説明

逃がし弁

【課題】複数回にわたって弁の開閉動作を行っても、各回の開弁圧に変化を生じず、また、短時間で全開状態になることができる逃がし弁を提供する。
【解決手段】1次側ポート(8)の弁棒(5)側の開口部(11)に、開口部(11)を囲繞する環状シール部材(13)を取り付ける。弁棒(5)を環状シール部材(13)に向かって往復動可能に取り付け、弁棒(5)が環状シール部材(13)に着座したとき、第1受圧面(S1)の面積が一定になるように、弁棒(5)の着座位置を規制する。これにより、逃がし弁は常に設定圧で開弁する。弁棒(5)の第1受圧面(S1)の下流側には第2受圧面(S2)が形成され、弁棒(5)が環状シール部材(13)から離隔したとき、第2受圧面(S2)に1次側ポート(8)の流体圧が作用する。これにより、弁棒(5)は開弁位置まで一気に変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1次側の流体圧が予め設定された圧力(以下、設定圧という。)に達すると開放し、1次側の流体圧が設定圧よりも低下すると閉鎖する、逃がし弁に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、特開2000−154881号公報に記載されているように、弁ハウジング内の弁室に弁体を配置し、この弁体が接離する弁座部によって弁ポートを画定すると共に、この弁ポートを一次圧ポートとし、弁室側に二次圧ポートを設け、一次圧が所定値になると、弁体が弁座部から離隔して開弁するように構成された逃がし弁が存在する。この逃がし弁は、環状シール部材による弁軸部のシール経と弁ポートの口径とを同一にすることにより、二次圧の影響を受けることなく確実に開弁するように構成したことを特徴とする。
【0003】
また、特開平7−330087号公報は、液体を定量的に供給するシステムにおいて、液体の過剰供給を制御するリリーフ弁を開示する。このリリーフ弁は、弁棒を弁座パッキン及びOリングに押し付ける力を0.1kg/cmよりも小さい圧力幅で調節するため、圧縮空気の圧力を利用する。これにより、リリーフ弁が開弁するときの圧力(設定圧)を細かく設定することを可能にする。
【特許文献1】特開2000−154881号公報
【特許文献2】特開平7−330087号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これらの特許文献に開示されているように、逃がし弁及びリリーフ弁に関しては、従来から種々の提案がなされているが、従来の逃がし弁は、複数回にわたって弁の開閉動作をさせると、逃がし弁が開弁するときの圧力、即ち、開弁圧が次第に変化する場合がある。逃がし弁の使用を継続している間に逃がし弁の開弁圧が次第に変化すると、逃がし弁を取り付けたシステムの圧力を長期間にわたって所定の圧力に維持することができない。
【0005】
また、逃がし弁を取り付けたシステムの圧力をより正確に設定圧に維持するためには、システムの圧力が設定圧よりも上昇したときに、システムの圧力をできる限り短時間で所定圧まで低下させる必要がある。システムの圧力を短時間で低下させるためには、システムの圧力が逃がし弁の開弁圧に達したときから、逃がし弁が完全に開弁するまでに要する時間(以下、開弁時間という。)をできる限り短くすることが有効である。
【0006】
本発明の目的は、複数回にわたって弁の開閉動作を行っても、各回の開弁圧が変化することを防止した、逃がし弁を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、1次側ポートの流体圧が予め設定された圧力(設定圧)に達すると、短時間で全開状態になる、逃がし弁を提供することにある。
【0008】
本発明の更に他の目的は、逃がし弁を取り付けたシステムの圧力を長期間にわたって所定の圧力に維持することができる、逃がし弁を提供することにある。
【0009】
本発明の更に他の目的は、構成が簡単で、小型化が可能であり、製作が容易な逃がし弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の逃がし弁は、弁箱の1次側ポートと2次側ポートの間に弁体を配置し、前記弁体に閉弁方向の力を付与すると共に、前記弁体に前記1次側ポートの流体圧が作用する受圧面を形成し、前記受圧面に作用する前記流体圧が設定値よりも低圧であるときは、前記弁体が前記1次側ポートを前記2次側ポートから遮断して閉弁し、前記受圧面に作用する前記流体圧が前記設定値に達すると、前記流体圧によって前記弁体が開弁方向に変位して前記1次側ポートを前記2次側ポートに連通させる、逃がし弁において、前記1次側ポートの前記弁体側の開口部に、前記開口部を囲繞する弁座部材を取り付け、前記弁体を前記弁座部材に関して往復動可能に取り付け、前記弁体が前記弁座部材に着座したときに前記受圧面の面積が一定になるように、前記弁体の着座位置を規制する位置規制部材を設け、前記流体圧によって前記弁体が開弁方向に変位するとき、前記受圧面の面積が増加するように構成したことを特徴とする。
【0011】
本発明の逃がし弁は、また、前記受圧面は、前記弁体が前記弁座部材に着座したときに前記1次側ポートの流体圧が作用する第1受圧面と、前記第1受圧面よりも下流側に位置し、前記弁体が前記弁座部材から離隔したときに前記1次側ポートの流体圧が作用する、第2受圧面とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明の逃がし弁は、更に、前記1次側ポートの流体圧が上昇し、前記弁体と前記弁座部材の間の密封力が低下すると、前記弁体が前記弁座部材から離隔する前に、前記第2受圧面に前記1次側ポートの流体圧の一部が作用するように構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の逃がし弁は、弁体が弁座部材に着座したとき、1次側ポートの流体圧が作用する受圧面の面積が常に一定になるから、複数回にわたって逃がし弁の開閉動作を行っても、各回の開弁圧が変化することがない。よって、本発明の逃がし弁によれば、逃がし弁を取り付けたシステムの圧力を長期間にわたって所定の圧力に維持することができる。
【0014】
本発明の逃がし弁は、また、弁体が前記弁座部材に着座したときに1次側ポートの流体圧が作用する第1受圧面の他に、第1受圧面よりも下流側に位置し、弁体が弁座部材から離隔したときに1次側ポートの流体圧が作用する、第2受圧面を有し、弁体が弁座部材から離隔すると1次側ポートの流体圧は第1受圧面に加えて第2受圧面にも作用する。このため、弁体を開弁方向に変位させようとする力は受圧面の面積が増加した分だけ増大するから、弁体を、短時間で、一気に全開位置まで変位させることができる。
【0015】
本発明の逃がし弁は、また、1次側ポートの流体圧が上昇することによって、弁体と弁座部材の間の密封力が低下し、弁体が弁座部材から未だ完全には離隔していない状態のときに、1次側ポートの流体圧の一部を第2受圧面に作用させることによって、第1受圧面の中心から、第2受圧面を通り、2次側ポートに向かって減少する圧力勾配を形成することができる。すなわち、第1受圧面に逃がし弁の設定圧P1が作用しているとき、第2受圧面に作用する圧力をP2とすると、一般に、P2<P1である。P2がP1よりも小さい理由は、第2受圧面に作用する流体の一部が、弁体の外面に沿って2次側ポートから外部に漏れるからである。このような圧力勾配を形成することにより、開弁時に、1次側ポートから2次側ポートに向かって、流体を滑らかに移動させることができる。
【0016】
本発明の逃がし弁は、更に、第1受圧面と第2受圧面の面積の総和を減少させることなく、第1受圧面の面積を減少させることができる。第1受圧面の面積を減少させると、弁体と弁座部材の密封度を向上させることができると同時に、弁体を弁座部材に向けて付勢する圧縮コイルスプリング等の付勢力を減少させることができる。このため、圧縮コイルスプリング等が小型化し、逃がし弁を小型化することができる。
本発明のその他の特徴は、図を参照して記述された、以下の実施例の説明から明らかになる。
【実施例1】
【0017】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。図示の逃がし弁1は、システム中の圧縮空気が予め設定された圧力になったときに、この圧力を大気中に解放するための圧力逃がし弁を示す。
【0018】
図1に示すように、逃がし弁1は、弁箱2と、弁箱2に螺着されたアダプタ部材3と、アダプタ部材3に螺着された設定圧調整部材4と、アダプタ部材3と設定圧調整部材4とによって摺動自在に支持された弁棒5と、設定圧調整部材4と弁棒5の間に介装された圧縮コイルスプリング6と、設定圧調整部材4の外面に螺合して、アダプタ部材3と設定圧調整部材4の間の相対的な変位を防止する、ロックナット7とを有する。これらの構成部品は、適当な金属又は金属合金で形成することができる。
【0019】
弁箱2は、1次側ポート8と、2次側ポート9と、アダプタ部材装着穴10とを有する。1次側ポート8は、弁箱2の中央軸線に沿って、図中、上下方向に延在し、アダプタ部材装着穴10の底面に開口部11を有する。2次側ポート9は、弁箱2の中央軸線CAを中心にして放射方向に延在し、アダプタ部材装着穴10を弁箱2の外部に連通させる。弁箱2には複数本の2次側ポート9を設けることができる。図2及び3に示されているように、アダプタ部材装着穴10の底面には、アダプタ部材装着穴10の底面に開口する環状溝12が形成されている。環状溝12は、アダプタ部材装着穴10の底面に沿って環状に延在し、1次側ポート8の開口部11を囲繞する。環状溝12には、ゴム材等の弾性材料で形成された環状シール部材13が装着される。環状シール部材13は、環状溝12に嵌着された状態で、1次側ポート8の開口部11よりも上方に突出している。
【0020】
アダプタ部材3は、全体として管状の中空体からなり、弁棒5が摺動自在に案内される小径のシリンダ部14と、設定圧調整部材4が連結される大径の管状支持部15とを有する。シリンダ部14の底部16の中央部には貫通孔17が形成され、貫通孔17は1次側ポート8の開口部11に向かって開口する。シリンダ部14の側壁部18には貫通孔19が形成され、貫通孔19は対応する2次側ポート9に向かって開口する。大径の管状支持部15の外周面には雄ネジ部20が形成され、その内周面には雌ネジ部21が形成されている。弁箱2のアダプタ部材装着穴10の内周面には雌ネジ部22が形成され、アダプタ部材3は、アダプタ部材3の外周面に形成された雄ネジ部20を弁箱2の雌ネジ部22に螺合させて、アダプタ部材装着穴10に固定される。このとき、シリンダ部14の貫通孔17の周囲に延在する環状壁23が、環状シール部材13の上面の一部に当接し、環状シール部材13を環状溝12の内部に固定する。シリンダ部14の側壁部18と環状壁23は、弁棒5の着座位置を規制する位置規制部材を構成する。また、シリンダ部14の側壁部18と弁箱2の間には環状通路24が画成され、貫通孔19は環状通路24を介して2次側ポート9に連通する。
【0021】
弁棒5の下端部には大径のピストン部25が形成され、ピストン部25の下端面の中央部には円筒状突起部26が形成されている。図4に明確に示されているように、円筒状突起部26の端面S1が、閉弁時に1次側ポート8の流体圧が作用する受圧面、すなわち、第1受圧面であり、第1受圧面の周囲に環状に延在するピストン部25の端面S2が、開弁時に1次側ポート8に新たに露出する受圧面、すなわち、第2受圧面である。
【0022】
ピストン部25はアダプタ部材3のシリンダ部14に摺動自在に嵌合し、円筒状突起部26はシリンダ部14の底部16に形成された貫通孔17に進入することができる。弁棒5の上端部には小径の案内部27が形成され、案内部27は、設定圧調整部材4に形成された貫通孔28に摺動自在に挿入される。設定圧調整部材4の外周面には雄ネジ部29が形成され、設定圧調整部材4は、その雄ネジ部29をアダプタ部材3の雌ネジ部21に螺合させて、アダプタ部材3に装着される。弁棒5のピストン部25と設定圧調整部材4の間には圧縮コイルスプリング6が介装され、圧縮コイルスプリング6は弁棒4を常時下方へ弾発付勢する。圧縮コイルスプリング6が弁棒4を付勢する弾発力は、設定圧調整部材4をアダプタ部材3に関して回転させることにより調整することができる。設定圧調整部材4の雄ネジ部29にはロックナット7が螺合し、ロックナット7をアダプタ部材3に締め付けることによって設定圧調整部材4をアダプタ部材3に固定することができる。これにより、圧縮コイルスプリング6の付勢力が変化することを防止することができる。
【0023】
以下、本実施例の作用を説明する。本実施例の説明に際し、逃がし弁1は、弁箱2の外周面の下部に形成された雄ネジ部30によって、圧縮空気が流入する圧力室(図示せず。)の外壁に取り付けられ、1次側ポート8は圧力室内に連通し、2次側ポート9は大気中に開放されている。
【0024】
図1乃至3は、1次側ポート8に流体圧が作用していない無加圧状態を示す。この無加圧状態では、弁棒5は、圧縮コイルスプリング6の弾発力によって最下端に位置し、ピストン部25はシリンダ部14の底部16に当接している。このとき、弁棒5の円筒状突起部26は、底部16の貫通孔17を通って、環状シール部材13に当接し、1次側ポート8を2次側ポート9から遮断している。図3に示すように、円筒状突起部26と環状シール部材13は、円筒状突起部26の周縁部26aを環状シール部材13の内周縁部13aに圧着させることにより、1次側ポート8を密封する。円筒状突起部26の周縁部26aは、滑らかに凸状に湾曲した表面を有するから、環状シール部材13は円筒状突起部26の周縁部26aとの間に、滑らかに凹状に湾曲した表面を有する帯状シール面を形成する。この帯状シール面は、環状シール部材13の内周縁部13aに沿って環状に延在する。
【0025】
図1乃至3に示した状態で、1次側ポート8に圧縮空気が流入すると、その圧縮空気圧は弁棒5の第1受圧面S1に作用する。第1受圧面S1は、円筒状突起部26の端面に形成され、閉弁時に1次側ポート8の流体圧が作用する受圧面である。したがって、図1乃至3に示す閉弁時には、第1受圧面S1は、環状シール部材13と円筒状突起部26の端面の間の環状密着部の内側に形成される。
【0026】
逃がし弁1の1次側ポート8に流入した圧縮空気の圧力が上昇し、逃がし弁1が開弁すべき圧力として予め設定された圧力(設定圧)に達すると、弁棒5は圧縮コイルスプリング6の弾発力に抗して上昇し、弁棒5の円筒状突起部26は環状シール部材13から離隔する。これにより、弁棒5の第1受圧面S1に加えて、その第2受圧面S2にも1次側ポート8の圧縮空気圧が作用するから、弁棒5は第1受圧面S1と第2受圧面S2の総和に印荷される圧縮空気圧によって一気に上昇し、第4乃至6図に示す開弁状態となる。第2受圧面S2は、弁棒5の円筒状突起部26の周囲に環状に延在するピストン部25の端面であり、弁棒5の円筒状突起部26が環状シール部材13に密着している閉弁時には、1次側ポート8の圧縮空気圧を受けることはないが、開弁時に1次側ポート8に新たに露出し、1次側ポート8の圧縮空気圧が印荷される受圧面である。なお、図4乃至6に示した開弁時の第1受圧面S1の面積は、図1乃至3に示した閉弁時の第1受圧面S1の面積よりも、円筒状突起部26の端面と環状シール部材13の密着部の面積分だけ増加している。したがって、弁棒5の円筒状突起部26が環状シール部材13から離隔することにより、弁棒5に作用する圧縮空気圧の面積は、厳密には、第1受圧面S1のこの増加分と第2受圧面S2の面積の総和となる。
【0027】
逃がし弁1の設定圧は、ロックナット7を緩め、設定圧調整部材4をアダプタ部材3に関して回転させ、圧縮コイルスプリング6の弾発力を調整することにより、任意の値に設定することができる。
【0028】
逃がし弁1の1次側ポート8の圧縮空気圧が設定圧に達し、弁棒5が極めて短時間で図4乃至6に示す上端位置まで上昇すると、1次側ポート8の圧縮空気は、図6に矢印Fで示すように、開口部11、貫通孔17、アダプタ部材3とピストン部25の間に形成された連通室31、貫通孔19、環状通路24を経て、2次側ポート9から大気中に放出される。これにより、1次側ポート8の圧縮空気圧は逃がし弁1の設定圧以下に低下し、弁棒5が圧縮コイルスプリング6の弾発力で最下端位置まで下降して、図1乃至3の状態に復帰する。以下、弁棒5が上下動して、前述の動作を繰り返す。
【0029】
以上は、図1乃至3に示す状態において、弁棒5の円筒状突起部26と環状シール部材13の間が完全に密封され、円筒状突起部26の側面とアダプタ部材3の貫通孔17の間、第2受圧面S2とアダプタ部材3のシリンダ部14の底部16との間、及び、ビストン部25の側面とアダプタ部材3のシリンダ部14の内壁面との間に、それぞれ、隙間が存在しない状態における説明である。しかし、実際には、円筒状突起部26の側面とアダプタ部材3の貫通孔17の間には、これらの部材が相対的に変位するための隙間が必要であり、また、逃がし弁1が図1乃至3の閉弁状態から図4乃至6の開弁状態に至る間に、円筒状突起部26と環状シール部材13の間の密封が部分的に解除される場合がある。このような状態の一例を、図7、8及び9(B)に示す。
【0030】
図7、8及び9(B)は、図1乃至3の状態における逃がし弁1の1次側ポート8に圧縮空気圧が作用し、弁棒5が圧縮コイルスプリング6の弾発力に抗して微少量aだけ上昇した状態を示す。図9(A)は、弁棒5が最下端位置にある図3の状態を示し、図9(B)に図9(A)を並記した理由は、弁棒5が、図9(A)の閉弁位置から微少量aだけ上昇した状態を明確にするためである。さて、図9(B)に示すように、弁棒5が微少量aだけ上昇した状態においては、弁棒5の円筒状突起部26と環状シール部材13との接触が完全には解除されておらず、1次側ポート8の圧縮空気は、円筒状突起部26と環状シール部材13の間を通過して貫通孔17に流入し、次いで、シリンダ部14の底面16とピストン部25の下端面の間の隙間b及びシリンダ部14の側壁部18の内壁面とピストン部25の周面の間の隙間cを通過して、貫通孔19から環状通路24に流出し、2次側ポート9を通って大気中に排出される。これらの隙間b、cは微少であるから、2次側ポート9から排出される圧縮空気の流量は小さいが、隙間cは大気圧に開放された2次側ポート9に連通しているから、1次側ポート8から2次側ポート9に向かって流れる圧縮空気流は、1次側ポート8から2次側ポート9に向かって低下する圧力勾配を有すると考えられる。してみると、隙間b内の圧縮空気圧は、1次側ポート8の圧縮空気圧と2次側ポート9の大気圧の間の圧力値であると考えることができる。今、図7、8及び9(B)の状態において、隙間b内の圧縮空気圧を1次側ポート8の圧縮空気圧Pの約1/2と仮定すると、弁棒5に作用する開弁力は、第1受圧面S1に圧縮空気圧Pを乗じた値と、第2受圧面S2に圧縮空気圧P/2を乗じた値との和であると考えられる。すなわち、逃がし弁1は、図1乃至3に示した閉弁状態から、図4乃至6に示した開弁状態に変化する間に、図7、8及び9(B)に示す遷移状態を経ることになる。第2受圧面S2に作用する圧縮空気圧は、主として、シリンダ部14の側壁部18の内壁面とピストン部25の周面の間の隙間cの値によって決定される。隙間cの大きさは、例えば、0.05mmにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の逃がし弁は、複数回にわたって弁の開閉動作を行っても、各回の開弁圧が変化しないから、システムの圧力を継続的に所定圧に維持することができる。また、本発明の逃がし弁は、システムの圧力を短時間で所定圧まで低下させることができるから、システムの圧力をより正確に設定圧に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】閉弁状態における本発明の逃がし弁の一実施例の断面図である。
【図2】図1の逃がし弁の要部拡大断面図である。
【図3】図2のX部分の拡大断面図である。
【図4】開弁状態における図1の逃がし弁の断面図である。
【図5】図4の逃がし弁の要部拡大断面図である。
【図6】図5のY部分の拡大断面図である。
【図7】図1の閉弁状態と図4の開弁状態の間の遷移状態における図1の逃がし弁の断面図である。
【図8】図7の逃がし弁の要部拡大断面図である。
【図9】図9(A)は、図8のZ部分が閉弁状態にあるときの断面図であり、図9(B)は、図8のZ部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 逃がし弁
2 弁箱
3 アダプタ部材
4 設定圧調整部材
5 弁棒(弁体)
6 圧縮コイルスプリング
7 ロックナット
8 1次側ポート
9 2次側ポート
11 1次側ポートの開口部
12 環状溝
13 環状シール部材(弁座部材)
S1 第1受圧面
S2 第2受圧面
CA 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱の1次側ポートと2次側ポートの間に弁体を配置し、前記弁体に閉弁方向の力を付与すると共に、前記弁体に前記1次側ポートの流体圧が作用する受圧面を形成し、前記受圧面に作用する前記流体圧が設定値よりも低圧であるときは、前記弁体が前記1次側ポートを前記2次側ポートから遮断して閉弁し、前記受圧面に作用する前記流体圧が前記設定値に達すると、前記流体圧によって前記弁体が開弁方向に変位して前記1次側ポートを前記2次側ポートに連通させる、逃がし弁において、前記1次側ポートの前記弁体側の開口部に、前記開口部を囲繞する弁座部材を取り付け、前記弁体を前記弁座部材に関して往復動可能に取り付け、前記弁体が前記弁座部材に着座したときに前記受圧面の面積が一定になるように、前記弁体の着座位置を規制する位置規制部材を設け、前記流体圧によって前記弁体が開弁方向に変位するとき、前記受圧面の面積が増加するように構成したことを特徴とする、逃がし弁。
【請求項2】
請求項1に記載の逃がし弁において、前記受圧面は、前記弁体が前記弁座部材に着座したときに前記1次側ポートの流体圧が作用する第1受圧面と、前記第1受圧面よりも下流側に位置し、前記弁体が前記弁座部材から離隔したときに前記1次側ポートの流体圧が作用する、第2受圧面とを有することを特徴とする、前記逃がし弁。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の逃がし弁において、前記1次側ポートの流体圧が上昇し、前記弁体と前記弁座部材の間の密封力が低下すると、前記弁体が前記弁座部材から離隔する前に、前記第2受圧面に前記1次側ポートの流体圧の一部が作用するように構成したことを特徴とする、前記逃がし弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−309255(P2008−309255A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−158008(P2007−158008)
【出願日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(301036445)ダイセン株式会社 (6)
【Fターム(参考)】