説明

透視変換パラメータ生成装置、画像補正装置、透視変換パラメータ生成方法、画像補正方法、及びプログラム

【課題】従来の技術では、信頼性の高い2個の画像間の大域的な動きを推定する透視変換パラメータを生成することができない。
【解決手段】透視変換パラメータ生成装置は、第1のフレームと、第2のフレームとを取得する取得部11と、取得された第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得された第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する動きベクトル検出部13と、検出された各動きベクトルの始点を第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの第1の四辺形の各辺について、全ての動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成部14とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2個の画像間の大域的な動きを透視変換により表現する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ビデオカメラが広く普及し、多くの人によって利用されている。撮影者は、ビデオカメラにより被写体を撮影するとき、いわゆる「手ぶれ」を発生させる場合がある。このような手ぶれがある状態で撮影された画像には、その手ぶれに起因する不自然な揺れや歪みがある。このような揺れや歪みのある画像を滑らかにつなぐために、例えば、2個の画像間の大域的な動きを推定する技術が用いられる。その技術は、幅広い分野の画像処理に応用されている。
【0003】
第一の例として、動画像の各フレームの輝度の差又は輝度の時空間の勾配等に基づいてフレーム間のアフィンパラメータを生成し、生成したアフィンパラメータを用いて2個のフレームを接合するための位置決めを行ってパノラマ画像を生成する技術が知られている。
【0004】
第二の例として、画像サイズより大きな背景画像を静止画とし、その静止画を移動させることにより、背景画像に要する符号量を削減するスプライト符号化が知られている。スプライトの生成方法は、パノラマ画像の生成方法と類似しており、動画像の背景の大域的な動きを算出しながら2個のフレームを接合する方法である。また、カメラモーションを反映しない領域であるアウトライヤに大域的な動きに反応しにくいような工夫を施してヘルマートパラメータを生成し、生成したヘルマートパラメータを用いて2個のフレームを接合するための位置決めを行う技術も知られている。
【0005】
第三の例として、アウトライヤについてロバストなアフィンパラメータを生成し、生成したアフィンパラメータを用いてカメラによる撮影時の手ぶれを補正する技術も知られている。
【0006】
上述した技術は、2個のフレームの大域的な動きをアフィンパラメータ又はヘルマートパラメータにより表現する技術である。アフィン変換及びヘルマート変換が表現し得る画像間の変化は、カメラ操作に用いる表現で言うと、Pan、Tilt、Roll、及びZoom、すなわち、平行移動、回転、拡大及び縮小である。アフィン変換及びヘルマート変換は、Pitch(うなずき型の縦揺れ)やYaw(首振り型の横揺れ)を表現することはできない。
【0007】
長方形の被写体について、Roll、Pitch、及びYaw等の手ぶれ発生時に撮影したときに視覚的に得られる画像の形状を図1に示す。図1に示すように、長方形の被写体について、Roll、Pitch及びYaw等の手ぶれ発生時に撮影すると、長方形から変形した四辺形が視覚的に認識される。Roll、Pitch及びYawに対応する大域的な動きを推定するには、画像間の透視変換パラメータを生成する必要がある。透視変換パラメータを用いて透視変換を行うと、長方形から変形した四辺形を、長方形に補正することができる。なお、アフィン変換は透視変換の部分集合であるため、透視変換でも平行移動、回転、拡大及び縮小を表現することができる。
【0008】
ところで、透視変換パラメータは、次のようにして生成できる。例えば、第1のフレームの4個の位置の座標を(u,v),(u,v),(u,v),(u,v)とし、第2のフレームの4個の位置の座標点を(x,y),(x,y),(x,y),(x,y)としたとき、透視変換パラメータAは、下記の式(1)の連立方程式を解くことにより生成される。
【0009】
【数1】

式(1)において、X=(xであり、
A=(a1112132122233132である。
【0010】
透視変換では、変換前の座標を(u,v)とし、変換後の座標を(x,y)とすると、座標xは下記の式(2)により表現され、座標yは下記の式(3)により表現される。
【0011】
【数2】

【数3】

【0012】
式(1)及び式(2)において、a11,a12,a13,a21,a22,a23,a31,及び,a32は、透視変換パラメータAの各値であり、a33=1である。
【0013】
特許文献1には、透視変換を用いてあおり歪を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2001−177716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、第1のフレームの適当に選んだ4点と第2のフレームの適当に選んだ4点とを用いて透視変換パラメータを生成すると、信頼性の高い大域的な動きを推定することはできない。
【0016】
本発明は、信頼性の高い大域的な動きを推定する透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成装置及び透視変換パラメータ生成方法を提供することを目的とする。また、本発明は、信頼性の高い大域的な動きを推定して画像を補正する画像補正装置及び画像補正方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記課題を解決し上記目的を達成するために、本発明の透視変換パラメータ生成装置は、第1のフレームと、第2のフレームとを取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、前記取得部によって取得された前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記動きベクトル検出部によって検出された各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成部とを有する。
【0018】
また、本発明の画像補正装置は、第1のフレームと、第2のフレームとを取得する取得部と、前記取得部によって取得された前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、前記取得部によって取得された前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、前記動きベクトル検出部によって検出された各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成部と、前記取得部によって取得された前記第2のフレームの各位置の座標を、前記透視変換パラメータ生成部によって生成された前記透視変換パラメータを用いて補正する補正部とを有する。
【0019】
また、本発明の透視変換パラメータ生成方法は、第1のフレームと、第2のフレームとを取得するステップと、取得した前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得した前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出するステップと、検出した各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成するステップとを含む。
【0020】
また、本発明の画像補正方法は、第1のフレームと、第2のフレームとを取得するステップと、取得した前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得した前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出するステップと、検出した各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成するステップと、取得した前記第2のフレームの各位置の座標を、生成した前記透視変換パラメータを用いて補正するステップとを含む。
【0021】
更に、本発明の透視変換パラメータ生成装置の各構成要件の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムも、本発明の画像補正装置の各構成要件の機能をコンピュータに実現させるためのプログラムも、本発明の一態様である。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、信頼性の高い大域的な動きを推定する透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成装置及び透視変換パラメータ生成方法を提供することができる。また、本発明は、信頼性の高い大域的な動きを推定して画像を補正する画像補正装置及び画像補正方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】長方形の被写体について、Roll、Pitch、及びYaw等の手ぶれを伴って撮影したときに視覚的に得られる画像の形状を示す図である。
【図2】実施の形態の画像処理装置の構成図である。
【図3】実施の形態の画像処理装置の動作の各ステップを示すフローチャートである。
【図4】第1のフレームにおける動きベクトルの検出対象となる位置を説明するための図である。
【図5】図4の長方形の各辺の複数の位置それぞれの、第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを示す図である。
【図6】図2の透視変換パラメータ生成部の動作の各ステップを示すフローチャートである。
【図7】図5の長方形の各辺について、全ての動きベクトルの終点を、最小二乗法を用いて近似的に結んだ直線を示す図である。
【図8】第1のフレームの長方形及びその長方形の各頂点と、第2のフレームの四辺形及びその四辺形の各頂点とを説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0025】
先ず、本実施の形態の画像処理装置1の構成を図2を用いて説明する。図2は、本実施の形態の画像処理装置1の構成図である。本実施の形態の画像処理装置1は、図2に示すように、取得部11と、保持部12と、動きベクトル検出部13と、透視変換パラメータ生成部14と、補正部15とを有する。
【0026】
取得部11は、画像処理装置1の外部から動画像のフレームデータを取得する。動画像のフレームデータは、ビデオカメラで被写体を撮影することによって得られたデータである。保持部12は、取得部11によって取得されたデータを保持する。第1のフレームが取得部11によって取得された後に第2のフレームが取得部11によって取得されたとき、動きベクトル検出部13は、第1のフレームのなかの特定の長方形の各辺の複数の位置それぞれについて、第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する。第1のフレームは、手ぶれがないときに撮影されて得られたフレームであり、第2のフレームは、Pitch又はYawといった手ぶれがあるときに撮影されて得られたフレームである場合を想定する。
【0027】
透視変換パラメータ生成部14は、動きベクトル検出部13によって検出された動きベクトルを用いて、第2のフレームを補正するための透視変換パラメータを生成する。具体的には、透視変換パラメータ生成部14は、動きベクトル検出部13によって検出された各動きベクトルの始点を特定の長方形の対応する位置に一致させる。そして、透視変換パラメータ生成部14は、そのときの長方形の各辺について、全ての動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、4個の直線によって形成される四辺形の4個の頂点の座標と、特定の長方形の4個の頂点の座標とを用いて、特定の長方形と4個の直線によって形成される四辺形との間の透視変換パラメータを生成する。補正部15は、第2のフレームの各位置の座標を、透視変換パラメータ生成部14によって生成された透視変換パラメータを用いて補正する。
【0028】
次に、本実施の形態の画像処理装置1の動作を図3を用いて説明する。図3は、本実施の形態の画像処理装置1の動作の各ステップを示すフローチャートである。説明の便宜上、連続する第1のフレームと第2のフレームとを取り上げ、第1のフレームより後に取得される第2のフレームを補正する際の本実施の形態の画像処理装置1の動作を説明する。
【0029】
先ず、取得部11は、第1のフレームを構成する動画像のデータを取得し(S1)、保持部12は、取得部11によって取得された第1のフレームを構成する動画像のデータを保持する(S2)。次に、取得部11は、第2のフレームを構成する動画像のデータを取得する(S3)。
【0030】
動きベクトル検出部13は、第2のフレームと第1のフレームとを比較し、第1のフレームのなかの特定の長方形の各辺の複数の位置それぞれについて、第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する(S4)。動きベクトル検出部13の動作を図4を用いて具体的に説明する。図4は、第1のフレームGにおける動きベクトルの検出対象となる位置を説明するための図である。第1のフレームGには、特定の長方形Kの領域が含まれる。
【0031】
長方形Kは、辺s1と、辺s2と、辺s3と、辺s4とで構成されている。辺s1は、第1のフレームGの垂直方向に伸びる一辺と平行な辺である。辺s2は、辺s1の下側の端部を左側の端部とし、辺s1と垂直な関係にある辺である。辺s3は、辺s2の右側の端部を下側の端部とし、辺s2と垂直な関係にある辺である。すなわち、辺s3は、辺s1より右側に位置し、辺s1と平行な関係にある。辺s4は、辺s3の上側の端部を右側の端部とし、辺s3と垂直な関係にある辺である。すなわち、辺s4は、辺s2より上側に位置し、辺s2と平行な関係にある。
【0032】
辺s1には、第1の位置p1〜第6の位置p6の、動きベクトルの検出対象位置となる6個の位置が存在する。辺s2には、第6の位置p6〜第14の位置p14の、動きベクトルの検出対象位置となる9個の位置が存在する。辺s3には、第14の位置p14〜第19の位置p19の、動きベクトルの検出対象位置となる6個の位置が存在する。辺s4には、第19の位置p19〜第26の位置p26と第1の位置p1との、動きベクトルの検出対象位置となる9個の位置が存在する。
【0033】
このとき、動きベクトル検出部13は、長方形Kの各辺に存在する第1の位置p1〜第26の位置p26それぞれについて、第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する(S4)。つまり、動きベクトル検出部13は、図5に示すように、長方形Kの各辺に存在する第1の位置p1〜第26の位置p26それぞれにおける動きベクトルを検出する。図5は、動きベクトル検出部13によって検出された、長方形Kの各辺における第1の位置p1〜第26の位置p26それぞれの、第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを示す図である。なお、図5の各位置のベクトルの終点は、第2のフレームにおけるその位置に対応する位置に相当する。
【0034】
図3に戻る。透視変換パラメータ生成部14は、動きベクトル検出部13によって検出された第1の位置p1〜第26の位置p26それぞれの、第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを用いて、第2のフレームを補正するための透視変換パラメータを生成する(S5)。図6を用いて、透視変換パラメータ生成部14の動作を具体的に説明する。図6は、透視変換パラメータ生成部14の動作の各ステップを示すフローチャートである。
【0035】
先ず、透視変換パラメータ生成部14は、動きベクトル検出部13によって検出された各動きベクトルの始点を特定の長方形Kの対応する位置に一致させ、そのときの長方形Kの各辺について、全ての動きベクトルの終点を近似的に結ぶ一つの直線を算出する(S11)。具体的に説明すると、図5では、動きベクトル検出部13によって検出された各動きベクトルの始点は、長方形Kの対応する位置に一致しており、透視変換パラメータ生成部14は、図5の辺s1の第1の位置p1〜第6の位置p6それぞれにおける動きベクトルの終点を、最小二乗法を用いて近似的に直線で結び、図7に示す直線F1を算出する。図7は、図5の長方形Kの各辺について、全ての動きベクトルの終点を、最小二乗法を用いて近似的に結んだ直線を示す図である。直線F1は辺s1に対応する直線である。
【0036】
ところで、複数の位置を最小二乗法を用いて近似的に結ぶ直線を「y=ax+b」と記述すると、「a」は下記の式(4)により決定され、「b」は下記の式(5)により決定される。
【0037】
【数4】

【数5】

【0038】
式(4)及び式(5)において、「n」は位置の個数を示し、「x」は各位置のx座標を示し、「y」は各位置のy座標を示している。透視変換パラメータ生成部14は、上記の式(4)及び式(5)を用いて、図7に示す直線F1として「y=ax+b」を算出する。
【0039】
また、透視変換パラメータ生成部14は、上記の式(4)及び式(5)を用いて、図5の辺s2の第6の位置p6〜第14の位置p14それぞれにおける動きベクトルの終点を近似的に結ぶ、図7に示す直線F2を算出する。直線F2は、辺s2に対応する直線であって、「y=ax+b」と表現される。同様に、透視変換パラメータ生成部14は、図5の辺s3及び辺s4それぞれについて、動きベクトルの終点を近似的に結ぶ、図7に示す直線F3及び直線F4を算出する。直線F3は、辺s3に対応する直線であって、「y=a+b」と表現される。直線F4は、辺s4に対応する直線であって、「y=a+b」と表現される。
【0040】
ここで、図6のステップS11において算出された4個の直線により形成される四辺形を図7に示すように四辺形Mと定義する。図7の四辺形Mは、第2のフレームにおける、第1のフレームの長方形Kに対応する四辺形である。透視変換パラメータ生成部14は、ステップS11の動作の次に、四辺形Mの各頂点の座標を算出する(図6のS12)。
【0041】
図8は、第1のフレームの長方形K及びその長方形Kの各頂点と、第2のフレームの四辺形M及びその四辺形Mの各頂点とを説明するための図である。
【0042】
図8に示すように、四辺形Mの各頂点のうち、直線F4と直線F1との交点である頂点をQ1とし、頂点Q1の座標を(x,y)と定義し、直線F1と直線F2との交点である頂点をQ2とし、頂点Q2の座標を(x,y)と定義し、直線F2と直線F3との交点である頂点をQ3とし、頂点Q3の座標を(x,y)と定義し、直線F3と直線F4との交点である頂点をQ4とし、頂点Q4の座標を(x,y)と定義する。透視変換パラメータ生成部14は、上述した4個の直線の式を用いて、四辺形Mの頂点Q1、頂点Q2、頂点Q3、及び頂点Q4それぞれの座標を算出する(図6のS12)。
【0043】
次に、長方形Kの各頂点のうち、辺s4と辺s1との交点である頂点をH1とし、頂点H1の座標を(u,v)と定義し、辺s1と辺s2との交点である頂点をH2とし、頂点H2の座標を(u,v)と定義し、辺s2と辺s3との交点である頂点をH3とし、頂点H3の座標を(u,v)と定義し、辺s3と辺s4との交点である頂点をH4とし、頂点H4の座標を(u,v)と定義する。
【0044】
上述したように、直線F1が辺s1に対応しており、直線F2が辺s2に対応しており、直線F3が辺s3に対応しており、直線F4が辺s4に対応している。そのため、四辺形Mの頂点Q1は長方形Kの頂点H1と対応しており、四辺形Mの頂点Q2は長方形Kの頂点H2と対応しており、四辺形Mの頂点Q3は長方形Kの頂点H3と対応しており、四辺形Mの頂点Q4は長方形Kの頂点H4と対応している。
【0045】
このとき、透視変換パラメータ生成部14は、長方形Kと四辺形Mとの対応する頂点相互の座標を比較して透視変換パラメータを生成する(図6のS13)。具体的には、透視変換パラメータ生成部14は、下記の式(6)を用いて、第1のフレームと第2のフレームとの間の大域的な動きを推定する透視変換パラメータA’を生成する。透視変換パラメータA’は、
「A’=(a’11 a’12 a’13 a’2122’ a’23 a’31 a’32」と表現される。
【0046】
【数6】

式(6)において、U=(uである。
【0047】
このように、透視変換パラメータ生成部14は、第1のフレームに含まれる長方形Kの各辺の複数の位置それぞれの位置の第2のフレームの対応する位置への動きベクトルの始点を、長方形Kの対応する位置に一致させ、そのときの長方形Kの各辺について、全ての動きベクトルの終点を近似的に結ぶ一つの直線を算出する。そして、透視変換パラメータ生成部14は、算出した4個の直線により形成される四辺形Mの各頂点の座標と、長方形Kの対応する各頂点の座標とを用いて透視変換パラメータA’を生成する。
【0048】
すなわち、透視変換パラメータ生成部14は、第1のフレームの長方形Kの4個の頂点の座標と、第2のフレームの、第1のフレームの長方形Kに対応する四辺形Mの4個の頂点の座標とを用いて、透視変換パラメータA’を生成する。これにより、透視変換パラメータ生成部14は、第1のフレームと第2のフレームとの間の信頼性の高い大域的な動きを推定する透視変換パラメータA’を生成することができる。
【0049】
図3に戻る。透視変換パラメータ生成部14によって透視変換パラメータA’が生成されると(S5)、補正部15は、下記の式(7)及び式(8)を用いて、第2のフレームの各画素の座標(x,y)を透視変換して補正し、それにより第2のフレームを補正する(S6)。
【0050】
【数7】

【数8】

式(7)及び式(8)において、a’11,a’12,a’13,a’21,a’22,a’23,a’31,及び,a’32は、透視変換パラメータ生成部14によって生成された透視変換パラメータA’を構成する各値である。また、a’33=1である。
【0051】
補正部15が第2のフレームの各画素の座標(x,y)を透視変換することにより、Pitch又はYawといった手ぶれがあるときに撮影されて得られた第2のフレームは、手ぶれがないときに撮影されて得られたようなフレームに補正される。つまり、補正部15は、Pitch又はYawといった手ぶれがあるときに撮影されて得られた第2のフレームを、手ぶれがないときに撮影されて得られたようなフレームに補正することができる。
【0052】
上述したように、透視変換パラメータ生成部14は、第1のフレームに含まれる長方形Kの各辺の複数の位置それぞれの第2のフレームの対応する位置への動きベクトルの始点を、長方形Kの対応する位置に一致させ、そのときの長方形Kの各辺について、全ての動きベクトルの終点を近似的に結ぶ一つの直線を算出する。そして、透視変換パラメータ生成部14は、算出した4個の直線により形成される四辺形Mの各頂点の座標と、長方形Kの対応する各頂点の座標とを用いて透視変換パラメータA’を生成する。これにより、第1のフレームと第2のフレームとの間の信頼性の高い大域的な動きを推定する透視変換パラメータが生成されるという効果が得られる。
【0053】
また、補正部15が透視変換パラメータ生成部14によって生成された透視変換パラメータA’を用いて第2のフレームの各位置の座標を補正するので、第2のフレームは、手ぶれがないときに撮影されて得られたようなフレームに補正されるという効果が得られる。
【0054】
なお、上述した実施の形態の長方形Kは、長方形以外の四辺形であってもよい。
【0055】
また、第2のフレームが、Pan、Tilt、Roll、すなわち、平行移動、回転等の手ぶれがあるときに撮影されて得られたフレームであっても、透視変換を用いることにより、第2のフレームは、手ぶれがないときに撮影されて得られたようなフレームに補正することができる。
【0056】
また、透視変換パラメータ生成部14によって用いられる動きベクトルは、符号化等の目的で検出された動きベクトルであってもよい。
【0057】
更に、上述した実施の形態の画像処理装置1の各構成部の機能は、例えばコンピュータのCPU(プロセッサ)及びメモリ等のハードウェアと、その機能を実現するためのコンピュータプログラムとが協働することによって実現される。しかしながら、上記各機能は、専用の回路により実現される等、どのような形態により実現されてもよい。また、画像処理装置1の各構成部の機能を実現するためのコンピュータプログラムは、記録媒体に格納されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 画像処理装置、 11 取得部、 12 保持部、 13 動きベクトル検出部、 14 透視変換パラメータ生成部、 15 補正部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレームと、第2のフレームとを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、前記取得部によって取得された前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記動きベクトル検出部によって検出された各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成部と
を備える透視変換パラメータ生成装置。
【請求項2】
第1のフレームと、第2のフレームとを取得する取得部と、
前記取得部によって取得された前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、前記取得部によって取得された前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する動きベクトル検出部と、
前記動きベクトル検出部によって検出された各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成する透視変換パラメータ生成部と、
前記取得部によって取得された前記第2のフレームの各位置の座標を、前記透視変換パラメータ生成部によって生成された前記透視変換パラメータを用いて補正する補正部と
を備える画像補正装置。
【請求項3】
第1のフレームと、第2のフレームとを取得するステップと、
取得した前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得した前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出するステップと、
検出した各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成するステップと
を含む透視変換パラメータ生成方法。
【請求項4】
第1のフレームと、第2のフレームとを取得するステップと、
取得した前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得した前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出するステップと、
検出した各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成するステップと、
取得した前記第2のフレームの各位置の座標を、生成した前記透視変換パラメータを用いて補正するステップと
を含む画像補正方法。
【請求項5】
第1のフレームと、第2のフレームとを取得する機能と、
取得した前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得した前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する機能と、
検出した各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項6】
第1のフレームと、第2のフレームとを取得する機能と、
取得した前記第1のフレームのなかの第1の四辺形の各辺の複数の位置それぞれについて、取得した前記第2のフレームの対応する位置への動きベクトルを検出する機能と、
検出した各動きベクトルの始点を前記第1の四辺形の対応する位置に一致させ、そのときの前記第1の四辺形の各辺について、複数の動きベクトルの終点を一つの直線で近似的に結び、その結んで得られる4個の直線によって形成される第2の四辺形の4個の頂点の座標と、前記第1の四辺形の4個の頂点の座標とを用いて、前記第1の四辺形と前記第2の四辺形との間の透視変換パラメータを生成する機能と、
取得した前記第2のフレームの各位置の座標を、生成した前記透視変換パラメータを用いて補正する機能と
をコンピュータに実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−103031(P2011−103031A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257137(P2009−257137)
【出願日】平成21年11月10日(2009.11.10)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】