説明

透光性ハニカム構造体、光触媒担持透光性ハニカム構造体およびそれらの製造方法、ならびに光触媒担持透光性ハニカム構造体を用いた空気清浄機、水質浄化装置

【課題】光触媒を担持して、有害化学物質を除去するのに有効な開孔径を有する透光性ハニカム構造体を提供する。そして光触媒担持透光性ハニカム構造体を搭載した空気清浄機、光触媒担持透光性ハニカム構造体を水質浄化フィルタに利用した水質浄化装置を提供することで、従来には無かった有害化学物質の除去能力を有する商品を提供するものである。
【解決手段】本発明は、平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gである透光性ハニカム構造体および前記透光性ハニカム構造体の表面に光触媒を担持し、および/または、該透光性ハニカム構造体の内部に該光触媒を含有した、光触媒担持透光性ハニカム構造体を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性ハニカム構造体と該透光性ハニカムを利用した有害物質の除去・分解技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化チタンに代表される光触媒へ光照射を行なうことで生じる光触媒効果を利用して、有害物質を分解する技術が知られている。前記技術は、空気清浄機のフィルタなどに応用されている。特に酸化チタンは、有害物質の分解に対して高い触媒機能を有しているが、結晶性の酸化チタンはその比表面積が小さく、また表面の活性が低いため、微粉末の酸化チタンが利用されることが殆どである。しかし微粉末の酸化チタンはその取り扱いが困難であるため、シリカゲルなどの担体に担持して、用いている。担体の形態としては、ハニカム構造体かシート状のものを用いることが好ましいとされている。現在利用されているハニカム構造体は、セラミックを押出成形することによって作製されたものが広く利用されている。
【0003】
光触媒への光照射方法は、光触媒担体がハニカム構造体かシート状かで異なり、例えばハニカム構造体に光触媒が担持された場合、ハニカム構造体の開孔径(チャンネル)に対して平行に照射され、活性化される光触媒は一部に限られるという致命的な欠点がある。またシート状の担体に光触媒が担持された場合、光照射面積を広げないと活性化される光触媒が少なくなってしまい、装置の大型化等のデメリットが生じてしまう。またシート状担体だと、一度に処理できる有害物質の量が、シート上に担持された最表面の光触媒に限られてしまい、処理能力の面でも問題がある。
【0004】
そこで上記の課題を解決するために、原料材料としては石英ガラス、アルミナ、YAG、イットリアの0.5〜40μmの微粒子を用い、押出成形法により透光性ハニカム構造体を作製したという報告が行われている(特許文献1)。
【0005】
また、ハニカム構造体の開孔径の大きさを制御し、同時に比表面積の大きさを制御する技術が研究されている(特許文献2)。
【特許文献1】特開2001−269586号公報
【特許文献2】特開2004−307294号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示した技術は、押出成形により形成されたハニカム構造体であり、ハニカム構造体の開孔径の大きさ、ハニカム壁(開孔を仕切る壁)厚ともにmmオーダーの制御を行なっているに過ぎない。つまり単位体積、若しくは単位重量当りの表面積が小さくなり、有害物質を含む流体と光触媒微粒子を効率良く反応させることが出来ない。また酸化チタンに代表される光触媒効果は、その光触媒粒子の最表面での反応であり、単体の単位重量若しくは体積あたりに担持される触媒量が多ければ多いほど、その効果も高まることは自明である。
【0007】
また上記の事例のような空気清浄以外のアプリケーションも考えられる。例えば、生活用水に代表される水の浄化においても、光触媒を担持した透光性ハニカム構造体を用いた場合、外部からの光、例えば紫外線を照射しながら、フィルタリングすることで、流体の中に含まれる有害物質を分解除去することも可能となる。
【0008】
以上のことを鑑みて本発明の目的は、光触媒を担持して、有害物質を除去するのに有効な開孔径を有する透光性ハニカム構造体を提供し、さらに、光触媒担持透光性ハニカム構造体を空気清浄機に搭載したり、水質浄化に利用したりすることで、従来には無かった有害物質の除去能力を有する品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gである透光性ハニカム構造体に関する。
【0010】
また、本発明は、前記透光性ハニカム構造体の表面に光触媒を担持した、光触媒担持透光性ハニカム構造体に関する。
【0011】
また、本発明の製造方法は、少なくとも以下の工程(a)〜(e)を含む、平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gである透光性ハニカム構造体の製造方法に関する。
【0012】
(a)ケイ酸ナトリウム水溶液にイオン交換樹脂を混入してシリカゾルを調製する工程と、
(b)前記イオン交換樹脂除去してpHを調整する工程と、
(c)シリカゾルをゲル化してシリカ湿潤ゲルを製造する工程と、
(d)前記シリカ湿潤ゲルを凍結させる工程と、
(e)凍結したシリカ湿潤ゲルを解凍し、乾燥によりシリカゲルを製造する工程。
【0013】
また、本発明の製造方法は、シリカゲルまたはシリカ湿潤ゲルで形成されたハニカム構造体を200〜1000℃で一次焼成を行なう工程と、一次焼成後急冷した後、1200〜2000℃で二次焼成を行なう工程とを含む、平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gであることが好ましい。
【0014】
また、本発明の製造方法は、前記一次焼成と前記二次焼成は、希ガス雰囲気、還元雰囲気、酸化雰囲気、真空雰囲気、または過熱水蒸気雰囲気のいずれかの雰囲気下で行なわれることが好ましい。
【0015】
また、本発明の空気清浄機は、前記光触媒担持透光性ハニカム構造体をフィルタとして用いた空気清浄機に関する。
【0016】
また、本発明水質浄化装置は、前記光触媒担持透光性ハニカム構造体を水質浄化フィルタとして用いた水質浄化装置に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gであるシリカゲル製ハニカム構造体を焼成することで透光性ハニカム構造体を形成し、光触媒本来の持つ有害物質の除去能力を有効的に発揮することができる担体を提供することができる。このように空質・水質の清浄化技術に基づいたデバイス・商品を提供することで、人間や自然界にとってより安全な形での生活空間を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
<透光性ハニカム構造体>
透光性ハニカム構造体の形状は、既知のとおり「はちのす構造」であり、図1に示す斜視図のように、円柱形に対してハニカム状に開孔18を有する。該円柱形の上面と底面には開孔口を有する。なお、図1では、透光性ハニカム構造体11は円柱形であるが、柱形であればその上面および底面の形状は、角状、楕円状など、どのような物でも良い。また透光性ハニカム構造体は多孔質であり、開孔18の表面には、細孔半径1〜50nmのミクロ/メソ孔が無数に形成されており、隣り合う該開孔の該ミクロ孔どうしがつながっている場合もある。透光性ハニカム構造体の長さに制限はないが、0.05〜30cmが好ましい。また、透光性ハニカム構造体11が円柱形である場合、その直径は1〜30cmが好ましい。
【0019】
ここで、透光性ハニカム構造体の透光性の指標を具体的な測定値で示す。例えば、直径5〜10mm、平均開孔径5〜50μmである円柱状のシリカゲル製ハニカム構造体(特許文献2に記載のハニカム構造体、白色)と、同じく直径10mm、平均開孔径50μmである円柱状の透過性ハニカム構造体の上面および底面に対して、垂直の方向から紫外〜可視領域の波長光をあてることで吸光度を測定した場合に、前者のハニカム構造体の吸光度は0.5〜1以上であるのに対して、後者のハニカム構造体では0.4以下である。
【0020】
≪開孔径と比表面積≫
図1に示す透光性ハニカム構造体11の開孔18の平均開孔径は、特に制限されるものではないが、5〜200μmの範囲内であることが好ましく、特に50〜200μmの範囲内であることが好ましい。前記開孔径の範囲は、該透光性ハニカム構造体11をフィルタ等に用いた場合に、圧力損失と比表面積の関係を考慮した数値である。
【0021】
一般的に、ハニカム構造体の平均開孔径が小さくなるにつれて比表面積は大きくなるとともにハニカム構造体の壁の厚みは小さくなる傾向にある。したがって、その表面積対体積比は1×103〜5×1052/m3である。しかし本発明の透光性ハニカム構造体においては、構成する材質が多孔質となっているため、平均開孔径が変化しても比表面積は大きく変わらないので、表面積対体積比は7×107〜1×1082/m3となる。本発明の透光性ハニカム構造体は平均開孔径が5〜200μmの範囲内であり、かつ、比表面積が、100〜1500m3/gの範囲内、特に700〜1000m2/g(7×107〜1×1082/m3)の範囲内であるように実現されることが好ましい。また、平均開孔径が5〜200μm程度のときに、透光性ハニカム構造体の透光性は高くなる。なお、このような好ましい範囲内の平均開孔径および比表面積を有する透光性ハニカム構造体を製造するための条件については後述する。
【0022】
透光性ハニカム構造体に対する吸着容量を向上させるためには表面積を大きくする必要がある、すなわち2nm以下の直径を有するミクロ孔を多く有することが好ましい、一方で、ミクロ孔内では分子拡散速度は非常に遅いので、効率化を図るためには2〜50nmの直径を有するメソ孔の存在も重要となる。
【0023】
この平均開孔径は、透光性ハニカム構造体の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で直接観察し、写真を撮り、該写真から解析することで知ることができる。
【0024】
また、比表面積は、−196℃における窒素吸脱着測定を行ない、得られた吸脱着等温線に対してBETプロットを適用し、解析することで知ることができる。
【0025】
<透光性ハニカム構造体の製造方法>
本発明の製造方法は、特に制限されるものではないが、一方向凍結ゲル化法を利用したものであることが好ましく、後述する本発明の製造方法によって製造されたものであることがより好ましい。ここで、凍結ゲル化法とは、凍結濃縮効果を利用したゲル化法である。ゾルを凍結すると分相が生じ、ほぼ純粋な水が凝固した相と、コロイド粒子が濃縮された相の2相に分かれる。この濃縮によるゲル化促進効果は非常に大きく、低温においても氷の間隙に集合したコロイド粒子同士は結合してゲル化する。この時氷がテンプレートの役割を果たし、解凍・乾燥後には凍結時の形状を保持した資料が得られる。一方で、氷の成長を制御する方法としては、一方向凍結法がある。これは、金属酸化物のゲルに方向性を持たせて凍結することで、氷を一方向に柱状に成長させて複数の氷柱を形成し、氷柱の間隙に粒子を集合させる方法であり、従来の一方向凍結法は金属酸化物ゲルのpolygonal繊維作製法として理解されており、長時間エージングした構造の硬い湿潤ゲルに主に適用されてきた。本発明では、これらを組み合わせて一方向凍結法の適用範囲をゾルやゲル化直後の湿潤ゲルにまで広げ、透光性ハニカム構造体の前駆体である多孔質ハニカム構造体を製造した。
【0026】
以上に記載した方法を、図2の透光性ハニカム構造体を作製するためのフローチャートに基づき、具体的に以下説明する。本発明の製造方法は、以下の(a)〜(e)の工程を含むことを特徴とする。
【0027】
(a)ケイ酸ナトリウム水溶液にイオン交換樹脂を混入してシリカゾルを調製する工程、
(b)前記イオン交換樹脂除去してpHを調整する工程、
(c)シリカゾルをゲル化してシリカ湿潤ゲルを製造する工程、
(d)前記シリカ湿潤ゲルを凍結させる工程、
(e)凍結したシリカ湿潤ゲルを解凍し、乾燥によりシリカゲルを製造する工程。
【0028】
本発明の製造方法では、まず、原料にケイ酸ナトリウム溶液(水ガラス)を用いて、純水で希釈してケイ酸ナトリウム水溶液とする。ケイ酸ナトリウム水溶液は、濃度が低いとハニカム壁を構成する溶質が不足し、濃度が高すぎるとイオン交換中にゲル化してしまうために、1.0〜2.0Mの濃度範囲に調製することが好ましい。このようにして調製されたケイ酸ナトリウム水溶液にイオン交換樹脂を混入し、前処理工程を行なう(工程(a))。この工程(a)は、水ガラスを原料とするシリカゾルのpHを調整するとともにシリカ粒子の表面に吸着することで特性を変化させるNaイオンを不純物として十分に除去することで、規則性を有する平均開孔径を有する多孔質ハニカム構造体を製造するために行なわれる。具体的には、pHメータ(および必要に応じてイオンメータ)を付設した容器内に収容したケイ酸ナトリウム水溶液に強酸性イオン交換樹脂を、所望のpH(たとえば2〜3)になるまで混入する。
【0029】
工程(a)に用いるイオン交換樹脂としては、特に制限されるものではないが、pH調整を行ないつつシリカゾル中のNaイオンを十分に除去できることから、強酸性イオン交換樹脂を用いることが好ましい。このようなイオン交換樹脂は、たとえばオルガノ株式会社製アンバーライトIR120B H AGなどを例示することができる。
【0030】
ケイ酸ナトリウム水溶液に混入させるイオン交換樹脂の量についても特に制限されるものではないが、水溶液の体積に対して半分からほぼ同量の体積あるのが好ましい。イオン交換樹脂の量は、調整するケイ酸ナトリウム水溶液によって変わるが、イオン交換樹脂の量が少ないと、Naイオンの除去が十分に行なわれない虞があるためであり、また、イオン交換樹脂の量が多すぎると、pHが小さくなりすぎてゲル化時間が長くなるという傾向にあるためである。
【0031】
続く工程では、工程(a)で混入させたイオン交換樹脂を除去する(工程(b))。イオン交換樹脂は、たとえば適宜の篩を用いることで除去することができる。ここで、比表面積の制御を行なう場合はイオン交換樹脂を除去したのち、アンモニア水溶液を加えて、pHを調整する。
【0032】
続く工程では、シリカゾルをゲル化してシリカ湿潤ゲルを得る(工程(c))。シリカゾルのゲル化は、たとえば上記工程で得られた複合スラリーを、後述する工程(e)で用いるチューブ状の容器(セル)内に収容し、20〜40℃の温度範囲で2〜8時間程度静置することで行なうことができ、これにより光触媒作用を有する微粉末が分散されたシリカ湿潤ゲルを得ることができる。なお、シリカゾルのゲル化を別の容器内で行なった後、得られたシリカ湿潤ゲルを工程(d)で用いるチューブ状の容器に収容するようにしても勿論よい。
【0033】
次に、工程(c)で得られたシリカ湿潤ゲルを凍結させる(工程(d))。当該シリカ湿潤ゲルの凍結は、上記チューブ状のセルごと、定速モータなどを用いて所定の挿入速度で液体窒素などの冷媒中に挿入することで凍結する。シリカ湿潤ゲルを冷媒中に挿入することで、冷媒に挿入された部分の氷が挿入方向に沿って柱状に成長する。
【0034】
凍結後に本発明のような透光性ハニカム構造体を得るには、シリカ湿潤ゲルの凍結開始までのエージング(第一のエージング)の時間を制御する。当該エージング時間は、0.5〜12時間の範囲内であるのが好ましい。エージング時間が長くなるにつれて、凍結後の形状は、薄膜状、平板繊維状、ハニカム状、多角形(polygonal)繊維状へと変化する(上述した特許文献1を参照)。このような形状変化は、凍結時のシリカ粒子の移動しやすさに基づくものであると考えられる。エージング時間が長くなるに従い、ゲル化が進行し、シリカ粒子の運動が阻害される。エージング時間が短い場合には、比較的シリカ粒子が移動しやすいため集合しやすくなり、連続的につながった薄膜状、または平板繊維状となる。ゲル化の前後は殆どシリカ粒子が移動できないため、氷柱の周りに存在した状態のままで凍結しハニカム状となる。さらにゲル化が進むと、氷柱の成長により分割されて繊維状となる。このように、第一のエージング時間を調整することにより、ハニカム状のシリカ湿潤ゲルを形成させることができる。
【0035】
また、凍結条件を変化させることにより、テンプレートとなる氷柱の直径を変化させることができるので、得られる多孔質ハニカム構造体を所望の平均開孔径を有するように成形することができる。好ましい凍結条件としては−196〜−10℃で0.5〜70cm/hであり、より好ましくは−196〜−20℃で1〜20cm/hである。このように一方向凍結ゲル化法は一種の湿式合成法であるので、ゾル−ゲル法の優れたナノ構造制御技術との併用が可能な技術であり、これを用いて多孔質材料を作製する場合、最終的に得られる多孔質ハニカム構造体のナノ細孔特性(平均細孔径、比表面積、細孔容積)は原料組成、エージング条件により精密に制御することができる。
【0036】
本発明の製造方法においては、前記工程(d)での凍結後、凍結状態で一定時間エージング(第二のエージング)を行なうことが好ましい。第二のエージングを行なうことで、氷がテンプレートとなっている状態でゲルの構造を強化することが可能となる。第二のエージングは−196〜−20℃の比較的低温で1〜3時間行なうことが好ましい。
【0037】
解凍は、第二のエージング終了後のチューブ状のセルをたとえば50℃の恒温槽内に入れることで行なう。上記工程(b)において、アンモニア水溶液を加えていない場合は、解凍後、成形されたシリカ湿潤ゲルを一定時間アンモニア水溶液に浸漬するエージング(第三のエージング)を行なうことによって細孔特性を制御することができる。第三のエージングは、30〜80℃の温度で、1〜3時間行なうことが好ましい。なお、凍結した多孔質ハニカム構造体または、解凍後の多孔質ハニカム構造体を0.1〜5cmに切断する工程を含んでもよい。なお比表面積は浸漬時間、温度によって制御することができる。
【0038】
次に、得られた多孔質ハニカム構造体の乾燥について述べる(工程(e))。本発明では複数の方法を用いて多孔質ハニカム構造体を乾燥させることが可能である。乾燥を経て、シリカ湿潤ゲルはシリカゲルとなる。
【0039】
まずは凍結乾燥について述べる。解凍した多孔質ハニカム構造体をその5倍以上の体積のt−ブタノールに浸漬させる。その後1〜5日間t−ブタノールによる洗浄を行ない、解凍した多孔質ハニカム構造体中に含まれる微量の水分をt−ブタノールで置換し、溶媒置換した試料を−10〜−197℃で凍結乾燥する。t−ブタノールは、液−固転移時の密度変化が小さく(Dr=−3.4×10-4g/cm3 at 299k)、凝固時に試料を破壊する可能性が小さい点と、蒸気圧が大きく(0℃におけるt−ブタノールの蒸気圧はp0=821Pa、水はp0=61Pa)乾燥速度が大きいからである。
【0040】
なお、乾燥時におけるシリカの割れや細孔の破壊が起こりにくいことから、凍結乾燥にて乾燥を行なうことが好ましい。凍結乾燥を行なう場合、温度が高いと溶媒が完全に凍結せず、温度が低すぎると乾燥速度が遅くなるため、−10〜−30℃の温度範囲で乾燥させることが好ましい。
【0041】
次にマイクロ波での乾燥方法について述べる。マイクロ波乾燥は、電磁波によって生じる媒体中に存在するイオン電流と分子の双極子回転によっている。該方法によると、水は著しく効率よく加熱されるため、該解凍した多孔質ハニカム構造体中に含まれる微量の水分の乾燥に用いることができる。ただし、マイクロ波の出力の調整や、乾燥中に多孔質ハニカム構造体に破砕が生ずる内部温度より低く温度を保つように間欠照射することなど考慮する必要がある。
【0042】
次に過熱水蒸気による乾燥方法について述べる。過熱水蒸気とは、飽和蒸気に圧力を加えることなく加熱することにより得られる100℃以上の水蒸気のことである。150〜300℃の過熱水蒸気雰囲気中に解凍した多孔質ハニカム構造体をおくことにより、乾燥することが可能である。なお、水の蒸発時に起こる表面張力によりき裂が生ずる可能性があるので、き裂等による多孔質ハニカム構造体の崩壊を最小限に抑えるために1〜5mm程度の長さにして乾燥することが好ましい。
【0043】
また、前記解凍、前記乾燥(工程(e))は省略して、透光性ハニカム構造体作製のためのプロセスフローに移行することもある。
【0044】
透光性ハニカム構造体を得るためには、上述の方法で作製された多孔質ハニカム構造体を電気炉に収容し、炉内を希ガス雰囲気、還元雰囲気、酸化雰囲気、真空雰囲気、過熱水蒸気雰囲気の何れかにして、200〜1000℃にて1〜3時間保持し一次焼成を行なう。このとき窒素雰囲気下が特に好ましい。その後、50〜150℃程度まで急冷し、また炉内を希ガス雰囲気、還元雰囲気、酸化雰囲気、真空雰囲気、過熱水蒸気雰囲気の何れかにして、1200〜2000℃で1〜120分間保持することで二次焼成を行なう。その後、室温〜50℃まで冷却すると、透光性ハニカム構造体が得られる。
【0045】
<光触媒担持透光性ハニカム構造体>
図1は、光触媒担持透光性ハニカム構造体の斜視図である。以下、本図に基づいて説明する。上述の透光性ハニカム構造体に光触媒微粒子19を表面に担持および/または光触媒を含有させることで、有害物質を分解できる光触媒機能を有する光触媒担持透光性ハニカム構造体11を形成することができる。ここで、光触媒とは、光照射することでその表面に酸化力を有し、有害物質を分解することができる物質である。そして、脱臭、抗菌、大気水質洗浄などの機能を有する。光触媒微粒子19としては、酸化チタン以外にもZnOやSrTiO3等の金属酸化物等を使用することも可能である。光触媒微粒子19は1〜5nm直径のものが好ましい。
【0046】
透光性ハニカム構造体に光触媒微粒子を担持したものは、その表面に107〜1010個/cm2の程度光触媒微粒子が張り付いている。
【0047】
透光性ハニカム構造体に光触媒微粒子が含有したものは、電子顕微鏡による断面観察により光触媒微粒子が105〜107個/cmの割合で透光性ハニカム構造体に分散されていた。
【0048】
光触媒担持透過性ハニカム構造体11は、開孔に対して平行に光を照射した時に高い効果を有し、有害物質を除去する。なお、本発明では有害物質とは人体への安全性の面から有害な物質全般を差し、具体的には、一酸化炭素、硫黄等を含む悪臭物質、SOx、NOx、トルエン、キシレン、ベンゼン、ホルムアルデヒドなどが挙げられる。
【0049】
≪製造方法≫
上述した透光性ハニカム構造体の製造方法に、光触媒を担持および/または含有させる工程を組み込むことで、光触媒担持透光性ハニカム構造体を得ることができる。
【0050】
光触媒微粒子19を担持するのは、前述した凍結した多孔質ハニカム構造体を解凍した後、または前述した一次焼成の前、または透光性ハニカム構造体形成後のいずれかである。このときの担持する方法は、光触媒微粒子19を1〜5g/L攪拌した水溶液中に浸す浸漬法、光触媒微粒子19が1〜5g/L含まれた溶液をスプレーで吹き付けるスプレー法等の手法が挙げられる。
【0051】
なお、前述した凍結した多孔質ハニカム構造体を解凍した後、または前述した一次焼成の前に光触媒微粒子19を担持した場合には、そののちの工程は、前述した透光性ハニカム構造体の製造方法にしたがう。
【0052】
光触媒微粒子19は粒径0.1〜50nmのものを使用し、本発明では、光触媒微粒子19の粒径が2nmのとき、108個/cm2程度、表面に担持させることが好ましい。
【0053】
また、透光性ハニカム構造体がシリカゲルに代表されるセラミックスのような吸水性の材料ならば、光触媒微粒子19を攪拌した水溶液を透光性ハニカム構造体の上方から滴下しても構わない。何れの場合も担持後、110〜200℃で1〜60分間乾燥する。これにより、水分、溶媒等の水溶液成分は除去される。
【0054】
光触媒微粒子19を透光性ハニカム構造体に含有させるためには、前述したイオン交換樹脂を取り除いたシリカゾル溶液に光触媒微粒子19を1〜5g/Lの割合で分散させる。
【0055】
<空気清浄機>
上述の光触媒担持透光性ハニカム構造体を用いた空気清浄機の概略断面図を図3に示す。本発明にかかる空気清浄機は、空気入り口32、光触媒担持透過性ハニカム構造体31、光源37、空気出口33を備えている。また、集塵フィルタ35、送風手段36を含んでも良い。空気は流路34の方向に流れている。光触媒担持透過性ハニカム構造体31に光源37からの光を照射し、空気を流路34の方向に流すことによって、50〜100%の有害物質を除去することができる。
【0056】
送風手段36としては、プロペラ状の送風機(ファン)、あるいは圧力式ノズルなどのように空気を圧縮して空気を送り出す手段であっても良い。
【0057】
<水質浄化装置>
有害物質は、空気中以外に、水中にも存在しており、水質の浄化も併せて重要な課題である。図4に光触媒担持透光性ハニカム構造体を水質浄化に応用した水質浄化装置の概略断面図を示す。本発明にかかる水質浄化装置は、流体入り口42、光触媒担持透過性ハニカム構造体41、光源47、流体出口43を備えている。流体は、流路44の方向に流れている。
【0058】
図5は、水質浄化装置の流体入り口42、光触媒担持透過性ハニカム構造体41、光源47、流体出口43をより具体的に示した斜視図である。流体入り口42と流体出口43の間に光触媒担持透光性ハニカム構造体41を設置した場合、例えば、生活用水に代表される水の浄化において、先ずに透光性ハニカム構造体のもつチャンネル孔を利用したフィルタリング効果によって、チャンネル孔に応じた有害物質の除去が可能である。フィルタリングされた有害物質に対して、特定の光、例えば紫外線を光源47から照射することで、その物質を無害化することも可能である。
【実施例】
【0059】
(実施例1)〔透光性ハニカム構造体〕
54%ケイ酸ナトリウム溶液を脱イオンした蒸留水で希釈し、SiO2濃度1.9mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液25mLを得た。ここへH+型強酸性イオン交換樹脂29mLをスターラーで良く攪拌しながら加え、水溶液のpHをpHメーターにて2.5付近に調整しシリカゾルを得た。その後、イオン交換樹脂を取り除いた後、底から1cm程度ガラスビーズを詰めた内径1.3cmのポリプロピレン製チューブにこのシリカゾルを入れ、30℃の恒温層内で2時間静置することでゲル化させた。ゲル化した後、更に2時間後、低速モータの設定を挿入速度2cm/hに調整して、−30℃のエタノール冷媒槽に挿入し、白色の凍結した多孔質ハニカム構造体を得た。この凍結した多孔質ハニカム構造体を5mmの厚さに切断した後、電気炉に収容し、炉内をN2ガスでパージし、5℃/minの昇温速度で200℃にて60分間保持し、一次焼成を行なった。その後、100℃に急冷し、10℃/minの昇温速度で1700℃にて30分間保持し二次焼成を行なった。その後、急冷すると、透光性ハニカム構造体が得られた。
【0060】
(実施例2)〔透光性ハニカム構造体〕
実施例1と同様の方法で、凍結した多孔質ハニカム構造体を得た後、該凍結した多孔質ハニカム構造体をt−ブタノールに3日間浸漬し、3回以上t−ブタノールによる洗浄を行ない、凍結した多孔質ハニカム構造体中に含まれる水分を完全にt−ブタノールで置換した。十分に溶媒置換した後、−10℃で凍結乾燥することにより得られたシリカゲル製多孔質ハニカム構造体を電気炉に収容し、炉内をN2ガスでパージし、5℃/minの昇温速度で200℃にて60分間保持し、一次焼成を行なった。その後、100℃に急冷し、10℃/minの昇温速度で1700℃にて30分間保持し二次焼成を行なうことで、透光性ハニカム構造体が得られた。
【0061】
(実施例3)〔光触媒担持透光性ハニカム構造体〕
光触媒を実施例1で作製した透光性ハニカム構造体に担持するため、平均30nm径の酸化チタン微粒子P−25(日本アエロジル製)を300μg/mlになるように調整した水溶液を噴霧器にて塗布した。噴霧条件はコンプレッサーで生成された圧力気体を圧力調整器で調整し、0.2Mpaで噴霧を行なった。噴霧後、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微粒子の分散状態を確認した。微粒子は、5×1010個/cm2の面密度で均一に担持されていた。以上の操作で光触媒担持透光性ハニカム構造体が得られた。
【0062】
(実施例4)〔透光性ハニカム構造体〕
54%ケイ酸ナトリウム溶液を脱イオンした蒸留水で希釈し、SiO2濃度1.9mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液25mLを得た。ここへH+型強酸性イオン交換樹脂29mLをスターラーで良く攪拌しながら加え、水溶液のpHをpHメーターにて2.5付近に調整しシリカゾルを得た。その後、イオン交換樹脂を取り除いた後、底から1cm程度ガラスビーズを詰めた内径5.0cmのポリプロピレン製チューブにこのシリカゾルを入れ、30℃の恒温層内で2時間静置することでゲル化させた。ゲル化した後、更に2時間後、低速モータの設定を挿入速度2cm/hに調整して、−30℃のエタノール冷媒槽に挿入し、白色の凍結した多孔質ハニカム構造体を得た。この凍結した多孔質ハニカム構造体を1cmの厚さに切断した後、電気炉に収容し、炉内をN2ガスでパージし、5℃/minの昇温速度で200℃にて60分間保持し、一次焼成を行なった。その後、100℃に急冷し、10℃/minの昇温速度で1700℃にて30分間保持し二次焼成を行なった。その後、急冷すると、透光性ハニカム構造体が得られた。
【0063】
(実施例5)〔光触媒担持透光性ハニカム構造体〕
光触媒を実施例4で作製した透光性ハニカム構造体に担持するため、平均30nm径の酸化チタン微粒子P−25(日本アエロジル製)を300μg/mlになるように調整した水溶液を噴霧器にて塗布した。噴霧条件はコンプレッサーで生成された圧力気体を圧力調整器で調整し、0.2Mpaで噴霧を行なった。噴霧後、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微粒子の分散状態を確認した。微粒子は、5×1010個/cm2の面密度で均一に担持されていた。以上の操作で光触媒担持透光性ハニカム構造体が得られた。
【0064】
(比較例1)〔シリカゲル製ハニカム構造体〕
54%ケイ酸ナトリウム溶液を脱イオンした蒸留水で希釈し、SiO2濃度1.9mol/Lのケイ酸ナトリウム水溶液25mLを得た。ここへH+型強酸性イオン交換樹脂29mLをスターラーで良く攪拌しながら加え、水溶液のpHをpHメーターにて2.5付近に調整しシリカゾルを得た。その後、イオン交換樹脂を取り除いた後、底から1cm程度ガラスビーズを詰めた内径5.0cmのポリプロピレン製チューブにこのシリカゾルを入れ、30℃の恒温層内で2時間静置することでゲル化させた。ゲル化した後、更に2時間後、低速モータの設定を挿入速度2cm/hに調整して、−30℃のエタノール冷媒槽に挿入し、白色の凍結した多孔質ハニカム構造体を得た。この凍結した多孔質ハニカム構造体を1cmの厚さに切断した。
【0065】
次に、前記凍結した多孔質ハニカム構造体を35℃の高温槽に入れて急速に解凍し、解凍後1時間恒温槽内に保持した。
【0066】
最後に、乾燥を行なった。解凍した多孔質ハニカム構造体をその5倍以上の体積のt−ブタノールに浸漬させた。その後、3日間t−ブタノールによる洗浄を行ない、解凍した多孔質ハニカム構造体中に含まれる微量の水分をt−ブタノールで置換し、溶媒置換した試料を−197℃で凍結乾燥した。以上の工程により、白色のシリカゲル製ハニカム構造体を得られた。
【0067】
(比較例2)〔光触媒担持シリカゲル製ハニカム構造体〕
光触媒を比較例1で作製したシリカゲル製ハニカム構造体に担持するため、平均30nm径の酸化チタン微粒子P−25(日本アエロジル製)を300μg/mlになるように調整した水溶液を噴霧器にて塗布した。噴霧条件はコンプレッサーで生成された圧力気体を圧力調整器で調整し、0.2Mpaで噴霧を行なった。噴霧後、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、微粒子の分散状態を確認した。微粒子は、5×1010個/cm2の面密度で均一に担持されていた。以上の操作で光触媒担持シリカゲル製ハニカム構造体が得られた。
【0068】
(評価方法1)
実施例4、実施例5、比較例1、比較例2の各ハニカム構造体用いて有害物質除去性能を検討した。
【0069】
まず、前記各ハニカム構造体を10gずつ、ステンレス製チャンバに、フィルタとして組み込んだ。そして、フィルタに隣接した位置に光源として4Wのブラックライトを設置し、それぞれのフィルタに対して照射を行なった。その後、ステンレス製チャンバの入り口から有害物質の一例として、トルエンを100ppm含んだドライエアを30ml/minの流速で導入し、ステンレス製チャンバの出口から排出された気体を30分間捕集管に捕集した。
【0070】
この捕集された気体中のトルエンの濃度を固相吸着/加熱脱着法とガスクロマトグラフィー/質量分析法の組み合わせによる公知の測定手法により評価した。捕集管には内径3〜4mm程度のガラス管に活性炭約300mg程度を充てんしたものを用い、他、水分を除去するための除湿管、流量を100〜1000ml/minの範囲で制御するためのマスフローコントローラ、捕集流量を確保するためのポンプを用いた。
【0071】
活性炭等に固相吸着された有害物質を加熱脱着し、急冷し、ガスクロマトグラフィー質量分析(GC/MS)を用いて溶液中のトルエン量を分析し、ステンレス製チャンバの入り口でのトルエン濃度と出口でのトルエン濃度の比からトルエンの除去率を算出して表1に纏めた。
【0072】
まず、比較例1と比較例2を比べると、比較例2では光触媒を担持しているが、比較例1に比べてトルエンの除去率は16%の増加しか見られない。しかし、実施例4と実施例5のデータを比べると、実施例5は光触媒を担持することで実施例4よりもトルエンの除去率が54.4%も増加している。これは、本発明が、光触媒担持透光性ハニカム構造体であるため、光触媒の担体として透過性が高く、そのため光照射が光触媒に届きやすく、結果として光触媒の機能を十分に発揮させることができることを示している。
【0073】
また、実施例5のトルエン除去率は99.9%と、他と比較しても格段に高い。したがって、表1より明らかな通り、透光性ハニカム構造体に光触媒を担持し、光により触媒を活性化することで、優れた有害物質の除去性能が発現することが確認された。
【0074】
【表1】

【0075】
(評価方法2)
評価方法1と同様の方法で、実施例4、実施例5、比較例1、比較例2の各ハニカム構造体を組み込んだステンレス製チャンバの入り口から、有害物質の一例としてホルムアルデヒドを100ppm含んだドライエアを、10ml/minの流速で導入し、ステンレス製チャンバの出口から排出された気体を10分間捕集管に捕集した。
【0076】
この捕集された気体中のホルムアルデヒドを、液体クロマトグラフィーを用いた公知の方法である、DNPH誘導体固相吸着/溶媒抽出−高速液体クロマトグラフ(HPLC)法により測定した。この方法は、DNPHシリカゲルカラムにガスを通し、アルデヒド類を固定し、アセトニトリル溶剤により溶出しHPLC分析を行なうものである。表1と同様に各試料の除去率を表2に纏めた。表2より明らかな通り、透光性ハニカム構造体に光触媒を担持し、光により触媒を活性化することで、優れた有害物質の除去性能が発現することが確認された。
【0077】
【表2】

【0078】
(評価方法3)
実施例4、実施例5、比較例1、比較例2の各ハニカム構造体を、フィルタとして10gずつ、試験的に作製した水質評価システムに組み込み、水の中に揮発性有機化合物;VOCを所定の濃度混入したものからの有害物質の除去率を確認した。
【0079】
テフロン(登録商標)製チャンバ内に各ハニカム構造体をフィルタとして設置した。テフロン(登録商標)製チャンバ内には光源が設置されている。
【0080】
トルエン濃度10ppmの水溶液を用意し、1ml/minの速さでテフロン(登録商標)製チャンバの入り口から流した。そして、該フィルタを通してテフロン(登録商標)製チャンバ流体の出口から回収された溶液10mlをヘッドスペースGC−MS分析法で濃度を測定した。
【0081】
今回行なったヘッドスペースGC−MS分析法では、試料を入れたヘッドスペース用のバイアル瓶を150℃で加熱保存し、ヘッドスペース部へ移したVOC成分をGCカラムへ直接導入した。結果を表3に纏める。除去率に関する傾向は評価方法1および評価方法2の場合と同等で、透光性ハニカムに光触媒を担持し、光により触媒を活性化することで、優れた有害物質の除去性能が発現することが確認された。
【0082】
【表3】

【0083】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明は、透光性ハニカム構造体を形成し、これに光触媒を担持することにより、光触媒本来の持つ有害物質の除去能力を有効的に発揮することができるようになる技術を提供できる。また必ずしも空質浄化の利用に限られるものではなく、例えば、水質浄化においても、紫外線等の光源と組み合わせることで、有害物質の除去が可能となる。このように空質・水質の清浄化技術に基づいたデバイス・商品を提供することで、人間や自然界にとってより安全な形での生活空間を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】光触媒担持透光性ハニカム構造体の概略を示した斜視図である。
【図2】透光性ハニカム構造体を作製するためのフローチャートである。
【図3】光触媒担持透光性ハニカム構造体を用いた空気清浄機の概略を示した断面図である。
【図4】光触媒担持透光性ハニカム構造体を水質浄化フィルタとして用いた水質浄化装置の概略を示した断面図である。
【図5】光触媒担持透光性ハニカム構造体を水質浄化フィルタとして用いた水質浄化装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0086】
11,31,41 光触媒担持透過性ハニカム構造体、18 開孔、19 光触媒微粒子、32 空気入り口、33 空気出口、34,44 流路、35 集塵フィルタ、36 送風手段、37,47 光源、42 流体入り口、43 流体出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gである透光性ハニカム構造体。
【請求項2】
請求項1に記載の透光性ハニカム構造体の表面に光触媒を担持し、および/または、該透光性ハニカム構造体の内部に該光触媒を含有した、光触媒担持透光性ハニカム構造体。
【請求項3】
少なくとも、
(a)ケイ酸ナトリウム水溶液にイオン交換樹脂を混入してシリカゾルを調製する工程と、
(b)前記イオン交換樹脂除去してpHを調整する工程と、
(c)シリカゾルをゲル化してシリカ湿潤ゲルを製造する工程と、
(d)前記シリカ湿潤ゲルを凍結させる工程と、
(e)凍結したシリカ湿潤ゲルを解凍し、乾燥によりシリカゲルを製造する工程と、
を含む、
平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gである透光性ハニカム構造体の製造方法。
【請求項4】
シリカゲルまたはシリカ湿潤ゲルで形成されたハニカム構造体を
200〜1000℃で一次焼成を行なう工程と、
一次焼成後急冷した後、1200〜2000℃で二次焼成を行なう工程と、
を含む、
平均開孔径が5〜200μm、比表面積が100〜1500m2/gである透光性ハニカム構造体の製造方法。
【請求項5】
前記一次焼成と前記二次焼成は、希ガス雰囲気、還元雰囲気、酸化雰囲気、真空雰囲気、または過熱水蒸気雰囲気のいずれかの雰囲気下で行なわれる、請求項4に記載の透光性ハニカム構造体の製造方法。
【請求項6】
請求項2に記載の光触媒担持透光性ハニカム構造体をフィルタとして用いた空気清浄機。
【請求項7】
請求項2に記載の光触媒担持透光性ハニカム構造体を水質浄化フィルタとして用いた水質浄化装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−289858(P2007−289858A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120787(P2006−120787)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 関西地区3学協会(近畿化学協会・触媒学会関西地区・化学工学会関西支部)発行、関西地区3学協会合同大会 講演要旨集、2005年10月31日発行
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(504132272)国立大学法人京都大学 (1,269)
【Fターム(参考)】