説明

通信システム、通信装置および通信方法

【課題】ネットワークに負荷をかけることなく、サーバの異常を検出することができる通信システム、通信装置および通信方法を提供する。
【解決手段】クライアント10の要求部12は、仮想IPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を送受信部11を介して送信する。サーバ20の通知部24は、クライアント10の送受信部11から情報を受信した際に、記憶部22にサーバ固有のIPアドレスの他に仮想IPアドレスを記憶している場合、クライアント10に対して、MACアドレスを送受信部21を介して送信する。クライアント10の検出部13は、送受信部11で受信された当該仮想IPアドレスを有するサーバからのMACアドレスが、記憶部12に記憶する当該IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1+1冗長構成サーバの稼働マシンと待機マシンが切り替わったことを検出する通信システム、通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1+1冗長構成のサーバシステムは、2台のサーバマシンで構成され、一方を稼働(アクティブ)、他方を待機(スタンバイ)として動作させている。そして、稼働側に何らかの障害等が発生した場合に稼働状態と待機状態が自動的に切り替わり、サーバによって提供されるサービスが停止する時間を最小限に抑えることができる。また、このような事象が発生した場合、サーバの稼働状態と待機状態が切り替わったことを速やかに検出し、待機状態になったマシンの点検をしなければならない。
【0003】
図4に、サーバの稼働状態と待機状態が切り替わったことを検出する従来技術の第1の構成例を示す。図4は、比較的大規模なネットワークの場合に使用される構成例であり、多数のサーバの稼働状態を監視する上位監視装置を用意し、各サーバの稼働状態が監視される。監視対象の冗長サーバの稼働、待機状態が切り替わると、新たに稼働状態になったマシンから監視装置に対してその事が通知され、検出される。この構成の場合、一般的には、監視対象の冗長サーバと監視装置の間のネットワークに障害が無いことを前提としており、SNMPプロトコル等が使用されて障害が報知、収集される。さらに、ネットワークの信頼性向上のためには監視装置についても冗長性を持たせる必要がある。保守管理者は、監視装置に現れる警報によって障害に気づき、そのマシンを点検する。
【0004】
図5は、従来技術の第2の構成例であり、小規模または単独の冗長サーバを監視する例である。従来技術の第1の構成例と同様にサーバを監視する装置が設備されるが、ネットワーク品質がそれほど良好でなくても監視を可能にするために、監視装置から各サーバマシンに対して適時問い合わせをし、冗長構成サーバのどちらのマシンが稼働中かを調べ、切り替わったならば警報を出力する。第1の構成例と同様に監視装置が必要であり、このためには、SNMPプロトコル等が一般的に使用される。
【0005】
上述した第1および第2の構成例は、いずれも、異常を検出する専用の監視装置を設け、またオペレータ(保守管理者)を常駐させる必要があり、高コストであるという問題があった。そして、この問題を解決するために、複数台で冗長化されたサーバが他のサーバを監視し、現用系サーバの異常を検出すると、自動的に他の待機系サーバが現用系サーバに切り替わるという技術が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−229512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1の技術は、各サーバが、監視対象となるサーバに対してチェックを行うため、冗長化するサーバ数によっては、チェックを行う際のサーバ間のデータ送受信がネットワークに負荷をかけるおそれがある。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、ネットワークに負荷をかけることなく、サーバの異常を検出することができる通信システム、通信装置および通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、通信装置と、当該通信装置とデータを送受信する稼働サーバと当該通信装置とデータを送受信しない待機サーバとを含む冗長構成サーバとが、ネットワークを介して接続可能に構成された通信システムであって、前記通信装置が、前記稼働サーバとデータを送受信する第1の送受信部と、前記稼働サーバのIPアドレスと、MACアドレスとを対応付けて記憶する第1の記憶部と、所定のIPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を前記第1の送受信部に送信させる要求部と、前記第1の送受信部で受信された前記所定のIPアドレスを有する稼働サーバからのMACアドレスが、前記第1の記憶部に記憶する前記IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出する検出部とを備え、前記冗長構成サーバの各サーバが、前記通信装置とデータを送受信する第2の送受信部と、IPアドレスを記憶する第2の記憶部と、前記情報を受信した際に、前記第2の記憶部に前記サーバ固有のIPアドレスの他に前記所定のIPアドレスを記憶している場合に、前記通信装置に対して、MACアドレスを前記第2の送受信部に送信させる通知部とを備えることを特徴とする。
【0010】
前記稼働サーバは、前記所定のIPアドレスを前記第2の記憶部に記憶することが好ましい。
また、前記所定のIPアドレスは、仮想IPアドレスであることが好ましい。
【0011】
また、本発明は、通信装置と、当該通信装置とデータを送受信する稼働サーバと当該通信装置とデータを送受信しない待機サーバとを含む冗長構成サーバとが、ネットワークを介して接続可能に構成された通信システムにおける通信装置であって、前記稼働サーバとデータを送受信する送受信部と、前記稼働サーバのIPアドレスと、MACアドレスとを対応付けて記憶する記憶部と、所定のIPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を前記送受信部に送信させる要求部と、前記送受信部で受信された前記所定のIPアドレスを有する稼働サーバからのMACアドレスが、前記記憶部に記憶する前記IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出する検出部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、通信装置と、当該通信装置とデータを送受信する稼働サーバと当該通信装置とデータを送受信しない待機サーバとを含む冗長構成サーバとが、ネットワークを介して接続可能に構成されたシステムにおける通信方法であって、前記通信装置が、前記稼働サーバのIPアドレスと、MACアドレスとを対応付けて記憶部に記憶するステップと、所定のIPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を送信するステップと、前記所定のIPアドレスを有する稼働サーバから受信したMACアドレスが、前記記憶部に記憶する前記IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出するステップとを含み、前記冗長構成サーバの各サーバが、前記情報を受信した際に、前記サーバ固有のIPアドレスの他に前記所定のIPアドレスを有する場合に、前記通信装置に対してMACアドレスを送信するステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、単独の冗長構成のサーバを監視すればよいので、ネットワークに負荷をかけることなく、サーバの異常を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】仮想IPアドレス技術を説明する図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る通信システムの構成例を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る通信システムの動作を説明するフローチャートである。
【図4】稼働状態と待機状態の切り替わりを検出する従来の構成例を示す図である。
【図5】稼働状態と待機状態の切り替わりを検出する従来の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、仮想IPアドレス技術を説明する図である。冗長構成のサーバにおいて一般的に使用される技術として、仮想IPアドレス技術がある。サーバを構成する2台のマシンのそれぞれのイーサネット(登録商標)ポートには異なるIPアドレスが割り当てられるが、仮想IPアドレス技術は、それらとは異なる1つのIPアドレスを設定し、稼働状態のマシンのポートがその仮想IPアドレスを持っているものとして動作し、稼働状態が移ると、移った先のマシンがそのIPアドレスに対して自動的に反応するという技術である。この技術により、クライアントはサーバを構成するどちらのマシンが稼働しているかを気にすることなく、常にこの仮想IPアドレスに対してアクセスすれば良い。本発明は、サーバが仮想IPアドレス技術を備えていることを前提としている。
【0016】
全てのイーサネットポートには、製造者が管理し、割り当てをする固有のアドレス(MACアドレス)があり、IP通信を行う全ての装置は、IPアドレスとMACアドレスとの関連付けを常に管理して通信を行っている。仮想IPアドレス機能を有する冗長構成のサーバの場合、クライアントにおいては、サーバの稼働マシンが切り替わるたびに、その仮想IPアドレスに対するMACアドレスが変化する。本発明は、上述したIPアドレスとMACアドレスの関連付けが変化することを検出して、サーバの稼働/待機状態が切り替わったことを検出するものである。
【0017】
図1において、クライアント1は、仮想IPアドレスがIP−Cである冗長サーバ2のMACアドレスをMACアドレス−aであると認識している場合、冗長サーバ2の0系マシンと通信をしていることになり、つまり、0系マシンが稼働状態である。また、クライアント1は、仮想IPアドレスがIP−Cである冗長サーバ2のMACアドレスをMACアドレス−bであると認識している場合、冗長サーバ2の1系マシンと通信をしていて、1系マシンが稼働状態である。この原理で、クライアント1に稼働マシンを監視させ、MACアドレスが変化したならば警報を出力させることにより、保守管理者は、稼働サーバと待機サーバが切り替わったことを知ることができる。
【0018】
図2は、本発明の通信システムの構成例を示す図である。本発明の通信システムは、クライアント10(通信装置)と、クライアント10がネットワークを介して接続可能な冗長構成のサーバ20とから構成される。サーバ20は、仮想IPアドレスを有し、0系サーバ21と1系サーバ22からなる。0系サーバ21と1系サーバ22は、どちらか一方が稼働サーバとなり、どちらか他方が待機サーバとなる。
【0019】
クライアント10は、送受信部11(第1の送受信部)と、要求部12と、検出部13と、記憶部14(第1の記憶部)とを備える。要求部12と検出部13は、クライアント10の制御部として機能する。
【0020】
送受信部11は、0系サーバ21と1系サーバ22のどちらかの稼働サーバとデータを送受信する。記憶部14は、稼働サーバのIPアドレスとMACアドレスとを対応付けたARPテーブルを記憶する。要求部12は、仮想IPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を送受信部11に送信させる。検出部13は、送受信部11で受信された当該仮想IPアドレスを有するサーバからのMACアドレスが、記憶部12に記憶する当該IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバの異常を検出する。
【0021】
0系サーバ21と1系サーバ22は、それぞれ、送受信部23(第2の送受信部)と、通知部24と、記憶部25(第2の記憶部)とを備える。通知部24は、制御部として機能する。
【0022】
送受信部23は、クライアント10とデータを送受信する。記憶部25は、IPアドレスを記憶する。また、稼働サーバの記憶部25は、仮想IPアドレスを記憶する。通知部24は、クライアント10の送受信部11からMACアドレスを要求する情報を受信した際に、記憶部22にサーバ固有のIPアドレスの他に仮想IPアドレスを記憶している場合、クライアント10に対して、MACアドレスを送受信部21に送信させる。
【0023】
次に、図3に示すフローチャートを用いて、本発明の通信システムの動作を説明する。まず、クライアント10は、アプリケーションを起動し(S101)、サーバ20からサービスを受けようとして、仮想IPアドレスを使用して、サーバ20にアクセスするとともに、ARP(Address Resolution Protocol:アドレス解決プロトコル)を使用してMACアドレスの問い合わせを行う(S102)。ARPは、IP通信を行う任意の通信装置が任意のIPアドレスを有するマシンのMACアドレスを問い合わせるプロトコルである。この問い合わせは、ブロードキャストで送信され、これを受信したIPアドレスを有するマシンは、自身のIPアドレスと一致したならば、自身のMACアドレスを報告する。
【0024】
次に、クライアント10は、仮想IPアドレスを有する、0系サーバ21と1系サーバ22のどちらかの稼働サーバからMACアドレスを取得したならば(S103)、仮想IPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスと、ARPテーブルに格納されているIPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスとを比較する(S104)。比較の結果、MACアドレスが変化していなければ(S105でNoの場合)、稼働サーバと待機サーバが切り替わっていないことになるので、そのまま終了する。MACアドレスが変化していれば(S105でYesの場合)、稼働サーバと待機サーバが切り替わっていることになるので、警報を出力する(S106)。この警報により、保守管理者は、サーバの異常を検出することができる。
【0025】
なお、上述した実施形態では、クライアント10は、アプリケーションを起動した際に、ARPを使用してサーバにMACアドレスの問い合わせを行い、サーバから取得したMACアドレスをARPテーブルのMACアドレスと比較し、稼働サーバと待機サーバの切り替わりを判定しているが、アプリケーションの起動中に、OS(Operating System)によって自動的に更新されるARPテーブルを所定時間毎に監視し、MACアドレスの変化を検出して、稼働サーバと待機サーバの切り替わりを判定するようにしても良い。
【0026】
上述のように、本発明は、複数のサーバからなる単独の冗長構成サーバを監視すればよいので、ネットワークに負荷をかけることなく、サーバの異常を検出することができる。
【符号の説明】
【0027】
1,10 クライアント
2 冗長サーバ
11,23 送受信部
12 要求部
13 検出部
14,25 記憶部
20 サーバ
21 0系サーバ
22 1系サーバ
24 通知部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信装置と、当該通信装置とデータを送受信する稼働サーバと当該通信装置とデータを送受信しない待機サーバとを含む冗長構成サーバとが、ネットワークを介して接続可能に構成された通信システムであって、
前記通信装置は、
前記稼働サーバとデータを送受信する第1の送受信部と、
前記稼働サーバのIPアドレスと、MACアドレスとを対応付けて記憶する第1の記憶部と、
所定のIPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を前記第1の送受信部に送信させる要求部と、
前記第1の送受信部で受信された前記所定のIPアドレスを有する稼働サーバからのMACアドレスが、前記第1の記憶部に記憶する前記IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出する検出部と、を備え、
前記冗長構成サーバの各サーバは、
前記通信装置とデータを送受信する第2の送受信部と、
IPアドレスを記憶する第2の記憶部と、
前記情報を受信した際に、前記第2の記憶部に前記サーバ固有のIPアドレスの他に前記所定のIPアドレスを記憶している場合に、前記通信装置に対して、MACアドレスを前記第2の送受信部に送信させる通知部と、
を備えることを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記稼働サーバは、前記所定のIPアドレスを前記第2の記憶部に記憶する、ことを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記所定のIPアドレスとは、仮想IPアドレスであることを特徴とする請求項1または2に記載の通信システム。
【請求項4】
通信装置と、当該通信装置とデータを送受信する稼働サーバと当該通信装置とデータを送受信しない待機サーバとを含む冗長構成サーバとが、ネットワークを介して接続可能に構成された通信システムにおける通信装置であって、
前記稼働サーバとデータを送受信する送受信部と、
前記稼働サーバのIPアドレスと、MACアドレスとを対応付けて記憶する記憶部と、
所定のIPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を前記送受信部に送信させる要求部と、
前記送受信部で受信された前記所定のIPアドレスを有する稼働サーバからのMACアドレスが、前記記憶部に記憶する前記IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出する検出部と、
を備えることを特徴とする通信装置。
【請求項5】
通信装置と、当該通信装置とデータを送受信する稼働サーバと当該通信装置とデータを送受信しない待機サーバとを含む冗長構成サーバとが、ネットワークを介して接続可能に構成されたシステムにおける通信方法であって、
前記通信装置は、
前記稼働サーバのIPアドレスと、MACアドレスとを対応付けて記憶部に記憶するステップと、
所定のIPアドレスを有する稼働サーバのMACアドレスを要求する情報を送信するステップと、
前記所定のIPアドレスを有する稼働サーバから受信したMACアドレスが、前記記憶部に記憶する前記IPアドレスに対応付けられた直前のMACアドレスと異なる場合に、当該直前のMACアドレスを有するサーバが異常であることを検出するステップと、を含み、
前記冗長構成サーバの各サーバは、
前記情報を受信した際に、前記サーバ固有のIPアドレスの他に前記所定のIPアドレスを有する場合に、前記通信装置に対してMACアドレスを送信するステップと、
を含むことを特徴とする通信方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2012−10292(P2012−10292A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146897(P2010−146897)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】