説明

送風機

【課題】高速回転時に振動を低減しつつ、低速回転時に系のアンバランスの増加を抑制することのできる送風機を提供する。
【解決手段】ファン1、2の回転方向に移動可能なボール61、およびボール61を収容するボール錘収容部62を有するバランサ6を備え、ボール収容部62は、ファン1、2の径方向内側に配置されるとともに、ファン1、2の回転方向へのボール61の移動を規制する規制部63と、規制部63よりもファン1、2の径方向外側に配置されるとともに、ファン1、2の径方向内側から径方向外側に向かうにつれて鉛直方向上側に傾斜する傾斜部64とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランス調整用の錘を備える送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の送風機は、回転体であるファンとモータの振動を打ち消すために、ファンにバランスウェイトを追加(プラスバランス調整)するか、または余剰ウェイトを除去(マイナスバランス調整)して、バランス調整を行っていた。例えば特許文献1には、マイナスバランス調整する遠心式送風機が記載されている。
【0003】
一方、特許文献2には、ファンと、ファンを固定するワッシャとの間に、錘を移動可能に配設することによって自動的にバランス調整するボールバランサ(以下、バランサともいう)を備える電動送風機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−30587号公報
【特許文献2】特開2005−94983号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2の従来技術によると、製造過程におけるバランス調整の手間が少なくなるというメリットがある。
【0006】
ところで、送風機のファンの回転バランスについて説明する。図8は、送風機を簡潔なモデルで示したものである。図8(a)は、ファン、シャフト、ロータおよびマグネットからなる回転体Rの静止状態(回転速度ω=0)の状態を示し、図8(b)は回転体Rの回転速度ωが危険速度ωcより低い状態(ω<ωc)を示し、図8(c)は回転体Rの回転速度ωが危険速度ωcより大きい状態(ω>ωc)を示している。
【0007】
図8(a)に示すように、回転体Rの慣性主軸Aは、シャフト32の中心軸と微小なズレを持つ。この微小なズレは、製造上の誤差等に起因するものである。
【0008】
そのため、図8(b)、(c)に示すように、回転体Rが回転することで発生する遠心力Fcによりモーメントが発生し、軸受314を支える支持部材が変形して、2つの軸受314間の特定の点Cを中心にシャフト32の中心軸は傾いて振れ回る。
【0009】
ここで、図8(b)に示すように、回転体Rは、危険速度ωcより低い回転速度ω(回転数)では遠心力FcによるモーメントはジャイロモーメントMgよりも大きいため、重心G及び慣性主軸Aはシャフト32の中心軸の外側を振れ回る。換言すれば、重心G及び慣性主軸Aは、傾いている実際のシャフト32の中心軸に対して、回転速度ω=0で傾いていないときのシャフト32の中心軸(図3(b)の一点鎖線)の反対側に位置する。
【0010】
このため、特許文献2の従来技術のようにバランサの錘のファン径方向位置が一定であると、危険速度ωcより低い回転速度ωではバランサの錘も遠心力により重心Gと同一方向に配置されることとなるので、系のアンバランスが増加し、錘がない場合と比べて大きく振れ回るという問題がある。
【0011】
本発明は上記点に鑑みて、高速回転時に振動を低減しつつ、低速回転時に系のアンバランスの増加を抑制することのできる送風機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回転することで空気に運動量を与えるファン(1、2)と、ファン(1、2)の回転軸となるシャフト(32)と、ファン(1、2)の回転方向に移動可能な錘(61)、および錘(61)を収容する錘収容部(62)を有するバランサ(6)とを備える送風機において、錘収容部(62)は、ファン(1、2)の径方向内側に配置されるとともに、ファン(1、2)の回転方向への錘(61)の移動を規制する規制部(63)と、規制部(63)よりもファン(1、2)の径方向外側に配置されるとともに、ファン(1、2)の径方向内側から径方向外側に向かうにつれて鉛直方向上側に傾斜する傾斜部(64)とを有していることを特徴とする。
【0013】
ファン(1、2)が回転すると錘(61)には遠心力が作用する。ここで、ファン(1、2)の回転速度が遅いと、傾斜部(64)において錘(61)に作用する遠心力が重力より小さくなる。このため、錘(61)は傾斜部(64)を登り切ることができず、規制部(63)により規制されたままの状態になるので、錘(61)が遠心力により重心Gと同一方向に配置されることを防止できる。したがって、低速回転時に、錘(61)による系のアンバランスの増加を抑制することが可能となる。
【0014】
これに対し、ファン(1、2)の回転速度が速くなると、錘(61)に作用する遠心力が重力より大きくなり、錘(61)が傾斜部(64)を登り切る。そして、錘(61)はファン(1、2)の回転方向に自由に動き回り、遠心力によって重心Gと釣合う位置に自動的に配置される。したがって、高速回転時には振動を低減することが可能となる。
【0015】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の送風機において、錘(61)は複数設けられており、さらに、複数の錘(61)同士が互いに衝突することを防止する衝突防止手段を備えることを特徴とする。
【0016】
これによれば、ボール(61)同士が衝突することで振動が増加することを防止できる。
【0017】
また、請求項3に記載の発明では、請求項2に記載の送風機において、錘(61)は球状に形成されており、衝突防止手段は、バランサ(6)をファン(1、2)の回転方向に複数設けるとともに、1つのバランサ(6)に対して1つの錘(61)を配置することにより構成されていることを特徴とする。
【0018】
このように、1つのバランサ(6)に対して1つの錘(61)を配置することにより、1つの傾斜部(64)に錘(61)が複数入り込むことで系のアンバランスが増加して振動が増加することを防止できる。
【0019】
また、請求項4に記載の発明では、請求項3に記載の送風機において、錘収容部(62)の内部を仕切部(622)にてファン(1、2)の回転方向に複数に仕切ることにより、バランサ(6)がファン(1、2)の回転方向に複数設けられており、仕切部(622)の表面には、弾性変形可能な弾性体(623)が設けられていることを特徴とする。
【0020】
これによれば、錘(61)の衝突による衝撃を仕切部(622)および弾性体(623)によって緩和することができるので、錘(61)同士あるいは錘(61)と仕切部(622)が衝突することで振動が増加することを防止できる。
【0021】
また、請求項5に記載の発明では、請求項2に記載の送風機において、錘(61)は球状に形成されており、衝突防止手段は、バランサ(6)をファン(1、2)の径方向に複数設けるとともに、1つのバランサ(6)に対して1つの錘(61)を配置することにより構成されていることを特徴とする。
【0022】
このように、1つのバランサ(6)に対して1つの錘(61)を配置することにより、1つの傾斜部(64)に錘(61)が複数入り込むことで系のアンバランスが増加して振動が増加することを防止できる。
【0023】
さらに、バランサ(6)をファン(1、2)の径方向に複数設けることにより、複数のバランサ(6)のうちファン(1、2)の径方向外側に配置されたバランサ(6b)においては、ファン(1、2)の回転時に当該バランサ(6b)の錘(61)に作用する遠心力が大きくなる。このため、錘(61)によるバランス調整効果を有効に発揮することができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明のように、請求項1または2に記載の送風機において、錘(61)は球状に形成されていてもよい。
【0025】
また、請求項7に記載の発明のように、請求項1または2に記載の送風機において、錘(65)は粒体により構成されていてもよい。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における送風機を示す断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】第1実施形態による振動低減効果を示すグラフである。
【図4】第2実施形態における送風機を示す断面図である。
【図5】第3実施形態における送風機を示す断面図である。
【図6】図5のB−B断面図である。
【図7】第4実施形態における送風機を示す断面図である。
【図8】送風機の構成を簡潔なモデルで示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を説明する。図1に示す送風機は、車両用空調装置の室内ユニット(図示せず)に用いられ、室内ユニットの内外気切替箱により導入された外気および内気を吸入し、吸入した空気を室内ユニットの空調ユニットに向けて送風する。図1に示す上下の矢印は、車両搭載状態における各方向を示している。
【0030】
送風機は、車室外空気(外気)および車室内空気(内気)の両方を区分して吸入可能な内外気2層式送風機であり、第1ファン1、第2ファン2、電動モータ3およびケーシング4等を有している。
【0031】
第1ファン1および第2ファン2は、電動モータ3により回転駆動されて遠心方向に空気を吹き出す遠心式多翼ファンである。第1ファン1および第2ファン2は同軸状に配置されている。送風機の車両搭載状態では、第1ファン1が第2ファン2の上方側に位置している。本例では、第1ファン1および第2ファン2は樹脂にて一体成形されている。
【0032】
電動モータ3は、モータ本体部31と、モータ本体部31から突出するシャフト32とを有している。シャフト32は、第1ファン1および第2ファン2の回転軸をなすものであり、送風機の車両搭載状態では上下方向に延びている。モータ本体部31は、送風機の車両搭載状態では第1ファン1および第2ファン2の下方側に位置している。
【0033】
ケーシング4は、第1ファン1を収容する第1スクロール部41と、第2ファン2を収容する第2スクロール部42と、電動モータ3のモータ本体部31を収容するモータ収容部43とを有している。
【0034】
第1スクロール部41には、ファン軸方向の一端側(電動モータ3の反対側)に向かって開口した第1吸入口411が形成されている。第1吸入口411の外縁部には、第1ファン1の内側に向かって延びるベルマウスが形成されている。第1スクロール部41の内部には、第1ファン1から吹き出された空気を集合させる渦巻き状の流路が形成されている。
【0035】
第2スクロール部42には、ファン軸方向の他端側(電動モータ3側)に向かって開口した第2吸入口421が形成されている。第2吸入口421の外縁部には、第2ファン2の内側に向かって延びるベルマウスが形成されている。第2スクロール部42の内部には、第1ファン1から吹き出された空気を集合させる渦巻き状の流路が形成されている。
【0036】
ケーシング4の内部において、第2スクロール部41、42の外側には、第2吸入口421へ空気を導く導入通路44が形成されている。
【0037】
モータ収容部43は、ケーシング4の壁面を第2吸入口421側に向かって窪ませることによって形成されている。
【0038】
第1ファン1は、回転軸の周りに板状の翼部11(ブレード)が多数枚配置された構成になっている。多数枚の翼部11は、第1吸入口411側の端部が箍状の側板12によって連結され、その反対側の端部が円板状の主板13によって連結されている。
【0039】
本例では、側板12は、ファン軸方向と平行な直線状の断面形状になっている。側板12は、翼部11間の空気流路の断面積がファン径方向の内側から外側に向かって縮小するように、翼部11間を流通する主流の流線に沿うような略円弧状の断面形状になっていてもよい。
【0040】
第2ファン2も、第1ファン1と同様に回転軸の周りに板状の翼部21(ブレード)が多数枚配置された構成になっている。第2ファン2の翼部21は、第2吸入口421側の端部が箍状の側板22によって連結され、その反対側の端部が円板状の主板23によって連結されている。
【0041】
主板23の中心部には、電動モータ3のシャフト32が結合される円筒状のボス24が形成されている。ボス24は、第1ファン1の主板13の中心部に連結されている。
【0042】
電動モータ3のモータ本体部31は、コア311、ロータ312、マグネット313、軸受314およびセンターピース315等を有している。コア311は、センターピース315を介してケーシング4に固定されている。センターピース315には2つの軸受314が固定されている。2つの軸受314は、第1、第2ファン1、2の外部にてシャフト32を支持している。ロータ312はシャフト32に固定され、マグネット313はロータ312に固定されている。
【0043】
シャフト32、軸受314、回路部(図示せず)などのモータ構成部品を外部の塵、汚れから保護するために、ケーシング4にはモータカバー5が取り付けられている。
【0044】
外部電源(図示せず)によりコア311に通電すると磁束変化が生じ、マグネット313を引き寄せる力が発生するので、マグネット313、ロータ312、シャフト32およびファン1、2がシャフト32の中心軸回りに一体となって回転運動する。
【0045】
図2は、図1のA−A断面図である。図1および図2に示すように、ボス24の近傍(ファンボス部)には、回転による振動を低減するためのバランサ6が設けられている。具体的には、バランサ6は、第1ファン1の内側かつ主板13の中心部に設けられている。換言すれば、バランサ6は、ボス24よりも電動モータ3から離れた側(反モータ側)に配置されている。また、バランサ6は、第2ファン2よりも電動モータ3から離れた側(反モータ側)に配置されている。
【0046】
バランサ6は、ファン1、2の回転方向に移動可能なボール61(球状の錘)と、ボール61を収容するボール収容部62(錘収容部)とを有するボールバランサであり、ボール61がボール収容部62に形成された環状の外側収容空間621を移動することによってバランスを自動調整する。外側収容空間621は、ファン1、2と同軸状に形成されている。ボール61は外側収容空間621を自由に動き回る(転がる)ことができるようになっている。
【0047】
ボール収容部62は、ファン1、2の回転方向へのボール61の移動を規制する規制部63を有している。規制部63は、外側収容空間621よりファン1、2の径方向内側に配置されている。本実施形態では、規制部63は2つ設けられており、2つの規制部63間に内側収容空間631が形成されている。内側収容空間631は、ボール61を1つ収容可能であり、かつ、収容されたボール61がファン1、2の回転方向へ移動しないような大きさに形成されている。
【0048】
ボール収容部62は、ファン1、2の径方向内側から径方向外側に向かうにつれて鉛直方向上側に傾斜する傾斜部64を有している。傾斜部64は、内側収容空間631と外側収容空間621とを接続するように形成されている。
【0049】
本例では、ボール61、内側収容空間631および傾斜部64は2つずつ設けられている。2つの内側収容空間631は、ファン1、2の回転軸に対して対称となるように配置されている。同様に、2つの傾斜部64は、ファン1、2の回転軸に対して対称となるように配置されている。
【0050】
ボール収容部62は、主板13から第1吸入口411側(第1ファン1の空気吸入側)に向かって先細り状に突出している。図1の例では、ボール収容部62は円錐台状になっているが、円柱の角を落とした形状(R面取り、C面取り)になっていてもよい。
【0051】
次に、上記構成における作動を説明する。電動モータ3がファン1、2を回転駆動すると、ファン1、2の翼部11、21が空気に運動量を与える。これにより、スクロール部41、42の吸入口411、421から空気が吸引され、ファン1、2の外周部から空気が送り出される。送り出された空気はスクロール部41、42の渦巻き状の流路に集められ、スクロール部41、42の吐出口(図示せず)から空調ユニット(図示せず)に送り出される。
【0052】
ファン1、2が回転するとボール61には遠心力が作用する。ファン1、2の回転速度が遅い(例えば、危険速度ωcより低い回転速度)と、傾斜部64においてボール61に作用する遠心力は重力より小さくなる。このため、ボール61は傾斜部64を登り切ることができず、規制部63により規制されたままの状態、すなわち内側収容空間631に収容されたままになる。このとき、傾斜部64は、遠心力によるボール61の径方向外側への移動に対して抵抗となる負荷をボール61に作用させる抵抗手段としての機能を果たす。
【0053】
ファン1、2の回転速度が速くなると、ボール61に作用する遠心力が大きくなる。このため、ファン1、2の回転速度が所定速度(例えば、危険速度ωc)より速くなると、ボール61に作用する遠心力が重力より大きくなり、ボールが傾斜部64を登り切って外側収容空間621に入る。
【0054】
そして、ボール61は外側収容空間621を自由に動き回り、図8(c)に示すように、遠心力によって重心Gと釣合う位置に自動的に配置されるので、バランサ6のボール61と重心Gおよび慣性主軸Aが釣合いの位置関係になる。そのため、シャフト32の振れ幅を小さくして振動を低減することができる。
【0055】
その後、ファン1、2の回転速度が遅くなる(例えば、危険速度ωcより低い回転速度になる)と、ボール61に作用する遠心力が小さくなる。さらに、傾斜部64においては、ボール61に重力が作用するので、ボール61の径方向内側への移動が促進される。このとき、傾斜部64は、遠心力と反対方向の力をボール61に作用させる移動促進手段としての機能を果たす。
【0056】
以上説明したように、本実施形態では、危険速度ωcより低い回転速度ωではバランサ6のボール61がファン中心側に移動して内側収容空間631に収容(固定)される。つまり、ファン1、2の低速回転時には、ボール61が内側収容空間631に固定されているので、ボール61が遠心力により重心Gと同一方向に配置されることを防止できる。これにより、低速回転時にボール61による系のアンバランスの増加を抑制することが可能となる。このため、ボール61による系のアンバランスの増加に起因する振動の増加を抑制することができる。
【0057】
さらに、内側収容空間631はファン1、2の回転軸に対して対称となるように2つ配置されているので、2つのボール61がファン1、2の回転軸に対して対称に配置されることとなる。そのため、低速回転時にボール61による系のアンバランスの増加をより確実に抑制することができる。
【0058】
本実施形態による振動低減効果の例を図3に示す。図3の比較例1は、バランサ6がない送風機における振動を示している。図3の比較例2は、規制部63および傾斜部64がない従来のボールバランサを有する送風機における振動を示している。
【0059】
図3に示すように、本実施形態の送風機では、比較例1と比較して、危険速度ωcより回転速度が速い高速回転(高回転数)時の振動を低下させることができる。さらに、本実施形態の送風機では、比較例2と比較して、危険速度ωcより回転速度が遅い低速回転(低回転数)時の振動を低下させることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、バランサ6がファンボス部に配置されているので、バランサ6が第1ファン1および第2ファン2による空気の流れ(吸入口411、421からファン外周側に向かう空気の流れ)を乱して送風騒音を増加させることを極力抑制することができるとともに、ファン内部の空間を有効に活用してバランサ6を効率的に配置することができる。
【0061】
さらに、ボール収容部62は、第1ファン1の空気吸入側に向かって細くなる円錐台状に形成されているので、第1ファン1による空気の流れをボール収容部62によって整えて送風騒音を抑制することができる。
【0062】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図4に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、バランサ6をファン回転方向に複数設けた点が異なるものである。
【0063】
図4は、第2実施形態における送風機を示す断面図である。図4に示すように、バランサ6は、ファン1、2の回転方向に複数(本例では3つ)設けられている。1つのバランサ6に対しては1つのボール61が配置されている。これにより、複数(本例では3つ)のボール61同士が互いに衝突することを防止する衝突防止手段が構成されている。
【0064】
具体的には、規制部63がボール61と同数個設けられている。上述したように、隣り合う規制部63同士の間に内側収容空間631が形成されるので、本実施形態では内側収容空間631はボール61と同数個設けられている。また、傾斜部64もボール61と同数個設けられている。
【0065】
外側収容空間621は仕切部622によってボール61と同数個の空間にファン周方向(ファン1、2の回転方向)に仕切られ、仕切られた各空間にボール61が1個ずつ収容されている。また、仕切部622の壁面には、弾性変形可能な弾性体623が取り付けられている。
【0066】
本実施形態によると、ボール61の衝突による衝撃を仕切部622および弾性体623によって緩和することができるので、ボール61同士あるいはボール61と仕切部622が衝突することで振動が増加することを防止できる。
【0067】
また、1つのバランサ6にボール61を1個ずつ設けることで、1つの傾斜部64にボール61が複数入り込むことで系のアンバランスが増加して振動が増加することを防止できる。
【0068】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図5および図6に基づいて説明する。本第2実施形態は、上記第1実施形態と比較して、バランサ6をファン径方向に複数設けた点が異なるものである。
【0069】
図5は第3実施形態における送風機を示す断面図、図6は図5のB−B断面図である。図5および図6に示すように、バランサ6は、ファン1、2の径方向に複数(本例では2つ)設けられている。1つのバランサ6に対しては、1つのボール61が配置されている。これにより、複数(本例では2つ)のボール61同士が互いに衝突することを防止する衝突防止手段が構成されている。
【0070】
具体的には、内側収容空間631、傾斜部64、外側収容空間621等により構成されるバランサ6(以下、第1バランサ6aという)のファン径方向外側に、第2バランサ6bが設けられている。第2バランサ6bも、第1バランサ6aと同様、内側収容空間631、傾斜部64、外側収容空間621等により構成されている。
【0071】
図5に示すように、第1バランサ6aの外側収容空間621の下方側に、第2バランサ6bの内側収容空間631が形成されている。また、第1バランサ6aの外側収容空間621と、第2バランサ6bの外側収容空間621とが、ファン1、2の回転軸に直交する同一の平面上に配置されている。
【0072】
図6に示すように、第1バランサ6aの2つの内側収容空間631および第2バランサ6bの2つの内側収容空間631は、ファン1、2の回転軸に直交する同一の直線上に配置されている。
【0073】
本実施形態によると、複数のバランサ6にボール61を1個ずつ配置することで、ボール61同士が衝突して振動が増加することを防止できる。さらに、第2バランサ6bを第1バランサ6aのファン径方向外側に配置することで、ファン1、2回転時に第2バランサ6bのボール61に作用する遠心力が大きくなるので、ボール61によるバランス調整効果を有効に発揮することができる。
【0074】
(第4実施形態)
上記第1実施形態では、バランサ6の錘としてボール61(球状の錘)が用いられているが、本第6実施形態では、図7に示すように、バランサ6の錘として微小粒体(砂粒等)65が用いられている。ただし、微小粒体は、互いに付着しないさらさらのもの(湿気や粘り気がないもの)であるのが好ましい。
【0075】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0076】
(1)上記各実施形態では、ファン1、2として遠心式多翼ファンを用いた例について説明したが、これに限定されるものではなく、軸流ファンや貫流ファン等の種々の形式のファンであってもよい。
【0077】
(2)上記各実施形態では、送風機として、2つのファンを備える内外気2層式送風機を採用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、ファンが1つの単層式送風機であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
1 第1ファン(ファン)
2 第2ファン(ファン)
6 バランサ
32 シャフト
61 ボール(錘)
62 ボール収容部(錘収容部)
63 規制部
64 傾斜部
622 仕切部
633 弾性体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで空気に運動量を与えるファン(1、2)と、
ファン(1、2)の回転軸となるシャフト(32)と、
前記ファン(1、2)の回転方向に移動可能な錘(61)、および前記錘(61)を収容する錘収容部(62)を有するバランサ(6)とを備える送風機であって、
前記錘収容部(62)は、
前記ファン(1、2)の径方向内側に配置されるとともに、前記ファン(1、2)の回転方向への前記錘(61)の移動を規制する規制部(63)と、
前記規制部(63)よりも前記ファン(1、2)の径方向外側に配置されるとともに、前記ファン(1、2)の径方向内側から径方向外側に向かうにつれて鉛直方向上側に傾斜する傾斜部(64)とを有していることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記錘(61)は複数設けられており、
さらに、複数の前記錘(61)同士が互いに衝突することを防止する衝突防止手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記錘(61)は球状に形成されており、
前記衝突防止手段は、前記バランサ(6)を前記ファン(1、2)の回転方向に複数設けるとともに、1つの前記バランサ(6)に対して1つの前記錘(61)を配置することにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
【請求項4】
前記錘収容部(62)の内部を仕切部(622)にて前記ファン(1、2)の回転方向に複数に仕切ることにより、前記バランサ(6)が前記ファン(1、2)の回転方向に複数設けられており、
前記仕切部(622)の表面には、弾性変形可能な弾性体(623)が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の送風機。
【請求項5】
前記錘(61)は球状に形成されており、
前記衝突防止手段は、前記バランサ(6)を前記ファン(1、2)の径方向に複数設けるとともに、1つの前記バランサ(6)に対して1つの前記錘(61)を配置することにより構成されていることを特徴とする請求項2に記載の送風機。
【請求項6】
前記錘(61)は、球状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。
【請求項7】
前記錘(65)は、粒体により構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−251476(P2012−251476A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124370(P2011−124370)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【Fターム(参考)】