説明

透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法

【課題】本発明は、透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法に関する。
【解決手段】本発明の透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、少なくとも一つの第一スルーホールを有するキャリヤー、及び少なくとも一つの第二スルーホールを有する固定体を提供する第一ステップと、カーボンナノチューブ支持体を提供し、該カーボンナノチューブ支持体を前記第一スルーホールに被覆する第二ステップと、前記固定体及び前記キャリヤーを積層して、前記カーボンナノチューブ支持体を前記キャリヤーと前記固定体との間に固定する第三ステップと、を含む。また、本発明は、複数の透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法に関して、特にカーボンナノチューブ構造体を利用した透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
透過型電子顕微鏡(TEM)は、より微小な試料の観察と分析に対して、非常に重要なツールである。前記透過型電子顕微鏡により、薄い試料の高解像度の画像及び材料の分析を提供することができる。前記透過型電子顕微鏡において、透過型電子顕微鏡グリッドは、試料を載せることができる。前記透過型電子顕微鏡グリッドは、銅又はニッケルなどの金属からなるグリッドと、前記グリッドを被覆した有機多孔膜材料と、前記有機多孔膜材料を被覆したアモルファスカーボン膜と、を含む。しかしながら、TEMでサイズが非常に微小なナノ粒子を観察する場合に、前記アモルファスカーボン膜から生じるバックグラウンドノイズが高い。
【0003】
九十年代から、カーボンナノチューブ(非特許文献1を参照)を代表とするナノ材料は、独特な構造及び性質を有するので、広く研究がなされている。カーボンナノチューブを前記透過型電子顕微鏡グリッドに応用する場合、前記アモルファスカーボン膜が前記試料の分析に与える影響を減少することができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】S.Iijima、“Helical Microtubules of Graphitic Carbon”、Nature、1991年、第354巻、p.56
【非特許文献2】Kaili Jiang、Qunqing Li、Shoushan Fan、“Spinning continuous carbon nanotube yarns”、Nature、2002年、第419巻、p.801
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記カーボンナノチューブは、重量が軽いので、前記透過型電子顕微鏡グリッドに応用される場合、移動しやすい。従って、前記カーボンナノチューブは、前記透過型電子顕微鏡の解像度及び試料を分析する正確性に影響を与える。
【課題を解決するための手段】
【0006】
透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、少なくとも一つの第一スルーホールを有するキャリヤー、及び少なくとも一つの第二スルーホールを有する固定体を提供する第一ステップと、カーボンナノチューブ支持体を提供し、該カーボンナノチューブ支持体を前記第一スルーホールに被覆する第二ステップと、前記固定体及び前記キャリヤーを積層して、前記カーボンナノチューブ支持体を前記キャリヤーと前記固定体との間に固定する第三ステップと、を含む。
【0007】
前記キャリヤーと前記固定体とを積層して設置する場合、前記キャリヤーの第一スルーホールと前記固定体の第二スルーホールとの少なくとも一部を重ね合わせる。
【0008】
透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、少なくとも一つの第一スルーホールを有するキャリヤー、及び少なくとも一つの第二スルーホールを有する固定体を提供し、前記キャリヤー及び前記固定体が接続部を有し、該接続部に折り畳み部が形成され、前記キャリヤー及び前記固定体が前記折り畳み部により、移動可能に接続される第一ステップと、カーボンナノチューブ支持体を提供し、該カーボンナノチューブ支持体を前記第一スルーホールに被覆する第二ステップと、前記固定体及び前記キャリヤーを積層して、前記カーボンナノチューブ支持体を前記キャリヤーと前記固定体との間に固定する第三ステップと、を含む。
【0009】
複数の透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、それぞれ少なくとも一つの第一スルーホールを有する複数のキャリヤーを提供し、該複数のキャリヤーを、間隔を置いて基板の表面に設置する第一ステップと、カーボンナノチューブ構造体を提供し、該カーボンナノチューブ構造体を複数の前記キャリヤーの第一スルーホールに被覆する第二ステップと、複数の固定体を提供し、各々の固定体がそれぞれ少なくとも一つの第二スルーホールを有し、各々の固定体をそれぞれ前記キャリヤーに設置し、前記カーボンナノチューブ構造体を複数の前記キャリヤーと複数の前記固定体との間に固定する第三ステップと、隣接した前記キャリヤーの間の隙間の前記カーボンナノチューブ構造体を切断し、複数の透過型電子顕微鏡グリッドを形成する第四ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
従来の技術と比べて、本発明の透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法で製造された透過型電子顕微鏡グリッドは、カーボンナノチューブ構造体が前記キャリヤーと前記固定体との間に設置されるので、該カーボンナノチューブ構造体が固定され、移動しにくい。また、該透過型電子顕微鏡グリッドを挟む工具が前記カーボンナノチューブ構造体に接触することを防止できるので、前記工具による前記カーボンナノチューブ構造体への汚染を減少することができる。従って、前記透過型電子顕微鏡を利用して、試料を分析する正確性及び解像度を高めることができる。また、前記透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、簡単で便利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態1に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す分解図である。
【図2】本発明の実施形態1に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す図である。
【図3】本発明の実施形態2に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す分解図である。
【図4】本発明の実施形態2に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す図である。
【図5】本発明の実施形態3に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す分解図である。
【図6】本発明の実施形態3に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す図である。
【図7】本発明の実施形態4に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す分解図である。
【図8】本発明の実施形態4に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す図である。
【図9】本発明の実施形態5に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す分解図である。
【図10】本発明の実施形態5に係る透過型電子顕微鏡グリッドの構造を示す図である。
【図11】本発明の実施形態5に係る透過型電子顕微鏡グリッドを製造する図である。
【図12】本発明の実施形態6に係る透過型電子顕微鏡グリッドのキャリヤー及び固定体の構造を示す図である。
【図13】本発明の実施形態6に係る透過型電子顕微鏡グリッドの断面図である。
【図14】本発明の実施形態6に係る透過型電子顕微鏡グリッドを製造する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
【0013】
(実施形態1)
図1及び図2を参照すると、本実施形態は、透過型電子顕微鏡グリッド10を提供する。該透過型電子顕微鏡グリッド10は、キャリヤー110と、カーボンナノチューブ支持体120と、固定体130と、を含む。前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記キャリヤー110と前記固定体130との間に設置される。好ましくは、前記透過型電子顕微鏡グリッド10は、外径が3ミリメートルであり、厚さが3マイクロメートル〜20マイクロメートルである円形のシートである。
【0014】
前記キャリヤー110は、少なくとも一つの第一スルーホール116を含む。該第一スルーホール116の形状は、円形、四角形、六角形、八角形、楕円形のいずれか一種である。
【0015】
具体的には、前記キャリヤー110は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記キャリヤー110は、第一円形のシート本体111を含む。該第一円形のシート本体111は、第一リング112及び第一網状構造114を有する。前記第一リング112は、一つのスルーホール(図示せず)を有し、前記第一網状構造114は、複数の第一スルーホール116を有する。前記第一リング112のスルーホールは、前記第一網状構造114で被覆されている。前記第一網状構造114の第一スルーホール116のサイズが制限されず、10マイクロメートル〜200マイクロメートルである。ここで、前記第一スルーホール116の「サイズ」とは、該第一スルーホール116の開口の最大の径である。前記第一スルーホール116の形状及びその配置方式は制限されず、隣接する前記第一スルーホール116の間の距離もまた制限されない。好ましくは、前記第一スルーホール116は、前記キャリヤー110の表面に均一的に設置され、隣接した前記第一スルーホール116の距離が1マイクロメートル以上である。前記キャリヤー110の材料は、銅、ニッケル、モリブデン、セラミックスのいずれか一種である。前記キャリヤー110の第一網状構造114は、エッチング法によって、形成される。前記第一リング112には、二つのスリット118が形成されている。該二つのスリット118は対称に設置され、前記固定体130と固定することに用いられる。
【0016】
本実施形態において、前記複数の第一スルーホール116は、前記キャリヤー110の表面に均一に設置され、単一の前記第一スルーホール116の形状が四角形である。前記キャリヤー110は、銅からなり、その外径が3ミリメートルである。前記隣接する第一スルーホール116の間の距離は、同じである。前記第一スルーホール116のサイズは、40マイクロメートル〜120マイクロメートルである。前記第一網状構造114は、前記第一リング112と同じ平面に位置する。
【0017】
前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記キャリヤー110の表面に設置される。さらに、前記カーボンナノチューブ支持体120は、少なくとも一部の前記複数の第一スルーホール116を被覆する。好ましくは、前記カーボンナノチューブ支持体120は、全ての前記第一スルーホール116を被覆する。前記カーボンナノチューブ支持体120は、シート状構造体である。好ましくは、前記カーボンナノチューブ支持体120は、直径が3ミリメートル以下である円形シート構造体である。より好ましくは、前記カーボンナノチューブ支持体120は、直径が2.8ミリメートル以下である円形シート構造体である。
【0018】
前記カーボンナノチューブ支持体120は、自立構造を有するものである。ここで、自立構造とは、支持体材を利用せず、前記カーボンナノチューブ支持体120を独立して利用することができるという形態のことである。すなわち、前記カーボンナノチューブ支持体120を対向する両側から支持して、前記カーボンナノチューブ支持体120の構造を変化させずに、前記カーボンナノチューブ支持体120を懸架させることができることを意味する。
【0019】
前記カーボンナノチューブ支持体120は、少なくとも、一つのカーボンナノチューブフィルムを含む。該カーボンナノチューブフィルムは、カーボンナノチューブアレイから引き出して形成され、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブからなり、自立構造を有するものである。前記カーボンナノチューブアレイにおけるカーボンナノチューブの高さ及び密度によって、引き出して形成されたカーボンナノチューブフィルムの厚さは0.5ナノメートル〜100マイクロメートルである。前記カーボンナノチューブフィルムの幅は、該カーボンナノチューブフィルムが形成されたカーボンナノチューブアレイのサイズと関係があって、前記カーボンナノチューブフィルムの長さは、制限されない。単一の前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記複数のカーボンナノチューブの大部分は、前記カーボンナノチューブフィルムの表面に平行に、カーボンナノチューブフィルムを引き出す方向に沿って、且つ、同じ方向に沿って配列されている。前記複数のカーボンナノチューブは、分子間力で端と端が接続されている。
【0020】
微視的には、前記カーボンナノチューブフィルムにおいて、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブ以外に、該同じ方向に沿っておらずランダムな方向を向いたカーボンナノチューブも存在している。ここで、該ランダムな方向を向いたカーボンナノチューブは、前記同じ方向に沿って配列された複数のカーボンナノチューブと比べて、割合は小さい。
【0021】
具体的には、単一の前記カーボンナノチューブフィルムは、複数のカーボンナノチューブセグメントを含む。前記複数のカーボンナノチューブセグメントは、長さ方向に沿って分子間力で端と端が接続されている。それぞれのカーボンナノチューブセグメントは、相互に平行に、分子間力で結合された複数のカーボンナノチューブを含む。
【0022】
前記カーボンナノチューブ支持体120は、積層された複数のカーボンナノチューブフィルムを含むことができる。前記カーボンナノチューブ支持体120が複数のカーボンナノチューブフィルムを含む場合、隣接したカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で接続される。隣接したカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブの配列方向は、同じでもよく、異なってもよい。具体的には、隣接したカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、角度αが形成され、該角度αが0°〜90°である。より好ましくは、前記角度αが0°ではない。さらに好ましくは、前記角度αが90°である。
【0023】
前記複数のカーボンナノチューブフィルムが積層して設置され、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが所定の角度で交差するので、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブは、網状構造体に形成される。従って、前記カーボンナノチューブ支持体120の機械性能を高める同時に、均一かつ規則的に配列した複数の微孔122を有するカーボンナノチューブ支持体120を形成することができる。前記微孔122の直径は、前記カーボンナノチューブフィルムの枚数と関係があって、前記カーボンナノチューブフィルムの枚数が多くなるほど、前記微孔122の直径が小さくなる。前記微孔122の直径は、1ナノメートル〜1マイクロメートルである。前記カーボンナノチューブ支持体120の厚さは、100マイクロメートル以下であることが好ましい。
【0024】
前記カーボンナノチューブ支持体120は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ網状構造体であることもできる。該カーボンナノチューブ網状構造体は、複数の微孔を含む。該微孔の直径が1ナノメートル〜1マイクロメートルである。前記カーボンナノチューブワイヤは、複数のカーボンナノチューブからなり、非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤ又はねじれ状カーボンナノチューブワイヤである。
【0025】
前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、該カーボンナノチューブワイヤの中心軸に平行に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、有機溶剤で前記カーボンナノチューブフィルムを浸漬して、該カーボンナノチューブフィルムを収縮させて形成されたものである。前記非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤの長さは、制限されず、直径が0.5ナノメートル〜1ミリメートルである。
【0026】
具体的には、揮発性有機溶剤で、前記カーボンナノチューブフィルムの表面を浸漬して、前記揮発性有機溶剤の表面張力の作用で前記カーボンナノチューブフィルムにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該カーボンナノチューブフィルムが非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤに収縮される。前記揮発性有機溶剤は、アルコール、メチル・アルコール、アセトン、ジクロロエタン又はクロロホルムである。本実施形態において、前記揮発性有機溶剤は、アルコールを採用する。前記揮発性有機溶剤で処理された非ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、前記揮発性有機溶剤で処理されていないカーボンナノチューブフィルムと比べて、比表面積が小さくなり、接着性が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0027】
前記ねじれ状カーボンナノチューブワイヤは、前記カーボンナノチューブワイヤの中心軸を軸に、螺旋状に配列された複数のカーボンナノチューブを含む。前記カーボンナノチューブフィルムを機械加工(例えば、紡糸工程)して前記ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。詳しく説明すれば、まず、前記カーボンナノチューブフィルムを紡糸装置に固定させる。次に、前記紡糸装置を動作させて前記カーボンナノチューブフィルムを回転させ、ねじれたカーボンナノチューブワイヤを形成する。
【0028】
また、前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤを揮発性有機溶剤で処理してもよい。前記揮発性有機溶剤の表面張力の作用で前記ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤにおける隣接するカーボンナノチューブが分子間力で緊密に接続されるので、該ねじれ状のカーボンナノチューブワイヤは、直径及び比表面積が小さくなり、大きな密度、優れた機械強度及び優れた強靭性を有する。
【0029】
前記カーボンナノチューブワイヤが、揮発性有機溶剤又は機械外力で前記カーボンナノチューブフィルムを処理し、形成されたものであり、且つ前記カーボンナノチューブフィルムが、自立構造を有するので、該カーボンナノチューブワイヤも自立構造を有する。前記カーボンナノチューブワイヤにおけるカーボンナノチューブの間に、隙間があるので、該カーボンナノチューブワイヤには、複数の微孔がある。
【0030】
本実施形態において、前記カーボンナノチューブ支持体120は、二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなり、隣接する前記カーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが垂直して交差している。前記カーボンナノチューブ支持体120の直径が2.6ミリメートルである。前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記透過型電子顕微鏡グリッド10におけるキャリヤー110に被覆され、且つ前記複数の第一スルーホール116を完全に覆う。
【0031】
前記固定体130は、前記カーボンナノチューブ支持体120の前記キャリヤー110から離れる表面に設置されている。前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記固定体130と前記キャリヤー110との間に位置している。前記固定体130は、少なくとも一つの第二スルーホール136を有する。該第二スルーホール136の形状は、円形、四角形、六角形、八角形、楕円形のいずれか一種である。具体的には、前記固定体130は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記固定体130は、第二円形のシート本体131を含む。該第二円形のシート本体131は、第二リング132及び第二網状構造134を含む。前記第二リング132は、一つのスルーホール(図示せず)を有し、前記第二網状構造134は、複数の第二スルーホール136を有する。前記第二網状構造134は、前記第二リング132のスルーホールに被覆されている。前記第二網状構造134の第二スルーホール136のサイズが制限されず、10マイクロメートル〜200マイクロメートルである。前記第二スルーホール136の形状及びその配置方式が制限されず、隣接する前記第二スルーホール136の距離が制限されない。好ましくは、前記第二スルーホール136は、前記固定体130の表面に均一に設置され、隣接する前記第二スルーホール136の距離が1マイクロメートル以上である。前記固定体130は、材料が銅、ニッケル、モリブデン、セラミックスのいずれか一種であり、エッチング法によって形成される。前記第二リング132には、二つの凸部138が形成されている。該二つの凸部138が前記二つのスリット118と対応して設置される。前記キャリヤー110と前記固定体130とは、前記二つの凸部138をそれぞれ前記二つのスリット118に挿入することによって、固定する。従って、前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記キャリヤー110と前記固定体130との間に固定される。
【0032】
本実施形態において、前記固定体130の構造及びサイズは、前記キャリヤー110の構造及びサイズと同じである。即ち、前記固定体130の外径は3ミリメートルであり、前記第二スルーホール136の形状は四角形であり、そのサイズが前記第一スルーホール116のサイズと同じである。前記第二網状構造体134と前記第二リング132とは、同じ平面に位置される。前記複数の第一スルーホール116と前記複数の第二スルーホール136とは、位置をずらして設置され、複数の第三スルーホール150が形成される。即ち、前記第三スルーホール150は、前記第一スルーホール116と前記第二スルーホール136とが重なり合っている領域である。前記第三スルーホール150のサイズは、前記第一スルーホール116又は前記第二スルーホール136のサイズより小さく、20マイクロメートル〜60マイクロメートルである。前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記第三スルーホール150に懸架して設置される。
【0033】
前記スリット118及び前記凸部138の数量は、制限されない。前記スリット118及び前記凸部138により、前記カーボンナノチューブ支持体120を前記固定体130と前記キャリヤー110との間に固定できる。前記固定体130と前記キャリヤー110とを固定する方式は制限されず、溶接を採用することができる。
【0034】
前記透過型電子顕微鏡グリッド10を応用する場合、試料を前記カーボンナノチューブ支持体120の表面に設置する。前記試料の粒径が前記カーボンナノチューブ支持体120の微孔122より大きい場合、該カーボンナノチューブ支持体120で前記試料を支持することができるので、透過型電子顕微鏡を通して前記試料を観測することができる。前記試料の粒径が前記カーボンナノチューブ支持体120の微孔122より小さく、特に前記試料の粒径が5ナノメートル以下である場合、前記試料は、前記カーボンナノチューブ支持体120におけるカーボンナノチューブの接着性によって、該カーボンナノチューブの表面に安定的に接着される。これによって、透過型電子顕微鏡を通して前記試料を観測することもできる。
【0035】
前記透過型電子顕微鏡グリッド10における前記カーボンナノチューブ支持体120は、前記固定体130及び前記キャリヤー110に固定されるので、ピンセットで前記透過型電子顕微鏡グリッド10を移動する時、前記カーボンナノチューブ支持体120に直接接触せず、該ピンセットで前記固定体130及び前記キャリヤー110を挟むことができる。これにより、前記ピンセットが前記カーボンナノチューブ支持体120に直接接触することを防止でき、また、該カーボンナノチューブ支持体120の移動を防止できる。同時に、前記ピンセットが前記カーボンナノチューブ支持体120に直接接触しないので、該カーボンナノチューブ支持体120への汚染を減少することができる。従って、前記透過型電子顕微鏡グリッド10を利用して、試料を分析して得る結果の正確性及び解像度を高めることができる。
【0036】
前記カーボンナノチューブ支持体120は、複数の端と端とが接続されたカーボンナノチューブからなり、カーボンナノチューブの軸方向への導電性が優れるので、前記カーボンナノチューブ支持体120の導電性が優れる。従って、前記カーボンナノチューブ支持体120の表面に蓄積された電子を速く伝導することができるので、試料を観測することに有利である。
【0037】
また、前記カーボンナノチューブ支持体120のカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で複数の端と端とが接続されたカーボンナノチューブからなるので、該カーボンナノチューブフィルムが優れた安定性を有する。従って、前記試料を観測する場合、前記カーボンナノチューブ支持体120におけるカーボンナノチューブが移動しないので、観測した試料の画像の解像度が優れる。さらに、前記カーボンナノチューブ支持体120におけるカーボンナノチューブが配向して配列されるので、前記試料を観測する場合、該試料を探すことに有利である。
【0038】
(実施形態2)
図3及び図4を参照すると、本実施形態は、透過型電子顕微鏡グリッド20を提供する。該透過型電子顕微鏡グリッド20は、キャリヤー210と、カーボンナノチューブ支持体220と、固定体230と、を含む。前記カーボンナノチューブ支持体220は、前記キャリヤー210と前記固定体230との間に設置される。好ましくは、前記透過型電子顕微鏡グリッド20は、外径が3ミリメートルであり、厚さが3マイクロメートル〜20マイクロメートルである円形のシートである。
【0039】
前記キャリヤー210は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記キャリヤー210は、第一円形のシート本体211を含む。該第一円形のシート本体211は、第一リング212及び複数の第一帯状構造214を有する。前記第一リング212は、一つのスルーホール(図示せず)を有し、前記複数の第一帯状構造214は、間隔を置いて前記第一リング212のスルーホールに懸架して設置され、複数の第一スルーホール216が形成される。前記第一リング212には、二つのスリット218が形成されている。該二つのスリット218は対称に設置されて、前記固定体230と固定することに用いられる。
【0040】
前記固定体230は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記固定体230は、第二円形のシート本体231を含む。該第二円形のシート本体231は、第二リング232及び複数の第二帯状構造234を有する。前記第二リング232は、一つのスルーホール(図示せず)を有し、前記複数の第二帯状構造234は、間隔を置いて前記第二リング232のスルーホールに懸架して設置され、複数の第二スルーホール236が形成される。前記第二リング232には、二つの凸部238が形成されている。該二つの凸部238はそれぞれ前記二つのスリット218と対応して設置される。前記キャリヤー210と前記固定体230とは、前記二つの凸部238をそれぞれ前記二つのスリット218に挿入することによって、固定する。従って、前記カーボンナノチューブ支持体220は、前記キャリヤー210と前記固定体230との間に固定される。
【0041】
前記カーボンナノチューブ支持体220の構造は、前記実施形態1におけるカーボンナノチューブ支持体120と同じで、前記第一リング212と前記第二リング232の構造は、前記実施形態1における第一リング112と前記第二リング132の構造と同じである。前記透過型電子顕微鏡グリッド20において、前記複数の第一帯状構造214が平行して等しい間隔を置いて設置され、複数の平行する第一スルーホール216が形成され、前記隣接する第一帯状構造214の間の距離が30マイクロメートル〜150マイクロメートルである。前記複数の第二帯状構造234が平行して等しい間隔を置いて設置され、複数の平行する第二スルーホール236が形成され、前記隣接する第二帯状構造234の間の距離が30マイクロメートル〜150マイクロメートルである。前記複数の第一帯状構造214は、前記カーボンナノチューブ支持体220を介して、前記複数の第二帯状構造234と垂直に交差して設置される。従って、前記複数の第一スルーホール216と前記複数の第二スルーホール236とが、垂直に交差して設置されるので、複数の第三スルーホール250が形成される。前記複数の第三スルーホール250のサイズが30マイクロメートル〜150マイクロメートルであり、隣接する第三スルーホール250の間の距離が1マイクロメートル以上である。前記カーボンナノチューブ支持体220は、各々の第三スルーホール250に懸架して設置され、試料を支持することに用いられる。
【0042】
勿論、前記第一帯状構造214と前記第二帯状構造234とが成す角度は、0度以上で90度より小さい。前記第一帯状構造214及び前記第二帯状構造234の配置方式は、本実施例に制限されない。例えば、前記隣接する第一帯状構造214の間の距離が等しくなくてもよく、前記複数の第一帯状構造214が交差して配置されてもよく、隣接する前記第一帯状構造214の間の距離が10マイクロメートル〜200マイクロメートルであってもよく、前記第一帯状構造214の幅が1マイクロメートルより大きくてもよい。前記隣接する第二帯状構造234の間の距離が等しくなくてもよく、前記複数の第二帯状構造234が交差して配置されてもよく、隣接する前記第二帯状構造234の間の距離が10マイクロメートル〜200マイクロメートルであってもよく、前記第二帯状構造234の幅が1マイクロメートルより大きくてもよい。前記第二帯状構造234の配置方式は、前記第一帯状構造214の配置方式と異なってもよい。
【0043】
勿論、前記キャリヤー210における第一帯状構造214及び前記固定体230における第二帯状構造234は、エッチング法によって形成することができる。しかし、これに制限されず、前記第一帯状構造214及び前記第二帯状構造234は、線引き(wire drawing)法によって形成された線状構造体であってもよい。前記線引き法とは、加工前の線材を、該線材の径よりも小さな孔を通して引くことにより、該線材を当該孔の径まで細くする方法である。
【0044】
(実施形態3)
図5及び図6を参照すると、本実施形態は、透過型電子顕微鏡グリッド30を提供する。該透過型電子顕微鏡グリッド30は、キャリヤー310と、カーボンナノチューブ支持体320と、固定体330と、を含む。前記カーボンナノチューブ支持体320は、前記キャリヤー310と前記固定体330との間に設置される。好ましくは、前記透過型電子顕微鏡グリッド30の外径は、3ミリメートルであり、厚さが3マイクロメートル〜20マイクロメートルである円形のシートである。
【0045】
前記キャリヤー310は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記キャリヤー310は、第一円形のシート本体311を含む。該第一円形のシート本体311は、第一リング312及び第一網状構造314を有する。前記第一リング312は、一つのスルーホール(図示せず)を有し、前記第一網状構造314は、前記第一リング312のスルーホールを被覆して、複数の第一スルーホール316が形成される。前記第一リング312には、二つのスリット318が形成されている。該二つのスリット318は対称に設置され、前記固定体330と固定することに用いられる。
【0046】
前記固定体330は、第二リング332であり、該第二リング332が一つの第二スルーホール336を有する。前記第二リング332には、二つの凸部338が設置される。前記キャリヤー310と前記固定体330とは、前記二つの凸部338をそれぞれ前記二つのスリット318に挿入することによって、固定する。従って、前記カーボンナノチューブ支持体320は、前記キャリヤー310と前記固定体330との間に固定される。
【0047】
前記透過型電子顕微鏡グリッド30の構造は、前記実施形態1における透過型電子顕微鏡グリッド10の構造と基本的に同じである。具体的には、前記キャリヤー310の材料及び構造は、それぞれ、前記透過型電子顕微鏡グリッド10の前記キャリヤー110の材料及び構造と同じである。前記カーボンナノチューブ支持体320の材料及び構造は、それぞれ、前記透過型電子顕微鏡グリッド10の前記カーボンナノチューブ支持体120の材料及び構造と同じである。異なる点は、前記固定体330が第二リング332であり、一つの第二スルーホール336を有することである。前記固定体330の直径は、前記キャリヤー310の直径と同じである。好ましくは、前記第二リング332の内径は、前記第一リング312の内径と同じである。前記カーボンナノチューブ支持体320は、前記第一リング312と前記第二リング332との間に固定され、前記カーボンナノチューブ支持体320の直径は、前記第二リング332の内径より大きい。前記カーボンナノチューブ支持体320は、第一網状構造314に被覆され、前記複数の第一スルーホール316に懸架して設置される。
【0048】
(実施形態4)
図7と図8を参照すると、本実施形態は、透過型電子顕微鏡グリッド40を提供する。該透過型電子顕微鏡グリッド40は、キャリヤー410と、カーボンナノチューブ支持体420と、固定体430と、を含む。前記カーボンナノチューブ支持体420は、前記キャリヤー410と前記固定体430との間に設置される。好ましくは、前記透過型電子顕微鏡グリッド40の外径が3ミリメートルであり、厚さが3マイクロメートル〜20マイクロメートルである円形のシートである。
【0049】
前記キャリヤー410は、第一リング412である。該第一リング412は、一つの第一スルーホール416を有する。該第一リング412には、二つのスリット418が設置されている。前記固定体430は、第二リング432である。該第二リング432は、一つの第二スルーホール436を有する。該第二リング432には、凸部438が設置されている。前記キャリヤー410と前記固定体430とは、前記二つの凸部438をそれぞれ前記二つのスリット418に挿入することによって、固定する。従って、前記カーボンナノチューブ支持体420は、前記キャリヤー410と前記固定体430との間に固定される。
【0050】
前記カーボンナノチューブ支持体420は、前記キャリヤー410と前記固定体430との間に設置され、前記第一スルーホール416及び前記第二スルーホール436に懸架して設置される。前記カーボンナノチューブ支持体420の直径は、前記第一リング412及び前記第二リング432の内径より大きい。前記カーボンナノチューブ支持体420の構造は、前記実施形態1に記載した透過型電子顕微鏡グリッド10におけるカーボンナノチューブ支持体120の構造と基本的に同じである。好ましくは、前記カーボンナノチューブ支持体420が複数の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなり、隣接したカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが交差して設置されることである。本実施形態において、前記カーボンナノチューブ支持体420は、四枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなり、隣接したカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが垂直に設置される。前記カーボンナノチューブ支持体420は、均一的かつ規則的に配列された微孔を有して、該微孔の直径は1ナノメートル〜0.5マイクロメートルである。
【0051】
(実施形態5)
図9と図10を参照すると、本実施形態は、透過型電子顕微鏡グリッド50を提供する。該透過型電子顕微鏡グリッド50は、キャリヤー510と、カーボンナノチューブ支持体520と、固定体530と、を含む。前記カーボンナノチューブ支持体520は、前記キャリヤー510と前記固定体530との間に設置される。好ましくは、前記透過型電子顕微鏡グリッド50の外径が3ミリメートルであり、厚さが3マイクロメートル〜20マイクロメートルである円形のシートである。
【0052】
前記キャリヤー510と前記固定体530との間に接続部を有して、該接続部に折り畳み部550が形成される。前記キャリヤー510及び前記固定体530が前記折り畳み部550を介して移動可能に接続され、前記キャリヤー510及び前記固定体530を、開ける状態又は閉じる状態にする。前記折り畳み部550は、前記キャリヤー510及び前記固定体530を一体成型加工することによって形成されるものであり、回転軸であってもよい。前記キャリヤー510は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記キャリヤー510は、第一円形のシート本体511を含む。該第一円形のシート本体511は、第一リング512及び第一網状構造514を含む。前記第一リング512は、一つのスルーホールを有し、前記第一網状構造514は、前記第一リング512のスルーホールを被覆し、複数の第一スルーホール516が形成される。前記第一リング512は、一つのスリット518が形成され、前記固定体530と固定することに用いられる。
【0053】
前記固定体530は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記固定体530は、第二円形のシート本体531を含む。該第二円形のシート本体531は、第二リング532及び第二網状構造534を含む。前記第二リング532は、一つのスルーホールを有し、前記第二網状構造534は、前記第二リング532のスルーホールを被覆し、複数の第二スルーホール536が形成される。前記第二リング532は、一つの凸部538が形成され、該凸部538が前記スリット518と対応して設置される。
【0054】
具体的には、前記折り畳み部550は、前記第一円形のシート本体511と前記第二円形のシート本体531との間に設置され、即ち、前記第一円形のシート本体511と前記第二円形のシート本体531との接続部である。前記キャリヤー510及び前記固定体530は、前記折り畳み部550により、折り畳んだ後で、前記第一リング512の内側と前記第二リング532の内側とが対向して設置される。好ましくは、前記キャリヤー510及び前記固定体530は、折り畳んだ後、完全に重なり合う。前記キャリヤー510及び前記固定体530が折り畳まれると、前記凸部538は、前記スリット518に挿入され、前記第一リング512に固定されるので、前記キャリヤー510及び前記固定体530は、固定される。従って、前記カーボンナノチューブ支持体520は、前記キャリヤー510と前記固定体530との間に挟持される。
【0055】
本実施形態において、前記キャリヤー510及び前記固定体530は、一体成型加工により形成されたものである。前記キャリヤー510の構造と前記固定体530の構造とが同じである。前記第一スルーホール516及び前記第二スルーホール536の構造は、それぞれ、前記実施形態1に記載した透過型電子顕微鏡グリッド10における前記第一スルーホール116及び前記第二スルーホール136の構造と同じである。前記第一スルーホール516の形状及びサイズは、前記第二スルーホール536の形状及びサイズと同じである。前記キャリヤー510及び前記固定体530が折り畳まれた後、前記第一スルーホール516及び前記第二スルーホール536がそれぞれ対応して重なり合う。前記カーボンナノチューブ支持体520は、前記第一スルーホール516及び前記第二スルーホール536に懸架して設置される。
【0056】
前記カーボンナノチューブ支持体520は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ網状構造体である。本実施形態において、前記カーボンナノチューブ支持体520は、二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムであり、隣接するカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが垂直に設置され、均一的かつ規則的に配列された微孔が形成され、該微孔の直径が1ナノメートル〜1マイクロメートルである。
【0057】
前記キャリヤー510及び前記固定体530を固定することが可能であれば、前記スリット518及び前記凸部538の数量と構造は、制限されず、勿論、前記スリット518及び前記凸部538を設置しないで、他の方式を利用してもよい。
【0058】
前記透過型電子顕微鏡グリッド50を利用する場合、ピンセットなどの工具で前記キャリヤー510及び前記固定体530を挟むことができる。従って、ピンセットなどの工具が前記カーボンナノチューブ支持体520に直接に接触しないので、該カーボンナノチューブ支持体520が移動すること及び前記カーボンナノチューブ支持体520を汚染することを防止でき、前記透過型電子顕微鏡グリッド50の解像度及び正確度を高めることができる。勿論、前記キャリヤー510及び前記固定体530が前記手段を利用して固定される場合、前記カーボンナノチューブ支持体520を更に固定することができるので、前記透過型電子顕微鏡グリッド50を利用する場合、更に前記カーボンナノチューブ支持体520が移動することを防止できる。
【0059】
勿論、前記実施形態1、実施形態2、実施形態3、実施形態4におけるキャリヤー及び固定体も一体成型加工することによって形成されたものであってもよい。
【0060】
本発明は、透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法を提供する。該方法は、少なくとも一つの第一スルーホールを有するキャリヤー、及び少なくとも一つの第二スルーホールを有する固定体を提供するステップと、カーボンナノチューブ支持体を提供し、該カーボンナノチューブ支持体を前記第一スルーホールに被覆させるステップと、前記固定体及び前記キャリヤーを積層して、前記カーボンナノチューブ支持体を前記キャリヤーと前記固定体との間に固定させるステップと、を含む。
【0061】
前記キャリヤー及び前記固定体は、分離した構造体又は一体成型構造体である。
【0062】
前記カーボンナノチューブ支持体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤ、又は、一つのカーボンナノチューブ網状構造体である。前記カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤは、カーボンナノチューブアレイから引き出して形成したものである。前記カーボンナノチューブ網状構造体は、複数の前記カーボンナノチューブワイヤを編み、又は交差させて形成したものである。
【0063】
図9〜図11を参照して、透過型電子顕微鏡グリッド50の製造方法を説明する。該製造方法は、下記のステップを含む。(S10)複数の第一スルーホール516を有するキャリヤー510、及び複数の第二スルーホール536を有する固定体530を提供する。(S20)前記カーボンナノチューブ支持体520を提供し、該カーボンナノチューブ支持体520を前記第一スルーホール516に被覆させる。(S30)前記固定体530及び前記キャリヤー510を積層して、前記カーボンナノチューブ支持体520を前記キャリヤー510と前記固定体530との間に固定させる。
【0064】
前記ステップ(S10)において、前記キャリヤー510及び前記固定体530が一体成型構造体である。前記キャリヤー510と前記固定体530との間に接続部を有して、該接続部に折り畳み部550が形成される。前記キャリヤー510及び前記固定体530が前記折り畳み部550を介して移動可能に接続され、あらゆる角度で開閉することができる。本実施形態において、前記キャリヤー510及び前記固定体530は、前記折り畳み部550に対して対称に設置される。前記キャリヤー510及び前記固定体530を開け、該キャリヤー510と該固定体530との成す角度を、90°とすることができる。
【0065】
前記ステップ(S20)において、下記のサブステップを含む。(S21)カーボンナノチューブ構造体522を提供し、該カーボンナノチューブ構造体522で、前記キャリヤー510の第一網状構造体514を被覆する。(S22)有機溶剤で前記キャリヤー510の第一網状構造体514を被覆したカーボンナノチューブ構造体522を処理する。(S23)余分な前記カーボンナノチューブ構造体522を除去し、カーボンナノチューブ支持体520を形成する。
【0066】
本実施形態において、前記カーボンナノチューブ構造体522は、二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなり、該二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが垂直に設置され、前記キャリヤー510の第一網状構造体514が被覆される。
【0067】
各々の前記カーボンナノチューブフィルムの製造方法は、下記のステップを含む。
【0068】
第一ステップでは、カーボンナノチューブアレイを提供する。該カーボンナノチューブアレイは、超配列カーボンナノチューブアレイ(Superaligned array of carbon nanotubes,非特許文献2を参照)である。
【0069】
本実施形態において、前記超配列カーボンナノチューブアレイの製造方法は、化学気相堆積法を採用する。該製造方法は、次のステップを含む。ステップ(a)では、平らな基材を提供し、該基材はP型のシリコン基材、N型のシリコン基材及び酸化層が形成されたシリコン基材のいずれか一種である。本実施例において、4インチのシリコン基材を選択することが好ましい。ステップ(b)では、前記基材の表面に、均一的に触媒層を形成する。該触媒層の材料は鉄、コバルト、ニッケル及びその2種以上の合金のいずれか一種である。ステップ(c)では、前記触媒層が形成された基材を700℃〜900℃の空気で30分〜90分間アニーリングする。ステップ(d)では、アニーリングされた基材を反応炉に置き、保護ガスで500℃〜740℃の温度で加熱した後で、カーボンを含むガスを導入して、5分〜30分間反応を行って、超配列カーボンナノチューブアレイを成長させることができる。該カーボンナノチューブアレイの高さは100マイクロメートル以上である。該カーボンナノチューブアレイは、互いに平行し、基材に垂直に生長する複数のカーボンナノチューブからなる。該カーボンナノチューブは、長さが長いため、部分的にカーボンナノチューブが互いに絡み合っている。生長の条件を制御することによって、前記カーボンナノチューブアレイは、例えば、アモルファスカーボン及び残存する触媒である金属粒子などの不純物を含まなくなる。
【0070】
本実施形態において、前記カーボンを含むガスとしては、例えば、アセチレン、エチレン、メタンなどの活性な炭化水素が選択され、エチレンを選択することが好ましい。保護ガスは窒素ガスまたは不活性ガスであり、アルゴンガスが好ましい。
【0071】
本実施形態により提供されたカーボンナノチューブアレイは、前記の製造方法により製造されることに制限されず、アーク放電法またはレーザー蒸発法で製造してもよい。
【0072】
第二ステップでは、前記カーボンナノチューブアレイから、少なくとも、一枚のカーボンナノチューブフィルムを引き伸ばす。まず、ピンセットなどの工具を利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。例えば、一定の幅を有するテープを利用して複数のカーボンナノチューブの端部を持つ。次に、所定の速度で前記複数のカーボンナノチューブを引き出し、複数のカーボンナノチューブ束からなる連続のカーボンナノチューブフィルムを形成する。
【0073】
前記複数のカーボンナノチューブを引き出す工程において、前記複数のカーボンナノチューブがそれぞれ前記基材から脱離すると、分子間力で前記カーボンナノチューブ束が端と端で接合され、連続的なカーボンナノチューブフィルムが形成される。前記カーボンナノチューブフィルムは、配向して配列された複数のカーボンナノチューブ束が端と端とが接続され、所定の幅を有するカーボンナノチューブフィルムである。
【0074】
前記カーボンナノチューブフィルムは、その幅が前記カーボンナノチューブアレイが成長された基材のサイズと関係があり、その長さが制限されず、実際の応用に応じて選択することができる。本実施形態において、4寸のシリコン基材を採用して、超配列カーボンナノチューブアレイが生長し、該カーボンナノチューブフィルムの幅が1センチメートル〜10センチメートルである。
【0075】
前記カーボンナノチューブ構造体522の製造方法は、次のステップを含む。
【0076】
まず、基材を提供する。該基材は、平らな表面を有し、材料が制限されない。本実施形態において、前記基材は、セラミックスからなる。
【0077】
次に、二枚のカーボンナノチューブフィルムを前記基材の表面に積層し、該隣接したカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブを垂直に設置させる。
【0078】
前記カーボンナノチューブが大きな比表面積を有するので、前記カーボンナノチューブアレイから引き出されたカーボンナノチューブフィルムは、優れた接着性を有する。従って、前記カーボンナノチューブフィルムは、直接に前記基材の表面又は他のカーボンナノチューブフィルムの表面に接着することができる。前記二枚のカーボンナノチューブフィルムは、分子間力で接続される。
【0079】
前記カーボンナノチューブ構造体522は、一枚のカーボンナノチューブフィルムであってもよく、二枚以上の積層されたカーボンナノチューブフィルムであってもよい。勿論、前記カーボンナノチューブ構造体522は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤ又は少なくとも一つのカーボンナノチューブ網状構造体であってもよい。
【0080】
ステップ(S22)において、試験管又は滴瓶などの容器560を利用して、有機溶剤562を前記カーボンナノチューブフィルム構造体522の一つの表面に滴下し、前記有機溶剤562を前記カーボンナノチューブフィルム構造体522に浸漬させる。前記有機溶剤562は、例えば、アルコール、メチル・アルコール、アセトン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの揮発性有機溶剤である。本実施形態において、前記有機溶剤562は、アルコールである。前記カーボンナノチューブフィルム構造体522が前記有機溶剤562で処理された後、該有機溶剤562の表面張力の作用で各々のカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブセグメントが複数のカーボンナノチューブ束に集まる。前記カーボンナノチューブフィルムにおける複数のカーボンナノチューブ束が間隔を置いて設置され、隣接したカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブ束が交差して配列されるので、複数の微孔が形成される。
【0081】
ステップ(S23)において、前記有機溶剤562が揮発された後、前記キャリヤー510の第一リング512の内側に沿って、余分なカーボンナノチューブ構造体522を除去し、該カーボンナノチューブ構造体522の直径を前記第一リング512の外径より小さくして、カーボンナノチューブ支持体520を形成するる。レーザー切断法を利用して、余分なカーボンナノチューブ構造体522を除去し、カーボンナノチューブ支持体520を形成することができる。本実施形態において、余分なカーボンナノチューブ構造体522を除去するために、アルゴンイオンレーザー又は炭酸ガスレーザーを採用することができる。前記レーザーのパワーが5〜30ワットであり、好ましくは、18ワットである。前記カーボンナノチューブ支持体520の直径が2.6ミリメートルであり、前記第一リング512の内径と等しい。勿論、前記ステップ(S20)におけるカーボンナノチューブ構造体522の直径が前記第一リング512の外径より小さく、特に前記第一リング512の内径より小さい場合、前記ステップ(S23)は必要なくなる。
【0082】
前記ステップ(S21)、(S22)、(S23)の順序は、実際の応用に応じて、調整することができる。例えば、前記ステップ(S21)と前記ステップ(S22)の順序が交換することができる。即ち、まず、前記有機溶剤562でカーボンナノチューブ構造体522を処理する。次に、前記カーボンナノチューブ構造体522を前記キャリヤー510の表面に設置する。
【0083】
ステップ(30)において、前記キャリヤー510と前記固定体530を積層して、前記第一スルーホール516と前記第二スルーホール536との少なくとも一部を重ね合わせ、前記カーボンナノチューブ支持体520を前記キャリヤー510と前記固定体530との間に固定する。具体的には、前記折り畳み部550によって、前記キャリヤー510と前記固定体530を閉じて、前記キャリヤー510と前記固定体530とが成す角度を0°にする。この場合、前記キャリヤー510と前記固定体530とが対向して設置され、該キャリヤー510の第一スルーホール516と前記固定体530の第二スルーホール536とが対応して設置され、前記カーボンナノチューブ支持体520を前記第一スルーホール516及び第二スルーホール536に懸架して設置させる。前記ステップ(S30)において、前記折り畳み部550によって、前記キャリヤー510及び前記固定体530を折り畳むので、該キャリヤー510と該固定体530との位置決めが正確になる。特に、前記第一スルーホール516と第二スルーホール536との位置決めが正確になる。
【0084】
また、前記ステップ(S30)は、前記カーボンナノチューブ支持体520を前記キャリヤー510と該固定体530との間に安定に挟持するために、更に機械方式で前記キャリヤー510と前記固定体530を固定するステップを含む。
【0085】
本実施形態において、前記カーボンナノチューブ支持体520を前記キャリヤー510と該固定体530との間に挟持するために、前記第二リング532の凸部538を前記第一リング512のスリット518に挿入し、前記キャリヤー510と前記固定体530を固定する。
【0086】
前記透過型電子顕微鏡グリッド50の製造方法は、前記ステップに制限されず、前記ステップ(S30)を前記ステップ(S21)と前記ステップ(S22)との間に実施することも可能である。即ち、まず、前記カーボンナノチューブ構造体522を前記キャリヤー510と前記固定体530との間に設置する。次に、前記カーボンナノチューブ構造体522を前記キャリヤー510と前記固定体530との間に挟持するために、前記キャリヤー510と前記固定体530を閉じる。その後、前記カーボンナノチューブ構造体522と、前記キャリヤー510と前記固定体530とを有機溶剤の中に浸漬し、該有機溶剤で前記カーボンナノチューブ構造体522を処理する。最後に、前記第一リング512又は前記第二リング532の外側に沿って、余分なカーボンナノチューブ構造体522を除去し、カーボンナノチューブ支持体520を形成し、該カーボンナノチューブ支持体520が前記キャリヤー510と前記固定体530との間に設置される。
【0087】
前記カーボンナノチューブ構造体522が複数のカーボンナノチューブフィルム、複数のカーボンナノチューブワイヤ又は複数のカーボンナノチューブ網状構造体を含む場合、前記透過型電子顕微鏡グリッド50の製造方法は、下記のステップを含んでもよい。まず、前記カーボンナノチューブ構造体522の一部のカーボンナノチューブ構造体を前記キャリヤー510の第一スルーホール516に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体522の他の一部のカーボンナノチューブ構造体を前記固定体530の第二スルーホール536に設置する。次に、前記キャリヤー510と前記固定体530を閉じ、一部のカーボンナノチューブ構造体と他の一部のカーボンナノチューブ構造体とを接着させ、カーボンナノチューブ支持体520を形成し、該カーボンナノチューブ支持体520が前記第一スルーホール516と前記第二スルーホール536との間に設置される。
【0088】
また、本発明は、同時に複数の透過型電子顕微鏡グリッド50を製造する方法を提供する。該製造方法は、下記のステップを含む。(S110)それぞれ少なくとも一つの第一スルーホール516を有する複数のキャリヤー510を提供し、該複数のキャリヤー510を、間隔を置いて基板の表面に設置する。(S120)カーボンナノチューブ構造体522を提供し、該カーボンナノチューブ構造体522を複数の前記キャリヤー510の第一スルーホール516に被覆する。(S130)複数の固定体530を提供し、各々の固定体530がそれぞれ少なくとも一つの第二スルーホール536を有し、各々の固定体530をそれぞれ前記キャリヤー510に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体522を複数の前記キャリヤー510と複数の前記固定体530との間に固定させる。(S140)隣接した前記キャリヤー510の間の隙間の前記カーボンナノチューブ構造体522を切断し、複数の透過型電子顕微鏡グリッド50を形成する。
【0089】
前記ステップ(S110)において、前記基板は、その表面が平面であり、その材料が例えば、セラミックス、ガラスなどであり、制限されない。隣接した前記キャリヤー510の間の距離が大き過ぎると、前記透過型電子顕微鏡グリッド50の生産効率を高めることに不利になる。隣接した前記キャリヤー510の間の距離が小さ過ぎると、前記カーボンナノチューブ構造体522を加工することが難しくなるので、生産コストを減少することに不利になる。レーザーで前記カーボンナノチューブ構造体522を照射する場合、隣接した前記キャリヤー510の間の距離は、前記レーザーが前記カーボンナノチューブ構造体522を照射して形成されたスポットの直径より大きく設定しなければならない。前記隣接した前記キャリヤー510の間の距離は、50マイクロメートル〜200マイクロメートルであることが好ましい。前記キャリヤー510及び前記固定体530の構造は、それぞれ前記実施形態1〜4におけるキャリヤー及び固定体の構造と同じである。
【0090】
前記ステップ(S120)は、前記ステップ(S20)の具体的な実施方式と同じであり、前記ステップ(S130)は、前記ステップ(S30)の具体的な実施方式と同じである。前記固定体530の数量は、前記キャリヤー510の数量と同じで、各々の前記固定体530は、一つの前記キャリヤー510と対応する。
【0091】
前記ステップ(S140)において、隣接した前記キャリヤー510の間の前記カーボンナノチューブ構造体522を切断するために、レーザーで隣接した前記キャリヤー510の間の前記カーボンナノチューブ構造体522を照射する。具体的には、下記の三つの方法を採用することができる。
【0092】
方法一:前記カーボンナノチューブ構造体522を切断するために、レーザーで各々のキャリヤー510の外側に沿って、前記カーボンナノチューブ構造体522を照射して焼き切って、前記キャリヤー510を被覆した前記カーボンナノチューブ構造体522の直径が前記キャリヤー510の外径を超えないようにする。従って、複数の前記キャリヤー510を被覆した前記カーボンナノチューブ構造体522と前記キャリヤー510以外のカーボンナノチューブ構造体522とを、分離させる。
【0093】
方法二:レーザー束を移動し、全部の前記キャリヤー510の間の隙間のカーボンナノチューブ構造体522を照射して焼き切って、全部の前記キャリヤー510の間の隙間のカーボンナノチューブ構造体522を除去する。
【0094】
方法三:複数のキャリヤー510がアレイで前記基板の表面に設置される場合、レーザー束を移動し、直線に沿って、複数の前記キャリヤー510の間の隙間のカーボンナノチューブ構造体522を照射して焼き切る。
【0095】
レーザーで複数の前記キャリヤー510の間の隙間の前記カーボンナノチューブ構造体522を焼き切る場合、前記レーザー束が移動及び照射するコースは、計算機によって制御される。
【0096】
(実施形態6)
図12及び図13を参照すると、本実施形態は、透過型電子顕微鏡グリッド60を提供する。該透過型電子顕微鏡グリッド60は、キャリヤー610と、カーボンナノチューブ支持体620と、固定体630と、を含む。前記カーボンナノチューブ支持体620は、前記キャリヤー610と前記固定体630との間に設置される。好ましくは、前記透過型電子顕微鏡グリッド60の外径が3ミリメートルであり、厚さが3マイクロメートル〜20マイクロメートルである円形のシートである。
【0097】
前記キャリヤー610は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記円形のシートは、第一円形のシート本体611を含む。該第一円形のシート本体611は、第一リング612及び第一網状構造614を有する。前記第一リング612は、一つのスルーホール(図示せず)を有して、前記第一網状構造614は、複数の第一スルーホール616を有する。前記第一網状構造614は、前記第一リング612のスルーホールに被覆されている。
【0098】
前記固定体630は、複数の微孔を有する円形のシートである。前記固定体は、第二円形のシート本体631を含む。該第二円形のシート本体631は、第二リング632及び第二網状構造634を含む。前記第二リング632は、一つのスルーホールを有して、前記第二網状構造634は、複数の第二スルーホール636を有する。前記第二網状構造634は、前記第二リング632のスルーホールを覆う。前記キャリヤー610及び前記固定体630は、溶接部品640によって接続され、固定される。
【0099】
前記キャリヤー610及び前記固定体630の構造は、それぞれ、実施形態1に記載された透過型電子顕微鏡グリッド10におけるキャリヤー110及び固定体130の構造と基本的に同じであるが、異なる点は、前記第一円形のシート本体611の縁と前記第二円形のシート本体631の縁とで面と線との接触が形成されることである。具体的には、前記第一リング612が第一表面618を有し、該第一表面618が平面である。前記第一リング612の断面が長方形、半円形、三角形又は台形などの形状である。前記第二リング632が第二表面638を有し、該第二表面638の形状が曲面又はリッジである。従って、前記第一リング612の第一表面618と前記第二リング632の第二表面638とが接触する場合、面と線との接触であり、即ち、線接触である。前記固定体630及び前記キャリヤー610は、該固定体630の縁と該キャリヤー610の縁とが線接触が形成することが可能であれば、いずれの形状でもよい。本実施形態において、前記第一リング612の断面が長方形であり、前記第二リング632の断面が円形であるので、該第一リング612の第一表面618と前記第二リング632の第二表面638とが線接触である。
【0100】
前記カーボンナノチューブ支持体620は、前記実施形態1におけるカーボンナノチューブ支持体120と同じである。該カーボンナノチューブ支持体620は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム又は少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤからなるカーボンナノチューブ網状構造体を含む。本実施形態において、前記カーボンナノチューブ支持体620は、二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムからなって、該二枚の積層されたカーボンナノチューブフィルムにおけるカーボンナノチューブが垂直に設置され、均一的かつ規則的に配列された微孔が形成され、該微孔の直径が1ナノメートル〜1マイクロメートルである。
【0101】
前記溶接部品640は、前記キャリヤー610及び前記固定体630を溶接して形成されたものであり、前記第一リング612と前記第二リング632との接続部に位置する。具体的には、前記溶接部品640は、前記第一リング612の第一表面618と前記第二リング632の第二表面638との線接触の所に位置する。前記キャリヤー610と前記固定体630とを固定するために、前記線接触の所にスポット溶接、ろう付け法などの方式で前記第一リング612と前記第二リング632とを溶接する。従って、前記カーボンナノチューブ支持体620は、前記キャリヤー610と前記固定体630との間に固定される。本実施形態において、前記溶接部品640は、複数のはんだ接合である。
【0102】
本発明は、溶接法で透過型電子顕微鏡グリッドを製造する方法を提供する。該方法は、下記のステップを含む。まず、キャリヤー、カーボンナノチューブ構造体及び固定体を提供し、前記キャリヤーが少なくとも一つの第一スルーホールを有し、前記固定体が少なくとも一つの第二スルーホールを有する。次に、前記キャリヤーと前記固定体とを積層させて、前記カーボンナノチューブ構造体を前記キャリヤーと前記固定体との間に設置する。最後に、前記キャリヤーと前記固定体とを溶接して、固定する。
【0103】
前記キャリヤーは、少なくとも一つの第一スルーホールを有する。前記固定体は少なくとも一つの第二スルーホールを有する。前記キャリヤーは、第一表面を有し、前記固定体は、第二表面を有し、前記第一表面と前記第二表面とが対向して設置される。
【0104】
前記カーボンナノチューブ構造体は、少なくとも一枚のカーボンナノチューブフィルム、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤ、又は、一つのカーボンナノチューブ網状構造体である。前記カーボンナノチューブフィルム又はカーボンナノチューブワイヤは、カーボンナノチューブアレイから引き出して形成されたものである。前記カーボンナノチューブ網状構造体は、少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤが編まれて、又は交差して形成されたものである。
【0105】
前記キャリヤーと前記固定体とを閉じる場合、該キャリヤーの縁と前記固定体の縁とで面と線との接触が形成され、前記キャリヤーと前記固定体との位置決めを正確にならせて、特に前記第一スルーホールと前記第二スルーホールとの位置決めを正確にする。
【0106】
図14を参照すると、本実施形態は、前記透過型電子顕微鏡グリッド60の製造方法を提供する。該製造方法は、下記のステップを含む。(W10)複数の第一スルーホール616を有するキャリヤー610、カーボンナノチューブ構造体622及び複数の第二スルーホール636を有する固定体630を提供する。(W20)前記キャリヤー610と前記固定体630とを積層させて、前記カーボンナノチューブ構造体622を前記キャリヤー610と前記固定体630との間に設置する。(W30)前記キャリヤー610と前記固定体630とを溶接して、固定する。
【0107】
前記ステップ(W10)におけるカーボンナノチューブ構造体622の構造及び製造方法は、それぞれ、前記実施形態5に記載した透過型電子顕微鏡グリッド50の製造方法におけるカーボンナノチューブ構造体522の構造及び製造方法と同じである。前記キャリヤー610は、第一リング612及び第一網状構造614を有する。前記第一網状構造614は、複数の第一スルーホール616を有する。前記第一リング612は、第一表面を有し、該第一表面が平面である。前記固定体630は、第二リング632及び第二網状構造634を含む。前記第二網状構造634は、複数の第二スルーホール636を有する。前記第二リング632は、第二表面を有し、該第二表面が曲面又はリッジなどである。前記第一表面と前記第二表面とで線と面との接触が形成される。
【0108】
前記カーボンナノチューブ構造体622は、少なくとも一つのカーボンナノチューブ網状構造体又は少なくとも一つのカーボンナノチューブワイヤであってもよい。
【0109】
前記ステップ(W20)は、下記のサブステップを含む。(W21)前記カーボンナノチューブ構造体622を前記第一リング612の第一表面に設置する。(W22)容器660における有機溶剤662で前記カーボンナノチューブ構造体622を処理する。(W23)余分なカーボンナノチューブ構造体622を除去し、カーボンナノチューブ支持体620を形成する。(W24)前記固定体630を前記カーボンナノチューブ支持体620に設置し、前記第二スルーホール636と前記第一スルーホール616との少なくとも一部を重ね合わせる。具体的には、前記第二リング632の第二表面と前記第一リング612の第一表面を対向して設置させ、各々の前記第二スルーホール636と各々の前記第一スルーホール616とをそれぞれ重ね合わせて設置する。前記ステップ(W21)〜ステップ(W23)における具体的な方法は、前記ステップ(S21)〜ステップ(S23)における具体的な方法と同じである。また、実際の応用に応じて、前記ステップの順序を調整することができる。例えば、まず、有機溶剤で前記カーボンナノチューブ構造体622を処理する。その後、該カーボンナノチューブ構造体622を前記キャリヤー610の表面に設置する。
【0110】
前記ステップ(W30)は、下記のサブステップを含む。まず、溶接装置を採用して、前記第一リング612及び第二リング632に圧力を印加し、該第一リング612の第一表面と該第二リング632の第二表面とで線接触を形成させる。次に、前記第一リング612の第一表面と前記第二リング632の第二表面との線接触の所に溶接を行う。前記溶接を行う過程において、前記線接触の所に多くの熱を発生し、該熱が前記第一リング612及び前記第二リング632の材料を溶融状態に加熱し、圧力を印加し続け、前記第一リング612及び前記第二リング632が冷却された後、該第一リング612及び該第二リング632が溶接され、該溶接された所に前記溶接部品640が形成される。前記ステップ(W30)において、線と平面との接触により、前記キャリヤー610と前記固定体630とを溶接させるので、前記キャリヤー610と前記固定体630との位置決めが正確になる。
【0111】
前記ステップ(W10)から提供されたカーボンナノチューブ構造体622が複数のカーボンナノチューブフィルム、複数のカーボンナノチューブワイヤ又は複数のカーボンナノチューブ網状構造体を含む場合、前記透過型電子顕微鏡グリッド60の製造方法は、下記のステップを含んでもよい。(W10)キャリヤー610、カーボンナノチューブ構造体622及び固定体630を提供する。(W20)前記カーボンナノチューブ構造体622の一部のカーボンナノチューブ構造体を前記キャリヤー610の第一スルーホール616に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体622の他の一部のカーボンナノチューブ構造体を前記固定体630の第二スルーホール636に設置する。次に、前記キャリヤー610と前記固定体630を閉じ、一部のカーボンナノチューブ構造体と他の一部のカーボンナノチューブ構造体とを接着させ、カーボンナノチューブ支持体620を形成し、該カーボンナノチューブ支持体620が前記キャリヤー610と前記固定体630との間に設置される。
【0112】
また、本発明は、同時に複数の透過型電子顕微鏡グリッド60を製造する方法を、提供する。該製造方法は、下記のステップを含む。(W110)複数のキャリヤー610を提供し、該複数のキャリヤー610を、間隔を置いて設置し、各々の前記キャリヤー610がそれぞれ少なくとも一つの第一スルーホール616を有する。(W120)カーボンナノチューブ構造体622を提供し、該カーボンナノチューブ構造体622を複数の前記キャリヤー610の第一スルーホール616に被覆する。(W130)複数の固定体630を提供し、各々の固定体630をそれぞれ前記キャリヤー610に設置し、前記カーボンナノチューブ構造体622を複数の前記キャリヤー610と複数の前記固定体630との間に固定させる。(W140)各々の前記固定体630と前記キャリヤー610とを溶接して固定する。(W150)複数の前記キャリヤー610との間の隙間に沿って、カーボンナノチューブ構造体622を切断し、複数の透過型電子顕微鏡グリッド60を形成する。
【0113】
前記ステップ(W110)、ステップ(W120)及びステップ(W150)は、それぞれ、前記ステップ(S110)、ステップ(S120)、及びステップ(S140)の具体的な方法と同じである。前記キャリヤー610及び前記固定体630は、分離する構造体であってもよく、一体成型加工により形成された構造体であってもよい。
【0114】
前記ステップ(W130)の具体的な方法は、前記ステップ(S130)の具体的な方法と同じである。前記固定体630の数量が前記キャリヤー610の数量と同じであり、各々のキャリヤー610と一つの固定体630とが固定する。
【0115】
前記ステップ(W140)の具体的な方法は、前記ステップ(W30)の具体的な方法と同じであり、各々のキャリヤー610と一つの固定体630とが溶接により、固定する。
【0116】
勿論、前記実施形態2、実施形態3、実施形態4及び実施形態5は、溶接法を採用して、前記キャリヤーと前記固定体とを固定することにより、透過型電子顕微鏡グリッドを製造することもできる。前記実施形態におけるキャリヤー及び固定体が交換できる。
【0117】
本実施形態に係わる透過型電子顕微鏡グリッド及び該透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、次の優れた点がある。
【0118】
第一に、前記透過型電子顕微鏡グリッドを使用する場合、該透過型電子顕微鏡グリッドを挟む工具が前記カーボンナノチューブ支持体と接触することを防止できるので、前記工具による前記カーボンナノチューブ支持体への汚染を減少することができる。従って、前記透過型電子顕微鏡を利用して、試料の画像の解像度を高めることができる。
【0119】
第二に、前記カーボンナノチューブ支持体が前記キャリヤーと前記固定体との間に設置されるので、該カーボンナノチューブ支持体が固定され、移動しにくい。更に、前記キャリヤー及び前記固定体は、凸部をスリットに挿入する方式又は溶接する方式により固定されるので、前記カーボンナノチューブ支持体が前記キャリヤーと前記固定体との間に安定に固定され、該カーボンナノチューブ支持体が移動しない。従って、前記透過型電子顕微鏡を利用して、試料を分析する正確性及び解像度を高めることができる。
【0120】
第三に、本実施形態に係わる透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法は、簡単で便利である。また、前記カーボンナノチューブ支持体を透過型電子顕微鏡グリッドの中に容易に固定させることができる。また、前記キャリヤーと前記固定体との位置決めを正確にすることができる。特に、前記第一スルーホールと第二スルーホールとの位置決めを正確にすることができる。
【符号の説明】
【0121】
10、20、30、40、50、60 透過型電子顕微鏡グリッド
110、210、310、410、510、610 キャリヤー
111、211、511、611 第一円形のシート本体
112、212、312、412、512、612 第一リング
114、314、514、614 第一網状構造
116、216、316、416、516、616 第一スルーホール
118、218、318、418、518 スリット
120、220、320、420、520、620 カーボンナノチューブ支持体
130、230、330、430、530、630 固定体
131、231、531、631 第二円形のシート本体
132、232、332、432、532、632 第二リング
134、534、634 第二網状構造
136、236、336、436、536、636 第二スルーホール
138、238、338、438、538 凸部
150、250 第三スルーホール
214 第一帯状構造
234 第二帯状構造
522、622 カーボンナノチューブ構造体
550 折り畳み部
560、660 容器
562、662 有機溶剤
618 第一表面
638 第二表面
640 溶接部品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの第一スルーホールを有するキャリヤー、及び少なくとも一つの第二スルーホールを有する固定体を提供する第一ステップと、
カーボンナノチューブ支持体を提供し、該カーボンナノチューブ支持体を前記第一スルーホールに被覆する第二ステップと、
前記固定体及び前記キャリヤーを積層して、前記カーボンナノチューブ支持体を前記キャリヤーと前記固定体との間に固定する第三ステップと、
を含むことを特徴とする透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法。
【請求項2】
前記キャリヤーと前記固定体とを積層して設置する場合、前記キャリヤーの第一スルーホールと前記固定体の第二スルーホールとの少なくとも一部を重ね合わせることを特徴とする請求項1に記載の透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法。
【請求項3】
少なくとも一つの第一スルーホールを有するキャリヤー、及び少なくとも一つの第二スルーホールを有する固定体を提供し、前記キャリヤー及び前記固定体が接続部を有し、該接続部に折り畳み部が形成され、前記キャリヤー及び前記固定体が前記折り畳み部により、移動可能に接続される第一ステップと、
カーボンナノチューブ支持体を提供し、該カーボンナノチューブ支持体を前記第一スルーホールに被覆する第二ステップと、
前記固定体及び前記キャリヤーを積層して、前記カーボンナノチューブ支持体を前記キャリヤーと前記固定体との間に固定する第三ステップと、
を含むことを特徴とする透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法。
【請求項4】
それぞれ少なくとも一つの第一スルーホールを有する複数のキャリヤーを提供し、該複数のキャリヤーを、間隔を置いて基板の表面に設置する第一ステップと、
カーボンナノチューブ構造体を提供し、該カーボンナノチューブ構造体を複数の前記キャリヤーの第一スルーホールに被覆する第二ステップと、
それぞれが少なくとも一つの第二スルーホールを有する複数の固定体を提供し、各々の固定体をそれぞれ前記キャリヤーに設置し、前記カーボンナノチューブ構造体を複数の前記キャリヤーと複数の前記固定体との間に固定する第三ステップと、
隣接した前記キャリヤーの間の隙間の前記カーボンナノチューブ構造体を切断し、複数の透過型電子顕微鏡グリッドを形成する第四ステップと、
を含むことを特徴とする複数の透過型電子顕微鏡グリッドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−228285(P2011−228285A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−67648(P2011−67648)
【出願日】平成23年3月25日(2011.3.25)
【出願人】(509312592)北京富納特創新科技有限公司 (6)
【Fターム(参考)】