説明

送電鉄塔部材の取替工法と荷重計測装置

【課題】送電鉄塔の部材交換に用いる取替工具により発生した、送電鉄塔に加わる圧縮荷重、引張荷重を計測する送電鉄塔部材の取替工法を提供することを目的とする。
【解決手段】取替工具を使用して送電鉄塔部材の交換を行うのに際し、取替工具に装着したロードセルにより送電鉄塔の主柱に加わる荷重を計測するようにした送電鉄塔部材の取替工法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電鉄塔の部材交換に用いる取替工具により発生した、送電鉄塔に加わる圧縮荷重、引張荷重を計測する送電鉄塔部材取替工法と、この取替工法に用いる荷重計測装置と、送電鉄塔の許容応力より過荷重を防止するリミット機能を有するリミット計に関するものである。
【背景技術】
【0002】
取替工具が送電線に及ぼす荷重は、油圧ポンプに取付けた油圧ゲージの値を油圧ポンプの軸力に換算することで求めていた。
【0003】
しかし、この方法では、油圧ポンプに取付けた油圧ゲージの計測分解能の低さと誤差の大きさにより、換算軸力の精度が低いことから構造物におよぼす正確な荷重が計測できないという問題がある。
【0004】
柱、梁などの構造物に加わる圧縮、引張等の荷重計測には、従来よりひずみゲージやひずみゲージを組み込んだ荷重センサー(ロードセル)が利用されており、荷重計測に関しては、ひずみゲージを構造物の表面に貼り付けたり、ロードセルを油圧ジャッキに取付けることにより荷重を計測している。
【0005】
しかし、この方法では、計測の都度ひずみゲージを構造物表面に正確に貼り付けたり、ロードセルをジャッキと構造物の間に正確に設置する必要があり、頻繁に使用する取替工具に対して適用するのは困難であるといった問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−350954
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
取替工具を使って送電鉄塔の劣化部材を交換する際に、取替工具により送電鉄塔に加わる荷重を測定する方法として、取替工具の既存部品に荷重を計測するための荷重センサーを組み込んだ部品を組み合わせることにより、計測対象となる送電鉄塔への取付けが容易になり、また取替工具の送電鉄塔への取付け状態に関係なく高精度な測定が可能な荷重計測方法および荷重計測装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による送電鉄塔の取替工法は、送電鉄塔の取り替え対象となる部材の近辺に取付ける取替工具に荷重計測装置を組み合わせて取付け、取替工具から送電鉄塔に加わる荷重を計測する。
【0009】
本発明は、取替工具を使用して送電鉄塔の部材交換を行うのに際し、取替工具に装着したロードセルにより送電鉄塔の主柱に加わる荷重を計測するようにした送電鉄塔部材の取替工法である。
【0010】
また、本発明の送電鉄塔部材の荷重計測装置は、 送電鉄塔の部材交換に用いる取替工具により発生する荷重が、送電鉄塔に加わる圧縮荷重、引張荷重を計測する送電鉄塔部材取替工法と、この取替工法に用いる荷重計測装置と、送電鉄塔の許容応力より過荷重を防止するリミット機能を有するリミット計に関するものである。
【0011】
取替工具が送電鉄塔に及ぼす荷重は、油圧ポンプに取付けた油圧ゲージの値を油圧ポンプの軸力に換算することで求めていた。
【0012】
しかし、この方法では、油圧ポンプに取付けた油圧ゲージの計測分解能の低さと誤差の大きさにより、換算軸力の精度が低いことから送電鉄塔におよぼす正確な荷重が計測できないという問題がある。
【0013】
柱、梁などの構造物に加わる圧縮、引張等の荷重計測には、従来よりひずみゲージやひずみゲージを組み込んだ荷重センサー(ロードセル)が利用されており、荷重計測に関しては、ひずみゲージを構造物の表面に貼り付けたり、ロードセルを油圧ジャッキに取付けることにより荷重を計測している。
【0014】
しかし、この方法では、計測の都度ひずみゲージを構造物表面に正確に貼り付けたり、ロードセルをジャッキと構造物の間に正確に設置する必要があり、頻繁に使用する取替工具に対して適用するのは困難であるといった問題がある。
【0015】
本発明は、主柱間に装着して主柱に加わる荷重を計測する送電鉄塔部材の荷重計測装置において、内側円筒と外側円筒を摺動自在とした円筒体内にロードセルを収容し、ロードセルを収容した円筒体を取替工具の端部に取付け、円筒体の他端と主柱との間に端部材を介在させ、円筒体の両端間の圧縮荷重、引張荷重にロードセルを対応させ、ロードセルより対応した圧縮荷重、引張荷重を発信できるようにした送電鉄塔部材の荷重計測装置である。
【0016】
さらに、本発明の荷重表示器はリミット機能を有しており、取替工具を使った送電鉄塔部材交換時の荷重検討プログラムにより検討された送電鉄塔の許容応力を事前に登録しておき、その許容応力より大きな荷重が掛った場合は、リミット機能が働き過荷重になったことを表示する。
【0017】
リミット機能が働いた場合は、過荷重になる前に取替工具の油圧ジャッキによる荷重負荷を停止する。
【0018】
本発明は、ロードセルで計測した荷重を表示するとともに、送電鉄塔の許容応力より過荷重を防止するためのリミット機能を有するリミット計を設けた請求項2記載の送電鉄塔部材の荷重計測装置である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、取替工具を使用して送電鉄塔の部材交換を行うのに際し、取替工具に装着したロードセルにより送電鉄塔の主柱に加わる荷重を計測するようにした送電鉄塔部材の取替工法であるので、取替工具を使って送電鉄塔の劣化部材を交換する際に、取替工具により送電鉄塔に加わる荷重を測定できる。
【0020】
また、本発明は、主柱間に装着して主柱に加わる荷重を計測する送電鉄塔部材の荷重計測装置において、内側円筒と外側円筒を摺動自在とした円筒体内にロードセルを収容し、ロードセルを収容した円筒体を取替工具の端部に取付け、円筒体の他端と主柱との間に端部材を介在させ、円筒体両端間の圧縮荷重、引張荷重にロードセルを対応させ、ロードセルより対応した圧縮荷重、引張荷重を発信できるようにした送電鉄塔部材の荷重計測装置であるので、取替工具の既存部品に荷重を計測するための荷重センサーを組み込んだ部品を組み合わせることにより、計測対象となる送電鉄塔への取付けが容易になり、また取替工具の送電鉄塔への取付け状態に関係なく高精度な測定が可能である。
【0021】
さらに、本発明は、ロードセルで計測した荷重を表示するとともに、送電鉄塔の許容応力より過荷重を防止するためのリミット機能を有するリミット計を設けた請求項2記載の送電鉄塔部材の荷重計測装置であるので、取替工具を使った送電鉄塔部材交換時の荷重検討プログラムにより検討された送電鉄塔の許容応力を事前に登録しておき、その許容応力より大きな荷重が掛った場合は、リミット機能が働き過荷重になったことを表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の取替工具を送電鉄の主柱間に装着した状態の正面図である。
【図2】図1の平面図である。
【図3】本発明の取替工具のロードセル部と表示メータの正面図である。
【図4】本発明のロードセル部の正面図である。
【図5】図4の右側面図である。
【図6】図4の平面図である。
【図7】本発明の送電鉄塔へ取替工具を装着させた正面図である。
【図8】図7の右側面図である。
【図9】図7の背面図である。
【図10】図9の右側面図である。
【図11】本発明の取替工具の主柱材把持金具の新・旧の状態を示す。
【図12】本発明の取替工具の中間継部材として使用する伸縮式部材を示す。
【図13】鉄塔腹材取替フローを示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の取替工具を、送電鉄塔の主柱間に装着した状態の正面図を図1に、送電鉄塔の主柱間に装着した状態の平面図を図2に示す。
【0024】
取替工具1は、油圧ジャッキ2とロードセル3の間に中継材4を介在させ端部材5、取付バンド6よりなり、送電鉄塔の主柱7に装着される。
【0025】
油圧ジャッキ2には油圧の流入・流出口8が設けられている。
【0026】
ロードセル3は、内側円筒9と外側円筒10を摺動自在とした円筒体11内に収容されている。
【0027】
油圧ジャッキ2、中継材4、ロードセル3を収容した円筒体11、端部材5、取付バンド6は、それぞれボルト12、ナット13で螺締されている。
【0028】
図3は、取替工具1のロードセル3部と表示メータ14の正面図で、ロードセル3と表示メータ14とは接続コード15で接続されている。
【0029】
図3に示す荷重表示器の表示メータ14には送電鉄塔に掛った荷重を制限するリミット機能を持たせている。取替工具1を使った送電鉄塔部材交換時の荷重検討プログラムにより検討された送電鉄塔の許容応力度を事前に登録しておき、その許容応力より大きな荷重が掛った場合は、リミット機能が働き過荷重になったことを表示する。
【0030】
図4は、ロードセル3部の正面図、図5は図4の右側面図、図6は図4の平面図である。
【0031】
図7は送電鉄塔へ取替工具を装着させた正面図、図8は図7の右側面図、図9は図7の背面図、図10は図9の右側面図である。
【0032】
図7〜図10において、送電鉄塔の主柱7間に8本の取替工具1が装着され、7本の取替え部材16が交換される。取替え部材16はB−A面2本、A−D面2本、D−C面2本、C−B面1本である。
【0033】
取替工具1は、取替え部材16の上下に取付ける。
【0034】
取付位置にマーキングを行い、水平になるように取付ける。
【0035】
各接続箇所のボルトは確実に締め付ける。
【0036】
取替え部材16の取替えは1本ずつ行い、新材のボルト締付が完了するまで他の取替え部材16の取外しは行わない。
【0037】
油圧ジャッキ2に圧力をかける前に、再度油圧ホースの接続、各部ボルトの締付確認を行う。
【0038】
取替え部材16の取外しは取替工具1に応力が掛ったことを確認後に行う。
【0039】
1面の取替え部材16の取替えが終了したら、取替工具1を次の面に移動し、順次取替え部材16の取替えを行う。
【0040】
図11は、取替工具の主柱材把持金具の新・旧形状を示す。
【0041】
従来の取替工具の鉄塔主柱材把持部は、取付バンド6により主柱材7を両側から挟み込む構造であり、円形の主柱材7に対して直線で形作られた取付バンド6の接触点は4つの点接触になる。
【0042】
新たな把持金具21は、主柱材7を前後から挟み込む形であり、円形の主柱材7との接触面は接触面積を多く取れるように円形構造になっている。
【0043】
これにより、圧縮による荷重、引張による荷重のいずれの荷重に対しても広い面で鉄塔主柱材7と接することから鉄塔に損傷を及ぼす危険性は非常に少ないものである。
【0044】
図12は取替工具の中間継部材として使用する伸縮式部材を示す。
【0045】
鉄塔構造物の面開きは主柱材7の転びにより鉄塔上部では狭く、鉄塔下部では広くなっている。したがって、鉄塔構造物の種々な場所で使用する取替工具の長さも色々になる。
【0046】
そこで、様々な長さの取替工具が必要となることから、取替工具の中間継部材用に伸縮式の部材を製作した。これは鋼管を二重構造とし、外側の鋼管22と内側の鋼管23を凹凸の噛み合わせる構造にすることで、正確でスムーズにスライドする構造となり、容易に長さ調整を行うことが出来る伸縮式の中間継部材である。
【0047】
鋼管部材は2重構造になっており、外側鋼管22と内側鋼管23とは凹凸の形状部を噛み合わせてスライドさせる構造になっている。外側鋼管22と内側鋼管23をスライドさせて伸縮させたのち、外側鋼管22と内側鋼管23に開けたピン接合穴を重ね合わせ、接合ボルト24を直交する2方向から挿入し固定する。
【0048】
図13に、鉄塔腹材取替フローを示す。
【0049】
取替工具を使って鉄塔構造物の一部材を取り替える前に、鉄塔構造物の許容応力度を立体解析で求め、部材の許容応力度と取替工具からの荷重を対比し、取替工具からの荷重が鉄塔部材の許容応力度を超えるようであれば、取替工具による過大な荷重で鉄塔構造物の損傷を与えることのないようにリミット機能で警報を発生させ部材交換を中止するフロー図になっている。
【実施例1】
【0050】
本発明が対象とした送電鉄塔の高さは,62000mm、油圧ジャッキは揚力200kN、引力100kN、ストローク250mm、シリンダ内径60mmである。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明は、送電鉄塔での荷重測定に用いたが、他の鉄塔構造物の荷重測定にも用いることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…取替工具
3…ロードセル
7…主柱
9…内筒円筒
10…外筒円筒
11…円筒体
5…端部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取替工具を使用して送電鉄塔の部材交換を行うのに際し、取替工具に装着したロードセルにより送電鉄塔の主柱に加わる荷重を計測するようにした送電鉄塔部材の取替工法。
【請求項2】
主柱間に装着して主柱に加わる荷重を計測する荷重計測装置において、内側円筒と外側円筒を摺動自在とした円筒体内にロードセルを収容し、ロードセルを収容した円筒体を取替工具の端部に取付け、円筒体の他端と主柱との間に端部材を介在させ、内筒体の両端間の圧縮荷重、引張荷重にロードセルを対応させ、ロードセルより対応した圧縮荷重、引張荷重を発信できるようにした荷重計測装置。
【請求項3】
ロードセルで計測した荷重を表示するとともに、送電鉄塔の許容応力より過荷重を防止するためのリミット機能を有するリミット計を設けた請求項2記載の送電鉄塔部材の荷重計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−38259(P2011−38259A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184042(P2009−184042)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000141015)株式会社かんでんエンジニアリング (16)
【Fターム(参考)】