説明

通信ケーブル保護管

【課題】 通信ケーブル保護管における凍結障害の発生を抑制する。
【解決手段】 内管3と、径方向の剛性が内管よりも高い外管2とを有する通信ケーブル保護管1であって、内管3は、ホース壁31と、螺旋状補強体32と、螺旋状エラストマー帯33とを有する。ホース壁31は、径方向に変形可能な柔軟性を有する樹脂材料によって形成され、螺旋状補強体32はホース壁31に一体化されるとともに、外管の内周面とホース壁や螺旋状エラストマー帯の外周面との間に隙間を生ずるように、前記螺旋状補強体がホース壁外周面よりも外側に突出して設けられ、螺旋状エラストマー帯33は、互いに隣接する螺旋状補強体32,32の間の部分において、螺旋状補強体32と並行して螺旋状にホース壁31に一体化されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信ケーブル保護管に関する。特に、管内の水が凍結して生ずる凍結障害を抑制可能な、合成樹脂製通信ケーブル保護管に関するものである。
【背景技術】
【0002】
信号線や通信ケーブル、光ファイバーケーブルなどを保護するための通信ケーブル保護管として、地中に埋設される合成樹脂製可撓性管が使用されている。この種の地中埋設用保護管(通信ケーブル保護管)としては、管体壁面に凹凸部が蛇腹状に形成された可撓性に優れた波形硬質プラスチック管などが知られている。そして、こうした通信ケーブル保護管では、管の接続部からの浸水や結露により、管内に水が入ってしまうことがある。こうした管内の水は、冬季に凍結することがある。管内の水が凍結すると、その体積膨張により、保護管内の通信ケーブルを圧迫して通信特性を悪化させたり、通信ケーブル管を破壊してしまうおそれ(いわゆる凍結障害のおそれ)がある。
【0003】
このような問題を解決しうる技術として、特許文献1や特許文献2に開示されたような技術が知られている。例えば、特許文献1には、外管体の内側に、体積膨張吸収材料層と、該体積膨張吸収材料層の内面および外面にそれぞれ積層され、外面および内面が実質的に平滑な可撓管と、からなる凍結故障防止管が挿通されていることを特徴とする凍結故障防止用通信ケーブル管(請求項1)が開示され、このような凍結故障防止用通信ケーブル管によれば、管内に浸入してきた水が凍結しても、可撓管を介して体積膨張吸収材料層で凍結による体積増加を吸収することができ、通信ケーブルが圧迫されて通信特性が悪化したり、通信ケーブル管が破壊されたりすることがなく、凍結障害防止効果が優れたものとなることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、外管体の内側に、体積膨張吸収材料層と、内面が実質的に平滑で前記体積膨張吸収材料層を外管体内に固定する可撓性管が順次積層されていることを特徴とする凍結故障防止用通信ケーブル埋設管(請求項1)が開示され、埋設管内に侵入してきた水が凍結しても、体積膨張吸収材層で凍結による体積増加を吸収することができ、通信ケーブルが圧迫されて通信特性が悪化したり、埋設管が破壊されたりすることがなく、凍結障害防止が優れていることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−79437号公報
【特許文献2】特開2006−50713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、通信ケーブル保護管における凍結障害の発生を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明者は、外管と内管を組み合わせた通信ケーブル保護管について凍結障害の検討を行い、外管と内管の間の隙間を利用して凍結による体積増加を吸収する通信ケーブル保護管の検討を行った。そして、その検討の中で、保護管の使用の初期には凍結障害の発生が十分に抑制されるものの、凍結・解凍が繰り返されると凍結障害が発生しやすくなる場合があることを発見した。そして、その原因が、繰り返しの凍結・解凍により、凍結により体積膨張した氷によって内管が膨張変形してしまい、解凍しても内管の形状が十分に復元せずに、体積変化を吸収するための隙間が小さくなってしまうことにあることを突き止めた。
【0008】
そして、発明者は鋭意検討の結果、内管を構成するホース壁部分にエラストマー帯を螺旋状に備えさせると、解凍する際に、エラストマー帯によって内管のホース壁が十分に復元し、繰り返しの凍結に対しても十分に凍結障害を抑制できることを知見し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は、内管と、径方向の剛性が内管よりも高い外管とを有する通信ケーブル保護管であって、前記内管は、外管の長さ方向のすくなくとも一部にわたって、外管内部に配置され、前記内管は、ホース壁と、螺旋状補強体と、螺旋状エラストマー帯とを有するように構成されると共に、前記ホース壁は、径方向に変形可能な柔軟性を有する樹脂材料によって形成され、前記螺旋状補強体はホース壁に一体化されるとともに、外管の内周面とホース壁や螺旋状エラストマー帯の外周面との間に隙間を生ずるように、前記螺旋状補強体がホース壁外周面よりも外側に突出して設けられ、前記螺旋状エラストマー帯は、互いに隣接する螺旋状補強体の間の部分において、螺旋状補強体と並行して螺旋状にホース壁に一体化されている通信ケーブル保護管である(第1発明)。
【0010】
本発明においては、螺旋状エラストマー帯がホース壁に埋入されることが好ましい(第2発明)。さらに、本発明においては、螺旋状エラストマー帯がゴムにより構成されることが好ましい(第3発明)。さらに、本発明においては、外管と内管が軸方向に摺動可能にされることが好ましい(第4発明)。
【発明の効果】
【0011】
本発明の通信ケーブル保護管(第1発明)によれば、凍結障害の発生を抑制できるという効果が得られる。そして、凍結・解凍の繰り返しを受けても、凍結障害の発生が抑制されうる。
【0012】
さらに、第2発明のように、螺旋状エラストマー帯がホース壁に埋入される場合には、螺旋状エラストマー帯とホース壁の一体化が確実なものとなると共に、ホース壁内周に螺旋状エラストマーが露出しなくなるので、通信ケーブルの挿通作業がしやすくなる。
さらに、第3発明のように、螺旋状エラストマー帯がゴムにより構成されれば、より確実に本発明の効果が発揮される。
さらに、第4発明のように、管と内管が軸方向に摺動可能にされれば、内管を外管内部に配置する挿入作業がしやすくなり、凍結障害が必要な部位にだけ、内管を配置すればよくなると共に、外管を固定した状態で内管のみを交換することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の通信ケーブル保護管の第1の実施形態を示す一部断面図である。
【図2】第1実施形態における外管の構造を示す一部断面図である。
【図3】第1実施形態における外管を構成する樹脂条帯の断面である。
【図4】第1実施形態における内管の構造を示す一部断面図である。
【図5】本発明の通信ケーブル保護管の第2の実施形態を示す一部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態の例を説明する。本発明は以下に示す個別の実施形態に限定されるものではなく、その形態を変更して実施することもできる。
【0015】
第1実施形態の通信ケーブル保護管1は、例えば光ファイバーケーブルなどを挿通してケーブル保護管として地中に埋設して使用することができる。図1に示すように、通信ケーブル保護管1は、外管2と、この外管2の内側に設けられた内管3とによって構成された可撓管である。図1においては図の上側半分を断面として示している(図2、図4,5も同様である)。内管や外管の他に、断熱層などの他の層や管を含むように、通信ケーブル保護管1を構成することもできる。
【0016】
本実施形態においては、外管2と内管3は互いに非接着状態で設けられて、互いに軸方向に摺動可能となっている。そして、内管3の外周面と外管2の内周面とが互いに軽く接触する関係にあり、外管と内管を軸方向に互いに摺動させて、外管2に対し内管3を挿入・離脱させる操作が可能とされるとともに、摺動操作が完了すると外管2と内管3の軸方向の相対位置が維持されるようになっている。なお、外管2と内管3とを、軸方向に互いに自由に動きうるような遊挿関係となるようにしても良いし、あるいは両者が互いに密着関係となって固定されるようにしてもよい。外管2と内管3が互いに摺動可能であると、内管と外管を独立に製造して、後で内管を外管内に挿入して通信ケーブル保護管を完成させることができ、製造及び施工の自由度が高まる。また、外管を敷設した状態のままで、内管を交換することもできる。
【0017】
外管2は、内管3と比べ、径方向の剛性が高くなるように構成される。すなわち、例えば地中に埋設された際に必要となるケーブル保護管としてのつぶれ防止機能に関しては、外管2の寄与が大きい。そして、内管3は外管2に対し、比較的柔軟に構成される。
【0018】
まず外管2の構成をより具体的に説明する。図2に示すように、外管2は、軟質層22と、軟質層の外周に設けられた硬質補強層21により構成されている。
軟質層22は、軟質合成樹脂(例えば軟質塩化ビニル樹脂)で構成された円筒状の層である。この層によって、外管2の内/外が遮断されている。軟質層22は柔軟性を有する層であり、外管2の可撓性・伸縮性に寄与する。本実施形態においては、軟質層22は、硬質補強層21の内周面に接着一体化されている。なお、軟質層22は必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
【0019】
硬質補強層21は、図3に示すような略S字形断面を有する硬質合成樹脂(例えば硬質塩化ビニル等)製の硬質条帯SHを螺旋状に捲回して形成された、円筒状の補強層であり、外管のつぶれ防止機能を主体的に発揮する層である。そして、硬質条帯SHは、その断面のS字形状が、先行して捲回された硬質条帯と、後続して捲回された硬質条帯とが互いにかみ合うように捲回されている。詳細には、硬質条帯SHは、外管の中心軸と略平行に設けられた略直線状の底壁部S1と、この底壁部S1から立設されて硬質条帯SHの一側縁を形成する上向き側縁部S2、S2と、底壁部S1から硬質条帯SHの他方の側縁に向かって順次連設された立上がり部S3、上壁部S4および下向き側縁部S5とで構成される略S字状断面を有する条帯であり、硬質補強層21の形成に当たっては、硬質条帯SHの隣接する側縁同士における上向き側縁部S2と下向き側縁部S5が互いに係合するようにオーバーラップして硬質条帯SHが螺旋状に捲回される。
【0020】
また、螺旋状に捲回されて隣接する硬質条帯同士は、互いに非接着とされて、かみ合いによって、硬質補強層21の円筒形状が維持されている。従って、硬質補強層21は可撓性と伸縮性を備える一方で、硬質補強層21の伸縮性と可撓性は、かみ合いによって適度に制限されている。その結果、本実施形態における外管2は通信ケーブル保護管として適切な径方向の剛性と、伸縮性/可撓性を備える可撓管となっている。
【0021】
図4には、内管3の断面構造を示す。本実施形態においては、内管3は、円筒状のホース壁31と、螺旋状補強体32と、螺旋状エラストマー帯33とによって構成される。内管3には、適宜他の層や部材を追加することもできる。
【0022】
ホース壁31は、合成樹脂材料で構成され、円筒状に形成される。ホース壁31は、適度な柔軟性・伸縮性を有しており、ホースの(内管の)径方向に変形(特に拡径変形)可能とされている。ホース壁31は、合成樹脂(例えば、軟質塩化ビニル樹脂)製のフィルム素材を重ね合わせるように螺旋状に捲回し、互いに溶着(あるいは接着)一体化して形成することができる。本実施形態では、ホース壁31は軟質塩化ビニル樹脂製である。
【0023】
ホース壁31は、その内周面がほぼ平滑な面となるように形成されることが好ましく、そのようにすれば、通信ケーブルの挿通作業が円滑に行われる。
【0024】
ホース壁31には、硬質塩化ビニル樹脂製の螺旋状補強体32が一体化されている。螺旋状補強体32は、比較的柔軟なホース壁31の円筒形状を維持するための保形機能を有する比較的剛性の高い部材である。螺旋状補強体32は、所定の断面形状(本実施形態では逆T字状)で線状に形成されており、ホース壁31の外周面よりも、内管3の外側に向かって突出するように、かつ、所定のピッチを有する螺旋状に、ホース壁31の外周側に一体化されている。螺旋状補強体32が突出して設けられることにより、ホース壁31や螺旋状エラストマー帯33は、螺旋状補強体32の部分の外周よりも半径方向に引っ込んだ位置に配置され、その結果、螺旋状補強体32の外周面が外管2の内周面と接触しても、ホース壁31や螺旋状エラストマー帯33の外周面と外管2の内周面との間には所定の隙間Gが存在する。
【0025】
本実施形態においては、螺旋状補強体32は、ホース壁31を構成するフィルム素材によって挟まれるように一体化されている。螺旋状補強体32は、ホース壁31の外周面に、接着あるいは溶着するようにしても良い。また、螺旋状補強体32の断面形状は、本実施形態のような逆T字形状のほか、矩形状、半円状など、さまざまな形態とすることができる。
【0026】
ホース壁31には、互いに隣接する螺旋状補強体32同士の間の部分において、螺旋状エラストマー帯33が一体化されている。螺旋状エラストマー帯33は、ゴムや熱可塑性エラストマーなど、ホース壁31を構成する材料と比べ弾力性や復元性に富むエラストマー材料により構成されている。本実施形態では、EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)により螺旋状エラストマー帯が構成されている。
【0027】
本実施形態における螺旋状エラストマー帯33は、ホース長さ方向に沿う方向に細長い矩形断面を有するテープ状に形成されており、互いに隣接する螺旋状補強体32,32の間の部分のホース壁31に、螺旋状補強体32と並行して、螺旋状に設けられている。本実施形態においては、螺旋状エラストマー帯33の断面は、ホース半径方向の厚み1mm、ホース長手方向の長さ12mmとされている。螺旋状エラストマー帯33のホース長さ方向の長さは、螺旋状補強体32同士の間の間隔よりも短い。螺旋状エラストマー帯33の断面形状は、円形、半円形、楕円など他の形状であってもよい。
【0028】
本実施形態においては、螺旋状エラストマー帯33は、ホース壁31を構成するフィルム素材に挟まれるようにホース壁31に埋入されて一体化されている。螺旋状エラストマー帯33は、ホース壁31の外周面もしくは内周面に、接着あるいは溶着するようにしても良い。通信ケーブルを挿通する際に邪魔にならないよう、また、内管3の製造がしやすいよう、螺旋状エラストマー帯33は、ホース壁31に埋入されるか、あるいは、ホース壁31の外周面に一体化されることが好ましい。
【0029】
外管2に内管3が挿入された状態とされて、本実施形態の通信ケーブル保護管1となるが、前述したように、挿入された状態で、外管2の内周面と、内管3の螺旋状エラストマー帯33やホース壁31の外周面との間には隙間Gが存在する。隙間Gの好ましい大きさは、内管3の内周面の直径が50mm程度である場合に1〜4mm程度である。内管内周面の半径rに対し、隙間Gを0.05*r程度確保すれば、内管の内容積の10%程度に相当する体積を有する隙間が内管と外管の間に確保できて、凍結障害防止に特に効果的である。
【0030】
内管3や外管2を構成する樹脂材料としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などの合成樹脂材料が広く使用できる。そのうち、比較的硬質な樹脂材料として、例えば、ポリプロピレン樹脂や高密度ポリエチレン樹脂やポリアミド樹脂や硬質塩化ビニル樹脂などが、外管2の硬質補強層21や、内管3の螺旋状補強体32として好ましく使用できる。また、比較的軟質な樹脂材料として、例えば、エチレン酢酸ビニル樹脂(EVA)や、軟質塩化ビニル樹脂(PVC)や低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、熱可塑性ウレタン系エラストマー(TPU)、軟質塩化ビニル樹脂、熱可塑性エラストマーなどが、外管2の軟質層22や内管3のホース壁31として好ましく使用できる。
【0031】
内管3の螺旋状エラストマー帯33を構成するエラストマー材料としては、ゴムや熱可塑性エラストマーなどが使用できる。ゴムとしては、NBR、EPDMやシリコーンゴム、天然ゴムなどが例示される。発泡ゴムを使用することもできる。熱可塑性エラストマーとしては、オレフィン系熱可塑性エラストマーや、スチレン系熱可塑性エラストマーやウレタン系熱可塑性エラストマーなどが例示される。螺旋状エラストマー帯33を構成するエラストマー材料は、水分が凍結する際には、伸びる必要があるので、0℃付近でも柔軟性を失わないものを選択するのが好ましく、かつ、氷が解けた際に、元の形状に復元するよう、復元性に富むものを選択することが好ましい。エラストマー帯の復元力のよさの観点から、ゴム、特に架橋されたゴムにより螺旋状エラストマー帯を構成することが好ましい。
【0032】
上記実施形態の通信ケーブル保護管1の製造方法の例について説明する。外管2と内管3は公知のホースの製造方法によって製造できる。得られた外管2の内側に内管3を挿入すれば、通信ケーブル保護管1が得られる。
【0033】
例えば、外管2は、軟質層22を構成する樹脂材料を、半溶融状態でテープ状に押出して、公知のホース成形軸に螺旋状に捲回して軟質層22を形成しながら、硬質補強層21を構成する樹脂材料を、半溶融状態で所定のS字状断面に押出し、冷却しながら、硬質条帯SHとして、形成された軟質層22の外側に螺旋状に捲回し、両者を溶着あるいは接着することにより製造される。
【0034】
また、例えば内管3は、ホース壁31を構成する樹脂材料を、半溶融状態で幅広のテープ状に押出して、公知のホース成形軸に螺旋状に捲回してホース壁31を形成しながら、形成されつつあるホース壁に、螺旋状エラストマー帯33となるゴム製のテープや、所定形状に押出成形された線状の螺旋状補強体32を挟み込むように成形することにより製造することができる。螺旋状エラストマー帯33となるゴム製のテープは、あらかじめ加硫され、テープ状に加工されたものを使用することができる。
【0035】
上記説明では、内管と外管を別々に製造して、後で内管を外管に挿入して通信ケーブル保護管1とする製造方法について説明したが、別の製造方法とすることも可能である。例えば、1つのホース成形軸上で、内管3を製造しながら、さらに、その外周に外管の構成部材を捲回して外管2を製造し、通信ケーブル保護管1を製造することもできる。この製造方法は、内管の外周と外管の内周が密着したタイプの通信ケーブル保護管の製造に向いている。
【0036】
本発明の作用効果について説明する。上記通信ケーブル保護管1は、内管3の内部に通信ケーブルを挿通して使用されるが、水分が内管の内部に浸入して水分が凍結しても、内管3と外管2の間には隙間があるため、凍結した水分の体積増加分は、この隙間に吸収される。より詳細には、内管3の内部で水分が凍結して体積増加があると、内管のホース壁31と螺旋状エラストマー帯33の部分が伸びて拡径変形し、内管3のホース壁31や螺旋状エラストマー帯33の外周と、外管2の内周との間の空間(隙間G)が、凍結した水分の体積増加分を吸収するバッファー空間となる。従って、水分の凍結による通信ケーブルの通信特性の劣化や保護管の破壊が抑制され、凍結障害が防止される。
【0037】
また、氷が溶けると、螺旋状エラストマー帯33の復元力により、伸びたホース壁31や螺旋状エラストマー帯33が、初期の形状に復元する。従って、凍結・解凍を繰り返しても、内管の形状が復元し、隙間Gが再び確保されるので、凍結障害の抑制効果が繰り返し発現し、長期間にわたって凍結障害を抑制できる。
【0038】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の改変をして実施することができる。以下に本発明の他の実施形態について説明するが、以下の説明においては、上記実施形態と異なる部分を中心に説明し、同様である部分についてはその詳細な説明を省略する。また、以下に示す実施形態は、その一部を互いに組み合わせて、あるいは、その一部を置き換えて実施することもできる。
【0039】
図5には、本発明の第2実施形態の通信ケーブル保護管1aを示す。本実施形態においては、外管2aは、ホース壁22aの中に螺旋状補強体21aが埋入されて構成されている。
【0040】
また、内管3aの構成において、ホース壁31aの構成は第1実施形態と同様であるが、螺旋状補強体32aは、矩形状断面に形成されて、ホース壁31aの外周面に接着されている。そして、本実施形態においては、円形断面を有する螺旋状エラストマー帯33aが、3本、螺旋状補強体32aと並行して、3条の螺旋状に、ホース壁31aの外周面に接着一体化されている。
【0041】
本実施形態においても、第1実施形態と同様に、外管の内周面と内管のホース壁や螺旋状エラストマー帯との間の隙間(空間)が、凍結水の体積増加を吸収するバッファー空間となり、凍結障害が抑制され、エラストマー帯の復元力により、繰り返しの凍結・解凍に対しても凍結障害を抑制できる。
【0042】
さらに、本発明は、以下のような改変を加えることが可能である。
【0043】
外管は、通信ケーブル保護管に要求される剛性や強度が発揮される限りにおいて、種々の管を採用できる。即ち、内管よりも径方向の剛性が高い管であれば、可撓管に限らず、剛性管も外管として採用できる。外管を構成する材料も、樹脂材料だけには限定されず、例えば金属材料であっても良い。従って、例えば、硬質塩化ビニル製の直管や、金属製の直管を外管として、本発明の通信ケーブル保護管を構成することもできる。また、各種可撓管も広く外管として採用することができ、従来公知の樹脂製波付管なども外管として使用できる。
【0044】
なお、外管としては、外管単独で通信ケーブル保護管を構成しうるような(例えば従来公知の樹脂製波付管など)管を採用することが好ましい。そのようにすれば、地中深部など、凍結障害のおそれがない部分では、外管単独で通信ケーブル保護管を構成しながら、凍結障害を防止したい部位においては、外管内に内管を挿入して本発明のような通信ケーブル保護管が構成でき、通信ケーブル保護管の構成を経済的なものとできる。
【0045】
すなわち、本発明の通信ケーブル保護管において、内管は、外管の長さ方向の一部の区間に設けられるものであってもよい。
【0046】
また、内管の構成においても、種々の改変が可能である。内管の螺旋状エラストマー帯は、復元力を発揮する限りにおいて、多様な構成とすることができる。例えば、その断面形状は矩形状、円状、楕円状、半円状とできるほか、長さ方向に断面変化を与えることもできる。また、螺旋状エラストマー帯は、例えば積層状といった形態で、複数の材料を複合させて構成することもできる。また、第2実施形態に示したように、螺旋状エラストマー帯は偏平形状でない線状のものであってもよく、その本数も複数本であっても良い。
【0047】
また、内管のホース壁の構成も、径方向に変形可能な柔軟性・伸縮性を備える限りにおいて、多様な構成をとることができる。その限りにおいて、ホース壁は、単層であっても積層であってもよい。また、第1実施形態においては、幅広(内管の成形ピッチの1.5〜3倍程度の幅)のテープが螺旋状に捲回されて、積層状のホース壁が構成されるが、ホース壁の具体的構成はこれに限定されるものではなく、螺旋のピッチに近い幅の樹脂条帯を螺旋状に捲回して、互いに隣接する樹脂条帯側縁部同士を溶着(接着)一体化してホース壁とすることもできる。
【0048】
また、内管の構成における螺旋状補強体も、必ずしも硬質樹脂によって構成されなくてはならないものではなく、内管のホース壁と同じ材料により構成することもできる。そして、内管の螺旋状補強体が、内管での水分凍結に際し、拡径変形可能なものとされていても良い。
【0049】
また、上記実施形態の説明においては、通信ケーブル保護管が地中に埋設される例について説明したが、本発明の通信ケーブル保護管は地中に埋設するものに限定されず、地上や建物内に配置されるような通信ケーブル保護管としても使用できる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の通信ケーブル保護管は、凍結障害の抑制効果に優れ、光ファイバケーブルなどを挿通して保護するための通信ケーブル保護管として特に好適に使用することができ、産業上の利用価値が高い。
【符号の説明】
【0051】
1 通信ケーブル保護管
2 外管
21 硬質補強層
SH 硬質条帯
22 軟質層
3 内管
31 ホース壁
32 螺旋状補強体
33 螺旋状エラストマー帯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内管と、径方向の剛性が内管よりも高い外管とを有する通信ケーブル保護管であって、
前記内管は、外管の長さ方向のすくなくとも一部にわたって、外管内部に配置され、
前記内管は、ホース壁と、螺旋状補強体と、螺旋状エラストマー帯とを有するように構成されると共に、
前記ホース壁は、径方向に変形可能な柔軟性を有する樹脂材料によって形成され、
前記螺旋状補強体はホース壁に一体化されるとともに、外管の内周面とホース壁や螺旋状エラストマー帯の外周面との間に隙間を生ずるように、前記螺旋状補強体がホース壁外周面よりも外側に突出して設けられ、
前記螺旋状エラストマー帯は、互いに隣接する螺旋状補強体の間の部分において、螺旋状補強体と並行して螺旋状にホース壁に一体化されている通信ケーブル保護管。
【請求項2】
螺旋状エラストマー帯がホース壁に埋入された請求項1に記載の通信ケーブル保護管。
【請求項3】
螺旋状エラストマー帯がゴムにより構成された請求項2に記載の通信ケーブル保護管。
【請求項4】
外管と内管が軸方向に摺動可能とされた請求項3に記載の通信ケーブル保護管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−39009(P2013−39009A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−175479(P2011−175479)
【出願日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【出願人】(000108498)タイガースポリマー株式会社 (187)
【Fターム(参考)】