説明

透明ゲルおよびそれからなるコンタクトレンズ

【課題】合成および精製が容易であるシリコーン含有樹脂で、ゲル強度、透明性、酸素透過性、屈折率などの特性に優れる、細胞や臓器などの培養基材、保存に利用するための容器および眼科用材料などに用いることのできる透明ゲルを提供する。
【解決手段】ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーからなり、該コポリマーと親水性ポリマーの相互網目構造を有する透明ゲル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーの相互網目構造を有する透明ゲル、とくに細胞や臓器などの培養基材、保存に利用するための容器および眼科用材料(たとえば、コンタクトレンズ(以下、「CL」と略記)材料)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、CLの材料として、ポリジメチルシロキサンの両末端に重合性基を導入したマクロモノマーが使用されてきた。しかし、マクロモノマーは合成が煩雑であり、分子量の制御や重合性基の導入率に課題があり、さらには、架橋剤として機能することから好ましい物性を得る上で制約があった。また、高分子量であるので、その重合性も確実なものではなく、場合によっては安定した重合が達成されないという問題も指摘されている。
【0003】
また、別の材料として、ポリカーボネート樹脂などは透明性を有することから従来からさまざまな用途に使用されている。特許文献1には、(1)ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン類、(2)ポリシロキサン、および必要に応じて(3)ビスフェノール類と、炭酸エステル形成化合物とを反応させて得たポリカーボネート樹脂が、特許文献2には、化合物(1)および(2)と、炭酸エステル形成化合物とを反応させて得たポリカーボネート樹脂が、特許文献3には、化合物(1)、(2)および(3)と、炭酸エステル形成化合物とを反応させて得たポリカーボネート樹脂が、それぞれ光学材料として好適な成形性、透明性および複屈折性を有することが開示されている。ここに記載のポリカーボネート樹脂は合成および精製が容易であり、分子量制御においても利点があるが、該樹脂をとくにCLに利用することについて記載はなく、CLとして利用するために必要とされる酸素透過性などの特性や、CLまたはCL形状に近い成形品を得るほどの成形性については検討されていなかった。また、これらの材料はそれ自体が硬く、培養基材や眼科用材料としては不向きであった。
【0004】
一方で、ゲル強度を向上させるために、親水性モノマーにポリマー、とくにポリアクリレートを添加して重合する方法が知られているが、ここで、ポリマーとしてポリジメチルシロキサンやポリカーボネートを添加して重合すると、ポリジメチルシロキサンの場合は、シリコーン特有のべたつきが生じ、そしてポリカーボネートの場合は、強度は向上するが所望のガス透過性は得られないという問題があった。また、添加量を増やすと、透明性が確保できず、レンズ材料としては不向きであった。
【0005】
【特許文献1】特開2002−284871号公報
【特許文献2】特開2001−131279号公報
【特許文献3】特開2001−342247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、合成および精製が容易であるシリコーン含有樹脂からなり、ゲル強度、透明性、酸素透過性、屈折率などの特性に優れる、細胞や臓器などの培養基材、保存に利用するための容器および眼科用材料などに用いることのできる透明ゲルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するために鋭意研究した結果、ポリシロキサン骨格を含有する特定のカーボネート樹脂(コポリマー)と、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーからなり、該コポリマーと親水性ポリマーの相互網目構造を有する透明ゲルが、ゲル強度、透明性、酸素透過性、屈折率などに優れることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーからなり、該コポリマーと親水性ポリマーの相互網目構造を有する透明ゲルに関する。
【0009】
前記ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーが、一般式(A)で表される化合物および一般式(B)で表される化合物と、炭酸エステル形成化合物から誘導されることが好ましい。
【0010】
【化1】

【0011】
(式中、R1〜R2は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。Yは、
【0012】
【化2】

【0013】
であり、ここでR3〜R6はそれぞれ、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数6〜12のアリール基からなる群より選ばれた基を表すか、R3とR4およびR5とR6が一緒に結合して、炭素環または複素環を形成する基を表し、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。aは0〜20の整数を表す。)
【0014】
【化3】

【0015】
(式中、R7〜R14は、各々独立して水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。R15は炭素数1〜6の脂肪族基を表すか単に結合を表す。Xは、−SiO(R16)(R17)−および/または−SiO(R18)(R19)−の単独重合体またはランダム共重合体を表し、重合度は0〜200であり、R16〜R19は、各々独立して水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。)
【0016】
前記親水性モノマーは、窒素原子含有モノマーであることが好ましく、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよび/またはN−メチル−3−メチリデンピロリドンであることがより好ましい。
【0017】
前記一般式(A)で表される化合物は、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンからなる群から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
前記コポリマーに含まれるポリシロキサン骨格とポリカーボーネート骨格の割合は、重量比で25:75〜75:25であること、また、前記コポリマーと親水性モノマーの割合は、重量比で5:95〜40:60であることが好ましい。
【0019】
本発明はまた、ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーを、親水性モノマー溶液に溶解した後に重合する工程を含む透明ゲルの製造方法に関する。
【0020】
前記コポリマーを親水性モノマー溶液に溶解させる際に、さらに架橋剤、とくにアリルメタクリレートまたはジエチレングリコールジアリルエーテルを加える工程を含むことが好ましい。
【0021】
前記重合が型内で行なわれることがより好ましい。
【0022】
本発明はさらに、前記透明ゲルからなるコンタクトレンズに関する。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーの相互網目構造を有する、ゲル強度、透明性、酸素透過性、屈折率などの特性に優れる透明ゲルが得られる。
【0024】
本発明において用いられるコポリマーは重合性基を有しないため、樹脂型内で重合(モールド重合)する際の重合収縮を抑えることができる。このような収縮の低減は形状精度の向上につながる。また、ソフトセグメント(シリコーン成分)とハードセグメントの比や、ソフトセグメントの長さやハードセグメントの構造、コポリマーの分子量などを調節することによってガス透過性、ゲル強度などを所望の程度とすることができる。さらに、レンズ表面の粘着性が制御され、角膜への吸着を回避することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の透明ゲルは、ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーからなり、該コポリマーと親水性ポリマーの相互網目(IPN)構造を有している。
【0026】
本発明において「透明」とは可視光線透過率(%T)が80%以上であることをいう。
【0027】
本発明において用いられるコポリマーは、ポリシロキサン骨格を形成する化合物とそれ以外のポリカーボネート骨格を形成する化合物(以下、ポリカーボネート骨格を形成する化合物という)から誘導される。
【0028】
ポリカーボネート骨格を形成する化合物としては、とくに制限はないが、以下の一般式(A)で表される化合物(以下、化合物(A)という)があげられる。
【0029】
【化4】

【0030】
(式中、R1〜R2は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。Yは、
【0031】
【化5】

【0032】
であり、ここでR3〜R6はそれぞれ、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数6〜12のアリール基からなる群より選ばれた基を表すか、R3とR4およびR5とR6が一緒に結合して、炭素環または複素環を形成する基を表し、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。aは0〜20の整数を表す。)
【0033】
化合物(A)としては、具体的には、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,6−ジメチル−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メトキシ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エトキシ−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−エチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,5−ジメチル−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,6−ジメチル−9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレンおよび3,6−ジフェニル−9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、4,4’−ビフェニルジオール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルファイド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノ−ルA;BPA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(ビスフェノールZ;BPZ)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(ジメチルビスフェノールA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(ビスフェノールAP;BPAP)、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)プロパン、3,3,5−トリメチル−1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサンなどがあげられる。なかでも、酸素透過性の点から、一般式(A)におけるR1およびR2がCH3であって、Yがフルオレン骨格である化合物が好ましく、とくに良反応性を有し、かつ工業的に生産され、容易に入手しやすい点で、とくに9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンが好ましい。これらは、2種類以上併用することも可能である。
【0034】
ポリシロキサン骨格を形成する化合物としては、とくに制限はないが、以下の一般式(B)で表される化合物(以下、化合物(B)という)があげられる。
【0035】
【化6】

【0036】
(式中、R7〜R14は、各々独立して水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。R15は炭素数1〜6の脂肪族基を表すか単に結合を表す。Xは、−SiO(R16)(R17)−および/または−SiO(R18)(R19)−の単独重合体またはランダム共重合体を表し、重合度は0〜200であり、R16〜R19は、各々独立して水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。)
【0037】
X部分の重合度は0〜200であり、好ましくは10〜150である。重合度が200をこえると透明性や強度が低下する傾向がある。
【0038】
また、一般式(B)中、R11〜R14は、酸素透過性や屈折率を維持するうえで、メチル基またはフェニル基であることが好ましい。
【0039】
化合物(B)としては、具体的には、以下の構造式で表されるものが例示される。
【0040】
【化7】

【0041】
これらは、2種類以上併用することも可能である。Xは、とくには1〜100個のジメチルシロキサンおよび/またはジフェニルシロキサンを含む単独重合体およびランダム共重合体であることが好ましい。なかでも、酸素透過性、屈折率および透明性の点で、とくにα,ω位に3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル基を有するジメチルシロキサンとジフェニルシロキサンのランダム共重合体、α,ω−ビス[3−(o−ヒドロキシフェニル)プロピル]ポリジメチルシロキサンが好ましい。
【0042】
コポリマーに含まれるポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格の割合は、重量比で25:75〜75:25であることが好ましく、40:60〜70:30であることがより好ましい。ポリシロキサン骨格が25重量%未満で、ポリカーボネートが75重量%をこえる場合は、ソフトコンタクトレンズとして用いるには剛直になりすぎる傾向があり、また、コンタクトレンズ材料として用いる場合に所望の酸素透過性が得られない傾向がある。また、ポリシロキサン骨格が75重量%をこえ、ポリカーボーネート骨格が25重量%未満では、強度が低下する傾向がある。
【0043】
ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーは、たとえば、化合物(A)および化合物(B)と、炭酸エステル形成化合物とから誘導される。
【0044】
炭酸エステル形成化合物としては、たとえば、ホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリールカーボネートがあげられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。なかでも、良反応性を有し、安価に製造可能な点で、とくにホスゲン、ジフェニルカーボネートが好ましい。
【0045】
炭酸エステル形成化合物の使用量は、全ビスフェノール類1モルに対して、1.0〜2.0モル、さらには1.2〜1.5モルであることが好ましい。炭酸エステル形成化合物の使用量が1.0モル未満では、目標とする分子量まで分子量をあげることができず、ポリマーとすることができないために不都合となり、2.0モルをこえると、重合に使用されない炭酸エステル形成化合物がポリマー中に残存することになり、ポリマーの品質に悪影響を及ぼすこととなる傾向がある。
【0046】
前記化合物(A)および化合物(B)と、炭酸エステル形成化合物とを反応させて、コポリマーを製造する方法としては、ビスフェノールAから誘導されるポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法を採用することができる。たとえば、ビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法を採用することができる。ホスゲン法とエステル交換法では、化合物(A)および化合物(B)の反応性を考慮した場合、ホスゲン法が好ましい。
【0047】
ホスゲン法においては、通常、酸結合剤および溶媒の存在下において、化合物(A)および化合物(B)を、ホスゲンと反応させる。酸結合剤としては、たとえば、ピリジンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられる。溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン、キシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンなどの第三級アミン触媒を、また、重合度を調節するために、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、アルキル置換フェノール、ヒドロキシ安息香酸アルキルやアルキルオキシフェノールなどの一官能基化合物を、分子量調節剤として加えることができる。さらに、必要に応じて、亜硫酸ナトリウム、ヒドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなどの分岐化剤を少量添加してもよい。反応温度は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0048】
一方、エステル交換法においては、本発明における化合物(A)および化合物(B)を、ビスアリールカーボネートと混合し、減圧下で高温において反応させる。このとき、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、アルキル置換フェノール、ヒドロキシ安息香酸アルキルやアルキルオキシフェノールなどの一官能基化合物を、分子量調節剤として加えてもよい。また、必要に応じて、酸化防止剤や分岐化剤を添加してもよい。反応は、通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行なわれ、減圧度を最終で好ましくは1mmHg以下にして、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートに由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜10時間程度である。反応は、チッ素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行なうことが好ましい。
【0049】
本発明においてホスゲン法を採用する場合は、反応を効率よく行うために、第四級アンモニウム塩の存在下において、ホスゲンを吹き込むことも可能である。具体的には、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイドなどが例示され、これらのうちトリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドが好ましい。この第四級アンモニウム塩は、使用される全ビスフェノール類に対して、一般に0.0005〜5モル%使用されることが好ましい。
【0050】
さらに、分子量調節剤を用いる場合には、とくに一価フェノールが好ましく、具体的には、フェノールやブチルフェノール、オクチルフェノール、ノニルフェノール、デカニルフェノール、テトラデカニルフェノール、ヘプタデカニルフェノール、オクタデカニルフェノールなどのアルキル置換フェノール;ヒドロキシ安息香酸ブチル、ヒドロキシ安息香酸オクチル、ヒドロキシ安息香酸ノニル、ヒドロキシ安息香酸デカニル、ヒドロキシ安息香酸ヘプタデカニルなどのヒドロキシ安息香酸アルキルエステル;ブトキシフェノール、オクチルオキシフェノール、ノニルオキシフェノール、デカニルオキシフェノール、テトラデカニルオキシフェノール、ヘプタデカニルオキシフェノール、オクタデカニルオキシフェノールなどのアルキルオキシフェノールなどが例示される。この分子量調節剤の添加量は、全ビスフェノール類に対して0.1〜50モル%、好ましくは0.5〜10モル%である。
【0051】
本発明の透明ゲルは、前記コポリマーを、親水性モノマー溶液に溶解した混合物を重合して得られる。
【0052】
本発明において用いられる親水性モノマーとしては、とくに制限はないが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−メチル−3−メチリデンピロリドンなどの窒素原子含有モノマー、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートなどがあげられる。なかでも、重合時の相分離構造の抑制による白濁の抑制という点から、窒素原子含有モノマーが好ましく、とくに、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよびN−メチル−3−メチリデンピロリドンが好ましい。これらの親水性モノマーは2種以上を併用することもできる。
【0053】
なお、N−メチル−3−メチリデンピロリドンは、以下の構造式で表される。
【0054】
【化8】

【0055】
本発明において、コポリマーと親水性モノマーの割合は、重量比で5:95〜40:60であることが好ましく、10:90〜30:70であることがより好ましい。コポリマーが5重量%未満で、親水性モノマーが95重量%をこえると、コポリマーによる本発明の効果が得られなくなる傾向がある。また、コポリマーを親水性モノマーと混ぜると粘度が高くなるので、コポリマーが40重量%をこえ、親水性モノマーが60重量%未満では、透明性、酸素透過性は満足できても、硬くなる傾向がある。
【0056】
本発明においては、前記コポリマーが重合性基を有しないため、重合の際に生じる体積収縮を抑えることができる。そのため、樹脂型内でも良好に重合することができる。なお、重合する際には、熱重合開始剤や光重合開始剤などの既知の重合開始剤が使用される。
【0057】
コポリマーを親水性モノマーに溶解させた混合物に、補強効果付与のために架橋剤を含ませてもよい。架橋剤としては、既知のものが用いられるが、得られる材料の透明性を向上させる効果を有することから、アリルメタクリレートおよび/またはジエチレングリコールジアリルエーテルが好ましい。架橋剤を添加する場合には、全混合物の10重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましい。
【0058】
また、混合物には、化合物(B)以外のシリコーン含有モノマーや溶媒をさらに配合してもよい。溶媒としては、テトラヒドロフラン、イソプロパノール、アセトン、ヘキサンなどがあげられる。
【0059】
本発明の透明ゲルの極限粘度は、0.1〜1.0dL/gの範囲であることが好ましい。とくに、ハイサイクル成形が求められる場合には0.13〜0.6dL/g、さらには0.15〜0.4dL/gの範囲が好ましい。極限粘度が0.1dL/g未満では、離型不良や反りを生じる傾向があり、また1.0dL/gをこえると、流動性が悪く、型への充填不良やフローマークが生じる傾向がある。
【0060】
本発明の透明ゲルを製造する際には、従来の光ディスク用ポリカーボネート樹脂と同様に、高度に精製されることが好ましい。具体的には、直径50μm以上のダストが実質上検出されず、直径0.5〜50μmのダストが3×104以下、無機および有機残留塩素が2ppm以下、残留アルカリ金属が2ppm以下、残存水酸基が200ppm以下、残存窒素量が5ppm以下、残存モノマーが20ppm以下などの基準を、可能な限り満たすように精製される。また、低分子量体除去や溶媒除去の目的で、抽出などの後処理が行なわれる場合もある。また、原材料である化合物(A)および化合物(B)や炭酸エステル形成化合物などについても、不純物や異性体などを極力低減した材料を用いることが好ましい。
【0061】
本発明の透明ゲルを製造する際には、安定性や離型性を確保するために、必要に応じて、ヒンダードフェノール系やホスファイト系酸化防止剤;シリコン系、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、脂肪酸グリセリド系、蜜ろうなどの天然油脂などの滑剤や離型剤;ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ジベンゾイルメタン系、サリチレート系などの光安定剤;ポリアルキレングリコール、脂肪酸グリセリドなどの帯電防止剤などを適宜添加してもよい。
【0062】
さらには、コスト低減やリサイクルなどの目的で、従来のビスフェノールA型ポリカーボネートを、透明ゲルの性能を損なわない範囲で任意に混合して使用することも可能である。前述の成形材料としての物性を満たすことに加えて、CLにおいては鮮明な視力を得る上で、具体的には30度斜め入射光の複屈折が50nm以下、さらには25nm以下であることが望ましく、透明ゲルの可視光線透過率が少なくとも80%以上、さらには90%以上であることが望ましい。また、安全なCL装用を提供するには、透明ゲルの酸素透過係数(Dk値)が50×10-11(cm2/秒)・(mLO2/(mL・mmHg))以上、連続装用を行なうために、さらには70×10-11(cm2/秒)・(mLO2/(mL・mmHg))以上であることが望ましい。
【0063】
本発明の透明ゲルからCLを得る場合、透明ゲルを外径10〜15mm、厚さ2〜5mmのボタン状のレンズブランクスに成形し、これを切削などの従来の方法やレーザなどの光加工によりレンズに加工して製造することができる。本発明の透明ゲルは、成形性に優れ、複屈折が小さいことから、レンズ形状に近い成形品とすることも可能である。このとき、周辺に加工用の保持のためのツバ部を設けても良い。いずれの場合も成形歪みを極力抑え、歪みの存在する部位はCLとして用いないような成形品形状とすることが必要となる。
【0064】
また、透明ゲルの表面の濡れ性を向上させるために、大気圧あるいは減圧下でプラズマ処理またはグロー放電処理することもできる。さらに、グラフト重合を施してもよい。
【0065】
本発明の透明ゲルは、ゲル強度、透明性、酸素透過性などの特性に優れるので、細胞や臓器などの培養基材、保存に利用するための容器および眼科用材料(とくにCL材料)などに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0066】
つぎに、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
【0067】
実施例1〜8で用いるポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマー(PCSi)を以下の表1に従って合成した。
【0068】
【表1】

【0069】
合成例1
8.8%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液30Lに、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(大阪ガスケミカル(株)製:BCF)(以下「BCFL」と略称)3.904kg、以下の構造を有するポリオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製:X−22−1875)(以下「Si−1」と略称)3.904kg、およびヒドロサルファイト20gを加え、溶解した。これにジクロロメタン27Lを加え、15℃に保ちながら撹拌しつつ、ホスゲン1.790kgを0.12kg/分の速度で吹き込んだ。吹き込み終了後、p−tert−ブチルフェノール(以下「PTBP」と略称)119.8gおよび8.8%(w/v)の水酸化ナトリウム水溶液10Lを加え、10分間激しく撹拌し続け、さらに20mLのトリエチルアミンを加え、約1時間撹拌し、重合させた。
【0070】
【化9】

【0071】
重合液を水相と有機相に分離し、有機相をリン酸で中和し、洗液の導電率が10μS/cm以下になるまで水洗を繰り返したのち、精製樹脂液を得た。得られた精製樹脂液を強攪拌されている60℃の温水にゆっくり滴下し、溶媒を除去しつつ重合物を固形化した。固形物を濾過したのち、乾燥して白色粉末状重合体を得た。この重合体の塩化メチレンを溶媒とする濃度0.5g/dLの溶液の温度20℃における極限粘度[η]は0.24dL/gであった。
【0072】
得られた重合体を赤外線吸収スペクトルより分析した結果、1770cm-1付近の位置にカルボニル基由来の吸収、1240cm-1付近の位置にエーテル結合由来の吸収が認められ、カーボネート結合を有することが確認された。また、3650〜3200cm-1の位置に水酸基由来の吸収はほとんど認められなかった。この重合体中のモノマーをGPC分析で測定した場合、いずれのモノマーも20ppm以下であった。これらを総合した結果、この重合体は以下の構造単位からなるポリカーボネート重合体と認められた。
【0073】
【化10】

【0074】
合成例2
BCFLを3.904kg、ホスゲンを1.610kg、PTBPを107.8gに変更し、Si−1に代えて以下の構造のポリオルガノシロキサン化合物(信越化学工業(株)製:X−22−1821)(以下「Si−2」と略称)3.904kgを用いたほかは、合成例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.24dL/gで、赤外吸収スペクトル分析などより、この重合体は、重合比を除いて合成例1と同様のポリカーボネート重合体構造を有することが認められた。
【0075】
【化11】

【0076】
合成例3
BCFLを4.685kg、Si−1を3.123kg、ホスゲンを1.980kg、PTBPを135.0gに変更したほかは、合成例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.25dL/gで、赤外吸収スペクトル分析などより、この重合体は、重合比を除いて合成例1と同様のポリカーボネート重合体構造を有することが認められた。
【0077】
合成例4
BCFLを3.904kg、Si−1を3.123kg、ホスゲンを2.200kg、PTBPを147.4gに変更し、さらにビスフェノールA(三井化学(株)製:BPA)(以下「BPA」と略称)を0.781kg用いたほかは、合成例1と同様に行った。得られた重合体の極限粘度[η]は0.26dL/gで、赤外吸収スペクトル分析などより、この重合体は、以下の構造単位からなるポリカーボネート重合体と認められた。
【0078】
【化12】

【0079】
実施例1〜8および比較例1〜3
表2に示す成分を、コンタクトレンズ形状を有する鋳型(ポリプロピレン製、直径約14mmおよび中心厚み0.1mmのコンタクトレンズに対応)内に注入した。次いで、この鋳型にUV光を10分照射して光重合を行い、コンタクトレンズ形状の重合体を得た。得られた重合体について以下の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0080】
(可視光線透過率(%T))
(株)島津製作所製の自記分光光度計UV2100を使用し、厚さ0.2mmのプレートの波長範囲380〜780nmの光線透過率を水中で測定した。
【0081】
(含水率)
ゲルを水和させた後に、表面の水を軽くふき取り、重量を測定した(W1:g)。105℃に設定した乾燥機にゲルを16時間入れ、その後、デシケーター中で室温まで冷却した後に乾燥したゲルの重量を測定した(W2:g)。以下の式により含水率を算出した。
(W1−W2)/W1×100 (%)
【0082】
(酸素透過係数(Dk))
REHDER DEVELOPMENT社製の測定装置を使用し、厚さ0.2mmのプレートをGAS−TO−GAS法で測定した。測定単位は、×10-11(cm2/秒)・(mLO2/(mL・mmHg))である。
【0083】
(複屈折率)
(株)溝尻光学工業製の自動エリプソメーターを使用し、測定波長632.8nmで、30度斜め入射光の複屈折を測定した。
【0084】
(体積収縮率)
以下の式にしたがって体積収縮率(%)を測定した。
配合液が重合によって収縮した体積比率(%)
=100×(1−(モノマー比重/ポリマー比重))
【0085】
(形状保持性)
直径14mm中心厚み0.1mmのレンズの指先上での形状保持を目視で確認した。
◎:完全に形状を維持している
○:ほぼ形状を維持している
△:やや扁平に変形している
×:扁平となり装用困難
【0086】
なお、表2中の略語は、以下の化合物を示す。
PCSi:ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマー
NVP:N−ビニルピロリドン
HEMA:ヒドロキシエチルメタクリレート
DMAA:ジメチルアクリルアミド
MMA:メチルメタクリレート
TRIAM:ジエチレングリコールジアリルエーテル
AMA:アリルメタクリレート
EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
D.1173:ダロキュア1173(チバスペシャルティーケミカル社製)
【0087】
【表2】

【0088】
実施例の結果から、実施例1〜8のハイドロゲルの含水率と酸素透過性の関係を図1にまとめた。
【0089】
図1より、本発明のPCSiを含むハイドロゲルは、含まれる水に起因する理論的Dk値よりも高い値を示しており、Dk値が高く、CL材料として好ましい物性を有することがわかる。
【0090】
このように本発明による透明ゲルは、Dk値、光透過性、屈折率、形状保持性ともに優れていることが分かる。また、実施例7、比較例1および2について、測定した体積収縮率によると、それぞれ12%、18%および19%であったことから、本発明の透明ゲルは従来の重合体にくらべて重合による収縮が生じにくいことが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明の透明ゲルの含水率と酸素透過性の関係を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーと、親水性モノマーを重合した親水性ポリマーからなり、該コポリマーと親水性ポリマーの相互網目構造を有する透明ゲル。
【請求項2】
前記ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーが、一般式(A)で表される化合物および一般式(B)で表される化合物と、炭酸エステル形成化合物から誘導される請求項1記載の透明ゲル。
【化1】

(式中、R1〜R2は、各々独立して、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。Yは、
【化2】

であり、ここでR3〜R6はそれぞれ、水素、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数1〜10のアルコキシ基および炭素数6〜12のアリール基からなる群より選ばれた基を表すか、R3とR4およびR5とR6が一緒に結合して、炭素環または複素環を形成する基を表し、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。aは0〜20の整数を表す。)
【化3】

(式中、R7〜R14は、各々独立して水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。R15は炭素数1〜6の脂肪族基を表すか単に結合を表す。Xは、−SiO(R16)(R17)−および/または−SiO(R18)(R19)−の単独重合体またはランダム共重合体を表し、重合度は0〜200であり、R16〜R19は、各々独立して水素、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数2〜5のアルケニル基、炭素数1〜5のアルコキシ基および炭素数7〜17のアラルキル基からなる群より選ばれた基であり、これらの基に炭素原子を有する場合には、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数2〜5のアルケニル基および炭素数1〜5のアルコキシ基からなる群より選ばれた置換基を有することもできる。)
【請求項3】
前記親水性モノマーが窒素原子含有モノマーである請求項1記載の透明ゲル。
【請求項4】
前記窒素原子含有モノマーが、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチルアクリルアミドおよび/またはN−メチル−3−メチリデンピロリドンである請求項3記載の透明ゲル。
【請求項5】
前記一般式(A)で表される化合物が、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレンおよび9,9−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)フルオレンからなる群から選ばれた少なくとも1種である請求項2記載の透明ゲル。
【請求項6】
前記コポリマーに含まれるポリシロキサン骨格とポリカーボーネート骨格の割合が、重量比で25:75〜75:25である請求項1または2記載の透明ゲル。
【請求項7】
前記コポリマーと親水性モノマーの割合が、重量比で5:95〜40:60である請求項1記載の透明ゲル。
【請求項8】
ポリシロキサン骨格とポリカーボネート骨格を含むコポリマーを、親水性モノマー溶液に溶解した後に重合する工程を含む透明ゲルの製造方法。
【請求項9】
前記コポリマーを親水性モノマー溶液に溶解させる際に、さらに架橋剤を加える工程を含む請求項8記載の透明ゲルの製造方法。
【請求項10】
前記架橋剤が、アリルメタクリレートまたはジエチレングリコールジアリルエーテルである請求項9記載の透明ゲルの製造方法。
【請求項11】
前記重合が型内で行なわれる請求項8、9または10記載の透明ゲルの製造方法。
【請求項12】
請求項1〜7記載の透明ゲルからなるコンタクトレンズ。

【図1】
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【公開番号】特開2006−199819(P2006−199819A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−13082(P2005−13082)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(000138082)株式会社メニコン (150)
【出願人】(000004466)三菱瓦斯化学株式会社 (1,281)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】