説明

透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法

【課題】
表層部分に透水性上部地盤が存在する軟弱地盤を改良する透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法の提供。
【解決手段】
地表部分に存在する透水性上部地盤7と低部の透水性基層4との間に存在する軟弱地盤2に地表面からドレーン材10を挿入し、ドレーン材10は、透水性上部地盤深さより所定長さcだけ長い撤去部14と、撤去部14の下端に分離可能に連結された埋め捨て部とを備え、撤去部14に透水性上部地盤内の水の浸入を防止する不透水部50を備え、ドレーン材10をその埋め捨て部の下端を透水性基層4まで至らない所望の改良深さまで挿入させ、軟弱地盤2内の土壌間隙水をドレーン材10の上端を通して排水させることにより所望の地盤改良を行い、然る後ドレーン材の撤去部14を地表より除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表層部に廃棄物を堆積させた透水性地盤が存在する軟弱地盤を改良するための透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、軟弱地盤の改良方法として、バーティカルドレーン工法が広く知られている。この工法は軟弱地盤表面より、縦方向に通水溝を有し、周囲を透水フィルターで覆ったプラスチック製のドレーン材であるプラスチックボードドレーン材を、一定間隔ごとに軟弱地盤表面より地盤中に打ち込み、これを通して軟弱地盤内の水を排出させるようにしたものが広く採用されている。
【0003】
この従来の軟弱地盤改良工法には、図6に示すようにドレーン材1を打設した軟弱地盤2上に、錘用の積載盛土3を造成し、その荷重によって軟弱地盤を圧密させる載荷圧密工法(例えば特許文献1,2)がある。この工法では、軟弱地盤2の下に透水性基層4が存在している場合には、その透水性基層4までドレーン材1を到達させ、載荷盛土による荷重によってドレーン材1内に流入する水を地表面側のみならず、透水性基層4をも通して排水させるようにしている。
【0004】
また、図7に示すようにドレーン材1を打設した軟弱地盤2の表面を不通気性シート5で被い、各ドレーン材1の上端を減圧装置6に連通させて減圧させることにより、大気圧を地盤表面に載荷させ、これによって排水を促進させる真空圧密工法がある(例えば特許文献3,4)。この工法では軟弱地盤2下に前述した透水性基層4が存在する場合には、減圧による効果を得るためには透水性基層4の水を吸引しないようにする必要があるため、ドレーン材1はその下端が透水性基層4より所定高さだけ高い位置にとどめる必要がある。
【0005】
また、この他、真空圧密工法に載荷盛土を併用した工法も提案されている(例えば特許文献5)。
【0006】
更に、軟弱地盤の支持力を増強する工法には、上述した排水による圧密によるものの外、セメントミルク等の固化剤を地盤中に注入して攪拌することにより軟弱地盤中に円柱状の高強度部分を形成させる工法がある。
【特許文献1】特開平5−187012号公報
【特許文献2】特開平7−197439号公報
【特許文献3】特開2002−138456号公報
【特許文献4】特開2003−261930号公報
【特許文献5】特開2002−54131号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年において、軟弱地盤上に廃棄物を建設残土や砂礫などとともに盛り上げた廃棄物処分場や埋立地が多く存在しており、それらは軟弱地盤上に廃棄物を含む透水性上部地盤が造成されている。近年、それらの廃棄物を含む透水性上部地盤の上に道路などの建造物を構築しなければならない事情が生じつつあるが、これらの多くの場合には、表層部分の透水性上部地盤下の軟弱地盤が、建造物の荷重によって長期間に渡って不均一に沈下してしまうため、事前に軟弱地盤の改良が必要となる。
【0008】
このような廃棄物等による透水性上部地盤が存在している軟弱地盤の改良に、前述した載荷圧密工法を適用すると、図8(イ)に示すように、軟弱地盤2上の透水性上部地盤7と透水性基層4との間に、ドレーン材1による水道ができることとなり、地盤改良工事完了後においても透水性上部地盤7内の汚染水が透水性基層4内に流れ込んで地下水を汚染するという問題がある。
【0009】
このように透水性上部地盤7内の水が土壌によって浄化されずに透水性基層4内へ流れ込むのをより効果的に防止するためには、図8(ロ)に示すようにドレーン材1の下端と透水性基層4との間の間隔aを大きくとるようにすればよいが、この間隔a分の地盤改良がなされなくなり、改良効果が低下する。
【0010】
また、前述した真空圧密工法を適用すると、図9に示すように透水性上部地盤7内の水を排水させることとなって、地盤改良の効率が悪くなる。また、工事完了後に透水性上部地盤7内の水が土壌によって浄化されずに透水性基層4内へ流れ込むのを、より効果的に防止するためには前述と同様に間隔aを大きく取る必要が生じ、改良効果が低下するという問題が生じる。
【0011】
更に、地盤中に固化剤を注入する工法は、汚染された水を拡散させる恐れはないが、非常にコスト高となるという問題がある。
【0012】
本発明はこのような従来の問題に鑑み、表層部分に透水性上部地盤が存在する軟弱地盤の改良に際し、透水性上部地盤内の水が、改良工事中にドレーンとして排水されることがなく、また、改良工事中のみならず同工事完了後においても、表層部分の透水性上部地盤の水が地下水層に流れ込むことが無く、更に、軟弱地盤のほぼ全域に亘って改良効果が得られる透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法の提供を目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述の如き従来の問題を解決し、所期の目的を達成するための請求項1に記載の発明の特徴は、地表部分に存在する透水性上部地盤と低部の透水性基層との間に存在する軟弱地盤に地表面からドレーン材を挿入し、該軟弱地盤内の土壌間隙水を排水することにより地盤を改良する透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法において、前記ドレーン材は、前記透水性上部地盤深さより所定長さだけ長い撤去部と、該撤去部の下端に分離可能に連結され、該撤去部下端より前記透水性基層から所望の高さだけ高い深さに至るまでの長さを有する埋め捨て部とを備えるとともに、前記撤去部に透水性上部地盤内の水の浸入を防止する不透水部を備え、前記ドレーン材をその埋め捨て部の下端を前記透水性基層まで至らない所望の改良深さまで挿入させ、前記透水性上部地盤及び透水性基層内に水を排水させることなく前記軟弱地盤内の土壌間隙水を該ドレーン材の上端を通して排水させることにより所望の地盤改良を行い、然る後前記ドレーン材の撤去部を地表より除去してなる透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法にある。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成に加え、前記ドレーン材の上端を減圧装置に連結し、該ドレーン材内を減圧させて前記軟弱地盤内の土壌間隙水を吸引させることにより地盤改良を行うことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成に加え、ドレーン材の撤去部として、通水用溝を表裏の長手方向に連続して有する通水溝形成用心材の表裏に、前記通水用溝の開放部を閉鎖する配置に透水性フィルターを固着したプラスチック製のドレーン部材と、薄帯板状又は線状をした引張補強材とを有し、該引張補強材を長手方向に沿って前記ドレーン部材と一体化させたものを使用することを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、請求項3の構成に加え、撤去部は、引張補強材を薄帯板状とし、一対のドレーン部材を、前記引張補強材の表裏両面に互いに対称配置に固着してなることを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜3又は4の構成に加え、前記不透水部はドレーン材の撤去部の外周の必要長さ部分に気密性の遮水被覆を施すことにより不透水性をもたせることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法は、地表部分に存在する透水性上部地盤と低部の透水性基層との間に存在する軟弱地盤に地表面からドレーン材を挿入し、該軟弱地盤内の土壌間隙水を排水することにより地盤を改良する透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法において、前記ドレーン材は、前記透水性上部地盤深さより所定長さだけ長い撤去部と、該撤去部の下端に分離可能に連結され、該撤去部下端より前記透水性基層から所望の高さだけ高い深さに至るまでの長さを有する埋め捨て部とを備えるとともに、前記撤去部に透水性上部地盤内の水の浸入を防止する不透水部を備え、前記ドレーン材をその埋め捨て部の下端を前記透水性基層まで至らない所望の改良深さまで挿入させ、前記透水性上部地盤及び透水性基層内に水を排水させることなく前記軟弱地盤内の土壌間隙水を該ドレーン材の上端を通して排水させることにより所望の地盤改良を行い、然る後前記ドレーン材の撤去部を地表より除去することによって、地盤改良中においては、ドレーンとして透水性上部地盤内の水が透水性基層に排水されず、地盤改良後においては、埋め捨てられたドレーン材と透水性上部地盤との間の距離を十分に取ることができ、下水層に浄化されずに流れ込むことが無い。
【0019】
前記ドレーン材の上端を減圧装置に連結し、該ドレーン材内を減圧させて前記軟弱地盤内の土壌間隙水を吸引させることにより地盤改良を行うことによって、ドレーン材の下端部から透水性基層に至るまでの距離を必要最小限の距離としてもドレーンとして透水性上部地盤内の水が透水性基層に排水されず、改良対象である軟弱地盤全体を好適に地盤改良(圧密)することができる。
【0020】
ドレーン材の撤去部として、通水用溝を表裏の長手方向に連続して有する通水溝形成用心材の表裏に、前記通水用溝の開放部を閉鎖する配置に透水性フィルターを固着したプラスチック製のドレーン部材と、薄帯板状又は線状をした引張補強材とを有し、該引張補強材を長手方向に沿って前記ドレーン部材と一体化させたものを使用することにより、地盤の圧密工程が終了した後、好適にドレーン材の撤去部のみを地盤より引き抜くことができる。
【0021】
撤去部は、引張補強材を薄帯板状とし、一対のドレーン部材を、前記引張補強材の表裏両面に互いに対称配置に固着してなることにより、PBD材の表裏面部より好適に排水を行うことができる。
【0022】
前記不透水部はドレーン材の撤去部の外周の必要長さ部分に気密性の遮水被覆を施すことにより不透水性をもたせることによって、透水性フィルター表面等にも好適に不透水部を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に本発明の実施の形態を図面に示した実施例に基づいて説明する。尚、上述の従来例と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0024】
図1は、本発明方法においてドレーン材を透水性上部地盤7、軟弱地盤2及び透水性基層2からなる地盤に挿入し、減圧手段に連通させた状態を示し、図中符号10はドレーン材である。
【0025】
この地盤は、地表部分に存在する透水性上部地盤7と、低部の透水性基礎4と、透水性上部地盤7と透水性基礎4との間に存在する軟弱地盤2とをもって構成されている。
【0026】
尚、以下の説明における各数値は、透水性上部地盤7の各地盤条件が、地盤層厚9m、単位体積重量γ=14kN/m(上層)、γ=20kN/m(中層)、γ=10kN/m(下層)、周面摩擦力fi=−0.82Z−1.25(Z:深度(GL−m))である場合、軟弱地盤2の各地盤条件が、地盤層厚20m、飽和単位体積重量γsat=15kN/m、圧密後単位体積重量γ’=5kN/m、圧密係数cv=100cm/day、原地盤粘着力c=−5.0−2.5z(z:標高(C.D.L.±m))、強度増加率cu/p=0.3である場合を例として説明する。
【0027】
ドレーン材10には、例えば、図2、図3に示す如き、プラスチックボードドレーン材(以下PBD材という)を使用する。
【0028】
このPBD材10には、一対のドレーン部材11,12が薄帯板状の引張補強材13の表裏両面に互いに対称配置に固着されている。
【0029】
また、このPBD材10は、一対のドレーン部材11,12を引張補強材13の表裏両面に互いに対称配置に固着してなる撤去部14と、いずれか一方のドレーン部材11の下端に連続配置に接続されたドレーン部材15からなる埋め捨て部とをもって構成し、撤去部14と埋め捨て部とは、ドレーン打設作業時に作用する通常の引張力によっては離れず、撤去する際の抜去力によって離れるようになっている。
【0030】
引張補強材13は、ポリオレフィン系の合成樹脂材を延伸してシート状に成形したプラスチック帯状体やステンレス板等の金属板等をもって構成され、長手方向即ちドレーン材の引き抜き方向に作用する荷重に対して高い強度を備えている。
【0031】
この引張補強材13の表裏に合成樹脂ラミネート層17等の貼着層を介してドレーン部材11,12が固着される。
【0032】
ドレーン部材11,12,15は、表裏に長手方向に通水用溝18,19を有する通水溝形成用心材20と、通水溝形成用心材20の表裏両面を覆う透水性フィルター21,21とを備え、通水溝形成用心材20の表裏面にそれぞれ通水性フィルター21,21が固着されている。
【0033】
通水溝形成用心材20は、互いに対向して平行に配置された複数の縦壁材22,22…と、各縦壁材22,22間に配された横壁材23,23とを備え、断面形状において横壁材23,23が千鳥状に配置されたことによって、通水溝形成用心材20の表裏にそれぞれ浅通水用溝18と深通水用溝19とが交互に並んで形成されている。
【0034】
透水性フィルター21は、ポリエステル系合成繊維からなる不織布をもって透水性を有するシート状に形成されている。
【0035】
撤去部14を構成するドレーン部材11と埋め捨て部を構成するドレーン部材15とは、ドレーン部材11の下端部に埋め捨て部を構成するドレーン部材15を連続配置し、その互いに突き合わされた端部間の表面に接続用当て板24を架け渡し、接続用当て板24にそれぞれドレーン部材11,15を固定することにより、埋め捨て部の上端が撤去部14の下端に対して、ドレーン材打設作業時に作用する通常の引張力によっては離れないが、撤去部14を撤去する際の抜去力によって離れるようになっている。
【0036】
尚、連結された両ドレーン部材11,15の連結部間には、外周に密封処理が施されており、両ドレーン部材11,15の通水断面は互いに好適に連通されている。
【0037】
この方法において使用するドレーン材10は、工場において、撤去部14の長さを、透水性上部地盤7の厚みより所定の長さだけ長く、即ちドレーン材10を地盤に挿入した際に、透水性上部地盤7下より所定の長さc(約5m)だけ突出する長さ(約14m)に形成し、埋め捨て部を構成するドレーン部材15の長さを、ドレーン材10を地盤に挿入した際に、撤去部14の下端から、透水性基層4より所望の高さa(約1m〜2m)だけ高い深さに至る長さ(約13〜14m)に予め形成し、その撤去部14及び埋め捨て部15を連結して形成しておく。
【0038】
また、このドレーン材10には、撤去部14の上部、即ち撤去部上端から透水性上部地盤7下より稍突出する位置に至るまでの長さ部分に透水性上部地盤7内の水の侵入を防止する不透水部50を備える。
【0039】
尚、不透水部50は、ドレーン材撤去部14の外周の必要長さ部分、即ち、撤去部上端から透水性上部地盤下より稍突出する位置に至るまでの長さ部分に合成樹脂コーティング等により気密性の遮水被覆を施すことにより不透水性を持たせるようになっている。
【0040】
このように構成されたドレーン材10を他のドレーン材10の下端部に接続して多数のドレーン材10,10…を一本の帯状に連結し、これをリール51に巻き取っておき、それを施工現場に搬入するようになっている。
【0041】
次に、上述の如きドレーン材を用いた本発明方法について説明する。
【0042】
まず、ドレーン材打設位置の透水性上部地盤7を先行削孔機(アースオーガ)により削孔し、そこにドレーン材打設装置52を用いてドレーン材10を打設する。
【0043】
このドレーン材10の打設は、例えば、図4に示すように、リール51に巻かれたドレーン材10をドレーン材打設用管体(マンドレル)53内に上端部側より引き込み、下端より突出したドレーン材10の下端、即ちドレーン部材15の先端部にアンカープレート54を取り付け、ドレーン材10をマンドレル53ごと地盤内に静的に圧入し、所定の深さまで到達した後、マンドレル53を引き抜くことにより、先端に取り付けたアンカープレート54によりその位置に固定されたドレーン材10のみが地盤内に留まり、ドレーン材10が所定位置に打設される。
【0044】
このマンドレル53を引き抜く際に、ドレーン材10の撤去部14と埋め捨て部15との接続部分に引張力が発生するが、この程度の引張力によっては撤去部14と埋め捨て部15とは離れないようになっている。
【0045】
そして、各ドレーン材間の接続部を切断し、所定の位置、即ち埋め捨て部の下端が透水性基層4まで至らず、透水性基層4より距離a(約1〜2m)だけ高い深さであり、且つ撤去部14の下端が透水性上部地盤7下所定の距離c(約5m)だけ突出した深さであり、更に、不透水部50の下端が透水性上部地盤7下距離b(約1.5m)だけ突出した深さである位置にドレーン材が打設される。
【0046】
各ドレーン材10,10…は、所定の間隔をおいて配置され、各ドレーン材10の上端には、図1に示すように、気密性キャップ55を固着させ、この気密性キャップ55の頂部に予めホースからなる排水用材56を一体に連結しておき、この排水用材56を集水管を介して減圧手段たる真空ポンプ57に連通させる。
【0047】
この状態で、真空ポンプ57を動作させ、真空圧密工法又は、必要に応じて真空圧密工法と戴荷圧密工法を併用する等して軟弱地盤2の地盤改良を行う。
【0048】
この際、軟弱地盤2中の土壌間隙水は真空ポンプ57によって吸い上げられ、軟弱地盤2中の水が透水性基層4に排水されることがないので、ドレーン材10の下端、即ち埋め捨て部を構成するドレーン部材15の先端から透水性基層4までの距離aが必要最小限の距離確保されていればよく、軟弱地盤2のほぼ全域に亘って好適に地盤改良効果を得ることができる。
【0049】
また、透水性上部地盤7内の水は、不透水部50により遮水され、排水されないので、効率良く地盤改良を行うことができ、透水性上部地盤7内の汚水が排水に混じらないため、その浄化処理も不要となる。
【0050】
地盤改良終了後、減圧手段や必要に応じて戴荷用の盛土等を撤去する。しかし、不透水部50の透水性上部地盤7下より突出した距離b(約1.5m)は、軟弱地盤2全体で圧密が行われるようにする為必要最低限の長さとなっており、その為、地盤改良が終了し、真空ポンプ57による排水が行われていない状態では、透水性上部地盤7内の汚水がドレーン材10の不透水部50下の部分より排水され、ドレーン材10を通して土壌によって浄化されることなく透水性基層4内へ流れ込んでしまう。
【0051】
そこで、ドレーン材10の撤去部14を地盤より引き抜き、透水性上部地盤7とドレーン材10との間の距離cを大きくとることにより、透水性上部地盤7内の汚水が土壌によって浄化されることなく透水性基層4内へ流れ込むのを防止する。
【0052】
ドレーン材10の撤去は、図5に示すように、ドレーン材10の上端部を挟持した状態で引き抜き装置30により引き上げることにより行う。
【0053】
この引き抜き装置30は、ドレーン材10を挟持するチャック31と、チャック31に引き上げ力を与える引き上げ駆動部材32とを有し、チャック31にドレーン材10の上端部を挟持させ、そのチャック31を引き上げ駆動部材32により引き上げることによりPBD材10を地盤より引き抜くようになっている。
【0054】
引き上げ駆動部材32は、クレーン33より繰出された吊りワイヤ34を支持リーダ35に支持された滑車を通して吊り降ろさせ、その吊りワイヤ34の先端にチャック31を取り付けておき、クレーン33により吊りワイヤ34を巻取ることにより、チャック31に引き上げ力を与えることができるようになっている。
【0055】
このようにすることによって、ドレーン材10は、撤去部14と埋め捨て部15との接続部分に所定の荷重以上の抜去力が作用することによって撤去部14と埋め捨て部15とが分離して、埋め捨て部15が軟弱地盤2中に留まり、撤去部14のみが地盤より引き抜かれ、透水性上部地盤7と埋め捨て部との間に浄化に十分な距離cが形成されるようになっている。
【0056】
尚、上述の実施例では、地盤改良を真空圧密工法又は真空圧密工法と戴荷圧密工法とを併用して行う例について説明したが、その他、バーティカルドレーン工法によるものであればよい。
【0057】
また、ドレーン材は、上述の実施例で示すものに限定されず、撤去部を、薄帯板状に形成された引張補強材の片面にのみドレーン部材を固着させて形成したもの等であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明方法におけるドレーン材の設置状態を示す断面図である。
【図2】図1中のドレーン材を示す側面図である。
【図3】同上のドレーン材の部分拡大横断面図である。
【図4】本発明方法のドレーン材打設作業の状態を示す側面図である。
【図5】同上のドレーン材の撤去作業の状態を示す側面図である。
【図6】従来の戴荷圧密工法による地盤改良の概略を示す断面図である。
【図7】従来の真空圧密工法による地盤改良の概略を示す断面図である。
【図8】戴荷圧密工法における問題点を説明する為の断面図である。
【図9】真空圧密工法における問題点を説明するための断面図である。
【符号の説明】
【0059】
2 軟弱地盤
4 透水性基層
7 透水性上部地盤
10 ドレーン材(PBD材)
11,12 ドレーン部材
13 引張補強材
14 撤去部
15 ドレーン材(埋め捨て部)
17 ラミネート層
18 浅通水用溝
19 深通水用溝
20 通水溝形成用心材
21 透水性フィルター
22 縦壁材
23 横壁材
24 接続用当て板
50 不透水部
51 リール
52 ドレーン材打設装置
53 ドレーン材打設用管体(マンドレル)
54 アンカープレート
55 気密性キャップ
56 排水用材
57 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地表部分に存在する透水性上部地盤と低部の透水性基層との間に存在する軟弱地盤に地表面からドレーン材を挿入し、該軟弱地盤内の土壌間隙水を排水することにより地盤を改良する透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法において、
前記ドレーン材は、前記透水性上部地盤深さより所定長さだけ長い撤去部と、該撤去部の下端に分離可能に連結され、該撤去部下端より前記透水性基層から所望の高さだけ高い深さに至るまでの長さを有する埋め捨て部とを備えるとともに、前記撤去部に透水性上部地盤内の水の浸入を防止する不透水部を備え、前記ドレーン材をその埋め捨て部の下端を前記透水性基層まで至らない所望の改良深さまで挿入させ、前記透水性上部地盤及び透水性基層内に水を排水させることなく前記軟弱地盤内の土壌間隙水を該ドレーン材の上端を通して排水させることにより所望の地盤改良を行い、然る後前記ドレーン材の撤去部を地表より除去することを特徴としてなる透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法。
【請求項2】
前記ドレーン材の上端を減圧装置に連結し、該ドレーン材内を減圧させて前記軟弱地盤内の土壌間隙水を吸引させることにより地盤改良を行う請求項1に記載の透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法。
【請求項3】
ドレーン材の撤去部として、通水用溝を表裏の長手方向に連続して有する通水溝形成用心材の表裏に、前記通水用溝の開放部を閉鎖する配置に透水性フィルターを固着したプラスチック製のドレーン部材と、薄帯板状又は線状をした引張補強材とを有し、該引張補強材を長手方向に沿って前記ドレーン部材と一体化させたものを使用する請求項1又は2に記載の透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法。
【請求項4】
引張補強材を薄帯板状とし、一対のドレーン部材を、前記引張補強材の表裏両面に互いに対称配置に固着してなる請求項3に記載の透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法。
【請求項5】
前記不透水部はドレーン材の撤去部の外周の必要長さ部分に気密性の遮水被覆を施すことにより不透水性を持たせる請求項1〜3又は4に記載の透水性上部地盤下の軟弱地盤改良方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−200204(P2006−200204A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−12454(P2005−12454)
【出願日】平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(501241911)独立行政法人港湾空港技術研究所 (84)
【出願人】(000166627)五洋建設株式会社 (364)
【Fターム(参考)】