説明

送配電設備監視システム、送配電設備監視方法

【課題】送配電設備の保守作業の効率化を図る。
【解決手段】複数の送配電設備を遠隔的に監視する送配電設備監視システムにおいて、前記複数の送配電設備毎に設けられる音又は振動を検出する検出部と、事故が発生した事故送配電設備の事故時点を含む事故情報を取得する取得部と、前記取得部により取得した前記事故情報に含まれる事故時点又は当該事故時点を含む所定期間において前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データに基づいて、前記事故送配電設備を特定する特定部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送配電設備監視システム、送配電設備監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
送電鉄塔や配電柱等の支持物に架設された送配電線の故障点(地絡事故点や短絡事故点)を検出する故障点検出システムが提案されている。
例えば、特許文献1には、配電柱の碍子に音響センサを設置し、架空配電線の劣化部の音響放射を検知して伝送する技術が開示されている。
また、特許文献2、3には、送電鉄塔における送電線の故障の際に発生する故障電流と音とを測定した結果に基づいて、故障点を検出する方法およびその装置に係る技術が開示されている。
【特許文献1】特開平6−347451号公報
【特許文献2】特開平11−125652号公報
【特許文献3】特開2002−340967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に開示された技術では、音響センサの出力に基づいて、風に起因する異常振動により架空配電線内の素線等に生じる疲労クラック(劣化)を検出するものである。従って、音響センサの出力のみに依存しているため、風音、雨音、コロナ雑音等といった暗雑音の影響を受けて故障点を誤検出する虞があり、また、地絡事故や短絡事故等の故障点を検出対象とはしていない。
【0004】
また、特許文献2、3に開示された技術では、送電鉄塔や配電柱に故障点検出装置および表示装置を設置している。このため、故障発生時に、巡視員が現場に出向いて送電鉄塔や配電柱を逐次点検をして故障点を確認した後、復旧員が必要な道具類を持参して修理対応を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、複数の送配電設備を遠隔的に監視する送配電設備監視システムにおいて、前記複数の送配電設備毎に設けられる音又は振動を検出する検出部と、事故が発生した事故送配電設備の事故時点を含む事故情報を取得する取得部と、前記取得部により取得した前記事故情報に含まれる事故時点又は当該事故時点を含む所定期間において前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データに基づいて、前記事故送配電設備を特定する特定部と、を有することを特徴とする。
【0006】
上記システムにおいて、前記事故情報は、事故区間を含んでおり、前記特定部は、前記事故区間内の前記送配電設備を対象として特定してもよい。
【0007】
また、前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データを、当該検出データの検出時刻並びに前記送配電設備と対応づけて記憶する記憶部を有し、前記特定部は、前記事故時点を含む所定期間並びに前記事故区間における前記送配電設備に対応づけられた、前記記憶部に記憶される時系列の検出データのレベル変化に基づいて前記事故送配電設備を特定してもよい。
【0008】
また、前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データを、当該検出データの検出時刻並びに前記送配電設備と対応づけて記憶する記憶部を有し、前記特定部は、前記事故時点を含む所定期間並びに前記事故区間における前記送配電設備に対応づけられた、前記記憶部に記憶される時系列の検出データの中より、所定のレベル範囲から外れた検出データを検索し、その検索された検出データに対応づけられた前記送配電設備を前記事故送配電設備として特定してもよい。なお、前記所定のレベル範囲は、前記記憶部に記憶された曜日毎又は時間帯毎の検出データに基づいて、曜日毎又は時間帯毎に設定されることが好ましい。
【0009】
また、前記送配電設備は、送電鉄塔又は配電柱としてもよく、さらに、前記事故は、前記送電鉄塔に架設された送電線又は前記配電柱に架設された配電線における地絡事故又は短絡事故としてもよい。
【0010】
また、前記送配電設備に設けられ前記送配電設備の状況を撮影する撮影部と、前記撮影部により撮影された映像を表示する表示部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、送配電設備の保守作業の効率化を図る送配電設備監視システム、送配電設備監視方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<<<送配電設備監視システムの全体構成>>>
図1をもとに、図2も参照しつつ本発明の一実施形態に係る送配電設備監視システムの全体構成を説明する。図1に示す送配電設備監視システムは、中央監視制御局(電力会社の中央給電指令所、営業所、支社等)において、送配電系統を構成する送配電設備を遠隔的に監視しており、当該送配電設備に事故が発生した際に生じる音(例えば、閃絡(ショート)音)により、別途取得しておいた事故時点を含む事故情報との照合によって、事故送配電設備を高精度に特定しようとするシステムである。
【0013】
図1に示す送配電系統は、発電所や送電用変電所に配設される遮断器9から送電される電力が、複数の送電鉄塔40の間に架設された送電線Cを介して配電用変電所A、Bに供給され、さらに、配電用変電所A、Bにおいて変電された電力が配電線A、Bを介して需要者(不図示)に供給される系統例を表している。
【0014】
配電用変電所A、Bに設置される変圧器10、10bの2次側には、遮断器11a、11bが接続される。中継装置16a、16bは、中央監視制御局に配設される監視制御装置100の親局103に対する子局として機能し、遮断器11a、11bは、監視制御装置100からの指令により、配電線A、Bの事故発生時に自動開放/自動投入が行われる。
【0015】
また、遮断器11a、11bの2次側には、地絡事故検出用の零相電流検出器18a、18b並びに短絡事故検出用の過電流検出器19a、19bが設置される。これらの検出結果は、中継装置16a、16bを介して監視制御装置100に送信される。
【0016】
配電線A、Bは、常閉型の区分開閉器12a、12bによって、複数の区間#n(n=0、1、・・・)に区分される。また、配電線Aにおける複数の区間#nのうち少なくともいずれか一区間では、その主幹線の分岐先に設置された常開型の連系用開閉器13を介して、配電線Bとの連系が行われる。尚、区分開閉器12a、12bや連系用開閉器13毎に、子局14a、14bが設置される。
【0017】
子局14a、14bは、配電用変電所A、Bに設けられた中継装置16a、16bを介して通信線210(光ファイバケーブル、メタル回線)及び通信網200と接続される。子局14a、14bは、区分開閉器12a、12bの開放/投入の状態を示す開閉情報を監視制御装置200に向けて送信する機能と、監視制御装置200からの開放指令若しくは投入指令を受信して区分開閉器12a、12b、連系用開閉器13の開放若しくは投入を制御する機能等を有する。尚、子局14a、14b毎に零相電流検出器18a、18b並びに過電流検出器19a、19bを設けてもよい。
【0018】
区分開閉器12a、12bによって区分された複数の区間#n毎に配電柱30a、30bが配置される。
配電柱30a、30bには、自配電柱30a、30b及びその周辺の音を検出する音センサ15a、15bが設置される。音センサ15a、15bは、ダイナミック(電磁誘導型)マイクロフォン、コンデンサマイクロフォン、超音波センサ等が用いられ、特に地絡事故や短絡事故によって発生する閃絡音を検出対象としている。閃絡音は、配電柱30a、30bと配電線A、Bとの間で電位差が大きくなり、碍子302のアークホーン間で閃絡(又は逆閃絡)することにより発生する放電音である。また、音センサ15a、15bは、図2に示すように、配電柱30a、30bの上部にある腕金301上に設けられる碍子302又はその周辺の変圧器等といった、閃絡音を感知しやすい箇所に設置される。
【0019】
また、配電柱30a、30bには、図2に示すように、配電柱30a、30bの上部と下部それぞれに監視カメラ17a、17bが設置される。尚、上部の監視カメラ17aは、人物接近が稀な位置に設置されるため、配電柱30a、30bの周囲の状況を広範囲に監視するために360度回転可能であることが好ましい。また、下部の監視カメラ17bは、上部の監視カメラ17aによる監視の補完的な役割を果たすものであるが、人物接近の虞がある位置に設置されるため、埋め込み等して目立たない位置に設置する方が好ましい。
【0020】
さらに、配電柱30a、30bには、自配電柱30a、30bの各種状態信号(音、映像等)を監視制御装置200に向けて伝送するデータ伝送装置20a、20bが設置される。尚、データ伝送装置20a、20bは、子局14a、14bと同様に、配電用変電所A、Bに設けられた中継装置16a、16bを介して通信線210及び通信網200と接続される。
【0021】
送電鉄塔40には、配電柱30a、30bと同様に、自送電鉄塔40周辺の音を検出する音センサ15cと、不図示の監視カメラと、自送電鉄塔40の各種状態信号(音、映像等)を監視制御装置200に伝送するデータ伝送装置20cと、が設置される。
【0022】
監視制御装置100は、CPU101と、表示装置102と、親局103と、データベース104と、が相互に通信可能に接続されて構成される。
CPU101は、親局103において子局14a、14bやデータ伝送装置20a〜20cより受信された情報や、データベース104に記憶された情報等に基づいて、システム全体を統括制御する情報処理装置である。
表示装置102は、CPU101により情報処理された結果や、監視カメラ17a、17bで撮影された送配電設備の映像を表示する。
【0023】
親局103は、通信線210及び通信網200と中継装置10、16aを介して、子局14a、14bやデータ伝送装置20a〜20cと相互に通信可能に接続される。親局103は、子局14a、14bやデータ伝送装置20a〜20cからの各種状態信号(音、映像、開閉情報等)を受信する機能と、子局14a、14bを介して区分開閉器12a、12bに向けて開放指令若しくは投入指令を送信する機能等、を有する。データベース104は、後述のとおり音圧データを蓄積して記憶する。
【0024】
以上のとおり、送配電設備監視システムが構築され、中央監視制御局に配設された監視制御装置100が、区分開閉器12a、12b、配電柱30a、30b、送電鉄塔40等といった送配電設備に設置された子局14a、14b、データ伝送装置20a〜20cからの各種状態信号によって、送電線Cや配電線A、Bを含めた当該送配電設備を遠隔的に監視制御することになる。
【0025】
<<<事故送配電設備の特定手順>>>
図3に示すフローチャートをもとに、図4乃至図7を適宜参照しながら、事故発生の際に検出される音と、別途取得される事故情報に含まれる事故時点と、の照合に基づく、図1に示した送配電設備監視システムの事故送配電設備の特定手順を以下に説明する。
【0026】
まず、監視制御装置100は、事前に、配電柱30a、30bに設置された音センサ15a、15bにより検出された音と、送電鉄塔40に設置された音センサ15cにより検出された音と、を親局103とデータ伝送装置20a〜20cとの間の通信(例えば、パケット通信)により取得する(S300)。
【0027】
尚、監視制御装置100は、音センサ15a〜15cで検出される音を、所定のサンプリング周期(例えば、数秒単位、数分単位)でデジタル量の音圧データ(dB)として取得する。この際、周波数解析により閃絡音の周波数帯域(0〜60kHz)以外の周波数を持つ雑音データを除去しつつ取得する手順が好ましい。
【0028】
つぎに、監視制御装置100は、図4に示すように、データ伝送装置20a〜20cから取得した音圧データを曜日毎(月曜〜日曜)並びに時間帯毎(例えば、1時間毎)に分類しつつデータベース104に記憶しておく。そして、図5に示すように、事故未発生と見なさせる所定の音圧レベル範囲(同図に示す閾値Aから閾値Bまでの範囲)を、データベース104に記憶された曜日毎又は時間帯毎の音圧データに基づいて、曜日毎又は時間帯毎に設定する。尚、所定の音圧レベル範囲は、例えば、曜日毎又は時間帯毎の音圧データの中で、上限レベルから10%以下のレベル(図5に示す閾値A)から下限レベルから10%以上のレベル(図5に示す閾値B)までの範囲とする。尚、閃絡音の音圧は、暗雑音(風音、雨音、コロナ雑音等)の音圧と対比してレベルの大きな音圧を示していることが知られている。従って、閾値Aは、暗雑音の音圧よりも大きいレベルに設定することが好ましい。
【0029】
上記のように所定の音圧レベル範囲が設定された後、監視制御装置100は、音センサ15a乃至15cから音圧データを常時取得し(S300)、当該音圧データが検出された時刻並びに配電柱30a、30bや送電鉄塔40に付与される識別子と対応づけてデータベース104に蓄積して記憶する。尚、データベース104に記憶する際に、図4に示されるように曜日毎及び時間帯毎に分類しつつ記憶する。
【0030】
つぎに、監視制御装置100は、少なくとも事故時点を含む事故情報、好ましくは少なくとも事故時点及び事故区間を含む事故情報を取得する(S301)。尚、その他の事故情報としては、事故が発生した配電柱30a、30bや送電鉄塔40に付与される識別子が挙げられる。事故情報の取得手順については、例えば、図6に示されるように、配電線Aの区間#1に地絡事故または短絡事故が発生した場合を例に挙げて、以下その概要を説明する。
【0031】
事故発生時に、遮断器11aが直ちに開放(初回遮断)されて、事故区間#1を含んだ配電線A全体が停電となり、配電線A全ての区分開閉器12aは開放される。遮断器11aの初回遮断から一定時間経過後、遮断器11aが再投入(再閉路)され、監視制御装置100からの指令又は現場の保護リレーにより区分開閉器12aが電源側から負荷側に向けて順に時限投入される。そして、事故区間#1への送電が行われると、遮断器11aは再び開放(再閉路失敗)されて配電線A全体が再び停電となる。このとき、事故区間#1の区分開閉器12aは以後開放状態へとロックされる。従って、事故時点は、再閉路から再閉路失敗までの時間計測によって検出でき、事故区間#1は、事故時点及び区分開閉器12aのロック状態等に基づいて検出できる。
【0032】
尚、地絡事故の程度(例えば、微地絡事故)によっては遮断器11aが開放されず、上記の手順によって事故時点並びに事故区間が検出できない場合がある。しかし、配電用変電所Aの遮断器11aに設置された地絡検出器(例えば、零相変流器)の検出タイミングによって事故時点の検出は可能である。
【0033】
つぎに、監視制御装置100は、取得した事故情報に含まれる事故時点において検出された音圧データに基づいて、事故送配電設備を特定する(S302)。具体的には、事故情報に含まれる事故時点とデータベース104に記憶された音圧データの検出時刻とを照合し、データベース104に記憶された事故時点を含む所定期間(例えば、前後1秒)内に検出された時系列の音圧データの中から、所定の音圧レベル範囲から外れたデータを検索する。そして、その検索された音圧データに対応づけられた送配電設備を事故送配電設備として特定する。
【0034】
尚、事故情報として事故時点のみならず事故区間についても検出される場合には、事故時点を含む所定期間並びに事故区間における送配電設備に対応づけられたデータベース104に記憶される音圧データの中から、所定の音圧レベル範囲から外れたデータを検索し、この検索された音圧データに対応づけられた送配電設備を事故送配電設備として特定する手順が好ましい。例えば、図7に示される例では(配電線Aの系統とする。)、事故時点が時刻t4から時刻t6までの範囲内であり、事故区間内で識別子0から4までの配電柱30aが含まれる場合であって、時刻t5における識別子1乃至3の配電柱30aの音センサ15aにより検出された音圧データが所定の音圧レベル範囲から外れる場合を示している。従って、事故送配電設備の候補としては、識別子1乃至3の配電柱30aが特定される。
【0035】
尚、所定の音圧レベル範囲を設定せずに(即ち、事前に音圧データを採取することなしに)、事故送配電設備を特定する手順も考えられる。例えば、データベース104に記憶される音圧データの中で、事故時点を含む所定期間内において音圧が急峻に変化している音圧データ(例えば、所定の音圧変化勾配(単位時間当たりの音圧変化量)が所定の閾値レベルを超える音圧データ)を検索し、その音圧データに対応づけられる送配電設備を事故送配電設備として特定してもよい。
【0036】
つぎに、監視制御装置100は、特定された事故送配電設備の情報を表示装置102に画面表示する(S303)。この結果、監視員は、事故送配電設備の監視カメラ17a、17bによって撮影された事故現場の映像を表示装置102に画面表示させて、より詳細な事故状況を確認することが可能となる。
【0037】
ところで、送配電設備は、事故の際に異常音(上記の閃絡音)を発生する以外に、異常振動を引き起こす場合がある。異常振動を引き起こす事故の例としては、例えば、強風時による送電線Cや配電線A、Bの断線、降雪により送電線Cや配電線A、Bに積もった雪の加重による断線や腐食等が挙げられる。また、この際、断線等に伴い地絡事故又は短絡事故が発生するので、上記の異常音の場合と同様に、零相電流検出器18a、18b並びに過電流検出器19a、19bによって事故時点を少なくとも含む事故情報が取得される。
【0038】
そこで、送配電設備の事故の際に生じる異常振動を検出すべく、音センサ15a乃至15cの代わりに静電容量型、渦電流型、圧電素子型等の振動センサ(不図示)を用いても良い。即ち、送配電設備監視システムは、音センサ15a乃至15cの場合における事故送配電設備の上記特定手順並びにその手順を実行するための上記構成を利用して、振動センサにより検出される振動を示す変位データと、別途取得しておいた事故情報に含まれる事故時点との照合により、事故送配電設備を遠隔的に且つ高精度に特定することができる。
【0039】
以上、本発明に係る送配電設備監視システムよって、遠方の送配電設備毎に設けられた音センサ15a乃至15cによって検出される音又は振動センサによって検出される振動のみに依存せず、別途取得しておいた事故情報に含まれる事故時点との照合により事故送配電設備を遠隔的且つ高精度に特定できる。尚、高精度に特定できるとしたのは、風音、雨音、コロナ雑音等といった暗雑音や、事故とはいえない雨風雪等による軽い振動の影響がより確実に抑えられるからである。これらの結果、その後の復旧処理に速やかに移行することができ、保守作業の効率化が図られる。
【0040】
また、事故情報として事故時点のみならず事故区間をも取得できる場合には、事故時点並びに事故区間と、音又は振動を示す検出データと、の照合により、事故送配電設備の特定をより高精度に行うことができる。
【0041】
また、事故時点の時刻並びに事故区間における送配電設備に対応づけられた記憶部に記憶される音又は振動を示す時系列の検出データの中でのレベル変化に基づいて、事故送配電設備の特定をより効率的に行うことができる。
【0042】
また、事故未発生の場合における所定の音圧レベル範囲又は所定の変位レベル範囲を定めておくことで、事故時点並びに事故区間と、音又は振動を示す検出データと、の照合による事故送配電設備の特定を、より高精度に且つより効率的に行うことができる。さらに、曜日毎又は時間帯毎に所定の音圧レベル範囲又は所定の変位レベル範囲を定めておけば、事故送配電設備の特定がより現場の状況を加味した形でより高精度に行うことができる。
【0043】
また、音センサ15a乃至15cや振動センサを設ける送配電設備を送電鉄塔40又は配電柱30a、30bとすることで、送電線Cや配電線A、Bに設ける場合等と対比して、事故の発生しやすい箇所に音センサ15a乃至15cや振動センサを設けることができる。尚、この場合、送電鉄塔40に架設される送電線C又は配電柱30a、30bに架設される配電線A、Bの主要な事故である地絡事故又は短絡事故を検出対象とすることができる。
【0044】
また、送配電設備に監視カメラ17a、17bを設けることで、事故送配電設備を特定した後に、監視員が、事故の詳細を遠隔的に検証することが可能となる。
【0045】
以上、本実施の形態について説明したが、前述した実施例は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更/改良され得るととともに、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の一実施形態に係る送配電設備監視システムの全体構成を示した図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る音センサ並びに監視カメラの配電柱における設置態様を示した図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る送配電設備監視システムによる事故送配電設備の特定手順を示したフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態に係るデータベースへの音圧データを記憶する際のフォーマットを示した図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る所定の音圧レベル範囲を説明するための図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る事故情報の取得手順を説明するための図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る事故送配電設備の特定手順を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
14a、14b 子局(取得部)
15a、15b、15c 音センサ(検出部)
16a、16b 中継装置(取得部)
17a、17b 監視カメラ(撮影部)
18a、18b 零相電流検出器(取得部)
19a、19b 過電流検出器(取得部)
20a〜20c データ伝送装置
30a、30b 配電柱
40 送電鉄塔
100 監視制御装置(コンピュータ)
101 CPU(特定部)
102 表示装置(表示部)
103 親局(取得部)
104 データベース(記憶部)
200 通信網(取得部)
210 通信線(取得部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の送配電設備を遠隔的に監視する送配電設備監視システムにおいて、
前記複数の送配電設備毎に設けられる音又は振動を検出する検出部と、
事故が発生した事故送配電設備の事故時点を含む事故情報を取得する取得部と、
前記取得部により取得した前記事故情報に含まれる事故時点又は当該事故時点を含む所定期間において前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データに基づいて、前記事故送配電設備を特定する特定部と、
を有することを特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項2】
請求項1に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記事故情報は、事故区間を含んでおり、
前記特定部は、前記事故区間内の前記送配電設備を対象として特定すること、を特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項3】
請求項1に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データを、当該検出データの検出時刻並びに前記送配電設備と対応づけて記憶する記憶部を有し、
前記特定部は、前記事故時点を含む所定期間並びに前記事故区間における前記送配電設備に対応づけられた、前記記憶部に記憶される時系列の検出データのレベル変化に基づいて前記事故送配電設備を特定すること
を特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項4】
請求項1に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データを、当該検出データの検出時刻並びに前記送配電設備と対応づけて記憶する記憶部を有し、
前記特定部は、前記事故時点を含む所定期間並びに前記事故区間における前記送配電設備に対応づけられた、前記記憶部に記憶される時系列の検出データの中より、所定のレベル範囲から外れた検出データを検索し、その検索された検出データに対応づけられた前記送配電設備を前記事故送配電設備として特定すること、
を特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項5】
請求項4に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記所定のレベル範囲は、前記記憶部に記憶された曜日毎又は時間帯毎の検出データに基づいて、曜日毎又は時間帯毎に設定されること、
を特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項6】
請求項1に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記送配電設備は、送電鉄塔又は配電柱であること、
を特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項7】
請求項6に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記事故は、前記送電鉄塔に架設された送電線又は前記配電柱に架設された配電線における地絡事故又は短絡事故であること、
を特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項8】
請求項1に記載の送配電設備監視システムにおいて、
前記送配電設備に設けられ前記送配電設備の状況を撮影する撮影部と、
前記撮影部により撮影された映像を表示する表示部と、
を有することを特徴とする送配電設備監視システム。
【請求項9】
複数の送配電設備と通信可能に接続されるコンピュータが当該複数の送配電設備を遠隔的に監視する送配電設備監視方法において、
前記コンピュータが、前記複数の送配電設備毎に設けられる検出部より検出された音又は振動を示す検出データを取得するとともに、事故が発生した事故送配電設備の事故時点を含む事故情報を取得するステップと、
前記コンピュータが、取得した前記事故情報に含まれる事故時点又は当該事故時点を含む所定期間において前記検出部より検出された音又は振動を示す検出データに基づいて、前記事故送配電設備を特定するステップと、
を有することを特徴とする送配電設備監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−293946(P2009−293946A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−144802(P2008−144802)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】