説明

透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法

【課題】観察箇所が表面から10μm以上深い領域に一つ以上ある試料に対して、安価に簡易な工程でTEM観察用として良好な薄膜試料とすることができる透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法の提供
【解決手段】表面から10μm以上の深さの内部に観察箇所を含む試料1から微小試料片を摘出しTEM観察用試料台に接着させる微小試料片1の摘出、固定工程と該微小試料片の表面に垂直な方向の集束イオンビーム照射加工によってTEM観察用薄膜試料として加工する薄膜化工程とを有するTEM観察用薄膜試料の作製方法において、前記摘出工程の前に、前記試料1の観察箇所の上層部2を斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工7によって10μm以下の厚さに削る斜め切削工程を挿入する透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集束イオンビーム(以下、FIB:Focused Ion Beam)を用いて透過型電子顕微鏡(以下、TEM:Transmission Electron Microscope)用観察試料の作製方法に係わり、特にFIBによる試料の薄膜化の際の前処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハや半導体チップなどの試料の微細箇所の不良解析、欠陥解析には、高倍率観察をするために透過電子顕微鏡(TEM)観察が有効である。TEM観察の際には、電子線が試料を透過できるように試料を厚さ0.1μm以下の極薄に薄膜化する必要がある。このようなTEM観察を可能にする極薄に試料を薄膜化する手段については、近年FIBを用いることが一般的になっている。しかしながら、このFIBは、時間をかければ数10μm以上の深さの加工も可能であるが、TEM観察に適した厚さと表面状態を有する良好な薄膜試料とするための加工という意味では、通常は深さ10μm程度の加工が限界である。
FIBによる透過型電子顕微鏡(TEM)観察用の薄膜試料の作製方法には、二つの方法が知られている。その一は、ダイヤモンドソーなどを用いたダイシングにより半導体ウエハや半導体チップなどをTEM装置に搭載可能な大きさの試料ブロック14に切り出し、その後、観察箇所近傍のみFIBで薄膜化する方法である。この方法では、試料の表面から10μm以上の深い領域に観察箇所がある場合は、前述したFIBの加工能力の限界のため、図4の斜視図に示すように、上層部2と観察層3と観察箇所4と下層部6からなる切り出し試料ブロック1(図4(a))に対しては、FIBによる加工前に厚さ10μm以上の上層部2を平面研磨や、エッチングで除去し、図4(b)の示すように斜線で示す観察箇所4を試料表面1−1から10μm以内に位置させてから、図4(c)に示すようにFIB7の照射により加工してTEM観察用薄膜試料15とする必要がある。あるいは、上層部2の除去が困難な場合は、図5(a)、(b)に示すように一旦、観察箇所4近傍の断面を作製し、その断面を表面としてFIB7照射加工により点線で示すように削って、図5(c)に示すようにTEM観察用薄膜試料15を作製することが必要である(非特許文献1)。
【0003】
その二は、半導体ウエハあるいは半導体チップからFIBにより数μm〜数十μmサイズの微小試料片を摘出し、FIBに装備されるマイクロプローブ(金属微小針)を微小試料片の表面に接触させた後、プラチナやタングステンなどの導電性元素を成分に含む化合物生成ガスを射出しながら、イオンビームとの化学反応で導電性膜を微小試料片に堆積させてマイクロプローブと微小試料片を接着する。次にマイクロプローブと微小試料片を移動させ、TEM試料を載せるメッシュに前述と同様な接着手法により固定した後、マイクロプローブを微小試料片から切り離す。さらに、FIB照射加工で、TEM観察用に極薄の薄膜試料を作製する方法(この方法をマイクロサンプリング法によるTEM観察用薄膜試料の作製方法とする)である(特許文献1)。
いずれにしてもTEM観察用薄膜試料として適切な厚さと表面状態となるように、FIBで加工できるのは、前述のように通常深さ10μm程度であり、それ以上深い観察領域をFIBで良好に薄膜化することは難しい。
前述のマイクロサンプリング法は、下記特許文献1によれば、半導体ウエハ等の表面から観察部所を含む部分をイオンビームで、たとえば5μm×20μm、深さ15μmという微小試料片にして切り出すとともに、マイクロプローブをマイクロマニュピュレータとして微小移動させ、ピンセットのように使い、その微小試料片を直接摘出することができるので、試料中の微小な観察箇所を特定することも容易である。このように、目的の観察箇所を機械的な力を加えずに数十ミクロンサイズの大きさで取り出す特許文献1に記載のマイクロサンプリング法によれば、機械加工などによる観察箇所の破壊の惧れを懸念することなくTEM観察試料を作製できる。
【非特許文献1】平坂 雅男,朝倉 健太郎 「電子顕微鏡研究者のためのFIB・イオンミリング技法Q&A」 アグネ承風社 2002 P59
【特許文献1】特開平5−52721号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記非特許文献1に記載のその一の方法は、深い領域に観察箇所がある試料に対して平面研磨やエッチングなどにより上層部の除去処理後に、FIBで薄膜化するので、それらの上層部の除去処理が観察箇所に及ぼす悪影響が懸念される。さらに、この薄膜化方法では、深さが異なる複数の観察箇所を有する試料に対しては、対応することが難しい。また、一旦、観察箇所近傍の断面を作製し、その断面を表面としてFIB照射加工による薄膜化を行う方法の場合も、断面作製時の機械加工の影響が懸念され、さらに試料形状によっては機械加工による断面の作製が困難な場合もある。加えて前述したどちらの方法も試料を切断や研磨で破壊しなければならず、試料作製時間も少なからず増加する。
一方、前記特許文献1に記載のその二の方法では、観察箇所が試料表面から10μm以内の浅い位置にある場合には適しているが、10μm以上に深い場合は、やはり何らかの方法で、予め観察箇所を表面から10μm以内に加工しておく必要があるので、そのプロセスに時間がかかること、またはその加工による観察箇所への悪影響の懸念が残るという問題がある。
本発明は上述の問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、観察箇所が表面から10μm以上深い領域に一つ以上ある試料に対して、安価に簡易な工程で透過型電子顕微鏡観察用として良好な薄膜試料とすることができる透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
特許請求の範囲の請求項1記載の発明によれば、前記本発明の目的を達成するために、表面から10μm以上の深さの内部に観察箇所を含む試料から微小試料片を摘出し、透過型電子顕微鏡観察用試料台に接着させる微小試料片の摘出、固定工程と該微小試料片表面に垂直な集束イオンビーム照射加工によって透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料として加工する薄膜化工程とを有する透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法において、前記摘出工程の前に、前記試料の観察箇所の上層部を斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工によって10μm以下の厚さに削る、斜め切削工程を挿入する透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法とする。
特許請求の範囲の請求項2記載の発明によれば、前記微小試料片の摘出、固定工程が、集束イオンビーム照射加工によって、内部に観察箇所を含む微小試料片を切り出す第一工程、金属微小針を前記微小試料片の表面に接触させる第二工程、導電性元素を成分に含む化合物生成ガスを射出しながら化学反応で導電性膜を微小試料片に堆積させて前記金属微小針と前記微小試料片を接着する第三工程、金属微小針を移動させて透過型電子顕微鏡観察用試料台に前記微小試料片を接触させ、前記第三工程と同様の方法で接着させてから前記金属微小針を前記微小試料片から切り離す第四工程を有する特許請求の範囲の請求項1記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法とすることが好ましい。
【0006】
特許請求の範囲の請求項3記載の発明によれば、前記微小試料片の摘出、固定工程の前に、前記試料の複数の異なる深さを有する観察箇所の上層部を、それぞれ斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工によって10μm以下の厚さに削る斜め切削工程を挿入する特許請求の範囲の請求項2記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法とすることができる。
特許請求の範囲の請求項4記載の発明によれば、前記斜め切削工程が、集束イオンビーム照射加工によって数μm以下の厚さに削る工程である特許請求の範囲の請求項1乃至3のいずれか一項に記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法とすることが好適である。
特許請求の範囲の請求項5記載の発明によれば、前記斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工の角度が、前記試料表面に対し30°乃至60°である特許請求の範囲の請求項1乃至4のいずれか一項に記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法とすることがより好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、観察箇所が表面から10μm以上深い領域に一つ以上ある試料に対して、安価に簡易な工程で透過型電子顕微鏡観察用として良好な薄膜試料とする透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法について、図面を参照して詳細に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
本発明のTEM観察用薄膜試料の作製方法として、前述のダイシングによる試料の切り出しと、FIB照射加工による薄膜化によりTEM観察用薄膜試料とする作製方法や、前述のマイクロサンプリング法によるTEM観察用薄膜試料作製方法などの前処理として、斜め上方表面からのFIB照射加工によって表面から10μm以上の深い内部の観察箇所の上層部を除去する工程を追加する内容について詳細に説明する。
図1は本発明のTEM観察用薄膜試料の作製方法における特徴部分のFIB照射加工による斜め切削工程に関して、試料1に対して、斜め上方表面から矢印方向に沿った斜めFIB照射および垂直FIB照射により切り欠き凹部を形成したことを示す概略斜視図である。下層部6、観察層3、上層部2の積層からなる試料1の試料表面1−1に対し、斜めFIB照射加工7および垂直照射を加えて目的の観察箇所の上方に傾斜面を有する切り欠き凹部12を形成する。試料表面1−1に対するFIBの照射角度を変える際には、実際にはFIB照射方向を固定し、図示しない被照射試料を載せる台(ステージ)を傾けることにより角度制御をする方法がとられる。照射角度は試料表面1−1に対して30〜60°の角度が好ましい。試料表面1−1との角度が30°より小さすぎる場合は、除去する上層部の厚さに対し加工する距離が長くなり時間がかかりすぎるので、好ましくない。60°を超えて90°に近くなると断面加工に近くなり、薄膜化時に目的の深さの領域を狙い難くなるので、好ましくない。
【0009】
目的の観察箇所が1箇所の場合について、本発明のTEM観察用薄膜試料の作製方法の一例を図2および図6−1、図6−2に示す。観察箇所が2箇所の場合について、本発明のTEM観察用薄膜試料の作製方法の例を図3および図7−1、図7−2に示す。図2および図3のうち、(a)、(c)、(e)はそれぞれ試料表面および該試料表面側からみた切り欠き凹部近傍の位置の平面図であり、(b)、(d)、(f)はそれぞれ試料の断面図および斜めFIB照射加工で形成された切り欠き凹部内の傾斜面近傍の断面図である。図6−1、図6−2、図7−1、図7−2はそれぞれ半導体チップなどの試料に対して、斜め上方表面からのFIB照射加工を追加することによって、目的の観察箇所が試料表面から10μm以上深いところにある場合でも、容易にTEM観察用薄膜試料を作製することができる方法の主要工程示す斜視図である。図2(g)と図3(g)は、図2(e)と図3(e)をそれぞれTEM観察の方向から見たTEM観察用薄膜試料の断面図である。
本発明によれば、厚さが10μm以上の上層部2と、観察層3と下層部6からなる試料であって、図2に示すように観察層3の一部に、ある深さの観察箇所4を有する試料であっても斜めFIB照射加工によりTEM観察用薄膜試料の作製ができることが特徴である。従来のマイクロサンプリング法によれば、そのような厚い上層部2を有する試料に対しては、この上層部を予め、FIB照射加工とは異なる方法または手段により上層部の厚さを10μm以下に加工しておかなければ、FIB照射加工によるTEM観察用薄膜試料の作製が困難であった。ところが、前記FIBとは異なる方法または手段による上層部の切除加工には観察箇所に及ぼす悪影響の懸念があった。またさらに、本発明によれば、図3に示すように試料の観察層3に、異なる深さの第一の観察箇所4と第二の観察箇所5がある場合でも問題なくTEM観察用薄膜試料の作製が可能である。但し、本発明にかかるTEM観察用薄膜試料の作製方法について、観察箇所の最大数を2箇所に限定するものではない。
【0010】
本発明のTEM観察用薄膜試料の作製方法について、以下順次説明する。厚さが10μm以上の上層部2と、観察層3と下層部6からなる試料1に対して、前記図1の斜視図および図6−1(b)の斜視断面図に示すように、矢印7aに平行なFIB照射7によって上層部2の表面から下層部6に達する斜めFIB照射加工により形成される傾斜面11を有する切り欠き凹部12を形成する。この傾斜面11を図2(c)の平面図、図2(d)の断面図にも示す。これらの図2(c)、(d)において、試料ブロック1の各層(2、3、6)の境界と試料表面1−1からの距離を目安に、TEM観察用の薄膜試料としたときに観察箇所4が傾斜面11から少なくとも10μm以下、好ましくは数μmの深さになるように図2(c)、(d)に点線で示すTEM観察用薄膜試料の中心線13を決める。すなわち、言い換えると、この中心線13を挟んで両側に0.05μm以内の距離の傾斜面11から、FIBにより垂直方向7bに照射切断加工してTEM観察用薄膜試料を形成する際に、良好なTEM観察用薄膜試料となるように、上層部2の厚さを、少なくとも10μm以下、好ましくは数μmの深さとなるように中心線13を決めるということである。
観察箇所が2箇所の場合は、図3(c)に示す第一の斜めFIB照射加工と図3(d)に示す第二の斜めFIB照射加工を行う。このとき、図3(c)、(d)に示すように、第一の斜めFIB照射加工の斜め斜面から決定した第一の観察箇所4に対応するTEM観察用薄膜試料の中心線13上で、第二の観察箇所5が表面から少なくとも10μm以下、好ましくは数μmの深さになるように第二の斜めFIB照射加工を行う。
【0011】
次に、前記特許文献1の記載によりよく知られた方法となっているマイクロサンプリング法における工程に従って、薄膜化する試料部分の表面にプラチナやタングステン等のイオンビームアシストデポジションで保護膜を形成した後(図示せず)、図2(c)、(d)、図3(c)、(d)に示すように、前記中心線13を挟んで両側に0.5μm〜1.5μm程度の距離の位置を表面に垂直方向7bからFIB照射加工で切断して、図6(c)、(d)、(e)、図7(d)、(e)、(f)に示すように微小試料片を切り出す。図6−2(e)、図7−2(f)に示すようにマイクロプローブ(金属微小針)8を前記微小試料片の表面に接着した後、微小試料片の底面等を斜めFIB照射加工することで、図6−2(f)、図7−2(g)に示すように微小試料片10を試料1から完全に分離し、メッシュの試料台の固定面に移動し接着する(図示せず)。マイクロプローブと微小試料片、微小試料片と試料台の固定面の接着はプラチナやタングステン等のイオンビームアシストデポジションを用いることができる。この後、マイクロプローブと微小試料片をFIB照射加工で切り離し(図示せず)、図2(e)、(f)、図3(e)、(f)に示すように最終的に0.1μm以下の厚さになるように垂直方向のFIB加工を行い、TEM観察を行う。
【0012】
このTEM観察用薄膜試料はTEM観察の方向から見ると図2(g)に示すように観察箇所の上層部が除去された、または図3(g)に示すように異なった深さの2つの観察箇所についてそれぞれの上層部が除去されたTEM観察用薄膜試料となっている。前述の説明は、マイクロサンプリング法に適用する場合であるが、試料をダイシングなどにより切り出した後に、FIBでTEM観察用薄膜試料に加工する場合にも適用でき、その場合はダイシング前または後に、斜め上方表面からのFIB照射加工による上層部の除去を行えばよい。
【実施例1】
【0013】
以下、本発明にかかる透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法にかかる実施例1について、図3および図7−1、図7−2を参照しながら説明する。
(試料ブロックの概要)
銅のフレームに二層のめっき膜が積層されているものを試料ブロック1とした。図3に示すように厚さ20μmの表面のめっき膜を上層部2、厚さ30μmの二層目のめっき膜を観察層3、銅のフレームを下層部6とする。観察層3の上層部2との界面から10μmの深さの領域が第一の観察箇所4、20μmの深さの領域が第二の観察箇所5である。
(斜めFIB照射加工による上層部の除去)
図7−1(b)、(c)と図3(c)、(d)に示すように表面に対し45°の角度で第一のFIB照射加工7を行う。傾斜面11を表面から観察し、試料表面1−1と傾斜面11が交わるAの点(図3(c))から図中で右へ27μmの点線を薄膜化の中心線13とする。この点線13では第一の観察箇所4は表面から3μmの深さになる。次に図7−1(c)に示すように第二のFIB照射加工7−1を行った。第二のFIB照射加工7−1は図3(c)に示すようにAの点から図中で10μm左まで表面に対し45°の角度で行う。これにより第二の観察箇所5も表面から3μmの深さになる。
(マイクロサンプリング)
薄膜化する部分の表面にプラチナのイオンビームアシストデポジションで3μm×15μmの面積で短辺が作製する薄膜の厚み方向になるように1μm厚さの保護膜を形成する(図示せず)。図7−2(d)、(e)に示すように表面に垂直な方向7bからのFIB照射加工7で薄膜化する部分の周辺をプラチナの保護膜端まで削り微小試料片とした。図7−2(f)に示すようにマイクロプローブ8をプラチナのイオンビームアシストデポジションで微小試料片表面9に接着した後、微小試料片の底面を斜めFIB照射加工で切断し、図7−2(g)に示すように微小試料片10を試料1から完全に分離し、メッシュの試料固定面に移動しプラチナのイオンビームアシストデポジションで接着した(図示せず)。この後、マイクロプローブ8と微小試料片10をFIB照射加工で切り離した。(図示せず)。
(FIB照射加工による薄膜化)
図3(e)、(f)に示すように、表面に垂直な方向7bのFIB照射加工7で電子線が透過するの0.1μm以下の厚さになるまでイオンビームで薄膜化した。TEM観察の方向から見ると、図3(g)に示すように第一の観察箇所4、第二の観察箇所5は表面から3μmの深さにある。
(TEM観察)
薄膜化完了したTEM観察用薄膜試料に対して、TEM観察を行ったところ第一の観察箇所4、第二の観察箇所5のどちらもめっきの組織が明瞭に観察できた(TEM観察図は図示せず)。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明における斜め上方表面からのFIB照射加工により切り欠き凹部を形成したことを示す試料の概略斜視図である。
【図2】本発明における観察箇所が1箇所の場合の試料表面と該試料表面側からみた切り欠き凹部近傍の位置の平面図および断面図である。
【図3】本発明における観察箇所が2箇所の場合の試料表面と該試料表面側からみた切り欠き凹部近傍の位置の平面図および断面図である。
【図4】従来の試料ブロックにTEM観察用薄膜試料を作製する方法を示す斜視図である。
【図5】従来の試料ブロックにTEM観察用薄膜試料を作製するための異なる方法を示す斜視図である。
【図6−1】本発明における観察箇所が1箇所の場合のTEM観察用薄膜試料を作製する主要な工程を示す斜視図(その1)である。
【図6−2】本発明における観察箇所が1箇所の場合のTEM観察用薄膜試料を作製する主要な工程を示す斜視図(その2)である。
【図7−1】本発明における観察箇所が2箇所の場合のTEM観察用薄膜試料を作製する主要な工程を示す斜視図(その1)である。
【図7−2】本発明における観察箇所が2箇所の場合のTEM観察用薄膜試料を作製する主要な工程を示す斜視図(その2)である。
【符号の説明】
【0015】
1 試料
1−1 試料表面
2 上層部
3 観察層
4 第一の観察箇所
5 第二の観察箇所
6 下層部
7 集束イオンビーム、FIB、第一のFIB照射加工
7−1 第二のFIB照射加工
8 マイクロプローブ、金属微小針
9 微小試料片表面
10 微小試料片
11 傾斜面
12 切り欠き凹部
13 中心線
14 試料ブロック
15 TEM観察用薄膜試料




【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面から10μm以上の深さの内部に観察箇所を含む試料から微小試料片を摘出し、透過型電子顕微鏡観察用試料台に接着させる微小試料片の摘出、固定工程と該微小試料片表面に垂直な集束イオンビーム照射加工によって透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料として加工する薄膜化工程とを有する透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法において、前記摘出工程の前に、前記試料の観察箇所の上層部を斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工によって10μm以下の厚さに削る、斜め切削工程を挿入することを特徴とする透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法。
【請求項2】
前記微小試料片の摘出、固定工程が、集束イオンビーム照射加工によって、内部に観察箇所を含む微小試料片を切り出す第一工程、金属微小針を前記微小試料片の表面に接触させる第二工程、導電性元素を成分に含む化合物生成ガスを射出しながら化学反応で導電性膜を微小試料片に堆積させて前記金属微小針と前記微小試料片を接着する第三工程、金属微小針を移動させて透過型電子顕微鏡観察用試料台に前記微小試料片を接触させ、前記第三工程と同様の方法で接着させてから前記金属微小針を前記微小試料片から切り離す第四工程を有することを特徴とする請求項1記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法。
【請求項3】
前記微小試料片の摘出、固定工程の前に、前記試料の複数の異なる深さを有する観察箇所の上層部を、それぞれ斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工によって10μm以下の厚さに削る斜め切削工程を挿入することを特徴とする請求項2記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法。
【請求項4】
前記斜め切削工程が、集束イオンビーム照射加工によって数μm以下の厚さに削る工程であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法。
【請求項5】
前記斜め上方表面からの集束イオンビーム照射加工の角度が、前記試料表面に対し30°乃至60°であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の透過型電子顕微鏡観察用薄膜試料の作製方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−1】
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【図6−2】
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【図7−1】
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【図7−2】
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【公開番号】特開2009−216478(P2009−216478A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58899(P2008−58899)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【出願人】(503361248)富士電機デバイステクノロジー株式会社 (1,023)
【Fターム(参考)】