説明

透過特性および/または反射特性を判定するための測定方法および測定装置

【課題】大表面半透明物体(1)の透過特性及び/又は反射特性を判定するための光学測定方法を提供する。
【解決手段】方法は、特に表面を被覆された基板(1)の製造時のプロセス監視及び品質検査に用い得る。本発明は更に本方法を適用する光学測定装置に関する。本発明によれば、透過特性及び反射特性は、連続して、物体(1)の第1の大表面(3)が第1の照明装置(9)により照明され、光検出器(14)が全透過率を測定し、第1の大表面の反対側に第1の大表面と平行に位置する物体(1)の第2の大表面(2)が第2の照明装置(7)により照明され、光検出器(4)が拡散透過率を測定し、任意選択で、物体(1)の第1の大表面(3)が第1の照明装置(9)により照明され、光検出器(4)が反射率を測定し、及び/又は物体(1)の第2の大表面(2)が第2の照明装置(7)により照明され、光検出器(14)が反射率を測定するという方法で測定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好ましくは、大表面半透明物体の透過特性および反射特性、あるいは大表面半透明物体の透過特性または反射特性を判定するための学測定方法に関する。具体的には、本発明は、表面を被覆された基板の製造時のプロセス監視や品質検査に適用可能である。本発明はさらに、本発明の方法を適用するのに適している光学測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、導電性被覆が太陽電池として使用された基板等の被覆半透明材の製造において、基板の透過特性および反射特性の検査は、主に、太陽放射の電気への変換の最適効率の実現に関して重要である。
【0003】
このことに関して重要なパラメータは、ヘイズ(haze)、すなわち、光の広角度の散乱である。国際規格ASTM D1003によれば、ヘイズは、その物体内で、その伝播方向から2.5°以上偏向され、それに伴って、その物体を通過する際に、例えば、その物体の表面粗さによって、方向付けられた光線束から散乱される、半透明物体を通過する光の割合として定義されている。
【0004】
ASTM D 1003に従って、半透明物体のヘイズ(透過ヘイズ)は、照明光が、その物体を透過して、その積分球に入射するように、その積分球の入射部の前部にその物体を置いて、その積分球の反対側の物体側からその物体を照明することによって測定することができる。その積分球は、内蔵光検出器を備えており、その光検出器は、透過光を受光して、測定信号に変換する。この光センサの検出方向と、物体面に対する法線は(その法線は、測定軸を構成する)、特定の角度を含む。
【0005】
ASTM D 1003でも規定されている別の測定方法においては、積分球自体は、照明装置として用いられる。その積分球を用いて、その積分球の出射部の前部に置かれた物体は、散光で照明される。この場合、その光検出器は、その物体の他方の側、すなわち、その積分球の反対側に配置される。
【0006】
後者の場合、その積分球内には、作動させることが可能な光トラップが設けられ、光トラップは、作動状態において、光の方向付けられた部分を遮断して、その光が光検出器に到達しないようにする。その光トラップの作動および不作動を交互にすることにより、2つの異なる透過パラメータを測定することができる。それらのうちの一つは、拡散透過率Tdiffuseの尺度を与え、すなわち、その物体の影響により、2.5°以上の角度で散乱した光を示し、それに対して、他方のパラメータは、仮にあったとして、2.5°以下の角度でその物体によって散乱した光の場合の全透過率Ttotalの尺度を与える。これら2つのデータから、その物体のヘイズは、式Haze=Tdiffuse/Ttotal*100%によって決まる。
【0007】
特許文献1は、特に、連続プロセスにおける品質監視のための測定装置について記載しており、その装置は、分光法の原理によって作動する。この測定装置は、積分球を有する測定ヘッドを備え、そのヘッドは、測定対象の拡散照明に用いられる。この構成を用いて、物体を通過する照明光の全透過率と、その物体の表面からの照明光の反射率を、連続して測定することができる。
【0008】
特許文献2は、透明な散乱測定対象の光学パラメータを測定するための方法、および特に、コーティングプラントで透明被覆を施されるプレート状またはストリップ状の基板の様々な透過率および反射率のデータのインライン測定のために、この方法を適用するための装置について記載している。
【0009】
後者の方法の場合、その測定対象は、積分球による拡散光によっても照明される。測定対象を通過する光は、異なる検出方向を有する2つの光検出器によって同時に捉えられ、2つの検出方向の一方においては、その検出器で直ちに方向付けられた放射は、光トラップによって抑制される。この方法と、その実行のための装置とによって、拡散透過率Tdiffuseおよび全透過率Ttotalを同時に測定することが可能である。一方が拡散を検出し、他方が、表面の一方からの全視感反射率を検出する2つ以上の光検出器がさらに設けられている。
【0010】
大表面を被覆された基板の製造時のプロセス監視および品質検査と共に、拡散透過率および全透過率の両方、さらに基板の両面からの視感反射率、すなわち、被覆面および非被覆基板面からの反射率を低コストで測定することがしばしば求められる。従来技術で利用可能な方法および装置を用いた場合、この要件を満たすことはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】独国特許第10010213(B4)号明細書
【特許文献2】独国特許第102009040642(B3)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明は、上述したような従来技術の欠点に悩まされない方法および少なくとも1つの装置を見いだすという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、特に、大表面を被覆された基板の製造時のインラインプロセス監視および品質検査のための、大表面半透明物体の透過率および反射率特性の測定が、請求項1に記述されているプロセスステップを用いて実行される。
【0014】
したがって、本発明の方法の第1のバージョンにおいて、測定は、拡散光を放射する2つの照明装置および2つの光検出器のみによって実行され、
・その物体の第1の大表面は、2つの照明装置のうちの第1の装置で照明され、その物体の反対側の第1の光検出器を用いた全透過率と、この大表面の側部に設けられた第2の光検出器を用いた、この大表面からの反射率との測定が同時に行なわれ、その後、
・第1の装置の反対側の、その物体の第2の大表面は、第2の照明装置で照明され、第2の光検出器を用いた拡散透過率と、第1の光検出器を用いた、この大表面からの反射率との測定が同時に行なわれる。
【0015】
本発明の方法の代替的なバージョンにおいては、測定は、拡散光を放射する2つの照明装置および2つの光検出器のみによって実行され、
・その物体の第1の大表面は、2つの照明装置のうちの第1の装置で照明され、全透過率が第1の光検出器で測定され、
・第1の装置の反対側の、その物体の第2の大表面は、第2の照明装置で照明され、拡散透過率が第2の光検出器で測定される。
【0016】
補足的に、任意の測定は、
・その物体の第1の大表面は、第1の照明装置で照明され、この大表面からの反射率が、第2の光検出器を用いて測定され、
・その物体の第2の大表面は、この大表面からの反射率が第1の光検出器で測定される状態で照明されるように、実行することができる。
【0017】
どちらのバージョンにおいても、連続する2つまたは4つのプロセスステップは、1つの測定サイクルを構成し、そのサイクルを用いて、透過率および反射率特性が、大表面半透明物体の領域に対して測定される。測定サイクル内でのプロセスステップの順序は、任意に、または、各測定ジョブによって必要とされる通りに変えることができる。2つの透過率データTdiffuse(拡散透過率)およびTtotal(全透過率)の測定にのみ、または、互いに対向して位置する対象物面の反射特性の測定にのみ関係している測定サイクルを構成することは、本発明の範囲内にある。
【0018】
測定サイクル中に取得された測定データは、解析ソフトウェアを備え、および情報出力装置に接続されたコンピュータに伝送され、それによって、評価、または、さらなる処理、例えば、ヘイズ値を、Tdiffuse/Ttotal*100%の関係として算出するための処理に対して、(2つの物体表面の拡散および全透過率、および反射特性に関する)取得データを利用可能にする。
【0019】
本発明の方法が、透過特性および反射特性を、従来技術よりも複雑でない装置構成で測定できるようになっていることは、本発明の方法の実質的な利点であり、この利点は、その方法の両方のバージョンに当てはまる。
【0020】
上記2つの照明装置および2つの光検出器は、互いに対して一定の位置に配置されている。上記物体に対しては、一方の照明装置および一方の光検出器が、その物体の一方の側に配置され、それらに対向して、他方の照明源および第2の光検出器が、その物体の他方の側に配置されるように、2つの照明装置の一方と、2つの光検出器の一方とが、その物体の第1の大表面に空間的に割り当てられており、それに対して、他方の照明源および第2の光検出器は、反対側の大表面に空間的に割り当てられている。好ましくは、2つの照明装置は、(本発明の目的のために、測定軸と呼ぶ)共通軸上に位置しており、その共通軸は、その物体の大表面に垂直になっている。
【0021】
上記2つの照明装置は、一度に、2つの大表面の一方のみに、透過率測定のために光が透過され、または、反射率測定のために照明されるように、交互に作動させられる。
使用する光検出器は、方向感度型である。これらの方向感度を実現または増大させるために、方向感度型光学系を、それらの光検出器の前方に配置することができる。
【0022】
上記2つの光検出器の検出方向は、互いに対する傾斜および測定軸に対する傾斜に合わせられている。上記方法の好適な実施形態において、2つの検出方向および測定軸は、交差するように互いに対して傾斜されている。有利には、その交点は、その物体内に、すなわち、その物体の2つの大表面間に配置することができる。
【0023】
上記光検出器の一方の検出方向は、反射測定の場合は、その物体の大表面を常に指し示すように、および拡散透過率の測定の場合には、その物体の反対側に配置された光トラップを指し示すように合わされており、光トラップは、その物体の反対側の照明装置からその物体に入射して、その物体を通過する照明光の直接分を遮断する。
【0024】
他方の光検出器の検出方向は、反射測定の場合、常にその物体の他方の大表面を指し示し、全透過率の測定の場合には、照明光を反射し、およびその照射光の直接分を遮断する、その物体の反対側の面を指し示すように合わされている。
【0025】
さらに、第1の光検出器の測定軸および検出方向は、第1の測定面内にあり、第2の光検出器の測定軸および検出方向は、第2の測定面内にある。本発明によれば、これら2つの測定面は、反射測定において、第1の光検出器の検出方向が光トラップを指し示し、およびそれに伴って、照明光の拡散分の反射率のみを測定することを防ぐために、好ましくは、α≠180°、または、特に好適には、α=90°の角度を含むように配置されている。したがって、角度α=180°は、拡散分の反射率を目的とする測定ジョブの場合にのみ選択される。
【0026】
上記照明装置は、好ましくは、各々に光源が内蔵されている積分球である。それらの積分球は、物体のいずれかの側に配置され、および測定軸が中心にある。2つの光検出器の検出方向は、反対側の積分球をそれぞれ指し示している。
【0027】
様々な種類の物体に対する一般的な適用は別として、本発明の方法は、特に有利には、表面を被覆された基板の製造時の作業現場での品質検査に適している。この目的のために、その基板は、上記2つの照明装置を通過して移動する。一連の周期的に繰り返される測定サイクルにおいて、記載した基板領域の光学パラメータが取得され、その空間的伸長は、動作の方向に見られるように、様々な測定段階における照明期間の合計と、測定段階の時間間隔の合計と、基板が移動する速度とによって決まる。測定すべき基板領域のこの空間的伸長を、可能な限り小さく保つために、各測定サイクル内での基板の照明は、好ましくは、測定の期間と、基板の動作の速度との最適な比が実現されるように、ストロボスコープで行われる。
【0028】
本発明の方法により、透過特性の測定を、国際規格ASTM D 1003の仕様に従って実行することができる。
本発明はさらに、本発明の方法を適用するための光学測定装置に関する。この測定装置は、基本的に、
積分球の形態の第1の照明装置であって、第1の照明装置から光出射部を通って、物体の第1の大表面に拡散光が向けられる、第1の照明装置と、
積分球の形態の第2の照明装置であって、第2の照明装置から光出射部を通って、第1の大表面の反対側に、第1の大表面と平行に位置している、その物体の第2の大表面に拡散光が向けられる、第2の照明装置と、
その検出方向が、両光出射部を通って、第2の照明装置の内壁に設けられた光トラップを指し示している光検出器であって、その光トラップが、その照明光の直接分を阻む光検出器と、
その検出方向が、両光出射部を通って、第1の照明装置の光反射内壁を指し示している別の光検出器と
を備えている。
【0029】
いずれかの積分球には、両光源が、それらを交互に作動および停止させるための制御回路に接続された状態で、作動および停止させることができる光源が設けられており、
拡散透過率を測定する場合、およびその大表面の反射率を測定する場合、あるいは拡散透過率を測定する場合、またはその大表面の反射率を測定する場合、第1の照明装置内の光源が作動され、
全透過率を測定する場合、およびその大表面の反射率を測定する場合、あるいは全透過率を測定する場合、またはその大表面の反射率を測定する場合には、第2の照明装置内の光源が作動され、
光検出器は、少なくとも、それらの光源が作動されている間は、データ解析回路に接続されている。
【0030】
好ましくは、それらの光検出器は、各々に割り当てられた積分球の内壁に取付けられている。
特に好ましい実施形態においては、それらの積分球には、基準信号の取得のために、それらの検出方向が、各積分球の反射内面に向けられている基準光検出器が設けられている。さらに、遮蔽手段が、それらの積分球内に設けられており、その手段は、光源によって放射された光が、測定データの取得のために設けられ、および基準データの取得のために設けられた光検出器に直接当るのを防ぐ。
【0031】
さらに、2つの光検出器の検出方向と、大表面の法線は、好ましくは、その法線が、2つの検出方向に対して測定軸を構成する状態で、それらが物体内に、すなわち、2つの大表面の間に位置する共通の交点を有するように、互いに傾斜されている。
【0032】
好ましくは、2つの光検出器の検出方向は、それぞれ、ASTM D 1003規格の仕様に合うように、その法線、すなわち、測定軸と8°の角度をなす。
特に、反射データの取得に関して、第1および第2の光検出器の検出方向は、以下に、例示的な実施形態に関連して説明するように、反射率測定において、第1の光検出器の検出方向が光トラップに向けられて、それに伴って、照明光の拡散分の反射率のみを測定することを防ぐために、異なる測定面内に、例えば、その法線周りに90°の角度で互いに離間された測定面内にある。
【0033】
特に、その物体と測定装置との間の相対運動が生じる本発明のこれらの実施形態の場合、その積分球の光出射部は、その物体に対して、妨げられない相対運動を可能にするような距離に配置される。
【0034】
以下、例示的な実施形態を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】測定軸と、2つの光検出器のうちの1つの検出方向と、一方の面が被覆された大表面基板の運動の方向とがある平面を介した断面によって、本発明の測定装置の原理を示す図であり、被覆された、および被覆されていない大表面のヘイズおよび反射特性が周期的に測定される。
【図2】測定軸と、他方の光検出器の検出方向とがあり、それに対して、基板の運動の方向が、図の面に対して垂直になっている平面を介した断面によって、図1による本発明の測定装置の原理を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、ストリップ状の半透明物体1、ここでは例えば、インラインコーティングプラントにおいて、その大表面2に透明な導電性被覆が設けられることになっている基板を象徴的に示す。このプロセスにおいて、物体1は、コーティングプロセスの後に、方向Rに連続的に移動し、その物体は、図1に示すように、本発明の測定装置を通過する。
【0037】
ここで選択した実施例においては、品質検査は、被覆された物体の透過特性の測定および評価を、および物体1の被覆された大表面2および被覆されていない大表面3の両方の反射率の測定を指すと仮定する。その測定は、基板ストリップが、その測定装置を通って連続的に移動する間に、周期的に実行される。
【0038】
透過特性を測定するために、適用すべき測定方法は、国際規格ASTM D 1003で規定された方法であり、したがって、測定すべきことは、照明光の方向付けられた部分の透過率および拡散透過率の両方を含む全透過率Ttotalと、照明光の拡散分のみを含む、拡散透過率Tdiffuseである。このように測定された透過データTdiffuseおよびTtotalは、後に、関数Tdiffuse/Ttotal*100%によってヘイズ値を得るために処理することができる。
【0039】
その後、2つの大表面2、3に対する反射特性は、反射された照明光に基づいて評価される。
図1は、本発明の測定装置を、その中に、光検出器4と、その検出方向D4と、同時に大表面2、3に対する法線でもある測定軸5と、物体1の移動方向Rとがある平面を介した断面で示す。検出方向D4および測定軸5は、好ましくは、角度β=8°をなし、このことは、国際規格の仕様を満たしている。当然、その値から外れる角度も可能であるが、測定結果を逸脱させるであろう。
【0040】
大表面2から距離a1の箇所には、照明装置7の光出射部6が配置されており、その照明装置は、積分球として構成されており、拡散光を放射し、被覆された大表面2の側から物体1を照明することが意図されている。物体1の反対側には、大表面3から距離a2の箇所に、別の照明装置9の光出射部8が配置されており、その照明装置もまた、積分球として構成されており、拡散光を放射し、被覆された大表面3の側から物体1を照明することが意図されている。距離a1およびa2は、可能な限り小さく保持される。それらの距離は、単に、2つの照明装置7、9に対して、物体1の運動が妨げられないことを可能とするサイズになっている。
【0041】
光源10が照明装置7内に取付けられ、光源11が照明装置9内に設けられている。両光源10、11は、例えば、短時間オンにすることができる高出力LEDとして構成されており、これらの電源は、作動させるために、図示されていない制御回路に接続されている。照明装置7には、光トラップ15が設けられており、そこに光検出器4の検出方向D4が向けられている。
【0042】
照明装置7、9から出て、それぞれ大表面2または3に当る照明光の特性の何らかの歪みを評価すること、および測定結果におけるそのような歪み(このような歪みは、例えば、距離a1、a2による散乱した周辺光の影響によって引き起こされる)をユーザが考慮に入れることを可能にするために、2つの照明装置7、9には、光検出器12および13が設けられており、それらの検出方向D12、D13は、それぞれ、照明装置7または9の反射内壁に向けられている。これらの基準光検出器12、13の信号出力ポートは、光検出器4、14の信号出力ポートと同様に、図示されていないデータ解析回路に接続されている。
【0043】
光検出器4および基準光検出器12、13は、光源10、11からの直接光がこれらの検出器に当らないように配置されている。このような直接光の入射と、その後の測定結果の歪みを避けるために、必要に応じて、遮蔽手段を設けることができる。
【0044】
図2は、図1の断面A−Aを示す。図2には、ここでもまた、(ここでは、そのストリップの幅方向の断面になっている)物体1と、測定軸5と、測定軸5に対して対称的に配置された照明装置7および9と、物体1と光出射部6との間の距離a1および物体1と光出射部8との間の距離a2とが図示されている。ここで、物体1の動作の方向は、図の面に対して垂直である。明確にするために、実際には照明装置9に付随している光検出器4および光源11、および実際には照明装置7に付随している基準光検出器12は、省略されている。
【0045】
しかし、図2には、この面内の照明装置7内に、光検出器14とその検出方向D14が図示されており、この検出方向は、反対側の照明装置9の内面を指し示している。
図1および図2を一緒に見てみると、測定軸5および検出方向D4が図1に示す面内にあり、それに対して、測定軸5および検出方向D14は、図2に示す面内にあることが分かる。2つの面は、測定面を構成し、それらの面は、測定軸5の周りで90°の角度だけ互いにずれている。ここで、基準検出方向D12およびD13は、例えば、図1の面内にだけある。
【0046】
本発明の第1のバージョンにおける測定方法は、以下のようにこの装置と共に用いられ、2つのプロセスステップの順序は選択可能になっている。
・物体1の大表面3は、第1の照明装置9によって照明され、光検出器14が全透過率を測定し、同時に、光検出器4がこの大表面3の反射率を測定する。
【0047】
・(第1の大表面の反対側に位置する)物体1の第2の大表面2は、第2の照明装置7によって照明され、第2の光検出器4が拡散透過率を測定し、同時に、光検出器14が、この大表面2の反射率を測定する。
【0048】
本発明の測定方法の第2のバージョンは、以下のようにこの装置を用いて利用することができ、4つのプロセスステップの順序は選択可能であり、また、反射率測定に関する後の2つのステップは、任意のものである。
【0049】
・物体1は、第1の照明装置9によって光を透過され、第1の光検出器14が全透過率を測定する。
・物体1は、第2の照明装置7によって光を透過され、第2の光検出器4が拡散透過率を測定する。
【0050】
・物体1の第1の大表面3は、第1の照明装置9によって照明され、第2の光検出器4が、この大表面3の反射率を測定する。
・物体1の第2の大表面2は、第2の照明装置7によって照明され、第1の光検出器14が、この大表面2の反射率を測定する。
【0051】
上述したように、上記方法のどちらのバージョンのプロセスステップも測定サイクルを形成する。その測定サイクル中に、2つの光検出器4および14によって収集された測定データは、解析ソフトウェアを備えたコンピュータに伝送され、そこで、拡散および全透過率について、および2つの大表面2、3の反射特性について測定されたデータは、例えば、関数Tdiffuse/Ttotal*100%を介したヘイズ値への結合によって評価および処理される。
【符号の説明】
【0052】
1…物体、2…大表面、3…大表面、4…光検出器、5…測定軸、6…光出射部、7…照明装置、8…光出射部、9…照明装置、10…光源、11…光源、12…基準光検出器、13…基準光検出器、14…光検出器、15…光トラップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくは、表面を被覆された基板の製造時のプロセス監視および品質検査に利用可能な、特に、大表面半透明物体(1)の透過特性および反射特性を測定するための光学測定方法であって、
前記測定は、拡散光を放射する2つの照明装置(7、9)と、2つの光検出器(4、14)とを用いて実行され、
前記測定は、
前記物体(1)の第1の大表面(3)が第1の照明装置(9)で照明され、第1の光検出器(14)が全透過率を測定し、第2の光検出器(4)が、この大表面(3)の反射率を同時に測定し、その後、
前記第1の大表面の反対側に位置する、前記物体(1)の第2の大表面(2)が、第2の照明装置(7)によって照明され、前記第2の光検出器(4)が拡散透過率を測定し、前記第1の光検出器(14)が、この大表面(2)の反射率を同時に測定するように実行され、
または、任意の順序で連続して、
前記物体(1)の第1の大表面(3)が第1の照明装置(9)によって照明され、第1の光検出器(14)が全透過率を測定し、
前記第1の大表面の反対側に位置する、前記物体(1)の第2の大表面(2)が前記第2の照明装置(7)によって照明され、前記第2の光検出器(4)が拡散透過率を測定するように実行される、光学測定方法。
【請求項2】
連続的測定の場合に、追加的に、
前記物体(1)の第1の大表面(3)が、前記第1の照明装置(9)によって照明され、前記第2の光検出器(4)が、この大表面(3)の反射率を測定し、かつ
前記物体(1)の第2の大表面(2)が、前記第2の照明装置(7)によって照明され、前記第1の光検出器(14)が、この大表面(2)の反射率を測定し、
または、
前記物体(1)の第1の大表面(3)が、前記第1の照明装置(9)によって照明され、前記第2の光検出器(4)が、この大表面(3)の反射率を測定するか、または
前記物体(1)の第2の大表面(2)が、前記第2の照明装置(7)によって照明され、前記第1の光検出器(14)が、この大表面(2)の反射率を測定する、請求項1に記載の光学測定方法。
【請求項3】
前記2つの照明装置(7、9)と、前記2つの光検出器(4、14)とは、互いに対して一定の位置に配置され、
前記物体(1)に対しては、照明装置(9)および光検出器(4)は、前記物体(1)の第1の大表面(3)に対し、空間的に割り当てられ、他方の照明装置(7)および前記第2の光検出器(14)は、反対側の大表面(2)に対し、空間的に割り当てられ、
前記照明装置(7、9)は、一度に前記2つの大表面(2、3)の一方のみが照明されるように、常に交互に作動させられる、請求項1または請求項2に記載の光学測定方法。
【請求項4】
方向感度型光検出器(4、14)が用いられるか、または、方向感度型光学系が、前記光検出器(4、14)の前方に配置される、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の光学測定方法。
【請求項5】
使用される前記照明装置(7、9)は、それぞれに光源(10、11)が内蔵されている積分球である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の光学測定方法。
【請求項6】
前記物体(1)は、前記2つの照明装置(7、9)を通って移動し、
測定中にカバーされる対象領域の移動方向Rにおける空間的伸長は、
照明のそれぞれの期間と、
測定間の時間間隔と、
前記物体(1)の移動速度と
によって決定され、
前記測定は、多数の対象領域を測定するために、周期的に繰り返される、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の光学測定方法。
【請求項7】
前記透過特性の測定は、国際規格ASTM D 1003の仕様に従って実行される、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の光学測定方法。
【請求項8】
前記物体(1)のヘイズは、関数Haze=Tdiffuse/Ttotal*100%に従って、全透過率(Ttotal)および拡散透過率(Tdiffuse)の測定結果から決定される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の光学測定方法。
【請求項9】
光学測定装置を通って連続的に移動する、好ましくは、被覆された基板の形態である大表面半透明物体(1)の透過特性および反射特性を測定するための光学測定装置であって、
積分球として構成された第1の照明装置(9)であって、該第1の照明装置(9)から、光出射部(8)を通って、前記物体(1)の第1の大表面(3)に光が向けられる、前記第1の照明装置(9)と、
積分球として構成された第2の照明装置(7)であって、該第2の照明装置(7)から、光出射部(6)を通って、第1の大表面の反対側に位置する、前記物体(1)の大表面(2)に光が向けられる、前記第2の照明装置(7)と、
方向感度型光検出器(4)であって、該方向感度型光検出器(4)の検出方向(D4)が、前記2つの光出射部(6、8)を通って、前記第2の照明装置(7)の内壁に設けられた光トラップ(15)を指し示している、前記方向感度型光検出器(4)と、
方向感度型光検出器(14)であって、該方向感度型光検出器(14)の検出方向(D14)が、前記2つの光出射部(6、8)を通って、前記第1の照明装置(9)の反射内壁を指し示している、前記方向感度型光検出器(14)と
を備え、前記検出方向(D4、D14)が、互いに異なる測定面内に位置している、光学測定装置。
【請求項10】
各照明装置(7、9)には、作動および停止させることができる光源(10、11)が設けられ、該光源(10、11)は、光源(10、11)を交互に作動および停止させるための制御回路に接続されており、
前記大表面(3)の拡散透過率および反射率を測定する場合、あるいは前記大表面(3)の拡散透過率または反射率を測定する場合には、前記第1の照明装置(9)の前記光源(11)が作動され、
前記大表面(2)の全透過率および反射率を測定する場合、あるいは前記大表面(2)の全透過率または反射率を測定する場合には、前記第2の照明装置(7)内の前記光源(10)が作動され、
前記光検出器(4、14)は、少なくとも前記光源(10、11)が作動されている時間においては、データ解析回路に接続されている、請求項9に記載の光学測定装置。
【請求項11】
前記光検出器(4)は、前記第1の照明装置(9)の内壁に取付けられ、前記光検出器(14)は、前記第2の照明装置(7)の内壁に取付けられている、請求項10に記載の光学測定装置。
【請求項12】
照明光に対する基準信号を取得するための基準光検出器(12、13)が、前記照明装置(7、9)の各々に設けられ、
それぞれの光源(10、11)からの直接光放射が、前記光検出器(4、12、13、14)に入るのを防ぐ遮蔽手段が、前記照明装置(7、9)内に設けられている、請求項10または請求項11に記載の光学測定装置。
【請求項13】
前記光検出器(4)の検出方向(D4)、前記光検出器(14)の検出方向(D14)、および前記大表面(2、3)に対する法線は、互いに対して傾斜しており、好ましくは、前記2つの大表面(2、3)の間の前記物体(1)内にある共通の交点を有する、請求項9乃至請求項12のいずれか一項に記載の光学測定装置。
【請求項14】
2つの光検出器(4、14)の検出方向(D4、D14)は、それぞれ、前記法線とβ=8°の角度をなす、請求項13に記載の光学測定装置。
【請求項15】
前記検出方向(D4、D14)が位置している複数の異なる測定面は、前記法線を中心としてα=90°の角度だけ互いにずれている、請求項13または請求項14に記載の光学測定装置。
【請求項16】
前記照明装置(7、9)の光出射部(6、8)は、前記物体(1)と前記照明装置(7、9)との間の妨げられない相対運動を可能にする、前記物体(1)への距離(a1、a2)に配置されている、請求項9乃至請求項15のいずれか一項に記載の光学測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−255786(P2012−255786A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−131162(P2012−131162)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(506151659)カール ツァイス マイクロスコピー ゲーエムベーハー (71)
【氏名又は名称原語表記】CARL ZEISS MICROSCOPY GMBH
【Fターム(参考)】