説明

透明導電積層体

【課題】 本発明の主な目的は、湿式太陽電池作製に好適な表面抵抗の低い透明導電積層体を提供することにある。
【解決手段】 0.05〜0.25mm厚みのポリエチレンテレフタレートフィルム及び/またはポリエチレン2,6ナフタレートフィルムの少なくとも一方の面に、酸化インジウムと酸化亜鉛よりなる透明導電膜を設けた湿式太陽電池用透明導電積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式太陽電池用透明導電積層体に関する。さらに詳しくはポリエステルフィルムを用いた表面抵抗の低い湿式太陽電池に好適な透明導電積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話やモバイル用のパソコンといった移動携帯端末は、種々の方策によって、その消費電力を低減させることが試みられている。また、電力の供給源としての二次電池や燃料電池の高出力化についても、積極的な検討が実施されている。その一方で、無尽蔵にある太陽光を発電に用いる太陽電池においても変換効率の向上や移動携帯端末における二次電池への給電素子としての機能が検討されている。
【0003】
太陽電池技術は大きく3つに分類することができる。Si系太陽電池、CuInS等を用いる化合物太陽電池、そして湿式太陽電池である。このうち湿式太陽電池は、その作製工程の低温化が進んでおり、高分子フィルムのような耐熱性の乏しい基板においても、ガラス基板上のそれと同程度の変換効率を有する太陽電池を作製できる技術が形成されつつある。
【0004】
湿式太陽電池自身は、非特許文献1に示すように、発明された当初、ネサガラス上に形成されており、化学的安定性が第一に優先されていた。その一方で、透明導電膜には非常に低い表面抵抗が要求され、非特許文献1に記載された透明導電材料をそのまま、高分子フィルムで実現することは困難であった。
【非特許文献1】Nature、354(24)、737 (1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように製造コストを低減させつつ、エネルギーが生成できるという観点において、湿式太陽電池は極めて効果的なデバイスである。また、基板を高分子フィルムにすることができれば、携帯性やデザイン性を高めることができ、非常に有益なデバイスとすることができる。
これを達成するためには、高分子フィルム基板の上に、表面抵抗値が低く、且つある程度の機械的強度を有する透明導電膜を形成することが必要である。
【0006】
即ち、本発明の目的は、高分子フィルム基板の上に、面抵抗値が低く、且つ機械的強度が保たれた透明導電膜を形成した湿式太陽電池用透明導電積層体を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、湿式太陽電池を形成するに相応しい高分子フィルムとして、耐溶剤性に優れたポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレン2,6ナフタレートフィルムが適していることを見出した。加えて、表面抵抗値が低く、機械的な強度を保つような透明導電膜をDCマグネトロンスパッタリングのような方法で当該フィルムに形成した場合、高分子フィルムの剛性が高いことにより、従来では困難であった、300nm程度の膜厚においても、透明導電膜の内部応力によるクラックの発生が抑制され、さらには、膜厚の増大に伴い単調に表面抵抗を低減させることができることを見出した。
【0008】
そして本発明者らは、さらに検討を進めた結果、ポリエチレンテレフタレートフィルムやポリエチレン2,6ナフタレート上にInとZnとOからなる酸化物透明導電体を形成することで、湿式太陽電池に必要な耐溶剤性を有し、さらには、素子性能を高めるために必要な低抵抗な導電膜を得ることができ、本発明に到達したものである。
【0009】
即ち本発明は、厚み0.05〜0.25mmのポリエチレンテレフタレート及び/またはポリエチレン2,6ナフタレートの少なくとも一方の面に、酸化インジウムおよび酸化亜鉛よりなり表面抵抗が30オーム以下の透明導電膜が形成された湿式太陽電池用透明導電積層体である。また好ましくは当該透明導電膜の厚みが100〜380nmの範囲であり、当該透明導電膜が酸化亜鉛を5〜12.5重量%含有することを特徴とする湿式太陽電池用透明導電積層体である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の湿式太陽電池用透明導電積層体は、耐溶剤性の高いポリエチレンテレフタレートフィルムあるいはポリエチレン2,6ナフタレートフィルム上に表面抵抗値が30オーム以下の透明導電膜を形成することで、高分子フィルム基板を用いた湿式太陽電池を形成することを可能にする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
次に、本発明の実施の形態について順次説明していく。
本発明に使用される高分子フィルム基板材料としては、透明性が高い熱可塑性高分子であるポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン2,6ナフタレートフィルム(以下ポリエステルフィルムということがある)である。これらのフィルムは湿式太陽電池の発電機構の要になるヨウ素の電解液であるアセトニトリルのような極性溶媒に対して比較的良好な耐久性を示す。無論、イオン導電体のような非溶媒系の材料に対しては、極めて良好な耐久性を有する。これらのポリエステルフィルムは2種類を併用してもよく、2枚以上を積層して用いても良い。
【0012】
上記ポリエステルフィルムは透明性が良好であるものを用いるのがその目的から好ましい。ポリエステルフィルムの全光線透過率としては、75%以上であることが、好適である。より望ましくは80%以上である。
【0013】
上記ポリエステルフィルムは、靭性等を高めるために、フィラー等の他の成分を添加することができる。また、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン2,6ナフタレートを構成するテレフタル酸成分やナフタレン成分、エチレングリコール成分の他の酸成分、ジオール成分を少量(例えば20モル%以下)共重合したものを用いてもよい。
【0014】
上記ポリエステルフィルムは、耐熱性を確保するために延伸処理が実施されていることが望ましく、中でも2軸に延伸されていることが好ましい。このような延伸処理により、X線回折の測定結果を見ればわかるが、結晶に由来するピークを発現する。また、この結晶は熱力学的な意味での結晶というよりは、延伸過程において、ベンゼン環またはナフタレン環が配向することによって発生している。またポリエステルフィルムは、延伸処理により、示差操作型熱量計での観測に対して、実質的にガラス転移点を示さないような状態が望ましい。
【0015】
本願発明に用いるポリエステルフィルムは、その厚みが0.05〜0.25mmである。望ましくは0.1〜0.2mmである。より望ましくは0.125〜0.2mmである。0.05mm未満では、フィルムの剛性が不足し、透明導電膜の形成時にシワが入るといった不都合が生じる。一方、0.25mmを越えると、フィルムの特徴である可とう性を逸してしまい、生産性が極めて悪くなる。加えて、原材料費も高くなってしまう。
【0016】
本発明に用いるポリエステルフィルムは両面に巻き取りを円滑に行うための微細な凹凸を設けてもかまわない。この凹凸はインラインコーティングなどのコーティング層により形成することができる。コーティング層の材料としては、当該ポリエステルフィルムに対して親和性の高いエステル系やアクリル系が主として用いられ、さらに、凹凸形成のために、50〜100nm程度のナノ粒子が含まれていてもかまわない。ナノ粒子の種類は特に限定されず、無機系・有機系のいずれの材料を用いることもできる。
【0017】
本発明に用いるポリエステルフィルムの製造方法としては、例えば溶融押し出し法や溶媒キャスト法を挙げることができる。また、2枚以上積層して用いる場合には、共押出しにより製造することもできる。
【0018】
次に、本発明の湿式太陽電池用透明導電積層体の透明導電膜について述べる。かかる透明導電膜は、ポリエステルフィルムの一方の面、あるいは両面に形成されてなり、酸化インジウムと酸化亜鉛とから構成されてなり、その表面抵抗値は30オーム以下である。
【0019】
本発明の酸化インジウムと酸化亜鉛からなる透明導電膜は、酸化亜鉛が5〜12.5重量%含まれていることが望ましい。より望ましくは7.5〜10重量%である。酸化亜鉛の含有量が5重量%未満の場合、熱処理により透明導電膜の内部応力が大きくなり、透明導電積層体のカールが強くなる傾向がある。また、12.5重量%より酸化亜鉛の含有量が多くなると、透過率が低減して好ましくない。
【0020】
また、本発明における透明導電膜は、膜厚が100〜380nmであることが望ましい。より望ましくは130〜260nmである。より詳細に述べれば、透過率を高く維持するために、130nmまたは260nmにすることが好適である。100nm未満では抵抗値が大きくなってしまう。380nmを超えると膜の内部応力が臨界値に達し、透明導電膜自身の応力により、クラックが生じ機械的な特性が損なわれてしまうことがある。
【0021】
本発明の透明導電膜は、例えば蒸着法や、DCマグネトロンスパッタ法、RFマグネトロンスパッタ法、イオンプレーティング法やイオンビームスパッタ法といった手法やCVD法を用いることができるが、大面積に均一な透明導電膜を形成するという観点よりDCマグネトロンスパッタ法が好適である。
【0022】
DCマグネトロンスパッタリング法には、酸化インジウムと酸化亜鉛の全重量に対して酸化亜鉛が5〜12.5重量%添加された酸化物焼結ターゲットを用いることが好ましい。あるいは、金属インジウムに金属亜鉛を添加した合金ターゲットを用いて反応性スパッタリング法を行っても良い。このような組成のターゲットを用いることにより、得られる透明導電膜は、ターゲットの実質同じ組成のものが得られる。
【0023】
本発明では、酸化物焼結ターゲットを用いてDCマグネトロンスパッタリング法により上記透明導電膜を形成する場合は、先ず真空槽中の圧力(背圧)を一旦1.3×10−4Pa以下とし、次いで不活性ガス及び酸素を導入する。真空槽中の圧力は一旦1.3×10−4Pa以下にすることが、真空槽中に残留し、且つ透明導電層の特性に影響を与えることが懸念される分子種の影響を低減できるので好ましい。より好ましくは、5×10−5Pa以下、さらに好ましくは2×10−5Pa以下である。
【0024】
次いで導入される不活性ガスとしては、例えばHe、Ne、Ar、Kr、Xeを用いることができ、原子量の大きな不活性ガスほど形成される膜へのダメージが少なく表面平坦性が向上すると言われている。しかし、コスト面から考えてArが好ましい。この不活性ガスには膜中に取り込まれる酸素濃度を調整するために、分圧に換算して1.3×10−4〜7×10−2Pa台の酸素を添加しても構わない。さらに、酸素の他にO、N、NO、HO、NH等を目的に応じて用いることができる。
【0025】
本発明では、透明導電膜の抵抗値を調整するために、水を意図的に1.3×10−4〜3×10−2Paの範囲で導入しても構わない。この調整は、一旦真空槽を排気した後に、バリアブルリークバルブやマスフローコントローラーを用いて水を導入することで行っても良い。また、真空槽の背圧を制御することによっても実施することができる。
【0026】
本発明における水分圧を決定するときには、差動排気型のインプロセスモニターを用いても良い。またはダイナミックレンジが広く、0.1Pa台の圧力下においても計測が可能な四重極質量分析計を用いても良い。また、一般的に、1.3×10−5Pa程度の真空度においては、その圧力を形成しているのは水である。よって、真空計によって計測された値をそのまま水分圧と考えても構わない。
【0027】
本発明においては、フィルム基板としてポリエステルフィルムを用いるため、基板温度を当該フィルム基板の軟化点温度より上昇させることはまずできない。よって、透明導電膜を形成する時のフィルム基板の温度は、室温以下程度から軟化点温度以下とする必要がある。基板温度は80℃以下に保ったまま透明導電膜を形成することが好ましい。より好ましくは50℃以下の基板温度にて、さらに好ましくは20℃以下である。これは、別の観点からは、ポリエステルフィルムからのアウトガスの制御という観点からも支持される。
【0028】
本発明に用いる透明導電膜は、ポリエステルフィルムの実用温度範囲において実質的に結晶構造を示さない非晶質である。
本発明では、ポリエステルフィルムと透明導電膜の間にインラインコーティング層があってもよい。またそれ以外に、透明導電膜との密着性を向上させるために、有機材料層及び/または無機材料層からなる中間層を設けてもかまわない。
【0029】
有機材料層としては、ラクトン環を有するアクリル系樹脂を含有する樹脂層や、ウレタン系樹脂層、メラミン系樹脂層、シロキサン系樹脂層やこれらの複合体を設けることができる。有機材料層には、機械的強度を増すために、SiO、TiO、MgF等のナノ粒子を添加してもかまわない。
【0030】
有機材料層は、マイクログラビア法等の公知の手法で形成することができる。そして、紫外線や、熱を主たるエネルギー源として硬化させることができる。有機材料層の厚みは0.5〜3μm程度であり、透明なものが望ましい。
【0031】
有機材料層を設けた上に透明導電膜を形成することができるが、素子劣化を抑制するために、無機材料層を設けることができる。無機材料層としては、酸化ケイ素膜、酸化アルミニウム膜、窒化ケイ素膜、酸窒化ケイ素膜、窒化アルミニウム膜、酸窒化アルミニウム膜を形成することが望ましい。
【0032】
無機材料層は、DCマグネトロン法、RFマグネトロン法、イオンプレーティング法、CVD法等の薄膜形成法を用いることができる。代表的な酸化ケイ素膜では、膜厚は、20〜150nmの範囲で形成されることが好適であるが、20〜40nmがコスト的にも好適である。酸化ケイ素膜は、化学式SiOxで表され透明性を確保する上で非常に好ましい。また、SiOx膜のxは1.0〜1.9が好ましく、より好ましくは、1.5〜1.9、さらに好ましくは1.7〜1.9である。SiOx膜のxの決定方法はオージェ電子分光法、X線光電子分光法、ラザフォード後方散乱法等の公知の手法を用いることができる。
【0033】
かくして得られる本発明の湿式太陽電池用透明導電積層体は、透明性が良好である。全光線透過率としては、75%以上であることが、好適である。より望ましくは80%以上である。
また機械的強度としては、湿式太陽電池用透明導電積層体を40mmφに屈曲させた際に、表面にクラックが入らないことが好適である。さらに望ましくは30mmφ、極めて望ましくは20mmφである。
【実施例】
【0034】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
透明導電膜の表面抵抗値は三菱化学Loresta−MPを用いて測定した。
全光線透過率、濁度は、日本電色社製A300で測定した。
機械的強度は、25mmφに屈曲させた湿式太陽電池用透明導電積層体のクラックの発生状態を目視で観察した。
【0035】
[実施例1]
高分子フィルム基板として、200μm厚みの帝人デュポンフィルム社製2軸延伸ポリエチレン2,6ナフタレートフィルム(Q65A)を用いた。このフィルムの一方面にはコーティングによる凹凸層が敷設されており、この凹凸層の上に、次の手順で透明導電膜を形成した。真空槽の背圧を1.3E−5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7E−3Paであった。
【0036】
酸化亜鉛を7.5重量%含む、In−Zn−Oからなる焼結ターゲットに2W/cmの電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度20℃で260nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
透明導電膜の表面抵抗は13Ω/□であった。透過率は81%であった。透明導電膜のクロスカットの結果は100/100であった。また、25mmφに屈曲させたがクラックは発生しなかった。
【0037】
[実施例2]
高分子基板として、200μm厚みの帝人デュポンフィルムズ社製2軸延伸ポリエチレン2,6ナフタレートフィルム(Q65A)を用いた。実施例1と同様に、次の手順で透明導電膜を形成した。真空槽の背圧を1.3E−5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7E−3Paであった。
【0038】
酸化亜鉛を7.5重量%含む、In−Zn−Oからなる焼結ターゲットに2W/cmの電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度20℃で130nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
透明導電膜の表面抵抗は28Ω/□であった。透過率は86%であった。透明導電膜のクロスカットの結果は100/100であった。また、25mmφに屈曲させたがクラックは発生しなかった。
【0039】
[実施例3]
高分子基板として、188μm厚みの帝人デュポンフィルムズ社製2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OFW)を用いた。実施例1と同様に、次の手順で透明導電膜を形成した。真空槽の背圧を1.3E−5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7E−3Paであった。
【0040】
酸化亜鉛を7.5重量%含む、In−Zn−Oからなる焼結ターゲットに2W/cmの電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度20℃で260nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
透明導電膜の表面抵抗は13Ω/□であった。透過率は81%であった。透明導電膜のクロスカットの結果は100/100であった。また、25mmφに屈曲させたがクラックは発生しなかった。
【0041】
[実施例4]
高分子基板として、188μm厚みの帝人デュポンフィルムズ社製2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム(OFW)を用いた。実施例1と同様に、次の手順で透明導電膜を形成した。真空槽の背圧を1.3E−5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7E−3Paであった。
【0042】
酸化亜鉛を7.5重量%含む、In−Zn−Oからなる焼結ターゲットに2W/cmの電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度20℃で130nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
透明導電膜の表面抵抗は28Ω/□であった。透過率は86%であった。透明導電膜のクロスカットの結果は100/100であった。また、25mmφに屈曲させたがクラックは発生しなかった。
【0043】
[比較例1]
高分子基板として、200μm厚みの帝人デュポンフィルムズ社製2軸延伸ポリエチレン2,6ナフタレートフィルム(Q65A)を用いた。実施例1と同様に、次の手順で透明導電膜を形成した。真空槽の背圧を1.3E−5Paとし、反応ガスとして酸素を導入し、さらに不活性ガスとして、Arを導入し、全圧を0.4Paとした。四重極質量分析計にて測定した、不活性ガスを導入する前の水分圧は電離真空計にて読み取った真空槽の背圧と同じであった。酸素分圧は2.7E−3Paであった。
【0044】
酸化錫を10重量%含む、In−Sn−Oからなる焼結ターゲットに2W/cmの電力密度でDCマグネトロンスパッタリング法により、基板温度20℃で260nmの膜厚の透明導電膜を形成し透明導電積層体を製造した。
透明導電膜の表面抵抗は17Ω/□であった。透過率は81%であった。透明導電膜のクロスカットの結果は100/100であった。また、25mmφに屈曲させたがクラックは発生し、湿式太陽電池を作製する際にクラックが生じた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、低い表面抵抗値が必要な湿式太陽電池用基板に好適な透明導電積層体を供給することができ、さらに当該透明導電積層体は、湿式太陽電池用基板を作製する際にクラックが入り難いという特徴を有し、ポリエチレンテレフタレートフィルム及び/またはポリエチレン2,6ナフタレートフィルムを利用する湿式太陽電池作製のスループット向上に寄与することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.05〜0.25mmのポリエチレンテレフタレートフィルム及び/またはポリエチレン2,6ナフタレートフィルムの少なくとも一方の面に、酸化インジウムと酸化亜鉛からなり、かつ表面抵抗が30オーム以下の透明導電膜を有する湿式太陽電池用透明導電積層体。
【請求項2】
当該透明導電膜の厚みが100〜380nmの範囲にある請求項1記載の湿式太陽電池用透明導電積層体。
【請求項3】
当該透明導電膜が酸化亜鉛を5〜12.5重量%含有することを特徴とする請求項1または2記載の湿式太陽電池用透明導電積層体。

【公開番号】特開2006−114263(P2006−114263A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−298648(P2004−298648)
【出願日】平成16年10月13日(2004.10.13)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】