説明

透明導電性膜形成用前駆体液およびその用途

【課題】 優れた保存安定性を備えながら、良好な導電性および透明性を有する膜を形成することができる透明導電性膜形成用前駆体液を提供する。
【解決手段】 透明導電性膜形成用前駆体液は、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物とを含む透明導電性膜形成用前駆体液であって、硝酸および塩酸の少なくとも一方を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、良好な導電性を発現する透明導電性膜の形成に有用であり、かつ優れた保存安定性を備えた透明導電性膜形成用前駆体液と、これを用いた透明導電性基板の製造方法および透明導電性基板とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、太陽電池や液晶表示装置等に用いられる透明導電性基板としては、酸化インジウム錫(ITO)からなる透明導電性膜を設けたものが汎用されている。しかし、ITOの主成分であるIn(インジウム)は資源枯渇や価格急騰といった問題に直面しており、近年では、他の代替金属を用いた透明導電性膜の開発が要望されている。
【0003】
そこで、本発明者は、先般、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンからなる透明導電性膜を備えた新たな透明導電性基板の製造方法として、チタン化合物に過酸化水素を反応させてペルオキソ化した反応生成物と、ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させてペルオキソ化した反応生成物とを含む前駆体液を、透明基板上に塗布し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す方法を提案した(特願2007−280071号)。
【0004】
しかしながら、一般に、上記方法で用いられる前駆体液に含まれるペルオキソ化した反応生成物(すなわちペルオキシ錯体)は不安定であるため、前駆体液を室温以上で放置しておくと、分解が進行してペルオキシ基由来の酸素が放出される傾向があり、結果として、ゲル化もしくは白濁化が生じやすく、場合によっては膜形成時の塗布性、膜の密着性および透明性などに重大な欠点を招くおそれがあった。そのため、これまで、上述した前駆体液は、調製後直ちに使用するか、あるいは保存する場合には室温未満(例えば0℃以下)に冷却しておくなど、様々な制約がある中で取り扱われてきたが、そのような制約を取り払うべく、室温で安定に保持させうる前駆体液が要望されている。
【0005】
上記方法で用いられる前駆体液に含まれる2種の反応生成物のうち、チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物(すなわちペルオキシチタン錯体)については、従来から光触媒等の分野における膜形成材料として利用されており、その溶液の安定化方法についても種々の検討がなされている。有用な安定化方法の一つとして、例えば、クエン酸やグリコール酸などのヒドロキシカルボン酸を添加することによって、ペルオキシチタン錯体を長期安定化する方法が報告されている(非特許文献1〜3)。
【0006】
しかしながら、非特許文献1〜3に記載の安定化方法を適用すると、添加剤(クエン酸やグリコール酸などのヒドロキシカルボン酸)が最終的な塗膜に残存して、当該膜の物性(特に導電性および透明性)を損なうといった問題があった。
【0007】
なお、前駆体液中の反応生成物(ペルオキシ錯体)濃度を低くすれば、その安定性は向上するが、透明導電性膜を形成する際には100nm程度以上の膜厚を一回の塗布で得ることが望まれるため、通常、前駆体液の濃度はある程度高く設定される。したがって、たとえ高濃度の反応生成物(ペルオキシ錯体)を含む前駆体液であっても、室温で安定に保持させうる方法が求められている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】M.Kakihana et al.Angew. Chem. Int. Ed. 2006, 45, 2378-2381
【非特許文献2】垣花眞人 et al.MATERIAL STAGE Vol.3, No.12 2004, 66-72
【非特許文献3】垣花眞人 et al.化学と工業 2006, 12, 901-907
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような事情に鑑みなされたものであって、優れた保存安定性を備えながら、良好な導電性および透明性を有する膜を形成することができる透明導電性膜形成用前駆体液と、これを用いた透明導電性基板の製造方法および透明導電性基板とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、前記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物とを含む混合物に硝酸または塩酸を添加すると、保存安定性が格段に向上し、しかも、硝酸および塩酸であれば、形成される膜の物性(特に導電性および透明性)を損なうことがないことを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(i)(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物とを含む透明導電性膜形成用前駆体液であって、硝酸および塩酸の少なくとも一方を含有する、ことを特徴とする透明導電性膜形成用前駆体液。
【0012】
(ii)下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される溶剤をも含有する、前記(i)記載の透明導電性膜形成用前駆体液。
【化6】

(式(1)中、R1〜R6は、Hまたはアルキル基を表し、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは、−OHまたは−OR(ただし、Rはアルキル基を表す)を表す。)
【化7】

(式(2)中、R1〜R5は、Hまたはアルキル基を表し、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは、−OHまたは−OR(ただし、Rはアルキル基を表す)を表す。)
【化8】

(式(3)中、R1〜R7は、Hまたはアルキル基を表し、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは、−OHまたは−OR(ただし、Rはアルキル基を表す)を表す。)
【化9】

(式(4)中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のアルキレン基を表す。)
【化10】

(式(5)中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のアルキレン基を表す。)
【0013】
(iii)前記溶剤は、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジアセトンアルコール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、2−メチル−1,3−プロパンジオール、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、前記(ii)記載の透明導電性膜形成用前駆体液。
(iv)前記(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物は、チタン化合物1モルに対して0.8〜1.2モルの過酸化水素を反応させたものであり、前記(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物は、ニオブ化合物またはタンタル化合物1モルに対して2.5〜3.5モルの過酸化水素を反応させたものである、前記(i)〜(iii)のいずれかに記載の透明導電性膜形成用前駆体液。
(v)前記(i)〜(iv)のいずれかに記載の透明導電性膜形成用前駆体液を透明基板上に塗布し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す、ことを特徴とする比抵抗が9×10-3Ω・cm以下の透明導電性基板の製造方法。
(vi)前記(i)〜(iv)のいずれかに記載の透明導電性膜形成用前駆体液を透明基板上に塗布し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施すことにより得られる、ことを特徴とする比抵抗が9×10-3Ω・cm以下の透明導電性基板。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、優れた保存安定性を備えながら、良好な導電性および透明性を有する膜を形成することができる透明導電性膜形成用前駆体液を提供できる。つまり、この透明導電性膜形成用前駆体液は、ゲル化もしくは白濁化を生じることなく室温で安定に保持させることができるので、良好な塗布性で密着性および透明性に優れた膜を形成できる。しかも、この透明導電性膜形成用前駆体液は、無機酸である硝酸または塩酸を含有するものであるにも拘らず、膜を形成するにあたり、膜の導電性および透明性を低下させることもないのである。
以上のような透明導電性膜形成用前駆体液を用いることにより、調製後直ちに使用するか、室温未満(例えば0℃以下)に冷却して保存しなければならないなど特段の制約もなく、簡便な塗布法にて、良好な導電性を発現しうる透明導電性基板を製造することができる。さらに、前記透明導電性膜形成用前駆体液は、高濃度であっても室温で安定に保持させることができるので、一回の塗布で充分な膜厚を得ることができる程度にまで濃度を上げることも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の透明導電性膜形成用前駆体液は、(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物(以下、「ニオブ化合物またはタンタル化合物」を纏めて「ドーパント化合物」と称し、「ニオブまたはタンタル」を纏めて「ドーパント」と称することもある)に過酸化水素を反応させた反応生成物とを含む。つまり、本発明の前駆体液は、(A)チタン化合物および(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物がペルオキシ化されてなる錯体(ペルオキシ錯体)を含むものであり、該ペルオキシ錯体は、加熱によりニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンとなる金属酸化物前駆体である。周期律表のVA族に属する5価のニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンで形成された膜は、良好な導電性を示す。
【0016】
本発明の前駆体液における前記(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と前記(B)ドーパント化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物との混合物(以下「(A)および(B)の混合物」と称することもある)は、i)(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させることにより得られた反応生成物であるチタンのペルオキシ錯体と、(B)ドーパント化合物に過酸化水素を反応させることにより得られた反応生成物であるドーパントのペルオキシ錯体とを所望の割合で混合して得られたものであってもよいし、ii)(A)チタン化合物と(B)ドーパント化合物とを予め所望の割合で混合した混合物に対して過酸化水素を反応させることにより得られたものであってもよい。
【0017】
前記(A)および(B)の混合物を得るに際し、(A)チタン化合物もしくは該チタン化合物由来のペルオキシ錯体と、(B)ドーパント化合物もしくは該ドーパント化合物由来のペルオキシ錯体との混合割合は、特に制限されないが、最終的に形成された酸化チタン膜におけるドーパント(ニオブまたはタンタル)の含有比率が0.1〜40モル%、好ましくは5〜30モル%となるようにすればよい。前記(B)(ドーパント化合物もしくは該ドーパント化合物由来のペルオキシ錯体)が前記範囲よりも少ないと、ドープ効果が不充分となり、導電性が低下するおそれがあり、一方、前記(B)が前記範囲よりも多くても、導電性が低下したり、膜の透明性が低下するおそれがある。
【0018】
前記(A)および(B)の混合物を得るに際し、チタン化合物またはドーパント化合物に反応させる過酸化水素の量は、適宜設定することができるが、チタン化合物に対しては、1モルのチタン化合物につき通常0.8〜20モル、好ましくは0.8〜1.2モルの過酸化水素を、ドーパント化合物に対しては、1モルのドーパント化合物につき通常0.8〜20モル、好ましくは2.5〜3.5モルの過酸化水素を反応させることが、さらに保存安定性を向上させうる点で好ましい。例えば、上述したi)のように、チタン化合物とドーパント化合物とにそれぞれ過酸化水素を反応させた後に両反応生成物を混合する場合には、各反応で使用する過酸化水素の量をそれぞれ前記範囲に設定すればよく、他方、上述したii)のように、チタン化合物とドーパント化合物とを予め混合した混合物に対して過酸化水素を反応させる場合には、該混合物中のチタン化合物量に対して前記範囲となるよう設定した量と、該混合物中のドーパント化合物量に対して前記範囲となるよう設定した量との合計量を、反応させる過酸化水素の量とすればよい。
【0019】
前記(A)および(B)の混合物を得るに際し、過酸化水素による反応(すなわち、ペルオキシ化反応)は、例えば、チタン化合物、ドーパント化合物またはこれらの混合物を適当な溶媒により溶解させ、必要に応じて攪拌しつつ、濃度1〜60重量%程度の過酸化水素水を添加することにより行うことができる。ペルオキシ化反応の反応時間は、通常1秒〜60分、好ましくは5分〜20分程度である。なお、過酸化水素によるペルオキシ化反応は、通常、激しい発熱を伴うので、反応は冷却しながら(具体的には、内温を−10℃以下に保つようにして)行うことが望ましい。反応後、さらに−10℃以下に冷却しつつ熟成保持してもよい。
【0020】
前記過酸化水素によるペルオキシ化反応に用いることのできる溶媒としては、特に制限はなく、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール等の水系やアルコール系等の水溶性溶剤を用いることができるが、ペルオキシ化反応で使用する溶媒として、後述する一般式(1)〜(5)のいずれかで表される特定構造の溶剤を用いるようにしても勿論よい。
【0021】
前記(A)チタン化合物は、チタン源としてTi原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化チタン(二塩化チタン、三塩化チタン、四塩化チタン等)、チタンアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド等)、硫酸チタニル、金属チタン、水酸化チタン(オルトチタン酸)、オキシ硫酸チタン等を用いることができる。
前記(B)ドーパント化合物のうちニオブ化合物は、ニオブ源としてNb原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化ニオブ、ニオブアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属ニオブ、水酸化ニオブ等を用いることができる。他方、前記(B)ドーパント化合物のうちタンタル化合物は、タンタル源としてTa原子を含むものであれば特に制限はなく、例えば、塩化タンタル、タンタルアルコキシド(メトキシド、エトキシド等)、金属タンタル、水酸化タンタル等を用いることができる。
なお、上記のうち、チタンアルコキシド、ニオブアルコキシド、タンタルアルコキシドは、水分と接触すると直ちに反応する不安定な物質なので、乾燥(低湿度)雰囲気で扱うことが好ましい。
【0022】
前記(A)チタン化合物および前記(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物としては、水酸化物を用いることが好ましい。すなわち、前記(A)として水酸化チタンを用い、前記(B)として水酸化ニオブまたは水酸化タンタルを用いるか、もしくは、これら水酸化物以外のチタン化合物およびドーパント化合物を用い、過酸化水素と反応させる前に予めアルカリあるいは水を加えるなどして水酸化し、生じた水酸化物の沈殿を分取、洗浄すればよい。このように、水酸化物を過酸化水素と反応させて得られたペルオキシ錯体であれば、炭素原子を含む有機部位が全く存在しないことになり、高温に加熱して有機部位を分解・揮散させる必要がないため、酸化物に変換する際のアニール処理時の加熱温度を比較的低温に設定することができるので好ましい。例えば、水酸化物以外のチタン化合物およびドーパント化合物をそのまま用いて過酸化水素と反応させた場合には、得られたペルオキシ錯体の一部に有機部位が存在することになり、この有機部位を分解・揮散させるためには、少なくとも400℃以上、好ましくは500〜600℃程度の温度に加熱することが必要になる。
【0023】
本発明の透明導電性膜形成用前駆体液においては、前記(A)および(B)の混合物に対して、硝酸および塩酸の少なくとも一方(以下「特定無機酸」と称することもある)を含有させることが重要である。これにより、前駆体液中でカチオンとして存在するペルオキシ錯体に対して硝酸イオン(NO3-)または塩化物イオン(Cl-)が対イオンとして作用し、ペルオキシ錯体は安定化されて、優れた保存安定性を発現する。例えば、前駆体液を常温にて放置すると、通常、約2〜3時間でゲル化してしまうところ、約4日後にも白濁やゲル化を生じることがない。しかも、塩酸や硝酸は、前駆体液に添加して用いても、膜形成時に焼成やアニール処理により揮散するため、最終的に形成される膜中に残存せず、導電性や透明性等の物性に影響を与えることがない。
【0024】
前記特定無機酸の含有量は、その種類や後述する前駆体液の固形分濃度に応じ、充分な安定性向上効果が得られるよう適宜設定すればよく、特に制限されない。例えば、固形分濃度が8重量%以下の前駆体液の場合、前記(A)および(B)の混合物を得る際に用いたチタン化合物およびドーパント化合物(すなわち、固形分)の合計100モルに対して、硝酸であれば1〜50モル、好ましくは5〜30モルを、塩酸であれば10〜60モル、好ましくは30〜50モルを含有させればよい。固形分濃度が8重量%を超え10重量%以下の前駆体液の場合、前記固形分の合計100モルに対して、硝酸であれば50〜100モル、好ましくは60〜80モルを、塩酸であれば70〜150モル、好ましくは90〜120モルを含有させればよい。固形分濃度が10重量%を超え20重量%以下の前駆体液の場合、前記固形分の合計100モルに対して、硝酸であれば80〜150モル、好ましくは100〜140モルを、塩酸であれば120〜170モル、好ましくは130〜160モルを含有させればよい。
なお、塩酸は揮発性のため所定の濃度を維持し難い場合があるが、かかる場合には硝酸の利用が推奨される。
【0025】
なお、前記特定無機酸は、最終的に前駆体液に含有されていればよく、その添加時機については特に制限はない。例えば、上述したi)のように、チタン化合物とドーパント化合物とにそれぞれ過酸化水素を反応させた後に両反応生成物を混合する場合には、特定無機酸の添加は、混合前の両反応生成物に対してそれぞれ行なってもよいし、両反応生成物の混合後に行なってもよい。
【0026】
本発明の透明導電性膜形成用前駆体液は、さらに、前記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される溶剤(以下「特定溶剤」と称することもある)を含有させることが好ましい。前記特定溶剤は、前駆体液中ではペルオキシ錯体を安定化させる作用をなして該溶液の保存安定性を向上させるとともに、該前駆体液を基板に塗布しアニール処理を施した際には加熱により速やかに揮発する溶媒として作用し、形成された膜中に有機成分を残存させることなく良好な導電性を発現させる。
【0027】
前記式(1)〜(3)において、R1〜R6、R1〜R5、またはR1〜R7の例であるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられる。また、前記式(1)〜(3)中、Xの例である−ORにおいてRで示されるアルキル基についても同様である。
前記式(4)および(5)において、Yで示される置換基を有していてもよい炭素数3〜6のアルキレン基としては、例えば、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。
【0028】
前記式(1)〜(3)で表される化合物は、前記(A)および(B)の混合物と共存させると、当該化合物が必須に有する2つの酸素原子とペルオキシ錯体の金属原子との間の二座で、結合力の異なる共有結合と配位結合とが生じて安定な6員環または7員環構造を形成し、その架橋構造によりペルオキシ基を包囲的に保護することができる。しかも、ここで形成される架橋構造内には結合力の強い共有結合が一つしかないので、アニール処理時の加熱によって金属原子から速やかに有機分子が外れやすく、得られる膜中に有機成分が残存して、導電性を損なうこともない。
前記式(4)および(5)で表される化合物は、前記(A)および(B)の混合物と共存させると、当該化合物が必須に有する2つの酸素原子とペルオキシ錯体の金属原子との間の二座で配位し、該化合物が持つ5員環乃至8員環の嵩高い構造によってペルオキシ基を立体的に保護することができる。しかも、ここで形成される金属原子と酸素原子との結合は非常に弱いので、アニール処理時の加熱によって金属原子から速やかに有機分子が外れやすく、得られる膜中に有機成分が残存して、導電性を損なうこともない。
【0029】
前記特定溶剤は、前記一般式(1)〜(5)で表される特定構造を有するものであれば、アルコール、アルコキシアルコール、カルボン酸、エステルなど、どのような有機化合物であってもよいが、具体的には、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジアセトンアルコール(4−ヒドロキシ−4−メチルペンタン−2−オン)、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、5-ヒドロキシ−2−ペンタノン、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、2−メチル−1,3−プロパンジオール、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、3−メトキシ−1−ブタノールは、前駆体液の保存安定性向上効果が著しく高いうえに、基板へ塗布し、アニール処理を施した後にも有機成分の残存(炭化)が起こらず、透明性の高い膜が得られるので、特に好ましい。
【0030】
前記特定溶剤は、最終的に前記(A)および(B)の反応生成物(ペルオキシ錯体)と共存していればよく、例えば、上述した過酸化水素によるペルオキシ化反応における溶剤として用いることで前駆体液に含有させてもよいし、前記(A)および(B)の混合物が塗布やアニール処理に適した液性(粘度等)になるように希釈目的で添加する溶媒として用いることで前駆体液に含有させてもよい。
前記特定溶剤の含有量は、特に制限されないが、前駆体液中の全溶媒量に対して15〜80重量%とすることが好ましい。
【0031】
本発明の前駆体液の固形分濃度は、特に制限されないが、例えば、2〜20重量%であるのが好ましく、4〜15重量%であるのがより好ましい。通常、固形分濃度が高くなるのに伴い前駆体液の保存安定性が低下することになるので、これまでは、例えば10重量%を超える高濃度には設定できなかったところ、本発明においては、前記特定無機酸と必要に応じてさらに含有される前記特定溶剤とによって保存安定性を向上させることができるため、前述したような比較的高い濃度範囲にも設定することができ、例えば一回の塗布で充分な膜厚の膜を形成することも可能である。
なお、ここでいう固形分濃度は、前駆体液を得る際に用いたチタン化合物およびドーパント化合物の合計重量が、前駆体液の全重量中に占める割合(重量%)を意味するものである。
【0032】
本発明の透明導電性基板の製造方法は、前述した本発明の透明導電性膜形成用前駆体液を透明基板上に塗布し、必要に応じて焼成(プリベーク)した後、還元雰囲気下にてアニール処理を施すものである。
前記透明基板としては、後述する焼成およびアニール処理における加熱温度において形状を維持しうるものであり、かつ透明性を有するものであれば、特に制限はない。例えば、各種ガラス等の無機材料、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエチレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリイミドなどのプラスチック類)等の高分子材料などで形成された板状物、シート状物、フィルム状物等を用いることができる。透明基板の可視光透過率は、通常、90%以上、好ましくは95%以上であるのがよい。
【0033】
前記前駆体液を透明基板上に塗布する際の塗布方法は、均一にウェットコーティングできる方法であれば特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができる。例えば、キャピラリコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法等を採用することができる。
【0034】
前記前駆体液を塗布するに際し、塗布量は特に制限されるものではなく、例えば、最終的に形成される膜の厚み(ドライ膜厚)が10nm〜300nmとなるようにすればよい。最終的に形成されたドライ膜厚が前記範囲よりも小さいと、基板に凹凸が存在する場合などに部分的に塗布されにくい箇所や実際に塗布されていない箇所が生じるおそれがあり、一方、前記範囲よりも大きいと、透明性が低下するおそれがある。なお、このような厚みに前駆体液を塗布する際には、1回の塗布作業で行ってもよいし、複数回の塗布作業を重ねて行うようにしてもよい。
【0035】
前記前駆体液を塗布した後の基板は、続いて、必要に応じて、焼成に付される。これにより、基板上のペルオキシ錯体(前駆体液)はNbまたはTaドープ酸化チタンに変化する。このときの結晶状態は、通常、アモルファス相からなる。
焼成の際の加熱温度は、例えば、500℃以下、好ましくは50〜400℃とするのがよい。焼成時の加熱温度が高すぎると、安定した結晶相が析出し、アニール処理効果の発現が見られなくなるおそれがある。また、焼成時間は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、1分〜1時間、好ましくは3分〜30分間程度である。なお、焼成は、どのような雰囲気下で行ってもよく、特に制限はされないが、通常、大気中で行われる。例えば、塗布した本発明の前駆体液の固形分濃度が低い場合には、焼成に先立ち、真空乾燥や減圧乾燥等の手段によって溶媒(特定溶剤)を均一に揮散させてもよく、これにより、均一な膜を形成しやすくなる。
【0036】
本発明の製造方法においては、必要に応じ焼成した後の基板に対し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す。これにより、膜を形成するNbまたはTaドープ酸化チタンはアモルファス相からアナターゼ相に結晶転移するとともに、結晶相中に酸素欠損を生じ、導電性を向上させることができる。しかも、通常、酸素欠損を導入すると抵抗の高いルチル結晶相に変化しやすい傾向となるが、本発明においては、酸化チタンにドープしたニオブまたはタンタルが、酸素欠損を導入してもアナターゼ結晶相を安定化させる作用をなすため、得られる膜において高い導電性を発現しうる結晶状態が維持される。
【0037】
前記アニール処理の際の還元雰囲気には、特に制限はなく、例えば、窒素、一酸化炭素、アルゴンプラズマ、水素プラズマ、水素、真空、アンモニア、不活性ガス(アルゴン等)、あるいはこれらの混合ガスの雰囲気など、一般的な還元雰囲気であればよい。好ましくは、強還元雰囲気である水素雰囲気(水素ガス100%雰囲気)を採用するのがよい。
【0038】
前記アニール処理における加熱温度は、基板上に塗布し焼成されたニオブまたはタンタルをドープした酸化チタンの結晶相が高い導電性を発現するアナターゼ型に変化しうる温度であればよく、ドーパントの含有比率などに応じて適宜設定すればよい。アナターゼ結晶相に変化させるために必要な温度は、酸化チタンへのニオブまたはタンタルのドープ量が多いほど高くなるのであり、アニール処理の加熱温度の下限は、通常450℃以上、好ましくは500℃以上である。他方、加熱温度があまりに高いと、アナターゼ結晶相が抵抗の高いルチル結晶相に変化し始めて導電性が低下するとともに、膜の透明性も低下する傾向があるので、アニール処理の加熱温度の上限は、通常700℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下の範囲で設定することが望ましい。ただし、ルチル結晶相に変化し始めるときの温度は、ドーパントの含有比率によって異なるのであり、ドーパントの含有比率が比較的高い場合には、アニール処理の際の加熱温度がある程度高くても、結晶相が変化して導電性が低下することはない。具体的には、ドーパントの含有比率(形成される透明導電性膜におけるニオブまたはタンタルの含有比率)が10モル%超である場合には、前記アニール処理の加熱温度が550℃超であっても、結晶相がルチル型に変化することはなく、良好な導電性が得られる。また、アニール処理の加熱温度の設定には、上記に加えて、使用する透明基材の耐熱温度も考慮される。例えば、無アルカリガラスを透明基材として用いる場合には、通常700℃以下、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下である。アニール処理時間(加熱時間)は、加熱温度等に応じて適宜設定すればよいのであるが、通常、1分〜1時間、好ましくは3分〜30分間程度である。
【0039】
本発明の透明導電性基板は、前記本発明の前駆体液を透明基板上に塗布し、還元雰囲気下にてアニール処理を施すことにより得られるものであり、例えば、上述した本発明の製造方法によって得ることができる。かかる本発明の透明導電性基板は、ニオブまたはタンタルがドープされた酸化チタンからなる透明導電性膜が透明基板上に形成されたものである。この透明導電性膜は、アナターゼ型結晶相を有し、NbまたはTaドープ酸化チタンの多結晶体からなる薄膜であり、良好な透明性を備えると同時に、高い導電性を発現するものである。具体的には、本発明の透明導電性基板の透過率は、可視光領域で、通常70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上であり、赤外領域で、通常70%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上である。また、本発明の透明導電性基板の比抵抗は、通常9×10-3Ω・cm以下、好ましくは8×10-3Ω・cm以下である。なお、これらの透過率および比抵抗は、例えば実施例で後述する方法によって測定することができる。
【0040】
本発明の透明導電性基板は、例えば、タッチパネル、液晶ディスプレイ、LED(発光素子)、有機ELディスプレイ、フレキシブルディスプレイ、プラズマディスプレイ等のディスプレイ電極、太陽電池の電極、窓ガラスの熱線反射膜、帯電防止膜等の用途に好適に用いられる。さらに、本発明の製造方法により得られた透明導電性基板は、屈折率が高いという特長を活かして、反射防止機能を有した帯電防止膜としても有効である。
なお、上述した本発明の製造方法では、前駆体液は透明基板上に直接塗布しているが、例えば液晶ディスプレイのようなデバイス等の透明電極用途においては、透明基板の上に着色膜(カラーフィルター)等の中間膜を介在させ、それらの上に直接前駆体液を塗布するようにしてもよく、このように透明基板と透明導電性膜との間に中間膜を介在させる態様も本発明の範囲に包含される。
【実施例】
【0041】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例により限定されるものではない。
なお、以下の実施例および比較例で得られた透明導電性基板の物性は、下記の方法で測定した。
【0042】
<比抵抗> 比抵抗は、抵抗率計(三菱化学(株)製「LORESTA−GP,MCP−T610」)を用いて、四端子四探針法により測定した。詳しくは、サンプルに4本の針状の電極を直線上に置き、外側の二探針間に一定の電流を流し、内側の二探針間に一定の電流を流し、内側の二探針間に生じる電位差を測定し、抵抗を求めた。
<透過率> 透過率は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製「V−670」)を用いて、190nm〜2700nmの範囲で測定した。
【0043】
<結晶性> X線回折装置(理学電機(株)製「RINT2000」)を用いて、薄膜測定用のアタッチメントを使用して結晶性を評価した。
<結晶構造> エネルギー分散型X線マイクロアナライザー(TEM−EDX)を用いてチタンへのニオブまたはタンタルのドープ状態を調べるとともに、電界放射型電子顕微鏡(FE−SEM)を用いて結晶構造を調べた。
なお、以下の実施例および比較例において、各製造例で得たペルオキシ錯体を混合して前駆体液を得るに際しては、特に断りのない限り脱水エタノールを用いて、所望の固形分濃度となるように調整した。
【0044】
(実施例1)
まず、アルゴンガス雰囲気中でチタンテトライソプロポキシド4.0gを脱水エタノール28.5g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水8.0gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキソ化反応させた。なお、反応は、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をチタンペルオキシ錯体(a1)とした。
【0045】
他方、アルゴンガス雰囲気中でニオブペンタエトキシド1.5gを脱水エタノール19.2g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水1.6gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキソ化反応させた。なお、反応は、上記と同様に、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をニオブペルオキシ錯体(b1)とした。
【0046】
上記チタンペルオキシ錯体(a1)と、上記ニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに35モルに相当する量の塩酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度35重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
なお、混合する各ペルオキシ錯体中のチタンまたはニオブのモル量は、各ペルオキシ錯体を得るにあたり、得られた各ペルオキシ錯体の全重量中に占めるチタンテトライソプロポキシド使用量またはニオブペンタエトキシド使用量の割合(重量%)を求めておき、該割合に基づき算出した(以下の実施例、比較例においても同様)。
【0047】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。このことから、得られた前駆体液は良好な保存安定性を備えたものであることが明らかである。
【0048】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.1×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0049】
(実施例2)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに10モルに相当する量の硝酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度65重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0050】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。このことから、得られた前駆体液は良好な保存安定性を備えたものであることが明らかである。
【0051】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.2×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0052】
(実施例3)
まず、アルゴンガス雰囲気中でチタンテトライソプロポキシド4.0gを3−メトキシ−1−ブタノール50.5g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水1.6gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキソ化反応させた。なお、反応は、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をチタンペルオキシ錯体(a2)とした。
【0053】
他方、アルゴンガス雰囲気中でニオブペンタエトキシド1.5gを脱水エタノール7.1gおよび3−メトキシ−1−ブタノール12gの混合溶剤中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水1.6gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキソ化反応させた。なお、反応は、上記と同様に、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をニオブペルオキシ錯体(b2)とした。
【0054】
上記チタンペルオキシ錯体(a2)と、上記ニオブペルオキシ錯体(b2)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに100モルに相当する量の硝酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度65重量%)を添加して、固形分濃度15重量%の前駆体液を得た。
【0055】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。このことから、得られた前駆体液は良好な保存安定性を備えたものであることが明らかである。
【0056】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚60nmとなるように、スピンコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.0×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0057】
(実施例4)
実施例3と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a2)と、実施例3と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b2)とを、チタン:ニオブ=80:20(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに25モルに相当する量の硝酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度65重量%)を添加して、固形分濃度7.05重量%の前駆体液を得た。
【0058】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で14日間放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。このことから、得られた前駆体液は良好な保存安定性を備えたものであることが明らかである。
【0059】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚50nmとなるように、スピンコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.0×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0060】
(比較例1)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合して、固形分濃度7.0重量%の前駆体液を得た。
【0061】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で放置したところ、約4時間後には目視にてゲル化が観察された。つまり、得られた前駆体液の常温における使用可能な時間(可使時間)は約4時間であった。
【0062】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は5.1×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0063】
(比較例2)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに20モルに相当する量の硫酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度96重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0064】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。
【0065】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は測定限界(1×103Ω・cm以上)であり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0066】
(比較例3)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに25モルに相当する量のクエン酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度98重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0067】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。
【0068】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は測定限界(1×103Ω・cm以上)であり、透過率は、可視領域で約70%、赤外領域で約70%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0069】
(比較例4)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに20モルに相当する量のシュウ酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度98重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0070】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。
【0071】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は測定限界(1×103Ω・cm以上)であり、透過率は、可視領域で約70%、赤外領域で約70%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0072】
(比較例5)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに25モルに相当する量の乳酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度85〜92重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0073】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で1日間(24時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。
【0074】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は測定限界(1×103Ω・cm以上)であり、透過率は、可視領域で約70%、赤外領域で約70%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0075】
(比較例6)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例1と同様にして得たニオブペルオキシ錯体(b1)とを、チタン:ニオブ=93:7(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびニオブの合計を100モルとしたときに20モルに相当する量の酢酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度99.9重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0076】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で1日間(24時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。
【0077】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚35.7nmとなるように、キャピラリーコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて500℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は測定限界(1×103Ω・cm以上)であり、透過率は、可視領域で約70%、赤外領域で約70%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Nbがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0078】
(実施例5)
まず、アルゴンガス雰囲気中でタンタルペンタエトキシド1.9gを脱水エタノール19.2g中に溶解させ、得られた溶液に濃度30重量%の過酸化水素水1.6gを攪拌下で徐々に添加し、添加終了後、5分間攪拌して、ペルオキソ化反応させた。なお、反応は、上記と同様に、溶液を入れたフラスコの周囲をドライアイスで冷却しながら行い、過酸化水素水の添加によって発熱した際に溶液の内温が−10℃を超えないように制御した。このようにして得られた反応生成物をタンタルペルオキシ錯体(c1)とした。
【0079】
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、上記タンタルペルオキシ錯体(c1)とを、チタン:タンタル=70:30(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびタンタルの合計を100モルとしたときに35モルに相当する量の塩酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度35重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0080】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。このことから、得られた前駆体液は良好な保存安定性を備えたものであることが明らかである。
【0081】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚65.0nmとなるように、スピンコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて600℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は6.3×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Taがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。
【0082】
(実施例6)
実施例1と同様にして得たチタンペルオキシ錯体(a1)と、実施例5と同様にして得たタンタルペルオキシ錯体(c1)とを、チタン:タンタル=80:20(モル比)となるような割合で混合し、この混合液中のチタンおよびタンタルの合計を100モルとしたときに10モルに相当する量の硝酸(和光純薬社製、試薬特級、濃度65重量%)を添加して、固形分濃度6.5重量%の前駆体液を得た。
【0083】
得られた前駆体液を、ガラス製細口瓶に収容して、瓶の口を開放した状態で、常温(20±5℃)で4日間(96時間)放置したときの状態を目視にて観察したところ、ゲル化や白濁等を生じることなく透明な溶液状態が維持されていた。このことから、得られた前駆体液は良好な保存安定性を備えたものであることが明らかである。
【0084】
また、上記で得られた前駆体液を、透明基板(無アルカリガラス「コーニング社製1737」、厚さ0.7mm)上に、ドライ膜厚65.0nmとなるように、スピンコーターで一回塗布し、300℃で10分間焼成(プリベーク)した後、水素100%の還元雰囲気下にて600℃で60分間のアニール処理を施して、透明導電性基板を得た。
得られた透明導電性基板の比抵抗は6.1×10-3Ω・cmであり、透過率は、可視領域で約80%、赤外領域で約80%であった。また、この透明導電性基板における導電性膜の結晶相をX線回折により調べたところ、アナターゼ型であった。また、その結晶構造を、TEM−EDXおよびFE−SEMにより観察したところ、Taがドープされた酸化チタンの多結晶体であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物と(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物とを含む透明導電性膜形成用前駆体液であって、硝酸および塩酸の少なくとも一方を含有する、ことを特徴とする透明導電性膜形成用前駆体液。
【請求項2】
下記一般式(1)〜(5)のいずれかで表される溶剤をも含有する、請求項1記載の透明導電性膜形成用前駆体液。
【化1】

(式(1)中、R1〜R6は、Hまたはアルキル基を表し、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは、−OHまたは−OR(ただし、Rはアルキル基を表す)を表す。)
【化2】

(式(2)中、R1〜R5は、Hまたはアルキル基を表し、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは、−OHまたは−OR(ただし、Rはアルキル基を表す)を表す。)
【化3】

(式(3)中、R1〜R7は、Hまたはアルキル基を表し、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。Xは、−OHまたは−OR(ただし、Rはアルキル基を表す)を表す。)
【化4】

(式(4)中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のアルキレン基を表す。)
【化5】

(式(5)中、Yは、置換基を有していてもよい炭素数3〜6のアルキレン基を表す。)
【請求項3】
前記溶剤は、3−メトキシ−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、ジアセトンアルコール、4−ヒドロキシ−2−ブタノン、5−ヒドロキシ−2−ペンタノン、テトラヒドロフラン−2−カルボン酸、2−メチル−1,3−プロパンジオール、γ−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項2記載の透明導電性膜形成用前駆体液。
【請求項4】
前記(A)チタン化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物は、チタン化合物1モルに対して0.8〜1.2モルの過酸化水素を反応させたものであり、前記(B)ニオブ化合物またはタンタル化合物に過酸化水素を反応させた反応生成物は、ニオブ化合物またはタンタル化合物1モルに対して2.5〜3.5モルの過酸化水素を反応させたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の透明導電性膜形成用前駆体液。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性膜形成用前駆体液を透明基板上に塗布し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施す、ことを特徴とする比抵抗が9×10-3Ω・cm以下の透明導電性基板の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の透明導電性膜形成用前駆体液を透明基板上に塗布し、還元雰囲気下にて加熱によるアニール処理を施すことにより得られる、ことを特徴とする比抵抗が9×10-3Ω・cm以下の透明導電性基板。

【公開番号】特開2010−53355(P2010−53355A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−175705(P2009−175705)
【出願日】平成21年7月28日(2009.7.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】