説明

透光性建材及びその製造方法

【課題】電気部品の耐久性が十分に高い透光性建材と、その製造方法を提供する。
【解決手段】 表札1は、無機系の透光性硬化体よりなる略長方形板状の本体部2中に、透光性を有する弾力性材料3で被包された電気部品4〜8が埋設されてなる。ポッティング用の型20内に電気部品4〜8を配置し、該型20内にポッティング材を充填して電気部品4〜8を弾力性材料3で被包する。この弾力性材料3で被包された電気部品4〜8を成形型22内に配置し、透光性硬化体形成用の流動性材料を該成形型22に充填する。流動性材料が硬化した後、脱型することにより、弾力性材料3で被包された電気部品4〜8が埋設された、透光性硬化体よりなる表札1が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機系の透光性硬化体中に電気部品が埋設された透光性建材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無機系の透光性硬化体中に電気部品が埋設された透光性建材として、特開2005−68739号に、太陽電池モジュールと、制御回路と、LEDとを透光性セメント系材料中に埋設した太陽電池付き建材が記載されている。この透光性セメント系材料は、ガラス粒子と白色セメントとの混練物を硬化させたものである。この透光性セメント系材料を通して太陽電池モジュールに光が達することにより該太陽電池モジュールが発電を行い、その電力によってLEDが点灯する。
【特許文献1】特開2005−68739号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特開2005−68739号の建材にあっては、太陽電池モジュール、制御回路、LED等の電気部品が透光性セメント系硬化体中に直に埋設されているため、透光性セメント系硬化体に生じる硬化収縮応力や熱膨張応力等が電気部品に直に負荷されるようになり、電気部品の寿命が短くなるおそれがある。また、透光性セメント系硬化体は、若干の透水性を有しているため、雨水等が掛った場合、電気部品にまで水が浸透し、電気部品を劣化させるおそれがある。
【0004】
本発明は上記従来の問題点を解決し、電気部品の耐久性が十分に高い透光性建材と、その製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の透光性建材は、無機系の透光性硬化体中に電気部品が埋設された透光性建材において、該電気部品が透光性を有した弾力性材料で被包されていることを特徴とするものである。
【0006】
この弾力性材料としては、合成樹脂、特にポッティング材の硬化物が好適である。
【0007】
上記無機系の透光性硬化体としては、ガラスビーズなどの透光性骨材を配合した白色セメント混練物の硬化体が好適である。
【0008】
本発明の透光性建材を製造する方法は、前記弾力性材料で被包された前記電気部品を建材成形用の成形型内に配置しておき、該成形型内に、硬化することにより前記透光性硬化体となる流動性材料を供給し、硬化させることを特徴とするものである。
【0009】
この透光性建材の製造方法では、弾力性材料で被包された電気部品を成形型内に吊支して配置した状態にて前記流動性材料を供給することが好ましい。
【0010】
また、弾力性材料で被包された電気部品は、透光性を有したケース内に収容されていることが好ましく、特に、前記ケース内に前記電気部品を配置し、ポッティング材を該ケース内に供給することにより形成されたものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の透光性建材にあっては、電気部品が透光性を有し弾力性材料で被包されているので、透光性硬化体に膨張あるいは収縮応力が生じても、この応力は電気部品には全く又は殆ど伝わらない。また、この弾力性材料を合成樹脂等で構成することにより、水が透光性硬化体に浸透してきてもこの水が電気部品に達することが防止される。このようなことから、本発明の透光性建材は電気部品の耐久性が良好である。
【0012】
この透光性建材は、弾力性材料で被包された電気部品を成形型内に配置しておき、この成形型内に透光性硬化体形成用の流動性材料を供給し、硬化させることにより容易に製造することができる。
【0013】
この製造方法の一態様では、弾力性材料で被包された電気部品を成形型内に吊支して配置した状態にて前記流動性材料を供給する。この態様は、成形型の底面に接して形成される硬化面を建材の前面とする場合に好適である。即ち、電気部品を成形型内に吊支しておくと、電気部品は成形型の底面には非接触となるので、成形型の底面に沿う硬化面は透光性硬化体のみにて構成される。従って、この成形型の底面に沿って形成された面を建材の前面とした場合、該建材の前面は透光性硬化体のみから成ることになり、美観が極めて良好なものとなる。
【0014】
また、本発明においては、弾力性材料で被包された電気部品は、透光性を有したケース内に収容されていることが好ましい。このように弾力性材料がケース内に収容されていると、このケースを吊支して成形型内に配置することができる。
【0015】
また、電気部品を弾力性材料で被包する場合、ポッティング材等の未硬化の弾力性材料を電気部品の周囲に供給し、次いでこの弾力性材料を硬化させるようにすることが多いが、この場合、ケース内に電気部品を配置し、該ケース内にポッティング材を供給することにより、弾力性材料で被包された電気部品を容易に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0017】
第1図は実施の形態に係る透光性建材としての表札の透視斜視図、第2図はこの表札に設けられた呼び鈴スイッチの作動を示す第1図のII−II線に沿う断面図、第3図はこの表札の製造方法を概略的に示す断面図である。なお、第2図(a)は呼び鈴スイッチ用押しボタンの押圧前を示し、第2図(b)はこの押しボタンの押圧後を示している。また、第3図(a)は、表札に埋設される電気部品を弾力性材料で被包した段階を示し、第3図(b)は、この弾力性材料で被包された電気部品を成形型内に配置した段階を示し、第3図(c)は、この成形型内に透光性硬化体形成用の流動性材料を充填して表札の本体部を成形した段階を示している。
【0018】
この実施の形態の透光性建材は、建物の外壁等に取り付けられる表札1である。
【0019】
この表札1は、無機系の透光性硬化体よりなる略長方形板状の本体部2中に、透光性を有する弾力性材料3(第1図では図示略。)で被包された電気部品が埋設されてなる。
【0020】
この本体部2を構成する無機系の透光性硬化体としては、ガラスビーズ、板状ガラスやブラウン管の破砕物、透明フリットなどの透光性骨材を配合した白色セメント混練物の硬化体が好適である。また、白色セメント以外にも、例えば、普通ポルトランドセメント、リン酸アルミニウム等も用いることができる。ただし、これらはいずれも一例であり、本発明における無機系の透光性硬化体の材質はこれに限定されるものではない。
【0021】
透光性を有した弾力性材料3としては、合成樹脂、特にポッティング材の硬化物が好適である。具体的には、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられるが、これに限定されるものではない。また、ポッティング以外の方法により電気部品を被包するようにしてもよい。
【0022】
この実施の形態では、前記電気部品は、太陽電池パネル4と、該太陽電池パネル4で発電された電気を蓄電(又は充電)する蓄電回路5と、該蓄電回路5から電気が供給されて発光するLED(発光ダイオード)6と、該蓄電回路5からの電気により作動し、押しボタンユニット10のボタン11が押されると呼び鈴鳴動信号を発信する呼び鈴スイッチ7と、該表札1の外部の明るさを感知する照度センサ8等を備えている(以下、これらを総称して電気部品4〜8ということがある。)。
【0023】
表札1の前面には名前等(図示略)が記されており、LED6が表札1の内部側からこの名前等を照らし出す。なお、蓄電回路5は、照度センサ8の感知値に基づいてLED6に通電する制御回路(図示略)を備えており、表札1の外部の明るさが所定値以下になると、自動的にLED6が点灯するようになっている。
【0024】
この実施の形態では、実際に鳴動する呼び鈴装置本体(図示略)は表札1から離隔して(例えば建物内に)設置されており、呼び鈴スイッチ7は、この呼び鈴装置本体を遠隔操作するためのものである。該呼び鈴装置本体には、この呼び鈴スイッチ7からの呼び鈴鳴動信号を受信する受信機と、この呼び鈴鳴動信号に基づいて呼び鈴を鳴動させる制御回路とを備えている。
【0025】
この実施の形態では、該呼び鈴スイッチ7は、磁力を感磁してON/OFF動作するリードスイッチ7a(第2図)と、該リードスイッチ7aがONとなったときに呼び鈴鳴動信号を発信する発信機7bとを備えている。符号7cは、該発信機7bから延出したアンテナを示している。
【0026】
第2図に示すように、前記押しボタンユニット10は、この実施の形態では、操作者によって押されるボタン11と、該ボタン11の基端側(操作者によって押される面と反対側)に設けられたマグネット12と、該ボタン11の基端側及びマグネット12を、操作者による押圧方向及びこれと反対方向に進退可能に保持したケース13と、該マグネット12とケース13の底部13aとの間に介在され、該ボタン11及びマグネット12を操作者による押圧方向と反対方向へ付勢するスプリング14とを備えている。
【0027】
該ケース13は、本体部2を構成する透光性硬化体中に埋設されており、ボタン11の先端側はこの本体部2の前面から突出している。該ケース13の底部13aは、前記リードスイッチ7aから所定距離離隔しており、弾力性材料3中には埋設されていない。
【0028】
即ち、この実施の形態では、該ケース13と透光性硬化体との接合面と、リードスイッチ7aと弾力性材料3との接合面とは連続していない。従って、該ケース13と透光性硬化体との接合面に水が浸入しても、この水がリードスイッチ7aにまで浸入することはなく、リードスイッチ7aの防水性が良好である。
【0029】
第2図(b)のように、ボタン11が押されると、マグネット12がリードスイッチ7aに接近し、このマグネット12の磁力によって該リードスイッチ7aの接点が閉となる。これにより、蓄電回路5から前記発信機7bに通電され、該発信機7bが呼び鈴鳴動信号を発信する。この鳴動信号に基づき、呼び鈴装置本体が鳴動する。
【0030】
また、ボタン11の押圧が解除されると、第2図(a)の通り、マグネット12がスプリング14に押されてリードスイッチ7aから離反するため、リードスイッチ7aの接点に作用する磁力が弱まってこの接点が開となる。これにより、蓄電回路5から発信機7bへの通電が解除されて該発信機7bからの鳴動信号の発信が止まり、呼び鈴が鳴り止む。
【0031】
次に、この表札1の製造方法について説明する。
【0032】
まず、ポッティング用の型20の内面に脱型剤を塗布し、第3図(a)のように、この型20内に所定の配置にて各電気部品4〜8(第3図では太陽電池パネル4と呼び鈴スイッチ7のみ図示。)を配置する。符号21は、各電気部品4〜8と型20の底面との間に設置され、各電気部品4〜8を該型20の底面から所定距離離隔させて支持するための支持体を示している。この支持体21も透光性を有する弾力性材料の硬化体よりなることが好ましいが、支持体21の材質はこれに限定されない。
【0033】
次いで、この型20内に、透光性を有する弾力性材料3としてのポッティング材を充填する。その後、このポッティング材を硬化させ、脱型することにより、透光性を有する弾力性材料3により被包された電気部品4〜8が得られる。なお、この実施の形態では、全ての電気部品4〜8を一体的に弾力性材料3によって被包しているが、各電気部品4〜8を個別に弾力性材料3によって被包するようにしてもよく、これらをいくつかのグループに分けて被包するようにしてもよい。
【0034】
次に、本体部2成形用の成形型22の内面に脱型剤を塗布し、第3図(b)のように、上記の弾力性材料3によって被包された電気部品4〜8をこの成形型22内に配置する。この実施の形態では、成形型22の上面側が本体部2の前面側となる。符号23は、この弾力性材料3によって被包された電気部品4〜8と成形型22の底面との間に設置され、各電気部品4〜8を該成形型22の底面から所定距離離隔させて支持するための支持体を示している。この支持体23は本体部2と同様の透光性硬化体よりなることが好ましいが、支持体23の材質はこれに限定されない。
【0035】
なお、太陽電池パネル4を成形型22内に配置するに際しては、表札1を建物の外壁に取り付けたときに該太陽電池パネル4の受光面が前方斜め上方を向くように傾けて配置することが好ましい。このようにすることにより、表札1が建物の外壁に取り付けられた状態において、該太陽電池パネル4の受光面が効率よく太陽光を受光することができる。なお、弾力性材料3で太陽電池パネル4を被包する工程において、前述のポッティング用の型20内に、太陽電池パネル4をこのように傾けて配置するようにしてもよい。
【0036】
次いで、第3図(c)のように、成形型22内に本体部2(透光性硬化体)形成用の流動性材料を充填する。図示は省略するが、この際、押しボタンユニット10を呼び鈴スイッチ7のリードスイッチ7aと対面させるようにこの流動性材料中に埋設する。その後、この流動性材料を硬化させ、脱型することにより、表札1が完成する。
【0037】
この表札1にあっては、電気部品4〜8が透光性を有する弾力性材料3で被包されているので、本体部2を構成する透光性硬化体に膨張あるいは収縮応力が生じても、この応力は電気部品4〜8には全く又は殆ど伝わらない。このため、電気部品4〜8の耐久性が良好である。
【0038】
また、この実施の形態では、該弾力性材料3は合成樹脂で構成されているので、本体部2を構成する透光性硬化体に水が浸透してきても、この水が電気部品4〜8に達することが防止される。これにより、電気部品4〜8の防水性も良好である。
【0039】
第4図は、別の実施の形態に係る表札の製造方法を概略的に示す断面図である。なお、第4図(a)は、弾力性材料で被包された電気部品を成形型内に配置した段階を示し、第4図(b)は、この成形型内に透光性硬化体形成用の流動性材料を充填して表札の本体部を成形した段階を示している。
【0040】
この実施の形態における本体部2成形用の成形型24には、上蓋25が装着されている。この実施の形態では、第4図(a)に示すように、該上蓋25の下面側に、弾力性材料3で被包された電気部品4〜8がワイヤ26によって吊支されている。この電気部品4〜8(及びこの電気部品4〜8を被包した弾力性材料3)は、成形型24の底面から上方へ所定距離離隔して配置されている。この実施の形態では、成形型24の底面に沿って形成される面が、完成した表札1の前面となる。従って、この実施の形態では、該電気部品4〜8は、第3図の実施の形態とは上下逆に配置されている。なお、電気部品4〜8の弾力性材料3による被包方法は、前述の実施の形態と同様である。
【0041】
この状態で、成形型24の湯口27から該成形型24内に本体部2(透光性硬化体)形成用の流動性材料を充填する。その後、この流動性材料を硬化させ、脱型し、ワイヤ26を切除することにより、表札1が完成する。
【0042】
このように電気部品4〜8を成形型24内に吊支して本体部2を成形する成形方法は、成形型24の底面に接して形成される硬化面を表札1の前面とする場合に好適である。即ち、電気部品4〜8を成形型24内に吊支しておくと、電気部品4〜8は成形型24の底面には非接触となり、且つこれらの電気部品4〜8と成形型24との間に介在される支持体が不要となるので、成形型24の底面に沿う硬化面は透光性硬化体のみにて構成される。従って、この成形型24の底面に沿って形成された面を表札1の前面とした場合、該表札1の前面は透光性硬化体のみから成ることになり、美観が極めて良好なものとなる。
【0043】
第5図は、さらに別の実施の形態に係る表札の製造方法を概略的に示す断面図である。なお、第5図(a)は、電気部品を収容したケース内に弾力性材料を充填した段階を示し、第5図(b)は、この弾力性材料が充填されたケースを成形型内に配置した段階を示し、第5図(c)は、この成形型内に透光性硬化体形成用の流動性材料を充填して表札の本体部を成形した段階を示している。
【0044】
この実施の形態では、第5図(a)に示すように、透光性を有したケース28内に電気部品4〜8が配置されている。このケース28は上開容器状のものであり、その上縁部には、側方へ張り出すフランジ28aが周設されている。該フランジ28aには、このケース28をワイヤ26で成形型24の上蓋25に吊り下げるためのワイヤ挿通孔(符号略)が設けられている。
【0045】
なお、この実施の形態では、該ケース28の底面が表札1の前面側に配置されるようになっており、このケース28内への電気部品4〜8の配置は、前述の第3図(a)における型20内への配置とは上下逆となっている。また、この実施の形態では、各電気部品4〜8は、支持体21を介さずにケース28の底面上に配置されており、特に、太陽電池パネル4は、その受光面が直にケース28の底面に重ね合わされている。
【0046】
このケース28内に、透光性を有する弾力性材料3としてのポッティング材が充填される。そして、ポッティング材が硬化した後、第5図(b)のように、このケース28がワイヤ26で成形型24内に吊支される。この実施の形態でも、成形型24の底面に沿って形成される面が、本体部2の前面となる。
【0047】
この状態で、成形型24の湯口27から該成形型24内に本体部2(透光性硬化体)形成用の流動性材料を充填する。その後、この流動性材料を硬化させ、脱型し、ワイヤ26を切除することにより、表札1が完成する。
【0048】
このように、透光性を有したケース28内に電気部品4〜8を配置して、このケース28内に弾力性材料3を充填することにより、弾力性材料3によって被包された電気部品4〜8を容易に得ることができる。また、このケース28を成形型24内に吊支することにより、成形型24内への電気部品4〜8の配置も容易に行うことができる。
【0049】
第6図は、さらに別の実施の形態に係る表札の製造方法を概略的に示す断面図である。なお、第6図(a)は、電気部品をケース内に配置した段階を示し、第6図(b)は、電気部品を収容したケースを成形型内に配置した段階を示し、第6図(c)は、この成形型内に透光性硬化体形成用の流動性材料を充填して表札の本体部を成形した段階を示している。
【0050】
この実施の形態では、第6図(a)に示すように、透光性を有した密封ケース29内に電気部品4〜8が収容されている。図示は省略するが、この密封ケース29内には各電気部品4〜8の固定部材が設けられており、この固定部材によって各電気部品4〜8が該密封ケース29内において固定されている。
【0051】
この実施の形態では、該密封ケース29内にポッティング材等の弾力性材料は充填されておらず、この密封ケース29自体が、各電気部品4〜8を被包した弾力性材料となっている。
【0052】
この実施の形態では、第6図(b)の如く、この密封ケース29がワイヤ26で成形型24内に吊支される。
【0053】
この状態で、成形型24の湯口27から該成形型24内に本体部2(透光性硬化体)形成用の流動性材料を充填する。その後、この流動性材料を硬化させ、脱型し、ワイヤ26を切除することにより、表札1が完成する。
【0054】
この実施の形態のように、透光性を有した密封ケース29内に電気部品4〜8を収容し、この密封ケース29を成形型24内に配置して本体部2を成形することにより、電気部品4〜8が埋設された表札1の製造を容易化することができる。
【0055】
また、この実施の形態にあっても、密封ケース29内に電気部品4〜8を収容しているので、本体部2を構成する透光性硬化体に膨張あるいは収縮応力が生じても、この応力は電気部品4〜8には全く又は殆ど伝わらない。このため、電気部品4〜8の耐久性が良好である。さらに、この本体部2を構成する透光性硬化体に水が浸透してきても、この水は密封ケース29内には浸入し得ないため、電気部品4〜8の防水性も良好である。
【0056】
第7図は、呼び鈴スイッチ用押しボタンユニットの別の構成例を概略的に示す断面図である。なお、第7図(a)はボタン押圧前を示し、第7図(b)はボタン押圧後を示している。
【0057】
前述の第1〜3図の実施の形態では、呼び鈴スイッチ7を構成するリードスイッチ7aをON/OFF動作させるための押しボタンユニット10は、本体部2を構成する透光性硬化体中に埋設されているが、この実施の形態の押しボタンユニット30は、該本体部2の前面に取り付けられている。
【0058】
この押しボタンユニット30は、周縁部が該本体部2の前面に接しており、該周縁部よりも中央側が本体部2の前面から前方へ膨出した、中空の略ドーム形状のボタン本体31と、該ボタン本体31の略中央付近の裏側(本体部2の前面と対面する側)に取り付けられたマグネット32とを有している。該ボタン本体31は、ゴムや軟質合成樹脂等の弾性材料よりなる。このボタン本体31は、マグネット32が呼び鈴スイッチ7のリードスイッチ7aと対面するように配置され、その周縁部が接着、溶着等の固着手段によって本体部2の前面に固着されている。
【0059】
この押しボタンユニット30にあっては、ボタン本体31が操作者によって押されると、第7図(b)のように、該ボタン本体31の中央付近が凹曲し、これによりマグネット32がリードスイッチ7aに接近して該リードスイッチ7aがONとなる。また、この押圧力が解除されると、第7図(a)のように、ボタン本体31の中央付近がその復元力により前方へ膨出し、これによりマグネット32がリードスイッチ7aから離反して該リードスイッチ7aがOFFとなる。
【0060】
なお、この実施の形態では、ボタン本体31の裏側にマグネット32を取り付けているが、このボタン本体31自体を、磁性材料を混入した磁性ゴムにより構成してもよい。
【0061】
第8図は、呼び鈴スイッチ操作ユニットのさらに別の構成例を概略的に示す断面図である。なお、第8図(a)はスイッチON操作前を示し、第8図(b)はスイッチON操作後を示している。
【0062】
この実施の形態では、押しボタンユニット10,30の代わりに、スライド式のON/OFF操作ユニット40が設けられている。
【0063】
このスライド式ON/OFF操作ユニット40は、本体部2の前面に沿って延設されたスライドレール41と、該スライドレール41に案内されて本体部2の前面に沿ってスライドするスライダ42と、該スライダ42に保持されたマグネット43とを備えている。該スライドレール41は、一端側が本体部2の前面のうちリードスイッチ7aと重なる位置に配置されており、他端側は、該リードスイッチ7aから離隔している。
【0064】
このスライド式ON/OFF操作ユニット40にあっては、第8図(b)のように、スライダ42が操作者によってスライドレール41の該一端側へスライドされると、マグネット43がリードスイッチ7aに接近して該リードスイッチ7aがONとなる。また、スライダ42がスライドレール42の他端側へスライドされると、第8図(a)のように、マグネット43がリードスイッチ7aから離反して該リードスイッチ7aがOFFとなる。
【0065】
上記の第7図の押しボタンユニット30及び第8図のスライド式ON/OFF操作ユニット40も、呼び鈴スイッチ7を構成するリードスイッチ7aには接触していないため、これらの押しボタンユニット30,40を介して該リードスイッチ7aに水が浸入することがなく、リードスイッチ7aの防水性が良好である。
【0066】
なお、リードスイッチ7aをON/OFF操作するための機構は、上記の各実施の形態に限定されるものではない。また、リードスイッチ7a以外のスイッチ機構により、発信機7bからの呼び鈴鳴動信号の発信及び発信停止を制御するよう構成してもよい。
【0067】
発信機7bから呼び鈴鳴動信号を発信するためのアンテナ7cの配置に特に制限はないが、例えば、太陽電池パネル4が電波を反射する性質を利用して、呼び鈴鳴動信号の発信方向に指向性を持たせるように配置してもよい。第9図は、このように構成された表札の一例を概略的に示す水平断面図である。
【0068】
この第9図の実施の形態では、発信機7bから延出したアンテナ7cは、太陽電池パネル4の裏側(表札1が建物の外壁Wに取り付けられた状態における太陽電池パネル4の該外壁W側)に配設されている。アンテナ7cをこのように配設した場合、該アンテナ7cから表札1の前方に向って発信された呼び鈴鳴動信号は、太陽電池パネル4に当り、表札1の裏側へ向って反射される。これにより、表札1の裏側へ向ってより強く呼び鈴鳴動信号が発信されることとなる。
【0069】
このような構成は、例えば呼び鈴装置本体が外壁Wの裏側に設置されている場合などに好適である。
【0070】
第10図はさらに別のアンテナの配置例を示す、表札の概略的な正面図である。
【0071】
この第10図の実施の形態では、発信機7bから延出したアンテナ7cは、太陽電池パネル4の周囲を周回するようにループ状に配設されている。アンテナ7cをこのように配設した場合、該アンテナ7cからの電波が太陽電池パネル4によって特定の方向へ強く反射されることがなく、全方位へ略均等の強さにて呼び鈴鳴動信号が発信される。
【0072】
なお、太陽電池パネル4自体も導電性を有する材質よりなるため、この太陽電池パネル4自体をアンテナとして利用するよう構成してもよい。
【0073】
上記の各実施の形態では、表札1にLED6、呼び鈴スイッチ7及び照度センサ8が設けられているが、これ以外の電気部品が設けられてもよい。
【0074】
第11図は、別の電気部品が設けられた表札の透視斜視図であり、第12図は、第11図のXII−XII線に沿う断面図である。
【0075】
この実施の形態の表札1Aは、前述の第1〜3図の表札1において、呼び鈴スイッチ7の代わりに人体検知装置50を設けた構成となっている。また、この実施の形態では、照度センサ8が省略されている。
【0076】
この人体検知装置50は、赤外線を照射する赤外線LED51と、人体に当って反射した赤外線の反射光を感知する受光素子52と、該赤外線LED51及び受光素子52を制御する制御回路53と、該受光素子52が赤外線の反射光を感知したときに該制御回路53からの指令に基づいて呼び鈴鳴動信号を発信する発信機54とを備えている。符号55は、該発信機54から延出したアンテナを示している。
【0077】
これらの赤外線LED51、受光素子52、制御回路53、発信機54及びアンテナ55も、他の電気部品4〜6と同様に、弾力性材料(第11,12図では図示略。)に被包された状態で、表札1Aの本体部を構成する透光性硬化体中に埋設されている。なお、第12図に示すように、該赤外線LED51及び受光素子52は、少なくとも前面側が透光性を有する材質よりなるケース(符号略)内に収容されている。このケースは、その前面が表札1Aの前面と略面一となるように埋設されている。
【0078】
この表札1Aのその他の構成は、第1〜3図の表札1と同様であり、第11,12図において第1〜3図と同一符号は同一部分を示している。
【0079】
この表札1Aにおいては、蓄電回路5から電気が供給されて赤外線LED51が発光し、表札1Aの前方に赤外線が照射される。そして、第12図のように、この表札1Aに人体が接近すると、この赤外線が人体に当って反射され、この赤外線の反射光を受光素子52が感知する。この場合、制御回路53は、発信機54を作動させ、呼び鈴鳴動信号を発信させる。これにより、呼び鈴が鳴動する。
【0080】
上記の各実施の形態では、透光性建材として表札を例示しているが、本発明は、表札以外の透光性建材、例えば壁材や屋根材、床材、あるいは通路等の舗装材などにも適用可能である。
【0081】
例えば、図示はしないが、上記の第11,12図の表札1Aの如き太陽電池パネル4及び人体検知装置50を備えた床材を製造し、この床材を玄関先などに敷設しておくことにより、来客等を検知するシステムを構築することが可能である。
【0082】
上記の各実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記の各実施の形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】実施の形態に係る透光性建材としての表札の透視斜視図である。
【図2】図1の表札に設けられた呼び鈴スイッチの作動を示す断面図である。
【図3】図1の表札の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図4】別の実施の形態に係る表札の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図5】別の実施の形態に係る表札の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図6】別の実施の形態に係る表札の製造方法を概略的に示す断面図である。
【図7】呼び鈴スイッチ操作ユニットの別の構成例を概略的に示す断面図である。
【図8】呼び鈴スイッチ操作ユニットの別の構成例を概略的に示す断面図である。
【図9】アンテナの別の配置例を概略的に示す断面図である。
【図10】アンテナのさらに別の配置例を概略的に示す正面図である。
【図11】別の電気部品が設けられた表札の透視斜視図である。
【図12】図11のXII−XII線に沿う断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1,1A 表札
2 本体部
3 弾力性材料
4 太陽電池パネル
5 蓄電回路
6 LED
7 呼び鈴スイッチ
7a リードスイッチ
7b 発信機
7c アンテナ
8 照度センサ
10 押しボタンユニット
11 ボタン
12 マグネット
20 ポッティング用型
21,23 支持体
22,24 成形型
25 上蓋
26 ワイヤ
28 ケース
29 密封ケース
30 押しボタンユニット
31 ボタン本体
32 マグネット
40 スライド式ON/OFF操作ユニット
41 スライドレール
42 スライダ
43 マグネット
50 人体検知装置
51 赤外線LED
52 受光素子
53 制御回路
54 発信機
55 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機系の透光性硬化体中に電気部品が埋設された透光性建材において、該電気部品が透光性を有した弾力性材料で被包されていることを特徴とする透光性建材。
【請求項2】
請求項1において、該弾力性材料は合成樹脂であることを特徴とする透光性建材。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記無機系の透光性硬化体は、透光性骨材を配合した白色セメント混練物の硬化体よりなることを特徴とする透光性建材。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の透光性建材を製造する方法であって、
前記弾力性材料で被包された前記電気部品を建材成形用の成形型内に配置しておき、
該成形型内に、硬化することにより前記透光性硬化体となる流動性材料を供給し、硬化させることを特徴とする透光性建材の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、前記弾力性材料で被包された電気部品を成形型内に吊支して配置した状態にて前記流動性材料を供給することを特徴とする透光性建材の製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5において、前記弾力性材料で被包された電気部品は、透光性を有したケース内に収容されていることを特徴とする透光性建材の製造方法。
【請求項7】
請求項6において、前記ケース内に収容され弾力性材料で被包された電気部品は、前記ケース内に前記電気部品を配置し、ポッティング材を該ケース内に供給することにより形成されたものであることを特徴とする透光性建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−39924(P2008−39924A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−211114(P2006−211114)
【出願日】平成18年8月2日(2006.8.2)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】