説明

通信システム、フェムトセル基地局装置、通信処理方法およびプログラム

【課題】IP網の中継地点に輻輳や通信品質問題が発生しても、フェムトセル基地局装置に接続する移動端末に対して通信サービスを継続可能にした通信システムを提供する。
【解決手段】移動通信網を介して第1のIP網および第2のIP網と接続され、移動通信網から受信する無線パケットをIPパケットに変換して第2のIP網に送出する信号処理装置と、移動端末および第1のIP網と接続され、第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、関門装置が正常である場合、第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを移動端末から受信すると、無線パケットをIPパケットに変換して第1のIP網を介して第2のIP網に送信し、関門装置が正常でない場合、移動端末から受信する、情報端末宛の無線パケットを第1のIP網および移動通信網を介して信号処理装置に送信するフェムトセル基地局装置とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システム、フェムトセル基地局装置、通信処理方法、およびその方法をフェムトセル基地局装置に実行させるためのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話などの移動端末が無線通信でネットワークと接続するための無線基地局の数が増え、移動端末の通信可能なエリアが広がっている。電波出力が大きく、主に屋外に設置される無線基地局はマクロセル基地局装置と呼ばれている。しかし、高層ビル・住宅の屋内や地下街等では、マクロセル基地局の電波出力をさらに大きくしても、移動端末と無線基地局との間の通信状態が悪いという問題があった。
【0003】
近年、上述の通信状態の悪いエリアに、電波出力が非常に小さく、通信範囲が半径数十メートルのフェムトセル基地局装置(以下では、フェムトセルと称する)が設置されるようになった(特許文献1参照)。
【0004】
図12はフェムトセルを含む通信システムの一構成例を示すブロック図である。図12に示すように、フェムトセル200はIP(Internet Protocol)網3を介してIP網30に接続される。IP網3は、通信サービスを提供するプロバイダが管理するLAN(Local Area Network)や企業内LANなどの狭域網に相当する。IP網30は、IP網3よりも広い範囲に展開されている広域網に相当する。IP網30は、例えば、インターネットである。
【0005】
以下では、説明を簡単にするために、IP網3が1つの場合で説明するが、IP網30に接続されるIP網3が複数設けられていてもよい。また、IP網3およびIP網30のそれぞれにおいて伝送されるパケットには、その送信先および送信元の情報を含むヘッダが添付されている。IP網3およびIP網30におけるパケット通信はインターネットプロトコルにしたがっており、ここでは、その規約についての詳細な説明を省略する。
【0006】
IP網3およびIP網30には、パケットの転送処理を行うルータを含むネットワーク通信機器が接続されているが、その構成を図に示すことを省略している。IP網3とIP網30とを接続する通信線150に関門装置100が接続されている。関門装置100は、IP網3から受信するパケットをIP網30に送信し、IP網30から受信するパケットをIP網3に送信する。移動端末1は、無線通信でフェムトセル200と接続される。IP網30に接続された情報端末9は、サーバであってもよく、デスクトップ型のパーソナルコンピュータであってもよく、移動端末であってもよい。
【0007】
図12を参照して、データの通信処理方法を簡単に説明する。
【0008】
移動端末1がIP網30に接続された情報端末9宛のデータをフェムトセル200に無線パケットで送信する。フェムトセル200は、情報端末9宛のデータを移動端末1から無線パケットで受信すると、無線パケットをIP網30で伝送可能にするために、無線パケットをIPパケットに変換するパケット変換処理を行う。そして、フェムトセル200は、パケット変換処理により生成したIPパケットをIP網3および関門装置100を介してIP網30にパケットを送信する。IPパケットは、フェムトセル200から図12に示す経路32を経由して、IP網30に接続された情報端末9に届けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−94559号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の通信システムにおいては、IP網3とIP網30を結ぶ通信線150に輻輳や通信品質問題が発生した場合、関門装置100はIP網3とIP網30との間で正常にパケットを送受信することができなくなる。通信線150に問題がなくても、関門装置100にトラブルが発生した場合も同様である。関門装置100が正常に動作しなくなった場合、フェムトセル200は、移動端末1とは通信可能だが、IP網30との通信が困難になる。最悪の場合、移動端末1と情報端末9との間でパケット通信ができなくなったり、移動端末1のユーザと情報端末9のユーザとの間で通話ができなくなったりすることもある。
【0011】
その問題の対策として、関門装置100が正常に動作していない間、移動端末1はマクロセル基地局装置を経由してIP網30の情報端末9と通信することが考えられている。
【0012】
図13は関連する通信システムの他の構成例を示すブロック図である。図13に示す無線基地局8はマクロセル基地局装置に相当する。無線基地局8が接続される移動通信ネットワーク5はIP網30と接続されている。移動通信ネットワーク5には、信号処理を行う無線ネットワーク制御装置(RNC:Radio Network Controller)70が接続されている。
【0013】
関門装置100が正常に動作していない間、フェムトセル2の機能をオフにすることにより移動端末1がフェムトセル200と接続できないようにする。移動端末1は、フェムトセル200と接続できないため、無線基地局8と無線通信で接続する。これにより、移動端末1は、移動通信ネットワーク5を経由する経路34でIP網30の情報端末9と通信することが可能となる。
【0014】
しかし、無線基地局8の不感地対策として、フェムトセルが導入されているケースが多い。そのようなケースでは、図13に示すような対策を行うことができない。そのため、通信線150または関門装置100に問題が発生した場合、無線基地局8の不感地エリアにある移動端末1は、フェムトセル2と通信可能なエリアにあっても、通信サービスを受けることのできない「サービス圏外」にあるのと同じになり、IP網30と通信できなくなってしまう。
【0015】
本発明は上述したような技術が有する問題点を解決するためになされたものであり、IP網の中継点に輻輳や通信品質問題が発生しても、フェムトセル基地局装置に接続する移動端末に対して通信サービスを継続可能にした通信システム、フェムトセル基地局装置、通信処理方法、およびその方法をフェムトセル基地局装置に実行させるためのプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するための本発明の通信システムは、
移動通信網を介して第1のIP網および第2のIP網と接続するための通信部と、該移動通信網から受信する無線パケットをIPパケットに変換して前記第2のIP網に送出する信号処理部とを含む信号処理装置と、
移動端末および前記第1のIP網と接続するための通信部と、該第1のIP網および前記第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、該関門装置が正常である場合、前記第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でない場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、該無線パケットを前記第1のIP網および前記移動通信網を介して前記信号処理装置に送信する制御部とを含むフェムトセル基地局装置と、
を有する。
【0017】
また、本発明のフェムトセル基地局装置は、
移動端末および第1のIP網と接続するための通信部と、
前記第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、該関門装置が正常である場合、前記第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でない場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、前記第1および前記第2のIP網と接続された移動通信網に設けられ、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置に前記無線パケットを該第1のIP網および該移動通信網を介して送信する制御部と、
を有する。
【0018】
また、本発明の通信処理方法は、第1のIP網と接続されるフェムトセル基地局装置による通信処理方法であって、
前記第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、
前記関門装置が正常であると判定する場合、第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でないと判定する場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、前記第1および前記第2のIP網と接続された移動通信網に設けられ、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置に前記無線パケットを該第1のIP網および該移動通信網を介して送信するものである。
【0019】
さらに、本発明のプログラムは、第1のIP網と接続されるフェムトセル基地局装置に実行させるためのプログラムであって、
前記第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、
前記関門装置が正常であると判定する場合、第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でないと判定する場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、前記第1および前記第2のIP網と接続された移動通信網に設けられ、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置に前記無線パケットを該第1のIP網および該移動通信網を介して送信する処理を前記フェムトセル基地局装置に実行させるものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、2つのIPネットワーク間を結ぶ中継点にトラブルが発生すると、データの伝送経路が移動通信ネットワーク経由の経路に切り替わるため、フェムトセルに接続する移動端末は、移動通信ネットワーク経由でデータを送信することが可能となり、移動端末のユーザ向けサービスを維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態の通信システムの一例を説明するためのブロック図である。
【図2】図1に示したフェムトセルの一構成例を示すブロック図である。
【図3】図2に示したフェムトセルの具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【図4】図1に示したゲートウェイの一構成例を示すブロック図である。
【図5】図1に示したRNCの一構成例を示すブロック図である。
【図6】図1に示した関門装置の一構成例を示すブロック図である。
【図7】本実施形態のフェムトセルの動作手順を説明するためのフローチャートである。
【図8】図7に示したステップ101の判定処理における詳細な手順を示すフローチャートである。
【図9】図7に示したステップ101の判定処理において、別の手順を示すフローチャートである。
【図10】図7に示したステップ101の判定処理において、別の手順を示すフローチャートである。
【図11】本実施形態の通信システムの他の構成例を示すブロック図である。
【図12】関連する通信システムの一構成例を示すブロック図である。
【図13】関連する通信システムの他の構成例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本実施形態のフェムトセルを有する通信システムを説明する。図1は本実施形態の通信システムの一例を説明するためのブロック図である。なお、背景技術で説明した構成と同様な構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0023】
本実施形態の通信システムは、IP網3に接続されるフェムトセル2と、移動通信ネットワーク5に接続されるRNC7とを有する。ゲートウェイ4は、IP網3および移動通信ネットワーク5のそれぞれと接続される。IP網30は移動通信ネットワーク5と接続されている。IP網3は、関門装置10および通信線150を介してIP網30と接続されている。
【0024】
次に、フェムトセル2の構成を説明する。図2は図1に示したフェムトセルの一構成例を示すブロック図である。図2に示すように、フェムトセル2は、移動端末1およびIP網3とデータを送受信するための通信部22と、関門装置10が正常か否かの判定により通信制御を行う制御部21とを有する。
【0025】
図3は図2に示したフェムトセルの具体的な構成の一例を示すブロック図である。
【0026】
フェムトセル2の通信部22は、移動端末1との間での無線通信を行う無線通信部221と、IP網3と接続するための網接続部222とを有する。制御部21は、関門装置10からの応答信号の待ち時間を計測するタイマー213と、関門装置10が正常か否かを判定する関門装置監視部212と、関門装置監視部212の判定結果に応じて無線パケットをどのように処理するかを決定する通信経路選択部211と、無線パケットをIPパケットに変換するパケット変換処理部214とを有する。
【0027】
通信経路選択部211、関門装置監視部212、タイマー213、およびパケット変換処理部214は、本実施形態では、それぞれの機能を実行するための専用回路で構成されている。なお、プログラムが格納されたメモリ(不図示)とCPU(Central Processing Unit)(不図示)とが制御部21に設けられ、CPUがプログラムにしたがって処理を実行することで、通信経路選択部211、関門装置監視部212およびパケット変換処理部214のうち少なくともいずれか、または全部がフェムトセル2に仮想的に構成されてもよい。
【0028】
関門装置監視部212は、関門装置10および通信線150の状態を確認する目的で、一定時間毎にヘルスチェック信号を網接続部222を介して関門装置10に送信する。その際、関門装置監視部212は、タイマー213を動作させる。ヘルスチェック信号には、関門装置10に対してフェムトセル2に返信を促す内容のメッセージが含まれている。ヘルスチェック信号として、例えば、ARP(Address Resolution Protocol)パケットを用いる。関門装置10は、その応答信号であるヘルスチェック応答信号をフェムトセル2宛に送信する。
【0029】
また、ヘルスチェック信号に、通信線150の通信品質に関する情報の項目である通信品質項目が含まれていてもよい。この場合、ヘルスチェック応答信号には通信品質項目についての情報が含まれ、フェムトセル2は、定期的に通信品質項目の情報を取得することが可能となる。通信品質項目で通信線150の通信品質の良否を判断する場合には、関門装置監視部212に予め通信品質が良いか否かの判定基準となる基準値が格納されている。ここでは、通信品質項目の数値が基準値を上回ると、その通信品質に問題があるものとする。通信品質項目の一例として、関門装置10がパケットを受信してから送出するまでの転送処理時間がある。
【0030】
また、関門装置監視部212は、タイマー213の動作開始から所定の期間内に、関門装置10から網接続部222を介してヘルスチェック応答信号を受信すると、動作中のタイマー213の時間をクリアし、関門装置10が正常である旨の情報を通信経路選択部211に通知する。反対に、関門装置監視部212は、ヘルスチェック応答信号を所定の期間内に受信しなければ、関門装置10が正常でないと判定し、その旨の情報を通信経路選択部211に通知する。
【0031】
なお、所定の期間内にヘルスチェック応答信号を受信できない回数をカウントし、そのカウントした値が予め決められた閾値を越える場合に、関門装置10が正常でないと判定するようにしてもよい。さらに、ヘルスチェック応答信号に通信品質項目に関する数値の情報が含まれていれば、一定期間毎に通信品質項目の数値を監視し、受信する数値が予め決められた基準値を越えるヘルスチェック応答信号を一定期間内で断続的に、または、連続して受信する場合に、通信線150が正常でないと判定するようにしてもよい。閾値および基準値は関門装置監視部212に設けられたメモリ(不図示)に予め登録され、カウント値はそのメモリに記録される。
【0032】
このように、通信線150または関門装置10が正常であるか否かの判定基準を複数種類設けることで、通信線150に輻輳が起こっていると考えられる場合、輻輳の原因がデータ負荷増加によるものか、通信品質低下などの不具合によるものかを切り分けられる。
【0033】
また、本実施形態では、関門装置監視部212は関門装置10が正常であるか否かを判定しているが、通信線150に異常が発生すれば、関門装置10も正常に動作しなくなることから、関門装置10から返送されるヘルスチェック応答信号で通信線150も監視していることになる。
【0034】
通信経路選択部211は、関門装置監視部212からの指示にしたがって、次のようにして、データの通信経路を切り替える。通信経路選択部211は、関門装置10が正常である旨の情報を関門装置監視部212から受け取ると、無線通信部221から受け取る無線パケットをパケット変換処理部214に渡す。また、通信経路選択部211は、関門装置10が正常でない旨の情報を関門装置監視部212から受け取ると、無線通信部221から受け取る無線パケットを移動通信ネットワーク5経由でIP網30に送るために、無線パケットをパケット変換処理部214に通さないで網接続部222を介してゲートウェイ4に送信する。
【0035】
次に、ゲートウェイ4の構成を説明する。図4は図1に示したゲートウェイの一構成例を示すブロック図である。
【0036】
図4に示すように、ゲートウェイ4は、移動通信ネットワーク5およびIP網3のそれぞれと通信するための通信部42と、IP網3から受信する無線パケットを移動通信ネットワーク5の通信規格に対応する信号に変換してRNC7に送信する制御部41とを有する。移動通信ネットワーク5の通信規格とは、無線基地局−RNC間インタフェース(Iubインタフェース)である。なお、トンネリングの場合と同様に、制御部41は、無線パケットをIubインタフェースでカプセル化してもよい。
【0037】
次に、RNC7の構成を説明する。図5は図1に示したRNCの一構成例を示すブロック図である。ここでは、RNCの機能として、本発明に関連する部分について詳細に説明し、通常の機能についての詳細な説明を省略する。
【0038】
図5に示すように、RNC7は、移動通信ネットワーク5と通信接続するための通信部72と、移動通信ネットワーク5を介して受信する無線パケットをIPパケットに変換する信号処理部71とを有する。
【0039】
なお、本実施形態では、移動通信ネットワーク5で無線パケットをIPパケットに変換する装置がRNCの場合で説明しているが、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置はRNCに限らない。
【0040】
次に、関門装置10の構成を説明する。関門装置10は、関門ルータおよびサーバ等の情報処理装置である。図6は図1に示した関門装置の一構成例を示すブロック図である。ここでは、関門装置の機能として、本発明に関連する部分について詳細に説明し、通常の機能についての詳細な説明を省略する。
【0041】
図6に示すように、関門装置10は、IP網3およびIP網30と通信接続するための通信部112と、IP網3およびIP網30間でパケットを送受信する制御部111とを有する。
【0042】
制御部111は、フェムトセル2からヘルスチェック信号を受信すると、ヘルスチェック応答信号をフェムトセル2に送信する。その際、ヘルスチェック信号に通信品質項目の情報が含まれていると、制御部111は、その通信品質項目に関して計測を行い、計測した数値をヘルスチェック応答信号に挿入する。このようにすることで、制御部111に対する、パケットの転送処理の負荷が大きいほど、制御部111がヘルスチェック信号を受信してからヘルスチェック応答信号を送信するまでの時間が長くなる。関門装置10自信に問題が発生していると、問題の種類によっては、制御部111はヘルスチェック応答信号をフェムトセル2に返信できなくなる。
【0043】
なお、本実施形態では、関門装置10が1つの場合で説明しているが、通信線150および関門装置10の組み合わせが複数あってもよい。また、関門装置10がIP網3側に設けられている場合で説明しているが、関門装置10は、通信線150の途中に設けられていてもよく、IP網30側に設けられていてもよい。
【0044】
次に、本実施形態のフェムトセルの動作手順を説明する。図7は本実施形態のフェムトセルの動作手順を説明するためのフローチャートである。ここでは、図12に示した情報端末9がIP網30に接続され、移動端末1が情報端末9宛にデータを送信する場合とする。
【0045】
フェムトセル2は、関門装置10が正常か否かを定期的に調べる(ステップ101)。フェムトセル2は、ステップ101で関門装置10が正常であると判断した場合、移動端末1から情報端末9宛のデータを無線パケットで受信すると(ステップ102)、無線パケットをIPパケットに変換し、IPパケットを情報端末9宛にIP網3を介してIP網30に送信する(ステップ103)。
【0046】
一方、フェムトセル2は、ステップ101で関門装置10が正常でないと判断した場合、移動端末1から情報端末9宛のデータを無線パケットで受信すると(ステップ104)、無線パケットをRNC7宛にIP網3およびゲートウェイ4を介して送信する(ステップ105)。
【0047】
ゲートウェイ4は、フェムトセル2からIP網3を介して無線パケットを受信すると、無線パケットをIubインタフェース信号に変換し、その信号を移動通信ネットワーク5を介してRNC7に送信する。RNC7は、Iubインタフェース信号をゲートウェイ4から受信すると、Iubインタフェース信号をIPパケットに変換し、IPパケットを移動通信ネットワーク5およびIP網30を介して情報端末9に送信する。
【0048】
なお、ステップ102またはステップ104で、フェムトセル2は、移動端末1から無線パケットを受信しなければ、ステップ101の処理に戻る。
【0049】
次に、図7に示したステップ101の判定処理について詳しく説明する。図8は図7に示したステップ101の処理における詳細な手順を示すフローチャートである。
【0050】
図8に示すように、フェムトセル2は、一定時間毎にヘルスチェック信号を関門装置10に送信し、ヘルスチェック信号を送信する際にタイマー213を動作させる(ステップ201)。そして、フェムトセル2は、ヘルスチェック信号を送信してから所定の期間内にヘルスチェック応答信号を受信したか否かを判定する(ステップ202)。所定の期間内にヘルスチェック応答信号を受信しなければ、フェムトセル2は、関門装置10が正常でないと判定し、ステップ104の処理に進む。一方、所定の期間内にヘルスチェック信号を受信すると、フェムトセル2は、関門装置10が正常であると判定し、タイマー213の時間をクリアし(ステップ203)、ステップ102の処理に進む。
【0051】
次に、図7に示したステップ101の判定処理について別の方法を説明する。図9は図7に示したステップ101の処理における詳細な手順を示すフローチャートである。なお、ステップ201から203は図8で説明した内容と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0052】
ステップ202で、所定の期間内にヘルスチェック応答信号を受信しなければ、フェムトセル2は、カウント値を1増やす(ステップ301)。そして、フェムトセル2は、カウント値が閾値を越えるか否かを判定し(ステップ302)、カウント値が閾値を越えると、関門装置10が正常でないと判定し、ステップ104の処理に進む。一方、ステップ302でカウント値が閾値以下であると、フェムトセル2は、関門装置10が正常であると判定し、ステップ102の処理に進む。
【0053】
図9で説明した方法は、図8で説明した方法に比べて、移動通信ネットワーク5に伝送される無線パケットが増加してRNC7にかかる信号処理の負荷が大きくなっているときに有効である。
【0054】
次に、図7に示したステップ101の判定処理について、図8および図9で説明した手順のいずれとも異なる方法を説明する。ここでは、ヘルスチェック応答信号に通信品質項目に関する数値が含まれているものとする。
【0055】
図10は図7に示したステップ101の処理における詳細な手順を示すフローチャートである。ステップ201および203は図8で説明した内容と同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0056】
フェムトセル2は、ヘルスチェック信号を送信した後、複数のヘルスチェック応答信号を一定期間に受信すると(ステップ401)、ヘルスチェック応答信号に含まれる、通信品質項目の数値を読み出す。そして、フェムトセル2は、読み出した数値と基準値とを比較し、その数値が基準値を越えるヘルスチェック応答信号を断続的に、または連続して受信しているか否かを判定する(ステップ402)。判定の結果、その数値が基準値を越えるヘルスチェック応答信号を断続的に、または連続して受信していると、フェムトセル2は、通信線150が正常でないと判定し、ステップ104の処理に進む。一方、ステップ402で、その数値が基準値を越えるヘルスチェック応答信号を断続的に、または連続して受信していなければ、フェムトセル2は、通信線150が正常であると判定し、ステップ102の処理に進む。
【0057】
なお、受信数値が断続的に基準値を越える場合とは、受信数値が基準値を越えるヘルスチェック応答信号を一定期間内に少なくとも2回、受信することを意味する。また、受信数値が連続して基準値を越える場合とは、受信数値が基準値を越えるヘルスチェック応答信号を一定期間内に少なくとも2回続けて受信することを意味する。
【0058】
また、受信数値が基準値を1回越えただけでデータ送信経路を変更せず、受信数値が断続的または継続的に基準値を越える場合に、データ送信経路を変更するのは、次のような理由による。通信線150の通信品質はIP網3およびIP網30の間でやり取りされるパケットの量で時々刻々と変化している。関門装置10がヘルスチェック信号を受信したときだけ通信品質が悪くなっている場合もある。このような場合にもデータの送信経路を通信線150から移動通信ネットワーク5に変更してしまうと、移動通信ネットワーク5側の負荷が逆に大きくなってしまうからである。
【0059】
図10で説明した方法は、複数の通信品質項目のうち着目する通信品質項目について基準値を設定することで、通信経路を変更するか否かを通信線150に発生する不具合の種類に応じて決めることが可能となる。この図10で説明した方法を、図8または図9で説明した方法と組み合わせてもよい。
【0060】
上述したように、本実施形態によれば、フェムトセル2が関門装置10の状態を監視しており、関門装置10または通信線150にトラブルが発生すると、フェムトセル2がデータ送信経路として移動通信ネットワーク5経由の経路を選択する。そのため、2つのIP網3およびIP網30を結ぶ中継点にトラブルが発生しても、移動端末1からIP網30宛にデータを送信することが可能となり、移動端末1のユーザ向けサービスを維持できる。
【0061】
また、フェムトセル2が通常のARPパケット等のパケットを用いて関門装置10を監視しているため、関門装置10に特別な機能を追加する必要がなく、関門装置10に発生する処理負荷を抑制できる。
【0062】
さらに、関門装置10から通信線150の通信品質に関する情報を取得することで、通信線150に輻輳が起こっていると考えられる場合、輻輳の原因がデータ負荷増加によるものか、通信品質低下などの不具合によるものかを切り分けられる。
【0063】
なお、図1では、IP網3と移動通信ネットワーク5の間にゲートウェイ4を設けている構成を示しているが、フェムトセル2がゲートウェイ4に送信する無線パケットが移動通信ネットワーク5の通信規格に対応していれば、ゲートウェイ4を設けなくてもよい。このことを、図11を参照して説明する。図11は本実施形態の通信システムの他の構成例を示すブロック図である。図11に示すように、フェムトセル2は、無線パケットをIP網3および移動通信ネットワーク5を介してRNC7宛に送信する。この場合、ゲートウェイ4とゲートウェイ4での処理が省ける。
【0064】
また、本実施形態では、フェムトセル2からIP網30の情報端末9にデータを送信する場合で説明したが、情報端末9からフェムトセル2にデータを送信する場合についても、IP網30に接続された情報処理装置(不図示)が、本実施形態のフェムトセル2と同様に、関門装置10の状態を監視して通信制御を行ってもよい。また、フェムトセル2から情報端末9宛に送信されるデータに、その経路の情報が格納されるようにしてもよい。情報端末9は、移動端末1より受信したデータから経路の情報を読み出し、読み出した経路を逆に辿るように移動端末1にデータを送る。これらのうちいずれの方法でも、情報端末9が移動端末1宛にデータを送信する際、関門装置10または通信線150にトラブルが発生していても、そのデータは移動通信ネットワーク5を経由して移動端末1に送ることができる。
【符号の説明】
【0065】
1 移動端末
2 フェムトセル
21 制御部
22 通信部
3、30 IP網
4 ゲートウェイ
5 移動通信ネットワーク
7 無線ネットワーク制御装置(RNC)
10 関門装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動通信網を介して第1のIP網および第2のIP網と接続するための通信部と、該移動通信網から受信する無線パケットをIPパケットに変換して前記第2のIP網に送出する信号処理部とを含む信号処理装置と、
移動端末および前記第1のIP網と接続するための通信部と、該第1のIP網および前記第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、該関門装置が正常である場合、前記第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でない場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、該無線パケットを前記第1のIP網および前記移動通信網を介して前記信号処理装置に送信する制御部とを含むフェムトセル基地局装置と、
を有する通信システム。
【請求項2】
前記移動通信網および前記第1のIP網と接続され、該第1のIP網から受信する無線パケットを該移動通信網の通信規格に対応する信号に変換して前記信号処理装置に送信するゲートウェイがさらに設けられた、請求項1記載の通信システム。
【請求項3】
移動端末および第1のIP網と接続するための通信部と、
前記第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、該関門装置が正常である場合、前記第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でない場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、前記第1および前記第2のIP網と接続された移動通信網に設けられ、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置に前記無線パケットを該第1のIP網および該移動通信網を介して送信する制御部と、
を有するフェムトセル基地局装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記関門装置が正常か否かを調べるためのヘルスチェック信号を定期的に該関門装置に送信し、所定の時間内に該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を受信しなければ、前記関門装置が正常でないと判定し、前記所定の時間内に前記ヘルスチェック応答信号を受信すると、前記関門装置が正常であると判定する、請求項3記載のフェムトセル基地局装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記関門装置が正常か否かを調べるためのヘルスチェック信号を定期的に該関門装置に送信し、所定の時間内に該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を受信しなければ、カウント値を1増やし、該カウント値が予め決められた閾値を越えるとき、前記関門装置が正常でないと判定し、前記カウント値が閾値以下であるとき、前記関門装置が正常であると判定する、請求項3記載のフェムトセル基地局装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第1および前記第2のIP網を接続する通信線についての通信品質に関する項目である通信品質項目の情報を含むヘルスチェック信号を定期的に前記関門装置に送信し、前記通信品質項目の数値の情報を含み、該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を一定期間内に複数受信すると、該ヘルスチェック応答信号に含まれる前記数値と予め決められた基準値とを比較し、通信品質が悪いことを示す比較結果のヘルスチェック応答信号を断続的に、または連続して受信していると、前記通信線が正常でないと判定する、請求項3から5のいずれか1項記載のフェムトセル基地局装置。
【請求項7】
第1のIP網と接続されるフェムトセル基地局装置による通信処理方法であって、
前記第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、
前記関門装置が正常であると判定する場合、第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でないと判定する場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、前記第1および前記第2のIP網と接続された移動通信網に設けられ、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置に前記無線パケットを該第1のIP網および該移動通信網を介して送信する、通信処理方法。
【請求項8】
前記関門装置が正常か否かを調べるためのヘルスチェック信号を定期的に該関門装置に送信し、
所定の時間内に該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を受信しなければ、前記関門装置が正常でないと判定し、前記所定の時間内に前記ヘルスチェック応答信号を受信すると、前記関門装置が正常であると判定する、請求項7記載の通信処理方法。
【請求項9】
前記関門装置が正常か否かを調べるためのヘルスチェック信号を定期的に該関門装置に送信し、
所定の時間内に該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を受信しなければ、カウント値を1増やし、該カウント値が予め決められた閾値を越えるとき、前記関門装置が正常でないと判定し、前記カウント値が閾値以下であるとき、前記関門装置が正常であると判定する、請求項7記載の通信処理方法。
【請求項10】
前記第1および前記第2のIP網を接続する通信線についての通信品質に関する項目である通信品質項目の情報を含むヘルスチェック信号を定期的に前記関門装置に送信し、
前記通信品質項目の数値の情報を含み、該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を一定期間内に複数受信すると、該ヘルスチェック応答信号に含まれる前記数値と予め決められた基準値とを比較し、通信品質が悪いことを示す比較結果のヘルスチェック応答信号を断続的に、または連続して受信していると、前記通信線が正常でないと判定する、請求項7から9のいずれか1項記載の通信処理方法。
【請求項11】
第1のIP網と接続されるフェムトセル基地局装置に実行させるためのプログラムであって、
前記第1のIP網および第2のIP網を接続する関門装置が正常であるか否かを定期的に調べ、
前記関門装置が正常であると判定する場合、第2のIP網に接続された情報端末宛の無線パケットを移動端末から受信すると、該無線パケットをIPパケットに変換して前記第1のIP網を介して前記第2のIP網に送信し、前記関門装置が正常でないと判定する場合、前記情報端末宛の無線パケットを前記移動端末から受信すると、前記第1および前記第2のIP網と接続された移動通信網に設けられ、無線パケットをIPパケットに変換する信号処理装置に前記無線パケットを該第1のIP網および該移動通信網を介して送信する処理を前記フェムトセル基地局装置に実行させるためのプログラム。
【請求項12】
前記関門装置が正常か否かを調べるためのヘルスチェック信号を定期的に前記関門装置に送信し、
所定の時間内に該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を受信しなければ、前記関門装置が正常でないと判定し、前記所定の時間内に前記ヘルスチェック応答信号を受信すると、前記関門装置が正常であると判定する、請求項11記載のプログラム。
【請求項13】
前記関門装置が正常か否かを調べるためのヘルスチェック信号を定期的に該関門装置に送信し、
所定の時間内に該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を受信しなければ、カウント値を1増やし、該カウント値が予め決められた閾値を越えるとき、前記関門装置が正常でないと判定し、前記カウント値が閾値以下であるとき、前記関門装置が正常であると判定する、請求項11記載のプログラム。
【請求項14】
前記第1および前記第2のIP網を接続する通信線についての通信品質に関する項目である通信品質項目の情報を含むヘルスチェック信号を定期的に前記関門装置に送信し、
前記通信品質項目の数値の情報を含み、該ヘルスチェック信号の応答信号であるヘルスチェック応答信号を一定期間内に複数受信すると、該ヘルスチェック応答信号に含まれる前記数値と予め決められた基準値とを比較し、通信品質が悪いことを示す比較結果のヘルスチェック応答信号を断続的に、または連続して受信していると、前記通信線が正常でないと判定する、請求項11から13のいずれか1項記載のプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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