説明

透光性断熱材とその製造方法

【課題】軽量で機械強度に優れ、光透過性能と断熱性能に優れた透光性断熱材の提供。
【解決手段】断熱材に貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられたことを特徴とする透光性断熱材。貫通孔が穿設された断熱材を用意し、次いで該断熱材の貫通孔内に、透明樹脂で形成された光導波路を設けることによって透光性断熱材を得ることを特徴とする透光性断熱材の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光性断熱材とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、透光性断熱材に関して、例えば特許文献1〜6に開示された技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、繊維を用いて目の粗い立体構造に形成した基布の両面又は片面に透光性フィルムを張り合わせてなる透光性断熱材が開示されている。
しかし、この透光性断熱材は、剛性に乏しく、住宅用断熱材などの用途には使用できない。
【0004】
特許文献2には、サッシとこのサッシにより支持される透光性板材とからなる透光性扉において、上記透光性扉の室外側表面の全面を覆う透光性断熱材を上記サッシの室外側表面に固着したことを特徴とする透光性扉の断熱構造が開示され、前記透光性断熱材としてはアクリル板等の透光性樹脂が記載されている。
しかし、アクリル板等の透光性樹脂は断熱性能が悪く、且つ厚くすると重くなるという問題がある。
【0005】
特許文献3には、透光性断熱材料からなる本体の板厚方向に貫通した透視開口が複数個形成されている断熱板と、この断熱板の両面を被覆して取り付けられ、前記透視開口を密封する透明板とを具えたことを特徴とする透光性・透視性を有する断熱日射遮蔽板が開示され、前記断熱板としては、熱可塑性樹脂発泡体などからなる本体の板厚方向に貫通した透視開口が複数個形成され、該本体の両面に透明板が接合された構造が記載されている。
しかし、このような透視開口を有する断熱板は、板の光透過性を良くするために透視開口を大きくして多数形成すると、断熱板の機械強度が低下し、特に透視開口の部分には断熱材料が無いために局部的に弱くなり、また断熱性能が低下する。一方、断熱板の機械強度及び断熱性を良くするには、透視開口を小さく且つ少数個に抑えなければならず、そうすると板の光透過性が悪くなるという問題がある。
【0006】
特許文献4には、対向する透光性板材の間の空間が、透光性フィルムにより小分けされ、この小分けされた小空間に、透光性小口径パイプ、透光性小球体、透光性ハニカム構造体から選ばれた透光性物体が収納されている透光性断熱材、及び対向する透光性板材の間の空間に、熱や通電により形状又は体積が変わる物体が収納されている透光性断熱材が開示されている。
しかし、この透光性断熱材は、断熱性能が低い問題がある。
【0007】
特許文献5には、透光性面材と輝度上昇シートとの間に断熱層が設けられたバックライトユニットが開示され、前記断熱層として、例えばシリカエアロジェルのような透光性および断熱性を有する材料からなる面材が記載されている。
しかし、シリカエアロジェルは、高価であり、汎用の建築材用断熱材などには使用困難である。また、強い圧力を加えると崩壊する問題がある。
【0008】
特許文献6には、熱接着性繊維を20〜100質量%含み、1〜30mmの厚さ、0.03〜0.3g/cmの見かけ密度、および構成する繊維の平均繊度が0.5〜20dtexであり、45°拡散性が50%以上であり、断面を厚さ方向に沿って3等分した各々の領域における繊維接着率がそれぞれ85%以下であり、かつ各領域における繊維接着率の最大値に対する最小値の割合が80%以上であり、少なくとも一方向における曲げ破壊荷重が2N以上であり、2倍変位荷重が曲げ破壊荷重の1/10以上であることを特徴とする不織繊維構造を有する透光性ボード材が開示されている。
しかし、この透光性ボード材は、密度が低いと剛性などの機械強度が低下してしまい、一方、密度を高めると光透過性及び断熱性が悪くなる問題がある。また、製造コストも高くなる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】 特開平10−34778号公報
【特許文献2】 特開2000−2054号公報
【特許文献3】 特開2002−147133号公報
【特許文献4】 特開2005−22901号公報
【特許文献5】 特開2007−59337号公報
【特許文献6】 特開2010−196224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、前記事情に鑑みてなされ、軽量で機械強度に優れ、光透過性能と断熱性能に優れた透光性断熱材の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するため、本発明は、断熱材に貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられたことを特徴とする透光性断熱材を提供する。
【0012】
また本発明は、貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられた断熱材と、前記断熱材に接して設けられた1枚以上の透明板材とを有し、前記光導波路と前記透明板材とが光学的に接続されていることを特徴とする透光性断熱材を提供する。
【0013】
前記透光性断熱材において、前記断熱材が板状をなしており、該断熱材の厚み方向に沿って複数本の前記貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられ、前記断熱材の厚み方向両側の面に前記透明板材が積層された構成とすることが好ましい。
【0014】
本発明の透光性断熱材において、前記光導波路は、屈折率の高い樹脂からなるファイバ状のコアと、該コアの外周を覆う低屈折率の樹脂からなるクラッド(ここで、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとは、n>nの関係を有する)とを有していることが好ましい。
【0015】
本発明の透光性断熱材において、前記透明板材に赤外線遮断層が設けられている構成としてもよい。
【0016】
本発明の透光性断熱材において、前記透明板材に、外部からの照射光を集光して前記光導波路に入射させる集光凸部が設けられた構成としてもよい。
【0017】
また本発明は、貫通孔が穿設された断熱材を用意し、次いで該断熱材の貫通孔内に、透明樹脂で形成された光導波路を設けることによって透光性断熱材を得ることを特徴とする透光性断熱材の製造方法を提供する。
【0018】
また本発明は、貫通孔が穿設された断熱材を用意し、次いで該断熱材の貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路を設けるとともに、前記断熱材の前記貫通孔開口面に透明板材を接着固定して、前記光導波路と前記透明板材とを光学的に接続して光性断熱材を得ることを特徴とする透光性断熱材の製造方法を提供する。
【0019】
前記透光性断熱材の製造方法において、厚さ方向に沿って複数本の貫通孔が穿設された板状の断熱材を用意する工程、次いで前記貫通孔の壁面に第1の光硬化性樹脂接着剤を塗布し硬化させてクラッドを形成する工程、次いで第1の透明板材にクラッド形成済みの断熱材の一方の面を当接させた状態で、前記貫通孔に第2の光硬化性樹脂接着剤を注入する工程、次いで断熱材の他方の面に第2の透明板材を配置する工程、次いで前記第2の光硬化性樹脂接着剤を硬化させてコア(ここで、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとは、n>nの関係を有する)を形成して透光性断熱材を得る工程とを含む構成とすることが好ましい。
【0020】
前記透光性断熱材の製造方法において、前記第1の光硬化性樹脂接着剤がフッ素樹脂系光硬化型接着剤であり、前記第2の光硬化性樹脂接着剤がアクリル樹脂系光硬化型接着剤であり、かつ前記透明板材がアクリル系樹脂板であることが好ましい。
【0021】
本発明の透光性断熱材の製造方法において、前記透明板材に赤外線遮断層を積層する工程を更に有することが好ましい。
【0022】
本発明の透光性断熱材の製造方法において、外部からの照射光を集光して前記光導波路に入射させる集光凸部が設けられた透明板材を用いることもできる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の透光性断熱材は、断熱材に貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられた構成としたものなので、光導波路を通して断熱材の一方の側から他方の側に効率よく光を透過することができる。
本発明の透光性断熱材は、断熱材にファイバ状の光導波路が埋設された構成なので、断熱材自体の断熱性能及び機械強度を損なうことがなく、軽量で断熱性能に優れ、かつ機械強度に優れた透光性断熱材を提供することができる。
【0024】
本発明の透光性断熱材の製造方法は、貫通孔が穿設された断熱材を用意し、次いで該断熱材の貫通孔内に、透明樹脂で形成された光導波路を設けて透光性断熱材を得ることによって、軽量で光透過性、断熱性能及び機械強度に優れた透光性断熱材を効率よく低コストで製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】 本発明の透光性断熱材の第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】 本発明の透光性断熱材の第2実施形態を示す縦断面図である。
【図3】 本発明の透光性断熱材に用いる光導波路の一例を示す要部平面図である。
【図4】 本発明の透光性断熱材に用いる光導波路の他の例を示す要部平面図である。
【図5】 本発明の透光性断熱材の第3実施形態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の透光性断熱材の第1実施形態を示す図である。本実施形態の透光性断熱材1は、断熱材2に複数の貫通孔3が穿設され、これらの貫通孔3内に透明樹脂で形成された光導波路4が設けられた構成になっている。
【0027】
本発明において、前記断熱材2としては、合成樹脂発泡体、無機又は有機繊維質断熱材、無機系断熱材などが挙げられる。
前記合成樹脂発泡体としては、例えばポリスチレン系樹脂発泡体、ポリプロピレン系樹脂発泡体、ポリエチレン系樹脂発泡体、ポリエチレンテレフタレート系樹脂発泡体などの熱可塑性樹脂発泡体、ポリウレタンフォームやシリコーンフォームなどの熱硬化性樹脂発泡体が挙げられる。
前記無機又は有機繊維質断熱材としては、ガラスウールなどの無機系繊維を固めたもの、合成樹脂繊維を固めたものなどが挙げられる。
前記無機系断熱材としては、石膏ボード、珪藻土やシラスバルーンを配合した軽量石膏ボード、軽量骨材を配合した軽量モルタル板などが挙げられる。
これらの断熱材の中でも、軽量で断熱性能に優れ、機械強度にも優れ、低コストで入手でき、かつ成形加工性に優れているなどの点から、合成樹脂発泡体が好ましい。
【0028】
前記合成樹脂発泡体の発泡倍率は特に限定されず、従来周知の各種合成樹脂発泡体と同様に1.5〜100倍の範囲、好ましくは2〜60倍の範囲であってよい。
前記合成樹脂発泡体には、合成樹脂発泡体の分野で周知の添加剤、例えば、難燃剤、難燃助剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、発泡核剤、可塑剤、充填材などを必要に応じて添加することができる。
【0029】
前記断熱材2の形状は特に限定されず、板状、柱状、球状、箱形などの種々の形状とすることができる。また、断熱材2の寸法についても特に限定されない。
本発明の好適な実施形態において、前記断熱材2は、図1に示すように板状をなしており、その厚さ方向に沿って複数の貫通孔3が穿設されている。
【0030】
前記貫通孔3の開口形状は、特に限定されないが、円形又は略円形(楕円形や長円形)でとすることが好ましく、円形が最も好ましい。貫通孔3の孔径は特に限定されないが、貫通孔3の孔径があまり小さいと、該貫通孔3内に設けられる光導波路4による光透過性能が低下し、所定の光透過性能を得るためには多数の光導波路4を形成しなければならず、製造コストが増大する問題がある。また光導波路4の形成が難しくなる。一方、貫通孔3の孔径をあまり大きくすると、光導波路4を形成するために使用する接着剤の使用量が多くなって製造コストが高くなり、また断熱性能の低下や質量増加などの問題を生じる。これらを勘案して、貫通孔3の孔径は、0.1〜5.0mmの範囲が好ましく、0.3〜3.0mmの範囲がより好ましい。
また、断熱材2に形成する貫通孔3の個数についても特に限定されず、通常は断熱材1m当たり1〜1万個の範囲であり、10〜5000個の範囲がより好ましい。さらに、断熱材2に形成する貫通孔3の形成パターンについても特に限定されず、例えば、格子状、千鳥格子状、ランダム、所望のデザイン(星座、マーク、キャラクター、文字、模様等)などの形成パターンに沿って形成することができる。
【0031】
前記光導波路4は、前記貫通孔3内に設けられた透明樹脂からなり、断熱材2の一方側で入射した光を他方側に効率よく導光して出射することができれば良く、詳細な構造や材質、屈折率分布などは特に限定されない。
本発明の好ましい実施形態において、前記光導波路4は、屈折率の高い樹脂からなるファイバ状のコアと、該コアの外周を覆う低屈折率の樹脂からなるクラッド(ここで、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとは、n>nの関係を有する)とを有しているコア−クラッド構造の光導波路、換言すればプラスチックファイバ型の光導波路であることが好ましい。
【0032】
図3は、前記光導波路4の一例を示す図である。本例の光導波路4は、断熱材2に穿設した貫通孔3内に、屈折率の高い透明樹脂からなるコア5が形成された構成になっている。本例では、断熱材2として、コア5の透明樹脂よりも屈折率の低い合成樹脂を発泡させた合成樹脂発泡体を用い、また貫通孔3の内壁に非発泡樹脂皮膜(スキン層とも称される)が形成され、この非発泡樹脂皮膜をクラッドとし、その貫通孔3内にコア5を形成して前記クラッドにコア5を接着させることでコア−クラッド構造を実現している。
前記断熱材2とコア5のそれぞれの樹脂材料の選択は、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとがn>nの関係を有していればよく、例えば、断熱材2として屈折率が比較的低いポリプロピレン系樹脂やフッ素樹脂からなる発泡体を用い、コア5として屈折率の高いアクリル系樹脂などを用いる組み合わせを挙げることができる。
【0033】
図4は、前記光導波路4の他の例を示す図である。本例の光導波路4は、断熱材2に穿設した貫通孔3内に、屈折率の高い樹脂からなるファイバ状のコア5と、該コア5の外周を覆う低屈折率の樹脂からなるクラッド6(ここで、コア5の屈折率nとクラッド6の屈折率nとは、n>nの関係を有する)とを有しているコア−クラッド構造をなしている。本例の光導波路4は、前記コア−クラッド構造を有していればよく、例えば市販のプラスチックファイバを貫通孔3内に挿入固定した構成でもよいし、貫通孔3の内壁をクラッド6となる樹脂で被覆し、そのクラッド6の内側にコア5となる樹脂を充填して構成することもできる。本例では、貫通孔3内にコア−クラッド構造の光導波路4を形成するものなので、断熱材2の材質は限定されず、各種材料の断熱材2を用いることができる。
コア5とクラッド6のそれぞれの樹脂材料の選択は、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとがn>nの関係を有していればよく、例えば、コア5として屈折率の高いアクリル系樹脂などを用い、クラッド6として屈折率が比較的低いフッ素樹脂などを用いる組み合わせを挙げることができる。
【0034】
本実施形態の透光性断熱材1は、断熱材2に貫通孔3が穿設され、該貫通孔3内に透明樹脂で形成された光導波路4が設けられた構成としたものなので、光導波路4を通して断熱材2の一方の側から他方の側に効率よく光を透過することができる。
この透光性断熱材1は、断熱材2にファイバ状の光導波路4が埋設された構成なので、断熱材自体の断熱性能及び機械強度を損なうことがなく、軽量で断熱性能に優れ、かつ機械強度に優れた透光性断熱材1を提供することができる。
【0035】
次に、本実施形態の透光性断熱材1の製造方法について説明する。
本製造方法では、まず、複数の貫通孔3が穿設された断熱材2を用意する。この断熱材2を製造するには、断熱材2の成形時に予め成形型に貫通孔形成用の細ピンを配して成形することによって形成してもよいし、断熱材2に穴空け加工を施すことによって形成してもよい。断熱材2として合成樹脂発泡体を用いる場合には、貫通孔形成用の細ピンを配した成形型のキャビティ内に、予備発泡粒子を充填し加熱することによって型内発泡成形を行い、その後成形体を離型することによって複数の貫通孔3が穿設された断熱材2を簡単に製造することができる。このように型内発泡成形法によって貫通孔のある断熱材2を製造すれば、貫通孔3の内壁が非発泡樹脂層(スキン層)で覆われた断熱材2が得られることから、前述した図3に示す構造の光導波路4を形成する場合に好ましい。一方、貫通孔3の無い断熱材2を製造した後、穴空け加工を施して貫通孔3を形成する場合、形成された貫通孔3の内壁は開口した気泡が露出した状態となっている。この場合は、貫通孔3内壁に屈折率の比較的低い樹脂を被覆してクラッド6を形成し、その内側にコア5となる樹脂を充填して図4に示すコア−クラッド構造を有する光導波路4を形成することができる。この場合には、クラッド5が貫通孔3の内壁の開口気泡内に浸透することで、アンカー効果が得られ、形成される光導波路4と断熱材2とが強固に一体化される効果がある。
【0036】
次に、断熱材2の各貫通孔3に、光導波路4を形成する。
この光導波路4は、市販のプラスチックファイバを貫通孔3内に挿入し固定することによっても形成可能であるが、市販のプラスチックファイバは、高価格であり、またプラスチックファイバを貫通孔3内に挿入、固定し、かつ切断する操作に手間と時間を要することから、得られる透光性断熱材1が高価格になってしまう問題がある。
そこで、本発明の製造方法の好ましい実施形態において、貫通孔3内にコア5及びクラッド6を形成する場合には、クラッド形成用の第1の光硬化性樹脂接着剤と、コア形成用の第2の光硬化性樹脂接着剤を用い、まず前記貫通孔3の内壁を第1の光硬化性樹脂接着剤で被覆し、次いで該第1の光硬化性樹脂接着剤を硬化させてクラッド6を形成し、次いで該クラッド6の内側孔内にコア形成用の第2の光硬化性樹脂接着剤を注入し、次いで該第2の光硬化性樹脂接着剤を硬化させ、図1に示す構成の透光性断熱材を得る方法が好ましい。
【0037】
前記第1の光硬化性樹脂接着剤としては、硬化樹脂が比較的低屈折率の透明樹脂となるフッ素樹脂系光硬化型接着剤が好ましく、市販の各種フッ素樹脂系光硬化型接着剤の中から、硬化樹脂の屈折率、硬化時間、溶媒の有無などを勘案して適宜選択して使用することができる。フッ素樹脂系光硬化型接着剤は、紫外光を照射して光硬化させるタイプ、可視光(特に青色光)を照射して光硬化させるタイプなど、光硬化条件が異なる各種タイプの接着剤が提供されており、その光硬化条件は特に限定されず、硬化に適した波長の光を照射して光硬化させればよく、光源や照射方法などは特に限定されない。
【0038】
前記第2の光硬化性樹脂接着剤としては、硬化樹脂が高屈折率の透明樹脂となるアクリル樹脂系光硬化型接着剤が好ましく、市販の各種アクリル樹脂系光硬化型接着剤の中から、硬化樹脂の屈折率、硬化時間、溶媒の有無などを勘案して適宜選択して使用することができる。アクリル樹脂系光硬化型接着剤は、紫外光を照射して光硬化させるタイプ、可視光(特に青色光)を照射して光硬化させるタイプなど、光硬化条件が異なる各種タイプの接着剤が提供されており、その光硬化条件は特に限定されず、硬化に適した波長の光を照射して光硬化させればよく、光源や照射方法などは特に限定されない。
【0039】
この透光性断熱材1の製造方法は、貫通孔3が穿設された断熱材2を用意し、該断熱材2の貫通孔3内に、透明樹脂で形成された光導波路4を設けることによって透光性断熱材1を得ることによって、軽量で光透過性、断熱性能及び機械強度に優れた透光性断熱材を効率よく低コストで製造することができる。
【0040】
図2は、本発明の透光性断熱材の第2実施形態を示す図である。本実施形態の透光性断熱材7は、貫通孔3が穿設され、該貫通孔3内に透明樹脂で形成された光導波路4が設けられた断熱材2と、前記断熱材2に接して設けられた透明板材8A,8Bとを有し、前記光導波路4…と前記透明板材8A,8Bとが光学的に接続された構成になっている。更に、図2に示す好ましい実施形態では、前記断熱材2が板状をなしており、断熱材2の厚み方向に沿って複数本の貫通孔3が穿設され、該貫通孔3内に透明樹脂で形成された光導波路4が設けられ、断熱材2の厚み方向両側の面に透明板材8A,8Bが積層された構成になっている。本実施形態の透光性断熱材7において、断熱材2、貫通孔3及び光導波路4の構成は、前述した第1実施形態の透光性断熱材1における断熱材2、貫通孔3及び光導波路4と同様の構成とすることができる。
【0041】
前記透明板材8A,8Bは、ガラス板、透明セラミックス板、アクリル系樹脂板、ポリカーボネート樹脂板、ポリエチレンテレフタレート樹脂板、ポリスチレン樹脂板などの透明材料からなる板状物であり、その厚みや寸法などは特に限定されない。好ましい透明板材8A,8Bとしては、前記光導波路4のコア5と同程度の屈折率、より好ましくは同じ屈折率を持った透明材料からなる板材が挙げられる。例えば、光導波路4のコア5として、アクリル系樹脂を用いた場合には、透明板材8A,8Bとしてアクリル板を用いることが好ましい。このように、コア5と同質の透明板材8A,8Bを用いることで、透明板材8A,8Bとコア5との間の屈折率差に起因した界面反射等の光損失を少なくすることができ、また光硬化性樹脂接着剤を用いてコア5を形成する際に、光導波路4と透明板材8A,8Bとを強固に接着固定することができる。
【0042】
前記透明板材8A,8Bの少なくとも一方、特に、光が入射される側の透明板材8A(又は8B)には、赤外線遮断層(図示略)を設けることができる。この赤外線遮断層としては、市販されている各種の赤外線遮断フィルム(透明断熱フィルム、赤外線カットフィルムなどとも称される)を採用してもよいし、あるいは透明板材8A,8Bの表面に周知の赤外線カット用の塗装を施したり、若しくはスパッタリング法や真空蒸着法などの薄膜形成手段を用い、赤外線遮断性の無機又は有機薄膜を成膜することもできる。
このように、透明板材8A,8Bの少なくとも一方に赤外線遮断層を設けることによって、例えば、この透光性断熱板7を太陽光入射用として使用する際に、太陽光に含まれる赤外線が光導波路4に入射されるのを防ぐことができ、入射側の温度上昇及び光導波路4の温度上昇による劣化などを防止することができる。
また、光を出射する側の透明板材8B(又は8A)にカラーフィルターを設けておくことで、様々な色の模様を映し出すことができ、意匠性を高めることができる。
【0043】
本実施形態の透光性断熱材7は、前述した第1実施形態の透光性断熱材1と同様の効果を得ることができ、更に、断熱材2の両側に透明板材8A,8Bを積層したことによって、機械強度、特に剛性に優れた透光性断熱材7を提供することができる。また、断熱材2の両側に透明板材8A,8Bを積層したことによって、外観が美麗で意匠性に優れた透光性断熱材7を提供することができる。
【0044】
次に、本実施形態の透光性断熱材7の製造方法を説明する。
本実施形態の透光性断熱材7は、前述した第1実施形態の透光性断熱材1の両側に透明板材8A,8Bをホットメルト系接着剤などの適当な接着剤を用いて積層することによって製造することができる。
この製造方法のさらに好ましい実施形態として、厚さ方向に沿って複数本の貫通孔3…が穿設された板状の断熱材2を用意する工程、次いで前記貫通孔3…の壁面に第1の光硬化性樹脂接着剤を塗布し硬化させてクラッド6を形成する工程、次いで第1の透明板材8Bにクラッド形成済みの断熱材2の一方の面を当接させた状態で、前記貫通孔3…に第2の光硬化性樹脂接着剤を注入する工程、次いで断熱材2の他方の面に第2の透明板材8Aを配置する工程、次いで前記第2の光硬化性樹脂接着剤を硬化させてコア5(ここで、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとは、n>nの関係を有する)を形成して透光性断熱材7を得る工程とを含む製造方法が挙げられる。
【0045】
ここで、前記第1の光硬化性樹脂接着剤としては、フッ素樹脂系光硬化型接着剤が好ましい。また、前記第2の光硬化性樹脂接着剤としては、アクリル樹脂系光硬化型接着剤が好ましい。さらに、第2の光硬化性樹脂接着剤としてアクリル樹脂系光硬化型接着剤を用いた場合、前記透明板材8A,8Bはアクリル系樹脂板が好ましい。
このような材料を用い、前述した製造方法によって本実施形態の透光性断熱材7を製造することによって、軽量で光透過性、断熱性能及び機械強度に優れた透光性断熱材を効率よく低コストで製造することができる。
【0046】
図5は、本発明の透光性断熱材の第3実施形態を示す図である。本実施形態の透光性断熱材9は、前述した第2実施形態の透光性断熱材7とほぼ同様の構成要素を備えて構成されているが、外部からの照射光を集光して前記光導波路に入射させる複数の集光凸部11…が設けられた透明板材10を用いていることを特徴としている。
【0047】
この集光凸部11は、集光した光を光導波路4に入射可能に配置されている。なお、図5では、集光凸部11が半球状の凸部として図示されているが、同心円状の凹凸から成るフレネルレンズとすることもできる。また、この透明板材10についても、前述した赤外線遮断層を設けることが好ましい。
前記集光凸部11を有する透明板材10と対向する側の透明板材(図示略)には、光を拡散させて透過するプリズムシートや酸化チタン微粒子を含む透明板材などを設けることが好ましい。
【0048】
本実施形態の透光性断熱材9は、少なくとも一方に前記透明板材10を用いること以外は、前述した第2実施形態の透光性断熱材7と同様に製造することができる。
そして、本実施形態の透光性断熱材9は、前述した第2実施形態の透光性断熱材7と同様の効果を得ることができ、更に、集光凸部11が設けられた透明板材10を用いたことによって、透光性能を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、軽量で光透過性、断熱性能及び機械強度に優れた透光性断熱材を提供する。本発明の透光性断熱材は、光透過性及び断熱性が要求される各種の用途、例えば、住宅の外壁材、窓、天井、ドアなどの住宅用建材や体育館などの大型施設の建設資材として、トンネル工事現場などの土木建設用資材として、或いは自動車などの車両の内装材などとして使用できる。また本発明の透光性断熱材は、中身を確認可能な断熱容器や光が必要な植物や動物の容器として使用できる。さらに、光導波路を所望のデザインに沿って配置することによって、室内装飾品や玩具、補助照明装置などに適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1…透光性断熱材、2…断熱材、3…貫通孔、4…光導波路、5…コア、6…クラッド、7…透光性断熱材、8A…透明板材、8B…透明板材、9…透光性断熱材、10…透明板材、11…集光凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材に貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられたことを特徴とする透光性断熱材。
【請求項2】
貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられた断熱材と、前記断熱材に接して設けられた1枚以上の透明板材とを有し、前記光導波路と前記透明板材とが光学的に接続されていることを特徴とする透光性断熱材。
【請求項3】
前記断熱材が板状をなしており、該断熱材の厚み方向に沿って複数本の前記貫通孔が穿設され、該貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路が設けられ、前記断熱材の厚み方向両側の面に前記透明板材が積層された請求項2に記載の透光性断熱材。
【請求項4】
前記光導波路は、屈折率の高い樹脂からなるファイバ状のコアと、該コアの外周を覆う低屈折率の樹脂からなるクラッド(ここで、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとは、n>nの関係を有する)とを有している請求項1〜3のいずれか1項に記載の透光性断熱材。
【請求項5】
前記透明板材に赤外線遮断層が設けられている請求項2〜4のいずれか1項に記載の透光性断熱材。
【請求項6】
前記透明板材に、外部からの照射光を集光して前記光導波路に入射させる集光凸部が設けられた請求項2〜5のいずれか1項に記載の透光性断熱材。
【請求項7】
貫通孔が穿設された断熱材を用意し、次いで該断熱材の貫通孔内に、透明樹脂で形成された光導波路を設けることによって透光性断熱材を得ることを特徴とする透光性断熱材の製造方法。
【請求項8】
貫通孔が穿設された断熱材を用意し、次いで該断熱材の貫通孔内に透明樹脂で形成された光導波路を設けるとともに、前記断熱材の前記貫通孔開口面に透明板材を接着固定して、前記光導波路と前記透明板材とを光学的に接続して透光性断熱材を得ることを特徴とする透光性断熱材の製造方法。
【請求項9】
厚さ方向に沿って複数本の貫通孔が穿設された板状の断熱材を用意する工程、次いで前記貫通孔の壁面に第1の光硬化性樹脂接着剤を塗布し硬化させてクラッドを形成する工程、次いで第1の透明板材にクラッド形成済みの断熱材の一方の面を当接させた状態で、前記貫通孔に第2の光硬化性樹脂接着剤を注入する工程、次いで断熱材の他方の面に第2の透明板材を配置する工程、次いで前記第2の光硬化性樹脂接着剤を硬化させてコア(ここで、コアの屈折率nとクラッドの屈折率nとは、n>nの関係を有する)を形成して透光性断熱材を得る工程とを含む請求項8に記載の透光性断熱材の製造方法。
【請求項10】
前記第1の光硬化性樹脂接着剤がフッ素樹脂系光硬化型接着剤であり、前記第2の光硬化性樹脂接着剤がアクリル樹脂系光硬化型接着剤であり、かつ前記透明板材がアクリル系樹脂板である請求項9に記載の透光性断熱材の製造方法。
【請求項11】
前記透明板材に赤外線遮断層を積層する工程を更に有する請求項8〜10のいずれか1項に記載の透光性断熱材の製造方法。
【請求項12】
外部からの照射光を集光して前記光導波路に入射させる集光凸部が設けられた透明板材を用いる請求項8〜11のいずれか1項に記載の透光性断熱材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−167526(P2012−167526A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−44464(P2011−44464)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【出願人】(510310532)
【Fターム(参考)】