説明

透明性に優れた生分解性防曇シート及びその製造方法

【課題】透明性に優れたポリ乳酸系生分解性防曇シート及びシートの傷付き発生を低減する防曇コーティング方法を通じて優れた防曇性能を保有可能な、環境にやさしい生分解性防曇シート及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の透明性に優れた生分解性防曇シートは、シート基材としてはポリ乳酸99.9〜90.0重量部と脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体よりなる群から選ばれた1種以上からなる組成物0.1〜10.0重量部からなり、前記シート基材から成形されたシートの片面または両面に防曇コーティング層が0.01〜1g/mにて形成されているものであることを特徴とする。
上記のように構成される本発明の透明性に優れた生分解性防曇シートはポリ乳酸系生分解性防曇シートであって、ポリ乳酸を主成分とし、脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体が付加されることから、透明性と生分解性に優れており、且つ、柔軟性と耐衝撃性に優れており、防曇コーティング液が塗布されて得られることから、得られたシートが優れた耐傷付き性を保有してトレイ成形後にも優れた防曇性を維持し続けることが可能になり、実用化に適した生分解性防曇シートを提供することができるだけではなく、上記した優れた特性を有する透明性に優れた生分解性防曇シートを容易に製造可能な方法を提供するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れ、且つ、防曇性の向上した生分解性防曇シート及びその製造方法に係り、さらに詳しくは、透明性に優れたポリ乳酸系の生分解性防曇シート及びシートの傷付き発生を低減する防曇コーティング方法を通じて優れた防曇性能を保有可能な、環境にやさしい生分解性防曇シート及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、合成プラスチックは、優れた物性と共に安価でかつ軽量であるという特性から現代人の生活においてはなくてはならない包装材となり、全世界において種々の用途で使われている。しかしながら、上記した特性を有する合成プラスチックは、その長所でもあり短所でもある、よく分解されないという問題により環境汚染の問題が段々深刻になってきている。このため、最近、各国においてこれに対する解決策を模索しようとする関心を集めている。すなわち、従来には合成プラスチック処理のために埋め込み、焼却及び再生という方法を主として活用してきたが、これらの方法では環境汚染の問題を完全に解決することはできなかった。
【0003】
このため、現在には、使用済みのプラスチックが自ら分解可能になるように製造する、いわゆる分解性のプラスチックの開発に関心が集中している。現在、種々の技術により、かつ、種々の原料から種々の分解性プラスチックが開発されてきており、これらの中でもポリ乳酸(以下、「PLA」と称する。)はL−乳酸の発酵法の開発のおかげで大量でかつ安価に製造されており、堆肥化条件において分解速度が速く、カビに対する抵抗性、食品に対する耐着臭性など優れた特性を保有して、その利用分野の範囲が拡大している。PLAは、現在、各国において用途に適した特性を与えるために種々の試みがなされている。しかしながら、PLAを単独で使用する場合、PLAの脆い易い特性によりフィルムやシートなどの柔軟性が求められる用途に向いている樹脂であるとは言えない。このため、PLAを用途に合うように使用するためには、PLA以外の物質を用いて物性を改質することが求められる。一般に、樹脂を軟質化する技術としては、可塑剤の添加、コポリマー化、軟質ポリマーのブレンド化などの方法がある。可塑剤やコポリマー法は柔軟性を十分に与えることはできるものの、樹脂組成物のガラス転移温度を低下させ、且つ、可塑剤のブリード発生の問題などの理由から実用化するには問題点がある。一方、ブレンド化方法は簡単に実用化することができ、PLAの特性を大幅に損傷させないことから好適である。PLAに適したブレンド樹脂としては、生分解性を考慮すれば、脂肪族ポリエステルや芳香族−脂肪族ポリエステルが好適であり、これらのブレンド適用による従来の技術としては、日本三井社製のPLAとポリブチレンサクシネート(PBS)、澱粉、可塑剤からなる組成物特許(例えば、下記の特許文献1参照)、日本三菱社製のPLAと脂肪族ポリエステルからなる組成物特許(例えば、下記の特許文献2参照)、日本ユニチカ社製のPLAと芳香族−脂肪族ポリエステル、可塑剤などからなるフィルム特許(例えば、下記の特許文献3参照)、日本資生堂社製のPLAとPBSからなる容器特許(例えば、下記の特許文献4参照)、イレ化学社製のPLAと脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルからなる組成物特許(例えば、下記の特許文献5参照)及びPLAと脂肪族ポリエステルからなる組成物特許(例えば、下記の特許文献6参照)、ヨーロッパNOVAMONT社製のPLAと脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルからなる組成物特許(例えば、下記の特許文献7参照)及びPLAと脂肪族ポリエステル、ポリカプロラクトン(PCL)からなる組成物特許(例えば、下記の特許文献8参照)などがある。これらの技術は単にPLAと脂肪族ポリエステル及び芳香族−脂肪族ポリエステルをブレンドさせる以外にも、不足した物性を強化するためにその他の可塑剤、無機充填剤、澱粉などを混合し、場合によっては、PLAの含量よりも脂肪族ポリエステル及び芳香族−脂肪族ポリエステルの含量の方がさらに高くなっており、PLAの固有特性、特に、透明性を維持し難いという問題がある。また、PLAの適用が最も活発になされている食品包装用のトレイ分野において求められる核心事項は、トレイの表面に霜の発生を抑える防曇機能の付与であり、防曇機能の付与方法としては、一般に、防曇成分のシート内部添加法、防曇成分のシート表面コーティング法などがある。シート内部添加法の場合、経時による防曇成分のブリードアウト現象及び白濁発生の問題により使用に不向きであるため、一般に、コーティング法により防曇機能を付与している。PLA防曇シートの場合、生分解性コーティング剤となる脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールからなる脂肪族ポリエステルを通じてのコーティング法があるが(例えば、下記の特許文献9参照)、PLAの固有特性である透明性を阻害するという短所があり、ポリビニルアルコールの親水性を用いた方法も提案されているが(例えば、下記の特許文献9、10参照)、これらは耐傷付き性及び防曇持続性などにおいて長時間効力を発揮することができないという短所がある。これらの他に、水分散されたコポリエステルを用いたコーティング方法が提案されているが(例えば、下記の特許文献11参照)、これもまた塗布量による透明性の低下及びコポリエステルの食品安定性についての言及がなく、実用化するには無理がある。さらに、既存の食品安定性の保証された防曇コーティング剤の場合、一般に、界面活性剤としては4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が用いられ、これらの界面活性剤に種々のバインダーをブレンドさせる方法により製造している。しかしながら、これらの防曇剤の場合、ほとんど耐傷付き性が不足してシートに防曇コーティングを行った状態においては優れた防曇性を保有するが、トレイ成形工程間に発生した傷付き領域において防曇性が低下するという問題があり、改善が望まれるのが現状である。
【特許文献1】特開平11−241008号公報
【特許文献2】特開平11−124495号公報
【特許文献3】特開平14−327107号公報
【特許文献4】特開平13−039426号公報
【特許文献5】大韓民国特許第0428687号公報
【特許文献6】大韓民国特許公開公報第2001−0045677号公報
【特許文献7】EP1227129
【特許文献8】EP1227130
【特許文献9】大韓民国特許公開公報第1996−004395号公報
【特許文献10】特開平9−221555号公報
【特許文献11】アメリカ特許第4、127、682号公報
【特許文献12】大韓民国特許第0722516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明は、上記の如き従来のPLA防曇シートの問題点を解消するためになされたものであり、その目的は、特に、優れた透明性及び耐傷付き性を与えることから、トレイ成形後でも十分な防曇機能を保有する生分解性防曇シートを提供するところにある。
【0005】
本発明の他の目的は、上記の如き優れた透明性及び耐傷付き性を有してトレイ成形後にも十分な防曇機能を保有する生分解性防曇シートを容易に製造可能な方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の透明性に優れた生分解性防曇シートは、シート基材としてはポリ乳酸99.9〜90.0重量部と脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体よりなる群から選ばれた1種以上からなる組成物0.1〜10.0重量部からなり、前記シート基材から成形されたシートの片面または両面に防曇コーティング層が0.01〜1g/mにて形成されているものであることを特徴とする。
【0007】
本発明の他の構成によれば、前記ポリ乳酸は、乳酸を重合させて得られるものであり、本発明に用いられるポリ乳酸の場合、L−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸から構成され、数平均分子量は10、000以上であって、これらのポリ乳酸は単独または複合して使用可能であることを特徴とする。
【0008】
本発明のさらに他の構成によれば、前記脂肪族ポリエステルは、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としては、ROOC(CH)nCOOR’(R、R’は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアリールエステル誘導体から構成される群から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH)n−OH(nは2以上の整数である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールからなる群や、下記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールなどからなる群が使用可能であることを特徴とする。
【0009】
【化1】

【0010】
式中、RはC〜Cのアルキレン基であり、RはC〜Cのアルキル基である。
【0011】
本発明のさらに他の構成によれば、前記芳香族−脂肪族ポリエステルは芳香族成分としてROOC−Ar−COOR’(R、R’は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体であって、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2、6−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのアルキレンエステルよりなる群から選ばれた1種以上であり、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としてはROOC(CH)nCOOR’(R、R’は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアーリルエステル誘導体よりなる群から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH)n−OH(nは2以上の整数である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールよりなる群や上記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールなどよりなる群が使用可能であることを特徴とする。
【0012】
本発明のさらに他の構成によれば、前記ポリ乳酸共重合体はジカルボン酸またはその誘導体からなる単位と脂肪族グリコール類からなる単位から構成された組成物であり、ジカルボン酸またはその誘導体としてはL−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸、ROOC(CH)nCOOR’(R、R’は水素またはアルキル基であり、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアーリルエステル誘導体、ROOC−Ar−COOR’(R、R’は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2、6−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのアルキレンエステルよりなる群から選ばれた1種以上であり、脂肪族グリコール類はHO−(CH)n−OH(nは2以上である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールよりなる群や、上記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールよりなる群が使用可能である。
【0013】
本発明のさらに他の構成によれば、前記防曇コーティング層は、好ましくは、バインダーとしてアクリル樹脂を用いた界面活性剤からなる防曇コーティング剤100重量部に対して耐傷付き性を向上可能なフッ素樹脂3〜50重量部からなる防曇コーティング液により形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに他の構成によれば、前記界面活性剤としては4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が1種以上含まれたものを使用することを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の構成によれば、前記フッ素樹脂は、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂、フルオリネーテッドエチレンプロピレン共重合体、エチレンテトラフルオロエチレン系樹脂から選ばれたものであることを特徴とする。
【0016】
本発明のさらに他の構成によれば、前記防曇コーティング液は、固形分が0.1〜10.0重量%であることを特徴とする。
【0017】
前記他の目的を達成するための本発明の耐傷付き性の向上した生分解性防曇シートの製造方法は、ポリ乳酸樹脂99.9〜90.0重量部と脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体よりなる群から選ばれた1種以上からなる組成物0.1〜10.0重量部からなる樹脂を溶融・押出後にスリップ型ダイを通じて吐き出させてシートを製造するステップと、上記のステップにおいて製造されたシートのコーティングされた面にコロナ放電処理を行うステップと、界面活性剤からなる防曇剤100重量部とポリテトラフルオロエチレン系樹脂、フルオリレーテッドエチレンプロピレン共重合体またはエチレンテトラフルオロエチレン系樹脂から選ばれたフッ素樹脂3〜50重量部を混合して防曇コーティング液を製造するステップと、前記ステップにおいて製造された防曇コーティング液を前記コロナ放電処理の行われたシートの片面または両面に塗布するステップと、前記ステップにおける塗布処理後、60〜100℃熱風乾燥工程において10〜30秒かけて塗布されたコーティング液を乾燥するステップと、を含むことを特徴とする。
【0018】
前記さらに他の目的を達成するための本発明の優れた防曇機能を有するトレイは、前記本発明による生分解性防曇シートから成形されたものであることを特徴とする。
【0019】
前記本発明による生分解性防曇シートは、その製造工程において、その他の添加物としては2次加工性を高める目的で可塑剤としてエーテルエステル系可塑剤やオキシ酸エステル系、グリコール系可塑剤を添加することが可能であり、具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール、グリセリン(グリセロール)、メトキシポリエチレングリコール、トリ−n−ブチルシトレートなどがある。これら混合物の2種類以上を混合して用いることも可能である。
【0020】
また、核剤としては、シートの透明性を維持可能な有機核剤が使用可能であり、有機核剤としてはアミド結合を有する脂肪族カルボン酸アミドを含んでなる有機化合物であって、カプリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミドなどの炭素数8〜30の脂肪族カルボン酸モノアミドや、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスベヘニン酸アミド、エチレンビスアイソステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、ブチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレアノール酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘニン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミドなどの脂肪族カルボン酸ビスアミドなど(分子内にアミド結合を有する脂肪族アミド類である。)であり、前記有機核剤は1種を単独で用いるか、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
また、フィルムとして成形時に溶融張力を低下させる目的で架橋剤が用いられるが、この樹脂に添加可能な架橋剤としては有機過酸化物化合物、金属錯剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などが用いられる。
【0022】
この他に用途に応じて、紫外線防止剤、抗菌/抗臭剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、帯電防止剤、酸化防止剤などの物質を添加物として用いることができる。
【発明の効果】
【0023】
上記のように構成される本発明の透明性に優れた生分解性防曇シートはポリ乳酸系生分解性防曇シートであって、ポリ乳酸を主成分とし、脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体が付加されることから、透明性と生分解性に優れており、且つ、柔軟性と耐衝撃性に優れており、防曇コーティング液が塗布されて得られることから、得られたシートが優れた耐傷付き性を保有してトレイ成形後にも優れた防曇性を維持し続けることが可能になり、実用化に適した生分解性防曇シートを提供することができるだけではなく、上記した優れた特性を有する透明性に優れた生分解性防曇シートを容易に製造可能な方法を提供するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を詳述する。
【0025】
上記のように、本発明は、透明性に優れた生分解性防曇シートに関するものであり、用いられるシート基材は、ポリ乳酸とポリ乳酸を除く脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体からなるシートである。ポリ乳酸単独からなるシートの場合、優れた光学的な特性がそのまま発現される形態や、ポリ乳酸の短所である脆い易い特性によりトレイ成形過程やトレイの流通過程において衝撃による割れ現象が発生することがある。このようにポリ乳酸の耐衝撃性を強化するために、本発明においては、ポリ乳酸に脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体を適量混合してシートを押し出すが、この場合、ポリ乳酸を除く脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体の適用によるシートの耐衝撃性の向上及び透明性低下の問題を同時に考慮しなければならないため、適当な投入量に調節することが特に重要である。脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸共重合体のいずれを用いるとしても、10.0重量部以上を投入する場合、シートの透明性を確保することが困難である。このため、脂肪族ポリエステルの場合に10.0重量部以下、芳香族−脂肪族ポリエステルの場合に5.0重量部以下、ポリ乳酸共重合体の場合に10.0重量部以下にすることがシートの優れた透明性を維持する上で最適である。逆に、シートの柔軟性を適切に与えるためには、脂肪族ポリエステルの場合に少なくとも1.0重量部以上、芳香族−脂肪族ポリエステルの場合に少なくとも0.1重量部以上、ポリ乳酸共重合体の場合には少なくとも1.0重量部以上が投入されなければ、柔軟性と耐衝撃性の向上を達成することができない。脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステル、ポリ乳酸共重合体のいずれを適用しても構わないが、ポリ乳酸共重合体と脂肪族ポリエステルの方が、芳香族−脂肪族ポリエステルに比べてポリ乳酸との相溶性が優れていることから、透明性の側面から有利であり、これに対し、芳香族−脂肪族ポリエステルの場合、柔軟性の側面からポリ乳酸共重合体と脂肪族ポリエステルに比べて有利である。このため、脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体:芳香族−脂肪族ポリエステルが2:1の割合にて用いられることが最も好ましい。
【0026】
本発明による防曇コーティング層は、アクリル系樹脂、界面活性剤、フッ素樹脂からなる。前記防曇コーティング層について詳述すると、この防曇コーティング層は、シートの片面または両面に塗布され、アクリル系樹脂をバインダーとして用いた界面活性剤100重量部にフッ素樹脂3〜50重量部からなる。前記アクリル系樹脂はアクリルを含む各種のコポリマーであって、1種以上が使用可能である。界面活性剤は4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が1種以上含まれたものとして用いられる。
【0027】
フッ素樹脂はシートの耐傷付き性及び耐溶剤性を高めるために添加されるものであり、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン、ペルフッ化アルキルビニルエーテル共重合体、3フッ化エチレン、6フッ化プロピレン共重合体、エチレン4フッ化エチレン共重合体、クロロ3フッ化エチレン、4フッ化エチレン共重合体、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどがあり、好ましくは、テトラフルオロエチレンを用いる。一方、添加されるフッ素樹脂の量はアクリル系樹脂をバインダーとして用いた界面活性剤100重量部に対してフッ素樹脂3〜50重量部であってもよい。もし、フッ素樹脂の添加量が3重量部未満であれば、耐傷付き性が低下され、50重量部を超えると、シートの透明性が低下し、防曇性能が低下するという問題が発生することがある。
【0028】
上述した本発明の防曇コーティングは、コーティング液の製造時に全体のコーティング液100重量部に対して固形分の含量が0.1〜10.0重量部になるように製造されることが好ましく、より好ましくは、固形分の含量が1.0〜5.0重量部になるように製造可能である。前記固形分の含量が0.1重量部未満であれば、コーティング層の被膜形成及び帯電防止機能を発現するのに十分ではなく、10.0重量部を超えると、フィルムの透明性に影響してしまい、好ましくない。
【0029】
一方、前記帯電防止コーティング液に用いられる溶媒は、好ましくは、実質的に水を主媒体とする水性コーティング液である。本発明に用いられるコーティング液は塗布性の向上、透明性の向上などの目的として、本発明の効果を損なわない程度の適量の有機溶媒を含んでいてもよい。例えば、イソプロピルアルコール、ブチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブ、エチルセロソルブ、アセトン、エタノール、メタノールなどを好適に用いることができる。しかしながら、コーティング液中に多量の有機溶媒を含有させると、インラインコーティング法に適用する場合に乾燥、延伸及び熱処理工程において爆発の危険性があるため、その含有量はコーティング液中に10重量部以下であり、好ましくは5重量部以下である。
【0030】
コーティング工程はシートの少なくとも片面または両面に製造された防曇コーティング液を塗布して防曇コーティング層を形成する。具体的に、防曇コーティング液を塗布する方法には特に制限はないが、メイヤバー方式、グラビア方式、スプレイ方式などが用いられ、塗布する前にシート表面に極性基を導入してコーティング層とシートとの接着性や塗布性を向上できるようにコロナ放電処理を行うことが好ましい。
【0031】
また、防曇コーティング液の安定性、濡れ性及び塗布レベルの向上のために、エタノール、イソプロパノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール類、エチルセロソルブ、t−ブチルセロソルブなどのエーテル類、メチルエチルケトン、アセトンなどのケトン類、ジメチルエタノールアミンなどのアミン類を1種以上混合して用いることができる。
【0032】
また、前記生分解性シートの厚さは、通常、100〜2000μm、好ましくは、300〜1000μmに製造可能である。
【0033】
上記のようにして製造されたシートは透明であり、且つ、塗布面の水接触角が20°以下を示し、傷付きの発生も大幅に改善される。
【0034】
上述したように、本発明は、ポリ乳酸とポリ乳酸以外の脂肪族ポリエステル及び/または芳香族−脂肪族ポリエステル及び/またはポリ乳酸共重合体からなる生分解性シート基材の片面または両面に防曇コーティング液を塗布してなる耐傷付き性が強化した防曇コーティング層によりシートの透明性、柔軟性、防曇性、耐傷付き性などを備えた実用化に適した優れた透明性を保有する生分解性防曇シートを提供する。
【0035】
以下、本発明を下記の実施例及び比較例により詳述するが、本発明の範疇をここに限定するものではない。
【0036】
まず、本発明の説明のために必要となる測定及び評価方法は、下記の如き条件下で行った。
【0037】
(1)透明性;
ヘーズ測定器(AUTOMATIC DIGITAL HAZEMETER、日本電飾社製)に10cm×10cm角にサンプリングした試料1枚を垂直におき、垂直に置かれた試料の直角方向に400〜700nmの波長を有する光を透過させて得られた値を測定した。
【0038】
このとき、ヘーズ値は下記の数式1で算出された。
【0039】
【数1】

【0040】
(2)柔軟性;
同じ条件で製造された横5cm、縦5cmシート試片の10個の試料を90℃以上10回繰り返して折り返し、割れが0%〜10%の場合には○、50%以下の場合には△、50%を超える場合には×とした。
【0041】
(3)水接触角;
接触角測定器(Kyowa Interface Science Co.、Ltd.;型番Dropmaster 300)を用い、イオン交換水を蒸留して得た精製水で液滴法により水接触角を測定し、異なる個所において5回測定後、平均値を取った。
【0042】
(4)防曇性;
同じ条件で製造された横7cm、縦7cmシート試片の防曇コーティング面を50℃温度のお湯で充填されたカップの上に載せる。この後、30分間放置しながらシートに曇りの度合いをもって評価し、シートに水滴がなければ◎、一部に水滴が結ばれると○、小さな水滴が多数見られると△、シートの全面に曇りがあれば×とした。
【0043】
(5)耐傷付き性;
直径10μmの鋼鉄ブラシでシートを擦って傷付き発生の有無を目視により観察し、不良または良好として評価した。
【0044】
実施例1
N.WLLC社製のPLA樹脂95kg、ポリ乳酸共重合体(DIC社製のPD−150)5.0kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行い、生分解性シートを製造した。コロナ処理された面に防曇コーティング液によりアクリルコポリマーバインダーに両性系統の界面活性剤からなる防曇剤(タケモトオイル社、ELECUT−C−031−K)100重量部、フッ素樹脂としてテトラフルオロエチレン(デュポン社製、SLA−NEW)3重量部で水に混合して防曇コーティング液を製造した。このとき、固形分の含量は全体の防曇コーティング液に対して1.5重量部を含有するようにした。前記防曇コーティング液をグラビアコーティング方式を用いて前記製造された生分解性シートに塗布した。塗布後、60〜100℃熱風乾燥工程において10〜30秒間塗布されたコーティング液を乾燥させてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0045】
実施例2
N.WLLC社製のPLA樹脂97kg、ポリブチレンサクシネート−アジペート(PBSA)3kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行うことにより生分解性シートを製造した以外は、実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0046】
実施例3
N.WLLC社製のPLA樹脂99kg、ポリブチレンアジペート−テレフタレート(PBAT)1kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行うことにより生分解性シートを製造した以外は、実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0047】
実施例4
防曇コーティング液としてアクリルコポリマーバインダーに両性系統の界面活性剤からなる防曇剤(タケモトオイル社製、ELECUT−C−031−K)100重量部、フッ素樹脂としてテトラフルオロエチレン(デュポン社製、SLA−NEW)50重量部で水に混合して防曇コーティング液を製造した以外は、実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0048】
実施例5
防曇コーティング液としてアクリルコポリマーバインダーに両性系統の界面活性剤からなる防曇剤(タケモトオイル社製、ELECUT−C−031−K)100重量部、フッ素樹脂としてテトラフルオロエチレン(デュポン社製、SLA−NEW)50重量部で水に混合して防曇コーティング液を製造した。このとき、固形分の含量は全体の防曇コーティング液に対して2.5重量部を含有するようにした以外は、実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0049】
比較例1
N.WLLC社製のPLA樹脂100kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行うことにより生分解性シートを製造した以外は、実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0050】
比較例2
N.WLLC社製のPLA樹脂85kg、ポリ乳酸共重合体(DIC社製PD−150)15.0kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行うことにより生分解性シートを製造した以外は実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0051】
比較例3
N.WLLC社製のPLA樹脂85kg、ポリブチレンサクシネート−アジペート(PBSA)15.0kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行うことにより生分解性シートを製造した以外は実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0052】
比較例4
N.WLLC社製のPLA樹脂85kg、ポリブチレンアジペート−テレフタレート(PBAT)15.0kgで溶融押出後、スリップ型ダイを通じて吐き出させて300μm厚さのシートを製造し、コーティングされるシート面にコロナ放電処理を行うことにより生分解性シートを製造した以外は実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0053】
比較例5
防曇コーティング液の製造時にフッ素樹脂を添加しない以外は、実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0054】
比較例6
防曇コーティング液としてアクリルコポリマーバインダーに両性系統の界面活性剤からなる防曇剤(タケモトオイル社製、ELECUT−C−031−K)100重量部、フッ素樹脂としてテトラフルオロエチレン(デュポン社製、SLA−NEW)100重量部で水に混合して防曇コーティング液を製造した以外は実施例1の方法と同様にしてシートを製造した。製造されたシートを通じて透明性、柔軟性、水接触角、防曇性、耐傷付き性を測定し、その結果を下記表1に示す。また、このシートを真空成形及び切断を通じてトレイを成形し、成形されたトレイの断面を通じて透明性と防曇性を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
以上、本発明は記載された実施例についてのみ上述に記述されているが、本発明の技術的な思想の範囲内において種々の変形及び修正が可能であることが当業者にとって明らかであり、このような変形及び修正が特許請求の範囲に属することは当然なことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材としてはポリ乳酸99.9〜90.0重量部と脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体よりなる群から選ばれた1種以上からなる組成物0.1〜10.0重量部からなり、前記シート基材から成形されたシートの片面または両面に防曇コーティング層が0.01〜1g/mにて形成されているものであることを特徴とする透明性に優れた生分解性防曇シート。
【請求項2】
前記ポリ乳酸は、L−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸から構成され、数平均分子量は10、000以上であって、これらのポリ乳酸は単独または複合して使用可能であることを特徴とする請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルは、ROOC(CH)nCOOR’(R、R’は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造のジカルボン酸またはその誘導体から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH)n−OH(nは2以上の整数である。)構造のジオール又はポリアルキレングリコールや下記の一般式(1)で表わされる構造の脂肪族2価アルコールよりなる群が使用されることを特徴とする請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート;
【化1】

式中、RはC〜Cのアルキレン基であり、RはC〜Cのアルキル基である。
【請求項4】
前記芳香族−脂肪族ポリエステルは芳香族成分としてROOC−Ar−COOR’(R、R’は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体から選ばれた1種以上であり、脂肪族成分としてはROOC(CH)nCOOR’(R、R’は水素またはアルキル基、nは2〜14の整数である。)構造のジカルボン酸またはその誘導体から選ばれた1種以上であり、グリコール類はHO−(CH)n−OH(nは2以上の整数である。)構造のジオール又はポリアルキレングリコールや下記の一般式(1)で表わされる構造の脂肪族2価アルコールよりなる群が使用されることを特徴とする請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート;
【化1】

式中、RはC〜Cのアルキレン基であり、RはC〜Cのアルキル基である。
【請求項5】
前記ポリ乳酸共重合体はジカルボン酸またはその誘導体からなる単位と脂肪族グリコール類からなる単位から構成された組成物であり、ジカルボン酸またはその誘導体としてはL−乳酸、D−乳酸またはL、D−乳酸、ROOC(CH)nCOOR’(R、R’は水素またはアルキル基であり、nは2〜14の整数である。)構造を有するコハク酸、グルタミン酸、マロン酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ノナンジカルボン酸とこれらのアルキルまたはアーリルエステル誘導体、ROOC−Ar−COOR’(R、R’は水素またはアルキル基)構造のジカルボン酸またはその誘導体としてテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレン2、6−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン酸ジカルボン酸、ジフェニルメタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、またはこれらのアルキレンエステルよりなる群から選ばれた1種以上であり、脂肪族グリコール類はHO−(CH)n−OH(nは2以上である。)構造を有するエチレングリコール、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオールやプロピレングリコール、1、4−シクロヘキサンジオール、ヘキサメチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、テトラメチレングリコールから構成されるアルキレングリコールやポリアルキレングリコールよりなる群や、上記の一般式(1)で表わされる分枝構造を形成可能な脂肪族2価アルコールである1、2−プロパンジオール、1、2−ブタンジオール、1、3−ブタンジオール、1、2−ペンタンジオール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、2−ヘキサンジオール、1、3−ヘキサンジオール、1、4−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、1、2−オクタンジオール、1、3−オクタンジオール、1、4−オクタンジオール、1、5−オクタンジオール、1、6−オクタンジオールよりなる群が使用されることを特徴とする請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート;
【化1】

式中、RはC〜Cのアルキレン基であり、RはC〜Cのアルキル基である。
【請求項6】
前記防曇コーティング層は、バインダーとしてアクリル樹脂を用いた界面活性剤からなる防曇コーティング剤100重量部に対してフッ素樹脂3〜50重量部からなる防曇コーティング液により形成されたものであること特徴とする請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート。
【請求項7】
前記界面活性剤としては4級アンモニウム塩、アルキルスルファート、アルキルスルホネート、アルキルホスホネート、両性系統が1種以上含まれたものを使用することを特徴とする請求項6に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート。
【請求項8】
前記フッ素樹脂は、ポリ4フッ化エチレン、4フッ化エチレン、エチレン4フッ化エチレン共重合体、ポリ4フッ化エチレン 共重合体等のテトラフルオロエチレン系樹脂であることを特徴とする請求項6に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート。
【請求項9】
前記防曇コーティング液は、固形分が0.1〜10.0重量部であることを特徴とする請求項6に記載の透明性に優れた生分解性防曇シート。
【請求項10】
ポリ乳酸樹脂99.9〜90.0重量部と脂肪族ポリエステル、芳香族−脂肪族ポリエステルまたはポリ乳酸共重合体よりなる群から選ばれた1種以上からなる組成物0.1〜10.0重量部からなる樹脂を溶融・押出後にスリップ型ダイを通じて吐き出させてシートを製造するステップと、上記のステップにおいて製造されたシートのコーティングされた面にコロナ放電処理を行うステップと、界面活性剤からなる防曇剤100重量部とポリテトラフルオロエチレン系樹脂、フルオリレーテッドエチレンプロピレン共重合体またはエチレンテトラフルオロエチレン系樹脂から選ばれたフッ素樹脂3〜50重量部を混合して防曇コーティング液を製造するステップと、前記ステップにおいて製造された防曇コーティング液を前記コロナ放電処理の行われたシートの片面または両面に塗布するステップと、前記ステップにおける塗布処理後、60〜100℃熱風乾燥工程において10〜30秒かけて塗布されたコーティング液を乾燥するステップと、を含むことを特徴とする請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シートの製造方法。
【請求項11】
請求項1に記載の透明性に優れた生分解性防曇シートから成形されたものであることを特徴とする生分解性防曇トレイ。

【公開番号】特開2009−263416(P2009−263416A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−111387(P2008−111387)
【出願日】平成20年4月22日(2008.4.22)
【出願人】(504244069)トーレ セハン インク (7)
【Fターム(参考)】