説明

逆止弁付き三方弁

【課題】全体的に軽量かつコンパクトで、製造コストの低い逆止弁付き三方弁を提供する。
【解決手段】金属製で管状の本体2を備える逆止弁部10と、本体の一方の開口端部に溶接接続される金属製のT字継手8とからなり、逆止弁部は、本体内に収容される弁組立体7と、本体の他方の開口端部に溶接接続される金属製の管状部材9とを備え、弁組立体は、樹脂製の弁体3を有し、一方向の流体流れを許容すると共に他方向の流体流れを制限するように構成され、管状部材が本体に溶接接続される前の状態で弁組立体が本体の他方の開口端部から本体内に挿入装着可能である。弁組立体以外の部分がすべて管状の部材又はT字継手であるため、全体的に軽量で、溶接箇所も2箇所であり、製造コストを低く抑えることができる。本体にT字継手を溶接接続した後、弁組立体を本体に収容して弁体に対する熱影響を回避し、全体高さを低く抑え、コンパクトに構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調サイクルの分岐部等に用いられる逆止弁付き三方弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部屋数の多い建物等に設置される空調サイクルでは、冷媒流路に多くの分岐部が存在し、冷媒流路を切り換えるため、例えば、図7に示すような逆止弁付き三方弁21が用いられている。
【0003】
この逆止弁付き三方弁21は、真鍮製でT字管状に形成された本体22と、本体22に収容された樹脂製の弁体23と、本体22の下部に溶接によって接続された銅管24及び銅管25(溶接箇所24a、25a)と、本体22の上部開口に、蓋体27を介して溶接接続された銅管26(溶接箇所26a、27a)とで構成される。この逆止弁付き三方弁21は、図7に示す状態では、弁体23に対する銅管26の内部の冷媒Rの押圧力が、銅管24、25の内部の冷媒Rの押圧力より大きいため、弁体23の弁部23aが本体22の弁座22aに当接して弁口22bが閉じられ、銅管24と銅管25との間で冷媒Rが流れ、銅管26へは冷媒Rが流れない。
【0004】
図7に示す状態から、銅管24と銅管25を流れる冷媒Rの圧力が高くなり、弁体23に対する銅管26の内部の冷媒Rの押圧力よりも銅管24、25の内部の冷媒Rの押圧力の方が大きくなると、図8に示す様に、弁体23が本体22の内壁22cに沿って上昇し、弁部23aが弁座22aから離れて弁口22bが開き、本体22の内部を矢印で示すように冷媒Rが上方にも流れ、銅管24から銅管25及び銅管26に冷媒Rが流れる。
【0005】
しかし、上記逆止弁付き三方弁21は、本体22が真鍮の切削品であり、全体的に大型で重量も大きく、溶接箇所が4箇所(24a、25a、26a、27a)も存在するため、製造コストが高くなるという問題があった。
【0006】
そこで、図9に示すように、銅管からなる本体32の内部に、樹脂製の弁体33と、弁体33を囲繞して弁体33を鉛直方向に案内する円筒状の案内部34と、弁体33の弁部33aが接離する弁座35aを備えた弁座部材35と、弁座部材35と本体32の内壁との間に配置されたシール部材36とで構成される弁組立体37を配置してなる逆止弁を用い、この逆止弁の本体32の下端部を銅製のT字継手38に溶接接続(溶接箇所38a)した逆止弁付き三方弁31を製作することも考えられる。
【0007】
この逆止弁付き三方弁31も、図9に示す状態では、弁体33に対する本体32の上部32aの内部の冷媒Rの押圧力が、T字継手38の内部の冷媒Rの押圧力より大きいため、弁体33の弁部33aが弁座部材35の弁座35aに当接して弁口32bが閉じられ、T字継手38の内部を実線で示す矢印方向に冷媒が流れる。図9に示す状態から、弁体33に対する本体32の上部32aの内部の冷媒Rの押圧力よりもT字継手38の内部の冷媒Rの押圧力の方が大きくなると、図示を省略するが、弁体33が案内部34の内壁34aに沿って上昇し、弁部33aが弁座35aから離れて弁口32bが開き、本体32の内部を破線の矢印で示すように、上方にも冷媒Rが流れる。
【0008】
この逆止弁付き三方弁31は、図7及び図8に示した逆止弁付き三方弁21に比較して全体的に軽量であり、溶接箇所も1箇所であるため、製造コストも低減することができるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記従来の逆止弁付き三方弁31は、弁組立体37を本体32の内部に固定した後、溶接箇所38aにおいて本体32の下端部を銅製のT字継手38に溶接接続する際に、樹脂製の弁体33への熱影響を避けるため、溶接箇所38aと弁体33との間の距離Lを長くする必要がある。そのため、逆止弁付き三方弁31全体が大型化し、限られたスペースに設置することができないという問題があった。
【0010】
そこで、本発明は、上記従来の逆止弁付き三方弁における問題点に鑑みてなされたものであって、全体的に軽量かつコンパクトで、製造コストの低い逆止弁付き三方弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、逆止弁付き三方弁であって、金属製で管状の本体を備える逆止弁部と、前記本体の一方の開口端部に溶接接続される金属製のT字継手とからなり、前記逆止弁部は、前記本体内に収容される弁組立体と、前記本体の他方の開口端部に溶接接続される金属製の管状部材とを備え、前記弁組立体は、樹脂製の弁体を有し、一方向の流体流れを許容すると共に他方向の流体流れを制限するように構成され、前記管状部材が前記本体に溶接接続される前の状態で前記弁組立体が前記本体の他方の開口端部から前記本体内に挿入装着可能であることを特徴とする。
【0012】
そして、本発明によれば、弁組立体以外の部分がすべて管状の部材又はT字継手からなるため、全体的に軽量な逆止弁付き三方弁を提供することができ、溶接箇所も2箇所であるため、逆止弁付き三方弁の製造コストを低く抑えることができる。これに加え、本体にT字継手を溶接接続した後、弁組立体を本体に収容することで弁体に対する熱影響を回避することができるため、逆止弁付き三方弁の全体高さを低く抑え、コンパクトに構成することができ、狭いスペースにも設置することができる逆止弁付き三方弁を製造することができる。
【0013】
また、本発明の他の逆止弁付き三方弁は、金属製で管状の本体を備える逆止弁部と、前記本体の一方の開口端部に溶接接続される金属製のT字継手とからなり、前記逆止弁部は、前記本体内に収容される弁組立体と、前記本体の他方の開口端部に絞り加工により形成されると共に前記本体の前記弁組立体を収容した部分よりも小径の小径部とを備え、前記弁組立体は、樹脂製の弁体を有し、一方向の流体流れを許容すると共に他方向の流体流れを制限するように構成され、前記本体に前記小径部が形成される前の状態で前記弁組立体が前記本体の他方の開口端部から前記本体内に挿入装着可能であることを特徴とする。
【0014】
本発明によれば、上記発明と同様、全体的に軽量で、逆止弁付き三方弁の全体高さを低く抑え、コンパクトに構成することができ、狭いスペースにも設置することができる逆止弁付き三方弁を製造することができると共に、溶接箇所が1箇所であるため、逆止弁付き三方弁の製造コストをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、全体的に軽量かつコンパクトで、製造コストの低い逆止弁付き三方弁を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかる逆止弁付き三方弁の一実施の形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図2】(a)は、図1の逆止弁付き三方弁の側面図、(b)は、図1のA−A線断面図である。
【図3】図1のB−B線断面図である。
【図4】図3に示した逆止弁付き三方弁の弁体が上昇した状態を示す図である。
【図5】本発明にかかる逆止弁付き三方弁の他の実施の形態を示す図であって、(a)は正面図、(b)は平面図、(c)は底面図である。
【図6】図5のC−C線断面図である。
【図7】従来の逆止弁付き三方弁の一例を示す断面図である。
【図8】図8に示した逆止弁付き三方弁の弁体が上昇した状態を示す図である。
【図9】従来の逆止弁付き三方弁の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1乃至図4は、本発明にかかる逆止弁付き三方弁の一実施の形態を示す。この逆止弁付き三方弁1は、金属製で管状の本体2を備える逆止弁部10と、本体2の下端部に溶接接続(溶接箇所8a)される金属製のT字継手8とからなる。逆止弁部10は、銅管からなる本体2の内部に、樹脂製の弁体3と、弁体3を囲繞して弁体3を鉛直方向に案内する円筒状の案内部4と、弁体3の弁部3aが接離する弁座5aを備えた弁座部材5と、弁座部材5と本体2の内壁との間に配置されたシール部材6とで構成される弁組立体7が配置され、本体2の上縁部に銅管9が溶接接続(溶接箇所9a)されている。
【0019】
弁体3は、下端部に弁部3aを有すると共に、図1(b)に明示されるように、4つの羽根状部3bが円筒部3cに連結され、弁部3aが弁座部材5の弁座5aに当接することで、本体2の弁口2aが閉じ、弁部3aが弁座5aから離間すると、弁体3の隣接する羽根状部3b間の空隙を通って冷媒Rが本体2の内部を通過可能に構成される。
【0020】
上記構成を有する逆止弁付き三方弁1を組み立てるには、まず、弁組立体7と銅管9とを本体2の内部に収容しない状態で、本体2の下端部にT字継手8を溶接接続する。この際、本体2の内部に熱に弱い弁体3が存在しないため、T字継手8の溶接による弁体3への熱影響を考慮する必要がない。
【0021】
次に、弁組立体7及び銅管9を、この順序で本体2の上方の開口から挿入して本体2の内部に収容し、本体2の上縁部で銅管9を溶接して固定する(溶接箇所9a)。この溶接の際には、弁組立体7の部分を本体2の外側から冷却すると共に、溶接箇所9aと弁体3までの距離Lが長いことと、銅管9の挿入代全長にわたっての溶接接合までは要求されないため、弁体3が溶接による熱影響を受けるのを回避することができる。
【0022】
この逆止弁付き三方弁1は、図2及び図3に示す状態では、弁体3に対する銅管9の内部の冷媒Rの押圧力が、T字継手8の内部の冷媒Rの押圧力より大きいため、弁体3の弁部3aが弁座部材5の弁座5aに当接して弁口2aが閉じられ、T字継手8の内部を矢印方向又は矢印とは逆方向に冷媒Rが流れる。
【0023】
図2及び図3に示す状態から、弁体3に対する銅管9の内部の冷媒Rの押圧力よりもT字継手8の内部の冷媒Rの押圧力の方が大きくなると、図4に示すように、弁体3が案内部4の内壁4aに沿って上昇し、弁部3aが弁座5aから離れて弁口2aが開き、4つの羽根状部3bの間の空隙を通って冷媒Rが本体2の内部を矢印で示すように、上方にも冷媒Rが流れる。
【0024】
以上のように、上記逆止弁付き三方弁1は、弁組立体7以外の部分がすべて銅管(本体)2、9又は銅製のT字継手8からなるため、全体的に軽量であり、溶接箇所も2箇所であるため、製造コストを低く抑えることができ、逆止弁付き三方弁1の全体高さを低く抑えることでコンパクトに構成することができ、狭いスペースにも設置することができる。
【0025】
次に、本発明にかかる逆止弁付き三方弁の他の実施の形態について、図5及び図6を参照しながら説明する。
【0026】
この逆止弁付き三方弁11は、金属製で管状の本体12を備える逆止弁部20と、本体12の下端部に溶接接続される金属製のT字継手18とからなる。逆止弁部20は、銅管からなる本体12の内部に、樹脂製の弁体13と、弁体13を囲繞して弁体13を鉛直方向に案内する円筒状の案内部14と、弁体13の弁部13aが接離する弁座15aを備えた弁座部材15と、弁座部材15と本体12の内壁との間に配置されたシール部材16とで構成される弁組立体17が配置されている。
【0027】
本体12は、弁組立体17を収容する大径部12aと、上部の小径部12bと、大径部12aと小径部12bとの間に位置するテーパー部12cとで構成される。
【0028】
弁体13は、上記第1実施形態における弁体3と同様の構成を有し、下端部に弁部13aを有すると共に、図5(b)に明示されるように、4つの羽根状部13bが円筒部13cに連結され、弁部13aが弁座部材15の弁座15aに当接することで、本体12の弁口12dが閉じ、弁部13aが弁座15aから離間すると、弁体13の隣接する羽根状部13b間の空隙を通って冷媒Rが本体12の内部を通過可能に構成される。
【0029】
上記構成を有する逆止弁付き三方弁11を組み立てるには、まず、全体的に大径部12aと同径で下端部のみ絞った本体12の下端部をT字継手18に溶接する(溶接箇所18a)。この際、本体12の内部に熱に弱い弁体13が存在しないため、T字継手18の溶接による弁体13への熱影響を考慮する必要がない。
【0030】
次に、本体12の上部開口から弁組立体17を本体12の内部に収容する。上述のように、全体的に大径部12aと同径の本体12であるため、弁組立体17を上部開口から挿入することができる。その後、本体12の上部を回転させながら絞り加工を施すことでテーパー部12c及び小径部12bを形成し、弁組立体17を図6に示す位置に固定する。このように、本実施の形態では、上記第1の実施形態における溶接を省略しているため、逆止弁付き三方弁1の組立に要する溶接箇所は1箇所で済み、さらに製造コストを低減することができる。
【0031】
この逆止弁付き三方弁11は、図6に示す状態では、弁体13に対する本体12の小径部12b及びテーパー部12cの内部の冷媒Rの押圧力が、T字継手18の内部の冷媒Rの押圧力より大きいため、弁体13の弁部13aが弁座部材15の弁座15aに当接して弁口12dが閉じられ、T字継手18の内部を矢印方向又は矢印とは逆方向に冷媒Rが流れる。
【0032】
図6に示す状態から、弁体13に対する本体12の小径部12b及びテーパー部12cの内部の冷媒Rの押圧力よりもT字継手18の内部の冷媒Rの押圧力の方が大きくなると、図示を省略するが、弁体13が案内部14の内壁14aに沿って上昇し、弁部13aが弁座15aから離れて弁口12dが開き、4つの羽根状部13bの間の空隙を通って冷媒Rが本体12の内部を上方にも冷媒Rが流れる。
【0033】
以上のように、上記逆止弁付き三方弁11は、弁組立体17以外の部分がすべて銅管(本体)12又は銅製のT字継手18からなるため、全体的に軽量であり、溶接箇所も1箇所であるため、さらに製造コストを低く抑えることができ、逆止弁付き三方弁11の全体高さを低く抑えることでコンパクトに構成することができ、狭いスペースにも設置することができる。
【0034】
尚、上記の実施形態においては、本体2、12、T字継手8、18等を銅製としたが、他の金属からなるものを用いることもできる。また、弁組立体7、17も上記構成に限定されることなく、樹脂製の弁体を有し、一方向の流体流れを許容し、他方向の流体流れを制限する逆止弁構造であれば採用することができる。
【符号の説明】
【0035】
1 逆止弁付き三方弁
2 本体
2a 弁口
3 弁体
3a 弁部
3b 羽根状部
3c 円筒部
4 案内部
4a 内壁
5 弁座部材
5a 弁座
6 シール部材
7 弁組立体
8 T字継手
8a 溶接箇所
9 銅管
9a 溶接箇所
10 逆止弁部
11 逆止弁付き三方弁
12 本体
12a 大径部
12b 小径部
12c テーパー部
12d 弁口
13 弁体
13a 弁部
13b 羽根状部
13c 円筒部
14 案内部
14a 内壁
15 弁座部材
15a 弁座
16 シール部材
17 弁組立体
18 T字継手
18a 溶接箇所
20 逆止弁部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製で管状の本体を備える逆止弁部と、前記本体の一方の開口端部に溶接接続される金属製のT字継手とからなり、
前記逆止弁部は、前記本体内に収容される弁組立体と、前記本体の他方の開口端部に溶接接続される金属製の管状部材とを備え、
前記弁組立体は、樹脂製の弁体を有し、一方向の流体流れを許容すると共に他方向の流体流れを制限するように構成され、
前記管状部材が前記本体に溶接接続される前の状態で前記弁組立体が前記本体の他方の開口端部から前記本体内に挿入装着可能であることを特徴とする逆止弁付き三方弁。
【請求項2】
金属製で管状の本体を備える逆止弁部と、前記本体の一方の開口端部に溶接接続される金属製のT字継手とからなり、
前記逆止弁部は、前記本体内に収容される弁組立体と、前記本体の他方の開口端部に絞り加工により形成されると共に前記本体の前記弁組立体を収容した部分よりも小径の小径部とを備え、
前記弁組立体は、樹脂製の弁体を有し、一方向の流体流れを許容すると共に他方向の流体流れを制限するように構成され、
前記本体に前記小径部が形成される前の状態で前記弁組立体が前記本体の他方の開口端部から前記本体内に挿入装着可能であることを特徴とする逆止弁付き三方弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−15194(P2013−15194A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148759(P2011−148759)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(391002166)株式会社不二工機 (451)
【Fターム(参考)】