説明

透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液、その製造方法および透湿防水布

【課題】DMFなどの強溶媒を含まず、溶液の安定性に優れ、高い透湿性、耐水圧性、高い滑性を発現するウレタン樹脂分散液、その製造方法及び得られるウレタン樹脂を使用した透湿防水加工布を提供する。
【解決手段】溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒にウレタン樹脂を溶解したウレタン樹脂溶液(A)に、分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有し、平均粒子径が1μm以上のウレタン樹脂粒子(B)が分散してなる透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液、その製造方法及び透湿防水布に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液、その製造方法及び得られるウレタン樹脂を塗布、乾燥させることにより得られる滑性に優れた透湿防水布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリウレタン樹脂は、優れた機械特性からコーティング剤、成形材料、合成皮革、表面処理剤、塗料、接着剤等に使用されており、また布に塗布して防水布として使用されている。しかし、通常のポリウレタン樹脂を塗布した防水布は透湿性が劣るために着用時に蒸れる欠点があった。
この欠点を解決するためにポリウレタン層を多孔化する方法が提案されている(例えば非特許文献1及び非特許文献2参照)。
【0003】
しかしながらウレタン多孔層を有する防水布は、その多孔構造が連続泡であるため通気性、透湿性には優れているものの、防水性(耐水圧性)が劣るという問題点がある。
このため多孔層上にさらなるウレタン樹脂溶液をオーバーコートして透湿性と耐水圧性を両立させようという提案がなされてきた(例えば特許文献1及び特許文献2参照)。
しかし、ウレタン樹脂溶液の安定性の点で、透湿性を確保するべきウレタン多孔層を溶解してしまうようなジメチルホルムアミド(DMF)などの強溶媒を一部含んでいたり、防水布を衣服に加工した場合、表面に凹凸が無いため滑性が不十分であり、着心地が悪いという問題があった。
【非特許文献1】加工技術 Vol.17, No.6 356 (1982)
【非特許文献2】J. Coated Fabrics, 15, 115 (1985)
【特許文献1】特開平6−73669号公報
【特許文献2】特開平11−61648号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、かかる欠点を解決し、DMFなどの強溶媒を含まず、溶液の安定性に優れ、高い透湿性、耐水圧性、高い滑性を発現するウレタン樹脂分散液、その製造方法及び得られるウレタン樹脂を使用した透湿防水加工布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の優れた性質を有する透湿防水加工用の新規なウレタン樹脂を開発するべく鋭意研究した結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒にウレタン樹脂を溶解したウレタン樹脂溶液(A)に、分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有し、平均粒子径が1μm以上のウレタン樹脂粒子(B)が分散してなる透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液を提供するものである。また本発明は、溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒中で、数平均分子量が300〜3,000のポリエステルポリオール及び/又は数平均分子量が300〜3,000のポリカーボネートポリオールを5.0〜70重量%含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させることを特徴とする透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液の製造方法を提供するものである。さらに本発明は、前記透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液を主成分とする樹脂組成物を多孔性透湿加工布に塗布してなる透湿防水布を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明により得られる透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液は、適度なサイズのウレタン微粒子を含むため、このウレタン樹脂分散液を多孔性透湿加工布上にオーバーコートした透湿防水加工布は透湿性、耐水圧性及び滑性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明を更に詳しく説明する。
本発明は、溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒に溶解したウレタン樹脂溶液(A)に、分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有し、平均粒子径が1μm以上のウレタン樹脂粒子(B)が分散してなる透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液である。
【0009】
本発明のウレタン樹脂溶液(A)は、溶解度パラメータが22未満の有機溶媒にエステル基及び/又はカーボネート基を含まないウレタン樹脂を溶解したものである。
本発明に使用する溶解度パラメータ(以下SP値という)が22.0未満の有機溶媒としては、例えば、トルエン(SP値;18.2)、キシレン(SP値;18.0)等の芳香族炭化水素、酢酸エチル(SP値;18.6)、酢酸ブチル(SP値;17.4)等のエステル類、アセトン(SP値;20.3)、メチルエチルケトン(SP値;19.0)、メチルイソブチルケトン(SP値;19.0)等のケトン類等が挙げられる。
本発明でいうSP値とは、Fedorsの計算式を用いて求められた溶解度パラメ^ターを意味する。Fedorsの計算式によれば、溶解度パラメーターは、各原子団のモル凝集エネルギーの和を体積で除したものの平方根であって、単位体積当たりの極性を示すものであり、上記溶解度パラメーターが大きいほど極性が高いことになる。
【0010】
ウレタン樹脂溶液(A)は、透湿性発現のため分子内にオキシエチレン基を有していることが好ましく、導入するためにはオキシエチレン基を有するポリオールを使用する。オキシエチレン基を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合ポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンブロック共重合ポリオールなどのポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、4,4'−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルプロパンなどの低分子ジオールにエチレンオキシドを付加したポリオール、ポリエチレングリコールとコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエーテルエステルポリオール化合物などを挙げることができる。これらのポリオール化合物は、単独、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
オキシエチレン基を有するポリオールの数平均分子量は、300〜4,000であることが好ましく、800〜2000であることがより好ましい。
【0011】
また、ウレタン樹脂溶液(A)は分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有しても良く、導入するためのポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の高分子ポリオールが挙げられる。この高分子ポリオールの数平均分子量は、通常400〜6,000である。
ポリエステルポリオールとしては、前記のエステル基及び/又はカーボネート基を含まない低分子量のポリオールにコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸等とを末端が水酸基となるように反応させたものが挙げられる。
またポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオール、メチレンカーボネートジオールなどを挙げることができる。
これらのポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールの一種又は二種以上組み合わせて使うことも可能である。
【0012】
本発明に用いられるポリイソシアネートとしては、式:R(NCO)2(式中、Rは任意の二価の有機基)によって示されるジイソシアネ−トが挙げられる。
それらの具体例としては、特に限定はしないが、テトラメチレンジイソシアネ−ト、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネ−ト、ドデカメチレンジイソシアネ−ト、シクロヘキサン−1,3−及び1,4−ジイソシアネ−ト、1−イソシアナト−3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(=イソホロンジイソシアネ−ト)、ビス−(4−イソシアナトシクロヘキシル)メタン(=水添MDI)、2−及び4−イソシアナトシクロヘキシル−2’−イソシアナトシクロヘキシルメタン、1,3−及び1,4−ビス−(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、ビス−(4−イソシアナト−3−メチルシクロヘキシル)メタン、1,3−及び1,4−テトラメチルキシリデンジイソシアネ−ト、2,4−及び/または2,6−ジイソシアナトトルエン、2,2’−、2,4’−及び/または4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフタレンジイソシアネ−ト、p−及びm−フェニレンジイソシアネ−ト、ダイメリルジイソシアネ−ト、キシリレンジイソシアネ−ト、ジフェニル−4,4’−ジイソシネ−ト等が挙げられる。
前記低分子ポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるウレタン樹脂のSP値は通常16〜18である。
【0013】
また本発明に用いる分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有し、平均粒子径が1μm以上のウレタン樹脂粒子(B)のウレタン樹脂は、分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させて得られるものである。
ウレタン樹脂粒子(B)としては、透湿性を発現させるため、分子内にさらにオキシエチレン基を有するものが好ましい。
また本発明に使用するウレタン樹脂粒子(B)の平均粒子径としては、透湿防水布として滑性を発現するためには1μm以上のものであるが、3μm以上のものであることが好ましい。
分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有するポリオールとしては、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール等の高分子ポリオールが挙げられる。この高分子ポリオールの数平均分子量は、通常400〜6,000である。
ポリエステルポリオールとしては、前記のエステル基及び/又はカーボネート基を含まない低分子量のポリオールにコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバチン酸等とを末端が水酸基となるように反応させたものが挙げられる。
またポリカーボネートポリオールとしては、例えばポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリへキサメチレンカーボネートジオール、メチレンカーボネートジオールなどを挙げることができる。
これらのポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールの一種又は二種以上組み合わせて使うことも可能である。
【0014】
また分子内にオキシエチレン基を導入するためには、オキシエチレン基を有するポリオールを使用する。オキシエチレン基を有するポリオールとしては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合ポリオール、ポリオキシエチレンポリオキシテトラメチレンブロック共重合ポリオールなどのポリエーテルポリオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、4,4'−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ジフェニルプロパンなどの低分子ジオールにエチレンオキシドを付加したポリオール、ポリエチレングリコールとコハク酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などのジカルボン酸とを反応させて得られる縮合ポリエーテルエステルポリオール化合物などを挙げることができる。これらのポリオール化合物は、単独、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることもできる。
オキシエチレン基を有するポリオールの数平均分子量は、300〜4,000であることが好ましく、800〜2000であることがより好ましい。
【0015】
本発明の透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液は、次の方法により得ることができる。
すなわち、(1)溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒中で、数平均分子量が300〜3,000のポリエステルポリオール及び/又は数平均分子量が300〜3,000のポリカーボネートポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させる方法、(2)溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒中で、オキシエチレン基を有するポリオールとポリイソシアネートとを反応してウレタン樹脂を合成し、別途溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒中で、数平均分子量が300〜3,000のポリエステルポリオール及び/又は数平均分子量が300〜3,000のポリカーボネートポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させ、前記のウレタン樹脂と混合する方法等が挙げられる。
これらのうち、本発明の透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液を一工程で生産性よく製造することができ、かつウレタン樹脂粒子(B)の粒径を安定化できる点で(1)の方法が好ましい。
以下(1)の方法について説明する。
溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒としては、前記のものが挙げられる。この有機溶媒は、ウレタン化反応の最初に全量用いても、その一部を分割して反応の途中に用いても良い。
【0016】
また数平均分子量が300〜3,000のポリエステルポリオール、数平均分子量が300〜3,000のポリカーボネートポリオールとしては、前記のウレタン樹脂分散液の原料として記載したものが挙げられる。
ウレタン樹脂粒子(B)は鎖伸長剤の投入時に形成される。このためウレタンプレポリマーを合成してから鎖伸長を行うプレポリマー法により、ウレタン樹脂粒子の平均粒子径をコントロールできる。このウレタン樹脂粒子の平均粒子径は、直径1μm以上であることが好ましく、より好ましくは3μm以上である。
これらのポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートジオールの重量比率としては、ポリオール中5.0〜70重量%であり、50〜67重量%であることが好ましい。
70重量%を越えて多くなると、得られる透湿防水加工布の透湿度が低下し、蒸れ感が生ずる。また5.0重量%に満たないと、吸湿時にウレタン層が膨潤し肌に触れて不快であったり、洗濯時の膜強度が低下する。
【0017】
ポリオールとして、上記の組成割合のものを用いてウレタン樹脂を合成することにより、ウレタン樹脂溶液中にウレタン樹脂粒子を形成し、ウレタン樹脂粒子が分散したウレタン樹脂溶液を得ることが可能となる。
このウレタン樹脂粒子は、ポリエステルポリオールのエステル基やポリカーボネートジオールのカーボネート基が有する強い水素結合能により一部のウレタン分子が溶媒に溶解できないために生成するものと推定される。
【0018】
本発明のウレタン樹脂分散液は、上記のとおり、有機溶媒中で、ポリエステルポリオール及び/又はポリカーボネートポリオールを含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させるものであるが、ワンショット法、プレポリマー法のどちらの方法を用いてもよい。
プレポリマー法の場合に用いられる鎖伸長剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオールのようなグリコール類やジアミノエタン、1,2−又は1,3−ジアミノプロパン、1,2−又は1,3−又は1,4−ジアミノブタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N’−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチル−シクロヘキサン(=イソホロンジアミン)、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノプロパン等のジアミンが挙げられ、さらにヒドラジン、アミノ酸ヒドラジド、セミ−カルバジドカルボン酸のヒドラジド、ビス(ヒドラジド)及びビス(セミカルバジド)等も使用することができる。
【0019】
鎖伸長剤として有機ジアミンを用いた場合、その鎖伸長反応の条件としては、特に限定はしないが、通常80℃以下、好ましくは0〜70℃の温度で良好な攪拌条件下で実施される。
【0020】
本発明のウレタン樹脂、またはウレタンプレポリマーの製造条件としては、特に限定はないが、通常は0〜120℃、好ましくは40〜100℃で適当な有機溶媒中で、これらの前記のウレタン化原料を、触媒なしで或いは公知のウレタン化触媒を用いるか或いは反応遅延剤を添加して、攪拌混合させるものである。更に、ポリマー化の場合、反応の終点或いは終点近くで、一官能性の活性水素を有する化合物を加えて未反応のイソシアネート基を実質的に無くすこともできる。
【0021】
またイソシアネート基と水酸基との当量比(NCO/OH)は、ポリマー化の場合は、通常0.95〜1.05、プレポリマー化の場合は、通常1.05〜2.5が用いられる。
【0022】
本発明のウレタン化反応は、有機溶媒中で行われる。かかる有機溶媒は、溶解度パラメータ(SP値)が22.0より小さい有機溶媒を用いるものである。
本発明では、一般的に良く用いられるウレタンの溶解力が高いDMF(SP値;24.8)、ジメチルアセトアミド(DMA)(SP値;22.1)、N−メチルピロリドン(NMP)(SP値;23.1)といった塩基性良溶媒を含まないことが特徴である。この理由は、ウレタン樹脂にこのような有機溶媒を使用することにより、ウレタン多孔層上へオーバーコートした際に、透湿性を確保する多孔層が溶解してしまい、透湿防水加工布の透湿度が低下し、風合いの硬化を起こすためである。
【0023】
なお上記ウレタン化反応後の希釈溶媒としては、上記の条件に当てはまる有機溶媒の他に、ウレタン多孔層を溶解させない水またはメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルコール類を添加することも可能である。ただし、これらの多量の添加はウレタン溶液の安定性を低下させるため好ましくない。
【0024】
又ポリウレタン樹脂分散液の濃度としては、限定はしないが、通常経済性及び作業性を考慮して15〜40重量%のものが適用される。
本発明のウレタン樹脂分散液には、必要に応じてウレタン化反応の任意の時点で、酸化防止剤等の安定剤、滑剤、非溶媒、顔料、充填剤、帯電防止剤その他の添加剤を加えることができる。
【0025】
本発明の透湿防水布は、上記の方法で得られたポリウレタン樹脂を主成分とするウレタン樹脂分散液を、基材に塗布することにより得ることができる。
ウレタン樹脂分散液を基材に塗布する方法としては、例えば直接基材にドクターナイフコーター、ロールコーター等で塗布する方法、離型性を有する支持体上にウレタン樹脂分散液の皮膜を形成し、得られた皮膜を基材と接着する方法等が挙げられる。
【0026】
基材としては、例えば多孔層を有する透湿防水布が挙げられる。例えば特公昭60−47955号公報に記載されるようなウレタン樹脂の湿式凝固法による多孔布や特公昭48−4380号公報、特公昭58−48579号公報に記載されるW/O型ポリウレタン乳濁液の選択乾燥法による乾式多孔布、またはウレタン多孔フィルムを織物、不織布、編物の上にラミネートしたもの等が挙げられる。またウレタン素材以外の多孔層を有する素材、例えばPTFEフィルムを延伸し、生地上にラミネートしたもの等を使用することもできる。
塗膜の形成条件としては、本発明では、乾式法が適用される。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の実施態様を具体的な実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例中の部及び%は断りのない限り重量に関するものである。
【0028】
[実施例1]
数平均分子量1,500のポリエチレングリコール80部と数平均分子量2,000のブチレングリコールアジペート80部、エチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト84部をメチルエチルケトン605部中で、70℃で反応させて白濁したポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%,粘度20,000mPa・s/25℃)を得た。
【0029】
[実施例2]
数平均分子量2,000のポリエチレングリコール50部と数平均分子量2,000のエチレングリコールブチレングリコールアジペート100部、エチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト79.2部をメチルエチルケトン570部中で、70℃で反応させて白濁したポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%,粘度18000mPa・s/25℃)を得た。
【0030】
[実施例3]
数平均分子量2,000のポリエチレングリコール80部と数平均分子量2,000のネオペンチルグリコールアジペート80部、エチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト84部をメチルエチルケトン605部中で、70℃で反応させて白濁したポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%、粘度15,000mPa・s/25℃)を得た。
【0031】
[実施例4]
数平均分子量2,000のポリエチレングリコール80部と数平均分子量2,000のヘキサメチレンポリカーボネートジオール80部、エチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト84部をメチルエチルケトン605部中で、70℃で反応させて白濁したポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%、粘度25,000mPa・s/25℃)を得た。
【0032】
[比較例1]
数平均分子量2,000のポリエチレングリコール160部とエチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト84部をメチルエチルケトン605部中で、70℃で反応させて白濁したポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%,粘度15,000mPa・s/25℃)を得た。
【0033】
[比較例2]
数平均分子量2,000のポリエチレングリコール30部と数平均分子量2,000の3−メチル−1,5−ペンタンアジペート130部、エチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト84部をメチルエチルケトン605部中で、70℃で反応させて白濁したポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%,粘度12,000mPa・s/25℃)を得た。
【0034】
[比較例3]
数平均分子量1,500のポリエチレングリコール80部と数平均分子量2,000のブチレングリコールアジペート80部、エチレングリコール15部の混合物に、ジフェニルメタンジイソシアネ−ト84部をメチルエチルケトン405部、ジメチルホルムアミド200部中で、70℃で反応させて透明なポリウレタン溶液(樹脂濃度30.0%,粘度30,000mPa・s/25℃)を得た。
【0035】
[実施例5〜8及び比較例4〜6]
実施例1〜4、比較例1〜3で得られたポリウレタン溶液の性能を評価するため、湿式防水加工布を以下の手法により作成した。
クリスボンMP−829[透湿防水加工用ウレタン樹脂、大日本インキ化学工業(株)製]100部、DMF30部、バーノックDN−950[イソシアネート系架橋剤、大日本インキ化学工業(株)製]1.5部、ダイラックホワイトL−6626[白色顔料、大日本インキ化学工業(株)製]3部を攪拌混合した樹脂配合液を、あらかじめ撥水しておいたナイロンタフタ上にスリット幅0.2mmで塗布し、DMF10%水溶液中で2分間凝固させた。さらに40℃温水中3分間浸漬させ脱溶媒して、洗浄を行い、120℃乾燥機中で乾燥させることにより湿式防水加工布を得た。
【0036】
上記の多孔を有する湿式防水布上に実施例1〜4、比較例1〜3のウレタン樹脂溶液を塗布、乾燥することによりオーバーコート処理を行った。塗布に際して、粘度調整のためにウレタン樹脂溶液を樹脂溶液100部に対し、メチルエチルケトン20部で希釈した。塗布はフローティングナイフを使用し、配合液の塗布量を15−20g/m2とした。塗布した直後に、120℃で1分間の乾燥を行い、透湿防水加工布を得た。
【0037】
得られた透湿防水加工布について、次の通り性能評価を行った。
[透湿性試験] 上記実施例及び比較例で得られた透湿防水加工布について、JIS L-1099 A−1法、B−1法に基づいて透湿性を測定した。
[耐水圧試験] 上記実施例及び比較例で得られた透湿防水加工布について、JIS L−1092 B法(高圧法)に基づいて耐水圧を測定した。
[表面滑性] 上記実施例及び比較例で得られた透湿防水加工布の表面を手で触ることにより、表面滑性を評価した。[ウレタン樹脂粒子の平均粒子径] 上記実施例及び比較例で得られた透湿防水加工布の表面を電子顕微鏡(SEM)にて観察し、ウレタン樹脂溶液中のウレタン樹脂粒子の平均粒子径を画像解析ソフトにて測定した。
[湿潤時膨潤] 上記実施例及び比較例で得られた透湿防水加工布について、その表面を水で濡らして、表面の膨潤状態を確認した。膨潤が大きいほどカーリングが大きく、洗濯時の膜面強度低下が予想される。
【0038】
上記の透湿防水加工布の性能評価結果を表−1及び表−2にまとめた。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】




【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒に溶解したウレタン樹脂溶液(A)に、分子内にエステル基及び/又はカーボネート基を有し、平均粒子径が1μm以上のウレタン樹脂粒子(B)が分散してなる透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液。
【請求項2】
前記ウレタン樹脂粒子(B)の平均粒子径が、3μm以上である請求項1記載の透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液。
【請求項3】
前記ウレタン樹脂粒子(B)のウレタン樹脂が、分子内にオキシエチレン基を含む請求項1又は2記載の透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液。
【請求項4】
溶解度パラメータが22.0未満の有機溶媒中で、数平均分子量が300〜3,000のポリエステルポリオール及び/又は数平均分子量が300〜3,000のポリカーボネートポリオールを5.0〜70重量%含むポリオールとポリイソシアネートとを反応させることを特徴とする透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液の製造方法。
【請求項5】
前記ポリオールが、さらにオキシエチレン基を有するポリオールを含む請求項4記載の透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載の透湿防水加工用ウレタン樹脂分散液を多孔性透湿加工布に塗布してなる透湿防水布。




【公開番号】特開2007−169486(P2007−169486A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−369615(P2005−369615)
【出願日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(000002886)大日本インキ化学工業株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】