与えるであろうあらゆる生体作用活性薬剤の投与も含むと解釈
されるべきである。本発明は、さらに、動物の呼吸器もしくは胃腸管を介して宿主に感染または侵入する他のRNAウイルス、およびいくつかの場合には、動物の呼吸器もしくは胃腸管を介して宿主に感染または侵入するDNAウイルスを含み、それらに限定はされない他のウイルス感染に対する防御を与えるワクチン戦略を含む。本明細書中の別の箇所にさらに詳細に記載されるように、本発明のワクチン戦略は、単独もしくは新規の調剤および送達システムと組み合わされるいずれかの場合に、慣用のワクチン接種に現在使用される経路または動物内へのウイルスの天然の侵入の経路とは異なる投与の経路による脊椎動物への生ウイルスの低い用量の投与が、CD4+およびCD8+T細胞および/または抗体を含んでなる強力な免疫応答を誘導するという発見に関し、それはその後の感染性ウイルスによるチャレンジに対する動物の有効な防御のために重要である。例えば、天然の感染の経路とは異なる経路による動物へのインフルエンザウイルスの投与が、一般に動物内に疾患を起こさないことは知られている。しかし、動物に対して筋肉内投与される現在の死インフルエンザワクチンは、体液性のみそしてT細胞免疫応答を弱く誘導するかもしくは全く誘発しない。鼻経由(即ち天然の経路)で投与される弱毒化インフルエンザウイルスワクチンは、弱いCD8+T細胞免疫応答を誘発するに過ぎない。従って、現在のワクチンは、標的集団の約30%を保護するに過ぎない。本発明は、皮下または皮内での低い用量の生インフルエンザウイルスワクチンの投与が、強力なCD8+T細胞応答を誘導し従って現在のワクチンより優れているという発見を含む。言い換えると、本発明は、動物内への生体作用活性薬剤の侵入の天然の経路ではない経路による脊椎動物への生体作用活性薬剤の投与を含み、ここで、防御免疫応答は、その後の生体作用活性薬剤を用いるチャレンジの際に疾患に対して動物を防御するように動物内に誘発される。本発明は、さらに、エーロゾル化するかまたは他の暴露リスクを起こす材料の能力を本質的に低下し、それにより材料が存在しない場合よりさらに安全な生体作用活性薬剤の投与をもたらす、材料内への生体作用活性薬剤の内包を含む。本発明のそれらまたはその他の局面は、本明細書中に提供される開示の閲読により明らかになるであろう。
【0066】
定義
本明細書中に使用される場合に、下記の各用語は本節内において関連する意味を有する。
【0067】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的な対象の一つまたは一つを越える(すなわち少なくとも一つ)を指すとして本明細書中では使用される。例えば、「an element」は、1個の要素または1個を越える要素を意味する。
【0068】
本明細書中に使用される場合に、疾患、障害または状態を「回避」するとは、疾患、障害または状態の1種もしくはそれ以上の症状の重症度を低下させることを意味する。
【0069】
本明細書中に使用される場合に、「処置」とは、動物、好ましくは脊椎動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトにより疾患の症状が経験される頻度を低下させることを意味する。
【0070】
本明細書中で使用される場合に、「アプリケーター」の用語では、脊椎動物に本発明の組成物を投与するための、針、カテーテル、皮下注射器、遺伝子ガン(gene gun)、貼付剤、ナノチューブ、粘膜アプリケーター、またはそれらのいずれかの組合せを含み、それらに限定はされないあらゆるデバイスを意味する。
【0071】
本明細書中に使用される場合に、「生体作用活性薬剤」の用語では、脊椎動物に投与された場合に、脊椎動物にある作用を起こすいずれかの薬剤を意味する。起こされる作用は、薬剤が脊椎動物に投与された場合に脊椎動物に有利または不利であってもよい。生体作用活性薬剤の例は、それらに限定はされないが、脊椎動物、好ましくはヒトへワクチン、免疫原、薬剤もしくは他の治療剤として投与できる、生ウイルス、弱毒化または死ウイルス、不活性化ウイルス、生、弱毒化または死んでいる微生物、ペプチド、タンパク質、核酸、または小さい有機もしくは無機化学薬品を含む。
【0072】
本明細書中に使用される場合に、生体作用活性薬剤、例えばワクチンまたはその他の組成物の「有効な量」とは、所望の応答を誘発するいずれかの量を意味する。ワクチンの場合に、この用語は、脊椎動物に投与された場合に、脊椎動物内で生体作用活性薬剤内の抗原に対して向けられるCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を誘発する生体作用活性薬剤のいずれかの量を意味する。
【0073】
本明細書中に使用される場合に、「生体作用活性薬剤のCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量」とは、脊椎動物に投与された場合に、生体作用活性薬剤に対して向けられるCD8+T細胞応答および/または抗体応答を誘発する生体作用活性薬剤の量を意味し、その際、脊椎動物が、通常のコースでは脊椎動物に不利な作用物質を有する経路を通って生体作用活性薬剤を用いてチャレンジされた場合に、同様にチャレンジされたがしかし生体作用活性薬剤のCD8+T細胞および/または抗体免疫防御量を投与されなかった第二のその他では同様の脊椎動物よりも、該脊椎動物がチャレンジする生体作用活性薬剤により起きるより低いかもしくはより厳しくない疾患の症状を示す。
【0074】
本明細書中に使用される場合に、「生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量」とは、脊椎動物に投与された場合に、生体作用活性薬剤に対して向けられるCD8+T細胞応答を誘発する生体作用活性薬剤の量を意味し、その際、脊椎動物が、通常のコースでは脊椎動物に不利な作用物質を有する経路を通って生体作用活性薬剤を用いてチャレンジされた場合に、同様にチャレンジされたがしかし生体作用活性薬剤のCD8+T細胞および/または抗体免疫防御量を投与されなかった第二のその他では同様の脊椎動物よりも、該脊椎動物がチャレンジする生体作用活性薬剤により起きるより低いかもしくはより厳しくない疾患の症状を示す。
【0075】
本明細書中に使用される場合に、「遺伝子」および「組換え遺伝子」の用語は、最低でも、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含んでなる核酸分子を指す。
【0076】
本明細書中に使用される場合に、「指示材料」は、本明細書中に記載の種々の疾患または障害の回避を起こすためのキット内に、本発明の生体作用活性薬剤、ワクチンまたはその他の組成物の有用性を伝えるために使用できる出版物、記録、図表、またはその他の表現媒体を含む。場合により、またはその代わりに、該指示材料は、脊椎動物の細胞または組織内の疾患または障害を回避する1種もしくはそれ以上の方法を記載してもよい。本発明のキットの指示材料は、例えば、本発明の生体作用活性薬剤、ワクチンもしくはその他の組成物を含む容器に貼付しても、または生体作用活性薬剤、ワクチンもしくは組成物を含み容器と一緒に発送されてもよい。あるいは、指示材料と化合物が受領者により協同して使用されるという意図で、該指示材料は容器とは別に発送されてもよい。
【0077】
本明細書中に使用される場合に、「特異的に結合する」の用語では、試料内の特定の分子を認識して結合するが、しかし他の分子を本質的に認識または結合しない化合物、例えばタンパク質、核酸、抗体などを意味する。
【0078】
本明細書中に使用される場合に、「導入遺伝子」の用語では、外因性核酸がトランスジェニック細胞または哺乳動物によりコードされる外因性核酸配列を意味する。
【0079】
ウイルスに関して本明細書中に使用される場合に、「生」の用語では、ウイルスが宿主
細胞内で感染および複製しそして動物内で疾患を起こす能力があることを意味する。
【0080】
これは、ウイルスに関して本明細書中に使用される場合に、「弱毒化」の用語とは対照的であり、その用語は、ウイルスが宿主細胞で感染の能力はあるが、しかし動物内に疾患を起こす能力が著しく低いかまたはないことを指す。
【0081】
ウイルスに関して本明細書中に使用される場合に、「死(killed)ウイルス」の用語は、ウイルスが宿主細胞内で感染および複製の能力がなくそして動物内に疾患を起こすこともほとんど不能であるウイルスである。
【0082】
本明細書中に使用される場合に、「ワクチン」の用語では、ワクチンが投与された脊椎動物内に免疫応答を誘発する抗原、すなわち生体作用活性薬剤、好ましくはウイルスもしくはその他の微生物またはタンパク質を意味する。好ましくは、免疫応答は、同じかまたは類似の生体作用活性薬剤を用いるその後のチャレンジに対抗して脊椎動物にいくらかの有利で防御的な作用を与える。さらに好ましくは、免疫応答は、生体作用活性薬剤と関連する疾患の少なくとも一つの症状の発生を防止するかもしくは改善し、またはその後のチャレンジの際に生体作用活性薬剤と関連する疾患の少なくとも1種の症状の重症度を低下させる。さらに好ましくは、免疫応答は、その後のチャレンジの際に生体作用活性薬剤と関連する疾患の1種を越える症状の発生を防止するかもしくは改善する。
【0083】
「疾患を起こさない方法または経路」の用語では、薬剤が天然には生物体に有害、有毒または生物体に感染する機構または侵入点とは異なる方法で生物体に薬剤を提示する様式で生体作用活性薬剤を投与することを意味する。限定ではない例示として、ヒトの天然の感染の間のインフルエンザウイルスの侵入点は、非内包ウイルスとして気道を通過するものである。この範囲内で、「疾患を起こさない方法または経路」は、好ましくは皮下または皮内によるウイルスの注入であり、ここでウイルスは内包組成物内に内包されている。
【0084】
本明細書中に使用される場合に、「天然ではない経路」の用語は、ウイルスによる動物の天然の感染の間のウイルスの侵入点ではない、動物の身体内へのウイルスの侵入点を意味する。例として、ヒトの天然の感染の間のインフルエンザウイルスの侵入点は気道である。従って、侵入の皮下または皮内経路はインフルエンザウイルスの侵入の天然ではない経路である。
【0085】
「感染の天然の経路」では、ウイルスの天然の拡散の間にウイルスが動物に感染する経路を意味する。
【0086】
「生体作用活性薬剤の天然の侵入の経路」では、通常、生体作用活性薬剤への動物の暴露がそれと関連する疾患の症状を起こす経路を意味する。
【0087】
ウイルスの「低用量」の用語では、ウイルスが投与された脊椎動物内で防御的CD8+T細胞および/または抗体応答を誘発するために十分なウイルスの量を意味する。熟練した医師は、それぞれの状況において投与すべきウイルスの正確な量を知っており、そしてその量は、使用される特定のウイルスの悪性度、ウイルスが投与される動物の年齢および全体的健康、ウイルスの調剤、およびウイルスの投与に使用されるデバイスも含み、それらに限定はされない多数の因子のいずれか一つまたはそれ以上に依存して変化する。インフルエンザウイルスの場合に、低用量は約0.0001赤血球凝集単位(HAU)から約5000HAUの範囲であろう。好ましくは、低用量は約0.0005〜約500HAU、さらに好ましくは約0.001〜約100HAU、そしてさらに好ましくは約0.05〜約10HAUの範囲およびその間のいずれかの整数または部分(partial)整数であろう。
【0088】
本明細書中に使用される場合に、「呼吸系ウイルス」の用語では、動物に感染した際に、侵入点として主として気道を用いるか、および/または気道を主標的としそして動物に呼吸器疾患を起こすウイルスを意味する。
【0089】
本明細書中に使用される場合に、「胃腸内ウイルス」の用語では、脊椎動物への感染の際に、胃腸管を侵入点として使用するかおよび/または胃腸管を主標的としそして脊椎動物に胃腸疾患を起こすウイルスを意味する。
【0090】
「皮下」は、皮膚の真皮層とその下の筋肉組織の間にある脂肪組織の領域を指す。
【0091】
「皮内」は、表皮とその下の皮下脂肪層の間にある真皮層を指す。皮内部位は、多数の抗原提示細胞を含みそして皮下部位と比較してリンパ系内へのより迅速な放出をもたらす。これは免疫応答、抗原/生体作用活性薬剤クリアランス、および皮内および皮下注入部位の間に必要な用量の形式および大きさに相違をもたらす。
【0092】
本明細書中に使用される場合に、「ワクチン単位」または「ワクチンの単位」の用語では、脊椎動物に投与された場合に、脊椎動物内に防御的免疫応答の誘発を開始させるワクチンの量を意味する。ワクチン単位は、脊椎動物内に完全な防御的免疫応答の誘発を開始しても、または完全な応答のためには追加のワクチン単位が必要な不完全な応答を開始してもよい。
【0093】
本明細書中に使用される場合に、「内包(encapsulation)ビヒクル」の用語は、脊椎動物に生体作用活性薬剤、ワクチンもしくはその他の組成物の投与のための組成物を意味し、ここで、組成物は、薬剤がその非内包状態で存在するものよりも追加の材料を含んでなるように、薬剤を被覆、包囲、包含、あるいはそれと会合する。
【0094】
「生物適合性ポリマー」の用語は、動物に投与された際に、動物に一般的に不利な応答を誘導しないポリマーを意味する。この用語は、「無毒性」の用語と本明細書中では同義的に使用される。
【0095】
本明細書中に使用される場合に、「ミクロカプセル」の用語では、生体作用活性薬剤を包囲あるいはそれと関連するビヒクルを意味しそして薬剤と環境との間の障壁を提供する。ミクロカプセルの大きさは、約1から数百μmおよびその間のあらゆる整数または部分整数の程度である。ミクロカプセルの形状は種々であってもよく、そして球状、楕円体および多面体形状を含み、それらに限定はされない。内包の形態は、マトリックス中に均等に配置され、しばしばミクロスフェアと呼ばれるものから、一部分に極限され、例えば生体作用活性薬剤を充填した中空ミクロカプセルの場合がある。
【0096】
本明細書中に使用される場合に、「ナノカプセル」の用語では、寸法が約1μm〜約1μmおよびその間のあらゆる整数または部分整数の範囲であるミクロカプセル様の構造を意味する。
【0097】
本明細書中に使用される場合に、「ナノチューブ」の用語では、1より大きい長さと幅の比率を有し、いずれかの形状の断面(円形、楕円形、正四角形、多角形またはその他)を有し、ここで一つの寸法は、100nmまたはそれ以下であるがしかし1μmまでであることも可能で、そしてその間のあらゆる整数または部分整数でもよい。
【0098】
本明細書中に使用される場合に、「送達デバイス」の用語では、脊椎動物の皮膚の少なくとも最も外層を通過しそして薬剤を脊椎動物の内部組織に送達できるデバイスを意味す
る。あるいは、送達デバイスは生体作用活性薬剤を脊椎動物の粘膜組織内に送達できる。送達デバイスの限定ではない例は、針、注射器、カテーテル、遺伝子ガン、ナノチューブ、貼付剤、粘膜アプリケーターなどである。
【0099】
本明細書中に使用される場合に、「安全な送達ビヒクルまたはデバイス」とは、脊椎動物に有害の可能性がある生体作用活性薬剤を送達する手段であり、ここで脊椎動物が安全ではないモード、一般的にはエーロゾルまたは遊離粉末形態で生体作用活性薬剤に暴露された場合には、生体作用活性薬剤は脊椎動物に不利な作用を有するであろう。
【0100】
詳細な説明
I.ウイルスおよびその他の生体作用活性薬剤
本発明は、マウス内の生インフルエンザウイルスの低用量皮下または皮内投与が、その後に鼻内に投与される感染性インフルエンザウイルスによるチャレンジに対してマウスを防御するマウス内の強力なCD4+およびCD8+T細胞応答および抗体応答を誘導するという発見に基づく。本発明は、さらに、有害なエーロゾルを形成する能力を有する生体作用活性薬剤の投与に関連するリスクが、生体作用活性薬剤のエーロゾル化を防止する材料内に生体作用活性薬剤が内包された場合に最小となり得るという発見に基づく。
【0101】
本発明は、インフルエンザウイルスに対して向けられるワクチンの使用のみに限定して解釈するべきではなく、より正確には、他のウイルス、特には呼吸系および胃腸内ウイルスに対するワクチンの開発を含むと解釈されるべきである。さらに、本発明は、脊椎動物への生体作用活性薬剤の投与を含むと解釈されるべきであり、ここで、該薬剤は、エーロゾルまたは粉末形態では有害となる可能性がある。さらに、本発明は、ウイルスに対するのみでなく、細菌を含みそれらに限定はされない他の微生物に対して向けられるワクチンを含むと解釈されるべきである。本発明は、タンパク質もしくは脂質を含んでなり、それらに限定はされない他の分子、化合物または構造体に対して向けられるワクチンの投与を含むとさらに解釈されるべきである。
【0102】
本明細書中の他の箇所にさらに詳細に記載するように、本発明は与えられた生体作用活性薬剤に対する防御的CD4+T細胞応答、もしくは防御的CD8+T細胞応答、または抗体応答、または各応答の2種またはそれ以上の組合せを誘導できるワクチンを含む。
【0103】
本発明のワクチン内に含まれるその他のウイルスは、それからの防御のためのT細胞応答、すなわちCD4+および/またはCD8+T細胞応答、および/または抗体応答に同様に依存するものである。かかるウイルスは、それらに限定はされないが、RNAウイルス、呼吸器感染を起こすRNAウイルス、およびある場合にはDNAウイルスを含む。それらのウイルスの限定ではない例は、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス(ピコルナウイルス、例えばポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスを含み、それらに限定はされない)、パルボウイルス、ロタウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、ノロウイルス、ノーウォークウイルス、アルボウイルスおよびアレナウイルス、例えばフラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどを含む。
【0104】
従って、インフルエンザウイルスが本開示を通じて例示されているけれども、本発明は、本開示の一体となる部分として追加のウイルスおよびその他の微生物ならびにその他の潜在的に有害な生体作用活性薬剤も含むと解釈されなければならないと認められるべきである。本発明を一旦理解すると、感染性ウイルスによりその後にチャレンジされた際に免疫化個体に有利な防御的CD4+T細胞、および/またはCD8+T細胞免疫応答および/または抗体応答を誘導できる性質を有する追加のウイルス組成物およびワクチンを開発するのは、熟練者の技術の範囲内に十分入る。動物およびヒトに対して薬剤の安全な投与をさせる追加のビヒクル/薬剤の組合せを開発するのもさらに熟練者の技術の範囲内に十分入る。
【0105】
それを考慮して、インフルエンザウイルスに主として焦点を当てた本開示は、明瞭性の目的のみでありそして、その病原、複製および/または感染性疾患サイクルが既知でありそして当該技術分野のものと共同して本明細書中に開示する一般手順に従って効果的なワクチンを生成するように操作できる他の生体作用活性薬剤、微生物およびウイルスにも一般的に適用可能であると解釈するべきである。それらの手順の概観については、Bernard Fields編集によるFields Virology,David KnipeLippincott Williams & Wilkins、第3版(1996)を参照のこと。
【0106】
種々の細胞または他の系、例えばインフルエンザウイルスの場合にはタマゴ内での種々のウイルスの増殖および評価がワクチン生産のためにウイルスを生成するために使用されることを教示する当該技術分野内の多数の情報がある。各ウイルスは大量に生産されるそれ自体の系を有し、そしてそれらの系は周知であり熟練者には容易に利用できる。ワクチンに使用するために大量の生ウイルスが生産された場合に、生産されたウイルスは宿主細胞に感染しそしてその中で複製できなければならない。さらに、生ウイルスワクチンの場合に、感染した宿主内に疾患を起こすウイルスの能力は、感染の天然の経路による場合には、熟練者には容易に利用できる方法を用いて評価される。複製、単離できるウイルスは細胞を感染でき、そして感染の天然の経路を使用した場合に動物内に疾患を起こすウイルスは、本発明の生ウイルスワクチンに使用するための候補である。天然の感染経路を使用した場合に細胞を感染できるが、しかし動物内に明白な疾患を起こさない弱毒化ウイルスとして複製および単離できるウイルスは、本発明の弱毒化ウイルスワクチンに使用するための候補である。天然の感染経路が使用された場合に、動物内で細胞を感染できずそして疾患を起こさないように複製、単離および死滅できるウイルスは、本発明の死ウイルスワクチンに使用するための候補である。最後に、野生型、弱毒化または死生物体およびウイルスのいずれかとして天然経路による侵入の後に疾患を起こし得る他の微生物は、本発明のワクチン内に使用されるための候補である。
【0107】
ウイルスがワクチン内に使用される場合に、該ウイルスは典型的には動物、好ましくは哺乳動物、そしてさらに好ましくはヒトに投与される。しかし、本発明はネコ、イヌ、ウマ、乳牛、牧牛、ヒツジ、ヤギ、鳥、例えばチキン、アヒル、ガチョウ、および魚を含み、それらに限定はされない各種の動物への、ウイルス、他の微生物、または生体作用活性薬剤の投与を含むと解釈されるべきである。
【0108】
2種のインフルエンザウイルスワクチンが、現在世界的に使用されている。それらは、(i)死ウイルスの筋肉内注入および(ii)弱毒化ウイルスの鼻内投与である。どちらのワクチンの投与も、その後のウイルス感染に対して防御的であるウイルスに対する強い抗体応答を誘導する。
【0109】
両方のワクチンに関連する数種の欠点がありそれらを本明細書中に記載する。(a)誘導された抗体応答は、それ自体においてまたはそれに関して、ウイルスによるその後の感染に対する十分な防御を与えない。ウイルスに対して向ける防御的CD8+T細胞応答も要求される。かかるCD8+T細胞応答は、流行している感染株により感染された場合にウイルスに対する抗体を有する健康な個体内には誘導され得るが、しかし免疫無防備状態の個体または非常に若いかまたは老齢者には誘導されないであろう。(b)ワクチン投与の後に誘導される抗体応答は、免疫原として使用されるウイルスの株に対して強く特異性である。従って、集団を免疫化するためには毎年新しいワクチンを同定、製造および投与
することが必要となる。いずれかの与えられた年にワクチンに使用したウイルス株が流行している感染株とは異なった場合には、集団の大部分が流行している株に対して防御されていないので、インフルエンザウイルス感染の罹患率および致死率が上昇する。(c)いずれかの与えられた年でインフルエンザウイルスに対する防御的抗体応答を効率的に誘導することが要求されるウイルスの量が多く、製造は複雑でそして頻繁なので、集団の大部分を十分に免疫化するために必要な時間内に十分なワクチンを生産できない。
【0110】
本発明のワクチンは、皮内または皮下経路により脊椎動物に投与される生の感染性ウイルスの低用量を含んでなる。皮下とは、皮膚の真皮層とその下の筋肉組織の間にある脂肪組織を指す。皮内とは、表皮とその下の皮下脂肪層の間にある真皮層を指す。皮内部位は、多数の抗原提示細胞を含みそして皮下部位と比較してリンパ組織内へのより迅速な放出を与える。これは、免疫応答、抗原/生体作用活性薬剤クリアランス、および皮内と皮下注入部位との間の所要用量の形式および大きさに差異をもたらすであろう。本開示を読んで明らかになるように、現在使用されているものに対して、本ワクチンを用いることにはいくつもの利点がある。第一に、本発明のワクチンは抗体応答の外にCD4+およびCD8+T細胞応答を被接種者内に誘導するので、本発明のワクチンはすべての被接種者に防御的免疫応答を与え、それはその後のウイルス感染に対するさらに完全な防御のために重要なものである。第二に、インフルエンザウイルス株の多数の内部セグメント/遺伝子が抗原性T細胞エピトープを共有するので、本ワクチンにより誘導される防御性CD4+およびCD8+T細胞応答が各個別のウイルス血清型に対する特異性が低くなり、ウイルスの個別株に対するワクチンの特異性は重要性が低くなる。第三に、ウイルスの低用量で十分であり従っていずれか特定のウイルスの多量生産に関連する困難が低下する。流行中の株が一旦単離されると、大量のワクチンが迅速に製造でき従って罹患の恐れがある大きい集団が、現状で可能なよりも迅速に免疫化できる。第四に、生ウイルスの一回の注入が免疫応答を誘発し、それは追加の免疫化によりさらに補強できる。現在のワクチンは、防御的免疫応答を誘発するために複数回のワクチン接種を必要とする。
【0111】
本発明でワクチンとして使用されるウイルスは、好ましくは「生」ウイルスである。しかし、弱毒化ウイルスおよび死ウイルス、またはそれらのウイルスのいずれかもしくはすべての組合せ、またはCD8+細胞応答および/または抗体応答を誘発するあらゆる生体作用活性薬剤も本発明に予期される。インフルエンザウイルスの場合に、ワクチンに使用されるウイルスの形式は、好ましくはA型インフルエンザウイルスであるが、しかし既知または現在は未知の他のインフルエンザウイルスも本発明に含まれる。本明細書中の別の箇所で考察するように、現在、A型インフルエンザウイルスの多数の異なる血清型が存在し、そしてヒトおよびその他の動物内で疾患を起こしそして免疫性を誘導するそれらの能力は、ウイルスのエンベロープ内のHAおよびNA抗原の形式により大部分が支配される。本発明は、それらのウイルス株が宿主の天然の感染の間に産生されるか、異なる種の感染の結果としてHAおよびNA抗原の再構築により産生されるか、またはウイルスの抗原構造が通常の分子生物学技術を用いて可能なように特異的に設計されたかもしくはランダムな組換えにより生成されたかのいずれかである組換え手段により産生されたかには関係なく、ウイルスエンベロープ内のHAおよびNA抗原のあらゆる組合せを有するあらゆるウイルスを含むと解釈するべきである。好ましくは、本発明に有用なインフルエンザウイルスは、脊椎動物内で広いスペクトルのCD8+T細胞および/または抗体応答を誘発できるものである。最も好ましくは、ウイルスは、それらに限定はされないが、インフルエンザの潜在的な汎流行株(例えばH5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3またはH7N7)、過去の汎流行(例えばH2N2またはH1N1)、または非汎流行ウイルス(例えばH1N1、H1N2またはH3N2)のものから成る。
【0112】
本明細書中の別の箇所に記載のように、本発明は、ワクチンとして生ウイルスの使用のみに限定されると解釈してはならない。弱毒化ウイルス、ならびに死ウイルス、または弱
毒化ウイルス、死ウイルスおよび生ウイルスの組合せも本発明に有用でありそして包含されると考えられる。その他の生、死または弱毒化微生物体も、本発明に有用でありそして包含されると考えられる。熟練した医師は、本明細書中に提供する開示に基づいて、一つのワクチン内のウイルスの異なる形態の組合せが、一定の場合には、ウイルス抗原型の広いスペクトルに対する防御のために必要な動物内での体液性および細胞性免疫応答の両者を増大することを理解するであろう。
【0113】
投与の経路および頻度
本発明において、ワクチンの投与の経路は、動物内のワクチンにより誘導される防御性免疫応答の範囲に関与することが発見されている。実施例の部分に提出したデータを調べて明らかとなるように、インフルエンザウイルスによるその後のチャレンジに対する防御性免疫の高いレベルは、皮下または皮内経路のいずれかによりウイルスを投与された動物内で得られた。従って、本発明のワクチンはそれらの経路のいずれか一つに限定されるとは解釈するべきではなく、インフルエンザウイルスの皮下または皮内投与が好ましい経路であってインフルエンザウイルス以外またはその他の微生物またはその他の生体作用活性薬剤のためにも好ましい経路である。しかし、投与のその他の経路も本発明内に含まれ、特に天然ではない経路が好ましい。限定ではない例として、特にワクチン内に含まれるワクチンがインフルエンザウイルスでない場合に、筋肉内、鞘内、腹腔内、鼻内、直腸、経口、非経口、局所、肺臓、口中、粘膜内およびその他の投与の経路が、動物への本発明のワクチンの投与のために本発明内に含まれる。投与の経路は、免疫が望まれそして身体の部位が保護されなければならない病原性ウイルスの種類に依存して組合せ、または所望の場合には調整されてもよい。
【0114】
ワクチンとして使用される場合のいずれか特定のウイルスの投与の最善の経路を評価するために、実験詳細の部に記載のプロトコールには、かかるプロトコールが例示としてのみ提供されそしてそれらは本明細書中に記載し請求される本発明に対してどのような限定的効果も持たないと解釈されるべきであるということを当然ながら認めた上で従ってもよい。それらの実験は、生ウイルスを用いる皮下および皮内接種が、いかなる疾患の臨床的兆候を示すことなく、ウイルスの非常に低い用量でもインフルエンザウイルスに対して向けられた非常に強力な免疫応答を誘発することを確証する。従って、それらの実験は、生ウイルスの投与の皮下または皮内経路がインフルエンザウイルスの潜在的な汎流行に対する有用なワクチン戦略であることを確認する。
【0115】
ウイルスワクチンの用量および有効な量は、条件、選択されたウイルス、動物の年齢、体重および健康などの因子に依存するであろうし、そして動物宿主間でも変動するであろう。個体に投与される本発明のウイルスの適当な力価は、抗体およびT細胞応答を含むウイルスに対する防御的免疫応答を誘発できる力価である。有効な力価は、個体にワクチンの投与の後の免疫エフェクター細胞の活性を決定するためのアッセイを用いるか、または周知のイン・ビボ診断アッセイを用いて治療の有効性を測定して決定できる。
【0116】
ワクチンは、一日に数回の頻度で動物に投与してもよく、またはそれはより低い頻度、例えば一日一回、一週間に一回、二週間に一回、一月に一回、またはさらに低い頻度、例えば数カ月に一回、または一年に一回で投与されてもよい。理想的には、ワクチンは動物に一回または多くても二回投与される。投与の頻度は、熟練者には直ちに明らかであり、そして多数の因子、例えば、それらに限定はされないが、対抗して免疫化される疾患の種類および重症度、動物の種類および年齢などに依存する。
【0117】
ウイルスワクチンの免疫原性、すなわち病原性ウイルス株を用いる致死的チャレンジからの動物の防御を与える動物内の抗ウイルス抗体およびCD8+T細胞応答の生成は、本明細書中の実験の部に記載のようにして決定される。要約すると、ワクチンを動物の一群
に投与する。選択された期間の後、抗体およびCD4+およびCD8+T細胞応答を群内の一部の動物について測定する。群内の他の動物は、病原性ウイルスを用いてチャレンジされそしてウイルス疾患の何れかの症状の進展を測定する。ウイルスの病原性株を用いてチャレンジされた後に動物へのワクチンにより生成された免疫応答および得られた防御的効果は、ワクチンを投与されなかった対照動物と、ワクチンを投与された動物で得られた結果とを比較して評価される。
【0118】
III.調剤
本明細書中に記載の方法に従って生産された生体作用活性薬剤、例えばワクチンは、本明細書中に記載の種々の方法で調剤できる。
【0119】
生体作用活性薬剤の基本的な調剤は、生体作用活性薬剤を製薬学的担体、例えば、それらに限定はされないが、生体作用活性薬剤を組み合わせることができそして組合せの後に動物へ生体作用活性薬剤を投与するために使用できる化学的組成物内で組み合わせることを含む。製薬学的組成物は、製薬学的組成物のあらゆるその他の成分と相容性であり、そして組成物が投与される動物に有害ではないあらゆる生理学的に許容できるエステルまたは塩を含んでもよい。本明細書中に記載の製薬学的組成物の調剤は、製薬学の技術分野で既知または今後開発されるいずれかの方法により調製されてもよい。一般に、かかる調製方法は有効成分を担体または1種もしくはそれ以上の補助成分内と会合させる工程、次いで、必要または望ましい場合には、所望の単回または複数回投与単位に製品を成形または包装する工程を含む。
【0120】
それらの調剤中で、他の物質は、調剤の成分と共重合体、ブレンドまたはアロイを形成するために使用でき、それにより調剤の物理的性質を改変しそしてさらに内包/放出プロフィールを調整することを含んでもよい。それらの調剤は、樹状細胞のような抗原提示細胞を誘引および保持するかまたはトール様受容体(TLR)アゴニストもしくはアンタゴニストのような抗原提示細胞の挙動を変更するケモカインのような物質を含んでもよい。
【0121】
本明細書中に提供される製薬学的組成物の記述は、ヒトへの指示投与に適する製薬学的組成物に主として向けられるけれども、かかる組成物はすべての種類の動物への投与に一般的に適することは熟練者により理解されるであろう。種々の動物への投与に適する組成物を与えるためにヒトへの投与に適する製薬学的組成物の変更はよく理解されており、そして通常の技術の獣医薬剤師は、必要なら単に通常の実験を用いてかかる変更を設計および実行できる。本発明の製薬学的組成物の投与が意図される対象は、それらに限定はされないが、ヒトおよびその他の霊長類、商業的関連がある哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、およびイヌおよびその他の脊椎動物、例えば鳥類を含む哺乳動物を含むと意図する。
【0122】
本発明の製薬学的組成物は、バルク、単一単位用量として、または複数の単一用量単位として、製造、包装、または販売されてもよい。本明細書中に使用される場合に、「単位用量」とは、生体作用活性薬剤の所定の量を含んでなる製薬学的組成物の分離された量である。生体作用活性薬剤の量は、一般に、動物に投与される生体作用活性薬剤の投与、またはかかる用量の便利な分割、例えばかかる用量の半分、三分の一に等しい。
【0123】
本明細書中に開示の本発明の製薬学的組成物として含まれる一部の調剤は、投与される生体作用活性薬剤が周囲の組織内に迅速に放出されるか、または時間をかけて緩徐に放出されるように設計される。さらに、本明細書中に開示される多数のものは、生体作用活性薬剤を一つの温度では保持し、一方別の温度では放出する追加の利点を有する。例えば、体温以下の温度にあるゲル内に含まれる生体作用活性薬剤はゲル内に保持されるが、しかし体温では周囲の組織内に放出される。さらに、本発明の生体作用活性薬剤は、複数投与
内で単一用量が投与されるように調剤できる。放出プロフィールおよび/または単回に対する複数回投与の戦略は、投与される生体作用活性薬剤に基づいて当該技術分野の熟練者により決定される。さらに、生体作用活性薬剤は、それらを含む材料を破裂させて放出されるか、および/または超音波、光もしくは熱の形状でエネルギーを与えるかまたはpHを変化させて条件を変化して放出を制御できる。
【0124】
以下に記載の調剤の前に、生体作用活性薬剤、生、弱毒化もしくは死ウイルスは、熟練したウイルス学者には周知でありそして例えばFields Virology(上記)に記載の凍結乾燥技術を用いて場合により冷凍乾燥または凍結乾燥されてもよい。
【0125】
動物およびヒトへの生ウイルスワクチンのような生体作用活性薬剤の投与は、注入過程の間のウイルスのエーロゾル化の可能性のために極近くの人員に健康脅威を与える可能性がある。この問題を解決するために、本発明は、有害生体作用活性薬剤、例えば生ウイルス接種の安全への関心に対処するために設計された新規の送達調剤およびデバイスを含む。さらに、かかる調剤および送達デバイスは、動物の組織内への生体作用活性薬剤の放出のための別の戦略を与える。例えば、徐放調剤を使用してもよく、または生体作用活性薬剤を組織内に直接放出する調剤を使用してもよい。
【0126】
生体作用活性薬剤、例えば生ウイルスの内包のための無毒性、天然または合成ポリマーを含んでなる内包ビヒクルが本明細書中に提供される。好ましくはそれらのポリマーは、ミクロカプセル、ナノカプセル、ナノチューブと組み合わせた生ウイルスのミクロカプセル化またはナノカプセル化に有効である。さらに好ましくは、それらのポリマーは、それらを生体作用活性薬剤と組み合わせると、生体作用活性薬剤のエーロゾル化が回避され、従って動物に投与する際の生ウイルスワクチンの安全性を上昇するという追加的な性質を有する。
【0127】
内包ビヒクルは、それらに限定はされないが、天然および合成ポリマー、例えばアルギネート、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ジェランガム、コラーゲン、キトサン、ラミニン、エラスチン、マトリゲル(Matrigel)TM、ビトロゲン(Vitrogen)TM、ポリメチルメタクリレート、ポリ〔1−ビニル−2−ピロリドン−コ−(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)〕、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリグリセリルアクリレート、アクリル酸コポリマー(例えばTRISACRYL);多糖類、例えばデキストランおよびその他の増粘性ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース;ポリエチレングリコール、ポリ酪酸およびそれらのコポリマーを含む。上記のマクロポリマーのオリゴマー組成物は、それらがエーロゾル形成を抑制するために適当な粘弾性性質を有する限り含まれる。
【0128】
さらに、生体作用活性薬剤自体も、ビヒクル内に内包される前に当該技術分野の熟練者には公知のミクロカプセルもしくはナノカプセルのいずれかの形状内に含まれることができる。かかるコンテナーは、それらに限定はされないが、リポソーム、ポリマー性ミクロカプセル、例えばポリ(ヒドロキシ酸)から成るもの、ヒドロゲルカプセルまたはミクロチューブおよびナノチューブを含む。あるいは、ゲル内に含まれる生体作用活性薬剤は、ミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に加えられることもできる。
【0129】
一つの態様では、内包ビヒクルを生ウイルス粒子と混合しそして針を通って注入されるために十分なほど小さい内包ウイルスのカプセルを生成させる。カプセルの大きさおよびカプセル内のウイルスの量は、使用するポリマー、ウイルス、および投与の経路に応じて最適化できる。
【0130】
別の態様では、ゲル状内包ビヒクルおよび生ウイルスを含んでなる円筒が、単一の投与針またはその他の注入デバイスの内部に生成される。この工程は本明細書中ではイン・シトゥ・ゲル化と称する。イン・シトゥ・ゲル化法は、内包ウイルスの非常に小さい円筒を皮下あるいは皮内に注入できる即時使用可能単位を提供する。この態様において、内包ビヒクルは、それが室温では固体の注入可能ゲルに止まるがしかし体温では内包されたウイルスを放出するように、またはあらかじめプログラムされた放出プロフィールでワクチン送達の選択された経路に基づいて所望のゲル強度を達成するように設計される。針の大きさ、最初のゲル濃度、円筒を外す手段、およびその中に含まれるウイルスの量は、使用されるポリマーの種類、ウイルス、および投与の経路に応じて最適化される。
【0131】
温度およびpHは、エーロゾル抑制の望ましい性質、適当な粘弾性および放出速度を達成するために変化できる別の可能な因子である。さらに、ゲルおよびミクロカプセル、ナノカプセルもしくはナノチューブを含んでなる内包ビヒクルは、超音波、光もしくは熱の形態のエネルギーの適用またはpH変化の生成により条件を変化させてコンテナーの破裂および/または放出制御により生体作用活性薬剤の放出を制御れ得る。
【0132】
生ウイルスを内包する際に使用される例示的なポリマーは、以下にさらに詳細に記載され、そして、限定はされないが、アルギネート、ヒアルロン酸、セルロース、デキストランおよびコラーゲンマトリックスを含む。
【0133】
他の用途のための内包ポリマーを生成するために設計される方法は、送達されるウイルスが生ウイルスである場合に、ウイルスは本質的に不活性化されずおよび/または内包状態の間に免疫原性を失ってはならないことを条件に、本発明に適合できる。同様な制限は、包膜化が所望の活性を保存しなければならない場合にも生体作用活性薬剤に適用される。
【0134】
「本質的に不活性化される」の用語では、ウイルスが少なくとも幾らかの感染性を保持し従って宿主細胞内で感染および複製可能であることを意味する。
【0135】
本明細書中に記載の内包ビヒクルは、生ウイルスワクチン戦略に有用であるだけでなく、対象者へのいずれかの生物学的の生体作用活性薬剤の安全な送達のためにも有用であることは熟練者には理解されるであろう。
【0136】
内包ビヒクルの限定ではない例をここに記載する。内包ビヒクルを生成するために有用な実験条件およびワクチンへのそれらの使用は、本明細書中の別の箇所の実験実施例中にさらに詳細に記載されている。本発明中で有用な内包ビヒクルは、投与の間にウイルスのエーロゾル化を防止することにより生体作用活性薬剤に安全の一定のレベルを与える。さらに、内包ビヒクルは、生体作用活性薬剤の即時または徐放調剤の生成を容易にする。さらに、ウイルスは、生体作用活性薬剤/内包ビヒクルの組合せが投与の前に送達デバイス内に前装入されるか否かにかかわらず、使用の前に内包ビヒクル内で安全に保管されてもよい。
【0137】
本発明は、本発明のウイルスワクチンのための内包ビヒクルとしてのゼラチンポリマーの使用を含む。本発明のワクチン内で有用なゼラチンの濃度は、水に対するゼラチンの約0.05%〜約25%(w/w)の範囲およびその間のすべての完全または部分整数であってもよい。種々の濃度でゼラチンがウイルスと混合されそして得られた溶液を送達デバイス、例えば、それらに限定はされないが、針または注射器内に装入される。装入の前、その間またはその後のゼラチンのゲル化は、当該技術分野では公知の方法に従って誘導される。本発明におけるゼラチン使用の利点は、架橋が架橋剤としての温度のみを介しておきるので、ゼラチンの架橋がどのような添加化学薬品がなくても起き得るということにある。
【0138】
ウイルス−ゼラチン混合物を動物に接種しそして免疫応答に対する効果が本明細書中の他の箇所にさらに詳細に記載されるようにして評価される。好ましくは、ゼラチンは凍結乾燥されそして滅菌するためにγ線照射またはその他の滅菌方法を受ける。使用されるゼラチンの濃度は、動物への投与の後のゲルからのウイルスの望ましい放出速度に依存して変化されそして本発明を理解した熟練者には明らかであろう。
【0139】
場合により、コポリマー、ポリマーブレンドまたはアロイ、例えば、それらに限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)が、ゼラチンと関連して使用されてもよい。PEGはゲルからの水の損失を低下させるように作用する。約500〜約50,000の範囲のPEGの大きさおよびその間のすべての完全または部分整数が本発明に有用であり、ここで好ましい分子量は、PEGの約100、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000および10,000である。PEGは、ゼラチン−ウイルス混合物中にPEGゼラチンのほぼ0.1〜20%w/wで含まれることができるが、この範囲は、ゼラチンの強度、ワクチン内に使用されるウイルス、送達経路などを含みそれらに限定はされない多数の因子に依存して変化してもよい。従って、PEG/ゼラチンの0.1〜20%w/wの範囲は、その間のあらゆる完全または部分整数を含むと解釈される。
【0140】
コラーゲンゲルを含んでなる内包ビヒクルも本発明に使用されている。コラーゲンゲルは、本明細書中の他の箇所に記載のようにして合成および特性決定されてもよい。ワクチン製造のためのゲル内で有用なコラーゲンの濃度は、約0.5〜50mg/ml(コラーゲン)溶液およびその間のすべての完全または部分整数で変化してもよい。コラーゲンの架橋は、熟練者には周知の技術を用いて達成されそして本明細書中の別の箇所にさらに詳細に記載されている。
【0141】
ウイルス−コラーゲン混合物は動物に接種されそして免疫応答に対する効果は、本明細書中の別の箇所にさらに詳細に記載されている方法により評価される。好ましくは、コラーゲンは凍結乾燥されそしてそれを滅菌するためにγ線照射されることができる。使用されるコラーゲンの濃度は、動物に投与の後のゲルからのウイルスの望ましい放出速度に依存して変化しそして本発明を熟知した熟練者には明らかである。
【0142】
場合により、コポリマー、ポリマーブレンドまたはアロイ、例えば、それらに限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)は、コラーゲンと関連して使用されてもよい。約500〜約50,000の範囲のPEGの大きさおよびその間のすべての完全または部分整数のすべてでありが本発明に有用であり、ここで好ましい分子量は、PEGの約100、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000および10,000である。PEGは、コラーゲン−ウイルス混合物中にPEGコラーゲンのほぼ0.1〜20%w/wで含まれることができるが、この範囲は、コラーゲンの強度、ワクチン内に使用されたウイルス、送達経路などを含みそれらに限定はされない多数の因子に依存して変化してもよい。従って、PEG/コラーゲンの0.1〜20%w/wの範囲は、その間のあらゆる完全および部分整数を含むと解釈される。
【0143】
本発明の内包ビヒクルは、アルギネートを含んでもよい。種々の粘度のアルギネートがその分子量に従って入手できる。アルギネートの濃度および種類を変更して異なる粘度の溶液を生産することも可能である。種々の強度の架橋ゲルは、本明細書中の実験の部に記載のようにしてイオン架橋剤の濃度および種類を変化させて生産できる。アルギネートの種類の相違には、ポリマー骨格内のグルロン酸:マンヌロン酸比を変化させた組成を有す
るものも含む。本発明に使用するための最適なアルギネート組成を評価する方法は、本明細書中の実験実施例の部に記載されている。
【0144】
典型的には、アルギネート濃度はアルギネートの約0.1%〜約20%およびその間のすべての完全または部分整数の範囲である。好ましい濃度は、使用されるアルギネートの種類に依存して約0.5%、1%または1.5%もしくは2%または20%までのアルギネートを含む。アルギネートはキトサンのような他のポリマーと組み合わされて所望の性質を有するゲルを生成できる。それはポリL−リシンのようなポリカチオンとも相互作用ができる。PEG−アルギネートのような変性アルギネートも利用できる。
【0145】
本明細書中の他の箇所で考察するように、好ましいワクチンは、ビヒクルがミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に装入されたゲル、溶液または粉末を含んでなるものである。従って、本発明は、寸法が1から数百μm、好ましい大きさは10〜100μmの程度のミクロカプセルの合成および装入を含む。本発明は、大きさが1nm未満から1μmまで、好ましい大きさ100nm〜1μmを有するナノカプセルの合成および装入も含む。本発明は、ナノチューブが約1nm〜1000nm、好ましくは20〜500nmおよびその間のすべての完全または部分整数の直径の範囲を有するナノチューブの合成および装入も含む。200nmより大きい直径を有するナノチューブは、インフルエンザウイルスの大きさの粒子を保持および放出できる構造の生成を容易にする。本発明中で使用のために好ましいナノチューブは、マルチ壁ナノチューブ(MWNT)である。ナノチューブは、熟練者には利用可能でありそして例えばミラーら(Miller et al.,J.Am.Chem.Soc.123:12335−12345)に開示された技術を用いて合成できる。
【0146】
本発明のナノチューブ内に装入されたウイルスは、管の内腔から検知できるほどは拡散して出てはならない。好ましくは、ナノチューブは水より粘度が高い液体を用いて装入される。さらに、ナノチューブは、ゲル内で内包または粘性または半粘性溶液中および本明細書中の別の箇所に記載されたもの、例えばゼラチン、コラーゲン、アルギネートまたは体温で周囲の組織内にウイルスを放出できるその他のゲル内に含まれるウイルスを装入されてもよく、それにより本発明のワクチンに追加の安全性およびその他の利益を与える。ナノチューブは、粉末、例えば、それらに限定はされないが、冷凍乾燥された生体作用活性薬剤を用いて装入されてもよい。生体作用活性薬剤内包ゲルを内部に装入されたナノチューブは、本発明中に記載のいずれかのデバイスを用いてまたは送達の安全性を保持する望ましい作用を生成できるその他のデバイスを用いて安全に投与できる。あるいは、生体作用活性薬剤を装入されたナノチューブをゲル内に内包し、次いで以下にさらに詳細に記載する種々のデバイスを用いて送達できる。
【0147】
IV.デバイス
本発明は、生体作用活性薬剤の貯蔵および動物、好ましくは哺乳動物そしてさらに好ましくはヒトへの生体作用活性薬剤の送達のための種々のデバイスの使用を含む。かかるデバイスは、それらに限定はされないが、針、注射器、カテーテル、遺伝子ガン、ナノチューブ、貼付剤、粘膜アプリケーター等を含み、それらは所望の生体作用活性薬剤をあらかじめ、すなわち、動物に生体作用活性薬剤を投与する前に装入されるか、または動物に生体作用活性薬剤を投与する時点で生体作用活性薬剤ワクチンを装入される。
【0148】
本発明は、動物の組織を浸透しそして内部動物組織内に薬剤を送達する機能で作動する、現在知られているかまたは将来発見されるすべてのデバイスの使用を含む。従って、本発明は、針、注射器、針と注射器の組合せ、遺伝子ガンなどのすべての単独または複数を含む。
【0149】
それらデバイスそれぞれは、生体作用活性薬剤単独または本明細書中に記載のようにして内包された生体作用活性薬剤で装入できる。それらのデバイスの装入は、動物への薬剤の投与の直前に行うことができ、または別の時点で行うことができ次いでデバイスは発送および使用まで保管される。
【0150】
本明細書中の別の箇所で考察するように、好ましいワクチンはナノチューブ内に装入されたものである。従って、本発明は炭素ナノチューブの合成および装入を含み、ここでナノチューブは約50nm〜約250およびその間のすべての完全または部分整数の範囲の直径を有する。より大きい直径のナノチューブは、インフルエンザウイルスの大きさの粒子を保持および放出できる構造体の生成を容易にする。本発明に使用するために好ましいナノチューブは、マルチ壁ナノチューブ(MWNT)である。ナノチューブは、熟練者には利用できそして例えばミラーら(Miller et al.,2001,J.Amer.Chem.Soc.123:12335−12342)中に開示されている技術を用いて合成できる。本発明のナノチューブ内に装入されるウイルスは、管の内腔から検知されるほどは拡散して外に出てはならない。好ましくは、ナノチューブは水より粘度が高い液体を用いて装入される。さらに、ナノチューブは、ヒドロゲル内および本明細書中の別の箇所に記載されたもの、例えばゼラチン、コラーゲン、アルギネートまたは体温で周囲の組織内にウイルスを放出できるその他のヒドロゲル内に内包されているウイルスで装入されてもよく、それにより本発明のワクチンに追加の安全性およびその他の利益を与える。
【0151】
V.方法
本発明は、脊椎動物、好ましくはヒト内でCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を誘発する方法をさらに含む。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が該脊椎動物内に誘発される。脊椎動物に投与されるウイルスは、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、投与の好ましい経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物中で、またはいずれかの内包調剤中でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。CD8+T細胞および/または抗体応答が脊椎動物内で誘発されているかどうかを決定するために、本明細書中の実験実施例中に記載の手順に従う。
【0152】
またウイルスによる感染に対して脊椎動物を防御する方法も本発明に含まれる。その方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が脊椎動物内に誘発されそれにより脊椎動物を感染に対して防御する。脊椎動物に投与されるウイルスは、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、好ましい投与の経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物中で、またはいずれかの内包調剤中でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。その後のウイルス感染に対する脊椎動物の防御は、本明細書中の別の箇所に記載されている。
【0153】
脊椎動物内の感染を防御する方法もさらに含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が脊椎動物内に誘発されそれにより脊椎動物内のウイルス感染を防御する。脊椎動物に投与されるウイルス
は、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、好ましい投与の経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物中で、またはいずれかの内包調剤中でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。
【0154】
さらに、脊椎動物内のウイルス感染を処置する方法も含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が脊椎動物内に誘発されそれにより脊椎動物を感染に対して処置する。脊椎動物に投与されるウイルスは、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、好ましい投与の経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物内で、またはいずれかの内包調剤内でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。この本発明の方法は、汎流行、特にはヒトおけるイベントで特に有用である。ヒトを処置しそしてさらに重い病気から防御するために、ワクチンは症状の発生の時点でヒトに投与できる。
【0155】
本発明は生体作用活性薬剤を動物に投与する場合に安全性を上昇する方法も含む。該方法は、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を動物に投与することを含んでなり、ここで生体作用活性薬剤は、動物内に疾患を起こさない経路による生体作用活性薬剤の投与に続いて動物内に免疫防御的CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらにここで生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包されている。
【0156】
生体作用活性薬剤を動物に投与する場合に安全性を上昇する方法も含まれ、ここで該方法は生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物を動物に投与することを含んでなる。生体作用活性薬剤は、動物内に疾患を起こさない経路による生体作用活性薬剤の投与の後に動物内に免疫防御的CD8+T応答を誘導する。
【0157】
それらの方法のそれぞれにおいて、生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包されそして生体作用活性薬剤は微生物およびタンパク質からなる群から選択される。
【0158】
生体作用活性薬剤を動物に投与する場合の安全性を上昇させる方法も含まれる。該方法は、動物内でリスクを低減させながら所望の応答を誘導する生体作用活性薬剤の量を含んでなる組成物を動物に投与することを含んでなる。生体作用活性薬剤の投与経路は、動物内に疾患を起こさない経路であって、さらに生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包されてそれにより生体作用活性薬剤を投与した場合の安全性を上昇させる。
【0159】
本発明の各方法は、あらゆる動物、好ましくは非常に老齢、非常に若いおよびその他の免疫無防備状態のヒト、および健康なヒトも含むヒトに対して行うことができる。
【0160】
VI.その他の組成物
本発明は、生体作用活性薬剤の生物学的な有効量を含んでなる組成物をさらに含み、ここで生体作用活性薬剤は動物内に所望の応答を誘導し、一方では動物内に疾患を起こさない経路による動物への生体作用活性薬剤の投与の後に動物内でリスクを低減する。好ましくは、該経路は天然ではない経路でありそしてさらに好ましくは、該経路は皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口からなる群から選択される。
【0161】
組成物内の生体作用活性薬剤は、内包ビヒクル内に内包されてもよくそして内包ビヒク
ル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質を会合させてもよい。内包ビヒクルは、ゲル、液体または粉末からなる群から選択される少なくとも一種のメンバーであり、そしてミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に装入されてもよい。内包ビヒクルはポリマーを含んでなってもよく、そして好ましくは、ポリマーは動物に投与された場合に毒性ではない。ポリマーは、好ましくは生体作用活性薬剤とで会合されそれにより周囲の環境への生体作用活性薬剤の放出を遅延させる。さらに好ましくは、ポリマーはゲルである。生体作用活性薬剤は、好ましくは微生物、およびタンパク質からなる群から選択される。
【0162】
VII.キット
本発明は本発明の生体作用活性薬剤およびワクチンを含んでなる種々のキットを含む。本発明のキット中には、本発明の方法におけるワクチンの使用を記載した指示材料も含まれる。例示のキットを以下に記載するが、その他の有用なキットの内容は、本発明を参照して熟練者には明らかであろう。いずれのキットも本発明内に含まれる。
【0163】
本発明は、脊椎動物内にCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を誘発;ウイルスによる感染に対して脊椎動物を防御するため;脊椎動物内のウイルス感染を防御するため;および脊椎動物内のウイルス感染を処置するための方法中に使用されるキットを含む。
【0164】
本発明のキットは、動物に直ちに投与できる生体作用活性薬剤をあらかじめ添加したデバイスおよびその使用のための指示材料を含んでなる。あるいは、キットは、デバイス、冷凍乾燥されてもされてなくてもよい生体作用活性薬剤の製剤、生体作用活性薬剤の懸濁のための溶液およびデバイス、生体作用活性薬剤および溶液の組合せのための指示材料、およびさらに脊椎動物、好ましくはヒトへの上記の投与に関する指示を含む。生体作用活性薬剤は、場合により内包ビヒクル製剤を含む製薬学的に許容できる担体内に懸濁されてもよい。あらかじめ添加されるデバイスは、針、および注射器、針と注射器の組合せ、またはナノチューブ、または上記のいずれかの組合せであってもよい。
【0165】
実施例
本発明は、下記の実験実施例を参照してさらに詳細に記述される。それらの実施例は、説明のためのみに提示され、そして特に断らない限り限定であるとは考えられない。従って、本発明は下記の実施例によりいかなる様式でも限定されると解釈されないが、しかしさらに正確には、本明細書中に提供される教示の結果として明らかになるすべての変化を包含すると解釈すべきである。
【0166】
本発明に有用な実験方法を先ず以下に記載する。
【0167】
動物、抗体およびインフルエンザウイルス感染
動物研究は、IACUCの承認の下で行った。特定の病原を持たない8〜12週齢C57BL/6J(B6)野生型マウスは、Jackson Laboratories(Cincinnati.OH)から入手できる。C57Bl/10SgSnAiRag−/−γc−/−(以下ではRag−/−γc−/−と記載する)およびC57Bl/10雌マウスはTaconic(Germantown,NY)から入手できる。すべてのマウスは、Drexel University College of Medicine,Drexel UniversityにあるAAALAC承認隔離施設内に飼育された。一般に、9匹の動物が一つの群に含まれた。インフルエンザA/プエルトリコ/8/34(PR8)ウイルス株(H1N1)およびA/Aichi/2/68およびA/プエルトリコ/8/34(PR8)ウイルス株(H3N2)のX31組換え株を実験に使用した。それらのウイルス株は、異なる表面赤血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N)タンパク質を発現し従ってそれらのウイルスに対する抗体応答は、互いに交差反応せず、それは動物を再チャレンジする実験では重要なことである。それらのウイルスの6個の内部遺伝子は、異なる株間で類似しており、従って再チャレンジ実験においてCTL応答の評価を可能とする。一般に、マウスは、ウイルス株X31の12赤血球凝集素単位(HAU)を用いて鼻内に感染された。二次応答の場合には、マウスはPR8株(1000HAU)を用いてIPに注入されそしてX31株の12HAUを用いて鼻内に再チャレンジされた。安全性および再チャレンジ研究は、マウスに毒性が高いA/ウマ/ロンドン/1416/73ウイルス(H7N7)を用いて行った。肺臓および脾臓単核細胞の調製、NP366−特異性CD8+T細胞の発現型分析、細胞質内サイトカイン染色、フローサイトメトリー、細胞毒性アッセイ、抗インフルエンザ抗体力価および肺臓ウイルス力価アッセイは、以前の記載(Halstead et al.,2002,Nat.Immunol.3:536−541)のようにして行った。
【0168】
肺臓、脾臓単核細胞の調製
肺臓は、1mg/mlコラゲナーゼA(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)および40U/ml DNAse(Sigma,St Louis,Mo)内で90分間、37℃で消化し、そして得られた組織を100μmナイロンメッシュを通し次いで洗浄した。脾臓は、Corningware Glass組織破壊器(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)を用いて単一細胞懸濁液にホモジナイズした。次いで、肺臓および脾臓の双方から得たリンパ球を、Hystopaque 1083(Sigma,St Louis,MO)を用いて密度勾配遠心分離により分離した。
【0169】
NP366−特異性CD8+T細胞の表現型分析および測定
細胞はAPC標識したNP366四量体を用いて染色した。細胞は、表面マーカー、すなわち抗CD3−PE(Becton−Dickinson,San Jose,CA)、抗−CD8−FITC(eBioscience,San Diego,CA)および抗−CD4−Cychrom(Cy5PE)(eBioscience)に対するFITC−、CY5PE−およびPE−共役抗体の組合せを用いて、30分間、氷上で同時染色した。洗浄およびパラホルムアルデヒド中に固定の後、2x105個の細胞を、FACS Calibur(R)(BD Bioscience)およびFlowJoソフトウエア(Treestar,San Carlos,CA)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。一部の場合には、NP366特異性CD8+T細胞の10回までの色分析を3−レーザーFACSAria(R)高速細胞ソーター(BD Bioscience)を用いて行うことができる。
【0170】
ビオチニル化H−2Db/β2m/ペプチド複合体
ビオチニル化H−2Db/β2m/ペプチド複合体は、記載(Altman et al.,1996,Science 274:94−96)のようにして製造した。H−2Db制限A型インフルエンザ核タンパク質NP(366−374)免疫優性エピトープ(ASNENMETM(配列番号1))(Townsend et al.,1986,Cell 44:959−968)をH−2Db内に複合化して、本研究に使用するNP366四量体を製造した。
【0171】
細胞毒性アッセイ
EL−4細胞(ATCC)は、A型インフルエンザペプチドNPP366−374、NS2114−121、M1128−135およびPA224−233の1μg/mlを用いて37℃で6時間インキュベーションしてペプチドで負荷された。インキュベーションの後、細胞を洗浄しそしてNa251CrO4(NEN,Boston,MA)を用いて75分間、37℃で標識し次いで再度洗浄した。次いでそれらのEL細胞を104(100μl)/ウエルで96ウエル丸底マイクロタイタープレート(Falcon,Becton−DickinsonLabware,Franklin Lakes,NJ)に加えた。次いで、エフェクターおよび標的細胞を100:1、50:1、25:1および10:1の比率でプレートし、そして6時間、37℃でインキュベーションした。次いでプレートを遠心分離しそして上清の30μlを96ウエルLumaPlates(Packard,Meriden,CT)に移しそしてTopCountマイクロプレート・シンチレーション計数器(Packard)内で計数した。比細胞毒性は、次式を用いて決定した。
【0172】
【数1】
【0173】
最大51Cr放出は、5%Triton X−100(Sigma,St Louis,MO)を用いて標的細胞を溶解して決定した。自発51Cr放出は、媒体のみを用いてインキュベーションした標的細胞を用いて決定した。
【0174】
細胞質内サイトカイン染色
細胞質内サイトカイン染色のために、106/ml/ウエルの肺リンパ球、脾臓単核細胞、または精製したCD8+T細胞を、10μg/ml NPP366−374、NS2114−121、M1128−135およびPA224−233ペプチド、抗CD3抗体またはPMA(25mg/ml)+イオノマイシン(1μg/ml)を用いて2.5μMモネンシンの存在下で5時間刺激し、次いで4%パラホルムアルデヒドを用いて10分間、4℃で固定した。細胞を2回洗浄しそして0.1%サポニンを用いて4℃で10分間、透過性を上げた。次いで細胞を洗浄しそして抗IFNγ抗体(eBioscience)を用いて4℃で30分間インキュベーションした。細胞を洗浄しそして1%パラホルムアルデヒド中に固定し次いで2x105イベントをFACS Calibur(R)(BD Bioscience)上に捕集しそしてFlowJoソフトウエアを用いて解析した。
【0175】
インフルエンザウイルス力価アッセイ
肺臓をホモジナイズしそして1500xgで15分間のホモジネートの遠心分離の後にウイルス懸濁液を捕集しそして次の分析まで−80℃で冷凍した。ウイルス上清の希釈物を3x104Madin Derbyイヌ腎臓(MDCK)細胞/ウエル(96ウエルU底プレート)に加えた。MDCKの24時間、37℃での感染の後、媒体を各ウエルから吸引し(MDCKは細胞に付着する)そして血清を含まない媒体を加えた。ウイルス力価は、4日後に、既知ウイルス濃度の標準曲線およびTCIDのReed−Munich計算を用いて、上清がチキン赤血球を凝集しなくなる希釈度を決定して決定した。ウイルス力価を測定するために使用できる第二の方法は、以前に記載(Ward et al.,2004,J.Clin.Virol.29:179−188)のようにして実時間PCRを用いる。
【0176】
ロバスト(Robust)免疫応答の同定
マウスにワクチンを投与した際のロバスト免疫応答を同定するために使用した特定の基準は:インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの際に、再チャレンジの7日目の肺臓内で全CD8+T細胞に対する20%を越えるNP366特異性CD8+T細胞または1x106を越えるNP366特異性CD8+T細胞および/または血清中和抗体の力価(赤血球凝集阻害アッセイにおいて)の1/500以上の誘導が観察されるはずである。それまで免疫化されていないナイーブなマウスは、一般に、感染の7日目において肺臓内で3%未満のNP366特異性CD8+T細胞および105未満のNP366特異性
CD8+T細胞を示す。
【0177】
統計解析
データは、JMP統計ガイド(SAS Institute Inc.,Cary,NC)を用いてMann−Whitney U検定、二標本データに対するWilcoxonの符号順位検定、Student検定およびSpearmanのロー相関を用いて解析した。
【0178】
安全性
いずれのワクチンの安全性も、野生型およびRAG−/−γc−/−動物について試験できる。安全性は、動物の一般外観、体重減少の試験により、および肺臓およびその他の組織の病状の評価により評価される。肺臓、脾臓、肝臓おび脳から得られるウイルス負荷は、実時間PCRを用いて評価される。それらの研究は、PR8およびA/ウマ/ロンドン/1416/73 H7N7ウイルス(ロンドン株)を用いて、生ウイルスのSQおよびID送達の後に行える。各群には9匹の動物を含むことができる。鼻内に投与されると全身性および脳感染を起こす高度に病原性のA/ウマ/ロンドン/1416/73ウイルス(Kawaoka,1991,J.Virol.65:3891−3894;Christensen et al.,2000,J.Virol.74:11690−11696)の使用は、SQおよびIDで投与されたウイルスの評価のための非常に厳しい試験を提供する。動物は、30日間、毎日観察および計量される。動物は、ウイルスIDまたはSQの1、0.1、0.01および0.001HAUで免疫化されそして30日間追跡される。動物は臨床的徴候および体重減少を評価される。動物は、目視により一日2回監視される。動物は毎日計量される。動物は、動物が下記の基準に適合すると除外される:1)外部刺激に応答しない、2)1時間を越える疲弊、3)苦しい息づかい、4)永続するふるえ、5)動物が継続して背を曲げる。すべての観察を記録する。除外した動物は、生存分析では非生存として数える。死亡はそれらの研究の終点ではない。動物は30日間追跡される。このような実験の実験誤差の範囲内で動物内の5%を越える体重減少を誘導せずそして動物の90%生存をもたらした場合に、ワクチンは安全と考えられる。
【0179】
ウイルス感染および投与経路
生ウイルスワクチン接種を研究するために、投与経路が抗ウイルスCD8+T細胞応答に有する効果を研究した。8週齢マウスをA型インフルエンザウイルスのPR8株を用いて腹腔内(IP)、筋肉内(IM)、皮内(ID)、または皮下(SQ)で免疫化しそしてインフルエンザウイルスのX31株を用いて30〜45日後に鼻内再チャレンジした。二次応答のピーク(7日目)でマウスを屠殺しそしてインフルエンザウイルス核タンパク質(NP366)ウイルス特異性CD8+T細胞応答を試験した。図1は、IDおよびSQ経路によるウイルスの投与が、肺臓内においてIMおよびIP経路よるウイルス投与によるものよりも強いCD8+T細胞応答をもたらしたことを描いている。図1に示した数字は平均±標準偏差であり、そしてIDおよびSQ経路に対してはそれぞれ5.04±1.17x106および5.71±0.79x106ウイルス特異性8+T細胞であり、これはIPおよびIM経路に対するそれぞれ3.65±1.21x106および3.41±0.18x106ウイルス特異性8+T細胞と比較される。それらの結果は、生ウイルスを用いる免疫化の経路が、全体的抗ウイルスCD8+T細胞応答の範囲に影響し、そしてID経路が最も強い応答を誘導することを示す。最も重要なことは、マウスに対する生インフルエンザウイルスの投与のIDまたはSQ経路の使用が動物内で臨床的疾患をもたらさないと観察されたことである。次いで、用量応答研究が、免疫応答において観察された差異がウイルスのさらにかなり低い用量でも明瞭かどうかを決定するために行われた。マウスは、ウイルスの順次低下する濃度を用いてIPまたはID注入により生インフルエンザウイルスを投与された。次いで、インフルエンザウイルスによる二次チャレンジに対するウイルス特異性応答を試験した。IPおよびID初回抗原刺激マウスの肺臓内の肺ウイルス特異性CD8+T細胞(NPP+CD8+)を描いた代表的なFACSプロットを図2に示す。マウスにIPで投与された生インフルエンザウイルスの減少する用量は、MHCクラスI四量体により測定して肺臓内でウイルス特異性CD8+T細胞の減少する数(高用量で3.65±1.21x106細胞そして低用量では0.35±0.11x106細胞のみ)およびNP366ペプチド特異性IFNγ産生CD8+T細胞(高用量で2.81±0.1x106そして低用量では0.18±0.05x106)をもたらした。IDで投与された生インフルエンザウイルスの減少する用量は、抗ウイルスCD8+T細胞応答の上昇をもたらした(高用量で5.05±1.18x106、これに対して低用量では7.2±0.46x106のウイルス特異性CD8+T細胞および高用量で4.06±0.79x106、これに対して低用量では4.83±0.24x106のIFNγ産生CD8+T細胞)。従って、生インフルエンザウイルスIPの低用量の投与は、弱いウイルス特異性CD8+T細胞応答を誘導し、一方同じ用量のIDの投与は、非常に強いウイルス特異性CD8+T細胞応答を誘発した。それらの結果は、ウイルス特異性CD8+T細胞応答を誘導する生インフルエンザウイルスのIP投与と比較して、ID投与の上昇する効率を証明しそしてそれらは、IDまたはSQ経路が使用されると、生ウイルスの非常に低い投与が非常に強い応答を誘発できることを示す。
【0180】
IDおよびSQ免疫化をさらに比較するために、8週齢C57B1/6Jマウスを、生A型インフルエンザウイルス株PR8(H1N1)の低用量(1HAU)を用いて腹腔内(IP)、皮下(SQ)、または皮内(ID)で免疫化し、45日後にインフルエンザウイルスヘテロサブタイプX31(H3N2)を用いて鼻内で再チャレンジした。再チャレンジの後、二次免疫応答のピークでマウスを屠殺した(再チャレンジの7日後)。NPから誘導した免疫優性エピトープに相当するペプチド(NP366)のアミノ酸366−374(ASNENMETM)(配列番号1))を添加したMHCクラスI四量体を用いてNP366特異性CD8+T細胞応答を評価した(Flynn et al.,1998,Immunity 8:683−691)。回収されたNP特異性CD8+T細胞の百分率および全数に基づくと、IPで免疫化されたマウスと比較して、投与のIDおよびSQ経路は、再チャレンジされたマウスの肺臓内により強い免疫応答をもたらした(図3A)。NP366特異性CD8+T細胞は、それぞれ3.76±3.7x106および5.8±4.3x106細胞の濃度でSQ(n+6)またはID(n+6)免疫化されたマウスの肺臓から回収された。対照的に、IP免疫化マウス(n=5)からは1.9±1.6x106のNP特異性CD8+T細胞のみが回収された(図3B)。それらの結果は、生ウイルスの低用量が、特にIDまたはSQで送達された場合には強いCD8T細胞応答を誘発することを示す。ヒト内のSQ免疫化は実行容易なことを留意して、この送達経路を効力および安全性に対するワクチンの最初の試験に使用すると決定した。
【0181】
生ウイルスのSQ投与が宿主動物内に疾患を誘導するかどうかを試験するために、野生型C57B1/6JマウスおよびT、BおよびNK細胞を欠失するマウス(株C57Bl/10SgSnAiRag−/−γc−/−、以後はRag−/−γc−/−と記す)を免疫化した。後者のマウスはウイルスに対するNK媒介または適合免疫応答を装備(mount)できなかった。1HAUの生PR8ウイルスの皮下投与の後、30日間にわたって、Rag−/−γc−/−もC57B1/6Jマウスも感染のいかなる徴候も示さずそしてさらにマウスのどちらの組も活性ウイルス感染の指標である体重減少を示さなかった。100HAUの生PR8ウイルスの用量がRag−/−γc−/−またはC57B1/6Jマウスに疾患を誘導できるかどうかを試験するために、5匹のRag−/−γc−/−およびC57B1/6Jマウスを100HAUのPR8インフルエンザウイルスを用いて免疫化しそしてそれらの体重を連続17日間記録した。日常的な免疫化に提示されるものよりも100倍高いウイルス用量のSQ注入は安全でもあり、そしてRag−/−γc−/−またはC57B1/6Jマウス中に体重減少を誘導しなかった(図4)。しかし、1HAU PR8インフルエンザウイルスを用いるC57B1/6Jマウスの鼻内(IN)感染は感染を誘導しそして感染後6日目に始まり10日目にピークに達したC57B1/6Jマウス中の進行性体重減少(n=5)を予想通りに誘導した。鼻内感染の11日後から始まって、C57B1/6Jマウスは回復を始めた(図4)。
【0182】
これまでのデータは、哺乳動物への生ウイルスの投与のためのSQ経路が、野生型または免疫欠損マウス内に活性ウイルス感染または全身性疾患を誘導しないことを示す。従って、この投与経路は安全であると考えられる。理論に拘束されることは望まないが、それらの発見は、インフルエンザウイルスを用いる全身感染の間の制御点は呼吸器感染に続くウイルス血症のレベルであると示差する研究(Lu et al.,J.Virol.73:5903−5911)を支持する。それらのデータは、別の天然ではない経路を介する生ウイルスの投与が、直接静脈内経路により投与されないかぎり明白な疾患をもたらさないという仮説(Swayne and Slemons,1994,Vet.Pathol.,31:237−245)も支持する。
【0183】
追加の安全性データ
生ウイルスワクチン戦略の実行性および効力を支持する追加のデータをここに提出する。生インフルエンザウイルス戦略は、インフルエンザウイルスの高度に病原性株(ロンドン株)を用いて試験された。得られたデータは哺乳動物へのウイルスの皮下送達が安全であることを確証する。さらに、該データは、アルギネートゲル内に捕捉された生インフルエンザウイルスが、被接種哺乳動物内で強力なインフルエンザ特異性CD8+T細胞応答を誘発することを確証する。重要なことには、該データは、哺乳動物への生ウイルス皮下の投与が抗体応答を誘発することを確証し、ここで中和抗体力価が、ウイルスの単回用量の投与の後に哺乳動物内に誘導されることをさらに確証する。加えて、本明細書中に提出するデータは、50nmサイズの量子ドット(Quantum dot,QDots)を含むアルギネートゲルをナノチューブに装入することが可能であることを確証し、従って、ナノチューブ内へのウイルスとアルギネートの装入が可能なことを示す。さらに、本明細書中の別の箇所に記載の条件下での(超)音波処理がナノチューブをより小さく、さらに好ましい破片に破断することが本明細書中で確証される。
【0184】
RAG−/−γc−/−(T細胞、B細胞もしくはNK細胞も持たないマウス)および野生型マウス内への皮下での生インフルエンザウイルスの送達の安全性に関する追加のデータを以下に記載する。図5で、野生型およびRAG−/−γc−/−動物(すべての群でn=5)をPR8インフルエンザウイルスの新しくそしてさらに強力なバッチまたは高度に病原性のA/ウマ/ロンドン/1416/73 H7N7ウイルス(ロンドン株)を用いて感染させた。PR8またはロンドン株の0.1HAUで鼻内感染された野生型動物は、インフルエンザウイルス感染の症状を示しそしてそれらの体重の30%以下を失った。この時点で、瀕死となった一部の動物を安楽死させた。対照的に、RAG−/−γc−/−マウス(図5)および野生型動物を10HAUの生ウイルス(すなわち鼻内感染に使用した用量の100倍)を用いて皮下接種した場合には、それらは体重が減少せずそしてそれらを追跡したその後30日間以上も病気の徴候を示さなかった。それらのデータは、ウイルスの投与の経路が接種手順の安全性のために重要であることを確証する。
【0185】
ゼラチンポリマーゲル内で送達されたワクチンの効力および安全性
ポリマーゲル内の生ウイルスがその免疫原性を保持できるという基本前提を試験するために、ゼラチンの3%(w/w)溶液をPBS中の生PR8インフルエンザ(10HAU/μl)ウイルスと30℃で混合しそして1ml注射器内に装入した。ゼラチン/ウイルス比は、各ゼラチンゲルの100μlが約10HAUの生ウイルスを含むように決定された。ゼラチンのゲル化は、注射器を氷上で30分間インキュベーションして誘導した。C57B1/6マウスを生ウイルスと混合した100μlゼラチン(n=2)または100μlゼラチンのみ(n=2)を用いて皮下で免疫化した。対照として、C57B1/6マウスの一群(n=2)をPR8生ウイルスの10HAUを用いて皮下で免疫化した。免疫化の30日後に、ゼラチン中の生ウイルスを受けたマウスは鼻内に投与される生インフルエンザウイルス株X31を用いて再チャレンジされた。二次免疫応答のピーク(再チャレンジの7日後)において、再チャレンジされたマウスの肺臓(図6A)および脾臓(図6B)から単離されたNP特異性CD8+T細胞の頻度および全数を評価した。ゼラチンゲル内に含まれた(3%w/w)10HAUの生ウイルスまたは10HAUの生ウイルスのみを用いて皮下免疫化されたマウスの肺臓内に、存在するリンパ球の全数の約30〜40%に相当するCD8+T細胞の大量の蓄積があった(CD8+ゲートの外に書かれた百分率、図6A)。さらにウイルスのみまたはゼラチンゲル内に組み込まれたウイルスを受けたマウスの肺臓から単離されたCD8+T細胞の約半分は、免疫優性NP366ウイルスエピトープに対して特異性であった(NP366特異性CD8+T細胞ゲートの内に書かれた百分率、図6A)。対照的に、ゼラチンのみを受けたマウス中では、肺臓に浸透したCD8+T細胞の数は、存在する全リンパ球の約17%のみに相当しそして存在するNP366特異性CD8+T細胞の百分率は2%のみであり、それは7日目のウイルスへの一次免疫応答と一致する(図6A)。ゼラチン内に含有される生ウイルスを用いて免疫化されたマウスの脾臓を検査すると、CD8+Tの約10%がNP366特異性CD8+T細胞であった(図6B)。対照的に、ウイルスのみで免疫化されたマウスでは、全CD8+T細胞の約22%がNP366特異性であった。ゼラチンを用いて免疫化されたマウスの脾臓内のNP366特異性CD8+T細胞の百分率は、1%以下であった(図6B)。
【0186】
実験の次の組は、ゼラチンゲル内に組み込まれた生ウイルスを用いる免疫化により誘導されたNP366特異性CD8+T細胞が機能性でありそしてペプチド抗原を用いて刺激された場合にはIFNγを産生したかどうかを決定するために行われた。非操作またはウイルス単独、ゼラチン内に組み込まれたウイルス、またはゼラチン単独を用いる免疫化のいずれかであるマウスからの全脾臓をNP366−374ペプチドおよびブレフェルジン(brefeldin)Aの存在下で6時間、カルチャー内で刺激した。IFNγの産生を、ペプチドを用いる6時間の刺激の間に細胞内部に蓄積されたIFNγに結合する蛍光共役抗IFNγ抗体を用いるフローサイトメトリーにより評価した。NP366−374ペプチドでイン・ビトロ刺激をすると、マウスの脾臓内のCD8+T細胞の約8%がゼラチンゲル内に組み込まれたウイルスで免疫化され、そしてマウスの脾臓内のCD8+Tの約17%が生ウイルス単独で免疫化され、IFNγを産生した(図6C)。対照的に、ゼラチンゲルのみで免疫化されたマウス中ならびに非操作マウス中では、CD8+脾臓細胞の1%以下がIFNγを産生した。ペプチド刺激が存在しないと、IFNγを産生するCD8+T細胞の百分率はすべての試料の1%未満であった。従って、ゼラチンポリマーは、身体内のウイルスの放出を容易にしそしてウイルスの免疫原性を改変しないが、それは、免疫化のこのモードを用いて処理されたマウスは、生ウイルス単独で免疫化されたマウスに類似する大きさのロバスト免疫応答を装備したからである。
【0187】
ゼラチンポリマー内で送達された生ウイルスの安全性を試験するために、Rag−/−γc−/−マウスを、10HAUの生ウイルスを含む100μlゼラチンまたはゼラチンのみを用いてSQ免疫化した。すべてのRag−/−γc−/−マウスは30日間を健康で残りそして体重が減少せず、従って、ゼラチンゲルは毒性ではなくそして送達のSQ経路は活性ウイルス感染を起こさないことを確認する。
【0188】
コラーゲンゲル
ゲル内包ウイルス粒子の送達に関する予備的な研究は、ウイルスおよび担体材料を含むゼラチンポリマーの一団をマウスへ皮下送達して行われた。コラーゲンは、他の状況で生体高分子として良く確立されたその用途のために、担体材料として開発された。捕捉されたウイルス粒子の放出のためのコラーゲンの分解速度は、コラーゲンの架橋度の制御によりおよび架橋剤の選択により制御できる(van Wachem et al.,199
1,Biomaterials 12:215−223)。しかし、架橋剤の細胞毒性(van Luyn et al.,1992,J.Biomed.Materials Res.26:1091−11;van Luyn et al.,1992,Biomaterials 13:1017−1024)および石灰沈着に対する悪化効果(Golomb et al.,1987,Am.J.Pathol.127:122−130)は、一部の架橋剤の有用性を低下させる。さらに、架橋が架橋剤とコラーゲンフィブリルのアミノ酸部分との間に共有結合形成を含むので、ウイルス粒子の表面タンパク質分子はウイルスの不活性化をもたらす同じ過程に関与すると予想されるであろう。それらの潜在的問題にもかかわらず、コラーゲンゲルのマトリックス内に懸濁されたウイルス粒子は、DNAトランスフェクションおよびタンパク質発現および送達の効率を改善することが示されている(Schek et al.,2004,Molecular Therapy 9:130−138;Gu et al.,2004,Molecular Therapy 9:699−711)。
【0189】
SQまたはID経路を用いて哺乳動物の身体内に生ウイルスを送達するために、コラーゲンゲルは、ステンレス針(30G1/2)内部で合成される。原料コラーゲンは、中性pHに達するために10X PBS緩衝液および1N 水酸化ナトリウムと混合された後に約4℃で液体のままの酸性溶液である。この溶液を注射器を用いて針に移し、そして装入された針を37℃で約30分間インキュベーションすると、コラーゲンは繊維状ゲルとなる。ゲルを調製しそしてそれを注射器に装入する2種の方法が研究された。一つは、ミクロ遠心分離管内でのゲルの調製を含み(バルクキャスティング)、そして他の方法では、中和されたコラーゲン溶液を針内に取り込み次いでインキュベーションすると、これによりゲルは針の内側にキャストされる(マイクロキャスティング)。針の先端をポリジメチルシロキサン(PDMS)の厚い板を用いて覆い、それはインキュベーション期間に針からの材料の漏洩を防止する。6mg/mlおよび10mg/mlコラーゲンのマイクロキャスティングにより調製されたヒドロゲルの電子顕微鏡写真をPhillips XL30低真空走査電子顕微鏡(ESEM)を用いて撮影し、その結果を図7aおよび7bにそれぞれ示す。走査電子顕微鏡(SEM)試料調製のために、ゲルを針を通して押し出しそして白金を用いて被覆した後に冷凍乾燥した。コラーゲン濃度を6mg/mlに維持した場合に、細孔の大きさは500nm〜2μmの程度であることが見いだされた。出発物質として10mg/mlのコラーゲンを使用した場合には、出発物質として6mg/mlのコラーゲンを使用した場合の充填密度と比較してフィブリルの充填密度に著しい増加があった(図7a)。10mg/mlのコラーゲンで形成されたゲルの細孔の大きさは約200nm未満ないしそれに等しかった。それらの結果は、ウイルス粒子の放出速度が出発コラーゲン材料の性質に依存して制御できることを証明する。
【0190】
低真空走査電子顕微鏡(ESEM)が、ナノスケールで流体力学過程を研究するために使用できることが示されている(Babu et al.,2005,Microfluidics and Nanofluidics 1:284−288;Rossi et al.,2004,Nano Letters 4:989−993)。水の存在下での生物物質を撮影する能力はナノスケールでの構造の検査を容易とし、一方試料をその自然の状態に維持しそして破壊的な試料調製時間を短縮する。従来のモードおよび湿潤モード(ESEM)において走査電子顕微鏡により検査されるゲルの形態の相違を解明するために、10mg/mlのコラーゲン初期溶液を用いてマイクロキャスティングによりゲルを調製した。両システム中で顕微鏡写真が得られた。顕微鏡写真の比較から、二つの方法で評価されたゲル形態が、試料調製および検査モードが異なるにもかかわらず同様であることを明らかにした(図7bおよび7c)。ポリマーブレンドに固有の融通性の例として、図7dにおいて、比率1:4(コラーゲン:PEG)でのコラーゲン(10mg/ml)およびポリエチレングリコール(分子量20,000、Alfa Aesarより)の冷凍乾燥ブレンドが示される。ヒロゲルの細孔の大きさは100〜500nmの間で変化し、それは単一成分コラーゲンゲルと比較すると増加を示す。
【0191】
それらの予備的な結果は、最初の密度を操作することによりそしてポリマーブレンド/コポリマー(すなわち本明細書中に記載のPEGブレンド)を用いることによってもコラーゲンゲル内の細孔の大きさを調節できることを示す。細孔の大きさは、ポリマーにウイルス放出の能力を与えそして防御免疫応答の誘発に重要なイベントであるその後の樹状細胞取り込みを容易とする重要な因子である。
【0192】
アルギネートポリマー
接種注射器の針の内部にイン・シトゥでの固化(set)をウイルス含有ゲルにさせるヒドロゲル内包システムを開発するために、アルギネートポリマーの使用を検討した。SQまたはID経路のいずれかによるゲルの直接注入は、エーロゾル化の最低のリスクを伴う哺乳動物への生ウイルスの投与を容易とし従って用量を投与する人員への最小の暴露とならなければならない。
【0193】
3種のアルギン酸ナトリウム粉末試料をFMC Biopolymerから入手した。種々の粘度のアルギネート溶液は、アルギネートの濃度および種類を変えて合成できる。架橋したアルギネートゲルの強さも、架橋イオンの濃度を変えて変更できる。アルギン酸ナトリウムの0.5%、1%、または1.5%(w/v)溶液を脱イオン水(DI)中で調製しそして溶液を0.45μm注射器フィルターを通す濾過により滅菌した。ゲル化は、オートクレーブ処理により滅菌されたメタリン酸ナトリウムを含む溶液を添加して開始された。アルギネート(5ml)を50mlコニカル・チューブに移しそしてCaSO4の8、4または2μg/ml(0.4g/mlのスラリーから)を加えた。チューブの内容物を激しく振とうしてアルギネートとCaSO4スラリーの完全な混合を確実にし、そして注射器を丁度満たす混合物の少量のアリコートを22G針を取り付けた5ml注射器内に引き上げ、そして針末端とプランジャーの間に1mlの空気空間を残した。垂直に取り付けた注射器ポンプ内に注射器を取り付けそして63ml/分の一定速度で注射器の内容物を押し出した。この手順は、すべての調剤に関して調和した圧力を保証する。ゲル化したアルギネートを射出するために要した時間およびゲルの目視外観を記録する。結果を図8Bに示す。
【0194】
アルギネート粘度は、分子量が低下すると低下する。従って、ゲルは射出が容易となる(例えば、8μg/mlCaSO4および1%ゲルで、射出の時間は高粘度=65秒>中粘度=62秒>低粘度=25秒である)。アルギネートとカルシウムの比率が低下すると、通常、ゲルが形成されない限界に達する(例えば、高粘度/0.5%カラムを通過降下:カルシウム濃度が2.0μg/mlまで低下するとゲルは形成されない)。ゲルが形成されない限界カルシウム濃度は、高粘度アルギネートで最低である。例外は、すべて3種のアルギネートに対するカルシウム濃度でゲルが形成される1%アルギネートであった。1%アルギネート濃度のすべての場合に、カルシウム濃度が低下するとさらに容易に注射器から射出された固いゲルが形成された。1%溶液の結果をグラフにプロットすると(図8A)、高および中粘度アルギネートが非常に類似した様式で挙動し、そして低粘度アルギネートは容易に針から排除されることが明らかである。
【0195】
アルギネートポリマーからのウイルスの放出
アルギネートポリマーからのウイルス放出の能力を評価するために、下記の実験を行った。本明細書中に記載のデータは、アルギネートゲルの機械的性質を変更するためのパラメーターを提供する。それらのデータに基づいて、量子ドット(QDot)がウイルスの内包のための便利なモデルであることが決定された。量子ドットは、CdSe/ZnSの内部コアとの接合を容易にするための機能基を有する外殻からなる直径10〜20nmのナノ結晶である。量子ドットの大きさおよび形状が本明細書中に記載の用途に理想的であ
るばかりでなく、量子ドットの蛍光強度はその検出および定量を容易にさせる。
【0196】
4μg/mlのCaSO4と量子ドットを含む1%アルギネートゲルとの混合物を用いて、試料を5ml注射器の22G針内に引き取り、そして本明細書中の別の箇所に記載のようにして固化させた。次いで、量子ドットを含むゲルペレットを、PTI蛍光測定器内に収容されたキュベット内に保持されたリン酸塩緩衝食塩水(PBS)4ml中に射出した。蛍光は射出の時点から測定された。図9aおよび9b中で、明確な二つの分離した蛍光プロフィールが示される。低粘度アルギネートは、それがPBS内に注入されると直ちにその内容物を放出する。蛍光強度は50秒、すなわち射出の時点で極大に上昇する。高粘度ゲルは、注入の50秒後に徐々にその内容物を放出し、400秒後に放出を完了する。
【0197】
ゲル内包ウイルスからの活性ウイルス放出のイン・ビトロアッセイ
アルギネートゲルからのウイルス粒子の放出を試験するためにイン・ビトロアッセイを開発した。MDCK細胞は、インフルエンザウイルスを含む種々のウイルスの増殖を支援する付着細胞系統である。予備研究において、MDCK細胞はアルギネートポリマー中に捕捉された生ウイルスと一緒に5日間培養され次いで感染を評価するためにチキン赤血球細胞懸濁液を用いる赤血球凝集アッセイで試験した。アルギネート単独を使用する負の対照では、ウイルスは検出されなかった(赤血球凝集が存在しない)。対照的に、アルギネートゲル中の50%および75%ウイルス、ならびに溶液中のウイルスの6HAUおよび3HAUが評価された正対照中で強い赤血球凝集が観察された。それらの研究は、インフルエンザウイルスの感染性がアルギネートゲル内で保存されそして生で感染性のものが37℃でゲルから放出されることを証明する。
【0198】
アルギネートゲル内に捕捉されたウイルス
アルギネートゲルは、一般的に安全とみなされるとして(GRAS)、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。本明細書中に提示するデータは、アルギネート内に捕捉された生インフルエンザウイルスが免疫原性でありそして哺乳動物内で細胞毒性CD8+T細胞およびウイルス中和抗体を誘発することを確証する(図10)。図10において、アルギネートゲル内で投与された生PR8ウイルスがマウス中でCD8+T細胞応答を強力に刺激することが認められる。多数の肺臓NP366特異性CD8+T細胞が、アルギネートゲル内の生ウイルスを用いて皮下接種され次いでX31インフルエンザウイルスを用いてその後再チャレンジされた動物内で誘発される。非操作(すなわち対照マウス)のマウスの群からまたはPR8ウイルス単独、アルギネート単独もしくはアルギネート内に内包されたPR8生ウイルスで皮下に接種されたマウスの群からの肺臓を、X31インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に分析した。マウスから得られた単細胞懸濁液を抗CD8抗体および免疫優性NP366−374ペプチドを認識するMHCクラスI/NP366−374四量体複合体を用いて染色した。染色した細胞をフローサイトメトリーで分析した。図10に示す値は、群あたりにマウス2匹から得られた平均を表す。
【0199】
さらに、マウスにおけるIgG抗体応答も高い力価で発現され、図11に示す通りである。またはアルギネートゲル内に内包された単独PR8ウイルスを用いて免疫化されたC57B1/6マウスの血清内に存在する抗PR8抗体は、捕捉抗原としてPR8ウイルスを用いるELISAにより検出された。1/270の初期血清希釈は、さらに3倍の順次希釈により希釈され、そしてプレート結合PR8ウイルスに加えられた。非感染動物はPR8ウイルスに対して抗体応答を示さなかった。
【0200】
最も防御的なワクチンは、ウイルスでのその後の感染を遮断する宿主内で中和抗体を生成して作用する。図12に示すデータは、アルギネートゲル内に捕捉された生インフルエ
ンザウイルスが、図10に示す細胞毒性CD8+T細胞応答に加えてマウスに中和抗体の高い力価を誘発することを確証する。図12中で、赤血球凝集阻害アッセイは、PR8、チキン赤血球および免疫化動物から得た血清の希釈を用いて行われた。赤血球凝集阻害を示した最高の血清希釈は、アルギネートゲル内の生ウイルスを用いて免疫化された動物で示された。非免疫化動物からの血清は赤血球凝集阻害を示さなかった。
【0201】
ナノチューブ
本明細書中の別の箇所で考察したように、好ましいワクチンはナノチューブ内に装入されたものである。種々の直径(50〜250nm)の炭素ナノチューブを合成することが可能である(Bradley et al.,2003,Chemistry Preprint Server,Miscell.:1−6,CPS:chemistry/0303002;Babu et al.,Microfluidics and Nanofluidics 1:284−288;Rossi et al.,2004,Nano Letters 4:989−993)。大きい直径を有するナノチューブ(250nm)の合成のための鋳型は、商業的に入手できる。大きい直径を有するナノチューブは、インフルエンザウイルスの大きさの粒子を保持および放出できる構造の生成を容易とする。本出願に好ましいナノチューブの種類は、マルチ壁ナノチューブ(MWNT)として知られるが、しかしこの種類の管は、金属触媒化学蒸着(CVD)法を用いて合成されるナノチューブに通常見られる適切な結晶構造を欠く。ナノチューブは、ミラーらにより確立されたテンプレート支援方法に従って合成された(Miller et al.,2001,J.Amer.Chem.Soc.123:12335−12342)。図13には、本明細書中に記載の方法を用いて合成された典型的な大径ナノチューブの断面が示されている。
【0202】
磁性(Korneva et al.,2005,Nano Letters,5:879−884)または蛍光性ナノ粒子(Kim et al.,2005,Nano Letters,5:873−878)を用いて炭素ナノチューブを装入する能力は、275±25nmの小さい管直径およびその結果としての毛管作用にもかかわらず、かなり簡単な方法論で最近証明された。それらの実験のためのナノチューブは、CVD法により合成された。管内の溶剤の蒸発速度は、ナノチューブの壁に沿う粒子の沈降をもたらす捕捉された粒子の置換によるよりも、はるかに大きいことが示されている(Kim et al.,2005,Nano Letters,5:873−878)。これは、自然により設計された安全手段である。従って、ナノチューブの内部に装入されたウイルスは、管の内腔から自由には拡散して出ないであろう。それらの研究のそれらの結果は、直径250nmのナノチューブが凝縮により種々の水溶液で装入できることを確証する(Babu et al.上記文献、Rossi et al.,上記文献)。好ましくは、本発明において、ナノチューブは、水よりも粘度が高い液体で装入される。しかし、液体はグリセロール程度の粘度でありそしてエチレングリコールは他の状況で装入に成功しているので、それはいかなる問題も生じないと予想される(Kim et al.,上記文献)。
【0203】
本明細書中に提出する実験は、体温でウイルスを放出するポリマー、例えばコラーゲンマトリックス、アルギネート、ゼラチンポリマー内でナノ内包生ウイルスの使用を適用可能とすると考えるべきである。それらの方法は、空気感染性ウイルスをワクチンとしての用途にさらに安全性を与え、一方ワクチン接種された個体内に防御的免疫応答を誘導するために必要な非常に低い用量の利益を有する。
【0204】
整列された炭素ナノチューブの合成
要約すると、石英反応容器内に配置されたアルミナ膜(Whatman Anodisc 直径13mm、および細孔の大きさ250nm)は、炭素ナノチューブが成長するための鋳型として振る舞う。少なくとも1000℃に達することができる管状炉が、アルミ
ニウム膜上で20sccmの速度で流れるエチレンとアルゴンガスの混合物を分解するために使用される。670℃におけるエチレンガスの分解が、アルミナ膜の内壁の周囲に炭素の沈着をもたらし、従って沈着した炭素層の厚さは、加工時間に依存する。意図する目的には6時間の反応時間が適当である。膜の側面上の炭素の層は、温和な超音波処理(47kHz、浴式超音波処理機)を用いて除去される。炭素ナノチューブを含む膜は、鋳型の完全な除去のために1M NaOH中に少なくとも12時間完全に浸漬される。ナノチューブは、鋳型除去の後に、1μmの細孔の大きさを有するポリカーボネート膜フィルター(SPI Supplies)を通して濾過して懸濁液から除去される。本プロセスの図表示を図14に示す。
【0205】
ナノチューブ装入
液体およびゲルをナノチューブ内に効率的に装入することを可能とする装入方法を開発した。本明細書中に示すデータは、ウイルスを含むアルギネートゲルのナノチューブ内への装入が可能であることを確証する。ほぼウイルス粒子の大きさである量子ドット(直径約50〜100nm)を含むアルギネートゲルをナノチューブ内に装入した。図15および16から分かるように、量子ドットはナノチューブ内部に装入される。ナノチューブは透明でありそして量子ドット蛍光が管壁を通して伝達されることに注意するべきである。対照として、アルギネートおよび量子ドットの溶液と混合されそして装入操作を受けなかったナノチューブを示した(図17)後者の状況においては、量子ドットは管の内部ではなく外部で背景として蛍光を発する。それらの実験の詳細は以下である。
【0206】
図15は、アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットを充填した炭素ナノチューブの共焦点画像を示す。ナノチューブは50nm量子ドットを含むアルギネートゲルと混合され次いで装入プロセスを受けた。管内部の蛍光の存在は、量子ドットを含むゲルでの管の装入を示す。矢印は個々の管を指している。
【0207】
図16は、アルギン酸ナトリウムおよび量子ドット(QDdot)を含む炭素ナノチューブの一連の走査電子顕微鏡写真を示す。ゲルおよび量子ドットが管の内部に明瞭に見える(図16aおよび16b)。両方の写真のスケール・バーは、2μmである。
【0208】
図17は、量子ドットを含むアルギネートゲルと単に混合されたナノチューブが装入されていないことを示す。アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットの存在下での共焦点画像を示す。ナノチューブは、50nm量子ドットは含むアルギン酸ゲルを混合されたがしかし装入プロセスは受けていない。量子ドットからの蛍光は背景として見られそして黒く見えるナノチューブ内部には見えない。矢印は個々の管を指している。
【0209】
超音波処理はナノチューブを500nm未満の長さに破断する
生体作用活性薬剤放出戦略の一つの重要な要素は、生体作用活性薬剤の制御された放出が投与された動物内で起きるように超音波を用いてナノチューブを破壊する能力にある。生体作用活性薬剤を放出するために、ナノチューブは、管内の毛管力が周囲組織内へのゲルおよび生ウイルス双方の放出を促進する大きさに破断されなければならない。図18には、1.36MHzで30秒間超音波処理された長さ10〜12μmのナノチューブが約1μm未満の大きさを有する非常に短い管に破断されていることを示す。熟練者は、本明細書中に提示した実験に基づいて、ナノチューブの内容物の周囲組織中への放出を調節する実験条件をどのようにして最適化するかを知っているであろう。図18で、1.36MHzで30秒間の超音波処理前の炭素ナノチューブ(図18a、x1000倍率)および超音波処理後のナノチューブ(図18b、x10,000倍率)の電子顕微鏡写真を示す。超音波処理前には、ナノチューブは長さ10〜20μmであった(図18a)。超音波処理後ではナノチューブは長さ1μm未満であった(図18b)。
【0210】
アルギネート・ヒドロゲル
本明細書中に記載のイン・シトゥ・ゲル化の方法は最適化できそしてCa2+以外の多価陽イオン、例えば不溶性塩、例えば炭酸、リン酸もしくは硫酸バリウム、およびリン酸もしくは水酸化アルミニウムが硫酸カルシウムを代替して使用してゲル性質への影響を研究するために拡張できる。種々の分子量および組成(ポリマー骨格内のグルロン酸:マンヌロン酸比率)のアルギネート。注入の容易さヘの影響、および量子ドットの放出プロフィール(ウイルス粒子に対して容易に定量できるモデル)は、イン・ビトロ赤血球凝集アッセイおよび結局はマウス内のイン・ビトロ研究の両者を用いるウイルス送達の効率の研究の端緒となる(上記参照)。平行する研究は、HAまたはアルギネートおよびキトサンの他の混合物、または当該技術分野の熟練者には公知の他の組成物を用いて行うことができる。
【0211】
コラーゲンゲル
コラーゲンゲル合成の予備的データに基づいて、イン・ビボで投与された場合に特定の速度でウイルスを内包、貯蔵よび放出するためのそれらの能力に関してヒドロゲルを合成および特性研究できる。コラーゲン出発物質の順次増加する密度を有するゲル(4、6、8および10mg/ml)は、本明細書中の別の箇所に開示される手順に従って合成でき、そしてバルクキャスティングおよびミクロキャスティングの双方によりキャストできる。ゲルは、臨界点乾燥の標準プロトコール(Phillips XL30)に従って乾燥されそして細孔大きさの変化について走査電子顕微鏡(SEM)で検査される。コラーゲンゲルは、蛍光量子ドット粒子(QDot)の計算された量の存在下でも合成される。それらの量子ドットは、Quantum Dot CorporationまたはEvident Technologiesから購入できる。ゲルを分離しそして使用前にPBS緩衝液を用いて数回洗浄する。ゲルからの量子ドットの拡散速度は、ゲルを37℃に維持している間に、量子ドットの射出スペクトルに従って推定できる。温度制御可能なキュベットホルダーを有するUV−可視光分光分析計が種々の時点での射出スペクトルを集めるために使用される。SEMから得た拡散速度データおよび多孔度情報を比較しそして捕捉されたウイルス粒子の所要の放出速度に適合する最適コラーゲン濃度を決定するために使用される。最適コラーゲン濃度に到達した後に、ポリエチレングリコール(PEG、分子量10000、8000、6000および1,000)を合成プロセスの間に添加剤として加える。コラーゲン/PEG組成物を、本明細書中に記載と同じ方法を用いて量子ドットの存在下で合成する。PEGの濃度は、コラーゲンのPEGに対する比率を以下の順序、1:0.5、1:1、1:2および1:4に変化させて変化できる。拡散の初期の速度を保持するがしかし均質度を上昇しそして相分離を最小化する比率が、イン・ビボ試験のための配合として選択できる。PEG添加の後のヒドロゲル中の形態変化は、SEMにより監視できる。
【0212】
ゼラチンヒドロゲル
ウイルスを内包するために使用するゼラチンに関して本明細書中に提出するデータに基づいて、イン・ビボで投与される場合にウイルスを内包、貯蔵および放出できるヒドロゲルが合成および特性決定できる。冷凍乾燥およびγ線照射されたゼラチンが、本明細書中の別の箇所に開示のようにしてヒドロゲルを調製するために使用される。水中のゼラチンの濃度は、最適放出速度を達成するために変化される(1〜3%w/v)。貯蔵の間のヒドロゲルからの水の損失は、ゼラチンヒドロゲルの収縮をもたらす。これは、ゲル形成の間にPEG(ゼラチンの1〜10%w/w)オリゴマー(分子量400〜1000)の計算された量を加えて低下できる。ゲル強度および物理的寸法の測定は、収縮速度を決定するために使用される。振動レオメーター試験機(Bohlin Controlled
Stress Rheometer)を用いるゲルの粘度および架橋密度の定期的測定は、ゲルの粘弾性における変化を明らかにするであろう。二枚の円板の間にゲルを配置して、この計器中の底部の円板が振動すると、ゲルを通して周波数が伝達されそしてトルクが上部の円板により測定される。コラーゲンおよびQD(量子ドット)のために本明細書中に記載された同様の手順は、ウイルスの大きさの粒子の放出速度を決定するためにゼラチンおよびQDと一緒に使用できる。
【0213】
安全性評価の方法
エーロゾル化の可能性を排除するために、エーロゾル創成を測定する必要がある。この目的で、50nmの量子ドットを添加したポリマーゲルをペトリ皿上に噴出させる。音波フローポンプと一緒に作動するように設計されそしてバイオエーロゾルを特に効率的に捕集するSKS Biosamplerを用いて、空気試料を採取する。Biosamplerはガラス製でありそして臨界オリフィスとして作用する3個のタンジェンシャルノズルを装備し、それぞれは周辺空気4.2リットルを通過させそれは12.5l/分の全流量となる。バイオエーロゾルは、PBS、水または培地の渦流流体トラップ内に捕捉される。Biosamplerは、高容量音速フローポンプを使用して以後の分析のために空気中に浮動している生存微生物を補足する。エーロゾルの試料採取は、ポリマーゲルが渦流されている表面上の直前の10cmおよび100cmで行われそして最高の可能放出量を表す。空気試料は、粒子を捕集するために20ml PBS(量子ドットに対して)または培地(ウイルスに対して)を通す。溶液を10倍に濃縮してアッセイする。量子ドット実験のために、蛍光が蛍光計を用いて測定される。ウイルスを用いる研究のために、捕集された試料がMDCK細胞内で5日間、2ml(10倍濃縮)試料の培養の後にチキンRBCアッセイ内で赤血球凝集を示さない場合にポリマーは安全と考えられる。ウイルスを添加されたポリマーの免疫原性および安全性は、非内包ウイルスに対して本明細書中で記載されたようにしてアッセイされる。同様のまたは当該技術分野の熟練者には容易に同定できる手順はいずれの生体作用活性薬剤に対しても使用できる。量子ドットの使用は、ウイルス粒子の大きさの光学的バイオセンサーの簡単な例である。エーロゾル形成を評価するためにウイルス粒子の大きさのいずれの光学、磁気、電気的標識を使用してもよい。
【0214】
ナノチューブ
ゲルに捕捉された生体作用活性薬剤のための可能性がある送達ビヒクルとしてナノチューブを研究するために、下記の実験を行うことができる。ポリマーゲルを装入されたナノチューブのナノ流体的装入および放出特性およびナノチューブからのポリマーの制御された放出のための条件は、下記のようにして評価できる。安全性および免疫原性は、本明細書中の他の箇所に記載のようにして評価される。生体作用活性薬剤を含むポリマーゲルを装入されたナノチューブは、一般的に使用されている送達の慣用の注射器および針使用法からの薬剤送達の別の戦略である。
【0215】
1分間、適当な液体中でポリカーボネート200nm膜上でナノチューブを浸漬し、次いで温和な真空を適用すると、液体およびポリマーがナノチューブ内に装入される。この手順を5回繰り返す。50nmの大きさの銀ナノチューブが使用される場合には、このプロセスはコロイド状粒子の30〜40%の装入効率となる。
【0216】
ナノチューブのナノ流体装入を研究するために、ゲル中に種々の濃度で内包された50nm量子ドットをゲルの装入効率を定量するために使用する。十分に洗浄した後のナノチューブの蛍光強度が量子ドット濃度を測定するために使用される。装入されたナノチューブの数は、共焦点顕微鏡写真により定量される。ナノチューブ壁はUV光に透明であり、従って管内の蛍光は目視できる。ポリマーゲルを装入するために、重合の前にゲルをナノチューブと混合しそして真空を数サイクル適用する。次いで、使用するポリマーに応じて、架橋剤、または架橋を触媒作用する温度にナノチューブを暴露する。
【0217】
ゲル装入されたナノチューブの放出特性は、超音波処理(20kHz〜1.3MHz)を用いるかまたは用いないで研究した。50nm量子ドットを含むゲルが、放出量子ドッ
トを測定するために蛍光光度計を用いて評価された。しかし、共焦点顕微鏡写真は、量子ドットを装入されたか、または超音波処理の後にそれらを放出したナノチューブの数の定量を可能にした。
【0218】
量子ドットを含むポリマーをナノチューブ内に装入する最適条件の決定に続いて、生ウイルスを含むポリマーを装入されたナノチューブが、本明細書中の別の箇所に記載されそしてここには繰り返さない方法によりイン・ビトロおよびイン・ビボで試験された。
【0219】
ナノチューブに基づく送達システムは、従来法と比較するといくつかの利点を有する。ウイルス粒子は管の内側に捕捉されるので、予想されない洩れが起き得ず従って近くの人員の安全性が高くなる。管内の溶剤の蒸発速度は捕捉粒子の移動よりもはるかに高く、ナノチューブの壁に沿った量子の沈降をもたらし、自然により設計された安全手段を創成する。
【0220】
本明細書中に引用されたそれぞれおよびあらゆる特許、特許出願、および出版物の開示は、その全体を引用することにより本明細書に編入される。
【0221】
本発明は特定の態様と関連させて説明されたが、本発明の他の態様及び変種も、本発明の真の精神および範囲から外れることなく、当該技術分野の熟練者によって案出されることは明らかである。添付の請求範囲は、すべてのかかる態様および等価の変種を含むと解釈されると考える。
【0222】
本発明の上記の要約ならびに詳細な説明は、添付する図面と関連させるとさらに良く理解されるであろう。本発明を説明する目的で、現在好まれている態様を図面で示す。しかし、本発明は記載された正確な配置および計器装備に限定はされないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】図1は、C57B1/6Jマウス内の二次ウイルス特異性CD8+T細胞応答に対するインフルエンザウイルスの4種の異なる投与経路の効果を描いたグラフである。マウスは、腹腔内(IP)、筋肉内(IM)、皮内(ID)または皮下(SubQ)注入経路によりPR8インフルエンザの100赤血球凝集単位(HAU)を用いて初回抗原刺激された。X31A型インフルエンザウイルスを用いる再チャレンジの7日後に組織を採取しそして免疫優性A型インフルエンザウイルス核タンパク質NP366−374(ASNENMETM(配列番号1))を添加されたMHC−クラス1四量体を用いて肺臓組織の調製物内で、ウイルス特異性CD8+T細胞の存在を評価した。
【図2】図2は、図2Aおよび図2Bを含んでなり、マウス内の用量応答研究の結果を提出する。本研究において、二次ウイルス特異性CD8+T細胞応答が、IPまたはID注入経路のいずれかにより投与されたPR8インフルエンザウイルスの種々の用量を用いて初回抗原刺激されたC57B1/6Jマウス内で評価された。組織は、A型インフルエンザウイルスの鼻内再チャレンジの7日後に採取された。ウイルス特異性CD8+T細胞は、免疫優性A型インフルエンザウイルス核タンパク質NP366−374(ASNENMETM(配列番号1))またはIFNγ細胞内株を添加されたMHC−クラス1四量体を用いて肺臓組織の肺調製物内で検出された。図2Aは、ウイルス特異性CD8+T細胞の代表的なFACSプロットを描いている。図2Bは、ウイルス特異性CD8+T細胞およびIFNγ産生CD8+T細胞の用量応答曲線を描いている。点は、群あたりに三匹の動物に対する平均±標準偏差(*p<0.05)である。
【図3】図3は、図3Aおよび図3Bを含んでなり、IP、SQまたはIDで送達された生インフルエンザウイルスの1HAUに対するウイルス特異性CD8+T細胞応答を描いた一連のグラフである。異なる感染経路:IM、SQまたはIDによりPR8インフルエンザウイルスの1HAUを用いて初期抗原刺激されたC57B1/6Jマウス内での二次ウイルス特異性CD8+T細胞応答。肺臓は、X31インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に採取されそしてウイルス核タンパク質:NP366−374(ASNENMETM(配列番号1))から誘導された免疫優性ペプチドエピトープを添加されたMHC−クラス1四量体複合体を用いてウイルス特異性CD8+T細胞が検出された。全CD8+T細胞内のNP366特異性CD8+T細胞の百分率(A)およびNP366特異性CD8+T細胞の全数(B)をそれぞれ3種の免疫化条件で算出した。水平線は平均値を示す。
【図4】図4は、SQで投与された生インフルエンザワクチンの安全性を描いたグラフである。野生型C57B1/6J(白、菱形)または免疫欠損Rag−/−γc−/−マウス(白、円形)を生PR8インフルエンザウイルスの100HAUを用いてSQ免疫化した。対照として、C57B1/6Jマウスの群(黒、菱形)を、PR8インフルエンザウイルスの1HAUを用いてIN感染させた。マウスの体重は引き続く17日間記録しそして体重減少百分率を感染後の日数に対してプロットした。
【図5】図5は、皮下投与されたA型インフルエンザウイルスが安全でありそして疾患を起こさないことを描いたグラフである。野生型C57BL6マウスをPR8(黒、四角形)またはロンドン株(黒、三角形)の低用量(0.1HAU)により鼻内にインフルエンザウイルスを投与した。免疫欠損Rag−/−γc−/−マウスは、PR8(白、菱形)またはロンドンウイルス(黒、円形)の高用量(1−HAU)を用いて皮下に注入された。マウスの体重を接種後30日間測定した。接種の後の平均体重減少を示す。瀕死のマウスは30%体重減少で安楽死させた(+)。すべての群でn=5である。
【図6】図6は、図6A、図6Bおよび図6Cを含んでなり、SQ投与されたゼラチンゲル内の生ウイルスがマウス内でCD8+T細胞を効率的に刺激することを描いた一連のフローサイトメトリー写真である。非操作マウスマウスからまたはゼラチンのみ、ゼラチンおよびウイルス(10HAU)もしくはウイルス単独(10HAU)を用いて30日間免疫化されたマウスからの肺臓(図6A)および脾臓(図6B)を、X31インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に分析した。単独細胞懸濁液は、抗CD8抗体およびMHCクラスI/NP366−374四量体複合体を用いて染色しそしてフローサイトメトリーで分析した。全リンパ球内のCD8+T細胞の百分率は、ゲートの外側に示され、一方全CD8+T細胞内のNP366特異性CD8+T細胞の百分率は、ボックス内に示される。(図6C)指定されたマウス内の脾臓細胞をNP366−374ペプチドを用いて6時間イン・ビトロ刺激した。CD8+T細胞によるIFNγ産生は、抗IFNγ抗体を用いる細胞内染色およびフローサイトメトリー分析により評価した(IFNγ+CD8+T細胞の百分率を四分の一象限内に示した)。
【図7】図7は、図7a、図7b,および図7cおよび図7dを含んでなり、種々のポリマー濃度および架橋剤含有量により産生された異なる細孔の大きさを有するコラーゲンポリマーを描いた一連の電子顕微鏡写真である。コラーゲン6mg/ml(図7a)、コラーゲン10mg/ml(図7a)、コラーゲン10mg/mlを含むコラーゲンゲル(湿式モードESEM)(図7c)、および比1:4の冷凍乾燥コラーゲン:PEGヒドロゲル(図7d)を含む針内部に調製された冷凍乾燥コラーゲンゲルのSEM顕微鏡写真。
【図8】図8は、図8Aおよび図8Bを含んでなり、射出時間に対するポリマー性質およびCa2+濃度(すなわちビヒクル性質)の影響を描いたグラフ(図8A)および表(図8B)である。
【図9】図9は、図9aおよび図9bを含んでなり、ポリマーの性質がナノ粒子放出速度を制御することを描いた一連のグラフである。量子ドット(20nmの大きさ)が、低粘度(図9a)および高粘度(図9b)のアルギネートポリマーから放出された。低粘度ポリマーは迅速に量子ドットを放出するが、一方高粘度リマーはかなり遅い速度で量子ドットを放出する。
【図10】図10は、アルギネートゲル内に送達された生PR8ウイルスがマウス中にCD8+T細胞応答を強力に刺激することを描いたグラフである。多数の肺臓NP366特異性CD8+T細胞が、生ウイルスを皮下接種されそして有毒ウイルスを用いてチャレンジされた動物内に誘発された。非操作マウスからまたはPR8生ウイルスのみ、アルギネートのみ、もしくはアルギネート内に内包されたPR8生ウイルスを用いて皮下に接種されたマウスからの肺臓は、X31ウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に分析された。単細胞懸濁液を抗CD8抗体およびMHCクラスI/NP366−374ペプチドを用いて染色しそしてフローサイトメトリーで分析した。図示した値は、群あたりに2匹おマウスから得た平均値を表す。
【図11】図11は、アルギネートゲル内に送達された生RP8ウイルスがインフルエンザウイルス特異性抗体の産生を有効に刺激することを描いたグラフである。PR8ウイルスのみまたはアルギネートゲル内に内包されたものを用いて免疫化されたC57B1/6マウスの血清内に存在する抗PR8抗体は、捕捉抗原としてPR8ウイルスを用いるELISAにより検出された。最初1/270に希釈された血清をさらに3倍づつ順次希釈しそしてプレート結合PR8ウイルスに加えた。非感染動物はPR8ウイルスに対して抗体応答を示さなかった。
【図12】図12は、アルギネートゲル内に内包された生ウイルスを用いるマウスのワクチン接種が、動物の血清内に中和抗体を誘発することを描いたグラフである。アルギネート内に内包された生ウイルスを用いて感染されたマウスからの血液を系統的に希釈し(1/2の系統的希釈)、そしてPR8ウイルスの2HAUによるチキン赤血球凝集を阻害する能力について試験した。ウイルスを用いて接種されなかった動物からの血清は、赤血球凝集を示さなかった。
【図13】図13は、670℃におけるエチレンの鋳型支援熱分解により合成された炭素ナノチューブの走査型電子顕微鏡写真である。管の直径は、鋳型の細孔直径により決定され、それはこの場合には250nmであった。ナノチューブ壁の厚さは約20nmである。
【図14】図14は、化学蒸着法による炭素ナノチューブ合成の略図である。
【図15】図15は、図15aおよび図15bを含んでなり、ナノチューブが量子ドットを含むアルギネートゲルを装入できることを描いた一連の共焦点顕微鏡写真である。アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットを充填された炭素ナノチューブの共焦点写真を示す。ナノチューブは50nm量子ドットを含むアルギネートゲルと混合され次いで装入プロセスを受けた。ナノチューブ内側の蛍光の存在は、装入の証拠である。矢印は個々の管を指す。
【図16】図16は、図16aおよび図16bを含んでなり、ナノチューブ内に装入されたアルギネートゲル内の量子ドットの一連の写真である。アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットを含む炭素ナノチューブのSEM写真を示す。ゲルおよび量子ドットは、管の内側に明瞭に見える。両方の図内のスケールバーは、2μmである。
【図17】図17は、図17aおよび図17bを含んでなり、量子ドットと混合されたがしかし装入はされていないナノチューブの一連の共焦点写真である。ナノチューブを50nm量子ドットを含むアルギネートゲルと混合したが、しかし装入プロセスは受けなかった。量子ドットの蛍光は背景中には明瞭であるが、管内ではない。矢印は個別の管を示す。
【図18】図18は、図18aおよび図18bを含んでなり、ナノチューブが超音波処理により破断できることを描いた一連のSEMである。図18a−超音波処理前、図18b−13.6MHz、30分間の超音波処理後(倍率10,000)。超音波処理前には、管は長さ10〜20μmであった。超音波処理後には、管は1μm未満の長さであった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、インフルエンザウイルスワクチンに例示されるがしかしそれらに限定はされない新規のウイルスワクチンに関する。本発明は、さらに、エーロゾルまたは遊離形態で脊椎動物に送達された場合に、脊椎動物に対して好ましくない作用を有するであろう生体作用活性(bioactive)薬剤の動物、好ましくは脊椎動物への安全な送達のための新規の組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
A型インフルエンザウイルスは通常のインフルエンザを起こしそして米国内での致死率の最大の原因となるウイルスである(非特許文献1)。それは免疫無防備状態の個体が、健全な人々と比較してより重くて致死に至るインフルエンザの事例になりやすいという事実に大きく依存する。インフルエンザウイルスはオルトミクソウイルス科に属するRNAウイルスである。ウイルスゲノムは、下記のタンパク質をコードする8種の一本鎖RNAセグメントを含んでなる:赤血球凝集素(HA)およびノイラミニダーゼ(NA)と呼ばれる2種の表面糖タンパク質、M2イオンチャンネルタンパク質、M1マトリックスタンパク質、ウイルスRNAと会合する核タンパク質、および3種のRNAポリメラーゼ(PA、PB1およびPB2)(非特許文献2)。RNAゲノムのエラーを起こし易い性質のために、インフルエンザウイルスは2種の主要な表面タンパク質;HAおよびNA内に変異を蓄積する。A型インフルエンザウイルス群内でHAまたはNA内に存在する抗原性差異に基づいて、16種の異なるHAおよび9種の異なるNAサブタイプが同定されている。遺伝子多様性の第二のレベルは、感染された宿主内で再構築を受けるRNAフラグメントの能力によるものであり、従ってヒトおよび動物起源のRNAセグメントを含むウイルスを創成する(非特許文献3)。
【0003】
インフルエンザウイルスの抗原可変性の結果として、ウイルスエンベロープタンパク質、赤血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N)の組成は常に変化する。この可変性は、動物種内、または種間のいずれかでの伝染の高い効率をしばしば持つウイルスの出現株をもたらすことが多い。さらに重要なことには、ウイルスの新しい株の生成は、感染の恐れがあるヒト集団内では新しい株に対して向かう免疫性が低いかまたは存在しないので、汎流行に導く(非特許文献4)。この理由により、1918−1919年の「スペイン風邪」はこれまで最も致死率が高い汎流行となり、全世界で1億人が死亡したと推定される。
【0004】
最近、種間でのインフルエンザの伝染に関する関心が高くなっている。ヒト集団内で流行する事が見いだされたインフルエンザウイルス株は、主としてHAサブタイプ1、2または3およびNAサブタイプ1または2を発現する。1918年のインフルエンザウイルス汎流行(スペイン風邪)は、H1N1ウイルスにより起きた。この荒廃的な流行感染は、その世紀内で他のもの、例えば、1957年のアジアインフルエンザ(H2N2)および1968年の香港風邪(H3N2)に引き継がれた。H1N1およびH3N2ウイルスの遺伝子変種は、人への感染を続けそして毎年流行を起こしている。A型インフルエンザウイルスのHAおよびNAの他のサブタイプは、水鳥内に維持されている。従って、再構築の過程を通じて、新しいHAサブタイプが鳥類貯蔵庫からヒト集団内に導入される可能性があり、その結果、汎流行的感染を起こす。ヒト内での鳥類インフルエンザウイルスの非効率的な複製は、汎流行的感染の発生に対する主要な障害と考えられている。
【0005】
従来は、ヒトおよび鳥類インフルエンザウイルスはブタ内でのみ再構築されると考えられてきたが、それはブタのみが両方のウイルスにより感染され得る唯一の種であったから
である。しかし、1997年に、鳥類からヒトへの直接感染の最初の事例が確認された。このウイルスは、18人に感染してその中から6人が死亡した(非特許文献4、5)。1997年以後、鳥類インフルエンザの3株からヒト集団への6回の発生があり、そしてH5N1株が最も一般的で死亡の危険がある株として現れた(非特許文献5)。この種交差伝染は、それに対していずれの現在利用できるワクチンでもヒトが防御されない汎流行インフルエンザ株が現れるというリスクをもたらす。
【0006】
新しいインフルエンザウイルス汎流行の可能性に関する関心の増大を考慮して、2種以上のウイルス株に対してヒトを防御できるインフルエンザウイルスワクチンを発見するために大きい努力がなされている。それらの努力は、ウイルスの複製を防止してインフルエンザウイルス感染を処置する効果を有する治療的分子の発見にも向けられている(非特許文献6、7)。この研究は、DNAに基づくワクチン、インフルエンザウイルス株に対してヒトを防御するように作用するRNA干渉分子の開発、およびインフルエンザウイルス株に対して有効な新規の抗ウイルス薬剤の開発を目標としている(非特許文献7、8、9、10)。
【0007】
現在、米国内でヒトに使用するために市場で入手できる2種類のインフルエンザワクチンがある。一つは、筋肉内注入として投与される死ウイルスワクチンであり、その他は鼻噴霧薬として投与される弱毒化ワクチンである。それらのワクチンの両方共に同じウイルスによるその後の感染を中和する抗インフルエンザ抗体を誘発する。しかし、変種抗原エピトープを発現するウイルスの出現株は、現在の抗体により認識されないであろう。従って、毎年異なるワクチンが製造されて投与されなければならない。
【0008】
ウイルスライフサイクルの異なる段階を妨害して作用する抗ウイルス薬剤も利用できる。ウイルスは受容体媒介エンドサイトーシスにより宿主細胞内に入る。エンドソーム内で、低いpHがウイルスとエンドソーム膜の融合の引き金を引きそしてM2イオンチャンネルがH+イオンの流入を許容しそれは細胞質内へのウイルス遺伝子の放出に導く。2種の抗ウイルス薬アマンタジン(amantadine)およびリマンチジン(rimantidine)は双方共にM2イオンチャンネルを遮断し、それによりウイルスの脱外被および細胞質内へのRNA放出を阻止する。第二の種類の抗ウイルス薬剤は、NAに対して作用しそして細胞からの新規の感染粒子のウイルスパッケージングおよび発芽を妨害する。NAは細胞表面上の受容体を含むシアル酸を除去することにより新規に発生したウイルス粒子が他のウイルス粒子と凝集しないかまたは感染された細胞の表面に付着して残留するように作用する。従って、NA阻害剤、例えばオセルタミビル(oseltamivir)およびザナミビル(zanamivir)は、感染された細胞の膜にビリオンを付着したままとさせそして他の細胞への付着、従って感染を防止する。それらの薬剤は、M2に対する天然の耐性株およびNA遮断剤の存在にもかかわらず、汎流行感染の場合にウイルス拡散を封じ込める方法を提供するであろう(非特許文献11、12)。
【0009】
次の汎流行は、これまでヒトに感染していないHAサブタイプを有するウイルスにより起きるであろうことに留意して、ワクチン開発の新しい技術が試験されている。例えば、逆遺伝学が、プラスミド内に候補株のHAおよびNA遺伝子をクローンするために使用されている。次いでマスタードナー株の他の6種の遺伝子と一緒にそれらのプラスミドを用いて細胞がトランスフェクションされる。従って、逆遺伝学により産生されたビリオンは、関係する抗原性分子HAおよびNAの発現をドナー株の特性(高い収率、寒冷適応、弱毒化株)と複合している。逆遺伝学は候補ワクチンを得るために必要な時日をかなり短くする(非特許文献13)。しかし、汎流行が起きた場合に、原因ウイルスは米国に一ヵ月以内に到着するであろう(非特許文献4)。従って、この戦略を用いて有効なワクチンを開発するために必要な時日は十分ではないであろう。逆遺伝学に関連する他の欠点は、8種またはそれ以上のプラスミドを1個の細胞内に同時にトランスフェクションすることおよびワクチン製造に承認されている限られた数の細胞系統に関連する困難である。
【0010】
他の抗ウイルス方法は、インフルエンザウイルス遺伝子の保存された領域に対して向けられる短鎖干渉RNA(siRNA)の使用である。siRNAは長さが21〜26ヌクレオチドでありそして同族mRNAの配列特異性分解を誘導できるRNA二重鎖である。核タンパク質または酸性ポリメラーゼに特異性のsiRNAの静脈内送達は、マウスに感染するとして知られるインフルエンザウイルス株または病原性が高い鳥類株を用いる、例えばH5およびH7サブタイプを用いる致死的チャレンジからマウスを防御することが示された(非特許文献9)。siRNAはインフルエンザウイルスライフサイクルを妨害するけれども、主要な困難はこの技術をヒトに適合させる際に起きる。siRNA配列がどのヒト遺伝子配列とも相補性ではなくそしてウイルス遺伝子の活性を遮断するためにsiRNAがすべての感染された細胞内で十分なレベルで発現されなければならないことは重要である。全体的に、新しい抗ウイルス技術は、新しいインフルエンザウイルスワクチンまたは治療法の開発のために長期的には成功見込みを有するであろう。しかし、非常に短期間でワクチンの数百万の用量の生産という緊急の要求は、それらの技術を用いては解決されない。
【0011】
1997年に始まって、ヒト集団内の高度病原性鳥類ウイルスH5N1の3回のその後の急激な発生:香港2003、ベトナム2004およびタイ2004があった(非特許文献5)。このインフルエンザウイルスサブタイプに向けたワクチンが生産されそして効力および安全性を試験されている。そのワクチンはH5N1に対してヒトを防御できることが報告されている;しかし防御を誘導するために必要な用量(精製された死ウイルスまたは抗原の90μg)は、通常の季節的インフルエンザウイルスワクチンの場合に使用される量の2倍である。さらに、H5N1ワクチンは、4週間の間隔で2回ヒトに投与されなければならない(非特許文献14)。抗H5N1ワクチンの効力を増大しそして抗原の低い用量で対処できるために、異なる戦略、例えばアジュバントの使用またはウイルスの送達の経路の変更が提案されている(非特許文献15)。
【0012】
上記のように、インフルエンザウイルス株に対して向けられた現在利用できるワクチンは、筋肉内注入として投与される不活性(死)ワクチンおよび鼻噴霧として投与される弱毒化生ワクチンを含む。それらのワクチンの両方共に抗ウイルス、すなわちウイルス中和抗体産生をもたらす(非特許文献6)。変種抗原性エピトープを発現するウイルスの出現株は、現存の抗体によっては認識されない。従って、これが選択されたワクチン戦略である場合には、毎年ヒトに対して新規のワクチンが開発および投与されなければならない(非特許文献6、非特許文献7)。インフルエンザウイルスの汎流行株が同定されると、新しい株に対して有効な不活性化ワクチンを開発するために少なくとも六ヵ月が必要と予測されている(非特許文献5、非特許文献7)。インフルエンザウイルスの汎流行性株に対してヒトを防御するワクチンを開発するために、ワクチンは、ウイルスに対する抗体応答を誘発できるのみならず、最適には、ワクチンは数種の汎流行株に対する広いスペクトルの特異性を示すCD8+T細胞応答を誘導しなれければならない。かかるワクチンはウイルスのいずれか一種の汎流行株による実際の感染を防御できないので、それは疾患の重症度を軽減しそれにより感染後の罹患率および致死率を低下させなければならない。
【0013】
いずれかの生体作用活性物質またはワクチンの開発および使用の成功のために重要な問題は、それが動物およびヒトへの使用に安全であるかどうかである。安全性の評価は、二つのレベルで行われなければならない。一方では、生体作用活性物質またはワクチンは、それが投与される動物に対して毒性であってはならない。他方では、生体作用活性物質またはワクチンを取り扱う人員、例えば物質またはワクチンを投与する人員、物質またはワクチンのレシピエント、および投与の間に居るであろうその他の人員は、生体作用活性物質またはその中に含まれるウイルスにより起こされるどのような不利な作用に対してもリ
スクがあってはならない。後者の状況は、生体作用活性物質がトキシンであるかまたはワクチンが生ウイルスを含んでなる場合に特に重要である。本明細書中で提供される開示から明白なように、この問題は、エーロゾル化によるウイルスの拡散を防止する媒体内に生体作用活性物質またはウイルスを内包することにより解決できる。これを考慮して、種々の組成物の従来技術開示をここに本明細書中で再検討する。
【0014】
生体適合性ゲルは、薬剤送達、サイトカイン送達(非特許文献16)、遺伝子治療(非特許文献17)、および組織操作(非特許文献18)のために広範に研究および使用されている。多数の生体適合性ポリマーがイン・ビボで使用されている。ワクチン内包のための最近の研究の大部分は、一段免疫化のための世界保健機構(WHO)による呼びかけに対応する間欠または持続的放出調剤の使用の利益が強調されている(非特許文献19)。抗原を放出できるポリマー性ミクロカプセルは、6カ月を越える期間、哺乳動物内に高い免疫応答を誘導することが示されている(非特許文献20)。それらの調剤による免疫賦活は、アルミニウム塩アジュバントに類似のデポー作用、または抗原提示細胞に直接の抗原送達のいずれかが起きると信じられている。
【0015】
ヒドロゲルは、水が分散媒体であるコロイドゲルとして一般に定義されている。それらは化学的または物理的のいずれかである各種の異なる結合、例えばイオン性もしくは疎水性相互作用または水素結合により架橋されているポリマーから成る。アルギネートは、褐色海藻から抽出された天然に存在する線状多糖類である。それは1−4連結したα−L−グルロン酸およびβ−D−マンヌロン酸残基から成る。アルギネートの異なる起源は、異なるグルロン酸含有量を有し、そしてこれは一方ではアルギネートの性質に影響する。アルギネートは、二価陽イオン、例えばCa2+、Ba2+、Sr2+など(Mg2+を除く)との反応によりヒドロゲルを形成できる。三価陽イオン、例えばAl3+およびFe3+もアルギネートからヒドロゲルを形成するために使用される。それらのヒドロゲルの製造の一般的な方法は、アルギン酸ナトリウム溶液を必要な架橋陽イオンを含む溶液中に滴下して加えることを含む。アルギネート内に内包されたリポソームは、タンパク質送達(非特許文献21、22、特許文献1)について研究されておりそして膵島細胞を含む数種の異なる細胞系統(非特許文献23)および遺伝子操作された繊維芽細胞(非特許文献24、25)は、治療用途のためにアルギネート内に内包されている。近年、アルギネートは、組織工学において骨格として使用されている(非特許文献26)。共有結合されたペプチドを有するアルギネートヒドロゲルは、合成細胞外物質として(非特許文献27、28)および組織バルク化剤として(非特許文献29)研究されている。イオン的に架橋されたアルギネートは、イン・ビトロで時間が経過すると機械的性質を損失し、それは周囲媒体内への架橋イオンの流出によると推測されると報告されている(非特許文献30)。アルギネートの向イオン性ゲル化の方法は、例えば下記の文献に記載のものを含む;非特許文献21、22および31。
【0016】
同様のヒドロゲルは、身体内に普通に見いだされるヒアルロンとしても知られるヒアルロン酸から形成できる。ヒアルロン酸は、D−グルクロン酸およびN−アセチル−D−グルコサミンの負に荷電した線状ポリマーであり、それらの化合物が多価イオンに暴露された場合に形成される(非特許文献32、33)。ヒアルロン酸は、関節修復にしばしば適用されることで証明されるように、高度に生物適合活性であることが知られている(非特許文献34、35)。薬剤送達への使用のこの化合物に関する研究は少ないが、それはそれが生理学的pHで迅速に溶解するからである(非特許文献36)。
【0017】
コラーゲンマトリックスを用いる薬剤の送達は、主としてその固有の生物分解性、弱い抗原性(非特許文献37)および天然生物ポリマー、例えばアルブミンと比較して優れた生物適合性のためにその重要性を増している。コラーゲンマトリックスは、遺伝子治療(非特許文献38)、タンパク質の制御放出(非特許文献39)、抗体(非特許文献40)、抗生物質(非特許文献41)および成長因子、例えば形質転換成長因子−ベータ2(TGF−β2)(非特許文献42)の哺乳動物への送達のための担体として使用されている。コラーゲンマトリックスは、血小板誘導成長因子−B(AdPDGF−B)をコードするアデノウイルスベクターの哺乳動物への送達に使用され(非特許文献43)、そしてイン・ビボおよびイン・ビトロの双方での創傷治癒におけるコードされた導入遺伝子の発現を増加することが見いだされた。クら(非特許文献44)は、コラーゲンのマトリックス内に送達されたヒト血小板誘導体体成長因子Bをコードするアデノウイルスが、アデノウイルスに対して向けられる抗体応答を誘導することを示した。T細胞応答は認められなかった。アデノウイルスを含むコラーゲンゲルは、動物への遺伝子の送達のために別の人により公開されている(非特許文献17)。しかし、それらのゲルは、防御的免疫応答を動物内で誘導する特定の目的のためのワクチン設定には使用されなかった。反対に、ウイルスへの免疫応答がないことがそれらの研究に望まれており、それは応答の存在が動物によるウイルスの拒絶をもたらすと予想され、従って遺伝子送達の望ましい効果が無効になるからであろう。薬剤の制御された放出を行うために、コラーゲンフィブリルは架橋されてマトリックスを形成しなければならない。コラーゲンの個別のフィブリルは、クロムのような三価陽イオン(非特許文献46)またはアルミニウム(非特許文献47)を用いるイオン結合の形式、共有結合架橋剤(ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサメチレンジイソシアナート、ポリエポキシ化合物、カルボジイミド)を用いるかまたは物理的処置(乾燥加熱、紫外線への暴露、γ−線照射、またはpH変更)(非特許文献48)のいずれかにより架橋できる。
【0018】
ゼラチンは、ワクチン内の安定剤として使用して成功した少数の物質の一つである(非特許文献49、50)。ゼラチンの生物分解性ナノ粒子は、肺臓疾患の処置のための薬剤を送達するため(非特許文献51)、特異性抗体をゼラチンナノ粒子の表面に接合してT細胞を標的とするため(非特許文献52、53)、および光力学治療製剤(非特許文献54)において使用されている。ゼラチンヒドロゲルは、それらの正に荷電した性質およびそれらの生物分解性のために、新しい遺伝子送達システムとして試験されている(非特許文献55)。ゼラチンの正に荷電した構造は、負に荷電した核酸、タンパク質および薬剤を内包可能とする。それらのゼラチン結合生物分子は、ゼラチンゲルが徐々に分解すると放出される。さらに、レトロウイルスの感染性は、ゼラチンおよびスクロースが添加された場合に、冷凍乾燥により保存できることが示された(非特許文献56)。
【0019】
ボレクらは、合成抗原を用いて動物を免疫化することにより同じ動物種のタンパク質と交差反応する抗体の形成を刺激することも可能と考えた(非特許文献57)。抗原への最初の暴露の後にもたされるアナフィラキシーショックの数例が全世界から報告されている(非特許文献58、59、60)。ハシカ、オタフクカゼ、風疹(MMR)ワクチンを接種されていた年齢17歳の反応は、ワクチンのゼラチン成分に対して向けるIgE抗体の誘発に帰せられた(非特許文献61)。ワクチンの熱安定成分としてのゼラチンとアナフィラキシーとの間の関係を引用する他の報告がある(非特許文献62、63、64、65、66、67)。それらの報告は、ゼラチンの形成が改変された場合(非特許文献68)またはワクチンが完全に除去された場合(非特許文献69)のアレルギー反応の劇的な低下の観察によりさらに支持された。アナフラキシーの報告された症例の大部分は日本からであって、米国ではない(非特許文献70)。ゼラチンをベースにしたワクチンへの過敏性は、ゼラチンアレルギーとHLA−DR9の間の強い会合により起きると示唆されている(非特許文献71、これはアジア集団で独特である;非特許文献72)。プールら(非特許文献70)も、日本において不十分に加水分解されたゼラチンのジフテリア−破傷風−無細胞百日咳(DTaP)ワクチンへの添加が、一部の小児でゼラチンに対する過敏化に貢献して、その後のMMRワクチン接種の際のアナフラキシーのリスクを増大したのではないかと提唱している(非特許文献66)。米国内で製造されたワクチンに使用されたゼラチンは、完全に加水分解されていることが分かっている。
【0020】
種々の巨大分子を哺乳動物細胞内に転移させるための一枚壁ナノチューブ(SWNT)の使用に多くの研究が向けられている。例えば、かかるシステムは、小さいペプチド(非特許文献73)、核酸(非特許文献74)およびタンパク質、例えばストレプタビジン(streptavidine)(非特許文献75)に関連して使用されている。最近、シカムらは、葉酸領域を用いるSWNTの機能性化によるガン細胞の破壊を開発している(非特許文献76)。これは、葉酸受容体腫瘍マーカーを用いて標識されたSWNT内部細胞の内部化をもたらす。ガン細胞の死滅は、近赤外線を用いる細胞の照射により達成された。ナギブらは、炭素ナノチューブ構造の表面が、単に合成後処理を改変することにより種々の生物医学的用途を有するように適合できることを示した(非特許文献77)。同様の結果は、サルバドール−モラレスらによってもかれらの炭素ナノチューブチューブ上のタンパク質吸着に関する研究で報告された(非特許文献78)。最も重要な事は、ペプチドに対するウイルス特異性中和抗体応答を増進するために炭素ナノチューブの官能性化であることがペンタロットらにより示された(非特許文献79)。それらの技術を用いて、送達される化合物は、ナノチューブの外面に結合し次いでナノチューブの大きさが化合物の送達をもたらす。
【0021】
ワクチン技術および一般的に抗ウイルス技術におけるすべての進歩にもかかわらず、ウイルスワクチン、特には安全でありそして迅速で容易に生成できるインフルエンザウイルスワクチンのために当該技術分野で以前から感じられていた必要性は解決されていない。それらのワクチンは、例えばワクチン接種された動物またはヒトがその後のウイルスの有毒株によるチャレンジに対して完全に保護されるように、完全な体液的および細胞的免疫応答を誘発できなければならない。本発明は、この必要を満たす。さらに。致死の可能性がある生体作用活性薬剤、例えば生ウイルスの動物への投与が、薬剤が万一エーロゾル化または漏れても、領域内の他者に不利な影響を与えないであろう。本発明は、かかる薬剤の投与のための組成物および方法を提供して、この問題を解決する。
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【発明の開示】
【0022】
(発明の要約)
本発明は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを含み、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する。
【0023】
本発明は、さらにウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを含み、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内の免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する。
【0024】
ある態様では、ウイルスは生ウイルス、弱毒化ウイルスまたは死ウイルスである。
【0025】
別の態様では、ウイルスは呼吸系ウイルスである。別の局面では、ウイルスは、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞
体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される。
【0026】
好ましくは、ウイルスはオルトミクソウイルスさらに好ましくはインフルエンザウイルスであり、そしてもっとさらに好ましくは、ウイルスはA型インフルエンザウイルスである。ウイルスがA型インフルエンザウイルスである場合に、ウイルスはH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する。さらに好ましくは、A型インフルエンザウイルスは、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する。
【0027】
いくつかの態様では、ワクチンは該A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる。好ましくは、該A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)、さらに好ましくはウイルスの0.005〜500HAU、もっとさらに好ましくはウイルスの0.01〜100HAUである。
【0028】
いくつかの態様では、動物が脊椎動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトである。
【0029】
本発明のワクチンは、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスから成る群から選択される2種またはそれ以上のメンバーのウイルスの組合せを含んでなってもよい。
【0030】
好ましい態様では、投与の経路が天然ではない経路であり、さらに好ましくは皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される。
【0031】
本発明のワクチンを含んでなるキットも本発明にさらに含まれる。
【0032】
本発明は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンに関し、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルと会合(associate)されている。
【0033】
さらに、本発明は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンに関し、ここで動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内の免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルと会合されている。
【0034】
好ましい態様では、ウイルスが該内包ビヒクル内に内包され、そして該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合されてもよい。別の態様では、内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される1種もしくはそれ以上のメンバーを含んでなる。好ましくは、内包ビヒクルがナノチューブ内に装入(load)される。
【0035】
ある態様では、内包ビヒクルがポリマーを含んでなり、そしてさらに好ましくは、動物に投与された場合に毒性ではない。好ましくは、ポリマーが該ウイルスと会合され、それ
により周囲環境内への該ウイルスの放出を遅延させる。
【0036】
好ましい態様では、ポリマーがゲルでありそしてコラーゲンを含んでなってもよい。ポリマーはヒドロゲルであってもよく、そしてアルギネート、ゼラチン、キトサンおよびヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択されてもよい。
【0037】
他の好ましい態様では、ゲルは、コラーゲン、アルギネート、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの1種もしくはそれ以上の組合せを含んでなる。
【0038】
好ましくは、ゲルは架橋されていてもよく、そして追加してゲルはさらに添加剤を含んでなってもよい。好ましい態様では、添加剤がポリエチレングリコールである。
【0039】
別の態様では、内包ビヒクルがミクロカプセルもしくはナノカプセル、またはナノチューブを含んでなる。好ましくは、ナノチューブが直径500nmまたはそれ以下を有する。
【0040】
さらに別の態様では、内包ビヒクルが1種もしくはそれ以上の溶液、粉末またはゲルの組合せを含んでなる。
【0041】
内包ビヒクルは、好ましくは本明細書中の別の箇所に記載のウイルスを含んでなる。
【0042】
動物へのワクチンの送達のためのデバイスもさらに本発明に含まれ、該デバイスは、(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体の量であって、ここで天然でない経路により該動物にウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するためのデバイスを含んでなる。
【0043】
動物へのワクチンの送達のためのデバイスがさらに含まれ、該デバイスは(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御量であって、ここで天然でない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するための送達デバイスを含んでなる。
【0044】
一つの態様では、該送達デバイスが中空チューブを含んでなり、そして好ましくは、該中空チューブが先細の末端を有する。いくつかの態様では、該送達デバイスが針を含んでなる。別の態様では、該中空チューブが場合によりプランジングデバイスに取り付けられ、ここで好ましくは、該プランジングデバイスが注射器、遺伝子ガン、カテーテル、貼付剤、吸入デバイス、または粘膜アプリケーターである。
【0045】
該デバイスは、好ましくは、本明細書中の別の箇所に記載の内包ビヒクルおよびウイルスを含んでなる。好ましくは、ウイルスが該内包ビヒクル内に内包され、そしてさらに好ましくは、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される。
【0046】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法が本発明中にさらに含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体の免疫防御量を、内包ビヒクルと組合せ、それによりワクチンを製造することを含んでなる。
【0047】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法も含まれ、該方法は、ウイルスの免疫防御性の量を内包ビヒクルと組合せ、それにより該ワクチンを製造することを含んでなる。
【0048】
本発明は、動物内にCD8+T細胞免疫防御および/または抗体免疫防御応答を誘発する方法も含む。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発する。
【0049】
さらに、動物内にCD8+T細胞免疫防御応答を誘発する方法が含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発する。
【0050】
それらおよびその他の方法中で、好ましくは、動物が哺乳動物であり、そしてさらに好ましくは、哺乳動物がヒトである。
【0051】
ウイルスにより感染に対して動物を防御する方法がさらに本発明に含まれる。それは、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発し、それにより該感染に対して該動物を防御する。
【0052】
さらに、ウイルスによる感染に対して動物を防御する方法であって、ここで該方法が該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該感染に対して該動物を防御する。
【0053】
動物内のウイルス感染を防御する方法も含まれ、ここで該方法が該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する。
【0054】
さらに、動物内のウイルス感染を防御する方法が提供される、該方法は、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する。
【0055】
動物内のウイルス感染を処置する方法もさらに含まれる。該方法は、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する。
【0056】
動物内のウイルス感染を処置する方法もさらに含まれ、ここで該方法は、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する。
【0057】
本発明は、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を含み、ここで該動物内に疾患を起こさない経路により該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する。
【0058】
本発明は、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物も含み、ここで該動物内に疾患を起こさない経路により該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する。
【0059】
好ましい態様では、経路は天然ではない経路であり、そして皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択されてもよい。生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包され、そして好ましくは、生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される。内包ビヒクルは、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーを含んでなり、そして好ましくは、内包ビヒクルはナノチューブ内に装入される。該内包ビヒクルがポリマーを含んでなってもよく、そして好ましくは、該ポリマーは、動物に投与された場合に毒性ではない。該ポリマーは該生体作用活性薬剤と会合され、それにより周囲環境内への該生体作用活性薬剤の放出を遅延させてもよい。好ましくは、該ポリマーがゲルでありそして好ましくは、該生体作用活性薬剤が微生物およびタンパク質から成る群から選択される。
【0060】
さらに、動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法が含まれる。該方法は生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている。
【0061】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法もさらに含まれる。該方法は生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、さらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている。
【0062】
好ましい態様では、生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される。
【0063】
さらに、生体作用活性薬剤の生物学的に有効な量を含んでなる組成物が本発明に含まれ、ここで、動物内に疾患を起こさない経路により該動物に該生体作用活性薬剤を投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に所望の応答を誘導し、一方ではリスクを低減する。
【0064】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法がさらに本発明内に含まれる。該方法は動物内で所望の応答を誘導し同時にリスクを低減する生体作用活性薬剤の量を含んでなる組成物を該動物に投与することを含んでなり、ここで、該生体作用活性薬剤の投与の経路が該動物内に疾患を起こさない経路であり、そしてさらにここで該生体作用活性薬剤を投与する際に該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されそれにより安全性を上昇する。
【0065】
発明の詳細な説明
本発明は、インフルエンザウイルス感染に対する動物、好ましくは脊椎動物、好ましくは哺乳動物、そしてさらに好ましくはヒトの防御のための組成物および新規のワクチン戦略中でのその使用の発見に関する。しかし、本発明はインフルエンザウイルス感染に対する動物の防御のためのワクチン戦略のみに限定されると解釈されてはならず、より正確には、ある経路により投与された場合に、エーロゾル化あるいは暴露をもたらしそして他の脊椎動物に有害なリスクを与えるであろうあらゆる生体作用活性薬剤の投与も含むと解釈
されるべきである。本発明は、さらに、動物の呼吸器もしくは胃腸管を介して宿主に感染または侵入する他のRNAウイルス、およびいくつかの場合には、動物の呼吸器もしくは胃腸管を介して宿主に感染または侵入するDNAウイルスを含み、それらに限定はされない他のウイルス感染に対する防御を与えるワクチン戦略を含む。本明細書中の別の箇所にさらに詳細に記載されるように、本発明のワクチン戦略は、単独もしくは新規の調剤および送達システムと組み合わされるいずれかの場合に、慣用のワクチン接種に現在使用される経路または動物内へのウイルスの天然の侵入の経路とは異なる投与の経路による脊椎動物への生ウイルスの低い用量の投与が、CD4+およびCD8+T細胞および/または抗体を含んでなる強力な免疫応答を誘導するという発見に関し、それはその後の感染性ウイルスによるチャレンジに対する動物の有効な防御のために重要である。例えば、天然の感染の経路とは異なる経路による動物へのインフルエンザウイルスの投与が、一般に動物内に疾患を起こさないことは知られている。しかし、動物に対して筋肉内投与される現在の死インフルエンザワクチンは、体液性のみそしてT細胞免疫応答を弱く誘導するかもしくは全く誘発しない。鼻経由(即ち天然の経路)で投与される弱毒化インフルエンザウイルスワクチンは、弱いCD8+T細胞免疫応答を誘発するに過ぎない。従って、現在のワクチンは、標的集団の約30%を保護するに過ぎない。本発明は、皮下または皮内での低い用量の生インフルエンザウイルスワクチンの投与が、強力なCD8+T細胞応答を誘導し従って現在のワクチンより優れているという発見を含む。言い換えると、本発明は、動物内への生体作用活性薬剤の侵入の天然の経路ではない経路による脊椎動物への生体作用活性薬剤の投与を含み、ここで、防御免疫応答は、その後の生体作用活性薬剤を用いるチャレンジの際に疾患に対して動物を防御するように動物内に誘発される。本発明は、さらに、エーロゾル化するかまたは他の暴露リスクを起こす材料の能力を本質的に低下し、それにより材料が存在しない場合よりさらに安全な生体作用活性薬剤の投与をもたらす、材料内への生体作用活性薬剤の内包を含む。本発明のそれらまたはその他の局面は、本明細書中に提供される開示の閲読により明らかになるであろう。
【0066】
定義
本明細書中に使用される場合に、下記の各用語は本節内において関連する意味を有する。
【0067】
冠詞「a」および「an」は、冠詞の文法的な対象の一つまたは一つを越える(すなわち少なくとも一つ)を指すとして本明細書中では使用される。例えば、「an element」は、1個の要素または1個を越える要素を意味する。
【0068】
本明細書中に使用される場合に、疾患、障害または状態を「回避」するとは、疾患、障害または状態の1種もしくはそれ以上の症状の重症度を低下させることを意味する。
【0069】
本明細書中に使用される場合に、「処置」とは、動物、好ましくは脊椎動物、好ましくは哺乳動物、さらに好ましくはヒトにより疾患の症状が経験される頻度を低下させることを意味する。
【0070】
本明細書中で使用される場合に、「アプリケーター」の用語では、脊椎動物に本発明の組成物を投与するための、針、カテーテル、皮下注射器、遺伝子ガン(gene gun)、貼付剤、ナノチューブ、粘膜アプリケーター、またはそれらのいずれかの組合せを含み、それらに限定はされないあらゆるデバイスを意味する。
【0071】
本明細書中に使用される場合に、「生体作用活性薬剤」の用語では、脊椎動物に投与された場合に、脊椎動物にある作用を起こすいずれかの薬剤を意味する。起こされる作用は、薬剤が脊椎動物に投与された場合に脊椎動物に有利または不利であってもよい。生体作用活性薬剤の例は、それらに限定はされないが、脊椎動物、好ましくはヒトへワクチン、免疫原、薬剤もしくは他の治療剤として投与できる、生ウイルス、弱毒化または死ウイルス、不活性化ウイルス、生、弱毒化または死んでいる微生物、ペプチド、タンパク質、核酸、または小さい有機もしくは無機化学薬品を含む。
【0072】
本明細書中に使用される場合に、生体作用活性薬剤、例えばワクチンまたはその他の組成物の「有効な量」とは、所望の応答を誘発するいずれかの量を意味する。ワクチンの場合に、この用語は、脊椎動物に投与された場合に、脊椎動物内で生体作用活性薬剤内の抗原に対して向けられるCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を誘発する生体作用活性薬剤のいずれかの量を意味する。
【0073】
本明細書中に使用される場合に、「生体作用活性薬剤のCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量」とは、脊椎動物に投与された場合に、生体作用活性薬剤に対して向けられるCD8+T細胞応答および/または抗体応答を誘発する生体作用活性薬剤の量を意味し、その際、脊椎動物が、通常のコースでは脊椎動物に不利な作用物質を有する経路を通って生体作用活性薬剤を用いてチャレンジされた場合に、同様にチャレンジされたがしかし生体作用活性薬剤のCD8+T細胞および/または抗体免疫防御量を投与されなかった第二のその他では同様の脊椎動物よりも、該脊椎動物がチャレンジする生体作用活性薬剤により起きるより低いかもしくはより厳しくない疾患の症状を示す。
【0074】
本明細書中に使用される場合に、「生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量」とは、脊椎動物に投与された場合に、生体作用活性薬剤に対して向けられるCD8+T細胞応答を誘発する生体作用活性薬剤の量を意味し、その際、脊椎動物が、通常のコースでは脊椎動物に不利な作用物質を有する経路を通って生体作用活性薬剤を用いてチャレンジされた場合に、同様にチャレンジされたがしかし生体作用活性薬剤のCD8+T細胞および/または抗体免疫防御量を投与されなかった第二のその他では同様の脊椎動物よりも、該脊椎動物がチャレンジする生体作用活性薬剤により起きるより低いかもしくはより厳しくない疾患の症状を示す。
【0075】
本明細書中に使用される場合に、「遺伝子」および「組換え遺伝子」の用語は、最低でも、ポリペプチドをコードするオープンリーディングフレームを含んでなる核酸分子を指す。
【0076】
本明細書中に使用される場合に、「指示材料」は、本明細書中に記載の種々の疾患または障害の回避を起こすためのキット内に、本発明の生体作用活性薬剤、ワクチンまたはその他の組成物の有用性を伝えるために使用できる出版物、記録、図表、またはその他の表現媒体を含む。場合により、またはその代わりに、該指示材料は、脊椎動物の細胞または組織内の疾患または障害を回避する1種もしくはそれ以上の方法を記載してもよい。本発明のキットの指示材料は、例えば、本発明の生体作用活性薬剤、ワクチンもしくはその他の組成物を含む容器に貼付しても、または生体作用活性薬剤、ワクチンもしくは組成物を含み容器と一緒に発送されてもよい。あるいは、指示材料と化合物が受領者により協同して使用されるという意図で、該指示材料は容器とは別に発送されてもよい。
【0077】
本明細書中に使用される場合に、「特異的に結合する」の用語では、試料内の特定の分子を認識して結合するが、しかし他の分子を本質的に認識または結合しない化合物、例えばタンパク質、核酸、抗体などを意味する。
【0078】
本明細書中に使用される場合に、「導入遺伝子」の用語では、外因性核酸がトランスジェニック細胞または哺乳動物によりコードされる外因性核酸配列を意味する。
【0079】
ウイルスに関して本明細書中に使用される場合に、「生」の用語では、ウイルスが宿主
細胞内で感染および複製しそして動物内で疾患を起こす能力があることを意味する。
【0080】
これは、ウイルスに関して本明細書中に使用される場合に、「弱毒化」の用語とは対照的であり、その用語は、ウイルスが宿主細胞で感染の能力はあるが、しかし動物内に疾患を起こす能力が著しく低いかまたはないことを指す。
【0081】
ウイルスに関して本明細書中に使用される場合に、「死(killed)ウイルス」の用語は、ウイルスが宿主細胞内で感染および複製の能力がなくそして動物内に疾患を起こすこともほとんど不能であるウイルスである。
【0082】
本明細書中に使用される場合に、「ワクチン」の用語では、ワクチンが投与された脊椎動物内に免疫応答を誘発する抗原、すなわち生体作用活性薬剤、好ましくはウイルスもしくはその他の微生物またはタンパク質を意味する。好ましくは、免疫応答は、同じかまたは類似の生体作用活性薬剤を用いるその後のチャレンジに対抗して脊椎動物にいくらかの有利で防御的な作用を与える。さらに好ましくは、免疫応答は、生体作用活性薬剤と関連する疾患の少なくとも一つの症状の発生を防止するかもしくは改善し、またはその後のチャレンジの際に生体作用活性薬剤と関連する疾患の少なくとも1種の症状の重症度を低下させる。さらに好ましくは、免疫応答は、その後のチャレンジの際に生体作用活性薬剤と関連する疾患の1種を越える症状の発生を防止するかもしくは改善する。
【0083】
「疾患を起こさない方法または経路」の用語では、薬剤が天然には生物体に有害、有毒または生物体に感染する機構または侵入点とは異なる方法で生物体に薬剤を提示する様式で生体作用活性薬剤を投与することを意味する。限定ではない例示として、ヒトの天然の感染の間のインフルエンザウイルスの侵入点は、非内包ウイルスとして気道を通過するものである。この範囲内で、「疾患を起こさない方法または経路」は、好ましくは皮下または皮内によるウイルスの注入であり、ここでウイルスは内包組成物内に内包されている。
【0084】
本明細書中に使用される場合に、「天然ではない経路」の用語は、ウイルスによる動物の天然の感染の間のウイルスの侵入点ではない、動物の身体内へのウイルスの侵入点を意味する。例として、ヒトの天然の感染の間のインフルエンザウイルスの侵入点は気道である。従って、侵入の皮下または皮内経路はインフルエンザウイルスの侵入の天然ではない経路である。
【0085】
「感染の天然の経路」では、ウイルスの天然の拡散の間にウイルスが動物に感染する経路を意味する。
【0086】
「生体作用活性薬剤の天然の侵入の経路」では、通常、生体作用活性薬剤への動物の暴露がそれと関連する疾患の症状を起こす経路を意味する。
【0087】
ウイルスの「低用量」の用語では、ウイルスが投与された脊椎動物内で防御的CD8+T細胞および/または抗体応答を誘発するために十分なウイルスの量を意味する。熟練した医師は、それぞれの状況において投与すべきウイルスの正確な量を知っており、そしてその量は、使用される特定のウイルスの悪性度、ウイルスが投与される動物の年齢および全体的健康、ウイルスの調剤、およびウイルスの投与に使用されるデバイスも含み、それらに限定はされない多数の因子のいずれか一つまたはそれ以上に依存して変化する。インフルエンザウイルスの場合に、低用量は約0.0001赤血球凝集単位(HAU)から約5000HAUの範囲であろう。好ましくは、低用量は約0.0005〜約500HAU、さらに好ましくは約0.001〜約100HAU、そしてさらに好ましくは約0.05〜約10HAUの範囲およびその間のいずれかの整数または部分(partial)整数であろう。
【0088】
本明細書中に使用される場合に、「呼吸系ウイルス」の用語では、動物に感染した際に、侵入点として主として気道を用いるか、および/または気道を主標的としそして動物に呼吸器疾患を起こすウイルスを意味する。
【0089】
本明細書中に使用される場合に、「胃腸内ウイルス」の用語では、脊椎動物への感染の際に、胃腸管を侵入点として使用するかおよび/または胃腸管を主標的としそして脊椎動物に胃腸疾患を起こすウイルスを意味する。
【0090】
「皮下」は、皮膚の真皮層とその下の筋肉組織の間にある脂肪組織の領域を指す。
【0091】
「皮内」は、表皮とその下の皮下脂肪層の間にある真皮層を指す。皮内部位は、多数の抗原提示細胞を含みそして皮下部位と比較してリンパ系内へのより迅速な放出をもたらす。これは免疫応答、抗原/生体作用活性薬剤クリアランス、および皮内および皮下注入部位の間に必要な用量の形式および大きさに相違をもたらす。
【0092】
本明細書中に使用される場合に、「ワクチン単位」または「ワクチンの単位」の用語では、脊椎動物に投与された場合に、脊椎動物内に防御的免疫応答の誘発を開始させるワクチンの量を意味する。ワクチン単位は、脊椎動物内に完全な防御的免疫応答の誘発を開始しても、または完全な応答のためには追加のワクチン単位が必要な不完全な応答を開始してもよい。
【0093】
本明細書中に使用される場合に、「内包(encapsulation)ビヒクル」の用語は、脊椎動物に生体作用活性薬剤、ワクチンもしくはその他の組成物の投与のための組成物を意味し、ここで、組成物は、薬剤がその非内包状態で存在するものよりも追加の材料を含んでなるように、薬剤を被覆、包囲、包含、あるいはそれと会合する。
【0094】
「生物適合性ポリマー」の用語は、動物に投与された際に、動物に一般的に不利な応答を誘導しないポリマーを意味する。この用語は、「無毒性」の用語と本明細書中では同義的に使用される。
【0095】
本明細書中に使用される場合に、「ミクロカプセル」の用語では、生体作用活性薬剤を包囲あるいはそれと関連するビヒクルを意味しそして薬剤と環境との間の障壁を提供する。ミクロカプセルの大きさは、約1から数百μmおよびその間のあらゆる整数または部分整数の程度である。ミクロカプセルの形状は種々であってもよく、そして球状、楕円体および多面体形状を含み、それらに限定はされない。内包の形態は、マトリックス中に均等に配置され、しばしばミクロスフェアと呼ばれるものから、一部分に極限され、例えば生体作用活性薬剤を充填した中空ミクロカプセルの場合がある。
【0096】
本明細書中に使用される場合に、「ナノカプセル」の用語では、寸法が約1μm〜約1μmおよびその間のあらゆる整数または部分整数の範囲であるミクロカプセル様の構造を意味する。
【0097】
本明細書中に使用される場合に、「ナノチューブ」の用語では、1より大きい長さと幅の比率を有し、いずれかの形状の断面(円形、楕円形、正四角形、多角形またはその他)を有し、ここで一つの寸法は、100nmまたはそれ以下であるがしかし1μmまでであることも可能で、そしてその間のあらゆる整数または部分整数でもよい。
【0098】
本明細書中に使用される場合に、「送達デバイス」の用語では、脊椎動物の皮膚の少なくとも最も外層を通過しそして薬剤を脊椎動物の内部組織に送達できるデバイスを意味す
る。あるいは、送達デバイスは生体作用活性薬剤を脊椎動物の粘膜組織内に送達できる。送達デバイスの限定ではない例は、針、注射器、カテーテル、遺伝子ガン、ナノチューブ、貼付剤、粘膜アプリケーターなどである。
【0099】
本明細書中に使用される場合に、「安全な送達ビヒクルまたはデバイス」とは、脊椎動物に有害の可能性がある生体作用活性薬剤を送達する手段であり、ここで脊椎動物が安全ではないモード、一般的にはエーロゾルまたは遊離粉末形態で生体作用活性薬剤に暴露された場合には、生体作用活性薬剤は脊椎動物に不利な作用を有するであろう。
【0100】
詳細な説明
I.ウイルスおよびその他の生体作用活性薬剤
本発明は、マウス内の生インフルエンザウイルスの低用量皮下または皮内投与が、その後に鼻内に投与される感染性インフルエンザウイルスによるチャレンジに対してマウスを防御するマウス内の強力なCD4+およびCD8+T細胞応答および抗体応答を誘導するという発見に基づく。本発明は、さらに、有害なエーロゾルを形成する能力を有する生体作用活性薬剤の投与に関連するリスクが、生体作用活性薬剤のエーロゾル化を防止する材料内に生体作用活性薬剤が内包された場合に最小となり得るという発見に基づく。
【0101】
本発明は、インフルエンザウイルスに対して向けられるワクチンの使用のみに限定して解釈するべきではなく、より正確には、他のウイルス、特には呼吸系および胃腸内ウイルスに対するワクチンの開発を含むと解釈されるべきである。さらに、本発明は、脊椎動物への生体作用活性薬剤の投与を含むと解釈されるべきであり、ここで、該薬剤は、エーロゾルまたは粉末形態では有害となる可能性がある。さらに、本発明は、ウイルスに対するのみでなく、細菌を含みそれらに限定はされない他の微生物に対して向けられるワクチンを含むと解釈されるべきである。本発明は、タンパク質もしくは脂質を含んでなり、それらに限定はされない他の分子、化合物または構造体に対して向けられるワクチンの投与を含むとさらに解釈されるべきである。
【0102】
本明細書中の他の箇所にさらに詳細に記載するように、本発明は与えられた生体作用活性薬剤に対する防御的CD4+T細胞応答、もしくは防御的CD8+T細胞応答、または抗体応答、または各応答の2種またはそれ以上の組合せを誘導できるワクチンを含む。
【0103】
本発明のワクチン内に含まれるその他のウイルスは、それからの防御のためのT細胞応答、すなわちCD4+および/またはCD8+T細胞応答、および/または抗体応答に同様に依存するものである。かかるウイルスは、それらに限定はされないが、RNAウイルス、呼吸器感染を起こすRNAウイルス、およびある場合にはDNAウイルスを含む。それらのウイルスの限定ではない例は、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、コロナウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、エンテロウイルス(ピコルナウイルス、例えばポリオウイルス、コクサッキーウイルス、エコーウイルスを含み、それらに限定はされない)、パルボウイルス、ロタウイルス、カリシウイルス、アストロウイルス、ノロウイルス、ノーウォークウイルス、アルボウイルスおよびアレナウイルス、例えばフラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスまたはレンチウイルスなどを含む。
【0104】
従って、インフルエンザウイルスが本開示を通じて例示されているけれども、本発明は、本開示の一体となる部分として追加のウイルスおよびその他の微生物ならびにその他の潜在的に有害な生体作用活性薬剤も含むと解釈されなければならないと認められるべきである。本発明を一旦理解すると、感染性ウイルスによりその後にチャレンジされた際に免疫化個体に有利な防御的CD4+T細胞、および/またはCD8+T細胞免疫応答および/または抗体応答を誘導できる性質を有する追加のウイルス組成物およびワクチンを開発するのは、熟練者の技術の範囲内に十分入る。動物およびヒトに対して薬剤の安全な投与をさせる追加のビヒクル/薬剤の組合せを開発するのもさらに熟練者の技術の範囲内に十分入る。
【0105】
それを考慮して、インフルエンザウイルスに主として焦点を当てた本開示は、明瞭性の目的のみでありそして、その病原、複製および/または感染性疾患サイクルが既知でありそして当該技術分野のものと共同して本明細書中に開示する一般手順に従って効果的なワクチンを生成するように操作できる他の生体作用活性薬剤、微生物およびウイルスにも一般的に適用可能であると解釈するべきである。それらの手順の概観については、Bernard Fields編集によるFields Virology,David KnipeLippincott Williams & Wilkins、第3版(1996)を参照のこと。
【0106】
種々の細胞または他の系、例えばインフルエンザウイルスの場合にはタマゴ内での種々のウイルスの増殖および評価がワクチン生産のためにウイルスを生成するために使用されることを教示する当該技術分野内の多数の情報がある。各ウイルスは大量に生産されるそれ自体の系を有し、そしてそれらの系は周知であり熟練者には容易に利用できる。ワクチンに使用するために大量の生ウイルスが生産された場合に、生産されたウイルスは宿主細胞に感染しそしてその中で複製できなければならない。さらに、生ウイルスワクチンの場合に、感染した宿主内に疾患を起こすウイルスの能力は、感染の天然の経路による場合には、熟練者には容易に利用できる方法を用いて評価される。複製、単離できるウイルスは細胞を感染でき、そして感染の天然の経路を使用した場合に動物内に疾患を起こすウイルスは、本発明の生ウイルスワクチンに使用するための候補である。天然の感染経路を使用した場合に細胞を感染できるが、しかし動物内に明白な疾患を起こさない弱毒化ウイルスとして複製および単離できるウイルスは、本発明の弱毒化ウイルスワクチンに使用するための候補である。天然の感染経路が使用された場合に、動物内で細胞を感染できずそして疾患を起こさないように複製、単離および死滅できるウイルスは、本発明の死ウイルスワクチンに使用するための候補である。最後に、野生型、弱毒化または死生物体およびウイルスのいずれかとして天然経路による侵入の後に疾患を起こし得る他の微生物は、本発明のワクチン内に使用されるための候補である。
【0107】
ウイルスがワクチン内に使用される場合に、該ウイルスは典型的には動物、好ましくは哺乳動物、そしてさらに好ましくはヒトに投与される。しかし、本発明はネコ、イヌ、ウマ、乳牛、牧牛、ヒツジ、ヤギ、鳥、例えばチキン、アヒル、ガチョウ、および魚を含み、それらに限定はされない各種の動物への、ウイルス、他の微生物、または生体作用活性薬剤の投与を含むと解釈されるべきである。
【0108】
2種のインフルエンザウイルスワクチンが、現在世界的に使用されている。それらは、(i)死ウイルスの筋肉内注入および(ii)弱毒化ウイルスの鼻内投与である。どちらのワクチンの投与も、その後のウイルス感染に対して防御的であるウイルスに対する強い抗体応答を誘導する。
【0109】
両方のワクチンに関連する数種の欠点がありそれらを本明細書中に記載する。(a)誘導された抗体応答は、それ自体においてまたはそれに関して、ウイルスによるその後の感染に対する十分な防御を与えない。ウイルスに対して向ける防御的CD8+T細胞応答も要求される。かかるCD8+T細胞応答は、流行している感染株により感染された場合にウイルスに対する抗体を有する健康な個体内には誘導され得るが、しかし免疫無防備状態の個体または非常に若いかまたは老齢者には誘導されないであろう。(b)ワクチン投与の後に誘導される抗体応答は、免疫原として使用されるウイルスの株に対して強く特異性である。従って、集団を免疫化するためには毎年新しいワクチンを同定、製造および投与
することが必要となる。いずれかの与えられた年にワクチンに使用したウイルス株が流行している感染株とは異なった場合には、集団の大部分が流行している株に対して防御されていないので、インフルエンザウイルス感染の罹患率および致死率が上昇する。(c)いずれかの与えられた年でインフルエンザウイルスに対する防御的抗体応答を効率的に誘導することが要求されるウイルスの量が多く、製造は複雑でそして頻繁なので、集団の大部分を十分に免疫化するために必要な時間内に十分なワクチンを生産できない。
【0110】
本発明のワクチンは、皮内または皮下経路により脊椎動物に投与される生の感染性ウイルスの低用量を含んでなる。皮下とは、皮膚の真皮層とその下の筋肉組織の間にある脂肪組織を指す。皮内とは、表皮とその下の皮下脂肪層の間にある真皮層を指す。皮内部位は、多数の抗原提示細胞を含みそして皮下部位と比較してリンパ組織内へのより迅速な放出を与える。これは、免疫応答、抗原/生体作用活性薬剤クリアランス、および皮内と皮下注入部位との間の所要用量の形式および大きさに差異をもたらすであろう。本開示を読んで明らかになるように、現在使用されているものに対して、本ワクチンを用いることにはいくつもの利点がある。第一に、本発明のワクチンは抗体応答の外にCD4+およびCD8+T細胞応答を被接種者内に誘導するので、本発明のワクチンはすべての被接種者に防御的免疫応答を与え、それはその後のウイルス感染に対するさらに完全な防御のために重要なものである。第二に、インフルエンザウイルス株の多数の内部セグメント/遺伝子が抗原性T細胞エピトープを共有するので、本ワクチンにより誘導される防御性CD4+およびCD8+T細胞応答が各個別のウイルス血清型に対する特異性が低くなり、ウイルスの個別株に対するワクチンの特異性は重要性が低くなる。第三に、ウイルスの低用量で十分であり従っていずれか特定のウイルスの多量生産に関連する困難が低下する。流行中の株が一旦単離されると、大量のワクチンが迅速に製造でき従って罹患の恐れがある大きい集団が、現状で可能なよりも迅速に免疫化できる。第四に、生ウイルスの一回の注入が免疫応答を誘発し、それは追加の免疫化によりさらに補強できる。現在のワクチンは、防御的免疫応答を誘発するために複数回のワクチン接種を必要とする。
【0111】
本発明でワクチンとして使用されるウイルスは、好ましくは「生」ウイルスである。しかし、弱毒化ウイルスおよび死ウイルス、またはそれらのウイルスのいずれかもしくはすべての組合せ、またはCD8+細胞応答および/または抗体応答を誘発するあらゆる生体作用活性薬剤も本発明に予期される。インフルエンザウイルスの場合に、ワクチンに使用されるウイルスの形式は、好ましくはA型インフルエンザウイルスであるが、しかし既知または現在は未知の他のインフルエンザウイルスも本発明に含まれる。本明細書中の別の箇所で考察するように、現在、A型インフルエンザウイルスの多数の異なる血清型が存在し、そしてヒトおよびその他の動物内で疾患を起こしそして免疫性を誘導するそれらの能力は、ウイルスのエンベロープ内のHAおよびNA抗原の形式により大部分が支配される。本発明は、それらのウイルス株が宿主の天然の感染の間に産生されるか、異なる種の感染の結果としてHAおよびNA抗原の再構築により産生されるか、またはウイルスの抗原構造が通常の分子生物学技術を用いて可能なように特異的に設計されたかもしくはランダムな組換えにより生成されたかのいずれかである組換え手段により産生されたかには関係なく、ウイルスエンベロープ内のHAおよびNA抗原のあらゆる組合せを有するあらゆるウイルスを含むと解釈するべきである。好ましくは、本発明に有用なインフルエンザウイルスは、脊椎動物内で広いスペクトルのCD8+T細胞および/または抗体応答を誘発できるものである。最も好ましくは、ウイルスは、それらに限定はされないが、インフルエンザの潜在的な汎流行株(例えばH5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3またはH7N7)、過去の汎流行(例えばH2N2またはH1N1)、または非汎流行ウイルス(例えばH1N1、H1N2またはH3N2)のものから成る。
【0112】
本明細書中の別の箇所に記載のように、本発明は、ワクチンとして生ウイルスの使用のみに限定されると解釈してはならない。弱毒化ウイルス、ならびに死ウイルス、または弱
毒化ウイルス、死ウイルスおよび生ウイルスの組合せも本発明に有用でありそして包含されると考えられる。その他の生、死または弱毒化微生物体も、本発明に有用でありそして包含されると考えられる。熟練した医師は、本明細書中に提供する開示に基づいて、一つのワクチン内のウイルスの異なる形態の組合せが、一定の場合には、ウイルス抗原型の広いスペクトルに対する防御のために必要な動物内での体液性および細胞性免疫応答の両者を増大することを理解するであろう。
【0113】
投与の経路および頻度
本発明において、ワクチンの投与の経路は、動物内のワクチンにより誘導される防御性免疫応答の範囲に関与することが発見されている。実施例の部分に提出したデータを調べて明らかとなるように、インフルエンザウイルスによるその後のチャレンジに対する防御性免疫の高いレベルは、皮下または皮内経路のいずれかによりウイルスを投与された動物内で得られた。従って、本発明のワクチンはそれらの経路のいずれか一つに限定されるとは解釈するべきではなく、インフルエンザウイルスの皮下または皮内投与が好ましい経路であってインフルエンザウイルス以外またはその他の微生物またはその他の生体作用活性薬剤のためにも好ましい経路である。しかし、投与のその他の経路も本発明内に含まれ、特に天然ではない経路が好ましい。限定ではない例として、特にワクチン内に含まれるワクチンがインフルエンザウイルスでない場合に、筋肉内、鞘内、腹腔内、鼻内、直腸、経口、非経口、局所、肺臓、口中、粘膜内およびその他の投与の経路が、動物への本発明のワクチンの投与のために本発明内に含まれる。投与の経路は、免疫が望まれそして身体の部位が保護されなければならない病原性ウイルスの種類に依存して組合せ、または所望の場合には調整されてもよい。
【0114】
ワクチンとして使用される場合のいずれか特定のウイルスの投与の最善の経路を評価するために、実験詳細の部に記載のプロトコールには、かかるプロトコールが例示としてのみ提供されそしてそれらは本明細書中に記載し請求される本発明に対してどのような限定的効果も持たないと解釈されるべきであるということを当然ながら認めた上で従ってもよい。それらの実験は、生ウイルスを用いる皮下および皮内接種が、いかなる疾患の臨床的兆候を示すことなく、ウイルスの非常に低い用量でもインフルエンザウイルスに対して向けられた非常に強力な免疫応答を誘発することを確証する。従って、それらの実験は、生ウイルスの投与の皮下または皮内経路がインフルエンザウイルスの潜在的な汎流行に対する有用なワクチン戦略であることを確認する。
【0115】
ウイルスワクチンの用量および有効な量は、条件、選択されたウイルス、動物の年齢、体重および健康などの因子に依存するであろうし、そして動物宿主間でも変動するであろう。個体に投与される本発明のウイルスの適当な力価は、抗体およびT細胞応答を含むウイルスに対する防御的免疫応答を誘発できる力価である。有効な力価は、個体にワクチンの投与の後の免疫エフェクター細胞の活性を決定するためのアッセイを用いるか、または周知のイン・ビボ診断アッセイを用いて治療の有効性を測定して決定できる。
【0116】
ワクチンは、一日に数回の頻度で動物に投与してもよく、またはそれはより低い頻度、例えば一日一回、一週間に一回、二週間に一回、一月に一回、またはさらに低い頻度、例えば数カ月に一回、または一年に一回で投与されてもよい。理想的には、ワクチンは動物に一回または多くても二回投与される。投与の頻度は、熟練者には直ちに明らかであり、そして多数の因子、例えば、それらに限定はされないが、対抗して免疫化される疾患の種類および重症度、動物の種類および年齢などに依存する。
【0117】
ウイルスワクチンの免疫原性、すなわち病原性ウイルス株を用いる致死的チャレンジからの動物の防御を与える動物内の抗ウイルス抗体およびCD8+T細胞応答の生成は、本明細書中の実験の部に記載のようにして決定される。要約すると、ワクチンを動物の一群
に投与する。選択された期間の後、抗体およびCD4+およびCD8+T細胞応答を群内の一部の動物について測定する。群内の他の動物は、病原性ウイルスを用いてチャレンジされそしてウイルス疾患の何れかの症状の進展を測定する。ウイルスの病原性株を用いてチャレンジされた後に動物へのワクチンにより生成された免疫応答および得られた防御的効果は、ワクチンを投与されなかった対照動物と、ワクチンを投与された動物で得られた結果とを比較して評価される。
【0118】
III.調剤
本明細書中に記載の方法に従って生産された生体作用活性薬剤、例えばワクチンは、本明細書中に記載の種々の方法で調剤できる。
【0119】
生体作用活性薬剤の基本的な調剤は、生体作用活性薬剤を製薬学的担体、例えば、それらに限定はされないが、生体作用活性薬剤を組み合わせることができそして組合せの後に動物へ生体作用活性薬剤を投与するために使用できる化学的組成物内で組み合わせることを含む。製薬学的組成物は、製薬学的組成物のあらゆるその他の成分と相容性であり、そして組成物が投与される動物に有害ではないあらゆる生理学的に許容できるエステルまたは塩を含んでもよい。本明細書中に記載の製薬学的組成物の調剤は、製薬学の技術分野で既知または今後開発されるいずれかの方法により調製されてもよい。一般に、かかる調製方法は有効成分を担体または1種もしくはそれ以上の補助成分内と会合させる工程、次いで、必要または望ましい場合には、所望の単回または複数回投与単位に製品を成形または包装する工程を含む。
【0120】
それらの調剤中で、他の物質は、調剤の成分と共重合体、ブレンドまたはアロイを形成するために使用でき、それにより調剤の物理的性質を改変しそしてさらに内包/放出プロフィールを調整することを含んでもよい。それらの調剤は、樹状細胞のような抗原提示細胞を誘引および保持するかまたはトール様受容体(TLR)アゴニストもしくはアンタゴニストのような抗原提示細胞の挙動を変更するケモカインのような物質を含んでもよい。
【0121】
本明細書中に提供される製薬学的組成物の記述は、ヒトへの指示投与に適する製薬学的組成物に主として向けられるけれども、かかる組成物はすべての種類の動物への投与に一般的に適することは熟練者により理解されるであろう。種々の動物への投与に適する組成物を与えるためにヒトへの投与に適する製薬学的組成物の変更はよく理解されており、そして通常の技術の獣医薬剤師は、必要なら単に通常の実験を用いてかかる変更を設計および実行できる。本発明の製薬学的組成物の投与が意図される対象は、それらに限定はされないが、ヒトおよびその他の霊長類、商業的関連がある哺乳動物、例えばウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、およびイヌおよびその他の脊椎動物、例えば鳥類を含む哺乳動物を含むと意図する。
【0122】
本発明の製薬学的組成物は、バルク、単一単位用量として、または複数の単一用量単位として、製造、包装、または販売されてもよい。本明細書中に使用される場合に、「単位用量」とは、生体作用活性薬剤の所定の量を含んでなる製薬学的組成物の分離された量である。生体作用活性薬剤の量は、一般に、動物に投与される生体作用活性薬剤の投与、またはかかる用量の便利な分割、例えばかかる用量の半分、三分の一に等しい。
【0123】
本明細書中に開示の本発明の製薬学的組成物として含まれる一部の調剤は、投与される生体作用活性薬剤が周囲の組織内に迅速に放出されるか、または時間をかけて緩徐に放出されるように設計される。さらに、本明細書中に開示される多数のものは、生体作用活性薬剤を一つの温度では保持し、一方別の温度では放出する追加の利点を有する。例えば、体温以下の温度にあるゲル内に含まれる生体作用活性薬剤はゲル内に保持されるが、しかし体温では周囲の組織内に放出される。さらに、本発明の生体作用活性薬剤は、複数投与
内で単一用量が投与されるように調剤できる。放出プロフィールおよび/または単回に対する複数回投与の戦略は、投与される生体作用活性薬剤に基づいて当該技術分野の熟練者により決定される。さらに、生体作用活性薬剤は、それらを含む材料を破裂させて放出されるか、および/または超音波、光もしくは熱の形状でエネルギーを与えるかまたはpHを変化させて条件を変化して放出を制御できる。
【0124】
以下に記載の調剤の前に、生体作用活性薬剤、生、弱毒化もしくは死ウイルスは、熟練したウイルス学者には周知でありそして例えばFields Virology(上記)に記載の凍結乾燥技術を用いて場合により冷凍乾燥または凍結乾燥されてもよい。
【0125】
動物およびヒトへの生ウイルスワクチンのような生体作用活性薬剤の投与は、注入過程の間のウイルスのエーロゾル化の可能性のために極近くの人員に健康脅威を与える可能性がある。この問題を解決するために、本発明は、有害生体作用活性薬剤、例えば生ウイルス接種の安全への関心に対処するために設計された新規の送達調剤およびデバイスを含む。さらに、かかる調剤および送達デバイスは、動物の組織内への生体作用活性薬剤の放出のための別の戦略を与える。例えば、徐放調剤を使用してもよく、または生体作用活性薬剤を組織内に直接放出する調剤を使用してもよい。
【0126】
生体作用活性薬剤、例えば生ウイルスの内包のための無毒性、天然または合成ポリマーを含んでなる内包ビヒクルが本明細書中に提供される。好ましくはそれらのポリマーは、ミクロカプセル、ナノカプセル、ナノチューブと組み合わせた生ウイルスのミクロカプセル化またはナノカプセル化に有効である。さらに好ましくは、それらのポリマーは、それらを生体作用活性薬剤と組み合わせると、生体作用活性薬剤のエーロゾル化が回避され、従って動物に投与する際の生ウイルスワクチンの安全性を上昇するという追加的な性質を有する。
【0127】
内包ビヒクルは、それらに限定はされないが、天然および合成ポリマー、例えばアルギネート、ヒアルロン酸、キサンタンガム、ジェランガム、コラーゲン、キトサン、ラミニン、エラスチン、マトリゲル(Matrigel)TM、ビトロゲン(Vitrogen)TM、ポリメチルメタクリレート、ポリ〔1−ビニル−2−ピロリドン−コ−(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)〕、ポリビニルアルコール、ポリ(ビニルアルコール)(PVA)、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシエチルアクリレート、ポリグリセリルアクリレート、アクリル酸コポリマー(例えばTRISACRYL);多糖類、例えばデキストランおよびその他の増粘性ポリマー、例えばカルボキシメチルセルロース;ポリエチレングリコール、ポリ酪酸およびそれらのコポリマーを含む。上記のマクロポリマーのオリゴマー組成物は、それらがエーロゾル形成を抑制するために適当な粘弾性性質を有する限り含まれる。
【0128】
さらに、生体作用活性薬剤自体も、ビヒクル内に内包される前に当該技術分野の熟練者には公知のミクロカプセルもしくはナノカプセルのいずれかの形状内に含まれることができる。かかるコンテナーは、それらに限定はされないが、リポソーム、ポリマー性ミクロカプセル、例えばポリ(ヒドロキシ酸)から成るもの、ヒドロゲルカプセルまたはミクロチューブおよびナノチューブを含む。あるいは、ゲル内に含まれる生体作用活性薬剤は、ミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に加えられることもできる。
【0129】
一つの態様では、内包ビヒクルを生ウイルス粒子と混合しそして針を通って注入されるために十分なほど小さい内包ウイルスのカプセルを生成させる。カプセルの大きさおよびカプセル内のウイルスの量は、使用するポリマー、ウイルス、および投与の経路に応じて最適化できる。
【0130】
別の態様では、ゲル状内包ビヒクルおよび生ウイルスを含んでなる円筒が、単一の投与針またはその他の注入デバイスの内部に生成される。この工程は本明細書中ではイン・シトゥ・ゲル化と称する。イン・シトゥ・ゲル化法は、内包ウイルスの非常に小さい円筒を皮下あるいは皮内に注入できる即時使用可能単位を提供する。この態様において、内包ビヒクルは、それが室温では固体の注入可能ゲルに止まるがしかし体温では内包されたウイルスを放出するように、またはあらかじめプログラムされた放出プロフィールでワクチン送達の選択された経路に基づいて所望のゲル強度を達成するように設計される。針の大きさ、最初のゲル濃度、円筒を外す手段、およびその中に含まれるウイルスの量は、使用されるポリマーの種類、ウイルス、および投与の経路に応じて最適化される。
【0131】
温度およびpHは、エーロゾル抑制の望ましい性質、適当な粘弾性および放出速度を達成するために変化できる別の可能な因子である。さらに、ゲルおよびミクロカプセル、ナノカプセルもしくはナノチューブを含んでなる内包ビヒクルは、超音波、光もしくは熱の形態のエネルギーの適用またはpH変化の生成により条件を変化させてコンテナーの破裂および/または放出制御により生体作用活性薬剤の放出を制御れ得る。
【0132】
生ウイルスを内包する際に使用される例示的なポリマーは、以下にさらに詳細に記載され、そして、限定はされないが、アルギネート、ヒアルロン酸、セルロース、デキストランおよびコラーゲンマトリックスを含む。
【0133】
他の用途のための内包ポリマーを生成するために設計される方法は、送達されるウイルスが生ウイルスである場合に、ウイルスは本質的に不活性化されずおよび/または内包状態の間に免疫原性を失ってはならないことを条件に、本発明に適合できる。同様な制限は、包膜化が所望の活性を保存しなければならない場合にも生体作用活性薬剤に適用される。
【0134】
「本質的に不活性化される」の用語では、ウイルスが少なくとも幾らかの感染性を保持し従って宿主細胞内で感染および複製可能であることを意味する。
【0135】
本明細書中に記載の内包ビヒクルは、生ウイルスワクチン戦略に有用であるだけでなく、対象者へのいずれかの生物学的の生体作用活性薬剤の安全な送達のためにも有用であることは熟練者には理解されるであろう。
【0136】
内包ビヒクルの限定ではない例をここに記載する。内包ビヒクルを生成するために有用な実験条件およびワクチンへのそれらの使用は、本明細書中の別の箇所の実験実施例中にさらに詳細に記載されている。本発明中で有用な内包ビヒクルは、投与の間にウイルスのエーロゾル化を防止することにより生体作用活性薬剤に安全の一定のレベルを与える。さらに、内包ビヒクルは、生体作用活性薬剤の即時または徐放調剤の生成を容易にする。さらに、ウイルスは、生体作用活性薬剤/内包ビヒクルの組合せが投与の前に送達デバイス内に前装入されるか否かにかかわらず、使用の前に内包ビヒクル内で安全に保管されてもよい。
【0137】
本発明は、本発明のウイルスワクチンのための内包ビヒクルとしてのゼラチンポリマーの使用を含む。本発明のワクチン内で有用なゼラチンの濃度は、水に対するゼラチンの約0.05%〜約25%(w/w)の範囲およびその間のすべての完全または部分整数であってもよい。種々の濃度でゼラチンがウイルスと混合されそして得られた溶液を送達デバイス、例えば、それらに限定はされないが、針または注射器内に装入される。装入の前、その間またはその後のゼラチンのゲル化は、当該技術分野では公知の方法に従って誘導される。本発明におけるゼラチン使用の利点は、架橋が架橋剤としての温度のみを介しておきるので、ゼラチンの架橋がどのような添加化学薬品がなくても起き得るということにある。
【0138】
ウイルス−ゼラチン混合物を動物に接種しそして免疫応答に対する効果が本明細書中の他の箇所にさらに詳細に記載されるようにして評価される。好ましくは、ゼラチンは凍結乾燥されそして滅菌するためにγ線照射またはその他の滅菌方法を受ける。使用されるゼラチンの濃度は、動物への投与の後のゲルからのウイルスの望ましい放出速度に依存して変化されそして本発明を理解した熟練者には明らかであろう。
【0139】
場合により、コポリマー、ポリマーブレンドまたはアロイ、例えば、それらに限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)が、ゼラチンと関連して使用されてもよい。PEGはゲルからの水の損失を低下させるように作用する。約500〜約50,000の範囲のPEGの大きさおよびその間のすべての完全または部分整数が本発明に有用であり、ここで好ましい分子量は、PEGの約100、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000および10,000である。PEGは、ゼラチン−ウイルス混合物中にPEGゼラチンのほぼ0.1〜20%w/wで含まれることができるが、この範囲は、ゼラチンの強度、ワクチン内に使用されるウイルス、送達経路などを含みそれらに限定はされない多数の因子に依存して変化してもよい。従って、PEG/ゼラチンの0.1〜20%w/wの範囲は、その間のあらゆる完全または部分整数を含むと解釈される。
【0140】
コラーゲンゲルを含んでなる内包ビヒクルも本発明に使用されている。コラーゲンゲルは、本明細書中の他の箇所に記載のようにして合成および特性決定されてもよい。ワクチン製造のためのゲル内で有用なコラーゲンの濃度は、約0.5〜50mg/ml(コラーゲン)溶液およびその間のすべての完全または部分整数で変化してもよい。コラーゲンの架橋は、熟練者には周知の技術を用いて達成されそして本明細書中の別の箇所にさらに詳細に記載されている。
【0141】
ウイルス−コラーゲン混合物は動物に接種されそして免疫応答に対する効果は、本明細書中の別の箇所にさらに詳細に記載されている方法により評価される。好ましくは、コラーゲンは凍結乾燥されそしてそれを滅菌するためにγ線照射されることができる。使用されるコラーゲンの濃度は、動物に投与の後のゲルからのウイルスの望ましい放出速度に依存して変化しそして本発明を熟知した熟練者には明らかである。
【0142】
場合により、コポリマー、ポリマーブレンドまたはアロイ、例えば、それらに限定はされないが、ポリエチレングリコール(PEG)は、コラーゲンと関連して使用されてもよい。約500〜約50,000の範囲のPEGの大きさおよびその間のすべての完全または部分整数のすべてでありが本発明に有用であり、ここで好ましい分子量は、PEGの約100、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000および10,000である。PEGは、コラーゲン−ウイルス混合物中にPEGコラーゲンのほぼ0.1〜20%w/wで含まれることができるが、この範囲は、コラーゲンの強度、ワクチン内に使用されたウイルス、送達経路などを含みそれらに限定はされない多数の因子に依存して変化してもよい。従って、PEG/コラーゲンの0.1〜20%w/wの範囲は、その間のあらゆる完全および部分整数を含むと解釈される。
【0143】
本発明の内包ビヒクルは、アルギネートを含んでもよい。種々の粘度のアルギネートがその分子量に従って入手できる。アルギネートの濃度および種類を変更して異なる粘度の溶液を生産することも可能である。種々の強度の架橋ゲルは、本明細書中の実験の部に記載のようにしてイオン架橋剤の濃度および種類を変化させて生産できる。アルギネートの種類の相違には、ポリマー骨格内のグルロン酸:マンヌロン酸比を変化させた組成を有す
るものも含む。本発明に使用するための最適なアルギネート組成を評価する方法は、本明細書中の実験実施例の部に記載されている。
【0144】
典型的には、アルギネート濃度はアルギネートの約0.1%〜約20%およびその間のすべての完全または部分整数の範囲である。好ましい濃度は、使用されるアルギネートの種類に依存して約0.5%、1%または1.5%もしくは2%または20%までのアルギネートを含む。アルギネートはキトサンのような他のポリマーと組み合わされて所望の性質を有するゲルを生成できる。それはポリL−リシンのようなポリカチオンとも相互作用ができる。PEG−アルギネートのような変性アルギネートも利用できる。
【0145】
本明細書中の他の箇所で考察するように、好ましいワクチンは、ビヒクルがミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に装入されたゲル、溶液または粉末を含んでなるものである。従って、本発明は、寸法が1から数百μm、好ましい大きさは10〜100μmの程度のミクロカプセルの合成および装入を含む。本発明は、大きさが1nm未満から1μmまで、好ましい大きさ100nm〜1μmを有するナノカプセルの合成および装入も含む。本発明は、ナノチューブが約1nm〜1000nm、好ましくは20〜500nmおよびその間のすべての完全または部分整数の直径の範囲を有するナノチューブの合成および装入も含む。200nmより大きい直径を有するナノチューブは、インフルエンザウイルスの大きさの粒子を保持および放出できる構造の生成を容易にする。本発明中で使用のために好ましいナノチューブは、マルチ壁ナノチューブ(MWNT)である。ナノチューブは、熟練者には利用可能でありそして例えばミラーら(Miller et al.,J.Am.Chem.Soc.123:12335−12345)に開示された技術を用いて合成できる。
【0146】
本発明のナノチューブ内に装入されたウイルスは、管の内腔から検知できるほどは拡散して出てはならない。好ましくは、ナノチューブは水より粘度が高い液体を用いて装入される。さらに、ナノチューブは、ゲル内で内包または粘性または半粘性溶液中および本明細書中の別の箇所に記載されたもの、例えばゼラチン、コラーゲン、アルギネートまたは体温で周囲の組織内にウイルスを放出できるその他のゲル内に含まれるウイルスを装入されてもよく、それにより本発明のワクチンに追加の安全性およびその他の利益を与える。ナノチューブは、粉末、例えば、それらに限定はされないが、冷凍乾燥された生体作用活性薬剤を用いて装入されてもよい。生体作用活性薬剤内包ゲルを内部に装入されたナノチューブは、本発明中に記載のいずれかのデバイスを用いてまたは送達の安全性を保持する望ましい作用を生成できるその他のデバイスを用いて安全に投与できる。あるいは、生体作用活性薬剤を装入されたナノチューブをゲル内に内包し、次いで以下にさらに詳細に記載する種々のデバイスを用いて送達できる。
【0147】
IV.デバイス
本発明は、生体作用活性薬剤の貯蔵および動物、好ましくは哺乳動物そしてさらに好ましくはヒトへの生体作用活性薬剤の送達のための種々のデバイスの使用を含む。かかるデバイスは、それらに限定はされないが、針、注射器、カテーテル、遺伝子ガン、ナノチューブ、貼付剤、粘膜アプリケーター等を含み、それらは所望の生体作用活性薬剤をあらかじめ、すなわち、動物に生体作用活性薬剤を投与する前に装入されるか、または動物に生体作用活性薬剤を投与する時点で生体作用活性薬剤ワクチンを装入される。
【0148】
本発明は、動物の組織を浸透しそして内部動物組織内に薬剤を送達する機能で作動する、現在知られているかまたは将来発見されるすべてのデバイスの使用を含む。従って、本発明は、針、注射器、針と注射器の組合せ、遺伝子ガンなどのすべての単独または複数を含む。
【0149】
それらデバイスそれぞれは、生体作用活性薬剤単独または本明細書中に記載のようにして内包された生体作用活性薬剤で装入できる。それらのデバイスの装入は、動物への薬剤の投与の直前に行うことができ、または別の時点で行うことができ次いでデバイスは発送および使用まで保管される。
【0150】
本明細書中の別の箇所で考察するように、好ましいワクチンはナノチューブ内に装入されたものである。従って、本発明は炭素ナノチューブの合成および装入を含み、ここでナノチューブは約50nm〜約250およびその間のすべての完全または部分整数の範囲の直径を有する。より大きい直径のナノチューブは、インフルエンザウイルスの大きさの粒子を保持および放出できる構造体の生成を容易にする。本発明に使用するために好ましいナノチューブは、マルチ壁ナノチューブ(MWNT)である。ナノチューブは、熟練者には利用できそして例えばミラーら(Miller et al.,2001,J.Amer.Chem.Soc.123:12335−12342)中に開示されている技術を用いて合成できる。本発明のナノチューブ内に装入されるウイルスは、管の内腔から検知されるほどは拡散して外に出てはならない。好ましくは、ナノチューブは水より粘度が高い液体を用いて装入される。さらに、ナノチューブは、ヒドロゲル内および本明細書中の別の箇所に記載されたもの、例えばゼラチン、コラーゲン、アルギネートまたは体温で周囲の組織内にウイルスを放出できるその他のヒドロゲル内に内包されているウイルスで装入されてもよく、それにより本発明のワクチンに追加の安全性およびその他の利益を与える。
【0151】
V.方法
本発明は、脊椎動物、好ましくはヒト内でCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を誘発する方法をさらに含む。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が該脊椎動物内に誘発される。脊椎動物に投与されるウイルスは、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、投与の好ましい経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物中で、またはいずれかの内包調剤中でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。CD8+T細胞および/または抗体応答が脊椎動物内で誘発されているかどうかを決定するために、本明細書中の実験実施例中に記載の手順に従う。
【0152】
またウイルスによる感染に対して脊椎動物を防御する方法も本発明に含まれる。その方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が脊椎動物内に誘発されそれにより脊椎動物を感染に対して防御する。脊椎動物に投与されるウイルスは、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、好ましい投与の経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物中で、またはいずれかの内包調剤中でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。その後のウイルス感染に対する脊椎動物の防御は、本明細書中の別の箇所に記載されている。
【0153】
脊椎動物内の感染を防御する方法もさらに含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が脊椎動物内に誘発されそれにより脊椎動物内のウイルス感染を防御する。脊椎動物に投与されるウイルス
は、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、好ましい投与の経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物中で、またはいずれかの内包調剤中でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。
【0154】
さらに、脊椎動物内のウイルス感染を処置する方法も含まれる。該方法は、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを脊椎動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答が脊椎動物内に誘発されそれにより脊椎動物を感染に対して処置する。脊椎動物に投与されるウイルスは、呼吸系ウイルスでありそして好ましくはA型インフルエンザウイルスである。投与の経路はあらゆる経路であり、そしてウイルスがA型インフルエンザウイルスの場合には、好ましい投与の経路は皮下または皮内である。ウイルスは、本明細書中に定義された用語である製薬学的に許容できる組成物内で、またはいずれかの内包調剤内でそして本明細書中の別の箇所に記載のいずれかのデバイスを用いて投与されてもよい。この本発明の方法は、汎流行、特にはヒトおけるイベントで特に有用である。ヒトを処置しそしてさらに重い病気から防御するために、ワクチンは症状の発生の時点でヒトに投与できる。
【0155】
本発明は生体作用活性薬剤を動物に投与する場合に安全性を上昇する方法も含む。該方法は、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を動物に投与することを含んでなり、ここで生体作用活性薬剤は、動物内に疾患を起こさない経路による生体作用活性薬剤の投与に続いて動物内に免疫防御的CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらにここで生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包されている。
【0156】
生体作用活性薬剤を動物に投与する場合に安全性を上昇する方法も含まれ、ここで該方法は生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物を動物に投与することを含んでなる。生体作用活性薬剤は、動物内に疾患を起こさない経路による生体作用活性薬剤の投与の後に動物内に免疫防御的CD8+T応答を誘導する。
【0157】
それらの方法のそれぞれにおいて、生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包されそして生体作用活性薬剤は微生物およびタンパク質からなる群から選択される。
【0158】
生体作用活性薬剤を動物に投与する場合の安全性を上昇させる方法も含まれる。該方法は、動物内でリスクを低減させながら所望の応答を誘導する生体作用活性薬剤の量を含んでなる組成物を動物に投与することを含んでなる。生体作用活性薬剤の投与経路は、動物内に疾患を起こさない経路であって、さらに生体作用活性薬剤は内包ビヒクル内に内包されてそれにより生体作用活性薬剤を投与した場合の安全性を上昇させる。
【0159】
本発明の各方法は、あらゆる動物、好ましくは非常に老齢、非常に若いおよびその他の免疫無防備状態のヒト、および健康なヒトも含むヒトに対して行うことができる。
【0160】
VI.その他の組成物
本発明は、生体作用活性薬剤の生物学的な有効量を含んでなる組成物をさらに含み、ここで生体作用活性薬剤は動物内に所望の応答を誘導し、一方では動物内に疾患を起こさない経路による動物への生体作用活性薬剤の投与の後に動物内でリスクを低減する。好ましくは、該経路は天然ではない経路でありそしてさらに好ましくは、該経路は皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口からなる群から選択される。
【0161】
組成物内の生体作用活性薬剤は、内包ビヒクル内に内包されてもよくそして内包ビヒク
ル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質を会合させてもよい。内包ビヒクルは、ゲル、液体または粉末からなる群から選択される少なくとも一種のメンバーであり、そしてミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に装入されてもよい。内包ビヒクルはポリマーを含んでなってもよく、そして好ましくは、ポリマーは動物に投与された場合に毒性ではない。ポリマーは、好ましくは生体作用活性薬剤とで会合されそれにより周囲の環境への生体作用活性薬剤の放出を遅延させる。さらに好ましくは、ポリマーはゲルである。生体作用活性薬剤は、好ましくは微生物、およびタンパク質からなる群から選択される。
【0162】
VII.キット
本発明は本発明の生体作用活性薬剤およびワクチンを含んでなる種々のキットを含む。本発明のキット中には、本発明の方法におけるワクチンの使用を記載した指示材料も含まれる。例示のキットを以下に記載するが、その他の有用なキットの内容は、本発明を参照して熟練者には明らかであろう。いずれのキットも本発明内に含まれる。
【0163】
本発明は、脊椎動物内にCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を誘発;ウイルスによる感染に対して脊椎動物を防御するため;脊椎動物内のウイルス感染を防御するため;および脊椎動物内のウイルス感染を処置するための方法中に使用されるキットを含む。
【0164】
本発明のキットは、動物に直ちに投与できる生体作用活性薬剤をあらかじめ添加したデバイスおよびその使用のための指示材料を含んでなる。あるいは、キットは、デバイス、冷凍乾燥されてもされてなくてもよい生体作用活性薬剤の製剤、生体作用活性薬剤の懸濁のための溶液およびデバイス、生体作用活性薬剤および溶液の組合せのための指示材料、およびさらに脊椎動物、好ましくはヒトへの上記の投与に関する指示を含む。生体作用活性薬剤は、場合により内包ビヒクル製剤を含む製薬学的に許容できる担体内に懸濁されてもよい。あらかじめ添加されるデバイスは、針、および注射器、針と注射器の組合せ、またはナノチューブ、または上記のいずれかの組合せであってもよい。
【0165】
実施例
本発明は、下記の実験実施例を参照してさらに詳細に記述される。それらの実施例は、説明のためのみに提示され、そして特に断らない限り限定であるとは考えられない。従って、本発明は下記の実施例によりいかなる様式でも限定されると解釈されないが、しかしさらに正確には、本明細書中に提供される教示の結果として明らかになるすべての変化を包含すると解釈すべきである。
【0166】
本発明に有用な実験方法を先ず以下に記載する。
【0167】
動物、抗体およびインフルエンザウイルス感染
動物研究は、IACUCの承認の下で行った。特定の病原を持たない8〜12週齢C57BL/6J(B6)野生型マウスは、Jackson Laboratories(Cincinnati.OH)から入手できる。C57Bl/10SgSnAiRag−/−γc−/−(以下ではRag−/−γc−/−と記載する)およびC57Bl/10雌マウスはTaconic(Germantown,NY)から入手できる。すべてのマウスは、Drexel University College of Medicine,Drexel UniversityにあるAAALAC承認隔離施設内に飼育された。一般に、9匹の動物が一つの群に含まれた。インフルエンザA/プエルトリコ/8/34(PR8)ウイルス株(H1N1)およびA/Aichi/2/68およびA/プエルトリコ/8/34(PR8)ウイルス株(H3N2)のX31組換え株を実験に使用した。それらのウイルス株は、異なる表面赤血球凝集素(H)およびノイラミニダーゼ(N)タンパク質を発現し従ってそれらのウイルスに対する抗体応答は、互いに交差反応せず、それは動物を再チャレンジする実験では重要なことである。それらのウイルスの6個の内部遺伝子は、異なる株間で類似しており、従って再チャレンジ実験においてCTL応答の評価を可能とする。一般に、マウスは、ウイルス株X31の12赤血球凝集素単位(HAU)を用いて鼻内に感染された。二次応答の場合には、マウスはPR8株(1000HAU)を用いてIPに注入されそしてX31株の12HAUを用いて鼻内に再チャレンジされた。安全性および再チャレンジ研究は、マウスに毒性が高いA/ウマ/ロンドン/1416/73ウイルス(H7N7)を用いて行った。肺臓および脾臓単核細胞の調製、NP366−特異性CD8+T細胞の発現型分析、細胞質内サイトカイン染色、フローサイトメトリー、細胞毒性アッセイ、抗インフルエンザ抗体力価および肺臓ウイルス力価アッセイは、以前の記載(Halstead et al.,2002,Nat.Immunol.3:536−541)のようにして行った。
【0168】
肺臓、脾臓単核細胞の調製
肺臓は、1mg/mlコラゲナーゼA(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)および40U/ml DNAse(Sigma,St Louis,Mo)内で90分間、37℃で消化し、そして得られた組織を100μmナイロンメッシュを通し次いで洗浄した。脾臓は、Corningware Glass組織破壊器(Fisher Scientific,Pittsburgh,PA)を用いて単一細胞懸濁液にホモジナイズした。次いで、肺臓および脾臓の双方から得たリンパ球を、Hystopaque 1083(Sigma,St Louis,MO)を用いて密度勾配遠心分離により分離した。
【0169】
NP366−特異性CD8+T細胞の表現型分析および測定
細胞はAPC標識したNP366四量体を用いて染色した。細胞は、表面マーカー、すなわち抗CD3−PE(Becton−Dickinson,San Jose,CA)、抗−CD8−FITC(eBioscience,San Diego,CA)および抗−CD4−Cychrom(Cy5PE)(eBioscience)に対するFITC−、CY5PE−およびPE−共役抗体の組合せを用いて、30分間、氷上で同時染色した。洗浄およびパラホルムアルデヒド中に固定の後、2x105個の細胞を、FACS Calibur(R)(BD Bioscience)およびFlowJoソフトウエア(Treestar,San Carlos,CA)を用いてフローサイトメトリーにより分析した。一部の場合には、NP366特異性CD8+T細胞の10回までの色分析を3−レーザーFACSAria(R)高速細胞ソーター(BD Bioscience)を用いて行うことができる。
【0170】
ビオチニル化H−2Db/β2m/ペプチド複合体
ビオチニル化H−2Db/β2m/ペプチド複合体は、記載(Altman et al.,1996,Science 274:94−96)のようにして製造した。H−2Db制限A型インフルエンザ核タンパク質NP(366−374)免疫優性エピトープ(ASNENMETM(配列番号1))(Townsend et al.,1986,Cell 44:959−968)をH−2Db内に複合化して、本研究に使用するNP366四量体を製造した。
【0171】
細胞毒性アッセイ
EL−4細胞(ATCC)は、A型インフルエンザペプチドNPP366−374、NS2114−121、M1128−135およびPA224−233の1μg/mlを用いて37℃で6時間インキュベーションしてペプチドで負荷された。インキュベーションの後、細胞を洗浄しそしてNa251CrO4(NEN,Boston,MA)を用いて75分間、37℃で標識し次いで再度洗浄した。次いでそれらのEL細胞を104(100μl)/ウエルで96ウエル丸底マイクロタイタープレート(Falcon,Becton−DickinsonLabware,Franklin Lakes,NJ)に加えた。次いで、エフェクターおよび標的細胞を100:1、50:1、25:1および10:1の比率でプレートし、そして6時間、37℃でインキュベーションした。次いでプレートを遠心分離しそして上清の30μlを96ウエルLumaPlates(Packard,Meriden,CT)に移しそしてTopCountマイクロプレート・シンチレーション計数器(Packard)内で計数した。比細胞毒性は、次式を用いて決定した。
【0172】
【数1】
【0173】
最大51Cr放出は、5%Triton X−100(Sigma,St Louis,MO)を用いて標的細胞を溶解して決定した。自発51Cr放出は、媒体のみを用いてインキュベーションした標的細胞を用いて決定した。
【0174】
細胞質内サイトカイン染色
細胞質内サイトカイン染色のために、106/ml/ウエルの肺リンパ球、脾臓単核細胞、または精製したCD8+T細胞を、10μg/ml NPP366−374、NS2114−121、M1128−135およびPA224−233ペプチド、抗CD3抗体またはPMA(25mg/ml)+イオノマイシン(1μg/ml)を用いて2.5μMモネンシンの存在下で5時間刺激し、次いで4%パラホルムアルデヒドを用いて10分間、4℃で固定した。細胞を2回洗浄しそして0.1%サポニンを用いて4℃で10分間、透過性を上げた。次いで細胞を洗浄しそして抗IFNγ抗体(eBioscience)を用いて4℃で30分間インキュベーションした。細胞を洗浄しそして1%パラホルムアルデヒド中に固定し次いで2x105イベントをFACS Calibur(R)(BD Bioscience)上に捕集しそしてFlowJoソフトウエアを用いて解析した。
【0175】
インフルエンザウイルス力価アッセイ
肺臓をホモジナイズしそして1500xgで15分間のホモジネートの遠心分離の後にウイルス懸濁液を捕集しそして次の分析まで−80℃で冷凍した。ウイルス上清の希釈物を3x104Madin Derbyイヌ腎臓(MDCK)細胞/ウエル(96ウエルU底プレート)に加えた。MDCKの24時間、37℃での感染の後、媒体を各ウエルから吸引し(MDCKは細胞に付着する)そして血清を含まない媒体を加えた。ウイルス力価は、4日後に、既知ウイルス濃度の標準曲線およびTCIDのReed−Munich計算を用いて、上清がチキン赤血球を凝集しなくなる希釈度を決定して決定した。ウイルス力価を測定するために使用できる第二の方法は、以前に記載(Ward et al.,2004,J.Clin.Virol.29:179−188)のようにして実時間PCRを用いる。
【0176】
ロバスト(Robust)免疫応答の同定
マウスにワクチンを投与した際のロバスト免疫応答を同定するために使用した特定の基準は:インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの際に、再チャレンジの7日目の肺臓内で全CD8+T細胞に対する20%を越えるNP366特異性CD8+T細胞または1x106を越えるNP366特異性CD8+T細胞および/または血清中和抗体の力価(赤血球凝集阻害アッセイにおいて)の1/500以上の誘導が観察されるはずである。それまで免疫化されていないナイーブなマウスは、一般に、感染の7日目において肺臓内で3%未満のNP366特異性CD8+T細胞および105未満のNP366特異性
CD8+T細胞を示す。
【0177】
統計解析
データは、JMP統計ガイド(SAS Institute Inc.,Cary,NC)を用いてMann−Whitney U検定、二標本データに対するWilcoxonの符号順位検定、Student検定およびSpearmanのロー相関を用いて解析した。
【0178】
安全性
いずれのワクチンの安全性も、野生型およびRAG−/−γc−/−動物について試験できる。安全性は、動物の一般外観、体重減少の試験により、および肺臓およびその他の組織の病状の評価により評価される。肺臓、脾臓、肝臓おび脳から得られるウイルス負荷は、実時間PCRを用いて評価される。それらの研究は、PR8およびA/ウマ/ロンドン/1416/73 H7N7ウイルス(ロンドン株)を用いて、生ウイルスのSQおよびID送達の後に行える。各群には9匹の動物を含むことができる。鼻内に投与されると全身性および脳感染を起こす高度に病原性のA/ウマ/ロンドン/1416/73ウイルス(Kawaoka,1991,J.Virol.65:3891−3894;Christensen et al.,2000,J.Virol.74:11690−11696)の使用は、SQおよびIDで投与されたウイルスの評価のための非常に厳しい試験を提供する。動物は、30日間、毎日観察および計量される。動物は、ウイルスIDまたはSQの1、0.1、0.01および0.001HAUで免疫化されそして30日間追跡される。動物は臨床的徴候および体重減少を評価される。動物は、目視により一日2回監視される。動物は毎日計量される。動物は、動物が下記の基準に適合すると除外される:1)外部刺激に応答しない、2)1時間を越える疲弊、3)苦しい息づかい、4)永続するふるえ、5)動物が継続して背を曲げる。すべての観察を記録する。除外した動物は、生存分析では非生存として数える。死亡はそれらの研究の終点ではない。動物は30日間追跡される。このような実験の実験誤差の範囲内で動物内の5%を越える体重減少を誘導せずそして動物の90%生存をもたらした場合に、ワクチンは安全と考えられる。
【0179】
ウイルス感染および投与経路
生ウイルスワクチン接種を研究するために、投与経路が抗ウイルスCD8+T細胞応答に有する効果を研究した。8週齢マウスをA型インフルエンザウイルスのPR8株を用いて腹腔内(IP)、筋肉内(IM)、皮内(ID)、または皮下(SQ)で免疫化しそしてインフルエンザウイルスのX31株を用いて30〜45日後に鼻内再チャレンジした。二次応答のピーク(7日目)でマウスを屠殺しそしてインフルエンザウイルス核タンパク質(NP366)ウイルス特異性CD8+T細胞応答を試験した。図1は、IDおよびSQ経路によるウイルスの投与が、肺臓内においてIMおよびIP経路よるウイルス投与によるものよりも強いCD8+T細胞応答をもたらしたことを描いている。図1に示した数字は平均±標準偏差であり、そしてIDおよびSQ経路に対してはそれぞれ5.04±1.17x106および5.71±0.79x106ウイルス特異性8+T細胞であり、これはIPおよびIM経路に対するそれぞれ3.65±1.21x106および3.41±0.18x106ウイルス特異性8+T細胞と比較される。それらの結果は、生ウイルスを用いる免疫化の経路が、全体的抗ウイルスCD8+T細胞応答の範囲に影響し、そしてID経路が最も強い応答を誘導することを示す。最も重要なことは、マウスに対する生インフルエンザウイルスの投与のIDまたはSQ経路の使用が動物内で臨床的疾患をもたらさないと観察されたことである。次いで、用量応答研究が、免疫応答において観察された差異がウイルスのさらにかなり低い用量でも明瞭かどうかを決定するために行われた。マウスは、ウイルスの順次低下する濃度を用いてIPまたはID注入により生インフルエンザウイルスを投与された。次いで、インフルエンザウイルスによる二次チャレンジに対するウイルス特異性応答を試験した。IPおよびID初回抗原刺激マウスの肺臓内の肺ウイルス特異性CD8+T細胞(NPP+CD8+)を描いた代表的なFACSプロットを図2に示す。マウスにIPで投与された生インフルエンザウイルスの減少する用量は、MHCクラスI四量体により測定して肺臓内でウイルス特異性CD8+T細胞の減少する数(高用量で3.65±1.21x106細胞そして低用量では0.35±0.11x106細胞のみ)およびNP366ペプチド特異性IFNγ産生CD8+T細胞(高用量で2.81±0.1x106そして低用量では0.18±0.05x106)をもたらした。IDで投与された生インフルエンザウイルスの減少する用量は、抗ウイルスCD8+T細胞応答の上昇をもたらした(高用量で5.05±1.18x106、これに対して低用量では7.2±0.46x106のウイルス特異性CD8+T細胞および高用量で4.06±0.79x106、これに対して低用量では4.83±0.24x106のIFNγ産生CD8+T細胞)。従って、生インフルエンザウイルスIPの低用量の投与は、弱いウイルス特異性CD8+T細胞応答を誘導し、一方同じ用量のIDの投与は、非常に強いウイルス特異性CD8+T細胞応答を誘発した。それらの結果は、ウイルス特異性CD8+T細胞応答を誘導する生インフルエンザウイルスのIP投与と比較して、ID投与の上昇する効率を証明しそしてそれらは、IDまたはSQ経路が使用されると、生ウイルスの非常に低い投与が非常に強い応答を誘発できることを示す。
【0180】
IDおよびSQ免疫化をさらに比較するために、8週齢C57B1/6Jマウスを、生A型インフルエンザウイルス株PR8(H1N1)の低用量(1HAU)を用いて腹腔内(IP)、皮下(SQ)、または皮内(ID)で免疫化し、45日後にインフルエンザウイルスヘテロサブタイプX31(H3N2)を用いて鼻内で再チャレンジした。再チャレンジの後、二次免疫応答のピークでマウスを屠殺した(再チャレンジの7日後)。NPから誘導した免疫優性エピトープに相当するペプチド(NP366)のアミノ酸366−374(ASNENMETM)(配列番号1))を添加したMHCクラスI四量体を用いてNP366特異性CD8+T細胞応答を評価した(Flynn et al.,1998,Immunity 8:683−691)。回収されたNP特異性CD8+T細胞の百分率および全数に基づくと、IPで免疫化されたマウスと比較して、投与のIDおよびSQ経路は、再チャレンジされたマウスの肺臓内により強い免疫応答をもたらした(図3A)。NP366特異性CD8+T細胞は、それぞれ3.76±3.7x106および5.8±4.3x106細胞の濃度でSQ(n+6)またはID(n+6)免疫化されたマウスの肺臓から回収された。対照的に、IP免疫化マウス(n=5)からは1.9±1.6x106のNP特異性CD8+T細胞のみが回収された(図3B)。それらの結果は、生ウイルスの低用量が、特にIDまたはSQで送達された場合には強いCD8T細胞応答を誘発することを示す。ヒト内のSQ免疫化は実行容易なことを留意して、この送達経路を効力および安全性に対するワクチンの最初の試験に使用すると決定した。
【0181】
生ウイルスのSQ投与が宿主動物内に疾患を誘導するかどうかを試験するために、野生型C57B1/6JマウスおよびT、BおよびNK細胞を欠失するマウス(株C57Bl/10SgSnAiRag−/−γc−/−、以後はRag−/−γc−/−と記す)を免疫化した。後者のマウスはウイルスに対するNK媒介または適合免疫応答を装備(mount)できなかった。1HAUの生PR8ウイルスの皮下投与の後、30日間にわたって、Rag−/−γc−/−もC57B1/6Jマウスも感染のいかなる徴候も示さずそしてさらにマウスのどちらの組も活性ウイルス感染の指標である体重減少を示さなかった。100HAUの生PR8ウイルスの用量がRag−/−γc−/−またはC57B1/6Jマウスに疾患を誘導できるかどうかを試験するために、5匹のRag−/−γc−/−およびC57B1/6Jマウスを100HAUのPR8インフルエンザウイルスを用いて免疫化しそしてそれらの体重を連続17日間記録した。日常的な免疫化に提示されるものよりも100倍高いウイルス用量のSQ注入は安全でもあり、そしてRag−/−γc−/−またはC57B1/6Jマウス中に体重減少を誘導しなかった(図4)。しかし、1HAU PR8インフルエンザウイルスを用いるC57B1/6Jマウスの鼻内(IN)感染は感染を誘導しそして感染後6日目に始まり10日目にピークに達したC57B1/6Jマウス中の進行性体重減少(n=5)を予想通りに誘導した。鼻内感染の11日後から始まって、C57B1/6Jマウスは回復を始めた(図4)。
【0182】
これまでのデータは、哺乳動物への生ウイルスの投与のためのSQ経路が、野生型または免疫欠損マウス内に活性ウイルス感染または全身性疾患を誘導しないことを示す。従って、この投与経路は安全であると考えられる。理論に拘束されることは望まないが、それらの発見は、インフルエンザウイルスを用いる全身感染の間の制御点は呼吸器感染に続くウイルス血症のレベルであると示差する研究(Lu et al.,J.Virol.73:5903−5911)を支持する。それらのデータは、別の天然ではない経路を介する生ウイルスの投与が、直接静脈内経路により投与されないかぎり明白な疾患をもたらさないという仮説(Swayne and Slemons,1994,Vet.Pathol.,31:237−245)も支持する。
【0183】
追加の安全性データ
生ウイルスワクチン戦略の実行性および効力を支持する追加のデータをここに提出する。生インフルエンザウイルス戦略は、インフルエンザウイルスの高度に病原性株(ロンドン株)を用いて試験された。得られたデータは哺乳動物へのウイルスの皮下送達が安全であることを確証する。さらに、該データは、アルギネートゲル内に捕捉された生インフルエンザウイルスが、被接種哺乳動物内で強力なインフルエンザ特異性CD8+T細胞応答を誘発することを確証する。重要なことには、該データは、哺乳動物への生ウイルス皮下の投与が抗体応答を誘発することを確証し、ここで中和抗体力価が、ウイルスの単回用量の投与の後に哺乳動物内に誘導されることをさらに確証する。加えて、本明細書中に提出するデータは、50nmサイズの量子ドット(Quantum dot,QDots)を含むアルギネートゲルをナノチューブに装入することが可能であることを確証し、従って、ナノチューブ内へのウイルスとアルギネートの装入が可能なことを示す。さらに、本明細書中の別の箇所に記載の条件下での(超)音波処理がナノチューブをより小さく、さらに好ましい破片に破断することが本明細書中で確証される。
【0184】
RAG−/−γc−/−(T細胞、B細胞もしくはNK細胞も持たないマウス)および野生型マウス内への皮下での生インフルエンザウイルスの送達の安全性に関する追加のデータを以下に記載する。図5で、野生型およびRAG−/−γc−/−動物(すべての群でn=5)をPR8インフルエンザウイルスの新しくそしてさらに強力なバッチまたは高度に病原性のA/ウマ/ロンドン/1416/73 H7N7ウイルス(ロンドン株)を用いて感染させた。PR8またはロンドン株の0.1HAUで鼻内感染された野生型動物は、インフルエンザウイルス感染の症状を示しそしてそれらの体重の30%以下を失った。この時点で、瀕死となった一部の動物を安楽死させた。対照的に、RAG−/−γc−/−マウス(図5)および野生型動物を10HAUの生ウイルス(すなわち鼻内感染に使用した用量の100倍)を用いて皮下接種した場合には、それらは体重が減少せずそしてそれらを追跡したその後30日間以上も病気の徴候を示さなかった。それらのデータは、ウイルスの投与の経路が接種手順の安全性のために重要であることを確証する。
【0185】
ゼラチンポリマーゲル内で送達されたワクチンの効力および安全性
ポリマーゲル内の生ウイルスがその免疫原性を保持できるという基本前提を試験するために、ゼラチンの3%(w/w)溶液をPBS中の生PR8インフルエンザ(10HAU/μl)ウイルスと30℃で混合しそして1ml注射器内に装入した。ゼラチン/ウイルス比は、各ゼラチンゲルの100μlが約10HAUの生ウイルスを含むように決定された。ゼラチンのゲル化は、注射器を氷上で30分間インキュベーションして誘導した。C57B1/6マウスを生ウイルスと混合した100μlゼラチン(n=2)または100μlゼラチンのみ(n=2)を用いて皮下で免疫化した。対照として、C57B1/6マウスの一群(n=2)をPR8生ウイルスの10HAUを用いて皮下で免疫化した。免疫化の30日後に、ゼラチン中の生ウイルスを受けたマウスは鼻内に投与される生インフルエンザウイルス株X31を用いて再チャレンジされた。二次免疫応答のピーク(再チャレンジの7日後)において、再チャレンジされたマウスの肺臓(図6A)および脾臓(図6B)から単離されたNP特異性CD8+T細胞の頻度および全数を評価した。ゼラチンゲル内に含まれた(3%w/w)10HAUの生ウイルスまたは10HAUの生ウイルスのみを用いて皮下免疫化されたマウスの肺臓内に、存在するリンパ球の全数の約30〜40%に相当するCD8+T細胞の大量の蓄積があった(CD8+ゲートの外に書かれた百分率、図6A)。さらにウイルスのみまたはゼラチンゲル内に組み込まれたウイルスを受けたマウスの肺臓から単離されたCD8+T細胞の約半分は、免疫優性NP366ウイルスエピトープに対して特異性であった(NP366特異性CD8+T細胞ゲートの内に書かれた百分率、図6A)。対照的に、ゼラチンのみを受けたマウス中では、肺臓に浸透したCD8+T細胞の数は、存在する全リンパ球の約17%のみに相当しそして存在するNP366特異性CD8+T細胞の百分率は2%のみであり、それは7日目のウイルスへの一次免疫応答と一致する(図6A)。ゼラチン内に含有される生ウイルスを用いて免疫化されたマウスの脾臓を検査すると、CD8+Tの約10%がNP366特異性CD8+T細胞であった(図6B)。対照的に、ウイルスのみで免疫化されたマウスでは、全CD8+T細胞の約22%がNP366特異性であった。ゼラチンを用いて免疫化されたマウスの脾臓内のNP366特異性CD8+T細胞の百分率は、1%以下であった(図6B)。
【0186】
実験の次の組は、ゼラチンゲル内に組み込まれた生ウイルスを用いる免疫化により誘導されたNP366特異性CD8+T細胞が機能性でありそしてペプチド抗原を用いて刺激された場合にはIFNγを産生したかどうかを決定するために行われた。非操作またはウイルス単独、ゼラチン内に組み込まれたウイルス、またはゼラチン単独を用いる免疫化のいずれかであるマウスからの全脾臓をNP366−374ペプチドおよびブレフェルジン(brefeldin)Aの存在下で6時間、カルチャー内で刺激した。IFNγの産生を、ペプチドを用いる6時間の刺激の間に細胞内部に蓄積されたIFNγに結合する蛍光共役抗IFNγ抗体を用いるフローサイトメトリーにより評価した。NP366−374ペプチドでイン・ビトロ刺激をすると、マウスの脾臓内のCD8+T細胞の約8%がゼラチンゲル内に組み込まれたウイルスで免疫化され、そしてマウスの脾臓内のCD8+Tの約17%が生ウイルス単独で免疫化され、IFNγを産生した(図6C)。対照的に、ゼラチンゲルのみで免疫化されたマウス中ならびに非操作マウス中では、CD8+脾臓細胞の1%以下がIFNγを産生した。ペプチド刺激が存在しないと、IFNγを産生するCD8+T細胞の百分率はすべての試料の1%未満であった。従って、ゼラチンポリマーは、身体内のウイルスの放出を容易にしそしてウイルスの免疫原性を改変しないが、それは、免疫化のこのモードを用いて処理されたマウスは、生ウイルス単独で免疫化されたマウスに類似する大きさのロバスト免疫応答を装備したからである。
【0187】
ゼラチンポリマー内で送達された生ウイルスの安全性を試験するために、Rag−/−γc−/−マウスを、10HAUの生ウイルスを含む100μlゼラチンまたはゼラチンのみを用いてSQ免疫化した。すべてのRag−/−γc−/−マウスは30日間を健康で残りそして体重が減少せず、従って、ゼラチンゲルは毒性ではなくそして送達のSQ経路は活性ウイルス感染を起こさないことを確認する。
【0188】
コラーゲンゲル
ゲル内包ウイルス粒子の送達に関する予備的な研究は、ウイルスおよび担体材料を含むゼラチンポリマーの一団をマウスへ皮下送達して行われた。コラーゲンは、他の状況で生体高分子として良く確立されたその用途のために、担体材料として開発された。捕捉されたウイルス粒子の放出のためのコラーゲンの分解速度は、コラーゲンの架橋度の制御によりおよび架橋剤の選択により制御できる(van Wachem et al.,199
1,Biomaterials 12:215−223)。しかし、架橋剤の細胞毒性(van Luyn et al.,1992,J.Biomed.Materials Res.26:1091−11;van Luyn et al.,1992,Biomaterials 13:1017−1024)および石灰沈着に対する悪化効果(Golomb et al.,1987,Am.J.Pathol.127:122−130)は、一部の架橋剤の有用性を低下させる。さらに、架橋が架橋剤とコラーゲンフィブリルのアミノ酸部分との間に共有結合形成を含むので、ウイルス粒子の表面タンパク質分子はウイルスの不活性化をもたらす同じ過程に関与すると予想されるであろう。それらの潜在的問題にもかかわらず、コラーゲンゲルのマトリックス内に懸濁されたウイルス粒子は、DNAトランスフェクションおよびタンパク質発現および送達の効率を改善することが示されている(Schek et al.,2004,Molecular Therapy 9:130−138;Gu et al.,2004,Molecular Therapy 9:699−711)。
【0189】
SQまたはID経路を用いて哺乳動物の身体内に生ウイルスを送達するために、コラーゲンゲルは、ステンレス針(30G1/2)内部で合成される。原料コラーゲンは、中性pHに達するために10X PBS緩衝液および1N 水酸化ナトリウムと混合された後に約4℃で液体のままの酸性溶液である。この溶液を注射器を用いて針に移し、そして装入された針を37℃で約30分間インキュベーションすると、コラーゲンは繊維状ゲルとなる。ゲルを調製しそしてそれを注射器に装入する2種の方法が研究された。一つは、ミクロ遠心分離管内でのゲルの調製を含み(バルクキャスティング)、そして他の方法では、中和されたコラーゲン溶液を針内に取り込み次いでインキュベーションすると、これによりゲルは針の内側にキャストされる(マイクロキャスティング)。針の先端をポリジメチルシロキサン(PDMS)の厚い板を用いて覆い、それはインキュベーション期間に針からの材料の漏洩を防止する。6mg/mlおよび10mg/mlコラーゲンのマイクロキャスティングにより調製されたヒドロゲルの電子顕微鏡写真をPhillips XL30低真空走査電子顕微鏡(ESEM)を用いて撮影し、その結果を図7aおよび7bにそれぞれ示す。走査電子顕微鏡(SEM)試料調製のために、ゲルを針を通して押し出しそして白金を用いて被覆した後に冷凍乾燥した。コラーゲン濃度を6mg/mlに維持した場合に、細孔の大きさは500nm〜2μmの程度であることが見いだされた。出発物質として10mg/mlのコラーゲンを使用した場合には、出発物質として6mg/mlのコラーゲンを使用した場合の充填密度と比較してフィブリルの充填密度に著しい増加があった(図7a)。10mg/mlのコラーゲンで形成されたゲルの細孔の大きさは約200nm未満ないしそれに等しかった。それらの結果は、ウイルス粒子の放出速度が出発コラーゲン材料の性質に依存して制御できることを証明する。
【0190】
低真空走査電子顕微鏡(ESEM)が、ナノスケールで流体力学過程を研究するために使用できることが示されている(Babu et al.,2005,Microfluidics and Nanofluidics 1:284−288;Rossi et al.,2004,Nano Letters 4:989−993)。水の存在下での生物物質を撮影する能力はナノスケールでの構造の検査を容易とし、一方試料をその自然の状態に維持しそして破壊的な試料調製時間を短縮する。従来のモードおよび湿潤モード(ESEM)において走査電子顕微鏡により検査されるゲルの形態の相違を解明するために、10mg/mlのコラーゲン初期溶液を用いてマイクロキャスティングによりゲルを調製した。両システム中で顕微鏡写真が得られた。顕微鏡写真の比較から、二つの方法で評価されたゲル形態が、試料調製および検査モードが異なるにもかかわらず同様であることを明らかにした(図7bおよび7c)。ポリマーブレンドに固有の融通性の例として、図7dにおいて、比率1:4(コラーゲン:PEG)でのコラーゲン(10mg/ml)およびポリエチレングリコール(分子量20,000、Alfa Aesarより)の冷凍乾燥ブレンドが示される。ヒロゲルの細孔の大きさは100〜500nmの間で変化し、それは単一成分コラーゲンゲルと比較すると増加を示す。
【0191】
それらの予備的な結果は、最初の密度を操作することによりそしてポリマーブレンド/コポリマー(すなわち本明細書中に記載のPEGブレンド)を用いることによってもコラーゲンゲル内の細孔の大きさを調節できることを示す。細孔の大きさは、ポリマーにウイルス放出の能力を与えそして防御免疫応答の誘発に重要なイベントであるその後の樹状細胞取り込みを容易とする重要な因子である。
【0192】
アルギネートポリマー
接種注射器の針の内部にイン・シトゥでの固化(set)をウイルス含有ゲルにさせるヒドロゲル内包システムを開発するために、アルギネートポリマーの使用を検討した。SQまたはID経路のいずれかによるゲルの直接注入は、エーロゾル化の最低のリスクを伴う哺乳動物への生ウイルスの投与を容易とし従って用量を投与する人員への最小の暴露とならなければならない。
【0193】
3種のアルギン酸ナトリウム粉末試料をFMC Biopolymerから入手した。種々の粘度のアルギネート溶液は、アルギネートの濃度および種類を変えて合成できる。架橋したアルギネートゲルの強さも、架橋イオンの濃度を変えて変更できる。アルギン酸ナトリウムの0.5%、1%、または1.5%(w/v)溶液を脱イオン水(DI)中で調製しそして溶液を0.45μm注射器フィルターを通す濾過により滅菌した。ゲル化は、オートクレーブ処理により滅菌されたメタリン酸ナトリウムを含む溶液を添加して開始された。アルギネート(5ml)を50mlコニカル・チューブに移しそしてCaSO4の8、4または2μg/ml(0.4g/mlのスラリーから)を加えた。チューブの内容物を激しく振とうしてアルギネートとCaSO4スラリーの完全な混合を確実にし、そして注射器を丁度満たす混合物の少量のアリコートを22G針を取り付けた5ml注射器内に引き上げ、そして針末端とプランジャーの間に1mlの空気空間を残した。垂直に取り付けた注射器ポンプ内に注射器を取り付けそして63ml/分の一定速度で注射器の内容物を押し出した。この手順は、すべての調剤に関して調和した圧力を保証する。ゲル化したアルギネートを射出するために要した時間およびゲルの目視外観を記録する。結果を図8Bに示す。
【0194】
アルギネート粘度は、分子量が低下すると低下する。従って、ゲルは射出が容易となる(例えば、8μg/mlCaSO4および1%ゲルで、射出の時間は高粘度=65秒>中粘度=62秒>低粘度=25秒である)。アルギネートとカルシウムの比率が低下すると、通常、ゲルが形成されない限界に達する(例えば、高粘度/0.5%カラムを通過降下:カルシウム濃度が2.0μg/mlまで低下するとゲルは形成されない)。ゲルが形成されない限界カルシウム濃度は、高粘度アルギネートで最低である。例外は、すべて3種のアルギネートに対するカルシウム濃度でゲルが形成される1%アルギネートであった。1%アルギネート濃度のすべての場合に、カルシウム濃度が低下するとさらに容易に注射器から射出された固いゲルが形成された。1%溶液の結果をグラフにプロットすると(図8A)、高および中粘度アルギネートが非常に類似した様式で挙動し、そして低粘度アルギネートは容易に針から排除されることが明らかである。
【0195】
アルギネートポリマーからのウイルスの放出
アルギネートポリマーからのウイルス放出の能力を評価するために、下記の実験を行った。本明細書中に記載のデータは、アルギネートゲルの機械的性質を変更するためのパラメーターを提供する。それらのデータに基づいて、量子ドット(QDot)がウイルスの内包のための便利なモデルであることが決定された。量子ドットは、CdSe/ZnSの内部コアとの接合を容易にするための機能基を有する外殻からなる直径10〜20nmのナノ結晶である。量子ドットの大きさおよび形状が本明細書中に記載の用途に理想的であ
るばかりでなく、量子ドットの蛍光強度はその検出および定量を容易にさせる。
【0196】
4μg/mlのCaSO4と量子ドットを含む1%アルギネートゲルとの混合物を用いて、試料を5ml注射器の22G針内に引き取り、そして本明細書中の別の箇所に記載のようにして固化させた。次いで、量子ドットを含むゲルペレットを、PTI蛍光測定器内に収容されたキュベット内に保持されたリン酸塩緩衝食塩水(PBS)4ml中に射出した。蛍光は射出の時点から測定された。図9aおよび9b中で、明確な二つの分離した蛍光プロフィールが示される。低粘度アルギネートは、それがPBS内に注入されると直ちにその内容物を放出する。蛍光強度は50秒、すなわち射出の時点で極大に上昇する。高粘度ゲルは、注入の50秒後に徐々にその内容物を放出し、400秒後に放出を完了する。
【0197】
ゲル内包ウイルスからの活性ウイルス放出のイン・ビトロアッセイ
アルギネートゲルからのウイルス粒子の放出を試験するためにイン・ビトロアッセイを開発した。MDCK細胞は、インフルエンザウイルスを含む種々のウイルスの増殖を支援する付着細胞系統である。予備研究において、MDCK細胞はアルギネートポリマー中に捕捉された生ウイルスと一緒に5日間培養され次いで感染を評価するためにチキン赤血球細胞懸濁液を用いる赤血球凝集アッセイで試験した。アルギネート単独を使用する負の対照では、ウイルスは検出されなかった(赤血球凝集が存在しない)。対照的に、アルギネートゲル中の50%および75%ウイルス、ならびに溶液中のウイルスの6HAUおよび3HAUが評価された正対照中で強い赤血球凝集が観察された。それらの研究は、インフルエンザウイルスの感染性がアルギネートゲル内で保存されそして生で感染性のものが37℃でゲルから放出されることを証明する。
【0198】
アルギネートゲル内に捕捉されたウイルス
アルギネートゲルは、一般的に安全とみなされるとして(GRAS)、米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。本明細書中に提示するデータは、アルギネート内に捕捉された生インフルエンザウイルスが免疫原性でありそして哺乳動物内で細胞毒性CD8+T細胞およびウイルス中和抗体を誘発することを確証する(図10)。図10において、アルギネートゲル内で投与された生PR8ウイルスがマウス中でCD8+T細胞応答を強力に刺激することが認められる。多数の肺臓NP366特異性CD8+T細胞が、アルギネートゲル内の生ウイルスを用いて皮下接種され次いでX31インフルエンザウイルスを用いてその後再チャレンジされた動物内で誘発される。非操作(すなわち対照マウス)のマウスの群からまたはPR8ウイルス単独、アルギネート単独もしくはアルギネート内に内包されたPR8生ウイルスで皮下に接種されたマウスの群からの肺臓を、X31インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に分析した。マウスから得られた単細胞懸濁液を抗CD8抗体および免疫優性NP366−374ペプチドを認識するMHCクラスI/NP366−374四量体複合体を用いて染色した。染色した細胞をフローサイトメトリーで分析した。図10に示す値は、群あたりにマウス2匹から得られた平均を表す。
【0199】
さらに、マウスにおけるIgG抗体応答も高い力価で発現され、図11に示す通りである。またはアルギネートゲル内に内包された単独PR8ウイルスを用いて免疫化されたC57B1/6マウスの血清内に存在する抗PR8抗体は、捕捉抗原としてPR8ウイルスを用いるELISAにより検出された。1/270の初期血清希釈は、さらに3倍の順次希釈により希釈され、そしてプレート結合PR8ウイルスに加えられた。非感染動物はPR8ウイルスに対して抗体応答を示さなかった。
【0200】
最も防御的なワクチンは、ウイルスでのその後の感染を遮断する宿主内で中和抗体を生成して作用する。図12に示すデータは、アルギネートゲル内に捕捉された生インフルエ
ンザウイルスが、図10に示す細胞毒性CD8+T細胞応答に加えてマウスに中和抗体の高い力価を誘発することを確証する。図12中で、赤血球凝集阻害アッセイは、PR8、チキン赤血球および免疫化動物から得た血清の希釈を用いて行われた。赤血球凝集阻害を示した最高の血清希釈は、アルギネートゲル内の生ウイルスを用いて免疫化された動物で示された。非免疫化動物からの血清は赤血球凝集阻害を示さなかった。
【0201】
ナノチューブ
本明細書中の別の箇所で考察したように、好ましいワクチンはナノチューブ内に装入されたものである。種々の直径(50〜250nm)の炭素ナノチューブを合成することが可能である(Bradley et al.,2003,Chemistry Preprint Server,Miscell.:1−6,CPS:chemistry/0303002;Babu et al.,Microfluidics and Nanofluidics 1:284−288;Rossi et al.,2004,Nano Letters 4:989−993)。大きい直径を有するナノチューブ(250nm)の合成のための鋳型は、商業的に入手できる。大きい直径を有するナノチューブは、インフルエンザウイルスの大きさの粒子を保持および放出できる構造の生成を容易とする。本出願に好ましいナノチューブの種類は、マルチ壁ナノチューブ(MWNT)として知られるが、しかしこの種類の管は、金属触媒化学蒸着(CVD)法を用いて合成されるナノチューブに通常見られる適切な結晶構造を欠く。ナノチューブは、ミラーらにより確立されたテンプレート支援方法に従って合成された(Miller et al.,2001,J.Amer.Chem.Soc.123:12335−12342)。図13には、本明細書中に記載の方法を用いて合成された典型的な大径ナノチューブの断面が示されている。
【0202】
磁性(Korneva et al.,2005,Nano Letters,5:879−884)または蛍光性ナノ粒子(Kim et al.,2005,Nano Letters,5:873−878)を用いて炭素ナノチューブを装入する能力は、275±25nmの小さい管直径およびその結果としての毛管作用にもかかわらず、かなり簡単な方法論で最近証明された。それらの実験のためのナノチューブは、CVD法により合成された。管内の溶剤の蒸発速度は、ナノチューブの壁に沿う粒子の沈降をもたらす捕捉された粒子の置換によるよりも、はるかに大きいことが示されている(Kim et al.,2005,Nano Letters,5:873−878)。これは、自然により設計された安全手段である。従って、ナノチューブの内部に装入されたウイルスは、管の内腔から自由には拡散して出ないであろう。それらの研究のそれらの結果は、直径250nmのナノチューブが凝縮により種々の水溶液で装入できることを確証する(Babu et al.上記文献、Rossi et al.,上記文献)。好ましくは、本発明において、ナノチューブは、水よりも粘度が高い液体で装入される。しかし、液体はグリセロール程度の粘度でありそしてエチレングリコールは他の状況で装入に成功しているので、それはいかなる問題も生じないと予想される(Kim et al.,上記文献)。
【0203】
本明細書中に提出する実験は、体温でウイルスを放出するポリマー、例えばコラーゲンマトリックス、アルギネート、ゼラチンポリマー内でナノ内包生ウイルスの使用を適用可能とすると考えるべきである。それらの方法は、空気感染性ウイルスをワクチンとしての用途にさらに安全性を与え、一方ワクチン接種された個体内に防御的免疫応答を誘導するために必要な非常に低い用量の利益を有する。
【0204】
整列された炭素ナノチューブの合成
要約すると、石英反応容器内に配置されたアルミナ膜(Whatman Anodisc 直径13mm、および細孔の大きさ250nm)は、炭素ナノチューブが成長するための鋳型として振る舞う。少なくとも1000℃に達することができる管状炉が、アルミ
ニウム膜上で20sccmの速度で流れるエチレンとアルゴンガスの混合物を分解するために使用される。670℃におけるエチレンガスの分解が、アルミナ膜の内壁の周囲に炭素の沈着をもたらし、従って沈着した炭素層の厚さは、加工時間に依存する。意図する目的には6時間の反応時間が適当である。膜の側面上の炭素の層は、温和な超音波処理(47kHz、浴式超音波処理機)を用いて除去される。炭素ナノチューブを含む膜は、鋳型の完全な除去のために1M NaOH中に少なくとも12時間完全に浸漬される。ナノチューブは、鋳型除去の後に、1μmの細孔の大きさを有するポリカーボネート膜フィルター(SPI Supplies)を通して濾過して懸濁液から除去される。本プロセスの図表示を図14に示す。
【0205】
ナノチューブ装入
液体およびゲルをナノチューブ内に効率的に装入することを可能とする装入方法を開発した。本明細書中に示すデータは、ウイルスを含むアルギネートゲルのナノチューブ内への装入が可能であることを確証する。ほぼウイルス粒子の大きさである量子ドット(直径約50〜100nm)を含むアルギネートゲルをナノチューブ内に装入した。図15および16から分かるように、量子ドットはナノチューブ内部に装入される。ナノチューブは透明でありそして量子ドット蛍光が管壁を通して伝達されることに注意するべきである。対照として、アルギネートおよび量子ドットの溶液と混合されそして装入操作を受けなかったナノチューブを示した(図17)後者の状況においては、量子ドットは管の内部ではなく外部で背景として蛍光を発する。それらの実験の詳細は以下である。
【0206】
図15は、アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットを充填した炭素ナノチューブの共焦点画像を示す。ナノチューブは50nm量子ドットを含むアルギネートゲルと混合され次いで装入プロセスを受けた。管内部の蛍光の存在は、量子ドットを含むゲルでの管の装入を示す。矢印は個々の管を指している。
【0207】
図16は、アルギン酸ナトリウムおよび量子ドット(QDdot)を含む炭素ナノチューブの一連の走査電子顕微鏡写真を示す。ゲルおよび量子ドットが管の内部に明瞭に見える(図16aおよび16b)。両方の写真のスケール・バーは、2μmである。
【0208】
図17は、量子ドットを含むアルギネートゲルと単に混合されたナノチューブが装入されていないことを示す。アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットの存在下での共焦点画像を示す。ナノチューブは、50nm量子ドットは含むアルギン酸ゲルを混合されたがしかし装入プロセスは受けていない。量子ドットからの蛍光は背景として見られそして黒く見えるナノチューブ内部には見えない。矢印は個々の管を指している。
【0209】
超音波処理はナノチューブを500nm未満の長さに破断する
生体作用活性薬剤放出戦略の一つの重要な要素は、生体作用活性薬剤の制御された放出が投与された動物内で起きるように超音波を用いてナノチューブを破壊する能力にある。生体作用活性薬剤を放出するために、ナノチューブは、管内の毛管力が周囲組織内へのゲルおよび生ウイルス双方の放出を促進する大きさに破断されなければならない。図18には、1.36MHzで30秒間超音波処理された長さ10〜12μmのナノチューブが約1μm未満の大きさを有する非常に短い管に破断されていることを示す。熟練者は、本明細書中に提示した実験に基づいて、ナノチューブの内容物の周囲組織中への放出を調節する実験条件をどのようにして最適化するかを知っているであろう。図18で、1.36MHzで30秒間の超音波処理前の炭素ナノチューブ(図18a、x1000倍率)および超音波処理後のナノチューブ(図18b、x10,000倍率)の電子顕微鏡写真を示す。超音波処理前には、ナノチューブは長さ10〜20μmであった(図18a)。超音波処理後ではナノチューブは長さ1μm未満であった(図18b)。
【0210】
アルギネート・ヒドロゲル
本明細書中に記載のイン・シトゥ・ゲル化の方法は最適化できそしてCa2+以外の多価陽イオン、例えば不溶性塩、例えば炭酸、リン酸もしくは硫酸バリウム、およびリン酸もしくは水酸化アルミニウムが硫酸カルシウムを代替して使用してゲル性質への影響を研究するために拡張できる。種々の分子量および組成(ポリマー骨格内のグルロン酸:マンヌロン酸比率)のアルギネート。注入の容易さヘの影響、および量子ドットの放出プロフィール(ウイルス粒子に対して容易に定量できるモデル)は、イン・ビトロ赤血球凝集アッセイおよび結局はマウス内のイン・ビトロ研究の両者を用いるウイルス送達の効率の研究の端緒となる(上記参照)。平行する研究は、HAまたはアルギネートおよびキトサンの他の混合物、または当該技術分野の熟練者には公知の他の組成物を用いて行うことができる。
【0211】
コラーゲンゲル
コラーゲンゲル合成の予備的データに基づいて、イン・ビボで投与された場合に特定の速度でウイルスを内包、貯蔵よび放出するためのそれらの能力に関してヒドロゲルを合成および特性研究できる。コラーゲン出発物質の順次増加する密度を有するゲル(4、6、8および10mg/ml)は、本明細書中の別の箇所に開示される手順に従って合成でき、そしてバルクキャスティングおよびミクロキャスティングの双方によりキャストできる。ゲルは、臨界点乾燥の標準プロトコール(Phillips XL30)に従って乾燥されそして細孔大きさの変化について走査電子顕微鏡(SEM)で検査される。コラーゲンゲルは、蛍光量子ドット粒子(QDot)の計算された量の存在下でも合成される。それらの量子ドットは、Quantum Dot CorporationまたはEvident Technologiesから購入できる。ゲルを分離しそして使用前にPBS緩衝液を用いて数回洗浄する。ゲルからの量子ドットの拡散速度は、ゲルを37℃に維持している間に、量子ドットの射出スペクトルに従って推定できる。温度制御可能なキュベットホルダーを有するUV−可視光分光分析計が種々の時点での射出スペクトルを集めるために使用される。SEMから得た拡散速度データおよび多孔度情報を比較しそして捕捉されたウイルス粒子の所要の放出速度に適合する最適コラーゲン濃度を決定するために使用される。最適コラーゲン濃度に到達した後に、ポリエチレングリコール(PEG、分子量10000、8000、6000および1,000)を合成プロセスの間に添加剤として加える。コラーゲン/PEG組成物を、本明細書中に記載と同じ方法を用いて量子ドットの存在下で合成する。PEGの濃度は、コラーゲンのPEGに対する比率を以下の順序、1:0.5、1:1、1:2および1:4に変化させて変化できる。拡散の初期の速度を保持するがしかし均質度を上昇しそして相分離を最小化する比率が、イン・ビボ試験のための配合として選択できる。PEG添加の後のヒドロゲル中の形態変化は、SEMにより監視できる。
【0212】
ゼラチンヒドロゲル
ウイルスを内包するために使用するゼラチンに関して本明細書中に提出するデータに基づいて、イン・ビボで投与される場合にウイルスを内包、貯蔵および放出できるヒドロゲルが合成および特性決定できる。冷凍乾燥およびγ線照射されたゼラチンが、本明細書中の別の箇所に開示のようにしてヒドロゲルを調製するために使用される。水中のゼラチンの濃度は、最適放出速度を達成するために変化される(1〜3%w/v)。貯蔵の間のヒドロゲルからの水の損失は、ゼラチンヒドロゲルの収縮をもたらす。これは、ゲル形成の間にPEG(ゼラチンの1〜10%w/w)オリゴマー(分子量400〜1000)の計算された量を加えて低下できる。ゲル強度および物理的寸法の測定は、収縮速度を決定するために使用される。振動レオメーター試験機(Bohlin Controlled
Stress Rheometer)を用いるゲルの粘度および架橋密度の定期的測定は、ゲルの粘弾性における変化を明らかにするであろう。二枚の円板の間にゲルを配置して、この計器中の底部の円板が振動すると、ゲルを通して周波数が伝達されそしてトルクが上部の円板により測定される。コラーゲンおよびQD(量子ドット)のために本明細書中に記載された同様の手順は、ウイルスの大きさの粒子の放出速度を決定するためにゼラチンおよびQDと一緒に使用できる。
【0213】
安全性評価の方法
エーロゾル化の可能性を排除するために、エーロゾル創成を測定する必要がある。この目的で、50nmの量子ドットを添加したポリマーゲルをペトリ皿上に噴出させる。音波フローポンプと一緒に作動するように設計されそしてバイオエーロゾルを特に効率的に捕集するSKS Biosamplerを用いて、空気試料を採取する。Biosamplerはガラス製でありそして臨界オリフィスとして作用する3個のタンジェンシャルノズルを装備し、それぞれは周辺空気4.2リットルを通過させそれは12.5l/分の全流量となる。バイオエーロゾルは、PBS、水または培地の渦流流体トラップ内に捕捉される。Biosamplerは、高容量音速フローポンプを使用して以後の分析のために空気中に浮動している生存微生物を補足する。エーロゾルの試料採取は、ポリマーゲルが渦流されている表面上の直前の10cmおよび100cmで行われそして最高の可能放出量を表す。空気試料は、粒子を捕集するために20ml PBS(量子ドットに対して)または培地(ウイルスに対して)を通す。溶液を10倍に濃縮してアッセイする。量子ドット実験のために、蛍光が蛍光計を用いて測定される。ウイルスを用いる研究のために、捕集された試料がMDCK細胞内で5日間、2ml(10倍濃縮)試料の培養の後にチキンRBCアッセイ内で赤血球凝集を示さない場合にポリマーは安全と考えられる。ウイルスを添加されたポリマーの免疫原性および安全性は、非内包ウイルスに対して本明細書中で記載されたようにしてアッセイされる。同様のまたは当該技術分野の熟練者には容易に同定できる手順はいずれの生体作用活性薬剤に対しても使用できる。量子ドットの使用は、ウイルス粒子の大きさの光学的バイオセンサーの簡単な例である。エーロゾル形成を評価するためにウイルス粒子の大きさのいずれの光学、磁気、電気的標識を使用してもよい。
【0214】
ナノチューブ
ゲルに捕捉された生体作用活性薬剤のための可能性がある送達ビヒクルとしてナノチューブを研究するために、下記の実験を行うことができる。ポリマーゲルを装入されたナノチューブのナノ流体的装入および放出特性およびナノチューブからのポリマーの制御された放出のための条件は、下記のようにして評価できる。安全性および免疫原性は、本明細書中の他の箇所に記載のようにして評価される。生体作用活性薬剤を含むポリマーゲルを装入されたナノチューブは、一般的に使用されている送達の慣用の注射器および針使用法からの薬剤送達の別の戦略である。
【0215】
1分間、適当な液体中でポリカーボネート200nm膜上でナノチューブを浸漬し、次いで温和な真空を適用すると、液体およびポリマーがナノチューブ内に装入される。この手順を5回繰り返す。50nmの大きさの銀ナノチューブが使用される場合には、このプロセスはコロイド状粒子の30〜40%の装入効率となる。
【0216】
ナノチューブのナノ流体装入を研究するために、ゲル中に種々の濃度で内包された50nm量子ドットをゲルの装入効率を定量するために使用する。十分に洗浄した後のナノチューブの蛍光強度が量子ドット濃度を測定するために使用される。装入されたナノチューブの数は、共焦点顕微鏡写真により定量される。ナノチューブ壁はUV光に透明であり、従って管内の蛍光は目視できる。ポリマーゲルを装入するために、重合の前にゲルをナノチューブと混合しそして真空を数サイクル適用する。次いで、使用するポリマーに応じて、架橋剤、または架橋を触媒作用する温度にナノチューブを暴露する。
【0217】
ゲル装入されたナノチューブの放出特性は、超音波処理(20kHz〜1.3MHz)を用いるかまたは用いないで研究した。50nm量子ドットを含むゲルが、放出量子ドッ
トを測定するために蛍光光度計を用いて評価された。しかし、共焦点顕微鏡写真は、量子ドットを装入されたか、または超音波処理の後にそれらを放出したナノチューブの数の定量を可能にした。
【0218】
量子ドットを含むポリマーをナノチューブ内に装入する最適条件の決定に続いて、生ウイルスを含むポリマーを装入されたナノチューブが、本明細書中の別の箇所に記載されそしてここには繰り返さない方法によりイン・ビトロおよびイン・ビボで試験された。
【0219】
ナノチューブに基づく送達システムは、従来法と比較するといくつかの利点を有する。ウイルス粒子は管の内側に捕捉されるので、予想されない洩れが起き得ず従って近くの人員の安全性が高くなる。管内の溶剤の蒸発速度は捕捉粒子の移動よりもはるかに高く、ナノチューブの壁に沿った量子の沈降をもたらし、自然により設計された安全手段を創成する。
【0220】
本明細書中に引用されたそれぞれおよびあらゆる特許、特許出願、および出版物の開示は、その全体を引用することにより本明細書に編入される。
【0221】
本発明は特定の態様と関連させて説明されたが、本発明の他の態様及び変種も、本発明の真の精神および範囲から外れることなく、当該技術分野の熟練者によって案出されることは明らかである。添付の請求範囲は、すべてのかかる態様および等価の変種を含むと解釈されると考える。
【0222】
本発明の上記の要約ならびに詳細な説明は、添付する図面と関連させるとさらに良く理解されるであろう。本発明を説明する目的で、現在好まれている態様を図面で示す。しかし、本発明は記載された正確な配置および計器装備に限定はされないと理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】図1は、C57B1/6Jマウス内の二次ウイルス特異性CD8+T細胞応答に対するインフルエンザウイルスの4種の異なる投与経路の効果を描いたグラフである。マウスは、腹腔内(IP)、筋肉内(IM)、皮内(ID)または皮下(SubQ)注入経路によりPR8インフルエンザの100赤血球凝集単位(HAU)を用いて初回抗原刺激された。X31A型インフルエンザウイルスを用いる再チャレンジの7日後に組織を採取しそして免疫優性A型インフルエンザウイルス核タンパク質NP366−374(ASNENMETM(配列番号1))を添加されたMHC−クラス1四量体を用いて肺臓組織の調製物内で、ウイルス特異性CD8+T細胞の存在を評価した。
【図2】図2は、図2Aおよび図2Bを含んでなり、マウス内の用量応答研究の結果を提出する。本研究において、二次ウイルス特異性CD8+T細胞応答が、IPまたはID注入経路のいずれかにより投与されたPR8インフルエンザウイルスの種々の用量を用いて初回抗原刺激されたC57B1/6Jマウス内で評価された。組織は、A型インフルエンザウイルスの鼻内再チャレンジの7日後に採取された。ウイルス特異性CD8+T細胞は、免疫優性A型インフルエンザウイルス核タンパク質NP366−374(ASNENMETM(配列番号1))またはIFNγ細胞内株を添加されたMHC−クラス1四量体を用いて肺臓組織の肺調製物内で検出された。図2Aは、ウイルス特異性CD8+T細胞の代表的なFACSプロットを描いている。図2Bは、ウイルス特異性CD8+T細胞およびIFNγ産生CD8+T細胞の用量応答曲線を描いている。点は、群あたりに三匹の動物に対する平均±標準偏差(*p<0.05)である。
【図3】図3は、図3Aおよび図3Bを含んでなり、IP、SQまたはIDで送達された生インフルエンザウイルスの1HAUに対するウイルス特異性CD8+T細胞応答を描いた一連のグラフである。異なる感染経路:IM、SQまたはIDによりPR8インフルエンザウイルスの1HAUを用いて初期抗原刺激されたC57B1/6Jマウス内での二次ウイルス特異性CD8+T細胞応答。肺臓は、X31インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に採取されそしてウイルス核タンパク質:NP366−374(ASNENMETM(配列番号1))から誘導された免疫優性ペプチドエピトープを添加されたMHC−クラス1四量体複合体を用いてウイルス特異性CD8+T細胞が検出された。全CD8+T細胞内のNP366特異性CD8+T細胞の百分率(A)およびNP366特異性CD8+T細胞の全数(B)をそれぞれ3種の免疫化条件で算出した。水平線は平均値を示す。
【図4】図4は、SQで投与された生インフルエンザワクチンの安全性を描いたグラフである。野生型C57B1/6J(白、菱形)または免疫欠損Rag−/−γc−/−マウス(白、円形)を生PR8インフルエンザウイルスの100HAUを用いてSQ免疫化した。対照として、C57B1/6Jマウスの群(黒、菱形)を、PR8インフルエンザウイルスの1HAUを用いてIN感染させた。マウスの体重は引き続く17日間記録しそして体重減少百分率を感染後の日数に対してプロットした。
【図5】図5は、皮下投与されたA型インフルエンザウイルスが安全でありそして疾患を起こさないことを描いたグラフである。野生型C57BL6マウスをPR8(黒、四角形)またはロンドン株(黒、三角形)の低用量(0.1HAU)により鼻内にインフルエンザウイルスを投与した。免疫欠損Rag−/−γc−/−マウスは、PR8(白、菱形)またはロンドンウイルス(黒、円形)の高用量(1−HAU)を用いて皮下に注入された。マウスの体重を接種後30日間測定した。接種の後の平均体重減少を示す。瀕死のマウスは30%体重減少で安楽死させた(+)。すべての群でn=5である。
【図6】図6は、図6A、図6Bおよび図6Cを含んでなり、SQ投与されたゼラチンゲル内の生ウイルスがマウス内でCD8+T細胞を効率的に刺激することを描いた一連のフローサイトメトリー写真である。非操作マウスマウスからまたはゼラチンのみ、ゼラチンおよびウイルス(10HAU)もしくはウイルス単独(10HAU)を用いて30日間免疫化されたマウスからの肺臓(図6A)および脾臓(図6B)を、X31インフルエンザウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に分析した。単独細胞懸濁液は、抗CD8抗体およびMHCクラスI/NP366−374四量体複合体を用いて染色しそしてフローサイトメトリーで分析した。全リンパ球内のCD8+T細胞の百分率は、ゲートの外側に示され、一方全CD8+T細胞内のNP366特異性CD8+T細胞の百分率は、ボックス内に示される。(図6C)指定されたマウス内の脾臓細胞をNP366−374ペプチドを用いて6時間イン・ビトロ刺激した。CD8+T細胞によるIFNγ産生は、抗IFNγ抗体を用いる細胞内染色およびフローサイトメトリー分析により評価した(IFNγ+CD8+T細胞の百分率を四分の一象限内に示した)。
【図7】図7は、図7a、図7b,および図7cおよび図7dを含んでなり、種々のポリマー濃度および架橋剤含有量により産生された異なる細孔の大きさを有するコラーゲンポリマーを描いた一連の電子顕微鏡写真である。コラーゲン6mg/ml(図7a)、コラーゲン10mg/ml(図7a)、コラーゲン10mg/mlを含むコラーゲンゲル(湿式モードESEM)(図7c)、および比1:4の冷凍乾燥コラーゲン:PEGヒドロゲル(図7d)を含む針内部に調製された冷凍乾燥コラーゲンゲルのSEM顕微鏡写真。
【図8】図8は、図8Aおよび図8Bを含んでなり、射出時間に対するポリマー性質およびCa2+濃度(すなわちビヒクル性質)の影響を描いたグラフ(図8A)および表(図8B)である。
【図9】図9は、図9aおよび図9bを含んでなり、ポリマーの性質がナノ粒子放出速度を制御することを描いた一連のグラフである。量子ドット(20nmの大きさ)が、低粘度(図9a)および高粘度(図9b)のアルギネートポリマーから放出された。低粘度ポリマーは迅速に量子ドットを放出するが、一方高粘度リマーはかなり遅い速度で量子ドットを放出する。
【図10】図10は、アルギネートゲル内に送達された生PR8ウイルスがマウス中にCD8+T細胞応答を強力に刺激することを描いたグラフである。多数の肺臓NP366特異性CD8+T細胞が、生ウイルスを皮下接種されそして有毒ウイルスを用いてチャレンジされた動物内に誘発された。非操作マウスからまたはPR8生ウイルスのみ、アルギネートのみ、もしくはアルギネート内に内包されたPR8生ウイルスを用いて皮下に接種されたマウスからの肺臓は、X31ウイルスを用いる鼻内再チャレンジの7日後に分析された。単細胞懸濁液を抗CD8抗体およびMHCクラスI/NP366−374ペプチドを用いて染色しそしてフローサイトメトリーで分析した。図示した値は、群あたりに2匹おマウスから得た平均値を表す。
【図11】図11は、アルギネートゲル内に送達された生RP8ウイルスがインフルエンザウイルス特異性抗体の産生を有効に刺激することを描いたグラフである。PR8ウイルスのみまたはアルギネートゲル内に内包されたものを用いて免疫化されたC57B1/6マウスの血清内に存在する抗PR8抗体は、捕捉抗原としてPR8ウイルスを用いるELISAにより検出された。最初1/270に希釈された血清をさらに3倍づつ順次希釈しそしてプレート結合PR8ウイルスに加えた。非感染動物はPR8ウイルスに対して抗体応答を示さなかった。
【図12】図12は、アルギネートゲル内に内包された生ウイルスを用いるマウスのワクチン接種が、動物の血清内に中和抗体を誘発することを描いたグラフである。アルギネート内に内包された生ウイルスを用いて感染されたマウスからの血液を系統的に希釈し(1/2の系統的希釈)、そしてPR8ウイルスの2HAUによるチキン赤血球凝集を阻害する能力について試験した。ウイルスを用いて接種されなかった動物からの血清は、赤血球凝集を示さなかった。
【図13】図13は、670℃におけるエチレンの鋳型支援熱分解により合成された炭素ナノチューブの走査型電子顕微鏡写真である。管の直径は、鋳型の細孔直径により決定され、それはこの場合には250nmであった。ナノチューブ壁の厚さは約20nmである。
【図14】図14は、化学蒸着法による炭素ナノチューブ合成の略図である。
【図15】図15は、図15aおよび図15bを含んでなり、ナノチューブが量子ドットを含むアルギネートゲルを装入できることを描いた一連の共焦点顕微鏡写真である。アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットを充填された炭素ナノチューブの共焦点写真を示す。ナノチューブは50nm量子ドットを含むアルギネートゲルと混合され次いで装入プロセスを受けた。ナノチューブ内側の蛍光の存在は、装入の証拠である。矢印は個々の管を指す。
【図16】図16は、図16aおよび図16bを含んでなり、ナノチューブ内に装入されたアルギネートゲル内の量子ドットの一連の写真である。アルギン酸ナトリウムおよび量子ドットを含む炭素ナノチューブのSEM写真を示す。ゲルおよび量子ドットは、管の内側に明瞭に見える。両方の図内のスケールバーは、2μmである。
【図17】図17は、図17aおよび図17bを含んでなり、量子ドットと混合されたがしかし装入はされていないナノチューブの一連の共焦点写真である。ナノチューブを50nm量子ドットを含むアルギネートゲルと混合したが、しかし装入プロセスは受けなかった。量子ドットの蛍光は背景中には明瞭であるが、管内ではない。矢印は個別の管を示す。
【図18】図18は、図18aおよび図18bを含んでなり、ナノチューブが超音波処理により破断できることを描いた一連のSEMである。図18a−超音波処理前、図18b−13.6MHz、30分間の超音波処理後(倍率10,000)。超音波処理前には、管は長さ10〜20μmであった。超音波処理後には、管は1μm未満の長さであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物において免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する、上記ワクチン。
【請求項2】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する、上記ワクチン。
【請求項3】
ウイルスが生ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項4】
ウイルスが弱毒化ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項5】
ウイルスが死ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項6】
ウイルスが呼吸系ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項7】
ウイルスが、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される、請求項1のワクチン。
【請求項8】
ウイルスがオルトミクソウイルスである、請求項7のワクチン。
【請求項9】
オルトミクソウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項8のワクチン。
【請求項10】
インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、請求項9のワクチン。
【請求項11】
A型インフルエンザウイルスが、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)を有する、請求項10のワクチン。
【請求項12】
A型インフルエンザウイルスが、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する、請求項10のワクチン。
【請求項13】
A型インフルエンザウイルスが、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する、請求項10のワクチン。
【請求項14】
A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる、請求項10のワクチン。
【請求項15】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)である、請求項14のワクチン。
【請求項16】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.005〜500HAUである、請求項15のワクチン。
【請求項17】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.01〜100HAUである、請求項16のワクチン。
【請求項18】
動物が哺乳動物である、請求項1のワクチン。
【請求項19】
哺乳動物がヒトである、請求項18のワクチン。
【請求項20】
ウイルスが、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスから成る群から選択される2種またはそれ以上のメンバーの組合せを含んでなる、請求項1のワクチン。
【請求項21】
経路が天然ではない経路である、請求項1のワクチン。
【請求項22】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される、請求項21のワクチン。
【請求項23】
請求項1のワクチンを含んでなるキット。
【請求項24】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルに会合(associate)している、上記ワクチン。
【請求項25】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルと会合している、上記ワクチン。
【請求項26】
ウイルスが内包ビヒクル内に内包されている、請求項24のワクチン。
【請求項27】
ウイルスが、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項24のワクチン。
【請求項28】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される1種もしくはそれ以上のメンバーを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項29】
内包ビヒクルがナノチューブ内に装入される、請求項28のワクチン。
【請求項30】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項31】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項30のワクチン。
【請求項32】
ポリマーがウイルスと会合され、それにより周囲環境内への該ウイルスの放出を遅延させる、請求項30のワクチン。
【請求項33】
ポリマーがゲルである、請求項30のワクチン。
【請求項34】
ゲルがコラーゲンを含んでなる、請求項33のワクチン。
【請求項35】
ゲルがヒドロゲルである、請求項33のワクチン。
【請求項36】
ヒドロゲルが、アルギネート、ゼラチン、キトサンおよびヒアルロン酸から成る群から選択される、請求項35のワクチン。
【請求項37】
ヒドロゲルが、コラーゲン、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択される、請求項35のワクチン。
【請求項38】
ゲルが、アルギネート、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの1種もしくはそれ以上の組合せを含んでなる、請求項33のワクチン。
【請求項39】
ゲルが架橋されている、請求項33のワクチン。
【請求項40】
さらに添加剤を含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項41】
添加剤がポリエチレングリコールである、請求項40のワクチン。
【請求項42】
内包ビヒクルがミクロカプセルを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項43】
内包ビヒクルがナノカプセルを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項44】
内包ビヒクルがナノチューブを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項45】
ナノチューブが500nmまたはそれ以下の直径を有する、請求項44のワクチン。
【請求項46】
内包ビヒクルが1種もしくはそれ以上の溶液、粉末またはゲルの組合せを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項47】
ウイルスが生ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項48】
ウイルスが弱毒化ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項49】
ウイルスが死ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項50】
ウイルスが呼吸系ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項51】
ウイルスが、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される、請求項24のワクチン。
【請求項52】
ウイルスがオルトミクソウイルスである、請求項51のワクチン。
【請求項53】
オルトミクソウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項52のワクチン。
【請求項54】
インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、請求項53のワクチン。
【請求項55】
A型インフルエンザウイルスが、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)を有する、請求項54のワクチン。
【請求項56】
A型インフルエンザウイルスが、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する、請求項54のワクチン。
【請求項57】
A型インフルエンザウイルスが、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する、請求項54のワクチン。
【請求項58】
A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる、請求項54のワクチン。
【請求項59】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)である、請求項58のワクチン。
【請求項60】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.005〜500HAUである、請求項59のワクチン。
【請求項61】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.01〜100HAUである、請求項60のワクチン。
【請求項62】
動物が哺乳動物である、請求項24のワクチン。
【請求項63】
哺乳動物がヒトである、請求項62のワクチン。
【請求項64】
ウイルスが、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスの2種またはそれ以上の組合せを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項65】
経路が天然ではない経路である、請求項24のワクチン。
【請求項66】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーである、請求項65のワクチン。
【請求項67】
請求項24のワクチンを含んでなるキット。
【請求項68】
動物へワクチンの送達のためのデバイスであって、(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体の量であって、天然でない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するための送達デバイスを含んでなるデバイス。
【請求項69】
動物へのワクチンの送達のためのデバイスであって、(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量であって、天然でない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するための送達デバイスを含んでなるデバイス。
【請求項70】
送達デバイスが中空チューブを含んでなる、請求項68のデバイス。
【請求項71】
中空チューブが先細の末端を有する、請求項70のデバイス。
【請求項72】
送達デバイスが針を含んでなる、請求項71のデバイス。
【請求項73】
中空チューブが場合によりプランジングデバイスに取り付けられる、請求項70のデバイス。
【請求項74】
プランジングデバイスが注射器である、請求項73のデバイス。
【請求項75】
送達デバイスが遺伝子ガンである、請求項68のデバイス。
【請求項76】
送達デバイスがカテーテルである、請求項68のデバイス。
【請求項77】
送達デバイスが貼付剤である、請求項68のデバイス。
【請求項78】
送達デバイスが吸入デバイスである、請求項68のデバイス。
【請求項79】
送達デバイスが粘膜アプリケーターである、請求項68のデバイス。
【請求項80】
内包ビヒクルをさらに含んでなる、請求項68のデバイス。
【請求項81】
ウイルスが内包ビヒクル内に内包される、請求項80のデバイス。
【請求項82】
ウイルスが、内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項80のデバイス。
【請求項83】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される1種もしくはそれ以上のメンバーである、請求項80のデバイス。
【請求項84】
内包ビヒクルがナノチューブ内に装入される、請求項83のデバイス。
【請求項85】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項86】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項85のデバイス。
【請求項87】
ポリマーがウイルスと会合され、それにより周囲環境内への該ウイルスの放出を遅延させる、請求項86のデバイス。
【請求項88】
ポリマーがゲルである、請求項85のデバイス。
【請求項89】
ゲルがコラーゲンを含んでなる、請求項88のデバイス。
【請求項90】
ゲルがヒドロゲルである、請求項88のデバイス。
【請求項91】
ヒドロゲルが、アルギネート、ゼラチン、キトサンおよびヒアルロン酸から成る群から選択される、請求項90のデバイス。
【請求項92】
ヒドロゲルが、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択される、請求項90のデバイス。
【請求項93】
ゲルが、コラーゲン、アルギネート、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの1種もしくはそれ以上の組合せを含んでなる、請求項88のデバイス。
【請求項94】
ゲルが架橋されている、請求項88のデバイス。
【請求項95】
さらに添加剤を含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項96】
添加剤がポリエチレングリコールであある、請求項95のデバイス。
【請求項97】
内包ビヒクルがミクロカプセルを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項98】
内包ビヒクルがナノカプセルを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項99】
内包ビヒクルがナノチューブを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項100】
ナノチューブが500nmまたはそれ未満の直径を有する、請求項99のデバイス。
【請求項101】
内包ビヒクルが1種もしくはそれ以上の溶液、粉末またはゲルの組合せを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項102】
ウイルスが生ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項103】
ウイルスが弱毒化ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項104】
ウイルスが死ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項105】
ウイルスが呼吸系ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項106】
ウイルスが、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される、請求項80のデバイス。
【請求項107】
ウイルスがオルトミクソウイルスである、請求項106のデバイス。
【請求項108】
オルトミクソウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項107のデバイス。
【請求項109】
インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、請求項108のデバイス。
【請求項110】
A型インフルエンザウイルスが、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)を有する、請求項109のデバイス。
【請求項111】
A型インフルエンザウイルスが、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する、請求項109のデバイス。
【請求項112】
A型インフルエンザウイルスが、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する、請求項109のデバイス。
【請求項113】
A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる、請求項109のデバイス。
【請求項114】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)である、請求項113のデバイス。
【請求項115】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.005〜500HAUである、請求項114のデバイス。
【請求項116】
A型ウイルスの低用量が、ウイルスの0.01〜100HAUである、請求項115のデバイス。
【請求項117】
動物が哺乳動物である、請求項80のデバイス。
【請求項118】
哺乳動物がヒトである、請求項117のデバイス。
【請求項119】
ウイルスが、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスから成る群から選択される少なくとも2種のメンバーを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項120】
経路が天然ではない経路である、請求項80のデバイス。
【請求項121】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーである、請求項120のデバイス。
【請求項122】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御量を内包ビヒクルと組合せ、それにより該ワクチンを製造することを含んでなる方法。
【請求項123】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞を内包ビヒクルと組合せ、それにより該ワクチンを製造することを含んでなる方法。
【請求項124】
動物内にCD8+T細胞免疫防御および/または抗体免疫防御応答を誘発する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発する方法。
【請求項125】
動物内にCD8+T細胞免疫防御応答を誘発する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発する方法。
【請求項126】
動物が哺乳動物である、請求項124の方法。
【請求項127】
哺乳動物がヒトである、請求項126の方法。
【請求項128】
ウイルスによる感染に対して動物を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与す
ることを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該感染に対して該動物を防御する方法。
【請求項129】
ウイルスによる感染に対して動物を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該感染に対して該動物を防御する方法。
【請求項130】
動物が哺乳動物である、請求項128の方法。
【請求項131】
哺乳動物がヒトである、請求項130の方法。
【請求項132】
動物内のウイルス感染を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する方法。
【請求項133】
動物内のウイルス感染を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する方法。
【請求項134】
動物が哺乳動物である、請求項132の方法。
【請求項135】
哺乳動物がヒトである、請求項134の方法。
【請求項136】
動物内のウイルス感染を処置する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する方法。
【請求項137】
動物内のウイルス感染を処置する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する方法。
【請求項138】
動物が哺乳動物である、請求項136の方法。
【請求項139】
哺乳動物がヒトである、請求項138の方法。
【請求項140】
生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物であって、動物内に疾患を起こさない経路による該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する組成物。
【請求項141】
生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物であって、動物内に疾患を起こさない経路による該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する組成物。
【請求項142】
経路が天然ではない経路である、請求項140の組成物。
【請求項143】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される、請求項140の組成物。
【請求項144】
生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される、請求項140の組成物。
【請求項145】
生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項140の組成物。
【請求項146】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーを含んでなる、請求項140の組成物。
【請求項147】
内包ビヒクルがナノチューブ内に装入される、請求項146の組成物。
【請求項148】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項147の組成物。
【請求項149】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項148の組成物。
【請求項150】
ポリマーが該生体作用活性薬剤と会合され、それにより周囲環境内への該生体作用活性薬剤の放出を遅延させる、請求項148の組成物。
【請求項151】
ポリマーがゲルである、請求項148の組成物。
【請求項152】
生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される、請求項140の組成物。
【請求項153】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法であって、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、さらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている方法。
【請求項154】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法であって、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、さらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている方法。
【請求項155】
生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される、請求項153の方法。
【請求項156】
生体作用活性薬剤の生物学的に有効な量を含んでなる組成物であって、ここで、動物内に疾患を起こさない経路により該動物に該生体作用活性薬剤を投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に所望の応答を誘導し、一方ではリスクを低減する組成物。
【請求項157】
経路が天然ではない経路である、請求項156の組成物。
【請求項158】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される、請求項157の組成物。
【請求項159】
生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包される、請求項156の組成物。
【請求項160】
生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項156の組成物。
【請求項161】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーである、請求項156の組成物。
【請求項162】
内包ビヒクルがミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に装入される、請求項159の組成物。
【請求項163】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項159の組成物。
【請求項164】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項163の組成物。
【請求項165】
ポリマーが生体作用活性薬剤と会合され、それにより周囲環境内への該生体作用活性薬剤の放出を遅延させる、請求項163の組成物。
【請求項166】
ポリマーがゲルである、請求項163の組成物。
【請求項167】
生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される、請求項156の組成物。
【請求項168】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法であって、動物内で所望の応答を誘導し同時にリスクを低減する生体作用活性薬剤の量を含んでなる組成物を該動物に投与することを含んでなり、ここで、該生体作用活性薬剤の投与の経路が該動物内に疾患を起こさない経路であり、そしてさらにここで該生体作用活性薬剤を投与する際に該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内で内包されそれにより安全性を上昇する方法。
【請求項1】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物において免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する、上記ワクチン。
【請求項2】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する、上記ワクチン。
【請求項3】
ウイルスが生ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項4】
ウイルスが弱毒化ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項5】
ウイルスが死ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項6】
ウイルスが呼吸系ウイルスである、請求項1のワクチン。
【請求項7】
ウイルスが、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される、請求項1のワクチン。
【請求項8】
ウイルスがオルトミクソウイルスである、請求項7のワクチン。
【請求項9】
オルトミクソウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項8のワクチン。
【請求項10】
インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、請求項9のワクチン。
【請求項11】
A型インフルエンザウイルスが、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)を有する、請求項10のワクチン。
【請求項12】
A型インフルエンザウイルスが、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する、請求項10のワクチン。
【請求項13】
A型インフルエンザウイルスが、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する、請求項10のワクチン。
【請求項14】
A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる、請求項10のワクチン。
【請求項15】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)である、請求項14のワクチン。
【請求項16】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.005〜500HAUである、請求項15のワクチン。
【請求項17】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.01〜100HAUである、請求項16のワクチン。
【請求項18】
動物が哺乳動物である、請求項1のワクチン。
【請求項19】
哺乳動物がヒトである、請求項18のワクチン。
【請求項20】
ウイルスが、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスから成る群から選択される2種またはそれ以上のメンバーの組合せを含んでなる、請求項1のワクチン。
【請求項21】
経路が天然ではない経路である、請求項1のワクチン。
【請求項22】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される、請求項21のワクチン。
【請求項23】
請求項1のワクチンを含んでなるキット。
【請求項24】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルに会合(associate)している、上記ワクチン。
【請求項25】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンであって、動物に疾患を起こさない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、そしてさらに該ウイルスが内包ビヒクルと会合している、上記ワクチン。
【請求項26】
ウイルスが内包ビヒクル内に内包されている、請求項24のワクチン。
【請求項27】
ウイルスが、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項24のワクチン。
【請求項28】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される1種もしくはそれ以上のメンバーを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項29】
内包ビヒクルがナノチューブ内に装入される、請求項28のワクチン。
【請求項30】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項31】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項30のワクチン。
【請求項32】
ポリマーがウイルスと会合され、それにより周囲環境内への該ウイルスの放出を遅延させる、請求項30のワクチン。
【請求項33】
ポリマーがゲルである、請求項30のワクチン。
【請求項34】
ゲルがコラーゲンを含んでなる、請求項33のワクチン。
【請求項35】
ゲルがヒドロゲルである、請求項33のワクチン。
【請求項36】
ヒドロゲルが、アルギネート、ゼラチン、キトサンおよびヒアルロン酸から成る群から選択される、請求項35のワクチン。
【請求項37】
ヒドロゲルが、コラーゲン、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択される、請求項35のワクチン。
【請求項38】
ゲルが、アルギネート、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの1種もしくはそれ以上の組合せを含んでなる、請求項33のワクチン。
【請求項39】
ゲルが架橋されている、請求項33のワクチン。
【請求項40】
さらに添加剤を含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項41】
添加剤がポリエチレングリコールである、請求項40のワクチン。
【請求項42】
内包ビヒクルがミクロカプセルを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項43】
内包ビヒクルがナノカプセルを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項44】
内包ビヒクルがナノチューブを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項45】
ナノチューブが500nmまたはそれ以下の直径を有する、請求項44のワクチン。
【請求項46】
内包ビヒクルが1種もしくはそれ以上の溶液、粉末またはゲルの組合せを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項47】
ウイルスが生ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項48】
ウイルスが弱毒化ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項49】
ウイルスが死ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項50】
ウイルスが呼吸系ウイルスである、請求項24のワクチン。
【請求項51】
ウイルスが、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される、請求項24のワクチン。
【請求項52】
ウイルスがオルトミクソウイルスである、請求項51のワクチン。
【請求項53】
オルトミクソウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項52のワクチン。
【請求項54】
インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、請求項53のワクチン。
【請求項55】
A型インフルエンザウイルスが、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)を有する、請求項54のワクチン。
【請求項56】
A型インフルエンザウイルスが、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する、請求項54のワクチン。
【請求項57】
A型インフルエンザウイルスが、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する、請求項54のワクチン。
【請求項58】
A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる、請求項54のワクチン。
【請求項59】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)である、請求項58のワクチン。
【請求項60】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.005〜500HAUである、請求項59のワクチン。
【請求項61】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.01〜100HAUである、請求項60のワクチン。
【請求項62】
動物が哺乳動物である、請求項24のワクチン。
【請求項63】
哺乳動物がヒトである、請求項62のワクチン。
【請求項64】
ウイルスが、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスの2種またはそれ以上の組合せを含んでなる、請求項24のワクチン。
【請求項65】
経路が天然ではない経路である、請求項24のワクチン。
【請求項66】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーである、請求項65のワクチン。
【請求項67】
請求項24のワクチンを含んでなるキット。
【請求項68】
動物へワクチンの送達のためのデバイスであって、(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体の量であって、天然でない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するための送達デバイスを含んでなるデバイス。
【請求項69】
動物へのワクチンの送達のためのデバイスであって、(a)ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量であって、天然でない経路により該動物に該ウイルスの投与の後に該ウイルスが該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、(b)該動物へ該ワクチンを送達するための送達デバイスを含んでなるデバイス。
【請求項70】
送達デバイスが中空チューブを含んでなる、請求項68のデバイス。
【請求項71】
中空チューブが先細の末端を有する、請求項70のデバイス。
【請求項72】
送達デバイスが針を含んでなる、請求項71のデバイス。
【請求項73】
中空チューブが場合によりプランジングデバイスに取り付けられる、請求項70のデバイス。
【請求項74】
プランジングデバイスが注射器である、請求項73のデバイス。
【請求項75】
送達デバイスが遺伝子ガンである、請求項68のデバイス。
【請求項76】
送達デバイスがカテーテルである、請求項68のデバイス。
【請求項77】
送達デバイスが貼付剤である、請求項68のデバイス。
【請求項78】
送達デバイスが吸入デバイスである、請求項68のデバイス。
【請求項79】
送達デバイスが粘膜アプリケーターである、請求項68のデバイス。
【請求項80】
内包ビヒクルをさらに含んでなる、請求項68のデバイス。
【請求項81】
ウイルスが内包ビヒクル内に内包される、請求項80のデバイス。
【請求項82】
ウイルスが、内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項80のデバイス。
【請求項83】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される1種もしくはそれ以上のメンバーである、請求項80のデバイス。
【請求項84】
内包ビヒクルがナノチューブ内に装入される、請求項83のデバイス。
【請求項85】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項86】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項85のデバイス。
【請求項87】
ポリマーがウイルスと会合され、それにより周囲環境内への該ウイルスの放出を遅延させる、請求項86のデバイス。
【請求項88】
ポリマーがゲルである、請求項85のデバイス。
【請求項89】
ゲルがコラーゲンを含んでなる、請求項88のデバイス。
【請求項90】
ゲルがヒドロゲルである、請求項88のデバイス。
【請求項91】
ヒドロゲルが、アルギネート、ゼラチン、キトサンおよびヒアルロン酸から成る群から選択される、請求項90のデバイス。
【請求項92】
ヒドロゲルが、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースから成る群から選択される、請求項90のデバイス。
【請求項93】
ゲルが、コラーゲン、アルギネート、ゼラチン、キトサン、ヒアルロン酸、ポリビニルピロリドンおよびカルボキシメチルセルロースの1種もしくはそれ以上の組合せを含んでなる、請求項88のデバイス。
【請求項94】
ゲルが架橋されている、請求項88のデバイス。
【請求項95】
さらに添加剤を含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項96】
添加剤がポリエチレングリコールであある、請求項95のデバイス。
【請求項97】
内包ビヒクルがミクロカプセルを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項98】
内包ビヒクルがナノカプセルを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項99】
内包ビヒクルがナノチューブを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項100】
ナノチューブが500nmまたはそれ未満の直径を有する、請求項99のデバイス。
【請求項101】
内包ビヒクルが1種もしくはそれ以上の溶液、粉末またはゲルの組合せを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項102】
ウイルスが生ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項103】
ウイルスが弱毒化ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項104】
ウイルスが死ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項105】
ウイルスが呼吸系ウイルスである、請求項80のデバイス。
【請求項106】
ウイルスが、オルトミクソウイルス、パラミクソウイルス、コロナウイルス、ピコルナウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、アデノウイルス、パルボウイルス、およびアデノウイルス、カルシウイルス、アストロウイルス、ノーウォークウイルス、アレナウイルス、フラビウイルス、フィロウイルス、ハンタウイルス、アルファウイルス、レトロウイルスおよびレンチウイルスから成る群から選択される、請求項80のデバイス。
【請求項107】
ウイルスがオルトミクソウイルスである、請求項106のデバイス。
【請求項108】
オルトミクソウイルスがインフルエンザウイルスである、請求項107のデバイス。
【請求項109】
インフルエンザウイルスがA型インフルエンザウイルスである、請求項108のデバイス。
【請求項110】
A型インフルエンザウイルスが、H1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15およびH16から成る群から選択される赤血球凝集素抗原(HA)を有する、請求項109のデバイス。
【請求項111】
A型インフルエンザウイルスが、N1、N2、N3、N4、N5、N6、N7、N8およびN9から成る群から選択されるノイラミニダーゼ抗原(NA)を有する、請求項109のデバイス。
【請求項112】
A型インフルエンザウイルスが、H5N1、H9N2、H7N1、H7N2、H7N3、H7N7、H2N2、H1N1、H1N2およびH3N2から成る群から選択されるHA:NA抗原プロフィールを有する、請求項109のデバイス。
【請求項113】
A型インフルエンザウイルスの低用量を含んでなる、請求項109のデバイス。
【請求項114】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.001〜5000赤血球凝集単位(HAU)である、請求項113のデバイス。
【請求項115】
A型ウイルスの該低用量が、ウイルスの0.005〜500HAUである、請求項114のデバイス。
【請求項116】
A型ウイルスの低用量が、ウイルスの0.01〜100HAUである、請求項115のデバイス。
【請求項117】
動物が哺乳動物である、請求項80のデバイス。
【請求項118】
哺乳動物がヒトである、請求項117のデバイス。
【請求項119】
ウイルスが、生ウイルス、弱毒化ウイルスおよび死ウイルスから成る群から選択される少なくとも2種のメンバーを含んでなる、請求項80のデバイス。
【請求項120】
経路が天然ではない経路である、請求項80のデバイス。
【請求項121】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーである、請求項120のデバイス。
【請求項122】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御量を内包ビヒクルと組合せ、それにより該ワクチンを製造することを含んでなる方法。
【請求項123】
ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを製造する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞を内包ビヒクルと組合せ、それにより該ワクチンを製造することを含んでなる方法。
【請求項124】
動物内にCD8+T細胞免疫防御および/または抗体免疫防御応答を誘発する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発する方法。
【請求項125】
動物内にCD8+T細胞免疫防御応答を誘発する方法であって、ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発する方法。
【請求項126】
動物が哺乳動物である、請求項124の方法。
【請求項127】
哺乳動物がヒトである、請求項126の方法。
【請求項128】
ウイルスによる感染に対して動物を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与す
ることを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該感染に対して該動物を防御する方法。
【請求項129】
ウイルスによる感染に対して動物を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該感染に対して該動物を防御する方法。
【請求項130】
動物が哺乳動物である、請求項128の方法。
【請求項131】
哺乳動物がヒトである、請求項130の方法。
【請求項132】
動物内のウイルス感染を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する方法。
【請求項133】
動物内のウイルス感染を防御する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物内のウイルス感染を防御する方法。
【請求項134】
動物が哺乳動物である、請求項132の方法。
【請求項135】
哺乳動物がヒトである、請求項134の方法。
【請求項136】
動物内のウイルス感染を処置する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する方法。
【請求項137】
動物内のウイルス感染を処置する方法であって、該ウイルスのCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなるワクチンを該動物に投与することを含んでなり、それによりCD8+T細胞および/または抗体免疫応答を該動物内に誘発しそれにより該動物を処置する方法。
【請求項138】
動物が哺乳動物である、請求項136の方法。
【請求項139】
哺乳動物がヒトである、請求項138の方法。
【請求項140】
生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物であって、動物内に疾患を起こさない経路による該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導する組成物。
【請求項141】
生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物であって、動物内に疾患を起こさない経路による該動物への該生体作用活性薬剤の投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導する組成物。
【請求項142】
経路が天然ではない経路である、請求項140の組成物。
【請求項143】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される、請求項140の組成物。
【請求項144】
生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される、請求項140の組成物。
【請求項145】
生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項140の組成物。
【請求項146】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーを含んでなる、請求項140の組成物。
【請求項147】
内包ビヒクルがナノチューブ内に装入される、請求項146の組成物。
【請求項148】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項147の組成物。
【請求項149】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項148の組成物。
【請求項150】
ポリマーが該生体作用活性薬剤と会合され、それにより周囲環境内への該生体作用活性薬剤の放出を遅延させる、請求項148の組成物。
【請求項151】
ポリマーがゲルである、請求項148の組成物。
【請求項152】
生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される、請求項140の組成物。
【請求項153】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法であって、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性および/または抗体免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞および/または抗体応答を誘導し、さらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている方法。
【請求項154】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法であって、生体作用活性薬剤のCD8+T細胞免疫防御性の量を含んでなる組成物を該動物へ投与することを含んでなり、ここで該動物内に疾患を起こさない経路による該生体作用活性薬剤の投与の後に該生体作用活性薬剤が該動物内に免疫防御性CD8+T細胞応答を誘導し、さらにここで該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包されている方法。
【請求項155】
生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される、請求項153の方法。
【請求項156】
生体作用活性薬剤の生物学的に有効な量を含んでなる組成物であって、ここで、動物内に疾患を起こさない経路により該動物に該生体作用活性薬剤を投与の後に、該生体作用活性薬剤が該動物内に所望の応答を誘導し、一方ではリスクを低減する組成物。
【請求項157】
経路が天然ではない経路である、請求項156の組成物。
【請求項158】
経路が、皮下、皮内、筋肉内、粘膜および経口から成る群から選択される、請求項157の組成物。
【請求項159】
生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内に内包される、請求項156の組成物。
【請求項160】
生体作用活性薬剤が、該内包ビヒクル内に内包される前にナノチューブ、リポソームまたはタンパク質と会合される、請求項156の組成物。
【請求項161】
内包ビヒクルが、ゲル、液体または粉体から成る群から選択される少なくとも1種のメンバーである、請求項156の組成物。
【請求項162】
内包ビヒクルがミクロカプセル、ナノカプセルまたはナノチューブ内に装入される、請求項159の組成物。
【請求項163】
内包ビヒクルがポリマーを含んでなる、請求項159の組成物。
【請求項164】
ポリマーが、動物に投与された場合に毒性ではない、請求項163の組成物。
【請求項165】
ポリマーが生体作用活性薬剤と会合され、それにより周囲環境内への該生体作用活性薬剤の放出を遅延させる、請求項163の組成物。
【請求項166】
ポリマーがゲルである、請求項163の組成物。
【請求項167】
生体作用活性薬剤が、微生物およびタンパク質から成る群から選択される、請求項156の組成物。
【請求項168】
動物に生体作用活性薬剤を投与して安全性を上昇する方法であって、動物内で所望の応答を誘導し同時にリスクを低減する生体作用活性薬剤の量を含んでなる組成物を該動物に投与することを含んでなり、ここで、該生体作用活性薬剤の投与の経路が該動物内に疾患を起こさない経路であり、そしてさらにここで該生体作用活性薬剤を投与する際に該生体作用活性薬剤が内包ビヒクル内で内包されそれにより安全性を上昇する方法。
【図1】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図6】
【図7】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公表番号】特表2008−526870(P2008−526870A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550464(P2007−550464)
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/000323
【国際公開番号】WO2006/074303
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507227566)フイラデルフイア・ヘルス・アンド・エデユケーシヨン・コーポレーシヨン (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際出願番号】PCT/US2006/000323
【国際公開番号】WO2006/074303
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(507227566)フイラデルフイア・ヘルス・アンド・エデユケーシヨン・コーポレーシヨン (1)
【Fターム(参考)】
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