説明

送風機

【課題】バランス調整用のバランサを備える送風機において、ファンによる空気の流れを乱すことなく、異音の発生を防止する。
【解決手段】回転することで空気に運動量を与えるファン1、2と、ファン1、2の回転軸となるシャフト32と、シャフト32を中心に回転可能な複数の振り子61と、複数の振り子61を収容する振り子収容部62とを備え、複数の振り子61を、互いにシャフト32の軸方向にずれて配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バランス調整用のバランサを備える送風機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回転体であるファンとモータの振動を打ち消すために、ファンと、ファンを固定するワッシャとの間に、錘(ボール)を移動可能に配設することによって自動的にバランス調整する電動送風機が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1に記載の送風機では、錘同士が衝突して異音が発生するおそれがあった。これに対し、非特許文献1には、錘に代えて振り子を設けた振り子バランサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−94983号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Roland Horvath,George T.Flowers,and Jerry Fausz,“Passive Balancing of Rotor Systems Using Pendulum Balancers”,ASME,Journal of Vibration and Acoustics,Vol.130(2008),pp.041011.1−041011.11
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
非特許文献1の従来技術によると、錘同士が衝突して異音が発生することを防止できる。しかしながら、当該従来技術の振り子バランサを送風機に適用すると、ファンによる空気の流れと振り子とが干渉して、空気の流れを乱すおそれがある。
【0007】
本発明は上記点に鑑みて、バランス調整用のバランサを備える送風機において、ファンによる空気の流れを乱すことなく、異音の発生を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、回転することで空気に運動量を与えるファン(1、2)と、ファン(1、2)の回転軸となるシャフト(32)と、シャフト(32)を中心に回転可能な複数の振り子(61)と、複数の振り子(61)を収容する振り子収容部(62)とを備え、複数の振り子(61)は、互いにシャフト(32)の軸方向にずれて配置されていることを特徴とする。
【0009】
これによれば、複数の振り子(61)を互いにシャフト(32)の軸方向にずれて配置しているので、振り子(61)同士が衝突して異音が発生することを防止できる。また、複数の振り子(61)を収容する振り子収容部(62)を備えているので、ファン(1、2)による空気の流れが振り子(61)と直接干渉(衝突)して、空気の流れが乱れることを抑制できる。したがって、ファン(1、2)による空気の流れを乱すことなく、異音の発生を防止することが可能となる。
【0010】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の送風機において、ファン(1、2)は、シャフト(32)が結合されるボス(24)を有し、振り子収容部(62)は、ボス(24)に設けられていることを特徴とする。
【0011】
ここで、本発明における「振り子収容部(62)はボス(24)に設けられている」は、振り子収容部(62)がボス(24)自体に設けられていることのみを意味するものではなく、振り子収容部(62)がボス(24)と一体に形成されていること、および振り子収容部(62)がボス(24)の近傍に設けられることも含む意味のものである。
【0012】
これによると、空気の流れが比較的弱い領域に振り子収容部(62)が設けられることとなるので、振り子収容部(62)がファン(1、2)による空気の流れを乱すことを抑制できる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または2に記載の送風機において、振り子収容部(62)は、ファン(1)の空気吸入側に向かって先細る形状になっていることを特徴とする。
【0014】
これにより、ファン(1)による空気の流れを錘収容部(62)によって整えることができる。
【0015】
また、請求項4に記載の発明では、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の送風機において、ファンとして、第1ファン(1)および第2ファン(2)が設けられており、振り子収容部(62)は、第1ファン(1)および第2ファン(2)の間に配置されていることを特徴とする。
【0016】
これによると、空気の流れが比較的弱い領域に振り子収容部(62)が設けられることとなるので、振り子収容部(62)がファン(1、2)による空気の流れを乱すことをより抑制できる。
【0017】
具体的には、請求項5に記載の発明のように、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機において、振り子(61)は、シャフト(32)に対して回転可能に嵌合された板状部材(61a)を含んで構成されていてもよい。
【0018】
また、請求項6に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機において、振り子(61)は、シャフト(32)に対して回転可能に嵌合された板状部材(61a)と、板状部材(61a)に接続された錘(61c)とを含んで構成されていることを特徴とする。
【0019】
これによれば、小さい重量増加量で効率良く慣性モーメントを増加させることができるので、効率良く振動を低減するとともに、板状部材(61a)および錘(61c)からなるバランサ(6)の小型化を図ることができる。
【0020】
また、請求項7に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機において、振り子(61)は、リング状に形成されたリング状部材(61d)を含んで構成されており、リング状部材(61d)は、当該リング状部材(61d)の内周面とシャフト(32)とが接触可能に配置されていることを特徴とする。
【0021】
これによれば、リング状部材(61d)とシャフト(32)との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が小さくなるので、振り子(61)をシャフト(32)に対してスムーズに回転させることができる。
【0022】
また、請求項8に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機において、振り子(61)は、シャフト(32)に対して回転可能に接続されたワイヤ(61f)と、ワイヤ(61f)に接続された錘(61g)とを含んで構成されていることを特徴とする。
【0023】
これによれば、ファン(1、2)の回転速度が遅い場合には、錘(61g)に作用する遠心力が小さく、錘(61g)が鉛直方向下方側に垂れ下がったままの状態となり、振り子バランサとして作動しない。このため、錘(61g)が遠心力により重心(G)と同一方向に配置されることを防止できる。したがって、ファン(1、2)の低速回転時に錘(61g)による系のアンバランスの増加を抑制することが可能となる。
【0024】
また、請求項9に記載の発明では、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機において、振り子(61)は、シャフト(32)に対して回転可能に嵌合された第1アーム部(61h)と、一端が第1アーム部(61h)に支持されるとともに、他端に錘(61g)が接続された第2アーム部(61i)とを含んで構成されており、第2アーム部(61i)は、第1アーム部(61h)との接続部を中心に回転可能に支持されていることを特徴とする。
【0025】
これによれば、ファン(1、2)の回転速度が遅い場合には、錘(61g)に作用する遠心力が小さく、錘(61g)が鉛直方向下方側に垂れ下がったままの状態となり、振り子バランサとして作動しない。このため、錘(61g)が遠心力により重心(G)と同一方向に配置されることを防止できる。したがって、ファン(1、2)の低速回転時に錘(61g)による系のアンバランスの増加を抑制することが可能となる。
【0026】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1実施形態における送風機を示す断面図である。
【図2】(a)は第1実施形態におけるバランサを示す平面図、(b)は第1実施形態におけるバランサを示す断面図である。
【図3】図1の送風機の構成を簡潔なモデルで示したものである。
【図4】第1実施形態による振動低減効果を示すグラフである。
【図5】(a)は第2実施形態におけるバランサを示す平面図、(b)は第2実施形態におけるバランサを示す断面図である。
【図6】(a)は第3実施形態におけるバランサを示す平面図、(b)は第3実施形態におけるバランサを示す断面図である。
【図7】(a)は第4実施形態におけるバランサを示す平面図、(b)は第4実施形態におけるバランサを示す断面図である。
【図8】(a)は第4実施形態におけるバランサを示す平面図、(b)は第4実施形態におけるバランサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付してある。
【0029】
(第1実施形態)
以下、第1実施形態を説明する。図1に示す送風機は、車両用空調装置の室内ユニット(図示せず)に用いられ、室内ユニットの内外気切替箱により導入された外気および内気を吸入し、吸入した空気を室内ユニットの空調ユニットに向けて送風する。以下、図1等に示す上下の矢印は、車両搭載状態における各方向を示している。
【0030】
送風機は、車室外空気(外気)および車室内空気(内気)の両方を区分して吸入可能な内外気2層式送風機であり、第1ファン1、第2ファン2、電動モータ3およびケーシング4等を有している。
【0031】
第1ファン1および第2ファン2は、電動モータ3により回転駆動されて遠心方向に空気を吹き出す遠心式多翼ファンである。第1ファン1および第2ファン2は同軸状に配置されている。送風機の車両搭載状態では、第1ファン1が第2ファン2の上方側に位置している。本例では、第1ファン1および第2ファン2は樹脂にて一体成形されている。
【0032】
電動モータ3は、モータ本体部31と、モータ本体部31から突出するシャフト32とを有している。シャフト32は、第1ファン1および第2ファン2の回転軸をなすものであり、送風機の車両搭載状態では上下方向に延びている。モータ本体部31は、送風機の車両搭載状態では第1ファン1および第2ファン2の下方側に位置している。
【0033】
ケーシング4は、第1ファン1を収容する第1スクロール部41と、第2ファン2を収容する第2スクロール部42と、電動モータ3のモータ本体部31を収容するモータ収容部43とを有している。
【0034】
第1スクロール部41には、ファン軸方向の一端側(電動モータ3の反対側)に向かって開口した第1吸入口411が形成されている。第1吸入口411の外縁部には、第1ファン1の内側に向かって延びるベルマウスが形成されている。第1スクロール部41の内部には、第1ファン1から吹き出された空気を集合させる渦巻き状の流路が形成されている。
【0035】
第2スクロール部42には、ファン軸方向の他端側(電動モータ3側)に向かって開口した第2吸入口421が形成されている。第2吸入口421の外縁部には、第2ファン2の内側に向かって延びるベルマウスが形成されている。第2スクロール部42の内部には、第1ファン1から吹き出された空気を集合させる渦巻き状の流路が形成されている。
【0036】
ケーシング4の内部において、スクロール部41、42の外側には、第2吸入口421へ空気を導く導入通路44が形成されている。
【0037】
モータ収容部43は、ケーシング4の壁面を第2吸入口421側に向かって窪ませることによって形成されている。
【0038】
第1ファン1は、回転軸の周りに板状の翼部11(ブレード)が多数枚配置された構成になっている。多数枚の翼部11は、第1吸入口411側の端部が側板12によって連結され、その反対側の端部が主板13によって連結されている。側板12は、多数枚の翼部11を第1ファン1の外周側から締める箍の役割を果たすように環状に形成されている。主板13は、多数枚の翼部11を第1ファン1の底面側(反空気吸入側)から覆う円板状に形成されている。
【0039】
本例では、側板12は、ファン軸方向と平行な直線状の断面形状になっている。側板12は、翼部11間の空気流路の断面積がファン径方向の内側から外側に向かって縮小するように、翼部11間を流通する主流の流線に沿うような略円弧状の断面形状になっていてもよい。
【0040】
第2ファン2も、第1ファン1と同様に回転軸の周りに板状の翼部21(ブレード)が多数枚配置された構成になっている。第2ファン2の翼部21は、第2吸入口421側の端部が箍状の側板22によって連結され、その反対側の端部が円板状の主板23によって連結されている。
【0041】
主板23の中心部には、電動モータ3のシャフト32が結合される円筒状のボス24が形成されている。ボス24は、第1ファン1の主板13の中心部に連結されている。
【0042】
電動モータ3のモータ本体部31は、コア311、ロータ312、マグネット313、軸受314およびセンターピース315等を有している。コア311は、センターピース315を介してケーシング4に固定されている。センターピース315には2つの軸受314が固定されている。2つの軸受314は、第1、第2ファン1、2の外部にてシャフト32を支持している。ロータ312はシャフト32に固定され、マグネット313はロータ312に固定されている。
【0043】
シャフト32、軸受314、回路部(図示せず)などのモータ構成部品を外部の塵、汚れから保護するために、ケーシング4にはモータカバー5が取り付けられている。
【0044】
外部電源(図示せず)によりコア311に通電すると磁束変化が生じ、マグネット313を引き寄せる力が発生するので、マグネット313、ロータ312、シャフト32およびファン1、2がシャフト32の中心軸回りに一体となって回転運動する。
【0045】
ボス24の近傍(ファンボス部)には、回転による振動を低減するためのバランサ6が設けられている。具体的には、バランサ6は、第1ファン1の内側かつ主板13の中心部に設けられている。換言すれば、バランサ6は、ボス24よりも電動モータ3から離れた側(反モータ側)に配置されている。また、バランサ6は、第2ファン2よりも電動モータ3から離れた側(反モータ側)に配置されている。つまり、バランサ6は、第1ファン1および第2ファン2の間に配置されている。
【0046】
バランサ6は、ファン1、2を中心に回転可能な複数(本実施形態では2つ)の振り子61と、複数の振り子61を収容する振り子収容部62とを有する振り子式バランサである。このバランサ6は、振り子61が振り子収容部62に形成された収容空間621内でシャフト32を中心に回転することによってバランスを自動調整する。2つの振り子61は、互いにシャフト32の軸方向(本実施形態では上下方向)にずれて配置されている。
【0047】
本例では、振り子収容部62は、ボス24と一体に形成された本体部622を、カバー部材623で覆うことによって構成されている。カバー部材623は、主板13から第1吸入口411側(第1ファン1の空気吸入側)に向かって先細り状に突出している。図1の例では、カバー部材623は円錐台状になっているが、円柱の角を落とした形状(R面取り、C面取り)になっていてもよい。
【0048】
図2(a)は本第1実施形態におけるバランサ6を示す平面図、図2(b)は本第1実施形態におけるバランサ6を示す断面図である。図2に示すように、振り子61は、樹脂製の板状部材61aを有している。板状部材61aの長手方向一端部には、貫通穴61bが形成されている。貫通穴61bには、シャフト32が挿通されている。これにより、板状部材61aは、貫通穴61bにシャフト32が挿通された状態でシャフト32を中心に自由に回転することができるようになっている。
【0049】
次に、上記構成における作動を説明する。電動モータ3がファン1、2を回転駆動すると、ファン1、2の翼部11、21が空気に運動量を与える。これにより、スクロール部41、42の吸入口411、421から空気が吸引され、ファン1、2の外周部から空気が送り出される。送り出された空気はスクロール部41、42の渦巻き状の流路に集められ、スクロール部41、42の吐出口(図示せず)から空調ユニット(図示せず)に送り出される。
【0050】
ここで、ファン1、2の回転バランスについて説明する。図3は、上記構成を簡潔なモデルで示したものである。図3(a)は、ファン1、2、シャフト32、ロータ312およびマグネット313からなる回転体Rの静止状態(回転速度ω=0)の状態を示し、図3(b)は回転体Rの回転速度ωが危険速度ωcより低い状態(ω<ωc)を状態を示し、図3(c)は回転体Rの回転速度ωが危険速度ωcより大きい状態(ω>ωc)を示している。
【0051】
図3(a)に示すように、ファン1、2、シャフト32、ロータ312およびマグネット313からなる回転体Rの慣性主軸Aは、シャフト32の中心軸と微小なズレを持つ。この微小なズレは、製造上の誤差等に起因するものである。
【0052】
そのため、図3(b)、(c)に示すように、回転体Rが回転することで発生する遠心力Fcによりモーメントが発生し、軸受314を支える支持部材(図1の例ではセンターピース315)が変形して、2つの軸受314間の特定の点Cを中心にシャフト32の中心軸は傾いて振れ回る。
【0053】
図3(b)に示すように、回転体Rは、危険速度ωcより低い回転速度ω(回転数)では遠心力FcによるモーメントはジャイロモーメントMgよりも大きいため、重心G及び慣性主軸Aはシャフト32の中心軸の外側を振れ回る。換言すれば、重心G及び慣性主軸Aは、傾いている実際のシャフト32の中心軸に対して、回転速度ω=0で傾いていないときのシャフト32の中心軸(図3(b)の一点鎖線)の反対側に位置する。
【0054】
それに対し、図3(c)に示すように、回転体Rは、危険速度ωcより大きい回転速度ω(回転数)ではジャイロモーメントMgが遠心力Fcによるモーメントよりも大きいため、重心G及び慣性主軸Aはシャフト32の中心軸の内側に入る。換言すれば、重心G及び慣性主軸Aは、傾いている実際のシャフト32の中心軸と、回転速度ω=0で傾いていないときのシャフト32の中心軸(図3(c)の一点鎖線)との間に位置する。
【0055】
このとき、バランサ6の振り子61は遠心力によって重心Gと釣合う位置に自動的に配置されるので、バランサ6の振り子61と重心Gおよび慣性主軸Aが釣合いの位置関係になる。そのため、シャフト32の振れ幅を小さくして振動を低減することができる。
【0056】
しかも、バランサ6は、軸受314から離れたファンボス部に配置されているので、シャフト32の傾き中心Cから振り子61までの距離を大きく取ることができる。このため、振り子61によるバランス調整効果を有効に発揮することができる。
【0057】
また、バランサ6によって重量が増加するので、傾き中心C回りの慣性モーメントが増加してジャイロモーメントMgも増加する。このため、危険速度以上の回転数での振動を更に低減することができる。
【0058】
しかも、バランサ6は、軸受314から離れたファンボス部に配置されているので、小さい重量増加量で効率良く慣性モーメントを増加させることができるので、効率良く振動を低減することができる。
【0059】
本実施形態による振動低減効果の例を図4に示す。図4の比較例は、バランサ6がない送風機における振動を示している。
【0060】
本実施形態では、複数の振り子61を互いにシャフト32の軸方向にずれて配置しているので、振り子61同士が衝突して異音が発生することを防止できる。さらに、複数の振り子61を振り子収容部62に収容しているので、第1ファン1および第2ファン2による空気の流れ(吸入口411、421からファン外周側に向かう空気の流れ)が振り子61と直接干渉(衝突)して当該空気の流れが乱れることを抑制できる。したがって、ファン1、2による空気の流れを乱すことなく、異音の発生を防止できる。
【0061】
さらに、本実施形態では、バランサ6が、第1ファン1と第2ファン2との間、且つ、ファンボス部(空気の流れが比較的弱い領域)に配置されているので、バランサ6が第1ファン1および第2ファン2による空気の流れを乱して送風騒音を増加させることを極力抑制することができるとともに、ファン内部の空間を有効に活用してバランサ6を効率的に配置することができる。
【0062】
さらに、振り子収容部62のカバー623は、第1ファン1の第1空気吸入口411側に向かって細くなる円錐台状に形成されているので、第1ファン1による空気の流れを振り子収容部62によって整えて送風騒音を抑制することができる。
【0063】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について図5に基づいて説明する。本第2実施形態では、図5(a)、(b)に示すように、振り子61の板状部材61aの長手方向における貫通穴61bと反対側の端部には、金属製の錘61cが設けられている。
【0064】
本実施形態によると、小さい重量増加量で効率良く慣性モーメントを増加させることができるので、効率良く振動を低減するとともに、バランサ6の小型化を図ることができる。
【0065】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について図6に基づいて説明する。本第3実施形態では、図6(a)、(b)に示すように、振り子61は、リング状に形成されたリング状部材61dを有している。リング状部材61dは、その内周面とシャフト32とが接触可能に配置されている。本例では、リング状部材61dは、リングの周方向に直交する断面形状が円形状となるように形成されている。
【0066】
また、2つのリング状部材61dの間には、シャフト32を中心とする円板形状に形成された円板部材61eが設けられている。円板部材61eは、シャフト32に固定されている。これにより、2つのリング状部材61dが互いに接触しないようになっている。
【0067】
本実施形態によれは、上記第1、第2実施形態と比較して、振り子61であるリング状部材61dとシャフト32との接触面積が小さくなり、摺動抵抗が小さくなるので、振り子61をシャフト32に対してスムーズに回転させることができる。
【0068】
さらに、リング状部材61dをリングの周方向に直交する断面形状が円形状となるように形成することで、リング状部材61dとシャフト32とが点接触となる。すなわち、リング状部材61dとシャフト32との接触面積がより小さくなるので、振り子61をシャフト32に対してよりスムーズに回転させることができる。
【0069】
(第4実施形態)
次に、本発明の第4実施形態について図7に基づいて説明する。本第4実施形態では、図7(a)、(b)に示すように、振り子61は、シャフト32を中心に回転可能なワイヤ61fと、このワイヤ61fの先端に接続された錘61gとを有して構成されている。ワイヤ61fは、シャフト32に対して回転可能に接続されている。
【0070】
2つの振り子61の間には、シャフト32を中心とする円板形状に形成された円板部材61eが設けられている。円板部材61eは、シャフト32に固定されている。また、円板部材61eの径方向長さは、ボス24の径方向長さよりも長くなっている。
【0071】
これにより、2つの振り子61のうち、鉛直方向上側に配置される振り子61(以下、上側振り子611という)の錘61gは、鉛直方向下側に配置される振り子61(以下、下側振り子612という)の錘61gよりもファン1、2の径方向外側を回転する。したがって、上側振り子611の錘61gと下側振り子612の錘61gとが、互いに干渉(接触)することを防止できる。
【0072】
次に、上記構成における作動を説明する。ファン1、2が回転すると錘61gには遠心力が作用する。ファン1、2の回転速度が遅い(例えば、危険速度ωcより低い回転速度)と、錘61gに作用する遠心力は小さいので、錘61gは垂れ下がったままの状態となり、振り子バランサとして作動しない。
【0073】
ファン1、2の回転速度が速くなると、錘61gに作用する遠心力が大きくなる。このため、ファン1、2の回転速度が所定速度(例えば、危険速度ωc)より速くなると、錘61gが図7(b)の破線矢印の方向に移動し、振り子バランサとして作動する。すなわち、錘61gはシャフト32を中心に自由に回転し、図3(c)に示すように、遠心力によって重心Gと釣合う位置に自動的に配置されるので、錘61gと重心Gおよび慣性主軸Aが釣合いの位置関係になる。そのため、シャフト32の振れ幅を小さくして振動を低減することができる。
【0074】
以上説明したように、本実施形態では、危険速度ωcより低い回転速度ωではバランサ6の錘61gが垂れ下がったままの状態となり、振り子バランサとして作動しないので、錘61gが遠心力により重心Gと同一方向に配置されることを防止できる。これにより、低速回転時に錘61g(振り子61)による系のアンバランスの増加を抑制することが可能となる。このため、錘61gによる系のアンバランスの増加に起因する振動の増加を抑制することができる。
【0075】
(第5実施形態)
次に、本発明の第5実施形態について図8に基づいて説明する。本第5実施形態は、上記第4実施形態と比較して、アーム部61h、61iによって錘61gをシャフト32に対して回転可能に支持した点が異なるものである。
【0076】
具体的には、図8(a)、(b)に示すように、振り子61は、第1アーム部61h、第2アーム部61i、錘61g等を有して構成されている。第1アーム部61hは、板状に形成されており、その長手方向一端部がシャフト32に対して回転可能に嵌合されている。
【0077】
第1アーム部61hの長手方向他端側には、第2アーム部61iの長手方向一端側が接続されている。第2アーム部61iは、第1アーム部61hの長手方向に直交する方向に延びるピン状部材61jによって、第1アーム部61hに固定(支持)されている。このため、第2アーム部61iは、第1アーム部61hとの固定部を中心に回転可能になっている。また、第2アーム部61hの長手方向他端部には、錘61gが接続されている。
【0078】
上側振り子611の第1アーム部61hの長さは、下側振り子612の第1アーム部61hの長さよりも長くなっている。一方、上側振り子611の第2アーム部61iの長さは、下側振り子612の第2アーム部61iの長さよりも短くなっている。
【0079】
これにより、上側振り子611の錘61gは、下側振り子612の錘61gよりもファン1、2の径方向外側を回転する。したがって、上側振り子611の錘61gと下側振り子612の錘61gとが、互いに干渉(接触)することを防止できる。
【0080】
なお、本例では、上側振り子611の第1アーム部61hおよび第2アーム部61iの合計長さと、下側振り子612の第1アーム部61hおよび第2アーム部61iの合計長さとが等しくなっている。
【0081】
本実施形態によれば、ファン1、2の回転速度が危険速度ωcより速い場合に、錘61gが図8(b)の破線矢印の方向に移動し、振り子バランサとして作動する。一方、ファン1、2の回転速度が危険速度ωcより遅い場合には、錘61gが垂れ下がったままの状態となり、振り子バランサとして作動しないので、錘61gが遠心力により重心Gと同一方向に配置されることを防止できる。したがって、上記第4実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0082】
(他の実施形態)
本発明は上述の実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、以下のように種々変形可能である。
【0083】
(1)上記各実施形態では、ファン1、2として遠心式多翼ファンを用いた例について説明したが、これに限定されるものではなく、軸流ファンや貫流ファン等の種々の形式のファンであってもよい。
【0084】
(2)上記各実施形態では、送風機として、2つのファンを備える内外気2層式送風機を採用した例について説明したが、これに限定されるものではなく、ファンが1つの単層式送風機であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
1 第1ファン(ファン)
2 第2ファン(ファン)
32 シャフト
61 振り子
61a 板状部材
61c 錘
61d リング状部材
61f ワイヤ
61g 錘
61h 第1アーム部
61i 第2アーム部
62 振り子収容部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで空気に運動量を与えるファン(1、2)と、
前記ファン(1、2)の回転軸となるシャフト(32)と、
前記シャフト(32)を中心に回転可能な複数の振り子(61)と、
前記複数の振り子(61)を収容する振り子収容部(62)とを備え、
前記複数の振り子(61)は、互いに前記シャフト(32)の軸方向にずれて配置されていることを特徴とする送風機。
【請求項2】
前記ファン(1、2)は、前記シャフト(32)が結合されるボス(24)を有し、
前記振り子収容部(62)は、前記ボス(24)に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の送風機。
【請求項3】
前記振り子収容部(62)は、前記ファン(1)の空気吸入側に向かって先細る形状になっていることを特徴とする請求項1または2に記載の送風機。
【請求項4】
前記ファンとして、第1ファン(1)および第2ファン(2)が設けられており、
前記振り子収容部(62)は、前記第1ファン(1)および前記第2ファン(2)の間に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項5】
前記振り子(61)は、前記シャフト(32)に対して回転可能に嵌合された板状部材(61a)を含んで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項6】
前記振り子(61)は、前記シャフト(32)に対して回転可能に嵌合された板状部材(61a)と、前記板状部材(61a)に接続された錘(61c)とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項7】
前記振り子(61)は、リング状に形成されたリング状部材(61d)を含んで構成されており、
前記リング状部材(61d)は、当該リング状部材(61d)の内周面と前記シャフト(32)とが接触可能に配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項8】
前記振り子(61)は、前記シャフト(32)に対して回転可能に接続されたワイヤ(61f)と、前記ワイヤ(61f)に接続された錘(61g)とを含んで構成されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機。
【請求項9】
前記振り子(61)は、前記シャフト(32)に対して回転可能に嵌合された第1アーム部(61h)と、一端が前記第1アーム部(61h)に支持されるとともに他端に錘(61g)が接続された第2アーム部(61i)とを含んで構成されており、
前記第2アーム部(61i)は、前記第1アーム部(61h)との接続部を中心に回転可能に支持されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の送風機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−255368(P2012−255368A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128288(P2011−128288)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】