説明

送電線異常張力検出金具

【課題】異常張力が発生している状態を外側から容易に視認することができること。
【解決手段】 線側のホーン取付金具と耐張クランプのリンク機構とを張力規定値よりも十分大きな強度を有するリンク金具で連結し、このリンク金具の両外側に張力規定値で中央部が破断する一対の張力計を装着し、ホーン取付金具側と耐張クランプ側にそれぞれ設けられた連結用孔に連結部材を挿通することによって装着する。また、リンク金具は、内側にホーン取付金具を嵌め込む略コの字形の形状部、耐張クランプ側はホーン取付金具と同一の厚さで形成され耐張クランプのリンク機構に嵌め込まれる板状の形状部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線耐張装置の線側連結金具に介装する送電線異常張力検出金具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、各電力会社においては、架空送配電線の設備保全の一環として、張力の異常を検出する測定具などを用いて送電線に発生する異常張力を監視するシステムが採用されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、架空電線耐張装置の地側連結金具に異常張力を検出するための張力計を介装するようにした架空電線張力測定具が提案されている。
【0004】
これは、リンク金具の連結軸挿通孔を、地側連結金具で張力計を引張した状態において連結軸に遊嵌することによって、架空送電線建設後の張力計の取付けを簡単にしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平6−72124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の従来の技術は、リンク金具の内部に張力計を設置しているため、張力計が伸びきった状態や破断した状態、つまり、異常張力が発生している状態を外側から容易に視認することができないという問題がある。
【0007】
また、リンク金具の連結軸挿通孔を、地側連結金具で張力計を引張した状態において連結軸に遊嵌するようにしているので、張力計が伸びきった状態や破断した場合にアークホーン間隔(地側アークホーンと線側アークホーンとの間隔)が大きくなる可能性があるという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のかかる事情に鑑みてなされたものであり、異常張力が発生している状態を外側(地上)から容易に視認することができ、張力計が破断した場合でもアークホーン間隔の変動が少ない送電線異常張力検出金具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明に係る送電線異常張力検出金具(1)は、線側のホーン取付金具(3)と耐張クランプ(2)のリンク機構(21)との間に装着される送電線異常張力検出金具であって、 前記ホーン取付金具と前記耐張クランプのリンク機構とを連結する金具であり、前記ホーン取付金具側は前記耐張クランプのリンク機構と略同一の内寸(A)および外寸(B)で形成され内側に前記ホーン取付金具(3)を嵌め込む略コの字形の形状部(11a)を有し、前記耐張クランプ側は前記ホーン取付金具と略同一の厚さで形成され前記耐張クランプのリンク機構に嵌め込まれる板状の形状部(11b)を有するリンク金具(11)と、前記リンク金具および前記耐張クランプのリンク機構(21)の両外側に装着され、該リンク金具と共に前記ホーン取付金具と前記耐張クランプのリンク機構とを連結する一対の張力計(12a,12b)であり、それぞれ規定値を超える異常張力が加わったときに前記ホーン取付金具側と前記耐張クランプ側の略中間位置で破断する破断部(50a,50b)を有する張力計(12)と、前記張力計の第1の連結用孔(51a,51b)と、前記リンク金具の前記略コの字形の形状部に設けられた連結用孔(11c)と、前記ホーン取付金具の連結用孔と、に挿通される第1の連結部材(71b,72b)と、前記張力計の連結用孔であって前記第1の連結用孔とは前記破断部に対して反対側に設けられた第2の連結用孔(52a,52b)と、前記耐張クランプのリンク機構の連結用孔と、前記リンク金具(11)の前記板状の形状部(11b)に設けられた第2の連結用孔(11d)と、に挿通される第2の連結部材(71c,72c)と、を具備し、前記リンク金具(11)の連結用孔(11c,11d)は、前記張力計を引張した状態において前記第1の連結部材(71b,72b)または前記第2の連結部材(71c,72c)に遊嵌するように形成されていることを特徴とする。
【0010】
本発明では、線側のホーン取付金具と耐張クランプのリンク機構との間に送電線異常張力検出金具を装着するようにしたので張力計が破断した場合にアークホーンの間隔の変動を抑制することができる。また、リンク金具の外側に張力計を設けるようにしたので、張力計の破断状態を外側(たとえば地上)から容易に視認することができる。
【0011】
さらに、本発明に係る送電線異常張力検出金具では、一対の張力計は、前記破断部に対して、前記第1の連結用孔側同士および前記第2の連結用孔側のうち少なくとも何れか一方が連結されて形成されていることを特徴とする。
【0012】
本発明では、張力計が破断したときでも、両側の張力計の位置のずれを抑制して、リンク金具や耐張クランプのリンク機構に加わる力の偏りを低減させることができる。
【0013】
好ましくは、リンク金具の色彩を張力計とは異なる色彩にしておくと良い。特に張力計よりもリンク金具の方を目立つ色彩にすることにより、張力計が破断したときに、地上からでもその破断状態を容易に視認することができる。
【0014】
また、本発明に係る送電線異常張力検出金具は、前記第1の連結部材によって、前記張力計と、前記リンク金具の前記略コの字形の形状部と、前記ホーン取付金具とが回動可能に連結され、前記第2の連結部材によって、前記張力計と、前記耐張クランプのリンク機構と、前記リンク金具の前記板状の形状部とが回動可能に連結されていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、従来技術よりも屈曲性が向上するため、連結部材への負担を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、線側のホーン取付金具と耐張クランプのリンク機構との間に送電線異常張力検出金具を装着するようにしたので、張力計が破断した場合でもアークホーン間隔の変動を抑制することができる。また、外側に張力計を配置したので破断状態を外側から容易に視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施の形態による架空送電線の耐張碍子装置の線側アークホーン取付部分の平面図である。
【図2】本発明の実施の形態による送電線異常張力検出金具1が破断していない状態の張力計12の斜視図(図2(a))と、正面図(図2(b))である。
【図3】本発明の実施の形態による送電線異常張力検出金具1が破断した状態の張力計12の斜視図(図3(a))と、正面図(図3(b))である。
【図4】従来の線側ホーン取付金具と耐張クランプのリンク機構との接続状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は架空送電線の耐張碍子装置の線側アークホーン取付部分の平面図であり、従来、ホーン取付金具3と耐張クランプ2のリンク機構21が直接連結されていた箇所に本実施の形態による送電線異常張力検出金具1を介装したものである。
【0019】
図4を用いて従来の構成をより詳細に説明すると、従来は、図4(a)に示すように、線側のアークホーン8を取り付けるためのホーン取付金具3には、碍子連6を取り付けるためのリンク機構61が連結部材であるボルト71aとナット72aによって接続され、ホーン取付金具3の他端には、耐張クランプ2のリンク機構21がボルト71d,ナット72dによって直接接続されていた。なお、ホーン取付金具3と耐張クランプ2のリンク機構21とを接続する構造は、種々存在し、たとえば、図4(b)に示すような平行クレビス4を介して接続するような場合もあるが、基本的には、ホーン取付金具3の板状部分をコの字形状の部材で挟み、連結用孔に挿入された連結部材によって連結している。
【0020】
本発明は、このように従来の線側ホーン取付金具3と耐張クランプ2のリンク機構21との連結部分に送電線異常張力検出金具1を介装して連結するものである。
【0021】
以下、図2を用いて本発明の実施の形態による送電線異常張力検出金具1の構成を説明する。
【0022】
図2は、送電線異常張力検出金具1が破断していない状態の張力計12の斜視図(図2(a))と、正面図(図2(b))である。なお、図2(a)は、送電線異常張力検出金具1の構成部品であるリンク金具11と張力計12の組合せの様子を表すものであり、図2(b)は、各構成部品が組み合わされ連結部材が挿入されている状態を表している。
【0023】
図2において、送電線異常張力検出金具1は、リンク金具11と、張力計12と、連結部材(71b,72b,71c,72c)から構成されている。なお、連結部材としては、たとえば、従来と同様にボルトとナットを用いても良いが、これに限らず、頭付きピンと割りピンなどを用いるようにしても良い。本実施の形態では、連結部材としてボルトとナットを用いた場合を例に説明する。
【0024】
リンク金具11は、ホーン取付金具3と耐張クランプ2のリンク機構21とを連結する。リンク金具11のホーン取付金具側は耐張クランプ2のリンク機構21と略同一の内寸Aおよび外寸Bのコの字型形状で形成されており、このコの字形状部分11aの内側には板状のホーン取付金具3が嵌まるようになっている。また、リンク金具11の耐張クランプ2側はホーン取付金具3と略同一の厚さの板状に形成されており、この板状部分11bは、耐張クランプ2のリンク機構21に嵌められる。
【0025】
送電線異常張力検出金具1の張力計12は、リンク金具11の両外側から装着され、リンク金具11と共にホーン取付金具3と耐張クランプ2のリンク機構21とを連結する一対の張力計12a,12bを有するユニットであり、各張力計12a,12bは規定値を超える異常張力が加わったときにホーン取付金具3側と耐張クランプ2側の略中間位置で破断する破断部50a,50bを有している。張力計12a,12bの中間の破断部50a,50bの許容引張強度は、必要限度内でリンク金具11やその他の連結金具よりも小さく定められている。
【0026】
そして、図2(a)に示すように、リンク金具11を張力計12の内側に装着し、張力計12の連結用孔51a、51bとリンク金具11の連結用孔11cの軸Cを合わせて、さらに、リンク金具11のコの字形状部11aの内側にホーン取付金具3を装着し、ホーン取付金具3の連結用孔の中心軸を軸Cに合わせ、この軸Cに沿ってボルト71bを挿通しナット72bで止める。同様に、張力計12の連結用孔52a、52bと、耐張クランプ2のリンク機構21の連結用孔と、リンク金具11の連結用孔11dの軸Eを合わせてこの軸Eに沿ってボルト71cを挿通しナット72cで止める。なお、本実施の形態における送電線異常張力検出金具1は、リンク金具を一対の張力計で挟着するという構造ではなく、ボルト71b,71cの位置において、ホーン取付金具3,リンク金具11の板状の形状部11bがそれぞれ回動可能になっている。
【0027】
図2(a)に示すように張力計12a,12bの両連結用孔51a−52a、および、連結用孔51b−52bの最大間隔は、リンク金具11の連結用孔11c―11dの最大間隔より所定値短くなっている。これにより、リンク金具11がボルト71b,71cに遊嵌している状態となり、張力計12a,12bによって架空送電線の異常張力を検出できる。
【0028】
上記の如く、張力計12a,12bの略中間位置は、その他の部分に比べて引っ張り強度が弱くなっており、規定値以上の張力が加わったときにこの部分(破断部50a,50b)が破断するように形成されている。たとえば、スリット状の溝を設けるなど他と比べて断面積を小さくすることによって、規定値以上の張力が加わったときにはこの部分が破断するようにすることができる。
【0029】
このように、張力計12a,12bは、それぞれ略中間位置にスリット状の破断部50a,50bを有し、両端にホーン取付金具3と連結するための連結用孔51a,51b,耐張クランプ2のリンク機構21と連結するための連結用孔52a,52bを有している。張力計12は、この一対の長楕円形状の張力計12a,12bが破断部50a,50bに対して反対側に設けられた連結部12c,12dで連結した形になっている。すなわち、張力計12は、この連結部12c,12dによって、破断部50a,50bに対して、張力計12a,12bのホーン取付金具側同士および耐張クランプ側同士がそれぞれ連結される構造になっている。連結部12c,12dは、連結部材71b,72b、または連結部材71c,72cで締結しても変形しない程度に十分な強度をもって形成する。これにより、張力計12a,12bに均等に引っ張り力が加わるようになる。この場合、それぞれの張力計は、異常張力の規定値のほぼ半分の値に設定することができる。
【0030】
次に上記の構成を有する送電線異常張力検出金具1の作用を説明する。
送電線異常張力検出金具1に規定値を超える張力が加わると、図3(a)(b)に示すように送電線異常張力検出金具1の張力計12a,12bの破断部50a,50bが破断する。
【0031】
張力計12a,12bの破断部50a,50bが破断すると、連結ボルト71bの位置が遊嵌位置Cから係合位置Dに変わり、連結部ボルト71b,71cを介してリンク金具11と係合する。このリンク金具11によって、ホーン取付金具3と耐張クランプ2との連結が維持される。
【0032】
また、連結部12c,12dは、張力計12a,12bの一方が破断したときに、破断側である連結用孔51a−52a間、または、連結用孔51b−52b間の間隔が大きくずれることを防止し、連結部材が連結用孔に対して、略垂直に挿通されている状態を維持する。なお、連結部12c,12dは両方設けるのが好ましいが、少なくとも何れか一方が存在すれば、程度の違いはあるものの上記効果を奏する。
【0033】
以上、本実施の形態によれば、一対の張力計をリンク金具およびリンク機構の外側に外嵌するので、破断したときに、地上から容易に視認にすることができる。このとき、リンク金具あるいはリンク機構を目立つ色彩にしておけば視認性が向上する。
【0034】
また、送電線異常張力検出金具1は、線側アークホーンの外側(耐張クランプ側)へ設置するため、異常張力発生後も地側アークホーンと線側アークホーンの間隔が変わることはない。
【符号の説明】
【0035】
1 送電線異常張力検出金具
2 耐張クランプ
3 ホーン取付金具
4 平行クレビス
6 碍子連
8 アークホーン
11 リンク金具
11a コの字形状部分
11b 板状部分
11c,11d,51a,51b,52a,52b 連結用孔
12 張力計(ユニット)
12a,12b 張力計
12c,12d 連結部
21 耐張クランプ側リンク機構
50a,50b 破断部
61 碍子連側リンク機構
71a,71b,71c,71d ボルト
72a,72b,72c,72d ナット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
線側のホーン取付金具と耐張クランプのリンク機構との間に装着される送電線異常張力検出金具であって、
前記ホーン取付金具と前記耐張クランプのリンク機構とを連結する金具であり、前記ホーン取付金具側は前記耐張クランプのリンク機構と略同一の内寸および外寸で形成され内側に前記ホーン取付金具を嵌め込む略コの字形の形状部を有し、前記耐張クランプ側は前記ホーン取付金具と略同一の厚さで形成され前記耐張クランプのリンク機構に嵌め込まれる板状の形状部を有するリンク金具と、
前記リンク金具および前記耐張クランプのリンク機構の両外側に装着され、該リンク金具と共に前記ホーン取付金具と前記耐張クランプのリンク機構とを連結する一対の張力計であり、それぞれ規定値を超える異常張力が加わったときに前記ホーン取付金具側と前記耐張クランプ側の略中間位置で破断する破断部を有する張力計と、
前記張力計の第1の連結用孔と、前記リンク金具の前記略コの字形の形状部に設けられた連結用孔と、前記ホーン取付金具の連結用孔と、に挿通される第1の連結部材と、
前記張力計の連結用孔であって前記第1の連結用孔とは前記破断部に対して反対側に設けられた第2の連結用孔と、前記耐張クランプのリンク機構の連結用孔と、前記リンク金具の前記板状の形状部に設けられた第2の連結用孔と、に挿通される第2の連結部材と、を具備し、
前記リンク金具の連結用孔は、前記張力計を引張した状態において前記第1の連結部材または前記第2の連結部材に遊嵌するように形成されていることを特徴とする送電線異常張力検出金具。
【請求項2】
前記一対の張力計は、前記破断部に対して、前記第1の連結用孔側同士および前記第2の連結用孔側のうち少なくとも何れか一方が連結されて形成されていることを特徴とする請求項1に記載の送電線異常張力検出金具。
【請求項3】
前記第1の連結部材によって、前記張力計と、前記リンク金具の前記略コの字形の形状部と、前記ホーン取付金具とが回動可能に連結され、前記第2の連結部材によって、前記張力計と、前記耐張クランプのリンク機構と、前記リンク金具の前記板状の形状部とが回動可能に連結されていることを特徴とする請求項1または2に記載の送電線異常張力検出金具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−259543(P2011−259543A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−129686(P2010−129686)
【出願日】平成22年6月7日(2010.6.7)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】