説明

透明シート

【課題】ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力する、モアレが発生しない透明シートを提供する。
【解決手段】情報処理装置、ディスプレイ及び書込型入力装置からなる文字画像表示システムにおけるディスプレイの前面若しくは前方に装着される透明シートであって、前記書込型入力装置が、透明シートの前面に手書きするための入力手段、手書きの入力軌跡を読み取る入力軌跡読取手段、読み取った入力軌跡を電子データ化する入力軌跡変換手段、電子データ化した入力軌跡データを前記情報処理装置に送信する送信手段を有し、前記透明シートの透明基板上に入力軌跡の位置を示す又は示唆するための位置情報を提供する透明パターンが印刷され、かつ、該透明パターンとほぼ同じ厚さ、又は該透明パターンを覆う厚さで透明化層が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種の画像情報を表示する媒体の前面に設置して、該画像情報に付随する樣々な情報を提供する透明シートに関する。詳しくは、ディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに好適に適用できる、位置情報を提供可能とする部材であって、モアレが発生しない透明シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、手書きした文字、絵及び記号などを、情報処理装置が扱うことができる電子データに変換する必要性が高まっており、特に、スキャナーなどの読取装置を経由せず、手書き情報をリアルタイムでコンピューター等へ入力する方式への需要が高まっている。すなわち、ディスプレイ装置の表示面に直接手書きした内容を情報処理装置に入力することを可能とし、コンパクトで安価に製造することが可能な入力装置が望まれていた。
これを実現するためには、例えば、書込型入力装置において、被書込手段であるドットパターンが印刷された用紙を可視領域の光に対して透明化し、ディスプレイ装置の前方または前面に設置する透明シートが考えられる。例えば、特許文献1には、ディスプレイ装置の前面若しくは前方に装着される透明シートであって、入力用電子ペン等による入力軌跡の位置を示すための位置情報を提供可能なドットパターンからなるマークを、所定波長の光が照射されて当該入力軌跡読取手段に読み取り可能な光を発光する蛍光インキを用いて印刷したものが開示されている。
【0003】
しかしながら、特許文献1のような透明シートのドットパターンの場合、図7に示すように、そのドットパターン3の形状にややRがついた形状となっている。このような場合、このシートは可視領域では実質透明であるというものの、ドットと空気界面の屈折率の差によるレンズ効果のため、透明基板2上に印刷されたドットパターンは完全に見えなくなるわけではない。また、ドットパターン表面に微細な凹凸が生じた場合、空気界面との屈折率差によりその凹凸で光の散乱が起き、透明基板2上のドットパターン3が少し白っぽく見える場合もある。
このような透明シートを、画像を表示中のディスプレイの前に置くとモアレが発生する。モアレとは、ある程度の規則性がある繰り返し模様を複数重ね合わせた時に、それらの周期のずれにより視覚的に発生する縞模様のことである。CRTやLCD,プラズマディスプレイなどの画像表示装置は、微細な発光ドットの配列により画像を表現しており、この場合のモアレは、ディスプレイの発光ドットの配列が前記ドットパターンと干渉することで発生する。また、モアレを低減するには、ディスプレイ面に対して平行に設置された、ドットパターンが形成された透明シートを面内で回転させたり、パターンの周期を変える方法などがあるが、位置情報、すなわち座標を検知する用途に用いる場合、ディスプレイ上の座標と、透明シートが提供する座標情報の一対一の対応が取りにくくなることから好ましい方法ではなかった。
【0004】
【特許文献1】特開平2003−256137号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、ディスプレイ装置に直接手書きしてデータ入力する、画像表示媒体への付加情報提供用に好適に使用することができ、殆どモアレが発生しない、即ち、モアレが全く発生しないか、或いは発生しても、実用上、目視にて目立たず、画像認識上支障ない程度にモアレを低減し得る透明シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、前記ドットパターンを目立たなくすればよく、具体的には、入力軌跡読取手段で読み取り可能な光を発光する蛍光インキ材料の屈折率に近い透明材料でドットパターンのドット間を埋めるか、完全に被覆することにより、該ドットと周囲との屈折率の差を小さくすると共に、空気との屈折率不連続界面の凹凸段差を低減することでレンズ効果が軽減され、ドット表面の凹凸による散乱がある場合も軽減されることを見出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、情報処理装置、該情報処理装置に備えられたディスプレイ及び書込型入力装置からなる文字画像表示システムにおけるディスプレイの前面若しくは前方に装着される透明シートであって、前記書込型入力装置が、透明シートの前面に手書きするための入力手段、該入力手段で手書きした内容を示す入力軌跡を読み取る入力軌跡読取手段、該入力軌跡読取手段で読み取った入力軌跡を電子データ化する入力軌跡変換手段、及び該入力軌跡変換手段により電子データ化した入力軌跡データを少なくとも前記情報処理装置に対して送信する入力軌跡データ送信手段を有し、前記透明シートには前記入力軌跡読取手段に対して、入力軌跡の位置を示すための又は示唆するための位置情報を提供可能な透明パターンが印刷され、かつ、該透明パターンとほぼ同じ厚さ、又は該透明パターンを覆う厚さで透明化層が形成されていることを特徴とする透明シートを提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の透明シートは、ディスプレイ装置に直接手書きして手書き情報の位置座標をデータ入力する、画像表示媒体への付加情報提供用に好適に使用することができ、画像表示媒体の視認性を妨げず、透明パターンのレンズ効果が軽減され、該透明パターン表面の凹凸による散乱がある場合も該散乱が軽減されるため、殆どモアレが発生しない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の透明シート1は、透明基板2の表面に、特定の波長の光を受けて、特定の光を発光し、かつ可視光領域において透明なインキ、いわゆる蛍光インキによって、位置情報を提供可能な規則性を有する透明パターン(以下、「ドットパターン」とも呼称する。)3が印刷されている。そして、透明基板2上に、透明パターン3とほぼ同じ厚さ(図2参照)、又は透明パターン3を覆う厚さ(図1参照)で透明化層9が形成されてなるものである。
【0009】
前記蛍光インキは、所定波長の光(以下励起光と称する。)が照射されて、この励起光とは異なる波長の、読取手段によって受光可能な光を発光するものであり、例えば、750〜850nmの波長の赤外線を照射して、780〜900nmの赤外線を発する蛍光物質を含有するメジウムインキが好適に挙げられる。
蛍光物質としては、Ndによって賦活されたLiNdP412、NdP511、Al3Nd(BO3)など、モリブテン酸系無機赤外蛍光体などの無機蛍光体;ポリメチン系色素、アントラキノン系色素、ジチオール金属塩系色素、フタロシアニン系色素、インドフェノール系色素、アゾ系色素などの有機赤外蛍光体;あるいはこれら2種以上の混合物;桂皮酸ネオジウム、桂皮酸ネオジウム・イッテルビウム複合塩、安息香酸ネオジウム、ナフトエ酸ネオジウム・イッテルビウム複合塩の中から選択された少なくとも1種からなる有機金属化合物などが挙げられる。また、光学活性元素として、赤外線領域に吸収をもち、かつ赤外線領域に発光を持つTm(ツリウム)を使用し、これを母体材料に付活したものが挙げられる。母体材料には、金属酸化物、金属硫化物、金属炭酸塩、金属燐酸塩、金属アルミン塩、金属珪酸塩、金属モリブデン酸塩、金属タングステン酸塩、金属チタン酸塩、金属バナジン酸塩の中から選ばれるいずれか一種または二種以上を使用する。
【0010】
前記蛍光物質の蛍光インキ中での粒子径は0.01〜3μmが好ましい。発光強度は粒子径が大きいほど高いが、蛍光インキを印刷するための印刷適性の点からは、粒子径は小さいほうが好ましい。以上のバランスの点から、上記範囲が好ましく、さらには0.1〜3μmの範囲がより好ましい。
また、蛍光インキ中の蛍光物質の含有量は、蛍光を示す量であれば特に制限はなく、蛍光物質によって、0.1〜80質量%の範囲で適宜決定される。含有量が0.1質量%以上であると、十分な発光強度が得られ、80質量%以下であると十分なインキの印刷適性が得られ、印刷不良を生じることがない。
【0011】
また、本発明においては、紫外線蛍光顔料を用いることもできる。紫外線蛍光顔料は、100〜400nmの波長の紫外線を照射して、250〜300nmの紫外線を発するものであり、具体的には、硫化亜鉛、硫化カドミウム、タングステン酸カルシウムなどの無機蛍光体;ジスチルベンゼンスルホン酸誘導体、イミダゾール誘導体、クマリン誘導体、トリアゾール、カルバゾール、ピリジン、ナフタル酸、イミダゾロンなどの誘導体、フルオロセイン、エオシンなどの色素、アントラセンなどのベンゼン環を有する化合物などの有機蛍光体;あるいはこれらの2種類以上の混合物などが挙げられる。
なお、紫外線蛍光顔料の粒子径及びインキ中の含有量については、赤外線蛍光物質と同様である。
【0012】
なお、透明基板2上に、透明パターン3とほぼ同じ厚さで透明化層9が形成されてなる図2の場合において、(透明パターン3の厚さ)−(透明化層9の厚さ)が0.15μm以下で、透明パターン間が埋められていることが好ましい。
すなわち、ドットパターンのレンズ效果を低減せしめ、モアレ(縞)を低減するためには、ドットパターンと周囲の空気層との屈折率差の段差の低減と共に、ドットパターン及び透明化層と空気との界面の凹凸段差も低減せしめることが必要である。透明パターンを覆う厚さで透明化層が形成されてなる場合も透明化層の表面の凹凸段差は0.15μm程度以下の平坦性が有ることが好ましい。
また、透明パターンの表面の凹凸が光を散乱することにより、透明パターンが少し白っぽく見えるような場合は、透明パターン表面を完全に覆う厚みで透明化層を形成することが効果的である。
なお、本発明において、透明パターンが規則性を有するとは、透明パターンから発行される蛍光により位置情報を提供可能な機能を有する程度に規則性を有するという意味であって、例えば、図6に示すように、一見不規則なパターン配列であっても、前記機能を有していれば、規則性を有する透明パターンに含まれる。
【0013】
前記透明化層の材質としては、特に限定されず、樹脂や金属酸化物、ガラス等の各種透明材料が使用可能であるが、特に塗工による層形成が可能という点で有機系樹脂、無機系樹脂などの透明樹脂層が好ましい。また、透明化層は、ハードコート層、粘着剤層、接着剤層、衝撃吸収層、各種フィルター層等の、透明化以外の機能を1つ乃至それ以上併せ持ったものであってもよい。
前記透明樹脂層に用いる樹脂としては、後述の如くドットパターンとの屈折率差が十分小さく、ドットパターンに比べて読み取りに使用される励起光に対して蛍光を発生しない、透明な樹脂であれば特に限定は無く、透明基板や透明パターンを形成するインキ等への密着性などを勘案して公知の樹脂を適宜採用すればよい。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられ、これらのなかでも、耐久性、耐溶剤性等の点から、架橋により硬化するタイプの樹脂が好ましく、更には、電離放射線により短時間で架橋させることができる電離放射線硬化性樹脂が好ましい。この電離放射線硬化性樹脂は、透明パターンによる凹凸を埋め易いという点では、無溶剤又は無溶剤に近い状態で塗工形成できるため有利である。
【0014】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、本発明の好ましい態様によれば、透明基板の材料がTAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系樹脂の場合、熱可塑性樹脂として、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂が好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラニン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等をさらに添加して使用することができる。
【0015】
前記電離放射線硬化型樹脂としては、紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する(メタ)アクリレート系の官能基を有するもの、例えば比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマー又はプレポリマー、反応性希釈剤が挙げられ、これらの具体例としては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、ポリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。なお、ここで、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する表記である。
その他、カチオン重合性官能基を有する樹脂、例えばエポキシ樹脂等も用いることができる。
【0016】
また、前記電離放射線硬化型樹脂を紫外線硬化型樹脂として使用する場合には、光重合開始剤を併用することが好ましい。光重合開始剤の具体例としては、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチュウラムモノサルファイド、チオキサントン類が挙げられる。また、光増感剤を混合して用いることが好ましく、その具体例としては、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン等が挙げられる。
【0017】
また、透明樹脂層中には、本発明における透明パターンの励起光を吸収して蛍光を発生する機能やモアレ防止効果を妨げない範囲で、適宜必要に応じて、樹脂に加え、例えば、塗液やインキに於ける公知の各種添加剤や各種色素を添加してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤等の光安定剤、分散安定剤等が挙げられ、色素としては、例えば、外光反射防止用色素等のディスプレイ用フィルターに於いて公知の色素が挙げられる。
透明樹脂層は、前記樹脂に加え、通常は溶剤と、その他必要に応じ各種添加剤、色素等とを含む組成物を、塗液又はインキとして用いて、塗工法や印刷法等の公知の層形成法で形成することができる。具体的には、透明パターンを印刷済みの透明基板の該印刷面に対して、ロールコート、コンマコート、ダイコート等の塗工法、又は、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法により形成すればよい。印刷法は任意形状での部分形成が容易であるが、塗工法でも間欠塗工で部分形成可能である。
【0018】
なお、透明樹脂層の厚みは、透明パターンの厚み、必要とされる透明化の程度等に応じて適宜な厚みとすればよく、特に制限は無いが、通常は透明パターンの厚みとほぼ同じか、透明パターンを覆ってしまう程度の厚みが好ましい。
【0019】
本発明の透明シートにおいて、ペン型等の入力端末で手書入力する際に、繰り返し入力端末が接触しても耐えられる強度を与えるために、前記透明化層もしくは透明樹脂層が、ハードコート層(表面保護層)の機能を有していると好ましい。
その場合の透明樹脂層の材質としては、前記電離放射線硬化型樹脂、前記電離放射線硬化型樹脂と溶剤可溶な熱可塑性樹脂との混合物、又は前記熱硬化型樹脂の三種類が好ましく、前記電離放射線硬化型樹脂からなるとさらに好ましい。
また、前記電離放射線硬化型樹脂と前記溶剤可溶な熱可塑性樹脂との混合物においては、熱可塑性樹脂を添加することにより、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。透明基板の材料がTAC等のセルロース系樹脂の場合、熱可塑性樹脂の好ましい具体例として、セルロース系樹脂、例えばニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0020】
前記透明樹脂層には、粘着性を持たせ粘着層としてもよい。この場合、透明シートを他の表面基材と一体化させることができる。このような表面基材としては耐擦傷性シートや反射防止シート、防眩シート、各種フィルターなど、透明パターンの励起光を吸収して蛍光を発生する機能を損なわない範囲で用いることができる。
粘着層としては、透明性が得られるものであれば特に限定されず、公知の粘着剤を適宜採用すればよい。粘着剤としては、例えば、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、又は、天然ゴム系、ブチルゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ポリクロロプレン、スチレン−ブタジエン共重合樹脂などのゴム系樹脂等である。粘着層は、このような成分のみからなっていてもよく、前述した透明樹脂層の成分に混合して形成されていてもよい。
粘着層は、これら樹脂等からなる粘着剤組成物を用いて、塗工法の公知の層形成法で形成することができる。なお、粘着層は、透明パターンの印刷面に直接形成してもよく、剥離シートの剥離面に形成してから、この粘着層付き剥離シートを、粘着層側の面で透明パターンの印刷面に加圧ローラ等でラミネートしてもよい。直接形成する場合は、剥離シートを一度粘着層表面にラミネートしておき、他の表面基材と張り合わせる際に剥がして用いてもよく、粘着層形成後、すぐに他の表面基材とラミネートしてもよい。
【0021】
前記透明樹脂層には、接着性を持たせ接着層としてもよい。この場合も粘着層の場合と同様、透明シートを他の表面基材と一体化させることができる。表面基材としては耐擦傷性シートや反射防止シート、防眩シート、各種フィルターなど、透明パターンの赤外線反射機能を損なわない範囲で用いることができる。
接着層としても、粘着層同様に、透明性が得られるものであれば特に限定されず、公知の接着剤を適宜採用すればよい。接着剤としては、例えば、ウレタン系接着剤、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ゴム系接着剤等が挙げられ、なかでも、ウレタン系接着剤が接着力等の点で好ましい。なお、この様なウレタン系接着剤としては、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤等があり、2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤は、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、アクリルポリオール等の各種ヒドロキシル基含有化合物と、トリレンジイソシアネートやヘキサメチレンジイソシアネート等の各種ポリイソシアネート化合物を含む2液硬化型ウレタン樹脂を利用した接着剤である。
接着層は、これら樹脂等からなる接着剤組成物を用いて、塗工法の公知の層形成法で形成することができる。なお、接着層は、透明パターン印刷面に直接形成してもよく、貼り合わせる表面基材の接着面に形成してもよく、透明パターン印刷面と表面基材の接着面の両方に形成してもよい。これらの基材の接着すべき面を向かい合わせにして加圧ローラ等でラミネートすることで接着が可能となる。
【0022】
本発明の透明シートは、下記式(A)を満たすと好ましい。
|n1−n3|>|n1−n2| ・・・(A)
(n1:透明パターンの屈折率(可視光線帯域に於ける屈折率)、n2:透明化層の屈折率、n3:空気の屈折率(=約1.00))
透明シートが、式(A)を満たせば、ドットパターンと周囲の空気層との屈折率段差は軽減され、ドットパターンのレンズ効果によるドットパターンの可視化が低減されるため、一応の透明化及びモアレ軽減効果は得られるが、透明パターンの屈折率と透明化層の屈折率の差は小さい方が好ましく、下記式(B)を満たすとより大きな効果が得られるため好ましい。
|n1−n2|≦0.14 ・・・(B)
【0023】
本発明の透明パターンを構成する蛍光インキとしては、上述した蛍光物質をバインダー樹脂に分散したものを好適に用いることができる。バインダー樹脂を用いることで、基板上に固定し、耐擦傷性を向上させることができる。
バインダー樹脂としては、特に限定されず公知のものを用いればよく、例えば、従来公知の熱可塑性樹脂、反応硬化型樹脂(熱硬化型樹脂、電離放射線硬化型樹脂)及びそれらの混合物等を用いることができる。
【0024】
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂、ポリエーテル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリメタアクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂、イミド樹脂等が挙げられる。
また、上記反応硬化型樹脂、すなわち、熱硬化型樹脂及び電離放射線硬化型樹脂の少なくともいずれかを使用することが好ましい。熱硬化型樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、珪素樹脂、ポリシロキサン樹脂等が挙げられる。電離放射線硬化型樹脂としては、例えば、ラジカル重合性不飽和基((メタ)アクリロイルオキシ基、ビニルオキシ基、スチリル基、ビニル基等)及びカチオン重合性基(エポキシ基、チオエポキシ基、ビニルオキシ基、オキセタニル基等)の少なくともいずれかの官能基を有する樹脂で、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等が挙げられる。
【0025】
これらの反応硬化型樹脂に必要に応じて、架橋剤(エポキシ化合物、ポリイソシアネート化合物、ポリオール化合物、ポリアミン化合物、メラミン化合物等)、重合開始剤(アゾビス化合物、有機過酸化化合物、有機ハロゲン化合物、オニウム塩化合物、ケトン化合物等のUV光開始剤等)等の硬化剤、重合促進剤(有機金属化合物、酸化合物、塩基性化合物等)等の従来公知の化合物を加えて使用する。具体的には、例えば、山下普三、金子東助「架橋剤ハンドブック」(大成社、1981年刊)記載の化合物が挙げられる。
前記電離放射線硬化型樹脂には、好ましくは、アクリレート系の官能基を有するもの、例えば、比較的低分子量のポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物の(メタ)アクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマーおよび反応性希釈剤としてエチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、スチレン、メチルスチレン、N−ビニルピロリドン等の単官能モノマー並びに多官能モノマー、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1、6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等を比較的多量に含有するものが使用できる。
【0026】
上記の電離放射線硬化型樹脂組成物を紫外線硬化型樹脂組成物とするには、この中に光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーのベンゾイルベンゾエート、α−アミロキシムエステル、テトラメチルチウラムモノサルファイドおよびチオキサントン類が含まれると好ましい。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の例には、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンが含まれる。
なお、バインダー成分の含有量は、前記コーティング液(インキ)中に、通常5〜80質量%、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは20〜40質量%である。
【0027】
また、蛍光インキには、必要に応じて、溶媒を含有させることもできる。溶媒としては、特に限定されず、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノールのようなアルコール類;2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、3−メトキシプロパノール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール類;ジアセトンアルコールのようなケトール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンのようなケトン類;トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチルのようなエステル類等が挙げられる。
【0028】
さらに、前記蛍光インキを印刷する際、透明基板の印刷面を易接着性向上処理すると、インキの印刷性もしくは接着性が向上することから好ましい。易接着性向上処理としては特に限定されず公知の方法によればよく、例えば、ポリエチレンテレフタレ−トを主体とする樹脂からなるベースフィルムに対応して、易接着層としては、ポリエステル樹脂等が望ましい。
【0029】
本発明の透明シートにおいて、透明パターンの印刷方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、孔版印刷法、インキジェット印刷法等が挙げられる。
【0030】
本発明の透明シートにおいて、透明基板上に6〜8μmの透明パターンとほぼ同じ厚さ、又はそれ以上の厚みを持つ透明化層が形成されると、透明化層が厚いため、カールが大きくなる場合があり、本発明のシートは、ディスプレイ又はその他媒体に貼り付けて用いる場合などは、カールが大きいと画面に貼り付けづらい。このため、実用的なカール許容範囲は10mm以下、好ましくは5mm以下である。
なお、カールの測定法は、シートA4サイズの中心部を10cm角に切断し、四隅の反りの平均値を計算することで評価できる。
【0031】
カールを低減する方法として、透明化層と反対側にほぼ同じ厚みのカール防止層4を設ける(図3参照)、又は透明基板の厚みを増やすことが挙げられる。
カール防止層の厚さとしては、透明化層±5μm以下であると好ましい。また、前記カール防止層の材質としては、前述した透明化層と同様の材質が挙げられ、同じであると好ましい。カール防止層には、例えば、反射防止、すべり防止、帯電防止、汚れ防止、防眩性などを付与してもよい。
また、透明基板の厚みを増す場合には、厚さ透明基板の厚さが180μm〜1mm以下、グラビアなどの印刷適正を考慮すると、400μm以下であることが好ましい。
【0032】
本発明の透明シートの一実施態様として、図4に示すように、透明基板2が、基材21と基材21の透明パターン3の印刷側表面に積層された下地層22とからなり、下地層22が透明パターン3を形成するインキを撥(はじ)くものが好ましく挙げられる。
【0033】
本発明の透明シート1において、所望により積層される下地層22は、透明パターン3を形成するドット印刷時のインキの各々の液滴を撥く。これらの液滴は、はじかれた結果として盛り上がり、大きく湾曲する。これらの湾曲は液滴の乾燥及び架橋により固定化され、透明パターン3は湾曲部を有することとなる。この湾曲部の形成により、広い読取角度を有する透明シートを得ることができる。
尚、下地層22の厚みは、通常0.1〜10μm程度であり、薄膜を形成でき、安価であるという観点より、0.1〜5μmが好ましい。
【0034】
また、下地層22を形成する下地組成物に用いられる材料としては、透明パターンを形成するインキの液滴を撥く性質を持つ物質を選択する。又、特に塗工による層形成が可能である点で、有機系樹脂、無機系樹脂等を用いた透明な樹脂が好ましい。この下地組成物に用いる樹脂としては特に限定は無く、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等が挙げられる。これらのなかでも、耐久性、耐溶剤性、広い読取角度を得る観点から、架橋により硬化するタイプの樹脂が好ましく、さらには、紫外線、電子線等の電離放射線により短時間で架橋させることができる電離放射線硬化性樹脂がより好ましい。これら樹脂自体が透明パターン形成用インキに対する十分な撥液性を持たない場合は、更に撥液性レベリング剤を添加する。
【0035】
前記熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、酢酸ビニル系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、透明基板2の材料がTAC(トリアセチルセルロース)等のセルロース系樹脂の場合、熱可塑性樹脂として、例えば、ニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等のセルロース系樹脂が好ましい。
前記熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素樹脂、ジアリルフタレート樹脂、メラミン樹脂、グアナミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン−尿素共縮合樹脂、ケイ素樹脂、ポリシロキサン樹脂、硬化性アクリル樹脂等が挙げられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、必要に応じて、架橋剤、重合開始剤等の硬化剤、重合促進剤、溶剤、粘度調整剤等をさらに添加して使用することができる。
【0036】
下地組成物に用いられる材料としては、上述のように電離放射線硬化性樹脂が好ましく、種々の反応性モノマー及び/又は反応性オリゴマーが好適に用いられる。例えば、反応性モノマーとしては、上述の多官能性(メタ)アクリレート単量体が挙げられる。反応性オリゴマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基を持つオリゴマー、例えば上述の多官能性(メタ)アクリレートオリゴマーが挙げられる。
また、反応性モノマー又は反応性オリゴマーの重合開始剤としては、上述のビスアシルフォスフィンオキサイド系やα−アミノケトン系の光重合開始剤等が挙げられる。
【0037】
本発明に係る下地組成物に用いられる撥液性レベリング剤としては、透明パターン3を形成するインキをはじくものであれば何でもよい。レベリング剤の種類としては、シリコーン系、フッ素系、ポリエーテル系、アクリル酸共重合物系、チタネート系等の種々の化合物を用いることができる。添加量は、所望とする読取角度に応じて、適宜調整すればよい。下地組成物の材料として選択した樹脂自体が透明パターン形成用インキを十分な撥液性を既に有する場合は、撥液性レベリング剤の添加は省略し得る。自身が高撥液性の樹脂としては、ケイ素樹脂、弗素樹脂等がある。
【0038】
また、前記下地層中には、適宜必要に応じ、本発明における透明パターンの励起光を吸収して蛍光を発生する機能、モアレ防止効果、及び透明性を妨げない範囲で、必要に応じて、例えば、塗液やインキにおける公知の各種添加剤を適宜添加してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤等の光安定剤、帯電防止剤、熱安定剤、滑剤、界面活性剤、分散安定剤等が挙げられる。
【0039】
前記下地層は、上述のようにして得られる(メタ)アクリレート樹脂組成物又は下地組成物のインキを、塗工法や印刷法等の公知の層形成法で形成することができる。具体的には、(メタ)アクリレート樹脂組成物のインキを透明パターン3の印刷面に、あるいは下地組成物のインキを前記基材に、ロールコート、コンマコート、ダイコート等の塗工法、又は、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法により形成すればよい。
図4の透明シート1における基材21としては、可視光を透過する材料であれば特に限定されず、下記で説明する透明基板と同様のものを用いることができる。
【0040】
本発明の透明シート1は、各種画像表示媒体と組合せ乃至は一体化して設置して、該画像に附帯する各種情報(位置座標等)を提供する用途に用いられる。この画像表示媒体としては、各種形態の画像情報を表示するものが対象となる。表示する画像情報は、静止画、動画の何れでも形式でもよく、情報の種類としては、文字、数字、図形、バーコード等の暗号コード、写真画像(風景、人物、絵画、其の他各種)等各種のものが対象となる。具体的な画像表示媒体5を例示すると、CRT(陰極線管)、LCD(液晶表示装置)、PDP(プラズマディスプレイ)、EL(電場発光)表示装置等のディスプレイ装置、或いは画像を印刷した紙、樹脂フィルム等から成る、書籍、パンフレット、カタログ、帳票、取扱説明書等が例示できる。用途乃至仕様形態としては、後述の各種のもの(携帯電話等)が挙げられる。これらの中でも代表的なものが、CRT等のディスプレイ装置の前面に対向して設置し、画面状で手書き入力する画像の位置座標の情報を入力する用途である。
以下、この用途について詳述する。図5に示すように、励起光の照射及び蛍光インキから発する光を検知可能な入力端末6を用いて、透明シート1の蛍光パターンを読み取ることで、透明シート1上における入力端末の位置に関する情報を提供可能である。
本発明の透明シート1は、画像表示可能なディスプレイ装置5に装着され、前記ディスプレイ装置の前面に対向して装着されると好ましい。
なお、前面に対向して装着するとは、ディスプレイ装置の前面に対して、間隙を置かずに密着して装着する形態、間隙を介して隔離状態で装着する形態の何れをも包含する。
【0041】
本発明の透明シートにおいて、透明パターンは、センサーを備えた入力端末にて読み取った部分的なパターンから、シート面上における入力端末の位置情報を導き出すことができるよう設定されたものである。
本発明における透明パターンは、特許文献1にも例示されており、例えばドットの形状を複数設定し、平面内に於いて、所定範囲内に配置されたこれら複数形状のドットの組み合わせをパターン化したもの、縦横に配置した罫線の太さを変えて、所定範囲内の前記罫線の重なり部分の大きさの組み合わせをパターン化したようなもの、x、y座標の値を直接ドットの縦横の大きさと結びつけたもの等が挙げられるが、特に簡素で好適なものとしては、縦横に等間隔に並ぶ基準点を設定して、この基準点に対して上下左右に変位したドットを配置し、これらドットの当該基準点からの相対的な位置関係を利用する方法が挙げられる。この方法はドットのサイズを小さく一定にできるため入力装置の高分解能化に有利である。
【0042】
本発明の透明シートにおいて、入力端末に備えられたセンサーにより、蛍光パターンを検知するには、励起光に対して蛍光を発する効率が高いことが好ましく、通常、発光効率は5〜50%程度であり、10%以上であると好ましい。
【0043】
本発明の透明シートにおいて、ドットパターンのドット形状は隣接するドットと容易に区別できれば特に制限はなく、通常は、平面視形状が、円、楕円、多角形などの形状が用いられる。またドットの立体形状についても特に制限はなく、通常は、ペン型入力端末がこれと接触した際に、抵抗無く滑らかに摺動し、ドットと該端末とが相互に損傷し難い点から、略円盤状であることが好ましいが、半球状や凹面状、多角形状であってもよい。
【0044】
本発明の透明シートに用いる透明基板としては、可視光を透過する材料(波長380nm〜780nmに於いて平均透過率が60%以上、好ましくは80%程度以上)であり、励起光によって読み取りに使用される蛍光を発することがなければ特に限定されず、所謂フィルム、シート、或いは板の形態の物が適宜用いられる。具体的には、透明基板の材料としては、ガラスやTAC(トリアセチルセルロース)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、アクリル、ポリオレフィン等が好適に用いられる。また、厚みは20〜5000μm程度の範囲から、材料、要求性能、及び使用形態に応じて適宜選定する。
前記透明基板としてTACフィルム等の高分子フィルム等の溶媒に溶解乃至膨潤し易い物を用いる場合には、透明パターン印刷時に使用するコーティング液中の溶媒で基板が侵されないように、基板上にバリア層を設けることが好ましい。
【0045】
また、本発明の透明シートにおいて、ペン型等の入力端末で手書入力する際に、繰り返し入力端末が接触しても耐えられる強度を与えるために、透明化層の上に、さらにハードコート層(硬質塗膜から成る表面保護層)を設けてもよい。ハードコート層の材質としては、特に限定されず、通常の透明シートやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、紫外線、電子線、熱等で架橋硬化したアクリル樹脂、珪素系樹脂等が代表的なものである。
さらに、本発明の透明シートの背後にあるディスプレイ装置の視認性を確保するために、シート表面または内部に反射防止膜等を設けてもよい。反射防止膜の材質としては、特に限定されず、通常のディスプレイ用透明シートやレンズの分野において用いられているものが使用できる。例えば、弗化マグネシウム、弗素系樹脂等の低屈折率物質の薄膜と、酸化ジルコニウム、酸化チタニウム等の高屈折率物質の薄膜とを該低屈折率の薄膜が最表面になる様積層した誘電体多層膜等が代表的なものである。
【0046】
本発明の透明シートを装着するディスプレイ装置は、手書き入力データを処理する情報処理装置に接続されたものであり、手書き入力時の軌跡を画面上に表示することができ直感的な入力が可能である。なお、ディスプレイが情報処理装置と独立している場合であっても、本発明の効果を奏する場合には本発明の範囲に包含されるものである。
ここで手書き入力情報を扱う情報処理装置としては、携帯電話、PDA等の各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などが例示できる。
【0047】
本発明で用いることができる入力端末6としては、図5に示すように、励起光iを発し、蛍光rを検知できるものであれば特に限定されず公知のセンサーを用いればよく、例えば、ペン型の入力端末6が読取データ処理装置7も具備する例として、特開2003−256137号公報に開示されている、インキや黒鉛等を備えないペン先、励起光照射部を備えたCMOSカメラ、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等を内蔵しているものなどが挙げられる。
ペン型入力端末6の動作としては、ペン先を平面視が図6に示すように透明パターンが印刷された透明シート1の前面に接触させてなぞるように描画すると、ペン型入力端末6がペン先に加わった筆圧を検知し、CMOSカメラが作動して、ペン先近傍の所定範囲に励起光照射部から発する所定波長の励起光を照射するとともに、パターンを撮像する(パターンの撮像は、例えば、1秒間に数10から100回程度行われる)。ペン型入力端末6が読取データ処理装置7を具備する場合には、撮像したパターンをプロセッサで解析することにより手書き時のペン先の移動に伴う入力軌跡を数値化・データ化して入力軌跡データを生成し、その入力軌跡データを情報処理装置へ送信する。
なお、プロセッサ、メモリ、Bluetooth技術等を利用したワイヤレストランシーバ等の通信インタフェース、及びバッテリ等の部材は、図5に示すように、読取データ処理装置7として、ペン型入力端末6の外部に有ってもよい。この場合には、ペン型入力端末6は読取データ処理装置7にコード8で接続されていても、電波、非可視光線等を用い無線で読取データを送信してもよい。
この他、入力端末6は、特開2001−243006号公報に記載された読取器のようなものであってもよい。
【0048】
本発明において適用できる読取データ処理装置7は、入力端末6で読み取った連続的な撮像データから位置情報を算出し、それを時間情報と組み合わせ、情報処理装置で扱える入力軌跡データとして提供する機能を有するものであれば特に限定されず、プロセッサ、メモリ、通信インタフェース及びバッテリ等の部材を具備していればよい。
また、読取データ処理装置7は、特開2003−256137号公報のように入力端末6に内蔵されていてもよく、また、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に内蔵されていてもよい。また、読取データ処理装置7は、ディスプレイ装置を備える情報処理装置に無線で位置情報を送信してもよく、コード等で接続された有線接続で送信してもよい。
ディスプレイ装置5に接続された情報処理装置は、読取データ処理装置7から送信されてきた軌跡情報に基づき、ディスプレイ装置5に表示する画像を順次更新することによって、入力端末6で手書き入力した軌跡を、紙の上にペンで書いたかのようにディスプレイ装置上に表示することができる。
【0049】
このように、本発明の透明シートは、既存のディスプレイ装置にそのまま装着することができ、ディスプレイ装置に組み込むタイプの静電式、感圧式等の位置入力装置よりもその製作を簡単にすることができ、ディスプレイ装置に装着した際に、殆どモアレが発生しない。また、印刷された位置情報を提供可能なパターンが薄くなったり、傷が付いたりするなどして、位置情報提供の機能が低減した場合であっても、透明シートのみを交換すればよいので、コストも安く、使用者にとって扱いやすいものとなる。
本発明の透明シートは、液晶ディスプレイに装着すれば、液晶保護シートとしても使用可能なものとなる。また、本発明の透明シートは、検査依頼表などの紙の上に乗せて使用する場合など、ディスプレイ装置の前面に配置する以外の利用方法もある(特開2004−341831参照)。
【0050】
本発明の透明シートは、ディスプレイ装置の前面又は前方に対して着脱可能に装着するようにすることもできる。このようにすれば、一つのディスプレイ装置のみならず、別のディスプレイ装置にも装着することができるようになる。また、ディスプレイ装置側には装着のための加工を施さないようにして透明シートを装着することができるようにするために、透明シート自体が、ディスプレイ装置に対する装着手段を備えていると好ましい。なお、この装着手段とは、透明シートと一体に設けられたものであっても、別体に設けられたものであってもよい。
このような装着手段として、例えばバックル状のものをディスプレイ装置のコーナ部に引っ掛けるようなものや、ディスプレイ装置の端部を挟み込むようなものなどが挙げられるが、簡単で好適な具体的態様としては、ディスプレイ装置の前面に装着するような場合において、ディスプレイ装置に接触する接触面側に設けられ、ディスプレイ装置に貼り付けるための接着性又は粘着性を有する貼着具が挙げられる。また、貼着具としては、透明シートに一体的に取り付けられた接着性又は粘着性を有するものや、接触面に直接塗装された接着剤や粘着剤などをも含むものが挙げられる。
【0051】
本発明の透明シートは、その製造の利便性を向上するために、透明シートを、切り離し可能なものとすると好ましい。具体的には、鋏などの切断具若しくは専用の切断具などで切り離せるようなものや、ミシン目などを入れることにより手で切り離すことができるようなものなどが挙げられる。このようなものであれば、使用者側で、各使用者所有のディスプレイ装置の大きさに対応して切断することができるようになるため、製造者側は、数種の所定のサイズに設定したシートを製造すればよいからである。さらに、汎用のディスプレイ装置の規格サイズにミシン目を入れるようにしてもよい。
また、このような使い方が可能であれば、位置情報を提供するパターンが印刷された一のシートを分割し、それぞれのシートが異なる座標範囲を示すようにすることが可能になる。このようなシートを用いる場合、例えば隣接したディスプレイ装置に対して連続した座標を示すシートを適用すれば、入力データに連続性を与えることができる。また、1つの入力装置に対し異なる座標範囲の透明シートを複数切り替えて使用することで、それぞれの透明シートに対し異なる意味を付与することができる。
【実施例】
【0052】
次に、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
実施例1
(1)透明パターン用塗工液(蛍光インキ)の調製
蛍光物質(日本化薬(株)製「IR−802B」)を紫外線硬化性樹脂であるペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)に0.5質量%混合し、透明パターン用塗工液を調製した。
(2)透明化層用塗工液の調製
1分子中に重合可能なアクリロイル基を3つ有する、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA、屈折率n2=1.49)をブタノールに溶解させ、PETAのブタノール溶液を調製した。なお、このブタノール溶液には、PETA 100質量部に対し4質量部の割合で光重合開始剤(チバスペシャリティーケミカルズ株式会社製、イルガキュア(登録商標)184)を添加した。
【0053】
(3)ドットパターンの印刷
透明基板としての透明なトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み80μm、桍化処理済)上に、前述の透明パターン用塗工液をインキとして、グラビア印刷法によりドットパターンの印刷を行ない透明シートを作製した。このときのパターンの膜厚は約4μmであり、ドットのサイズは円盤の直径が125μmであった。また、ドットの間隔は平均約300μmであった。
(4)透明化層の形成
前記透明化層用塗工液を、前述のドットパターンが印刷された透明シートの印刷面にバーコートによってコーティングし、乾燥後、紫外線を照射することでPETA分子を架橋させて硬化させ、赤外線反射パターンを覆う形で透明なPETA層を形成し透明シートを作製した。形成されたPETA層の厚みは約7μmであった。
透明パターンの屈折率n1、透明化層の屈折率n2、空気の屈折率n3=1.00、としたときに、|n1−n3|=0.54>|n1−n2|=0.52の不等式を満たした。
得られた透明シートに対し、波長750nmの赤外線を照射して、蛍光(波長850nm)を画像として検知するペン型センサーで読み取ったところ、蛍光パターンを検知することができた。また、この透明シートを、画像を表示中の液晶ディスプレイの前面に重ねたところ、モアレはほとんど見えなかった。
【0054】
比較例1
実施例1において、(3)の工程の後、透明化層を形成しなかった透明シート(ドットパターンの周囲は、透明基板以外の部分は空気(屈折率=1.00))を、画像を表示中の液晶ディスプレイの前面に重ねたところ、モアレが発生した。シートを面内で回転させるとモアレの程度は変化するが、モアレを消すことはできなかった。
【0055】
実施例2
以下の要領で、カール防止層を設けたこと以外は実施例1と同様にして、透明シートを得た。
(5)カール防止層の形成
実施例1で得られた透明シートの透明化層とは反対面に、(2)の透明化層用塗工液をバーコーターによってコーティングし、乾燥後、紫外線を照射し、硬化処理することによって、厚み15μmのカール防止層を形成し、カール防止層を有する透明シートを作製した。カールを測定したところ1mmであった。
なお、カールの測定法は、シートA4サイズの中心部を10cm角に切断し、四隅の反りの平均値を計算することで評価した。
また、得られた透明シートに対し、励起光を照射してその蛍光を画像として検知するペン型センサーで読み取ったところ、ドットパターンによる蛍光パターンを検知することができた。また、この透明シートを、画像を表示中の液晶ディスプレイの前面に重ねたところ、モアレはほとんど見えなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上詳細に説明したように、本発明の透明シートは、ディスプレイ装置の画面に直接手書きするタイプのデータ入力システムに適用できる、座標検知手段を提供する部材であって、透明化層を設けたことにより、透明パターンのレンズ効果が軽減され、透明パターン表面の凹凸による散乱がある場合にも軽減されるため、殆どモアレが発生しない。
このため、手軽に使用することができ、実用性能が高く、携帯電話、PDA等の各種携帯端末や、パーソナルコンピュータ、テレビ電話、相互通信機能を備えたテレビジョン、インターネット端末などの種々の情報処理装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の透明シートの一実施態様を示す断面図である。
【図2】本発明の透明シートの別の一実施態様を示す断面図である。
【図3】本発明の透明シートの別の一実施態様を示す断面図である。
【図4】本発明の透明シートの別の一実施態様を示す断面図である。
【図5】本発明の透明シートを用いるシステム全体の概略図である。
【図6】本発明の透明シートにおいてドットパターンが不規則に配列した例を示す要部拡大平面図である。
【図7】従来技術における透明シートを示す断面図である。
【符号の説明】
【0058】
1:透明シート
2:透明基板
3:透明パターン
4:カール防止層
5:ディスプレイ装置
6:入力端末(ペン型)
7:読取データ処理装置
8:コード
9:透明化層
21:基材
22:下地層
i:非可視光線(入射光)
r:反射光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報処理装置、該情報処理装置に備えられたディスプレイ及び書込型入力装置からなる文字画像表示システムにおけるディスプレイの前面若しくは前方に装着される透明シートであって、前記書込型入力装置が、透明シートの前面に手書きするための入力手段、該入力手段で手書きした内容を示す入力軌跡を読み取る入力軌跡読取手段、該入力軌跡読取手段で読み取った入力軌跡を電子データ化する入力軌跡変換手段、及び該入力軌跡変換手段により電子データ化した入力軌跡データを少なくとも前記情報処理装置に対して送信する入力軌跡データ送信手段を有し、前記透明シートが透明基板上に、前記入力軌跡読取手段に対して入力軌跡の位置を示すための又は示唆するための位置情報を提供可能な透明パターンが印刷され、かつ、該透明パターンとほぼ同じ厚さ、又は該透明パターンを覆う厚さで透明化層が形成されてなることを特徴とする透明シート。
【請求項2】
前記入力軌跡読取手段が所定波長の光を照射する照射部及び所定波長の光を読み取る読取部からなり、前記位置情報を提供可能な透明パターンが、照射部から照射される光を受けて、読取部で読み取り可能な光を発光し、かつ可視光領域において透明なインキによって印刷されてなる請求項1に記載の透明シート。
【請求項3】
前記透明パターンが、無数のドットからなり一定の法則に従って配置した所定範囲内のドットの配置パターンから当該透明シート上の絶対位置を判別可能にしたドットパターンである請求項1又は2に記載の透明シート。
【請求項4】
前記透明パターンとほぼ同じ厚さで透明化層が形成されてなる場合において、(透明パターンの厚さ)−(透明化層の厚さ)が0.15μm以下である請求項1〜3のいずれかに記載の透明シート。
【請求項5】
前記透明化層が、電離放射線により架橋が形成される透明樹脂層である請求項1〜4のいずれかに記載の透明シート。
【請求項6】
前記透明化層がハードコート層である請求項1〜5のいずれかに記載の透明シート。
【請求項7】
前記透明化層が接着層又は粘着層である請求項1〜4のいずれかに記載の透明シート。
【請求項8】
下記式(A)を満たす請求項1〜7のいずれかに記載の透明シート。
|n1−n3|>|n1−n2| ・・・(A)
(n1:透明パターンの屈折率、n2:透明化層の屈折率、n3:空気の屈折率)
【請求項9】
下記式(B)を満たす請求項1〜8のいずれかに記載の透明シート。
|n1−n2|≦0.14 ・・・(B)
(n1:透明パターンの屈折率、n2:透明化層の屈折率)
【請求項10】
前記透明パターンの厚さが1〜20μmである請求項1〜9のいずれかに記載の透明シート。
【請求項11】
前記透明パターンが印刷される面の反対側に、透明なカール防止層が形成されてなる請求項1〜10のいずれかに記載の透明シート。
【請求項12】
前記カール防止層の厚さが前記透明化層の厚さの±5μm以下である請求項11に記載の透明シート。
【請求項13】
前記カール防止層の材質が前記透明化層の材質と同じである請求項11又は12に記載の透明シート。
【請求項14】
前記ディスプレイ装置に装着するための装着手段を備えている請求項1〜13のいずれかに記載の透明シート。
【請求項15】
前記装着手段が、ディスプレイ装置に接触する接触面側に設けられ、ディスプレイ装置に貼り付けるための接着性又は粘着性を有する貼着具である請求項14に記載の透明シート。
【請求項16】
切り離し可能なものである請求項1〜15のいずれかに記載の透明シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2009−37312(P2009−37312A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−199298(P2007−199298)
【出願日】平成19年7月31日(2007.7.31)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】