説明

透明化核剤入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気低減方法

【課題】ソルビトール系透明化核剤を含むポリプロピレン系樹脂材料の臭気を低減する方法を提供する。
【解決手段】下記一般式(1)で示される透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減させる方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂組成物に、塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素化合物(B)または塩基性の含酸素化合物(C)を用いることを特徴とする臭気低減方法による。
【化1】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明化核剤入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気低減方法に関し、詳しくは、ソルビトール系透明化核剤入りポリプロピレン系樹脂組成物から発生する臭気を抑制する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂に透明化核剤を配合したポリプロピレン樹脂組成物は、透明性、剛性、耐衝撃性などの機械物性および成形加工性に優れていることから、食品を包装あるいは充填するフィルム、容器または蓋材等、さらに日用品、医療器具等の成形体に用いられる材料として広範囲に利用されているが、それぞれの用途分野ごとに強く求められる性能が異なる。
例えば、食品用途向けの場合、特に透明性と低臭気が強く求められる。透明性は、内容物の透質感を高めることで商品価値を向上させることができるためであり、低臭気に関しては、内容物の味や風味が、透明化核剤配合ポリプロピレン樹脂組成物の臭気によって変化することがあり、商品価値が著しく低下してしまうためである。従って、食品用途向けの成形体材料の場合、透明性に優れ、かつ、低臭気で有ることが強く求められている。
【0003】
ポリプロピレン樹脂成形体の透明性を向上させる核剤として、ソルビトール系透明化核剤が広く一般的に使用されてきた(特許文献1参照)。しかし、ソルビトール系透明化核剤を用いた成形体は、透明性に優れるもののソルビトール系透明化核剤から発生する芳香族アルデヒドが特有の強い臭気を有しており、食品用途向けでは内容物の味や風味を変化させる恐れがあった。
一方で、低臭気の成形体を得る方法として、有機リン酸系核剤(特許文献2参照)を用いる方法があったが、透明性がソルビトール系核剤ほど優れていないため、優れた透明性が求められる食品用途向けとしては不十分であった。
【0004】
そのため、食品用途向けでは透明性に優れ、かつ低臭気なポリプロピレン樹脂組成物が強く求められていたが、これまでは透明性と低臭気を両立させることが困難であった。
上記したように、ソルビトール系透明化核剤を配合したポリプロピレン樹脂材料は、透明性に優れた材料であるものの、特有の臭気を有しており、発生する臭気を抑制する方法を開発することが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−117044号公報
【特許文献2】特開平5−140466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、ソルビトール系透明化核剤入りポリプロピレン系樹脂組成物から発生する臭気を抑制する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ソルビトール系透明化核剤を含むポリプロピレン系樹脂材料に、特定の塩基性化合物を用いることにより、その優れた透明性を充分維持したまま、臭気を解消することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記一般式(1)で示される透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減させる方法であって、前記ポリプロピレン系樹脂組成物に、塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)及び塩基性の含酸素有機化合物(C)からなる群のうち少なくとも一種以上を用いることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【化1】

[但し、nは、0〜2の整数であり、R〜Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基またはフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0009】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、透明化核剤(D)が、下記化学構造式(2)で示されることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【化2】

【0010】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、金属水酸化物(A)が、Mg、Ca、Zn、Al及びLiから選ばれる2種以上の金属からの複合金属水酸化物であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0011】
また、本発明の第4の発明によれば、第3の発明において、前記複合金属水酸化物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
2+1−xAl3+(OH(Xn−x/n・mHO・・・(3)
[但し、M2+は、Mg2+、Ca2+及びZn2+からなる群から選ばれる2価の金属イオンを示し、Xn−は、n価のアニオン、xは、0<x<0.5の範囲にある数、mは、0≦m≦2の範囲にある数、nは、1≦n≦3の範囲にある数を示す。]
【0012】
また、本発明の第5の発明によれば、第3の発明において、前記複合金属水酸化物が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
〔AlLi(OH)Y・qHO・・・(4)
[但し、Yは、無機アニオンまたは有機アニオンを示し、rは、Yの価数であり、qは、正数である。]
【0013】
また、本発明の第6の発明によれば、第4または5の発明において、前記複合金属水酸化物のpKaが7以上であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0014】
また、本発明の第7の発明によれば、第1の発明において、含窒素有機化合物(B)が、アミン、イミンまたはアミド系有機化合物であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0015】
また、本発明の第8の発明によれば、第7の発明において、含窒素有機化合物(B)が、脂肪族アミン、脂肪族イミンまたは脂肪族アミド系有機化合物であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0016】
また、第9の発明によれば、第8の発明において、前記脂肪族アミン、脂肪族イミンまたは脂肪アミド系有機化合物のpKaが7以上であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0017】
また、本発明の第10の発明によれば、第1の発明において、含窒素有機化合物(B)が、含窒素複素環基を含む有機化合物であること特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0018】
さらに、本発明の第11の発明によれば、第10の発明において、含窒素有機化合物(B)が、ヒンダードアミン系有機化合物であることを特徴とする臭気低減方法が提供さる。
【0019】
さらに、本発明の第12の発明によれば、第11の発明において、前記ヒンダートアミン系有機化合物のpKaが7以上であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0020】
また、本発明の第13の発明によれば、第1の発明において、含酸素有機化合物(C)がアルコール系有機化合物であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0021】
また、本発明の第14の発明によれば、第13の発明において、前記アルコール系有機化合物が、脂肪族アルコール系有機化合物であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0022】
また、本発明の第15の発明によれば、第14の発明において、前記脂肪族アルコール系化合物が2級または3級アルコールを含む有機化合物であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【0023】
さらに、本発明第16の発明によれば、第15の発明において、前記2級または3級アルコールを含む有機化合物のpKaが7以上であることを特徴とする臭気低減方法が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明の臭気低減方法によれば、ソルビトール系透明化核剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減することができ、透明性と低臭気に優れたポリプロピレン系樹脂材料を提供することができ、特に食品の包装用または容器等として好適な成形体を提供することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の臭気低減方法は、前記したソルビトール系透明化核剤(D)を含むポリプロピレン系樹脂組成物に、塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)及び含酸素有機化合物(C)からなる群から選ばれる少なくとも一種以上の塩基性化合物を用いることを特徴とする。
以下、本発明について、詳細に説明する。
【0026】
[塩基性化合物]
本発明の臭気低減方法には、塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)または塩基性の含酸素有機化合物(C)を使用する。
【0027】
[塩基性の金属水酸化物(A)]
塩基性の金属水酸化物(A)としては、Mg、Ca、Zn、Al及びLiから選ばれる2種以上の金属からの複合金属水酸化物が好ましく挙げられる。
【0028】
このうち、好ましい複合水酸化物(A)としては、下記一般式(3)で示されるMg、CaまたはZnとAlの複合水酸化物である。
2+1−xAl3+(OH(Xn−x/n・mHO・・・(3)
[式(3)中、M2+は、Mg2+、Ca2+及びZn2+からなる群から選ばれる2価の金属イオンを示し、Xn−は、n価のアニオン、xは、0<x<0.5の範囲にある数、mは、0≦m≦2の範囲にある数、nは、1≦n≦3の範囲にある数を示す。]
上記一般式(3)中のXのn価のアニオンとしては、たとえばCl、Br、I、NO、ClO−、SO2−、CO2−、SiO2−、Si2−、HPO2−、HBO2−、PO3−、Fe(CN)3−、Fe(CN)4−、CHCOO、C(OH)COO、(OCOCOO)、(OCOCCOO)などの1種又は2種以上を例示することができる。これらのうち、Xは、特にCO2−、SiO2−、Si2−などが好ましく、炭酸アニオンCO2−が最も好ましい。
【0029】
上記Mg、CaまたはZnとAlの複合水酸化物のうち最も好ましいのは、ハイドロタルサイトである。ハイドロタルサイトは、マグネシウム及びアルミニウムを含む含水塩基性炭酸塩であり、天然産のものと合成されたものがある。天然に産出するものに対しては、MgAl(OH)16(CO)・4HOの組成が与えられ、別名マナセアイトとも呼ばれ、ASTMカードにX線回折図が記載されている。また、合成されたハイドロタルサイトは、種々の公知方法、例えば、「薬剤学」第29巻(1969年)第215頁、「日本化学雑誌」第92巻(1971年)第514頁に記載の方法により容易に得られる。合成ハイドロタルサイトとしては、種々の組成のものが得られ、例えば、Mg4.5Al(OH)13(CO)・3.5HO、MgAl(OH)20(CO)・4HO、MgAl(OH)19(CO・2HO等が挙げられる。
【0030】
ハイドロタルサイトとしては下記一般式のものを好ましく挙げることができる。
Mg1−xAl(OH)(COx/2・mH
[式中、xは、0<x<0.5であり、mは3以下の数である。]
ハイドロタルサイトの具体例としては、MgAl(OH)16CO・4HO、MgAl(OH)12CO・3HO、MgAl(OH)14CO・4HO、Mg10Al(OH)22(CO・4HO、Mg4.5Al(OH)13CO・3.5HO、Mg4.3Al(OH)12.6CO・mHOが、協和化学社製DHT4A(商品名)として入手可能である。
【0031】
また、塩基性の金属水酸化物(A)の好ましいものとして、LiとAlの複合金属水酸化物を挙げることができる。好ましいリチウムアルミニウム複合水酸化物塩は、下記一般式(4)で表される。
〔AlLi(OH)Y・qHO・・・(4)
[但し、Yは、無機アニオンまたは有機アニオンを示し、rは、Yの価数、qは、正数である。]が好ましい。
【0032】
上記一般式(4)中のYのアニオンとしては、炭酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、亜リン酸イオン、メタリン酸イオンなどの無機アニオン、酢酸イオン、プロピオン酸イオン、シュウ酸イオン、アジピン酸イオン、安息香酸イオン、フタル酸イオンなどの有機アニオンが好ましく、特に炭酸イオンが好ましい。また、qは通常3以下の正数である。
リチウムアルミニウム複合水酸化物塩の好ましい例としては、LiAl(OH)12CO・4HOが水澤化学社製ミズカラック(商品名)として入手可能である。
【0033】
[塩基性の含窒素有機化合物(B)]
本発明方法において使用する塩基性の含窒素有機化合物(B)としては、アミン、イミンまたはアミド系有機化合物が好ましく挙げられる。
本発明で使用するアミン、イミンまたはアミド系有機化合物は、分子中にアミノ基、イミノ基、アミド基を有する有機化合物であり、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好な化合物であることが好ましい。
【0034】
アミノ基またはイミノ基を含有する有機化合物としては、エタノールアミン、ジエタノール
アミン、ヒドロキシルアミン、メタノールアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、エチレンイミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ジエチレントリアミン、ジアミノプロパン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、イミノビスプロピルアミン、ヘキサメチレンジアミン等の脂肪族アミン化合物あるいはそれらの誘導体、アルギニン、プロリン、ヒドロキシプロリンなどのアミノ酸類、ジシアノジアミド、モルホリン、アミノ−ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、グアニジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、ヒンダードアミン、メラミン及びこれらの誘導体、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミンなどがある。
【0035】
アミド基を含有する有機化合物としては、ホルムアミド、アセトアミド、ベンズアミド、オキサミド、オキサミン酸、コハク酸アミド、マロンアミド、さらに尿素及びその誘導体などが挙げられる。尿素及びその誘導体としては、尿素、チオ尿素、メチル尿素、エチル尿素、ジメチル尿素、ジエチル尿素、エチレン尿素、グアニル尿素などがある。
【0036】
上記したような塩基性の含窒素有機化合物(B)の好ましい化合物としては、脂肪族アミン、脂肪族イミンまたは脂肪族アミド系有機化合物、あるいはヒンダードアミン系有機化合物である。
脂肪族アミン、脂肪族イミンまたは脂肪族アミド系有機化合物の好ましい具体例としては、ラウリルジエタノールアミン、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミドが挙げられる。
【0037】
また、ヒンダードアミン系有機化合物の好ましい具体例としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物、ポリ{[6−〔(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ〕−1,3,5−トリアジン−2,4ジイル]〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕}、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン−2,4−ビス〔N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ〕−6−クロロ−1,3,5−トリアジン縮合物等を挙げることができる。
【0038】
含窒素有機化合物(B)は、一種を単独であるいは二種以上を組み合わせて使用される。
また、含窒素有機化合物(B)は、そのままで、また他の溶解剤、分散剤等と混合して使用することも好ましい。
【0039】
[塩基性の含酸素有機化合物(C)]
本発明方法において使用する塩基性の含酸素有機化合物(C)は、脂肪族金属塩を除く含酸素有機化合物であり、特にアルコール系化合物が好ましく挙げられる。 本発明で使用するアルコール系有機化合物は、分子中にヒドロキシルキ基を有する化合物であり、1級でも、2級でも、3級でも良いが、好ましくは2級もしくは3級のヒドロキシル基を含有する化合物である。また、ポリオレフィン系樹脂との相溶性が良好な化合物であることが好ましい。
【0040】
ヒドロキシル基を含有する有機化合物としては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、ペンチルアルコール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、3−メチルー2−ブタノール、2,2−ジメチルー1ープロパノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、4−メチルー1−ペンタノール、4−メチルー2−ペンタノール、3−メチルー3ーペンタノール、2,3−ジメチルー2−ブタノール、3,3−ジメチルー2−ブタノール、1−ヘプタノール、ヘプチルアルコール、2−ヘプタノール、3−ヘプタノール、4−ヘプタノール、3−エチルー3−ペンタノール、2,4−ジメチルー3ーペンタノール、2,3,3−トリメチルー2ーブタノール、1−オクタノール、オクチルアルコール、2−オクタノール、2−エチルー1ーヘキサノール、1−ノナノール、ノニルアルコール、2−ノナノール、2,6−ジメチルー4ーヘプタノール等のモノアルコールあるいはそれらの誘導体、1,2−エタンジオール、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−クロロー1,3−プロパンジオール、3−クロロー1,2−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチルー2,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチルー2,4−ペンタンジオール、2,3−ジメチルー2,3−ブタンジオール等の二価アルコールあるいはそれらの誘導体、グリセロール、2−メチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、ペンタエリトリトール等の多価アルコールあるいはそれらの誘導体などがある

【0041】
上記したような塩基性の含酸素有機化合物(C)の好ましい化合物としては、脂肪族アルコール系有機化合物である。
脂肪族アルコール系有機化合物の好ましい具体例としては、グリセリルモノステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノベヘネート、グリセリンモノオレート、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノラウレート、ジグリセリンラウレート、ジグリセリンミリステート、ジグリセリンオレエート、ジグリセリンステアレートペンタエリスリトールが挙げられる。
【0042】
含酸素有機化合物(C)は、一種を単独であるいは二種以上を組み合わせて使用される。
また、含酸素有機化合物(C)は、そのままで、また他の溶解剤、分散剤等と混合して使用することも好ましい。
【0043】
[臭気低減方法]
塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)または塩基性の含酸素有機化合物(C)を使用して、透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減する方法としては、透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物に、上述した塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)または塩基性の含酸素有機化合物(C)を接触させる方法、あるいはこれらを配合する方法等が挙げられる。
接触させる場合は、混合工程、造粒工程または乾燥工程等の工程において、ポリプロピレン系樹脂組成物の各成分を入れ、金属水酸化物(A)、含窒素有機化合物(B)、含酸素有機化合物(C)を導入することにより行う。例えば混合工程の場合、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、リボンブレンダー等に、ポリプロピレン系樹脂組成物の各成分を投入して混合する際に、金属水酸化物(A)、含窒素有機化合物(B)、含酸素有機化合物(C)導入することにより行う等の方法を採用できる。
【0044】
また、金属水酸化物(A)、含窒素有機化合物(B)、含酸素有機化合物(C)を配合する場合、その配合量は、透明化核剤(D)を含むプロピレン系重合体100重量部に対して、塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)、または塩基性の含酸素有機化合物
(C)を少なくとも一種類以上、総量で0.005〜5重量部配合することが好ましく、より好ましくは0.01〜4重量部、特には0.015〜3重量部重量部が好ましい。
【0045】
[塩基性化合物の定義]
本特許で指定する塩基性の化合物とは、THF/水(70wt%/30wt%)混合溶媒を使用して、公知の滴定法(ブレンステッドの定義に基づく酸解離定数の測定方法)によって求められるpKaが7以上が好ましく、かつ、透明化核剤(D)の分解を引き起こすルイス酸と相互反応する化合物であり、分子中に電子供与性のある官能基を有し、これがルイス酸の空軌道部位に電子を供与してルイス酸の空軌道と相互作用することにより、ルイス酸の潜在的な反応部位を補足して,当該ルイス酸と接触する透明化核剤(D)がルイス酸によって分解することを抑制する化合物を指す。ここで、透明化核剤(D)の分解を引き起こすルイス酸としては、酸解離定数pKaが4未満の酸性物質が挙げられ、具体的には触媒残渣由来の塩酸、大気中のNOx、SOx由来の硝酸、硫酸、亜硝酸、亜硫酸などを挙げることができる。
【0046】
[透明化核剤(D)]
本発明の方法で、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有され、臭気が低減される透明化核剤(D)は、一般式(1)で示される化合物である。
【0047】
【化3】

[但し、nは、0〜2の整数であり、R〜Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基およびフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【0048】
好ましくは、一般式(1)において、nは、0〜2の整数であり、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子であり、RおよびRは、同一または異なって、それぞれ炭素数が1〜20のアルキル基である。
【0049】
さらに好ましくは、式(1)において、nは、0〜2の整数であり、R、R、RおよびRは、それぞれ水素原子であり、Rは、−CH、−CHCH、−CHCHCH、−CHCHCHCH、−CHCH=CH、−CH(CH)CH=CH、−CHCH−X−CH−X、−CHCH−X−CHCH、−CHCH−X−CHOHもしくは−CHOH−CH(OH)−CHOHであり(但し、X〜Xは、それぞれ独立したハロゲン基である。)、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基であることが好ましい。
【0050】
また、透明化核剤(D)が下記化学構造式(2)で表される場合には、透明性がきわめて優れる上、ゲル−ゾル転移温度が170℃と従来の透明化核剤の代表であるジベンジリデンソルビトール系核剤に比べて約20℃も低下するため、成形温度を約20℃以上下げても良好な透明性を得ることが可能となり、非常に好ましい。
【0051】
【化4】

このような透明化核剤としては、市販のものを用いることができる。具体的には、ミリケン社製、商品名ミラッドNX8000、NX8000Jを挙げることができる。
【0052】
透明化核剤(D)の配合量は、プロピレン系重合体100重量部に対し、0.01〜0.5重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると透明性を十分に発揮させることが困難であり、また、0.5重量部を超えると、これ以上透明性を向上させることが難しくなりやすい。透明化核剤(D)のより好ましい配合量は、0.1〜0.4重量部である。
【0053】
[その他の添加剤]
本発明の方法が適用されるプロピレン系樹脂組成物には、上述した成分に加えて、プロピレン系重合体の安定剤などとして使用されている各種酸化防止剤を配合することができる。
【0054】
具体的には、酸化防止剤としては、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ジ−ステアリル−ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−フォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジ−フォスフォナイト等のリン系酸化防止剤、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ハイドロキシベンジル)イソシアヌレート等のフェノール系酸化防止剤が挙げられる。
【0055】
さらに、その他に、非塩基性の帯電防止剤、非塩基性のスリップ剤、脂肪酸金属塩等の分散剤、高密度ポリエチレン、オレフィン系エラストマー、非オレフィン系エラストマー等を本発明の目的を損なわない範囲で配合することができる。
【0056】
[プロピレン系重合体]
本発明に使用するポリプロピレン系樹脂組成物で用いられるプロピレン系重合体は、プロピレン単独重合体であっても、プロピレン系共重合体であっても、あるいはこれらの混合物であってもよい。
プロピレン系共重合体は、プロピレンとα−オレフィンとの共重合体であり、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもどちらでも良いが、透明性の観点から、ランダム共重合体が望ましい。共重合に用いられるα−オレフィンは、プロピレンを除く炭素数2〜20のα−オレフィンがあげられ、例えばエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等を例示できる。プロピレンと共重合されるα−オレフィンは一種類でも二種類以上用いてもよい。このうちエチレン、ブテン−1が好適である。より好ましくはエチレンが好適である。
【0057】
具体的な共重合体の例を挙げると、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ジエン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−ヘキセン−1共重合体、プロピレン−オクテン−1共重合体等を例示できる。このうちプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体が特に好ましい。
プロピレンと共単量体であるα−オレフィンの量の構成割合は、重量比で70〜99/30〜1であることが好ましい。通常、α−オレフィン量は、0.05〜10.0重量%、好ましくは0.1〜5.0重量%程度が好ましい。勿論重合段階で、EPRのようなゴム成分をソフトセグメントとして、ポリプロピレン主体の結晶相からなるハードセグメントへ導入した、いわゆるポリプロピレン系重合体アロイも使用できる。
プロピレン系重合体、共重合体のガラス転移温度は、−100〜20℃のものが挙げられる。
また、このようなプロピレン系重合体は、二種以上混合して使用してもよい。
【0058】
本発明で用いられるプロピレン系重合体は、密度が0.88〜0.92g/cmの範囲にあるのが好ましい。この範囲にあると樹脂組成物の剛性と耐衝撃性のバランスが良好な樹脂組成物を与える。
【0059】
また、本発明で用いられるプロピレン系重合体は、230℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が、0.3〜100g/10分であることが望ましい。
MFRがこの範囲にあると、樹脂組成物の剛性と耐衝撃性、成形温度に由来する高生産速度に適した樹脂組成物を与える。
ここで、230℃におけるMFRは、JIS K7210に準拠して230℃、2.16kg荷重下で測定する値である。
【0060】
またプロピレン系重合体として、プロピレン単独重合体を用いる場合のアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは97%以上が望ましい。立体規則性が向上するほど、剛性や耐熱性も向上し、成形体の変形を防ぐことができる。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は13C−NMR法で測定する値である。
【0061】
プロピレン系重合体として、プロピレンランダム共重合体(以下、「ランダム共重合体」ということがある。)を用いる場合の、ランダム共重合体中に占めるα−オレフィン量は、0.1〜10.0重量%が好ましい。
ここで、α−オレフィン含有量は、13C−NMRにより組成を検定したプロピレン共重合体を基準物質としてIR法で測定する値である。
【0062】
また、プロピレン系重合体は、示差走査型熱量計より得られる融解温度(ピーク値)が170℃以下であることが好ましい。
ここで、示差走査型熱量計より得られる融解温度(ピーク値)は、JIS K7121の「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠し、測定する値である。
【0063】
プロピレン系重合体として、ポリプロピレンセグメントとプロピレン共重合体セグメントとからなるプロピレン系ブロック共重合体(以下、「ブロック共重合体」ということがある。)を用いる場合、ブロック共重合体中に占めるポリプロピレンセグメントが70〜99重量%で、プロピレン共重合体セグメントが1〜30重量%が好ましく、ポリプロピレンセグメントが86〜98重量%で、プロピレン共重合体セグメントが2〜14重量%がより好ましい。この範囲にあると透明性、機械物性、耐衝撃性のバランスが食品向け容器、キャップ、蓋材に適している。
【0064】
この時、ポリプロピレンセグメントのアイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は、90%以上、好ましくは94%以上、より好ましくは97%以上が望ましい。アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)が90%以上であれば、成形時の成形体の変形を防止するのに十分である。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率(mmmm)は13C−NMR法で測定する値である。
【0065】
また、該プロピレン系重合体として、α−オレフィン−プロピレン共重合体を1段目に重合した後、α−オレフィン含有量の異なるα−オレフィン−プロピレン共重合体を2段目に重合したプロピレン系ブロック共重合体(以下、これも含めて「ブロック共重合体」ということがある。)であっても差し支えない。
ブロック共重合体に含まれる全α−オレフィン含有量は、0.5〜12重量%が好ましく、2〜9重量%がより好ましい。また、α−オレフィンとしては、エチレンが好ましい。α−オレフィン含有量がこの範囲内にあると、得られる樹脂組成物が耐衝撃性に適している。
ここで、α−オレフィン含有量は、13C−NMRにより組成を検定したプロピレン共重合体を基準物質としてIR法で測定する値である。
【0066】
[プロピレン系重合体を得るために用いられる触媒]
本発明に使用されるプロピレン系重合体の製造方法としては、特に限定されないが、立体規則性触媒を使用する重合法が好ましい。立体規則性触媒としては、チーグラー触媒やメタロセン触媒などが挙げられる。
【0067】
チーグラー触媒としては、三塩化チタン、四塩化チタン、トリクロロエトキシチタン等のハロゲン化チタン化合物、前記ハロゲン化チタン化合物とハロゲン化マグネシウムに代表されるマグネシウム化合物との接触物等の遷移金属成分とアルキルアルミニウム化合物又はそれらのハロゲン化物、水素化物、アルコキシド等の有機金属成分との2成分系触媒、更にそれらの成分に窒素、炭素、リン、硫黄、酸素、ケイ素等を含む電子供与性化合物を加えた3成分系触媒が挙げられる。
【0068】
メタロセン触媒としては、(i)シクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)と、(ii)メタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要により、(iii)有機アルミニウム化合物とからなる触媒であり、公知の触媒はいずれも使用できる。メタロセン化合物は、好ましくはプロピレンの立体規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物であり、より好ましくはプロピレンのアイソ規則性重合が可能な架橋型のメタロセン化合物である。
【0069】
メタロセン化合物(i)としては、例えば、特開昭60−35007号、特開昭61−130314号、特開昭63−295607号、特開平1−275609号、特開平2−41303号、特開平2−131488号、特開平2−76887号、特開平3−163088号、特開平4−300887号、特開平4−211694号、特開平5−43616号、特開平5−209013号、特開平6−239914号、特表平7−504934号、特開平8−85708号の各公報に開示されている。
【0070】
好ましいメタロセン化合物の具体例を挙げると、メチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレン1,2−(4−フェニルインデニル)(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(4−メチルシクロペンタジエニル)(3−t−ブチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(2−メチル−4−t−ブチル−シクロペンタジエニル)(3’−t−ブチル−5’−メチル−シクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[4−(1−フェニル−3−メチルインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレン(フルオレニル)t−ブチルアミドジルコニウムジクロリド、メチルフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4,(1−ナフチル)−インデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4,5−ベンゾインデニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−メチル−4−フェニル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−ナフチル−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレンビス[1−(2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス[1−(2−エチル−4−(3−フルオロビフェニリル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル)]ジルコニウムジクロリド、ジメチルゲルミレンビス[1−(2−エチル−4−フェニルインデニル)]ジルコニウムジクロリドなどのジルコニウム化合物が例示できる。
【0071】
上記において、ジルコニウムをチタニウム、ハフニウムに置き換えた化合物も同様に使用できる。場合によっては、ジルコニウム化合物とハフニウム化合物等の混合物を使用することもできる。また、クロリドは他のハロゲン化合物、メチル、イソブチル、ベンジル等の炭化水素基、ジメチルアミド、ジエチルアミド等のアミド基、メトキシ基、フェノキシ基等のアルコキシド基、ヒドリド基等に置き換えることが出来る。
メタロセン化合物は、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
【0072】
また、メタロセン化合物は、無機または有機化合物の担体に担持して使用してもよい。
該担体としては、無機または有機化合物の多孔質化合物が好ましく、具体的には、イオン交換性層状珪酸塩、ゼオライト、SiO、Al、シリカアルミナ、MgO、ZrO、TiO、B、CaO、ZnO、BaO、ThO、等の無機化合物、多孔質のポリオレフィン、スチレン・ジビニルベンゼン共重合体、オレフィン・アクリル酸共重合体等からなる有機化合物、またはこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
メタロセン化合物(i)と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒(ii)としては、有機アルミニウムオキシ化合物(たとえば、アルミノキサン化合物)、イオン交換性層状珪酸塩、ルイス酸、ホウ素含有化合物、イオン性化合物、フッ素含有有機化合物等が挙げられる。
【0074】
有機アルミニウム化合物(iii)としては、トリエチルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジアルキルアルミニウムハライド、アルキルアルミニウムセスキハライド、アルキルアルミニウムジハライド、アルキルアルミニウムハイドライド、有機アルミニウムアルコキサイド等が挙げられる。
【0075】
[プロピレン系重合体の製造方法]
プロピレン系重合体の製造方法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。
例えば、スラリー重合法の場合には、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の不活性炭化水素又は液状モノマー中で行うことができる。重合温度は、通常−80〜150℃であり、好ましくは40〜120℃である。重合圧力は、1〜60気圧が好ましく、また得られるプロピレン系重合体の分子量の調節は、水素もしくは他の公知の分子量調整剤で行うことができる。重合は連続式又はバッチ式反応で行い、その条件は通常用いられている条件でよい。さらに重合反応は一段で行ってもよく、多段で行ってもよい。
【0076】
[臭気低減されたポリプロピレン系樹脂組成物の成形]
臭気低減されたポリプロピレン系樹脂組成物は、公知の押出成形機、射出成形機、ブロー成形機により成形することができる。
成形体としては、射出成形体、押出成形体、中空成形体、圧縮成形体、カレンダー成形体、積層成形体、流動浸漬成形体、吹込み成形体、スラッシュ成形体、回転成形体、熱成形体、CCM成形体などがあり、具体的には食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン容器、チルドコーヒー容器、デザート容器、弁当容器等)、キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ等)、医療用器具や容器(ディスポーザブルシリンジ及びその部品、カテーテル・チューブ、輸液バッグ、血液バッグ、真空採血管、手術用不織布、血液用フィルター、血液回路などのディスポーザブル器具や、人工肺、人工肛門などの人工臓器類の部品、ダイアライザー、プレフィルドシリンジ、キット製剤、薬剤容器、試験管、縫合糸、湿布基材、歯科用材料の部品、整形外科用材料の部品、コンタクトレンズのケース、PTP、SP・分包、Pバイアル、目薬容器、薬液容器、液体の長期保存容器等)、医療用容器(輸液パック、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具、)、自動車部品(インパネ、バンパー、灯体等)、電気部品(各種電気機器の筐体等)、太陽電池封止材、フィルム、繊維、シート、などが挙げられる。
特に、本発明の臭気低減方法を用いたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形することによって得られる成形体は、透明性、低臭気が求められる食品向け容器などの用途で特に好適である。
【実施例】
【0077】
以下、実施例により、本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0078】
実施例および比較例に使用した原料成分は以下の通りである。
[プロピレン系重合体]
エチレン−プロピレンランダム共重合体
MFR(JIS K7210、230℃、2.16kg荷重)8g/10分
融点150℃
日本ポリプロ(株)社製、商品名「ノバテック」MG3FQ
【0079】
[塩基性金属水酸化物(A)]
(A−1)マグネシウムアルミニウム複合水酸化物
「ハイドロタルサイトDHT4A」 (協和化学工業社製、商品名)
【0080】
[塩基性含窒素有機化合物(B)]
(B−1)コハク酸ジメチル−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジル)エタノール縮合物
「TNV622」 (BASF社製、商品名)
(B−2)ステアリルジエタノールアミン
「エレクトロストリッパーTS2」 (花王社製、商品名)
(B−3)アルキルジエタノールアミド/グリセリンエステル
「エレクトロストリッパーHS12PA」 (花王社製、商品名)
【0081】
[塩基性含酸素有機化合物(C)]
(C−1)グリセリンモノステアレート
「エレクトロストリッパーTS5」 (花王社製、商品名)
【0082】
[透明化核剤(D)]
(D−1)前記化学構造式(2)で表される透明化核剤
「ミラッドNX8000J」 (ミリケン・アンド・カンパニー社製、商品名)
[前記一般式(1)以外の透明化核剤]
(D−X)有機リン酸金属塩化合物
リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)アルミニ
ウム塩
アデカスタブNA−21 (ADEKA社製、商品名)
【0083】
[脂肪族金属塩系無機化合物(中和剤)(E)]
(F−1)ステアリン酸カルシウム(日本油脂社製)
【0084】
[酸化防止剤(F)]
(F−2)2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、テトラキス[メチレン(3,5−
ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)]メタン
「イルガノックス1010」 (BASF社製、商品名)
(F−3)トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェノール)フォスファイト
「イルガフォス168」 (BASF社製、商品名)
【0085】
[実施例1〜5、比較例1〜3]
上記したプロピレン系重合体および各成分(A)〜(E)を、下記表1に記載の配合割合(重量部)で準備し、スーパーミキサーでドライブレンドした後、35ミリ径の2軸押出機を用いて溶融混練した。ダイ出口部温度220℃でダイから押し出しペレット化し、ペレットを得た。
得られたペレットを用い、芳香族アルデヒドの測定を行った。
また、得られたペレットを射出成形機により、樹脂温度200℃、射出圧力900kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、厚さ1mmのシート状のHAZE測定用試験片を作成した。得られた試験片を用いHAZE(ヘイズ)の測定を行った。
また、樹脂温度250℃、射出圧力900kg/cm及び金型温度40℃で射出成形し、臭気官能評価用の試験片(80mm×10mm×4mm厚)を作成した。得られた試験片を用い臭気官能評価を実施した。
物性値の測定法、評価法の詳細は、以下の通りである。
【0086】
(1)ヘイズ値:
厚さ1mmのシート片を用いて、JIS K7105に準拠して測定した。
この数値が小さい程、得られた成形品は、透明性に優れる。ヘイズ値は、15以下であることが望ましく、10以下であることがさらに望ましい。ヘイズ値が10以下であると、製品として極めて透明性に優れたものとなる。
【0087】
(2)臭気官能評価:
悪臭防止法に基づく臭気試験で使用される臭い袋に臭気官能評価用の試験片を入れ、活性炭を通した無臭空気で臭い袋内部の空気を置換した後、密封し、室温23±2℃、湿度50±5%の条件下で1週間保存した。その後、JIS Z9080に準拠して下記に示す5段階尺度にて臭気強度の評価を行った。
1:全く臭いを感じない。
2:かすかに臭いを感じる。
3:普通に臭いを感じる。
4:かなり臭いを感じる。
5:非常に強く臭いを感じる。
【0088】
(3)pKa測定
化合物のpKaは次の方法で測定した。まずテトロヒドロフラン/水(70wt%/30wt%)混合溶媒に対して、各種化合物を溶解、もしくは懸濁した。次に得られた水溶液に0.1mol/lの水酸化ナトリウム水溶液を滴定した。連続的にpHの変化を記録し、得られた曲線の変曲点よりpKaを求めた。
【0089】
(4)芳香族アルデヒド発生量の測定:
ペレット200mgを100℃、125℃、150℃、175℃にそれぞれ加熱し10分間熱抽出した後、ガスクロマトグラフ(GC)注入口で冷却捕集した成分を気化させてGCカラムに導入し、GC−MS測定により発生した芳香族アルデヒドの定量を行った。
以上の評価結果を、表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1から明らかなように、実施例1は、塩基性の金属水酸化物(A)を配合したものであり、透明性に優れ、かつ、臭気が良好で芳香族アルデヒドの発生量が少ないことがわかる。また、実施例2〜4は、塩基性の含窒素有機化合物(B)を配合したものであり、透明性に優れ、かつ、臭気が良好で芳香族アルデヒドの発生量が少ないことがわかる。また、実施例5は、塩基性の含酸素有機化合物(C)を配合したものであり、透明性に優れ、かつ、臭気が良好で芳香族アルデヒドの発生量が少ないことがわかる
一方、比較例1は、透明化核剤を本発明で規定する以外の他のものを配合したものであり、臭気は良好であるが透明性が十分ではないことがわかる。比較例2、3は、本発明の塩基性化合物を配合していないものであり、臭気が悪く、かつ、芳香族アルデヒドの発生量も多いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の臭気低減方法は、ソルビトール系透明化核剤を含むポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減し、具体的には芳香族アルデヒドの発生量を抑制する。その為、本発明の臭気低減方法を用いたポリプロピレン系樹脂組成物を用いて成形することによって得られる成形体は透明性、低臭気が求められる食品向け容器などの用途で好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示される透明化核剤(D)入りポリプロピレン系樹脂組成物の臭気を低減させる方法であって、
前記ポリプロピレン系樹脂組成物に、塩基性の金属水酸化物(A)、塩基性の含窒素有機化合物(B)及び塩基性の含酸素有機化合物(C)からなる群のうち少なくとも一種以上を用いることを特徴とする臭気低減方法。
【化1】

[但し、nは、0〜2の整数であり、R〜Rは、同一または異なって、それぞれ水素原子もしくは炭素数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基またはフェニル基であり、Rは、炭素数が1〜20のアルキル基である。]
【請求項2】
透明化核剤(D)が、下記化学構造式(2)で示されることを特徴とする請求項1に記載の臭気低減方法。
【化2】

【請求項3】
金属水酸化物(A)が、Mg、Ca、Zn、Al及びLiから選ばれる2種以上の金属からの複合金属水酸化物であることを特徴とする請求項1に記載の臭気低減方法。
【請求項4】
前記複合金属水酸化物が下記一般式(3)で表されることを特徴とする請求項3に記載の臭気低減方法。
2+1−xAl3+(OH(Xn−x/n・mHO・・・(3)
[但し、M2+は、Mg2+、Ca2+及びZn2+からなる群から選ばれる2価の金属イオンを示し、Xn−は、n価のアニオン、xは、0<x<0.5の範囲にある数、mは、0≦m≦2の範囲にある数、nは、1≦n≦3の範囲にある数を示す。]
【請求項5】
前記複合金属水酸化物が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項3に記載の臭気低減方法。
〔AlLi(OH)Y・qHO・・・(4)
[但し、Yは、無機アニオンまたは有機アニオンを示し、rは、Yの価数であり、qは、正数である。]
【請求項6】
前記複合金属水酸化物のpKaが7以上であることを特徴とする請求項4または5に記載の臭気低減方法。
【請求項7】
含窒素有機有化合物(B)が、アミン、イミンまたはアミド系有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の臭気低減方法。
【請求項8】
含窒素有機有化合物(B)が、脂肪族アミン、脂肪族イミンまたは脂肪族アミド系有機化合物であることを特徴とする請求項7に記載の臭気低減方法。
【請求項9】
前記脂肪族アミン、脂肪族イミンまたは脂肪アミド系有機化合物のpKaが7以上であることを特徴とする請求項8に記載の臭気低減方法。
【請求項10】
含窒素有機化合物(B)が、含窒素複素環基を含む有機化合物であることを特徴とする請求項1に記載の臭気低減方法。
【請求項11】
含窒素有機化合物(B)が、ヒンダードアミン系有機化合物であることを特徴とする請求項10に記載の臭気低減方法。
【請求項12】
前記ヒンダートアミン系有機化合物のpKaが7以上であることを特徴とする請求項11に記載の臭気低減方法。
【請求項13】
含酸素有機化合物(C)がアルコール系化合物であることを特徴とする請求項1に記載の臭気低減方法。
【請求項14】
前記アルコール系化合物が脂肪族アルコール系有機化合物であることを特徴とする請求項13に記載の臭気低減方法。
【請求項15】
前記脂肪族アルコール系化合物が2級または3級アルコールを含む有機化合物であることを特徴とする請求項14に記載の臭気低減方法。
【請求項16】
前記2級または3級アルコールを含む有機化合物のpKaが7以上であることを特徴とする請求項15に記載の臭気低減方法。

【公開番号】特開2012−207211(P2012−207211A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−51688(P2012−51688)
【出願日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【出願人】(596133485)日本ポリプロ株式会社 (577)
【Fターム(参考)】