説明

透明導電材料及び透明導電体

【課題】高湿度環境下であっても電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電材料及び透明導電膜を提供すること。
【解決手段】本発明は、耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、硬化性化合物とを含む透明導電材料である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明導電材料及び透明導電体に関する。
【背景技術】
【0002】
LCDや、PDP、有機EL、タッチパネル等には、透明電極が使用され、このような透明電極として、透明導電体が使用されている。透明導電体は、透明導電性酸化物材料から形成されるものであり、このような透明導電性酸化物材料は、従来、酸化錫、インジウム−錫複合酸化物、酸化インジウム、酸化亜鉛、亜鉛−アンチモン複合酸化物等の金属酸化物を用いることが知られている。
【0003】
ところが、これらの透明導電体は通常スパッタ法などで膜状に作製されるが、装置が高価であり、かつ、製膜の効率が悪く、また、その膜はひび割れし易い等の問題がある。一方、上記透明導電性酸化物材料から作られた導電粉と高分子硬化体の複合化による透明導電体も検討されており、この前記複合化透明導電体は屈曲性に優れ、ひび割れしにくい構造であることが特徴である。しかしながらこの複合化透明導電体を高湿度環境下で用いると、徐々に水分を吸収して、透明導電体自体の電気抵抗値が上昇し、さらにかかる電気抵抗値の経時的変化も大きくなる傾向にある。
【0004】
また、ここで用いられる導電粉は液相合成法によるものが多く、安価に製造できるメリットを有する反面、一般に、塩化インジウム四水和物のような分子中にハロゲンを含む塩化物を使用するため、ハロゲン元素を不純物として多く含む傾向がある。このため、液相合成法によって得られる導電粉を用いた透明導電体は、不純物の影響によって抵抗値が不安定若しくは大きくなるという問題がある。
【0005】
このため、このような透明導電体を例えばタッチパネル等に用い高湿度環境下におくと、徐々にタッチパネルの作動が不安定になる虞がある。
【0006】
そこで、水分の吸収に起因した電気抵抗値の上昇や経時的変化を抑制する透明導電材料が望まれている。例えば、導電粉を固着する高分子硬化体として、吸湿性の小さいとされているフェノキシ樹脂またはフェノキシ樹脂とエポキシ樹脂の混合樹脂、或いはポリフッ化ビニリデンを用いた光透過性導電材料が提案されている(例えば下記特許文献1、2参照)。また、導電粉として、抵抗値を安定化または低減すべく、不純物である塩素等の濃度を低減したITO導電粉末が提案されている(例えば下記特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平08−78164号公報
【特許文献2】特開平11−273874号公報
【特許文献3】特開平05−201731号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら近年では、透明導電体の更なる高信頼性を求め、高湿度環境下であっても、より電気抵抗値の変化が小さい透明導電体が求められている。
【0008】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、高湿度環境下であっても透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電材料及び透明導電体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、上記特許文献1記載の、吸湿性が小さいとされている樹脂を用いた場合も、または、上述した特許文献3に記載のITO導電粉末において、特に高湿度環境下において長期間使用されると抵抗値が上昇する場合があることを見出し、上記課題を十分に解決することができないことから、透明導電体において生じる電気抵抗値の上昇や経時的変化が、
(1)導電粉同士の接合点の切断によるもの。
(2)導電粉の劣化によるもの。
ではないかと考えた。即ち、(1)については透明導電体に水分が吸着した場合に、この導電粉を含む透明導電体が膨潤する傾向が認められることから、高分子硬化体に水分が拡散し、高分子硬化体が膨潤する結果、導電粉同士が、乖離し、当該透明導電体の電気抵抗値の上昇や経時的変化が引き起こされるのではないかと考えた。また、(2)については例えば本発明者らは高温高湿環境下のスズドープ酸化インジウム(ITO)についてX線回折を行い、X線回折スペクトルにおいてIn(OH)に相当するピークを見出した。本発明者らはこのピークに着目し、このピークに相当するIn(OH)がITO粒子間の導電パスを遮断しているために抵抗値が経時的に変化するのではないかと考えた。そして、高湿度環境下においてこのIn(OH)が生成するのは、ITO粒子が水分を吸着することによって、ITO粒子に存在している解離可能な水素原子と、ITO粒子中に不純物として含まれるハロゲン元素とが結合してハロゲン化水素が生成し、ハロゲン化水素がITO粒子をエッチングすることでインジウムがイオン化され、このインジウムイオンが水分と結び付くことによるのではないかと本発明者らは考えた。そして、本発明者らはかかる推測に基づいて更に鋭意研究を重ねた結果、以下の発明により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の透明導電材料は、耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、硬化性化合物とを含むことを特徴とする。なお、本発明において「耐水性を有する導電粉」とは、水分により、抵抗値の増加等、劣化を生じない導電粉のことをいう。また、「表面を処理」とは、導電粉表面の表面エネルギーを低下させ、撥水性または親油性を付与する処理のことをいい、例えば導電粉表面の水酸基の量を減少させることをいう。
【0011】
この透明導電材料によれば、耐水性を有する導電粉に表面処理を施した表面処理導電粉同士が接触するように且つ硬化性化合物が硬化して高分子硬化体となるように透明導電体を形成すると、この透明導電体が高湿環境下におかれても、この透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。
【0012】
上記のように、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となるメカニズムはいまだ明らかではないが、耐水性を有する導電粉を用いることによって、導電粉が水分を吸着することを抑制することができ、また、この導電粉の表面が処理されることによって、高分子硬化体中における導電粉の分散性が向上し、かつ導電粉表面と高分子硬化体の界面が密着し、高分子硬化体中の水分の拡散が抑制され、高分子硬化体の膨潤が抑制される結果、導電粉同士の乖離が十分に抑制されるためではないかと本発明者らは考えている。なお、ここでいう「高分子硬化体」とは、高分子を主成分として形成した硬化物をいう。
【0013】
上記透明導電材料において、表面処理導電粉に対して結合可能な高分子化合物又はその前駆体を更に含むことが好ましい。この透明導電材料を用いて形成した透明導電体においては、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化がより抑制される。
【0014】
本発明の透明導電材料は、耐水性を有する導電粉と、導電粉の表面を処理可能な表面処理剤と、硬化性化合物とを含むことを特徴とする。
【0015】
この透明導電材料によれば、上記表面処理剤が、耐水性を有する導電粉に表面処理を施して表面処理導電粉を形成し、これらが互いに接触するように且つ硬化性化合物が硬化して高分子硬化体となるように透明導電体を形成すると、この透明導電体が高湿環境下におかれても、この透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。
【0016】
上記透明導電材料において、上記耐水性を有する導電粉が、酸化インジウム、又は酸化インジウムに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物を含有し、かつ導電粉を1質量%含む混合液のpHを3以上とするものであることが好ましい。
【0017】
また、上記透明導電材料において、上記耐水性を有する導電粉が、酸化インジウム、又は酸化インジウムに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物を含有し、導電粉を1質量%含む混合液のpHを3未満とするものであり、かつハロゲン元素濃度が0.2質量%以下であることが好ましい。
【0018】
さらに、上記透明導電材料において、耐水性を有する導電粉が、酸化錫、又は酸化錫にアンチモン、亜鉛及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた錫複合酸化物を含有し、導電粉を1質量%含む混合液のpHを1以上とするものであり、かつハロゲン元素濃度が1.5質量%以下であることが好ましい。
【0019】
さらにまた、上記透明導電材料において、耐水性を有する導電粉が、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛にアルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた亜鉛複合酸化物を含有し、かつ導電粉を1質量%含む混合液のpHを4〜9とするものであることが好ましい。ここで、「混合液」とは、水及び導電粉からなるものをいう。
【0020】
耐水性を有する導電粉として、上記混合液のpHを上記範囲内のものとしたりハロゲン元素濃度が上記範囲内にある透明導電性酸化物材料を用いると、上記透明導電材料を用いて形成した透明導電体は、高湿度環境下においても、抵抗値の経時的変化をより防止することができる。
【0021】
上記透明導電材料において、上述した表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することが好ましい。
【0022】
このように、導電粉の表面を処理可能な表面処理剤が、末端基としてこれらの官能基を有すると、本発明の透明導電材料を用いて形成した透明導電体においては、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化がより抑制される。また、表面処理剤の末端にビニル基等があることにより、高分子硬化体中に均一に分散させることができるため、凝集したものと比較すると、ヘイズ値が低下することになる。したがって、末端にビニル基等を有する表面処理剤を用いた透明導電体は特に有用である。また均一に分散することで高分子硬化体と導電粉との接触面積が増加するので透明導電体全体の強度もより向上する。
【0023】
本発明の透明導電材料は、導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、硬化性化合物とを含む透明導電材料であって、この表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の透明導電材料は、導電粉と、導電粉の表面を処理可能な表面処理剤と、硬化性化合物とを含む透明導電材料であって、この表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする。
【0025】
これらの透明導電材料によれば、透明導電性酸化物材料として導電粉を用い、導電粉の表面を処理してなる表面処理導電粉同士が、互いに接触するように且つ硬化性化合物が硬化して高分子硬化体となるように透明導電体を形成すると、この透明導電体が高湿環境下におかれても、この透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。なお、ここで用いられる導電粉は必ずしも耐水性を必要としない。
【0026】
また、導電粉の表面を処理可能な表面処理剤が、末端基としてこれらの官能基を有すると、本発明の透明導電材料を用いて形成した透明導電体においては、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化が十分に抑制される。
【0027】
さらに、表面処理剤の末端にビニル基等があることにより、高分子硬化体中に均一に分散させることができるため、凝集したものと比較すると、ヘイズ値が低下することになる。したがって、末端にビニル基等を有する表面処理剤を用いた透明導電体は特に有用である。また均一に分散することで高分子硬化体と導電粉との接触面積が増加するので透明導電体全体の強度も向上する。
【0028】
本発明の透明導電体は、耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、高分子硬化体とを含むことを特徴とする。
【0029】
また、本発明の透明導電体は、導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、高分子硬化体とを含み、表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする。ここで、本発明における透明導電体は、膜状及び板状のものを含み、膜状透明導電体は厚みが50nm〜1mmの範囲のものをいい、板状透明導電体は厚みが1mmを超えるものをいう。
【0030】
これらの透明導電体が上記表面処理導電粉を含むことにより、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、高湿度環境下であっても、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる透明導電材料及び透明導電体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0033】
[透明導電体の第1実施形態]
まず、本発明の透明導電体の第1実施形態について説明する。
【0034】
図1は、本発明の透明導電体の第1実施形態を示す模式断面図である。図1に示すように、本実施形態の透明導電体10は、表面処理導電粉11と高分子硬化体12とを有する。表面処理導電粉11は透明導電体10の内部に充填されており、表面処理導電粉11は、高分子硬化体12に固着されている。
【0035】
透明導電体10において、表面処理導電粉11同士は互いに接しており、かつ透明導電体10の表面10a又は10bに一部の表面処理導電粉11が露出している。このため、上記透明導電体10は十分な導電性を有することが可能となる。
【0036】
表面処理導電粉11は、耐水性を有する導電粉の表面が表面処理剤で処理されてなるものである。このように導電粉の表面が処理されてなるため、表面処理導電粉11の表面に水分が吸着することを十分に抑制することができる。
【0037】
上記透明導電体10によれば、高湿環境下におかれても、透明導電体10における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。
【0038】
ここで、上記透明導電体10の製造方法について説明する。
【0039】
透明導電体10は、透明導電材料を用いて形成することができる。
【0040】
(透明導電材料の第1形態)
ここで、透明導電材料の第1形態について説明する。透明導電材料は、表面処理導電粉11と硬化性化合物とを含む。
【0041】
(表面処理導電粉)
表面処理導電粉11は、耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理することにより得ることができる。
【0042】
上記導電粉は、透明導電性酸化物材料から構成される。透明導電性酸化物材料は、透明性、導電性を有すれば特に限定されないが、かかる透明導電性酸化物材料としては、例えば、酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたものや、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛に、アルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、又はマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたもの等が挙げられる。
【0043】
耐水性を有する導電粉は、上記透明導電性酸化物材料によって異なる。すなわち、透明導電性酸化物材料が酸化インジウム、又は酸化インジウムに、錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム又はマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物である場合、耐水性を有する導電粉としては、導電粉を1質量%含む混合液のpHを3以上とするものや、導電粉を1質量%含む混合液のpHを3未満とするものであり且つハロゲン元素濃度が0.2質量%以下であるものが挙げられる。酸化錫、又は酸化錫に、アンチモン、亜鉛又はフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた錫複合酸化物である場合は、耐水性を有する導電粉としては、導電粉を1質量%含む混合液のpHを1以上とするものであり且つハロゲン元素濃度が1.5質量%以下であるものが挙げられる。酸化亜鉛、又は酸化亜鉛にアルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた亜鉛複合酸化物である場合は、耐水性を有する導電粉としては、導電粉を1質量%含む混合液のpHを4〜9とするものが挙げられる。
【0044】
このような導電粉を用いると、この耐水性を有する導電粉と高分子硬化体とを含む透明導電体は、高湿度環境下においても、抵抗値の経時的変化をより防止することができる。
【0045】
なお、上記導電粉以外の導電粉が用いられると、透明導電体10が高湿環境下におかれた場合、それぞれの導電粉が分解し、水酸化物等に変質する傾向にある。このため、このような導電粉を用いた透明導電体10においては、抵抗値が変動する傾向にある。また、この場合、体積の変動も併せて発生すると考えられるため、導電粉同士の接合点の乖離が避けられない傾向にある。
【0046】
導電粉を1質量%含む混合液のpHの調整は例えば水洗、中和、加熱による不純物の脱離等によって行うことができるが、中和、特にアンモニア水を用いた中和によって行うことが好ましい。この方法を用いることで容易に上記混合液のpHを制御できると共に、導電粉から塩素を選択的に溶出させ、導電粉中の塩素濃度を効果的に低減させることができる。
【0047】
表面処理導電粉11の平均粒径は10nm〜80nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、平均粒径が10nm以上である場合と比べて、透明導電体10の導電性が安定しない傾向にある。すなわち、本実施形態に係る透明導電材料は導電粉において生じる酸素欠陥によって導電性が発現することとなるが、導電粉の粒径が10nm未満では、例えば外部の酸素濃度が高い場合には酸素欠陥が減少し、導電性が変動する虞がある。一方、平均粒径が80nmを超えると、例えば可視光の波長領域では、平均粒径が80nm以下である場合に比べて光散乱が大きくなり、可視光の波長領域で透明導電体10の透過率が低下し、ヘイズ値が増加する傾向がある。
【0048】
また上記導電粉の比表面積は10〜50m/gであることが好ましい。比表面積が10m/g未満であると、可視光の光散乱が大きくなる傾向があり、比表面積が50m/gを超えると、透明導電材料の安定性が低くなる傾向がある。なお、ここで言う比表面積は、比表面積測定装置(型式:NOVA2000、カンタクローム社製)を用いて、試料を300℃で30分間真空乾燥した後に測定した値をいうものとする。
【0049】
(表面処理剤)
上記表面処理剤は、上記導電粉の表面を処理可能なものであれば特に限定されない。
【0050】
例えばこのような表面処理剤としては、シランカップリング剤、シラザン化合物、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ホスフォネートカップリング剤等が挙げられる。この中でもシランカップリング剤、又はシラザン化合物であることが好ましい。これらの表面処理剤は多種にわたる分子構造が存在し、適宜使用することができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0051】
上記表面処理剤としては、末端基が疎水基であるものが好ましい。この場合、透明導電体10において、表面処理導電粉11の高分子硬化体12中への分散性が向上し、結果として透明導電体10の強度や透明度が向上する。このような表面処理剤としては、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。
【0052】
上記疎水基としては、ビニル基、アルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリール基が挙げられるが、これらのうちビニル基、アルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリール基が疎水基として好ましい。この場合、疎水基が上記ビニル基等以外の基である場合に比べると、透明導電体10が高湿度環境下に置かれた場合に、電気抵抗値の上昇や経時的変化が一層抑制される。
【0053】
上記アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ステアリル基等が挙げられ、アリール基としては、例えばフェニル基、ナフチル基等が挙げられる。
【0054】
かかる疎水基は、当該表面処理剤と導電粉に含まれる水酸基との化学反応に関与しないため、得られる表面処理導電粉11は、疎水基を末端基として有することとなる。換言すれば、こうすることによって導電粉の表面を疎水化処理することが可能となる。
【0055】
また、上記疎水基がビニル基又はメチル基であると特に好ましい。言い換えると、表面処理剤としては、シランカップリング剤又はシラザン化合物からなり、末端基が疎水基としてのビニル基又はメチル基である表面処理剤が最も好ましいこととなる。
【0056】
上記疎水基がビニル基である場合、表面処理剤は、耐水性を有する導電粉のみならず、硬化性化合物とも化学的に結合させることが可能となる。従って、このような透明導電材料を用いて形成した透明導電体10においては、表面処理導電粉11と、高分子硬化体12との密着性をより高くすることができ、更に高分子硬化体12中に水分が拡散することをより一層抑制することができる。よって、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化をより一層抑制することが可能となる。
【0057】
また、表面処理剤がその末端にビニル基を有することにより、透明導電層14において、表面処理導電粉11を高分子硬化体12中に均一に分散させることができるため、表面処理導電粉11が凝集している場合と比較すると、ヘイズ値が低下することになる。したがって、末端にビニル基を有する表面処理剤を用いた透明導電体10は透明性の点で特に有用である。また表面処理導電粉11が高分子硬化体12中に均一に分散されることで高分子硬化体12と表面処理導電粉11との接触面積が増加するので透明導電体10の全体としての強度も向上する。
【0058】
さらに、上記疎水基がメチル基であると、透明導電体10における表面処理導電粉11の分散性が向上するため、いわゆるフィラーによるピン留め効果により透明導電体10の透湿性を低下させることができる。また、メチル基自体は分子構造が小さいため、導電粉同士の接合点における立体的障害の影響が最も少なく、接合点が他の疎水基と比較して確保しやすいことから、この透明導電材料を用いて形成した透明導電体10は、初期の電気抵抗値をより低減することが可能となる。
【0059】
さらに、上記表面処理剤は、その分子中にエポキシ基を含有していても良い。この場合、光反応でビニル基を反応させ、後でエポキシ基を熱で反応させることでより強固な高分子硬化体12を作ることが可能である。
【0060】
(硬化性化合物)
透明導電材料に含まれる硬化性化合物は、特に限定されない。硬化性化合物には、光硬化性化合物、熱硬化性化合物等が挙げられる。光硬化性化合物としては、光によって高分子硬化体となる有機化合物であればどのようなものでもよい。熱硬化性化合物としては、熱により高分子硬化体となる有機化合物であればどのようなものでもよい。ここで、前記有機化合物には、上記高分子硬化体を形成する際、その原料となる物質を含み、具体的にはその高分子硬化体を形成できるモノマー、ダイマー、トリマー、オリゴマー等を含む。上記硬化性化合物の中では、光硬化性化合物が好ましい。上記硬化性化合物が光硬化性化合物であると、硬化反応の制御ができ、かつ、短い所要時間で硬化させることができるため、工程管理が簡便になる利点がある。
【0061】
上記光硬化性化合物としては、ビニル基やエポキシ基、又はそれらの誘導体を含むモノマー等を好ましく用いることができる。これらは1種類単独であってもよく、2種類以上の混合物であってもよい。
【0062】
本実施形態の透明導電体において、表面処理導電粉11が、表面にビニル基等を有する場合、上記高分子硬化体として、アクリル樹脂を用いることが好ましい。この場合、上記表面処理導電粉11のビニル基と、上記アクリル樹脂とを化学的に結合させることができる。その結果、表面処理導電粉11と硬化したアクリル樹脂との密着性を更に高めることができ、アクリル樹脂の膨潤を抑制することができる。よって、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化を更に抑制することが可能となる。
【0063】
透明導電層14を構成する材料中の表面処理導電粉11の含有率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。含有率が10体積%未満であると、透明導電体10の抵抗値が高くなる傾向にあり、含有率が70体積%を超えると、膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0064】
透明導電層14は、必要に応じて添加剤を更に含有してもよい。添加剤としては、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤等が挙げられる。
【0065】
(透明導電材料の第2形態)
次に、透明導電材料の第2形態について説明する。
【0066】
上記においては、透明導電材料が、耐水性を有する導電粉を含む場合について説明したが、導電粉が特に耐水性を有するものに限定されない。この場合、表面処理剤としては、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有するものを用いる。
【0067】
この透明導電材料においては、透明導電性酸化物材料を導電粉として用い、上記表面処理剤がこの導電粉に表面処理を施して表面処理導電粉を形成し、これらが互いに接触するように且つ硬化性化合物が硬化して高分子硬化体となるように透明導電体10を形成すると、この透明導電体10が高湿環境下におかれても、この透明導電体10における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。
【0068】
上記表面処理剤は、末端基が疎水基であると、高分子硬化体への分散性という理由から好ましい。その分散性の向上により、結果として透明導電体としての膜強度の向上や透明度の向上が得られる
【0069】
かかる疎水基は、当該表面処理剤と導電粉に含まれる水酸基との化学反応に関与しないため、得られる表面処理導電粉11は、疎水基を末端基として有することとなる。換言すれば、こうすることによって導電粉の表面を疎水化処理することが可能となる。
【0070】
上記表面処理剤は、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有するものであれば特に限定されない。具体的には、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有する、シランカップリング剤、シラザン化合物、チタネートカップリング剤、アルミネートカップリング剤、ホスフォネートカップリング剤等が挙げられる。この中でもビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有する、シランカップリング剤、又はシラザン化合物であることが好ましい。これらの表面処理剤は多種にわたる分子構造が存在し、適宜使用することができる。これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0071】
また、上記末端基がビニル基又はメチル基であると更に好ましい。言い換えると、表面処理剤としては、シランカップリング剤又はシラザン化合物からなり、末端基が疎水基としてのアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基又はメチル基である表面処理剤が特に好ましいこととなる。
【0072】
上記末端基がビニル基である場合、表面処理剤は、後述する高分子硬化体と更に化学的に結合させることが可能となる。このような透明導電材料を用いて形成した透明導電体10は、表面処理導電粉11と、後述する高分子硬化体との密着性をより高くすることができ、更に高分子硬化体中に水分が拡散することをより一層抑制することができる。よって、この透明導電体は、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化をより一層抑制することが可能となる。
【0073】
また、表面処理剤の末端にビニル基等があることにより、高分子硬化体中に均一に分散させることができるため、凝集したものと比較すると、ヘイズ値が低下することになる。したがって、末端にビニル基等を有する表面処理剤を用いた透明導電体は特に有用である。また均一に分散することで高分子硬化体と導電粉との接触面積が増加するので透明導電体全体の強度も向上する。
【0074】
さらに、上記疎水基がメチル基であると、透明導電体10における表面処理導電粉の分散性が向上するため、いわゆるフィラーによるピン留め効果により透明導電体10の透湿性を低下させることができ、また、分子構造が小さいため、導電粒子の接合点における立体的障害の影響が最も少なく、接合点が他の疎水基と比較して確保しやすいことから、この透明導電材料を用いて形成した透明導電体10は、初期の電気抵抗値をより低減することが可能となる。
【0075】
さらに、上記表面処理剤は、その分子中にエポキシ基を含有していても良い。この場合、光反応でビニル基を反応させ、後でエポキシ基を熱で反応させることでより強固な高分子硬化体を作ることが可能である。
【0076】
導電粉に表面処理を施す際の表面処理液のpHは3〜7とすることが好ましい。pHが3未満であると、導電粉の表面処理剤として、例えばシランカップリング剤を用いた場合、安定性が低下する傾向にあり、具体的にはシランカップリング剤が比較的分子量の大きいオリゴマーの状態が増え、最終的にはゲル化を生じるため、上記導電粉の処理が不十分となる傾向にある。一方、pHが7を超えると、上記シランカップリング剤が同様のメカニズムによりゲル化して十分に導電粉の処理ができない傾向にある。さらに前記表面処理液のpHは、より好ましくは3〜5である。
【0077】
なお、pHを調整する際には、酢酸、希釈塩酸、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化アンモニウム、燐酸二水素一ナトリウム、燐酸一水素二ナトリウム、燐酸三ナトリウム等のpH調整剤を用いることができる。この中でも酢酸を用いることが好ましい。一方、シラザン化合物の場合は、導電粉表面の水酸基と直接反応し、結合するため、特別な前処理は必要としない。
【0078】
上述した導電粉の表面を処理する際の表面処理剤の配合量は、導電粉100質量部に対して0.1質量部〜5質量部であることが好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、導電粉の表面を十分に処理することができない傾向にあり、配合量が5質量部を超えると、導電粉の表面を処理する効果が十分に向上しない傾向にある。
【0079】
ここで、導電粉として酸化インジウムに錫をドープしたもの(以下、「ITO」という。)を用いた場合、表面処理導電粉は、例えば以下のようにして製造することができる。
【0080】
まず、塩化インジウム及び塩化錫を、アルカリを用いて中和処理することにより共沈させる(沈殿工程)。このとき副生する塩はデカンテーションや遠心分離法によって除去する。得られた共沈物に対して乾燥を行い、得られた乾燥体に対して雰囲気焼成及び粉砕の処理を行う。こうして導電粉が製造される。上記焼成の処理は、酸素欠陥の制御の観点から、窒素雰囲気中、若しくはヘリウム、アルゴン、キセノン等の希ガス雰囲気中にて行うことが好ましい。
【0081】
次に、導電粉と上述した表面処理剤とを混合して反応させる。こうして導電粉の表面を処理してなる表面処理導電粉11を得ることができる。
【0082】
上記透明導電体10は、以下のようにして製造することができる。
【0083】
まず表面処理導電粉11と、硬化性化合物とを含む透明導電材料を液体中に分散させ、分散液を得る。透明導電材料を分散させる液体としては、水、ヘキサン等の飽和炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルメチルケトン、ジイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル類、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類が挙げられる。
【0084】
次に、上記分散液を基板の一面上に塗布する。分散液の基板上への塗布方法は、特に限定されず公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール法、ダイレクトロール法、ブレード法、ナイフ法、エクストルージョン法、ノズル法、カーテン法、グラビアロール法、バーコート法、ディップ法、キスコート法、スピンコート法、スクイズ法、スプレー法が挙げられる。
【0085】
分散液中に含まれる硬化性化合物が熱硬化性化合物である場合には、乾燥後、加熱して硬化させる。これにより、基板の一面上に透明導電体10が得られることになる。
【0086】
分散液中に含まれる硬化性化合物が光硬化性化合物である場合には、乾燥後、光を照射して高分子硬化体にする。こうして透明導電体10が基板の一面上に形成される。
【0087】
こうして得られる透明導電体10は、ノイズ対策部品や、発熱体、EL用電極、バックライト用電極、タッチパネル等に好適に用いることができる。
【0088】
(透明導電材料の第3形態)
次に、透明導電材料の第3形態について説明する。
【0089】
この透明導電材料は、耐水性を有する導電粉と、導電粉の表面を処理可能な表面処理剤と、硬化性化合物とを含むものであってもよい。ここで、耐水性を有する導電粉としては第1形態の導電粉と同様のものが用いられ、表面処理剤としては、第1形態の表面処理剤と同様のものが用いられる。
【0090】
本発明の透明導電材料は、耐水性を有する導電粉と、表面処理剤と、硬化性化合物とを含んでいるが、この透明導電材料を用いて透明導電体10を形成する場合も、耐水性を有する導電粉の表面が表面処理剤で処理され、表面処理導電粉11が得られることになる。このため、表面処理導電粉11と高分子硬化体12とを含む透明導電体10が得られる。
【0091】
このように、表面処理導電粉11そのものを含む透明導電材料と、導電粉及び表面処理剤を別々に含む透明導電材料とによって同一の透明導電体10が得られる理由は、導電粉と、硬化性化合物とは反応性に乏しいことから、導電粉が上記表面処理剤と選択的に反応が起こるためであると考えられる。
【0092】
したがって、この透明導電材料によれば、この透明導電材料を用いて透明導電体10を形成し、この透明導電体10を高湿度環境下においても、透明導電体10における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。
【0093】
表面処理剤の配合量は、導電粉100質量部に対して0.1質量部〜5質量部であることが好ましい。配合量が0.1質量部未満であると、導電粉の表面を十分に処理することができない傾向にあり、配合量が5質量部を超えても、導電粉の表面を処理する効果が十分に向上しない傾向にある。
【0094】
透明導電材料中の導電粉の含有率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。含有率が10体積%未満であると、透明導電体10の抵抗値が高くなる傾向にあり、含有率が70体積%を超えると、膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0095】
この透明導電材料を用いた透明導電体10は、表面処理導電粉11と硬化性化合物とを含む透明導電材料を液体中に分散させる代わりに、導電粉と、上述した表面処理剤と、上述した硬化性化合物とを液体中に分散させたこと以外は、上記第1実施形態と同様にして製造することができる。
【0096】
(透明導電材料の第4形態)
次に、透明導電材料の第4形態について説明する。
【0097】
上記第3形態においては、透明導電材料が、耐水性を有する導電粉を含む場合について説明したが、導電粉が特に耐水性を有するものに限定されない。この場合、表面処理剤としては、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有するものを用いる。この表面処理剤としては、第2形態の表面処理剤と同様のものを用いることができる。
【0098】
(透明導電材料の第5形態)
次に、透明導電材料の第5形態について説明する。
【0099】
第5形態に係る透明導電材料は、第1形態又は第3形態の透明導電材料中に、更に表面処理された導電粉に対して結合可能な高分子化合物又はその前駆体を含むものである。この透明導電材料によれば、この透明導電材料を用いて透明導電体10を形成し、この透明導電体10を高湿度環境下においても、透明導電体10における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。
【0100】
表面処理された導電粉に対して結合可能な高分子化合物又はその前駆体は、特に限定されないが、このような高分子化合物の前駆体としては例えば、スチレン等が挙げられる。
【0101】
上記高分子化合物又はその前駆体による処理は、例えば導電粉の表面を処理可能な表面処理剤と、上述した高分子化合物又はその前駆体とを反応させて得ることができる。
【0102】
表面処理された導電粉に対して結合可能な高分子化合物又はその前駆体は、導電粉の表面にビニル基が存在している場合には、そのビニル基とスチレンを結合させて導電粉の表面を処理することができる。この場合、ビニル基とスチレンにより生成されたポリスチレン鎖が、導電粉の表面に形成され、導電粉の表面における親水性が低下し、また、ポリスチレン鎖と高分子硬化体が絡まり合うため、導電粉と高分子硬化体の密着性が向上する。また表面処理された導電粉と高分子化合物又はその前駆体とが化学的に結合することによって機械的強度が向上する。そのため、これらを含む透明導電材料は、透明導電体を形成して用いた場合に、当該透明導電体内に水分が拡散することをより抑制することができる。すなわち、高湿度環境下において、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化をより抑制することが可能となる。
【0103】
上記高分子化合物又はその前駆体は、末端基に疎水基を有することが高分子硬化体への分散性という理由から好ましい。その分散性の向上により、結果として透明導電体としての強度の向上や透明度の向上が得られる。この疎水基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ステアリル基等のアルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、又はフェニル基、ナフチル基等のアリール基であることがより好ましい。
【0104】
かかる疎水基は、当該表面処理剤と導電粉に含まれる水酸基との化学反応に関与しないため、得られる表面処理導電粉11は、疎水基を末端基として有することとなる。換言すれば、こうすることによって導電粉の表面を疎水化処理することが可能となる。
【0105】
また、上記疎水基がビニル基又はメチル基であると更に好ましい。上記疎水基がビニル基である場合、後述する疎水性高分子硬化体と更に化学的に結合させることが可能となる。このことにより、表面処理導電粉と、後述する高分子硬化体との密着性をより高くすることができ、更に高分子硬化体中に水分が拡散することを更に抑制することができる。よって、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化を更に抑制することが可能となる。
【0106】
また、表面処理剤の末端にビニル基等があることにより、高分子硬化体中に均一に分散させることができるため、凝集したものと比較すると、ヘイズ値が低下することになる。したがって、末端にビニル基等を有する表面処理剤を用いた透明導電体は特に有用である。また均一に分散することで高分子硬化体と導電粉との接触面積が増加するので膜全体の強度も向上する。
【0107】
また、上記疎水基がメチル基であると、透明導電体10における表面処理導電粉の分散性が向上するため、いわゆるフィラーによるピン留め効果により透明導電体10の透湿性を低下させることができ、また、この透明導電材料を用いて形成した透明導電体10は、初期の電気抵抗値をより低減することが可能となる。
【0108】
上記透明導電体10は、表面処理導電粉11と、硬化性化合物に、表面処理導電粉11に対して結合可能な高分子化合物又はその前駆体を加えた透明導電材料を液体中に分散させたこと以外は、上記第1実施形態と同様にして製造することができる。
【0109】
[透明導電体の第2実施形態]
次に、本発明の透明導電体の第2実施形態について説明する。
【0110】
図2は、本発明の透明導電体の第2実施形態を示す模式断面図である。図2に示すように、本実施形態の透明導電体20は、表面処理導電粉11を含む透明導電層14と、高分子硬化体12からなる高分子硬化体層15と、支持体13とを備えており、支持体13上に、高分子硬化体層15及び透明導電層14が順次積層されている。上記透明導電層14には表面処理導電粉11が充填されており、かつ表面処理導電粉11の間には、浸透した高分子硬化体12が存しており、高分子硬化体12は表面処理導電粉11を固着している。
【0111】
上記透明導電体20によれば、高湿環境下におかれても、透明導電体20における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能となる。
【0112】
この場合、表面処理導電粉11の平均粒径は10nm〜80nmであることが好ましい。平均粒径が10nm未満であると、平均粒径が10nm以上である場合と比べて、導電性が変動しやすくなる傾向がある。一方、平均粒径が80nmを超えると、透過率が低下し、ヘイズ値が増加する傾向がある。
【0113】
さらに透明導電体20における表面処理導電粉の充填率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。充填度が10体積%未満であると、透明導電体の抵抗値が高くなる傾向にあり、充填度が70体積%を超えると、膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0114】
このように、表面処理導電粉11の平均粒径及び充填率が上記範囲であると、透明導電体の透明度がより向上し、かつ初期の電気抵抗値を低減することができる。
【0115】
支持体13は、後述する高エネルギー線及び可視光に対して透明な材料で構成されるものであれば特に限定されず、公知の透明フィルムでよい。すなわち支持体13としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンフィルム、ポリカーボネートフィルム、アクリルフィルム、ノルボルネンフィルム(JSR(株)製、アートンなど)等が挙げられる。樹脂フィルムの他に、支持体として、ガラスを用いることもできる。
【0116】
透明導電体20は、例えば以下のようにして製造することができる。すなわち、まず、図示しない基板上に表面処理導電粉11を載置する。このとき、基板上には、導電粉を基板上に固定するためのアンカー層を予め設けておくことが好ましい。予めアンカー層を設けておくと、表面処理導電粉11を基板上にしっかりと固定させることができる。上記表面処理導電粉11の載置を容易に行うことができる。上記アンカー層としては、例えばポリウレタン等が好適に用いられる。
【0117】
また、基板上に導電粉を固定するためには、表面処理導電粉11を基板側に向かって圧縮して圧縮層を形成してもよい。この場合、アンカー層を形成することなく表面処理導電粉11を基板に接着することができ有用である。この圧縮はシートプレス、ロールプレス等により行うことができる。なお、この場合も、基板上に予めアンカー層を設けておくことが好ましい。この場合、表面処理導電粉11をよりしっかりと固定させることが可能である。
【0118】
上記基板としては、例えば、ガラスのほか、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のフィルムや各種プラスチック基板等が用いられる。
【0119】
次に、光硬化性化合物を圧縮層の一面上に塗布する。このとき、光硬化性化合物の一部が圧縮層に浸透することとなる。
【0120】
そして、支持体13を光硬化性化合物上に設け、このとき、光硬化性化合物としては、後述する高エネルギー線によって硬化しうるものが用いられる。図2における矢印A方向から高エネルギー線を照射することにより光硬化性化合物を硬化させ、高分子硬化体12を得る。このことにより、表面処理導電粉11内に浸透して硬化された高分子硬化体12は、表面処理導電粉11を固着して透明導電層14を形成する。また、表面処理導電粉11内に浸透しない光硬化性化合物はそのまま硬化し樹脂層15を形成する。このとき、さらに支持体13と高分子硬化体層15とが接着することとなる。
【0121】
上述した高エネルギー線は、例えば紫外線等の光であってもよく、電子線、γ線、x線等であってもよい。
【0122】
このようにA方向より高エネルギー線を照射することにより、光硬化性化合物が硬化し各層が形成されることとなる。その後基板を剥離することにより、図2に示す透明導電体20が得られる。
【0123】
本実施形態に係る透明導電材料中の、導電粉の含有率は、10体積%〜70体積%であることが好ましい。配合量が10体積%未満であると、透明導電体の抵抗値が高くなる傾向にあり、配合量が70体積%を超えると、膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0124】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0125】
例えば、上記第1形態の透明導電材料は、耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、硬化性化合物とを含んでいるが、本発明の透明導電材料は、表面処理導電粉と、前記表面処理導電粉を処理可能な高分子化合物又はその前駆体とを含むものであってもよい。
【0126】
この透明導電材料によれば、この透明導電材料を用いて第1実施形態と同様にして透明導電体を形成し、この透明導電体を高湿度環境下に置いても、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することが可能である。
【0127】
上記高分子化合物又はその前駆体は、表面処理導電粉を処理可能なものであれば特に限定されない。上記高分子化合物としては、例えばポリスチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)が挙げられる。
【0128】
上記耐水性を有する導電粉としては、第1形態における耐水性を有する導電粉と同様のものを用いることができる。
【0129】
すなわち、耐水性を有する導電粉としては、酸化インジウム、又は酸化インジウムに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物を含有し、かつ導電粉を1質量%含む混合液のpHを3以上とするものや、酸化インジウム、又は酸化インジウムに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物を含有し、導電粉を1質量%含む混合液のpHを3未満とするものであり、かつハロゲン元素濃度が0.2質量%以下であるものが用いられる。また耐水性を有する導電粉としては、酸化錫、又は酸化錫にアンチモン、亜鉛及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた錫複合酸化物を含有し、導電粉を1質量%含む混合液のpHを1以上とするものであり、かつハロゲン元素濃度が1.5質量%以下であるものも用いられる。更に、耐水性を有する導電粉としては、酸化亜鉛、又は酸化亜鉛にアルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた亜鉛複合酸化物を含有し、かつ導電粉を1質量%含む混合液のpHを4〜9とするものが用いられる。
【0130】
なお、表面処理導電粉としては、耐水性を有しないものを用いることもできる。
【0131】
この場合、表面処理導電粉を処理可能な高分子化合物又はその前駆体は、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有する。
【0132】
このように、表面処理導電粉を処理可能な高分子化合物又はその前駆体が、末端基としてこれらの官能基を有すると、本発明の透明導電材料を用いて形成した透明導電体においては、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化がより十分に抑制される。
【0133】
上記末端基は疎水基であることが好ましく、この疎水基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ターシャリーブチル基、ステアリル基等のアルキル基、アクリロイル基、メタクリロイル基等のビニル基又はフェニル基、ナフチル基等のアリール基であることが更に好ましい。
【0134】
このように上記高分子化合物又はその前駆体が末端基に疎水基を有すると、表面処理導電粉を処理可能な高分子化合物又はその前駆体と導電粉の水酸基とを化学的に結合させる際、かかる疎水基は水酸基との結合に関与しないため、得られる導電粉は、容易に表面を疎水化したものとすることができる。このことにより、表面処理導電粉を含む透明導電材料は、透明導電体を形成して用いた場合に、当該透明導電体内に水分が入り込むことを一層抑制することができる。すなわち、高湿度環境下において、透明導電体における電気抵抗値の上昇や経時的変化を一層抑制することが可能となる。
【0135】
上記疎水基はビニル基又はメチル基であることが特に好ましい。疎水基がビニル基であると、高分子化合物又はその前駆体と、導電粉との密着性をより高めることができ、更に高分子化合物中に水分が入り込むことを更に抑制することができる。よって、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化を更に抑制することが可能となる。
【0136】
また、上記疎水基がメチル基であると、透明導電体10における表面処理導電粉の分散性が向上するため、いわゆるフィラーによるピン留め効果により透明導電材料の透湿性を低下させることができ、また、この透明導電材料を用いて形成した透明導電体10は、初期の電気抵抗値をより低減することが可能となる。
【0137】
さらに、上記高分子化合物又はその前駆体の分子中にエポキシ基を含有しても良い。この場合、光反応でビニル基を反応させ、後でエポキシ基を熱で反応させることでより強固な高分子化合物を作ることが可能である。
【0138】
上記表面処理導電粉を処理可能な高分子化合物又はその前駆体は、反応可能な官能基を2つ以上有することが好ましい。官能基を2つ以上有することによって、上記面を処理可能な高分子化合物同士を架橋させることも可能となる。このため、このような透明導電材料を用いた透明導電体は、互いにより密な結合を形成する。したがって、より一層樹脂中に水分が入り込むことを抑制することができ、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化をより一層抑制することが可能となる。
【0139】
上記高分子化合物は、光硬化性化合物であることが好ましい。上記高分子化合物が光硬化性化合物であると、得られる透明導電体は、高温環境下におかれた場合、高分子化合物の膨潤がより十分に防止され、導電粉同士の間隔の拡大による透明導電体の導電性の変化をより十分に防止することができる。
【0140】
透明導電材料中の導電粉の含有率は、10体積%〜75体積%であることが好ましい。導電粉の含有率が10体積%未満であると、透明導電体の抵抗値が高くなる傾向にあり、導電粉の含有率が75体積%を超えると、膜の機械的強度が低下する傾向にある。
【0141】
上記透明導電体は、表面処理導電粉と硬化性化合物とを含む透明導電材料を液体中に分散させる代わりに、表面処理導電粉と、この表面処理導電粉を処理可能な高分子化合物又はその前駆体とを含む透明導電材料を液体中に分散させたこと以外は、上記第1実施形態と同様にして製造することができる。
【0142】
このようにして得られる透明導電体は、表面処理導電粉の表面を高分子化合物で処理した表面処理導電粉を含む構成となり、この透明導電体によれば、高湿度環境下において、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制することができる。
【0143】
また、上述した透明導電体10の製造において、硬化性化合物が熱硬化性化合物である場合には、熱硬化性化合物を溶剤に溶かしてこれを基板の一面上に塗布し、乾燥後、加熱して硬化させ透明導電体を基板の一面上に形成しているが、熱硬化性化合物を加熱により硬化して得られる高分子硬化体を溶剤に溶かして、基板の一面上に塗布し、乾燥させることによって透明導電体を基板の一面上に形成してもよい。
【0144】
さらに硬化性化合物が光硬化性化合物である場合には、光硬化性化合物を溶剤に溶かしてこれを基板の一面上に塗布し、乾燥後、光を照射して硬化させ透明導電体を基板の一面上に形成しているが、光硬化性化合物に光を照射することにより硬化して得られる高分子硬化体を溶剤に溶かして、基板の一面上に塗布し、乾燥させることによって透明導電体を基板の一面上に形成してもよい。
【0145】
また、本発明の透明導電材料は、更にアクリル樹脂等の粘度上昇剤を含有してもよい。この場合、この透明導電材料は、透明導電ペーストとして機能し得る。かかる透明導電ペーストによれば、高湿度環境下においても、電気抵抗値の経時的変化を十分に防止することができる。なお、透明導電ペーストは一定の粘性を有するため、基板に付与する際に均一に付与することができ、狭小部や凹凸部であっても容易に付与することができる。
【0146】
この透明導電ペーストは、上述した分散液に、アクリル系樹脂等の粘度上昇剤を添加し乾燥させることにより得ることができる。
【実施例】
【0147】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0148】
(導電粉の作製)
塩化インジウム四水和物(関東化学社製)19.9g及び塩化第二錫(関東化学社製)2.6gを水980gに溶解した水溶液と、アンモニア水(関東化学社製)を水で10倍に希釈したものとを調製しながら混合し、白色の沈殿物(共沈物)を生成させた。
【0149】
生成した沈殿物を含む液体を遠心分離機で固液分離し固形物を得た。これを更に水1000gに投入し、ホモジナイザーで分散して、遠心分離機で固液分離を行なった。分散及び固液分離を5回繰り返したのち、固形物を乾燥し、窒素雰囲気中、600℃で1時間加熱して、ITO粉(導電粉)を得た。このITO粉及び水から混合水を調製した。このときの混合水中に含まれる導電粉の含有率は1質量%となるようにした。そして、その混合水についてpHメーターを用いてpHを測定したところ、その混合水のpHは3.0、塩素は検出限界以下であった。
【0150】
(実施例1)
水10gに酢酸(関東化学社製)を適宜加えて、その酢酸水溶液のpHを3に調整した。この酢酸水溶液を攪拌しながら、この酢酸水溶液にシランカップリング剤1g(表面処理剤、信越化学工業社製、商品名:KBM−503)を徐々に滴下し、懸濁液を得た。この懸濁液を30分撹拌した。水50g中に上記のようにして作製したpHが3.0のITO粉100gを分散させた分散液を撹拌しながらこの分散液に上記懸濁液を徐々に滴下し、更に1時間撹拌した後、これを真空中にて120℃で1時間加熱した。放冷後、大気圧に戻すことによって、表面処理されたITO粉(表面処理導電粉)を得た。この表面処理されたITO粉(表面処理導電粉)17.75g、メタクリル酸メチル(硬化性化合物、関東化学社製)6g、アクリルポリマー(大成化工社製)6g、アセトン10g(関東化学社製)、UV重合開始剤0.24g(チバスペシャリティケミカル社製)を混合し、ホモジナイザーで分散することによって、ペースト状の透明導電材料を得た。この透明導電材料をスピンコート法にて50mm角のガラス基板に塗布後、アセトンを除去し、窒素雰囲気中でUV光を照射して透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0151】
(実施例2)
実施例1の酢酸水溶液のpHを7に調整したこと以外は実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0152】
(実施例3)
実施例1のシランカップリング剤(表面処理剤、信越化学工業社製、商品名:KBM−503)の代わりに、シランカップリング剤0.66g(表面処理剤、信越化学工業社製、商品名:KBM−1003)を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0153】
(実施例4)
実施例1のアクリルポリマーの代わりに、2官能性メタクリレートとしてのポリエチレングリコールジメタクリレートを用いたこと以外は実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0154】
(実施例5)
ヘキサン10gにヘキサメチルジシラザン1g(表面処理剤(シラザン化合物)、信越化学工業社製、商品名:HMDS)を撹拌しながら徐々に滴下し、混合液を得た。そして、この液をヘキサン30g中に分散したITO粉100g中に撹拌しながら徐々に滴下し、更に1時間撹拌した後、これを真空中で1時間加熱した(120℃)。放冷後、大気圧に戻すことによって、表面処理されたITO粉(表面処理導電粉)を得た。この表面処理されたITO粉17.75g、メタクリル酸メチル(硬化性化合物、関東化学社製)6g、アクリルポリマー(大成化工社製)6g、アセトン10g(関東化学社製)、UV重合開始剤0.24g(チバスペシャリティケミカル社製)を混合し、ホモジナイザーで分散することによって、ペースト状の透明導電材料を得た。この透明導電材料をスピンコート法にて50mm角のガラス基板に塗布後、アセトンを除去し、窒素雰囲気中でUV光を照射し、透明導電膜を得た。
【0155】
(実施例6)
実施例5の表面処理剤の代わりに、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン0.66g(表面処理剤(シラザン化合物)、信越化学工業社製、商品名:LS−7260)を用いたこと以外は実施例5と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0156】
(実施例7)
実施例1の表面処理されたITO粉(表面処理導電粉)の代わりに、実施例1の表面処理されたITO粉(表面処理導電粉)と、トルエンと、過酸化ベンゾイルと、の混合物を80℃に加熱して得られたポリスチレン修飾ITO粉を用いたこと以外は実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0157】
(実施例8)
実施例1のITO粉を酸化錫に代え、その酸化錫のpHが1.0であること以外は実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0158】
(実施例9)
実施例1のITO粉を酸化亜鉛に代え、その酸化亜鉛のpHが4.0であること以外は実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0159】
(比較例1)
実施例1の表面処理剤を用いないこと以外は、実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0160】
(比較例2)
実施例1のITO粉のpHが2.5、塩素含有率0.72質量%であること以外は、実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0161】
(比較例3)
実施例8の酸化錫のpHが1.3、塩素含有率2.56質量%であること以外は、実施例8と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0162】
(比較例4)
実施例9の酸化亜鉛のpHが3.5、塩素含有率0.07質量%であること以外は、実施例1と同様にして透明導電層を形成し、透明導電層からなる透明導電膜を得た。
【0163】
[評価方法]
(透明導電膜の抵抗評価)
上記のようにして得られた透明導電膜について、以下のようにして電気抵抗の評価を行った。すなわち、上記のようにして得られた透明導電膜の予め定められた測定点につき、四端子四探針式表面抵抗測定器(三菱化学社製MCP−T600)で電気抵抗の値を測定し、その測定値を初期電気抵抗値とした。その後、この透明導電膜を60℃95%RH環境下で2000時間放置し、それを取り出した後、この透明導電膜が室温まで下がったところで、加湿前に定めた測定点において再度電気抵抗の値を測定し、これを加湿後電気抵抗値とした。そして、下記式:
変化率=加湿後電気抵抗値/初期電気抵抗値
に基づいて変化率を算出した。得られた結果を、表1に示す。
【表1】

【0164】
表1から明らかなように、表面処理剤を用いた実施例1〜9は、表面処理剤を用いない比較例1〜4に比べて電気抵抗値変化が小さく、電気抵抗値の上昇が十分に抑制できていることが分かった。以上の結果より、本発明の透明導電材料によれば、高湿環境下であっても、電気抵抗値の上昇や経時的変化を十分に抑制できることが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0165】
【図1】本発明の透明導電膜の第1実施形態を示す模式断面図である。
【図2】本発明の透明導電膜の第2実施形態を示す模式断面図である。
【符号の説明】
【0166】
10,20・・・透明導電膜、11・・・導電粉、12・・・樹脂。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、硬化性化合物とを含むことを特徴とする透明導電材料。
【請求項2】
前記表面処理導電粉に対して結合可能な高分子化合物又はその前駆体を更に含むことを特徴とする請求項1記載の透明導電材料。
【請求項3】
耐水性を有する導電粉と、前記導電粉の表面を処理可能な表面処理剤と、硬化性化合物とを含むことを特徴とする透明導電材料。
【請求項4】
前記耐水性を有する導電粉が、
酸化インジウム、又は酸化インジウムに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物を含有し、かつ
前記導電粉を1質量%含む混合液のpHを3以上とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項5】
前記耐水性を有する導電粉が、
酸化インジウム、又は酸化インジウムに錫、亜鉛、テルル、銀、ガリウム、ジルコニウム、ハフニウム及びマグネシウムからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされたインジウム複合酸化物を含有し、
前記導電粉を1質量%含む混合液のpHを3未満とするものであり、かつ
ハロゲン元素濃度が0.2質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項6】
前記耐水性を有する導電粉が、
酸化錫、又は酸化錫にアンチモン、亜鉛及びフッ素からなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた錫複合酸化物を含有し、
前記導電粉を1質量%含む混合液のpHを1以上とするものであり、かつ
ハロゲン元素濃度が1.5質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項7】
前記耐水性を有する導電粉が、
酸化亜鉛、又は酸化亜鉛にアルミニウム、ガリウム、インジウム、ホウ素、フッ素、及びマンガンからなる群より選ばれる少なくとも1種以上の元素がドープされた亜鉛複合酸化物を含有し、
前記導電粉を1質量%含む混合液のpHを4〜9とするものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項8】
前記表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の透明導電材料。
【請求項9】
導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、硬化性化合物とを含む透明導電材料であって、
前記表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする透明導電材料。
【請求項10】
導電粉と、前記導電粉の表面を処理可能な表面処理剤と、硬化性化合物とを含む透明導電材料であって、
前記表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする透明導電材料。
【請求項11】
耐水性を有する導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、高分子硬化体とを含む透明導電体。
【請求項12】
導電粉の表面を表面処理剤で処理してなる表面処理導電粉と、高分子硬化体とを含み、
前記表面処理剤が、ビニル基、アルキル基、又はアリール基からなる末端基を有することを特徴とする透明導電体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−59722(P2006−59722A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−241587(P2004−241587)
【出願日】平成16年8月20日(2004.8.20)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】