説明

透明飲料用のカルシウム強化物質

水中に十分に溶け、水中に何らの曇りもなく基本的に溶解するカルシウムおよびリン酸塩を含む組成物が提供される。その組成物は、カルシウムおよびリン酸塩が強化されている透明な飲料を提供するために使用することができる。そのカルシウムおよびリン酸塩組成物を製造する方法も提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1態様において、本発明は、十分に水に溶け、水中で何の曇りもなく溶解するカルシウムおよびリン酸塩を含む組成物を対象とする。別の態様において、本発明は、上記の組成物を製造するための方法を対象とする。その組成物は、カルシウムおよびリン酸塩を強化した透明飲料を提供するために使用することができる。
【背景技術】
【0002】
本出願は、その全体の内容が参照により本明細書に組み込まれる2006年6月9日出願の米国特許仮出願第60/812215号に対する35U.S.C.§119(e)のもとでの優先権を主張するものである。
【0003】
カルシウムは、食餌における必須要素である。カルシウムは、骨および歯の成分の1つとしての構造的役割を果たす。それはまた、いくつかの生理系、例えば、とりわけ、血液凝固、細胞膜透過性の調整および筋収縮などにおける必須要素である。カルシウムは常に分泌されており、体はカルシウムを合成することができないため、ヒトは、体のカルシウムに対する1日の所要量を提供する十分な食事性カルシウムを摂取しなければならない。
【0004】
食事性カルシウムを吸収して利用するヒトの能力は、かなり変動し、食餌の他の成分が強く作用する。例えば、個人が高タンパク質の食事を食べた場合、一般的には、食物中に存在するカルシウムのおよそ15%が体によって吸収される。他方で、タンパク質が非常に少ない食餌の場合、吸収される食事的カルシウムは約5%にすぎない。食餌中の他の因子も類似の作用を有する可能性がある。リン代謝は、カルシウム代謝と密接に連関しており、一方の濃度が他方の吸収に影響を及ぼす。カルシウムまたはリン酸塩のいずれかが体に過剰に存在する場合、体は過剰な成分を分泌するため他方の分泌も増加する。
【0005】
リンは体のあらゆる細胞で見出されるが、リンの大部分は、骨および歯の中のカルシウムとの関連で見出される。リン酸塩の形をしている体内のリンのおよそ10%は、タンパク質、脂質、炭水化物およびDNA中の核酸と結合して存在する。体内のリンの他の10%は、体全体の多種多様の化合物中に幅広く分布している。
【0006】
健康な骨は、カルシウムとリン酸塩を必要とする。骨の鉱質部分は、ヒドロキシアパタイトとして知られるリン酸カルシウムから成る。健康な骨は、ヒドロキシアパタイトの溶解および再結晶の過程を通して常に再編成されている。適切に機能するために、この過程は、カルシウムおよびリン酸塩の恒常的なソースを必要とする。
【0007】
カルシウムとリン、特にリン酸塩の両方を強化した安定していて魅力があり低コストの製品をつくる有能な食品製造業者は、ヒトの栄養のために必要なカルシウムとリンを提供することに貢献できることは明らかである。実際に、食品製造業者らは、彼等の製品をリン酸カルシウムにより強化することを望んでいる。しかし、既存のリン酸カルシウムの本質のために、カルシウムまたはリンの追加は、食品の味、外観およびその他の感覚器官を刺激する性質に影響を及ぼす可能性がある。
【0008】
飲料、特に透明飲料のリン酸カルシウム強化は、溶解性が十分でないか不溶性のリン酸カルシウムの飲料への添加によって引き起こされる曇り(濁り)およびその他の影響のために一般的ではなかった。既存のリン酸カルシウムの飲料中での使用は、オレンジジュースまたはトマトジュースなどのリン酸カルシウムの添加によって引き起こされる曇りまたは濁りがその飲料の外観に著しく影響しない濁った飲料に限定されている。濁った飲料でさえ、ヒドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウムの添加は、飲料の特性に作用し得る。例えば、ヒドロキシアパタイトは、カラーボディーを吸収することができ、トマトジュースの場合、変質させ、色を変化させる。実際は、曇っていることが望ましいいくつかの場合には、リン酸カルシウムは、流動助剤としてのその機能に加えて曇り剤として使用される。これは、自然に発生する飲料が濁っているいくつかの乾燥粉末配合物(即ち、果汁濃度があるか無しかのフレーバー飲料)の場合である。透明飲料については、既存のリン酸カルシウムは、それらは飲料が濁る原因となるために使用することはできない。
【0009】
第一リン酸カルシウム一水和物、即ちCa(HPO−HO(「MCP−1」)は、水に十分に溶けない。例えば、米国特許第4871554号の表VIに示されているように、MCP−1は、水中で曇った溶液を生じる。これは、MCP−1が第二リン酸カルシウムに対して熱力学的に不安定であり、それがある程度その酸性度に支配されて第二リン酸カルシウムに分解されるためである。第二リン酸カルシウムは不溶性であり曇りが観察されることにつながる。
【0010】
第二リン酸カルシウム、即ちCaHPOは、本質的に水に不溶性である。そのKspは、25℃で1.83×10−7である(参照:J.C.エリオット、「The Structure and Chemistry of the Apatites and Other Calcium Orthophosphates」、6頁(1994年)、Elsevier社)。リン酸三カルシウムCa10(PO(OH)として商業的に知られ、より正確にはヒドロキシアパタイトとして知られる材料は、水に不溶性である。そのKspは、6.62×10−126である(参照:J.C.エリオット、「The Structure and Chemistry of the Apatites and Other Calcium Orthophosphates」、6頁(1994年)、Elsevier社)。本明細書でリン酸三カルシウムと呼ばれるとき、それはヒドロキシアパタイトのX線粉末パターンを示す材料であると理解されたい。
【0011】
リン酸カルシウムの溶解度をpHの関数として示している国際公開第98/32344号の表2もまた参考にすることができる。この表は、3つの既知のリン酸カルシウムはすべてpHレベルが3.5に下がるまで不溶性であることを示している。
【0012】
カルシウム強化飲料の外観の問題を打開するため、製造業者によっては有機酸のカルシウム塩を単独または他のカルシウム塩との組合せで使用している。しかし、これらは費用がかかり、飲料の望ましくないフレーバー性の原因になる可能性がある。
【0013】
飲料のカルシウム強化を提供するために用いられたこれまでの組成物は、さまざまな欠点または不都合を有する。例えば、米国特許第4851243号は、ミルクを加えた製品のカルシウム強化のためにリン酸カルシウムを使用することについて記載している。この用途においては飲料の透明性についての必要性は重要ではない。しかし、ミルク飲料中に不溶性のリン酸カルシウムを懸濁させるために、カラギーンおよびグァーなどの親水コロイドの添加を必要とする。
【0014】
米国特許第4871554号は、リン酸三カルシウム−乳酸カルシウムの75%/25%の割合(塩からの全体のカルシウムに対する重量で)のブレンドの使用について記載している。その特許は、そのブレンドを水に分散させてそのカルシウム塩を部分的に溶解させ、次いで柑橘類を含むジュースを加えて残りのカルシウム塩の溶解に影響を与えることを記載している。この特許の目的は、透明ではないオレンジまたはその他の柑橘類ジュースのカルシウム強化である。その上、主張されているカルシウム補充は、対照ジュースのpHを3.80から4.28に増大することを示している。該特許はpHのこの変化は飲料のフレーバー性に対して影響はないことを主張しているが、他のジュースにおいて、この規模の変化は際立ったものであり得る。
【0015】
乾燥粉末化した飲料混合物の調製のための水酸化カルシウムと有機酸との混合物が米国特許第6833146号に記載されている。この特許は、その混合物が水に加えるとかなりの程度まで分散し溶解することを述べている。その特許は、さらに、その水酸化カルシウムは、それが有機酸と急速に反応して、形成されたカルシウム塩の過多の沈殿を含まない飲料を生み出すように正確に選択しなければならないことを述べている。この参考文献に記載されている飲料は透明ではなく、純粋なフルーツジュースの使用に基づくものではない。
【0016】
米国特許第3968263号は、低いpH飲料における歯の脱ミネラル化を阻止し、かつ/または脱ミネラル化に役立たせるために飲料中にリン酸カルシウムを供給するリン酸三カルシウムの乾燥飲料中への添加について記載している。その特許は、TCPおよび適当な酸味料の添加は、飲料中に曇った懸濁液をもたらし得ることを述べている。これは通常透明なフルーツジュースにおいては望ましくない。その特許に記載されている2.8〜3.3のpH値の酸性飲料へのTCPの添加は、望ましくない曇った外観をもたらすことは当業者には知られている。
【0017】
国際公開第98/32344号は、カルシウム源としてのグリセロリン酸カルシウムの使用について記載している。グリセロリン酸カルシウムは、水に非常によく溶ける。それは無水ベースで約19%m/mの比較的高いカルシウム含量を有する。しかし、グリセロリン酸カルシウムは、水性の液体または飲料のpHを上げ、そのpHを許容レベルまで下げて戻すためには酸を添加しなければならない。従って、グリセロリン酸カルシウムのアルカリ度は、カルシウム強化飲料のコストを増加させる第2成分の添加を必要とする。
【0018】
米国特許第6242020号は、特にミルクを標的にした飲料の強化のためのカルシウム錯体の製剤について記載している。記載されているその製剤は、マイナスに帯電した乳化剤と組み合わされたカルシウム源に基づいている。その製剤は、また、有機酸または無機酸も含むことができる。その特許は、そのカルシウム錯体を、タンパク質の凝固がなく、飲料の質感の変化無しでミルクの強化に使用できることを述べている。そのカルシウム錯体は飲料それ自体中または独立して調製される。そのカルシウム錯体の懸濁に役立たせるために乳化剤が添加される。ミルクは不透明な飲料であるのでその錯体はミルクの濁りの原因とはならないが、ミルクのpHレベルでリン酸カルシウムが溶解できないことは明らかである。
【0019】
国際出願番号PCT/US2004/022655(国際公開第2005/06882号)は、酸溶液に溶解し、次いで飲料にカルシウムを補うためにそれを用いるリン酸三カルシウム組成物について記載している。この出願に記載されているように、リン酸三カルシウム中のカルシウム有価物は、クエン酸、マレイン酸、フマル酸およびリン酸のような酸の溶液中に溶解することによって溶解できるようにされる。TCPが酸溶液中に溶解した時点で、その溶液を次にカルシウム強化のための飲料に加えることができる。この2段階の方法は、独特のフレーバーを飲料に加えることができる有機酸の使用を含む。その上、質量基準で主として水から成る溶液の添加は飲料を希釈し、従ってフレーバーの強度を希釈する効果を有し得る。
【0020】
米国特許出願公開第2006/0246200号は、溶液中にカルシウムイオンおよびリン酸イオンを含有する発泡性溶液を製造するためのグリシンホスフェートおよびグリシンシトレートの炭酸カルシウムとの組成物について記載している。この出願は、形成されたリン酸カルシウムが可溶化され、フレーバー、甘味料などが添加された後、透明な飲料が製造されることを説明している。その可溶性組成物は、カルシウムイオンの溶解性を維持するために溶液中にクエン酸イオンを必要とする。そのグリシンホスフェートおよびグリシンシトレートの使用は、飲料にかなりの費用を追加し、場合によっては添加した有機酸が飲料のフレーバー性を変える可能性がある。
【0021】
米国特許第2332735号は、飲料用途で使用するための第一リン酸カルシウムへの酒石酸、クエン酸、マレイン酸などの有機酸の添加について記載している。その有機酸の添加は、MCP−1が飲料中で完全に溶解することを可能にする。この特許は、リン酸カルシウムを完全に可溶化し、第二リン酸カルシウムの形成を防ぐためにキレート酸を添加する必要性を強調している。有機酸は高価であり、飲料のフレーバー性を変える可能性がある。
【0022】
米国特許第1851210号は、リン酸および溶解したカルシウムが豊富な溶液を形成するための水によるトリプルスーパーホスフェート肥料の抽出について記載しており、それは、不溶性部分を取り、水でさらにもう一度抽出し、2番目の抽出物を石灰で処理してDCPを生成させ、次にそのDCPを最初の抽出物で処理し、それによって最初の抽出物の遊離のリン酸をMCP−1に転化する。その文献は、リン酸により処理されたDCPが、ハイアッセイ(high assay)肥料として使用するためのMCP−1を製造できることを教示している。
【0023】
米国特許第2514973号は、第一リン酸カルシウムにその水中の溶解性を増すためにリン酸を添加することを記載している。MCPへのリン酸の添加は、過剰のリン酸を含む粒状生成物をもたらす。その特許はその生成物が15〜18%の遊離のリン酸を含むことを語っている。この過剰のリン酸は、その生成物の溶液のpHを非常に低いレベルに下げる。その生成物の実験的再現において、その生成物の1%溶液のpHは、2.7のpH値を与えた。飲料用途において、この生成物の使用は、飲料に対して許容できるレベルまでpHを上げるためにアルカリ性材料の添加を必要としよう。これは受け入れ難いほど飲料のコストを増大させる。
【0024】
米国特許第4454103号に記載されている類似の生成物においては、過剰のリン酸を含むMCP−1生成物が、リン酸をそのリン酸の95〜99%が中和されるまで酸化カルシウムにより不十分に中和することによって調製されている。この中和反応に由来する生成物は、次に水で水和され、次いでその過剰の水は加熱によって除去される。この特許に記載されている方法は、過剰のリン酸を含む最終の第一リン酸カルシウムを生じるために多くのステップを必要とする。さらに、酸化カルシウムの使用は、酸不溶性物質(通常はシリカ)を含まない石灰を許容範囲の価格では入手できないために最終製品中に不溶性物質をどうしてももたらす可能性がある。従って、酸化カルシウムの使用は、一般に、飲料のカルシウム強化に使用する場合、容認できないほど高いレベルの不溶性物質を含む材料をもたらす。その上そのような過剰のリン酸の添加は、受け入れ難いほどコストを増大させる。その製品は、発泡性の乾燥飲料において酸味の源として有用であることが主張されている。透明飲料におけるその使用について実施例は提供されておらず、特許は何も触れていない。
【0025】
米国特許出願公開第2007/0003671号および第2007/0003672号は、第一リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムおよび乳酸カルシウムの混合物または第二リン酸カルシウムおよび乳酸カルシウムの混合物の使用について記載している。これらのリン酸カルシウムが飲料中に不溶性であろうことは当業者には明らかである。このことは、これらの出願が、その本質によって濁っている飲料のオレンジジュースのカルシウム強化を対象としているので、それらに対して不利ではない。
【0026】
ほとんどの飲料のpHは、およそ2〜7の範囲に入る。フルーツジュースは、およそ3〜4の範囲のpH値の範囲を有する。飲料の強化は、pHまたはフレーバーに影響を及ぼすべきではない。実際、飲料のフレーバー性は、その飲料のpHおよび酸性度に強く依存する。従って、有用な強化剤は、pHを変えないが、さもなければ、pH値を最適の範囲に戻すために酸を添加しなければならない。付加される複雑さおよびコストならびにこれらの他の追加された材料の影響は望ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0027】
【特許文献1】国際公開第98/32344号
【特許文献2】米国特許第4871554号明細書
【特許文献3】米国特許第6833146号明細書
【特許文献4】米国特許第3968263号明細書
【特許文献5】米国特許第6242020号明細書
【特許文献6】国際公開第2005/06882号
【特許文献7】米国特許出願公開第2006/0246200号明細書
【特許文献8】米国特許第2332735号明細書
【特許文献9】米国特許第1851210号明細書
【特許文献10】米国特許第2514973号明細書
【特許文献11】米国特許第4454103号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2007/0003671号明細書
【特許文献13】第2007/0003672号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0028】
安価であり、透明で安定した飲料をもたらし、飲料のフレーバー性に影響を与えず、かつ取り扱いおよび使用するのが容易である飲料、特に透明飲料におけるカルシウムとリン酸塩の補足のための固体組成物に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0029】
1態様において、本発明は、何らの目につく濁り無しで水に容易に溶解するカルシウムおよびリンを含む組成物に関する。その組成物のX線回折は、第一リン酸カルシウム一水和物および/または第一リン酸カルシウム無水物が、その組成物中に存在する唯一の結晶化合物であることを示す。その他の非結晶化合物もまたその組成物中には存在し得る。その組成物は、第二リン酸カルシウムまたはリン酸三カルシウムのいずれか1つをリン酸と混合し、その混合した物質をそれらが反応することを可能にする十分な時間混ぜることによって製造することができる。そのリン酸カルシウムは、無水または水和した形をしていることができる。別法では、その組成物は、最初に第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよびリン酸三カルシウムの2つ以上を混合してブレンドを形成し、次にリン酸カルシウムのそのブレンドをリン酸と混合し、その混合した物質をそれらが反応することを可能にする十分な時間混ぜることによって製造することができる。その得られた物質は、目に見える濁り無しで水に容易に溶解するさらさらした固体である。
【0030】
本発明は、また、その組成物を飲料に溶解することによってカルシウムおよび/またはリンを強化する飲料の強化方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、何らの目につく濁り無しで水に容易に溶けるカルシウムおよびリンを含む組成物に関する。その組成物は、カルシウムまたはリンの補足物質として用いることができるさらさらした固体である。飲料にカルシウム補足物質として使用する場合、その組成物は、その飲料のフレーバー、pHまたは色相を著しく変えることはない。
【0032】
その組成物は、第二リン酸カルシウムまたはリン酸三カルシウムのいずれか1つをリン酸と混合し、その物質をそれら物質が反応することを可能にする十分な時間混ぜることによって製造することができる。そのリン酸カルシウムは、水和物または無水物の形のものであり得る。別法では、第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウムおよび/またはリン酸三カルシウムの組合せはリン酸と混合し、それらの物質が反応することを可能にする十分な時間混ぜることができる。
【0033】
本発明の1実施形態においては、第二リン酸カルシウムをリン酸と混合して該組成物を製造する。好ましい実施形態においては、無水第二リン酸カルシウムが用意され、リン酸をその第二リン酸カルシウムにその間ずっと混ぜながら加える。好ましくは、85%のリン酸をその第二リン酸カルシウムに加える。その材料は、通常の混合装置を用いて混ぜることができる。最終の混合物中において混合される第二リン酸カルシウムのリン酸に対する割合は、好ましくは、47.5:52.5〜56.0:44.0の間である。85%リン酸は、好ましくは約30分と2時間の間の完全な混合を可能にする十分な時間、ほぼ一定速度で第二リン酸カルシウムに加えることができる。すべてのリン酸が添加された後、その混合は、好ましくは約30分と2時間の間の時間続けることができる。その材料は、その方法が熱を発生し、混合した材料の温度を上げる原因となり得るが、周囲温度で混合することができる。
【0034】
本発明の別の実施形態においては、水和第二リン酸カルシウムを、リン酸と混合して該組成物を製造する。好ましい実施形態において、第二リン酸カルシウム二水和物(CaHPO−2HO)を用意し、リン酸をその第二リン酸カルシウム二水和物にその間ずっと混ぜながら加える。好ましくは、85%リン酸をその第二リン酸カルシウム二水和物に加える。その材料は、通常の混合装置を用いて混ぜることができる。最終の混合物中において混合される第二リン酸カルシウム二水和物のリン酸に対する割合は、好ましくは、47.5:52.5〜56.0:44.0の間である。85%リン酸は、好ましくは約30分と2時間の間の完全な混合を可能にする十分な時間、ほぼ一定速度で第二リン酸カルシウム二水和物に加えることができる。すべてのリン酸が添加された後、その混合は、好ましくは約30分と2時間の間の時間続けることができる。その材料は、その方法が熱を発生し、混合した材料の温度を上げる原因となり得るが、周囲温度で混合することができる。
【0035】
本発明の別の実施形態においては、リン酸三カルシウムを、リン酸と混合して該組成物を製造する。この実施形態においては、リン酸三カルシウムを用意し、リン酸をそのリン酸三カルシウムにその間ずっと混ぜながら加える。好ましい実施形態においては、85%リン酸をそのリン酸三カルシウムに加える。その材料は、通常の混合装置を用いて混ぜることができる。最終の混合物中において混合されるリン酸三カルシウムのリン酸に対する割合は、好ましくは、38:62〜42:58の間である。85%リン酸は、好ましくは約30分と2時間の間の完全な混合を可能にする十分な時間、ほぼ一定速度でリン酸三カルシウムに加えることができる。すべてのリン酸が添加された後、その混合は、好ましくは約30分と2時間の間の時間続けることができる。その材料は、その方法が熱を発生し、混合した材料の温度を上げる原因となり得るが、周囲温度で混合することができる。
【0036】
必要に応じて、第二リン酸カルシウムまたはリン酸三カルシウムの一部をリン酸に予め溶解することができる。これは酸の酸性度の幾分かを中和するため、100%リン酸基準に対して加えられる酸の量は同じであろうが、追加の量を加える必要性を生じるかもしれない。
【0037】
第二リン酸カルシウムまたはリン酸三カルシウムに加えられるリン酸が、85%未満の濃度である場合、十分にさらさらな固体物質を得るために、その方法に乾燥ステップを追加することが必要となり得る。この場合、最終製品は、100℃での重量減が1%未満であるように好ましくは乾燥させる。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態においては、第二リン酸カルシウムおよびリン酸三カルシウムの混合物をリン酸と混合して該組成物を製造する。好ましい実施形態において、第二リン酸カルシウムとリン酸三カルシウムとのブレンドを用意し、その第二リン酸カルシウム/リン酸三カルシウムのブレンドにリン酸をその間ずっと混ぜながら加える。その第二リン酸カルシウムとリン酸三カルシウムとは、そのブレンド中の2つのリン酸塩の任意の割合で用意することができる。好ましい実施形態においては、85%リン酸をその第二リン酸カルシウム/リン酸三カルシウムのブレンドに加える。そのリン酸と第二リン酸カルシウム/リン酸三カルシウムのブレンドとは、通常の混合装置を用いて混ぜることができる。最終の混合物中において混合される第二リン酸カルシウム/リン酸三カルシウムのブレンドのリン酸に対する割合は、好ましくは、38:62〜42:58の間である。85%リン酸は、好ましくは約30分と2時間の間の完全な混合を可能にする十分な時間、ほぼ一定速度で第二リン酸カルシウム/リン酸三カルシウムのブレンドに加えることができる。すべてのリン酸が添加された後、その混合は、好ましくは約30分と2時間の間の時間続ける。その材料は、その方法が熱を発生し、混合した材料の温度を上げる原因となり得るが、周囲温度で混合することができる。
【0039】
本発明のさらに別の実施形態においては、第一リン酸カルシウムをリン酸と混合して該組成物を製造する。第一リン酸カルシウムを用意し、その第一リン酸カルシウムにリン酸をその間ずっと混ぜながら加える。好ましい実施形態においては、85%リン酸をその第一リン酸カルシウムに加える。そのリン酸と第一リン酸カルシウムとは、通常の混合装置を用いて混ぜることができる。最終の混合物中において混合される第一リン酸カルシウムのリン酸に対する割合は、好ましくは、43:57〜47:53の間である。85%リン酸は、好ましくは約30分と2時間の間の完全な混合を可能にする十分な時間、ほぼ一定速度でその第一リン酸カルシウムに加えることができる。すべてのリン酸が添加された後、その混合は、好ましくは約30分と2時間の間の時間続けることができる。その材料は、その方法が熱を発生し、混合した材料の温度を上げる原因となり得るが、周囲温度で混合することができる。
【0040】
注目すべきは、本発明は、リン酸がリン酸カルシウムに添加される方法に限定されないことである。本明細書に記載の本発明のすべての実施形態において、該方法は、最初にリン酸を用意し、次に第一リン酸カルシウム、第二リン酸カルシウム、リン酸三カルシウムまたは上記リン酸塩製品のいくつかまたはすべてのブレンドをリン酸に加えて混ぜることによって実施することができる。
【0041】
上記の方法によって製造される製品は、さらさらした固体であるが、その物質の流動性は、必要に応じて、該方法における最終ステップとして、リン酸三カルシウムを最終組成物に混合することによって改良することができる。例えば、第二リン酸カルシウムとリン酸とは、上記のように混合して本発明の組成物を製造することができる。その組成物が製造された後、リン酸三カルシウムを流動助剤としてその組成物と混合することができる。そのリン酸三カルシウムは、最終製品に所望の流動特性を与えるために必要な任意の量で加えることができる。好ましい実施形態において、この方法によって製造される組成物は、リン酸三カルシウムと95/5の重量対重量の割合で混合する。
【0042】
本発明者らは、思いがけなく、リン酸の不溶性リン酸カルシウムへの添加が、水に容易に溶解する物質および濁りが残らない透明な果実飲料を生じることを発見した。X線回折によるその物質の分析によって、それは、少なくとも一部は、結晶性第一リン酸カルシウムから成ることが見出された。何らかの特定の理論または機構にこだわることを望むものではないが、該物質は、第一リン酸カルシウムが上記の様式で生成した物質の高い溶解性を持たないため、少なくとも1つの無定形の成分を含有する可能性がある。その無定形物質は、リン酸ヘミカルシウム塩タイプの物質であり得る。その無定形物質は、また、リン酸に溶解したリン酸カルシウムの溶体であり得る。リン酸ヘミカルシウム塩は、既知の化合物ではないが、そのナトリウムコンジナーは知られている。リン酸ヘミナトリウム塩は、結晶性物質である。モノナトリウムリン酸塩は、水和物、MSP−1(NaHPO−HO)を形成する。概念的には、水和物をリン酸の分子によって置き換えてNaHPO−HPOを形成することができる。類推して、第一リン酸カルシウム一水和物は、リン酸ヘミカルシウム塩の基礎であり得、第一リン酸カルシウム一水和物はCa(HPO−HOであり、リン酸ヘミカルシウム塩はCa(HPO−HPOであろう。
【0043】
X線回折により確認される結晶構造に加えて、上記の方法によって製造された物質は、次の特徴を示す。(1)それはさらさらした固体である。(2)その物質は容易に水に溶解し、本質的に透明な溶液を生ずる。(3)飲料またはジュースに使用されたとき、その物質は実質的に飲料のフレーバー、pHまたは色相を変えない。(4)飲料またはジュースに使用されたとき、その製品は、冷蔵庫保存または周囲温度保存のいずれで長時間保存されても安定である。(5)飲料またはジュースに使用されたとき、その物質は溶解性が持続し、高温処理(UHT)後も濁ったりしない。
【0044】
上記のように、本発明の方法によって製造された物質は、水または飲料に溶解して基本的に透明な溶液を提供することができる。透明または曇りあるいはその間のどこかのいずれかである飲料の外観は、透明度の主観的測度である。その外観は、目に入る前に光が通過する容積、試料が見られる背景、および水中の物質の濃度に依存する。さらに、ヒトの目は、別のものと隣接する1つの試料がその隣のものより曇っているかもしくは濁っているかまたはそうでないかをはっきり言うことはできるが、試料の比較は困難を伴う。濁度を測定する定量的方法は、濁度の出現が懸濁粒子によって散乱される光の量による事実に依存している。濁度計によりなされる測定は、試料を通過する入射ビームに対して交差状(90度)に配置されている検出器における光の量を測定することによって、散乱した光の量を測定する。その装置は、正確で的確な測定を可能にする購買標準により目盛を調整することができる。その較正基準は、濁度をネフェロ分析濁度単位(Nephelometric Turbidity Units)(NTU)で報告することを可能にする。この場合に製造される物質は、水に溶解して5NTU未満の濁度の1%の溶液を製造することができることが望ましい。その1%の溶液のpHは、好ましくは2.8と3.2の間である。
【実施例】
【0045】
好ましい実施形態の例を以下に提供する。これらの例示的実施形態は、本発明の方法または得られる組成物を多少なりとも限定することを意味するものではない。
【0046】
(実施例1)
ホバートミキサー中に、200gの第二リン酸カルシウム無水物を20℃の開始温度で用意する。混ぜながら200gの85%リン酸を20℃で1時間かけて加えた。そのリン酸をすべて加えた後、その物質をさらに30分間混ぜた。生成物としてさらさらした固体が残った。反応中幾分かの熱が放出され、それによって最終生成物の温度が約40℃に上昇した。その粉体についてのX線回折は、その物質が唯一の結晶性化合物としてのMCP−1(第一リン酸カルシウム)を含むことを示した。この物質を水に加えると、それは曇りがなく5NTU未満の濁度で完全に溶解した。
【0047】
(実施例2)
ホバートミキサー中に、160gのリン酸三カルシウム(TCP)を20℃の始動温度で用意する。混ぜながら240gの85%リン酸を20℃で1時間かけて加えた。そのリン酸をすべて加えた後、その物質をさらに30分間混ぜた。生成物としてさらさらした固体が残った。反応中幾分かの熱が放出され、それによってその温度が約50℃に上昇した。その粉体についてのX線回折は、その物質が唯一の結晶性化合物としてのMCP−1を含むことを示した。この物質を水に加えると、それは曇りがなく5NTU未満の濁度で完全に溶解した。
【0048】
(比較例1)
Littleford−Day社製プラウミキサー(plow mixer)に、X線回折により純粋であることが示された8.444kgのMCP−1(Innophos社製試薬12XX)を加えた。1.339kgの85%リン酸を室温で約30分かけて室温の固体の移動床に吹き付けた。得られた生成物は乾燥してさらさらしていた。この生成物の1%溶液は、3.08のpH値および50の濁度値を有していた。溶液は、曇っていた。
【0049】
(比較例2)
Littleford−Day社製プラウミキサーモデルにX線回折により純粋であることが示された8.444kgのMCP−1(Innophos社製試薬12XX)を加えた。1.621kgの85%リン酸を、室温でプラウミキサー中の室温の固体の移動床に中程度のスピードで約30分かけて混ぜながら吹き付けた。得られた生成物は乾燥してさらさらしていた。この生成物の1%溶液は、2.9のpH値および11の濁度値を有していた。溶液は曇っていた。
【0050】
実施例および比較例を、表1に一緒にまとめてそれらの違いを明らかにする。米国特許第2514973号に記載されているように、MCP−1を溶解して透明な溶液を生じるための十分な酸性度を発生させるには48%モル過剰のリン酸を必要とすることが見て取れる。2.7のpHを有する材料は、食品用の仕様ではなく、その上、そのカルシウム濃度は実用的ではない。TCPのアルカリ性にもかかわらず、本発明に従って操作することにより、条件を満たしたカルシウム負荷およびpHを備えた材料を製造することが可能であり、それはまた、何らの曇りの痕跡無しで水に完全に溶解する。
【0051】
【表1】

【0052】
本発明の方法によって製造された組成物は、飲料、特に透明飲料およびジュースをカルシウム強化するために使用することができる。その材料は、容易に溶けるため、飲料は、所望されるレベルを達成するために必要なカルシウムを提供する十分な材料を添加することによって、任意の所望レベルまでカルシウム強化することができる。その材料は、同様に、飲料中の所望のリン濃度を得るための十分な材料を添加することによってリンの豊富な飲食を提供するために使用することができる。
【0053】
好ましい実施形態を示して説明してきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなくさまざまな修正および置き換えを行うことができる。従って、本発明は、例として説明されているのであって限定するためではないことを理解すべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料またはジュースをカルシウム強化するために使用することができる組成物を製造する方法であって、
無水第二リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、およびそれらの混合物から成る群から選択されるリン酸カルシウムをリン酸と、最終混合物における該リン酸カルシウムのリン酸に対する割合が、得られた生成物の1重量%溶液が5NTU未満の濁度および約2.8〜3.2の間のpHを有するように、混ぜながら混合するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、最終生成物を該生成物が100℃で1%未満の重量減を有するまで乾燥させるステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、該リン酸が、85%のリン酸であることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、該リン酸カルシウムとリン酸とを約30分と2時間の間の時間にわたって混ぜることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、リン酸カルシウムとリン酸との該最終の混合物に若干のリン酸三ナトリウムを添加するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、リン酸カルシウムとリン酸との該最終の混合物のリン酸三ナトリウムに対する該割合が、約95:5であることを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法であって、該リン酸が、該リン酸を該リン酸カルシウムと混合する前に、該リン酸に溶解された無水第二リン酸カルシウム、リン酸カルシウム二水和物、リン酸三カルシウム、およびそれらの混合物から成る群から選択されたリン酸カルシウムの若干量を含有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法であって、該リン酸カルシウムが、無水第二リン酸カルシウムであり、該最終混合物における該無水第二リン酸カルシウムのリン酸に対する割合が約47.5:52.5〜56.0〜44.0の間であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法であって、該リン酸が85%のリン酸であることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、該リン酸カルシウムが、無水第二リン酸カルシウム二水和物であり、該最終混合物における該第二リン酸カルシウム二水和物のリン酸に対する割合が約47.5:52.5〜56.0:44.0の間であることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、該リン酸が85%のリン酸であることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、該リン酸カルシウムが、リン酸三カルシウムであり、該最終混合物における該リン酸三カルシウムのリン酸に対する割合が約38:62〜42:58の間であることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項12に記載の方法であって、該リン酸が85%のリン酸であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法であって、該リン酸カルシウムが、無水第二リン酸カルシウムとリン酸三カルシウムとのブレンドであり、該最終混合物における該無水第二リン酸カルシウムとリン酸三カルシウムとのブレンドのリン酸に対する割合が約38:62〜42:58の間であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、該リン酸が85%のリン酸であることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項に記載の方法によって製造されたことを特徴とする製品。

【公表番号】特表2009−539381(P2009−539381A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−514414(P2009−514414)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【国際出願番号】PCT/US2007/013619
【国際公開番号】WO2007/146184
【国際公開日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(505084756)イノフォス インコーポレーテッド (10)
【Fターム(参考)】