説明

通信システムおよび重畳装置

【課題】端末情報が取得されるタイミングにより複数台の端末機器間で端末情報に生じるタイムラグを小さく抑えることができる通信システムおよび重畳装置を提供する。
【解決手段】下位重畳装置4は、下位端末機器6から端末情報を取得する情報取得部402と、上位重畳装置3からの情報要求に応じて端末情報を重畳信号により上位重畳装置3に返信する通信部403と、端末情報を蓄積するバッファ部407とを備えている。情報取得部402は、指定されたタイミングで予め端末情報を取得し、端末接続部401に接続されている下位端末機器6に対する情報要求があるまでは、取得した端末情報をバッファ部407に一旦蓄積する。バッファ部407に蓄積された端末情報は、端末接続部401に接続されている下位端末機器6に対する情報要求があれば、上位端末機器5に通信部403から返信される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繰り返し伝送される伝送信号を用いた第1プロトコルの通信と伝送路を共用し、伝送信号のうち定められた重畳可能期間に重畳される重畳信号を伝送する第2プロトコルの通信を用いて端末機器同士が端末情報を授受する通信システムおよび重畳装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、伝送路に対して伝送ユニット(親機)および複数台の通信装置(子機)が接続され、各通信装置と伝送ユニットとの間で通信を行う通信システムが広く普及している。この種の通信システムの一例として、伝送ユニットが定期的に通信装置の状態を監視し、通信装置の状態に変化があった場合、その状態変化に対応する処理を行うように伝送ユニットから他の通信装置に信号を送るシステムがある(たとえば特許文献1〜3参照)。
【0003】
ただし、上記構成の通信システムは、通信装置同士が常に伝送ユニットを経由して通信を行い、伝送ユニットが通信装置に対してポーリングを行うため通信速度が遅く、たとえばアナログ量のように比較的データ量の多い情報の伝送には不向きである。さらに、上記通信システムは、伝送ユニットの故障時などにシステム全体が停止してしまうため、システムとしての信頼性が低いという問題もある。
【0004】
そこで、伝送ユニットを介して通信装置同士が通信を行う既設の通信システムと、通信装置同士がピア・ツー・ピア(P2P)で直接通信を行う通信システムとを混在させた通信システムが提案されている(たとえば特許文献4参照)。この通信システムにおいては、伝送ユニット(親機)を介して通信する第1通信装置(第1通信端末)と、互いに直接通信する第2通信装置(第2通信端末)とが伝送路を共用するので、既設の通信システムに第2通信装置を容易に増設することができる。
【0005】
第1通信装置は伝送ユニットから伝送路に繰り返し送出される伝送信号(第1プロトコルの信号)を用いた第1プロトコルの通信を行い、第2通信装置は伝送信号に重畳される重畳信号(第2プロトコルの信号)を用いた第2プロトコルの通信を行う。重畳信号は、伝送信号のうち所定の重畳可能期間に重畳される。
【0006】
この種の通信システムの例として、伝送路に対し第2通信装置を介して接続された端末機器を備えたシステムが提案されている(図1(a)参照)。この通信システムは、伝送ユニット1が接続された伝送路2に対し、第2通信装置となる上位重畳装置3、下位重畳装置41,42,43のそれぞれを介して接続された上位端末機器5と下位端末機器61,62,63との2種類の端末機器を備えている。上位端末機器5は、上位重畳装置3とは別経路でも伝送路2に接続されている。以下、下位重畳装置41,42,43を区別しないときにはこれらをまとめて下位重畳装置4と呼び、下位端末機器61,62,63を区別しないときにはこれらをまとめて下位端末機器6と呼ぶ。
【0007】
上記通信システムでは、上位重畳装置3−下位重畳装置4間で行われる第2プロトコルの通信により、上位端末機器5−下位端末機器6間で端末情報が授受される。ここでいう端末情報は、たとえば下位端末機器6で計測される電気機器の消費電力などである。すなわち、下位端末機器6から上位端末機器5に端末情報を送る場合、下位重畳装置4は下位端末機器6が出力する端末情報を重畳信号に変換して伝送路2に送出し、上位重畳装置3は伝送路2から受信した重畳信号を端末情報に変換して上位端末機器5に出力する。
【0008】
このように第1プロトコルの通信と第2プロトコルの通信とが混在する通信システムでは、下位重畳装置4を増設することによって下位端末機器6の台数を大幅に増加することも可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特許第1180690号公報
【特許文献2】特許第1195362号公報
【特許文献3】特許第1144477号公報
【特許文献4】特開2009−225328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上述の通信システムでは、上位重畳装置3−下位重畳装置4間の通信は重畳信号を用いたシリアル通信であるため、上位端末機器5が複数台の下位端末機器6から端末情報を収集する場合、端末情報に下位端末機器6間でタイムラグが生じることがある。
【0011】
すなわち、上位端末機器5は、複数台の下位端末機器6から1台ずつ端末情報を取得するが、上位重畳装置3−下位重畳装置4間の通信が伝送信号の所定の重畳可能期間のみに制限されているため、端末情報の取得に要する1台当りの時間が比較的長くなる。そのため、上位端末機器5が端末情報を取得するタイミングは、複数台の下位端末機器61,62,63間で大きくばらつくことになる。したがって、上位端末機器5がある時刻における端末情報を取得しようとした場合でも、一の下位端末機器61から取得された端末情報と、他の下位端末機器63から取得された端末情報との間には比較的大きなタイムラグが生じる可能性がある。
【0012】
本発明は上記事由に鑑みて為されており、端末情報が取得されるタイミングのばらつきにより複数台の端末機器間で端末情報に生じるタイムラグを小さく抑えることができる通信システムおよび重畳装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の通信システムは、複数台の端末機器を備え、繰り返し伝送される伝送信号を用いた第1プロトコルの通信と伝送路を共用し、前記伝送信号のうち所定の重畳可能期間に重畳される重畳信号を伝送する第2プロトコルの通信を用いて前記端末機器同士が端末情報を授受する通信システムであって、前記端末情報の送信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記端末機器が出力する前記端末情報を前記重畳信号に変換して前記伝送路に送出する下位重畳装置と、前記端末情報の受信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記伝送路から受信した前記重畳信号を前記端末情報に変換して前記端末機器に出力する上位重畳装置とを備え、前記下位重畳装置は、前記端末機器に接続される端末接続部と、当該端末接続部に接続された前記端末機器から前記端末情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部で取得した前記端末情報を蓄積するバッファ部と、前記上位重畳装置からの情報要求に応じて前記端末情報を前記重畳信号により返信する通信部とを備え、前記情報取得部は、指定されたタイミングで前記端末情報を取得し、前記端末接続部に接続されている前記端末機器に対する前記情報要求があるまでは取得した前記端末情報を前記バッファ部に一旦蓄積することを特徴とする。
【0014】
この通信システムにおいて、前記情報取得部は、前記伝送路に接続された他装置からのトリガによって指定されるタイミングで前記端末情報を取得することが望ましい。
【0015】
この通信システムにおいて、前記トリガは、前記上位重畳装置からの前記情報要求であることがより望ましい。
【0016】
この通信システムにおいて、前記伝送路には複数台の前記下位重畳装置が接続されており、前記情報取得部は、他の前記下位重畳装置に接続されている前記端末機器に対する前記情報要求を受けると、前記端末接続部に接続された前記端末機器から前記端末情報を取得して前記バッファ部に蓄積し、前記通信部は、前記端末接続部に接続された前記端末機器に対する前記情報要求を受けると、前記バッファ部に蓄積されている前記端末情報を返信することがより望ましい。
【0017】
この通信システムにおいて、前記情報取得部は、同一タイミングで取得された前記端末情報の返信を求めて複数台の前記下位重畳装置に対して順次送信される一連の前記情報要求につき、1回のみ前記端末機器から前記端末情報を取得することがより望ましい。
【0018】
この通信システムにおいて、前記端末機器は1台の前記下位重畳装置に複数台接続されており、前記情報取得部は、指定されたタイミングで、前記端末接続部に接続されている全ての前記端末機器から前記端末情報を取得し前記バッファ部に蓄積することがより望ましい。
【0019】
この通信システムにおいて、前記下位重畳装置は、前記上位重畳装置からの前記情報要求を受けると、前記端末接続部に接続されている全ての前記端末機器から取得した前記端末情報を前記通信部から返信し、前記上位重畳装置は、前記下位重畳装置から返信された前記端末情報を蓄積する蓄積部を備え、前記端末情報の受信側になる前記端末機器に対して前記情報要求の送信先の前記端末機器の前記端末情報のみを前記蓄積部から出力することがより望ましい。
【0020】
本発明の重畳装置は、複数台の端末機器を備え、繰り返し伝送される伝送信号を用いた第1プロトコルの通信と伝送路を共用し、前記伝送信号のうち所定の重畳可能期間に重畳される重畳信号を伝送する第2プロトコルの通信を用いて前記端末機器同士が端末情報を授受し、前記端末情報の送信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記端末機器が出力する前記端末情報を前記重畳信号に変換して前記伝送路に送出する下位重畳装置と、前記端末情報の受信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記伝送路から受信した前記重畳信号を前記端末情報に変換して前記端末機器に出力する上位重畳装置とを備えた通信システムに前記下位重畳装置として用いられ、前記端末機器に接続される端末接続部と、当該端末接続部に接続された前記端末機器から前記端末情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部で取得した前記端末情報を蓄積するバッファ部と、前記上位重畳装置からの情報要求に応じて前記端末情報を前記重畳信号により返信する通信部とを備え、前記情報取得部は、指定されたタイミングで前記端末情報を取得し、前記端末接続部に接続されている前記端末機器に対する前記情報要求があるまでは取得した前記端末情報を前記バッファ部に一旦蓄積することを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、下位重畳装置が情報取得部により、指定されたタイミングで端末情報を取得し、端末接続部に接続されている端末機器に対する情報要求があるまでは取得した端末情報をバッファ部に一旦蓄積する。したがって、端末情報が取得されるタイミングのばらつきにより複数台の端末機器間で端末情報に生じるタイムラグを小さく抑えることができるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施形態1の構成を示し、(a)は通信システムの概略システム構成図、(b)は下位重畳装置の概略ブロック図である。
【図2】同上の伝送信号を示す波形図である。
【図3】同上の動作を示すフローチャートである。
【図4】同上の他の動作を示すフローチャートである。
【図5】実施形態2の構成を示す通信システムの概略ブロック図である。
【図6】同上の動作を示すフローチャートである。
【図7】同上の動作を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(実施形態1)
本実施形態の通信システムは、図1(a)に示すように、2線式の伝送路2に接続される伝送ユニット1を備えた通信システムである。
【0024】
この通信システムは、伝送路2に対し、第2通信装置となる上位重畳装置3、下位重畳装置41,42,43のそれぞれを介して接続された上位端末機器5と下位端末機器61,62,63との2種類の端末機器を備えている。上位端末機器5は、上位重畳装置3とは別経路でも伝送路2に接続されている。この通信システムでは、伝送ユニット1から伝送路2に送出される伝送信号と、伝送信号に重畳される重畳信号とを用いて通信が行われる。重畳信号は、伝送信号より周波数が高い信号である。伝送ユニット1と伝送路2との間には、重畳信号に対して高インピーダンスとなるインピーダンス整合モジュール7が挿入されている。
【0025】
以下では、下位重畳装置41,42,43を区別しないときにはこれらをまとめて下位重畳装置4と呼び、下位重畳装置41,42,43にそれぞれ接続された下位端末機器61,62,63を区別しないときにはこれらをまとめて下位端末機器6と呼ぶ。なお、図1(a)では伝送路2には下位重畳装置4が3台接続された例を示しているが、伝送路2に接続可能な下位重畳装置4の台数を制限する趣旨ではない。
【0026】
伝送路2には、伝送ユニット1から繰り返し送出される伝送信号を用いて、互いに通信する複数台の通信装置(図示せず)がさらに接続される。これらの通信装置は、伝送ユニット1に対して伝送路2を介して並列接続されており、伝送信号を用いることにより伝送ユニット1を経由して第1プロトコルの通信を行う。伝送ユニット1および通信装置は、伝送ユニット1から通信装置へのデータ伝送と通信装置から伝送ユニット1へのデータ伝送とが時分割で行われる時分割多重伝送システム(以下、「基本システム」という)を構築する。
【0027】
基本システムにおいて、通信装置は、スイッチやセンサなど(図示せず)を付設した監視端末器と、負荷(図示せず)を付設した制御端末器との2種類に分類される。これにより、監視端末器に付設したスイッチやセンサなどからの監視入力に応じて、制御端末器に付設した負荷を制御することが可能となる。ここで、通信装置は予め割り当てられた自己のアドレスをそれぞれ記憶部(図示せず)に記憶している。
【0028】
監視端末器は、監視入力を受けると伝送ユニット1に対して監視入力に対応した制御情報を伝送する。伝送ユニット1は、制御情報を受け取るとアドレスによって上記監視端末器と対応付けられている制御端末器に向けて制御情報を伝送する。制御端末器は、制御情報を受け取ると上記制御情報に従って負荷を制御する。制御情報はスイッチ等の監視入力を反映しているから、結局、スイッチ等の監視入力が負荷の制御に反映されることになる。
【0029】
伝送ユニット1は、伝送路2に対して図2に示すように時間軸方向において複数の期間に分割された形式の電圧波形からなる時分割方式の伝送信号を送信する。すなわち、伝送信号は、予備割込期間11と、予備期間12と、送信期間13と、返送期間14と、割込期間15と、短絡検出期間16と、休止期間17とからなる複極(±24V)の時分割多重信号である。予備割込期間11は2次割込を検出するための期間、予備期間12は割込期間15および短絡検出期間16に合わせて設定された期間であり、送信期間13は通信装置にデータを伝送するための期間である。返送期間14は通信装置からの返送信号を受信するタイムスロットであり、割込期間15は後述の割込信号を検出するための期間であり、短絡検出期間16は短絡を検出するための期間である。休止期間17は処理が間に合わないときのための期間である。伝送信号は、パルス列からなるキャリアを変調することによってデータを伝送する信号である。
【0030】
続いて、基本システムの動作について説明する。
【0031】
各通信装置では、伝送路2を介して受信した伝送信号の送信期間13に含まれるアドレスデータが各々の記憶部に記憶されているアドレスに一致すると、伝送信号から負荷を制御するための制御情報を取り込む。さらに、通信装置は、伝送信号の返送期間14に同期して制御情報を電流モードの信号(適当な低インピーダンスを介して伝送路2を短絡することにより送出される信号)として返送する。なお、通信装置の内部回路の電源は、伝送路2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される。
【0032】
伝送ユニット1は、常時は伝送信号に含まれるアドレスデータをサイクリックに変化させて通信装置に順次アクセスする常時ポーリングを行う。常時ポーリングの際には、伝送信号に含まれるアドレスデータが自己のアドレスに一致した通信装置は、伝送信号に制御情報が含まれていれば制御情報を取り込んで動作し、自己の動作状態を伝送ユニット1に返送する。
【0033】
また、伝送ユニット1は、いずれかの監視端末器(通信装置)においてスイッチ等の監視入力に対応して発生する割込信号を受信すると、割込信号を発生した通信装置を検索し、その通信装置にアクセスして割込ポーリングも行う。
【0034】
すなわち、伝送ユニット1は、常時はモードデータを通常モードとした伝送信号を送出し、監視端末器(通信装置)で発生した割込信号を伝送信号の割込期間15に同期して検出すると、モードデータを割込ポーリングモードとした伝送信号を送出する。
【0035】
割込信号を発生した通信装置は、割込ポーリングモードの伝送信号のアドレスデータの上位ビットが自己のアドレスの上位ビットに一致していれば、その伝送信号の返送期間14に同期して自己のアドレスの下位ビットを返送データとして返送する。これにより伝送ユニット1では割込信号を発生した通信装置のアドレスを取得できる。
【0036】
割込信号を発生した通信装置のアドレスが伝送ユニット1で取得されると、伝送ユニット1は当該通信装置に対して制御情報の返送を要求する伝送信号を送出し、通信装置はスイッチ等の監視入力に対応した制御情報を伝送ユニット1に返送する。伝送ユニット1は制御情報を受け取ると、該当する通信装置の監視入力をクリアするように指示を与え、当該通信装置では監視入力のクリアを返送する。
【0037】
制御情報を受け取った伝送ユニット1は、当該制御情報の発信元の通信装置(監視端末器)とアドレスの対応関係によって対応付けられている通信装置(制御端末器)へ送信する制御情報を生成する。伝送ユニット1は、この制御情報を含む伝送信号を伝送路2に送出して、通信装置(制御端末器)に付設した負荷を制御する。
【0038】
上述したように、基本システムでは、ポーリング・セレクティング方式のプロトコル(第1プロトコル)に従い、伝送ユニット1を介して通信装置(監視端末器、制御端末器)同士が通信を行うこととなる。
【0039】
また、本実施形態においては、上位端末機器5は、基本システムの通信装置を兼ねており、通信装置として伝送ユニット1との間で第1プロトコルの通信を行う際には、上位重畳装置3を通さずに伝送路2を介して伝送ユニット1と通信する。なお、基本システムの各通信装置と伝送路2との間にも、重畳信号に対して高インピーダンスとなるインピーダンス整合モジュール7がそれぞれ挿入されてもよい。
【0040】
ところで、本実施形態の通信システムにおいては、上位端末機器5と下位端末機器6とは、上記基本システムと伝送路2を共用しつつ、第1プロトコルの伝送信号に重畳される重畳信号を用いて第2プロトコルの通信を行い、端末情報を授受する。ここでいう端末情報は、たとえば下位端末機器6で計測される電気機器の消費電力などである。本実施形態では、下位重畳装置4は下位端末機器6が出力する端末情報を重畳信号に変換して伝送路2に送出し、上位重畳装置3は伝送路2から受信した重畳信号を端末情報に変換して上位端末機器5に出力する。これにより、上位端末機器5は下位端末機器6から端末情報を収集することができる。なお、上位端末機器5と上位重畳装置3との間、および下位端末機器6と下位重畳装置4との間の通信は、それぞれRS485などのシリアル通信によって実現される。
【0041】
また、本実施形態においては、第2プロトコルの通信に関して、上位端末機器5がマスタとして機能し、下位端末機器6がスレーブとして機能する。マスタとしての上位端末機器5は、スレーブとしての下位端末機器6に対してポーリングを行い、このポーリングに対する応答として下位端末機器6からそれぞれ端末情報を取得する。本実施形態では、下位端末機器6は複数台設けられているので、マスタとしての上位端末機器5は、スレーブとしての複数台の下位端末機器61,62,63に対して順次ポーリングを行う。
【0042】
ここで、端末情報を授受するのは上位端末機器5および下位端末機器6であるが、伝送路2に対して第2プロトコルの重畳信号を送受信するのは上位重畳装置3および下位重畳装置4である。すなわち、上位重畳装置3および下位重畳装置4は、各々に接続された上位端末機器5あるいは下位端末機器6と伝送路2の間で、伝送データ(端末情報)と重畳信号とを相互に変換するアダプタとして機能する。
【0043】
その結果、上位端末機器5は、上述した第1プロトコルとは異なるプロトコル(第2プロトコル)に従って、伝送ユニット1を経由することなくピア・ツー・ピア(P2P)で端末情報を下位端末機器6から取得可能となる。要するに、第1プロトコルによる通信装置同士の通信は伝送ユニット1を経由して行われるのに対し、第2プロトコルによる上位端末機器5−下位端末機器6間の通信は伝送ユニット1を経由せず端末機器間で直接行われる。そのため、第2プロトコルの通信は、第1プロトコルの通信に比べて通信速度を高速化でき、たとえばアナログ量(消費電力等)のように比較的データ量の多い情報の伝送に用いられる。
【0044】
下位重畳装置4は、図1(b)に示すように、下位端末機器6に接続される端末接続部401と、端末接続部401に接続された情報取得部402と、情報取得部402に接続された通信部403とを備えている。通信部403は伝送路2に接続され、重畳信号の送出を行う信号送出部404と、重畳信号の受信を行う信号受信部405とを有している。
【0045】
情報取得部402は、端末接続部401に接続された下位端末機器6から端末接続部401を介して端末情報を取得する。通信部403は、上位重畳装置3から重畳信号により送信される情報要求に応じて、端末情報を重畳信号により上位重畳装置3に返信する。ここでいう情報要求は、上位端末機器5が下位端末機器6からの端末情報の返信を求めて出力する信号であって、いずれかの下位端末機器6を送信先に特定して送信される。
【0046】
また、下位重畳装置4は、基本システムの伝送ユニット1と通信装置との間で伝送される伝送信号を監視する信号監視部406を備え、信号監視部406では伝送信号からデータ伝送状況(以下、「ステート」という)を解析する。信号送出部404は、信号監視部406で解析されたステートが重畳信号の重畳に適した状況にあるか否かを判定し、伝送に適していると判断したタイミングで重畳信号を送信する機能を具備している。
【0047】
上述したように、伝送信号は図2に示すような信号フォーマットを採用している。予備割込期間11や予備期間12や休止期間17は、重畳信号が重畳されても伝送信号による通信に影響がなく、重畳信号による端末間通信も伝送信号の影響を受けにくいので、重畳信号を重畳可能な期間(以下、「重畳可能期間」という)となる。
【0048】
その他の期間(送信期間13と返送期間14と割込期間15と短絡検出期間16)は、伝送信号がハイレベルあるいはローレベルに安定している時間が相対的に短く、重畳信号が重畳されると伝送信号による通信に影響を与えやすい。また上記他の期間に重畳信号が重畳されると、重畳信号による端末間通信も伝送ユニット1と通信装置との間で授受される信号(割込信号や返送データ)の影響を受けやすい。そのため、上記他の期間は、重畳信号の重畳には使用されない期間(以下、「重畳不可期間」という)となる。
【0049】
また、伝送信号の立ち上がりおよび立ち下がりの期間も、高調波ノイズの影響や信号の電圧反転に伴う過渡応答の影響などにより、重畳信号を重畳するのに適していない。したがって、伝送信号は、予備割込期間11と予備期間12と休止期間17の中でも、期間の切り替わり(立ち上がりまたは立ち下がり)後の所定時間(たとえば300μs)については、重畳不可期間となる。
【0050】
そこで、信号送出部404は、伝送信号のステートの解析結果に基づいて重畳可能期間か重畳不可期間かの判定を行い、重畳可能期間と判定したときに限って重畳信号を送出するように構成されている。下位重畳装置4は、このように伝送信号に同期させて伝送信号の重畳可能期間にのみ重畳信号を重畳させることにより、共通の伝送路2を使用する第1プロトコルの通信と第2プロトコルの通信との干渉を回避する。
【0051】
ここで、信号送出部404は、送信データのデータ量が多く一度の重畳可能期間内で送信しきれなかった場合には、当該重畳可能期間の終了に合わせて一旦通信を中断し、次回の重畳可能期間に残りのデータを送信する。
【0052】
また、上位重畳装置3においても、基本的な構成は下位重畳装置4と同様であって、上位端末機器5に接続される端末接続部(図示せず)と、伝送路2に接続された通信部(図示せず)と、信号監視部(図示せず)とを備えている。さらに、上位重畳装置3には、端末接続部と通信部との間に挿入され、上位端末機器5と下位端末機器6との間でやり取りされる情報を処理する処理部(図示せず)が設けられている。
【0053】
なお、上位端末機器5および下位端末機器6への電源供給は、基本システムの通信装置と同様に伝送ユニット1から伝送路2を介して伝送される伝送信号を整流し安定化することによって供給される方式(集中給電方式)によって為される。ただし、この構成に限らず、上位端末機器5、下位端末機器6への電源供給は、商用電源を整流し安定化することによって供給される方式(ローカル給電方式)で為されてもよい。
【0054】
ところで、本実施形態では、下位重畳装置4は図1(b)に示すように、情報取得部402にて取得した端末情報を蓄積するバッファ部407をさらに備えている。これにより、下位重畳装置4は、各々に接続されている下位端末機器6の端末情報を、予め情報取得部402にて取得し、バッファ部407に蓄積しておくことができる。
【0055】
すなわち、情報取得部402は、指定されたタイミングで端末情報を取得し、端末接続部401に接続されている下位端末機器6に対する情報要求があるまでは、取得した端末情報をバッファ部407に一旦蓄積する。バッファ部407に蓄積された端末情報は、端末接続部401に接続されている下位端末機器6に対する情報要求があれば、上位端末機器5に通信部403から返信される。バッファ部407に蓄積された端末情報は、通信部403から返信された時点でバッファ部407から消去される。
【0056】
ここにおいて、情報取得部402は、伝送路2に接続された他装置からのトリガによって指定されるタイミングで、下位端末機器6から端末情報を取得する。つまり、情報取得部402は、他装置から伝送路2上に送出されたトリガを通信部403が受信したタイミングで、下位端末機器6からの端末情報の取得を開始する。
【0057】
本実施形態では、トリガは、上位端末機器5が下位端末機器6に対して端末情報の返信を求めて出力する情報要求である。上位端末機器5は、ポーリングにより複数台の下位端末機器6から端末情報を取得するために、各下位端末機器61,62,63に向けて情報要求を順次送信しているので、この情報要求をトリガとして利用し情報取得部402が動作する。要するに、情報取得部402は、端末接続部401に接続された下位端末機器6に対して情報要求を出力し、その返信として下位端末機器6から端末情報を取得する。
【0058】
ここで、下位重畳装置4は、自身に接続された下位端末機器6に対する情報要求を受けた場合だけでなく、他の下位重畳装置4に接続された下位端末機器6に対する情報要求を受けた場合にも、情報要求をトリガとして情報取得部402により端末情報を取得する。具体的には、下位重畳装置4は、上位重畳装置3からの情報要求に関しては送信先に関わらず通信部403にて全て受信する。さらに、情報取得部402は、他の下位重畳装置4に接続された下位端末機器6宛ての情報要求が、自身に接続された下位端末機器6宛ての情報要求となるように、情報要求に含まれる送信先としての下位端末機器6の識別子(アドレス)を変更する。情報取得部402は、送信先を変更した情報要求を自身に接続された下位端末機器6に出力し、その返信として端末情報を取得する。
【0059】
ただし、下位重畳装置4は、他の下位重畳装置4に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受けても、上位端末機器5に対して通信部403から直ちに端末情報を返信することはない。そのため、他の下位重畳装置4に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受けた場合、情報取得部402は、端末情報をバッファ部407に一旦蓄積し、その後、自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受けて初めて端末情報を返信する。
【0060】
また、各下位重畳装置4は、上位端末機器5が同一タイミングで取得された端末情報の返信を求めて複数台の下位端末機器61,62,63に対して順次送信する一連の情報要求をそれぞれ受信することになる。たとえば、上位端末機器5が1時00分、2時00分、3時00分というように1時間ごとに端末情報を要求している場合、1時00分になると上位端末機器5は複数台の下位端末機器61,62,63に対して順次情報要求を送信する。
【0061】
このとき、各下位重畳装置4は、それぞれ他の下位重畳装置4に接続された下位端末機器6宛ての情報要求も受信するので、1時00分の端末情報を要求する情報要求を複数回(ここでは3回)ずつ受信することになる。ここで、情報要求には、端末情報を取得するタイミングを示すタイミング情報(たとえば時刻情報)が含まれており、上記のように同一タイミングで取得された端末情報の返信を求めるこれら一連の情報要求には共通のタイミング情報が含まれる。
【0062】
そこで、本実施形態では、情報取得部402は、同一タイミングで取得された端末情報の返信を求めるこれら一連の情報要求につき1回のみ、下位端末機器6から端末情報を取得するように構成されている。つまり、たとえば1時00分のタイミング情報を含む情報要求が下位端末機器61,62,63の順に送信された場合、各下位重畳装置4の情報取得部402は、それぞれ最初に受信する下位端末機器61宛ての情報要求のみをトリガとして端末情報を取得する。
【0063】
以下に、本実施形態の下位重畳装置4の動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0064】
下位重畳装置4は、上位端末機器5からの情報要求を受信すると(S1)、情報要求の送信対象が自身に接続されている下位端末機器6であるか否かを判断する(S2)。自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求であれば(S2:Yes)、情報取得部402は、取得済みの端末情報が既にバッファ部407に保持されているか否かを判断する(S3)。バッファ部407に端末情報が保持されていなければ(S3:No)、情報取得部402は、接続されている下位端末機器6から端末情報を取得し(S4)、この端末情報を情報要求への応答として通信部403から上位端末機器5に返信する(S5)。
【0065】
一方、下位重畳装置4は、受信した情報要求が自身に接続されている下位端末機器6宛てでなければ(S2:No)、同じタイミングの端末情報を既に下位端末機器6から取得済みか否かを判断し(S6)、取得済みであれば(S6:Yes)処理を終了する。端末情報を取得済みでなければ(S6:No)、情報取得部402は、情報要求の送信先を自身に接続されている下位端末機器6に変更し(S7)、当該下位端末機器6から端末情報を取得して(S8)、この端末情報をバッファ部407に蓄積する(S9)。
【0066】
バッファ部407に端末情報を蓄積した下位重畳装置4は、次に自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受信したときに(S2:Yes)、バッファ部407内の端末情報を情報要求への応答として通信部403から上位端末機器5に返信する(S10)。
【0067】
以上説明した本実施形態の構成によれば、複数台の下位重畳装置4は、下位端末機器6の端末情報を、指定されたタイミングで一斉に取得し、必要に応じてそれぞれのバッファ部407に蓄積しておくことが可能である。つまり、上位重畳装置3−下位重畳装置4間の通信が伝送信号の所定の重畳可能期間のみに制限されているため、端末情報が上位端末機器5に返信されるタイミングにはずれが生じるものの、情報取得部402は端末情報の返信に先立って予め端末情報を取得できる。
【0068】
そのため、各下位重畳装置4の情報取得部402は、端末情報を取得するタイミングを複数台の下位端末機器61,62,63間で揃えることができる。したがって、上記通信システムによれば、下位重畳装置4が複数台の下位端末機器6から取得するタイミングのばらつきに起因して端末情報の間に生じるタイムラグを、小さく抑えることができる。
【0069】
また、本実施形態では、情報取得部402が端末情報を取得するタイミングは、伝送路2に接続された他装置からのトリガによって指定されているので、伝送路2に接続された複数台の下位重畳装置4間で端末情報の取得タイミングを容易に揃えることができる。しかも、トリガとして上位重畳装置3からの情報要求を利用しているので、別途、トリガを発生するための他装置が不要になり、システム構成が簡単になる。
【0070】
さらに、下位重畳装置4は、他の下位重畳装置4に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受けると、端末情報を取得してバッファ部407に一旦蓄積し、次に自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求に応答して端末情報を返信する。そのため、マスタとしての上位端末機器5からスレーブとしての複数台の下位端末機器6に対して情報要求が順次送信される場合でも、各下位重畳装置4の情報取得部402は、端末情報の取得タイミングを揃えることができる。
【0071】
しかも、情報取得部402は、同一タイミングで取得された端末情報の返信を求める一連の情報要求につき1回のみ端末情報を取得する。そのため、情報取得部402は、同一タイミングで取得された端末情報の返信を求めるこれら一連の情報要求の各々をトリガとする場合のように、同一の下位端末機器6から時間差のある複数の端末情報を取得することはない。つまり、情報取得部402は、上位端末機器5が要求した一のタイミングでのみ、端末情報を取得することができ、無駄な端末情報の取得を回避できるという利点がある。
【0072】
ところで、上位重畳装置3は伝送路2に接続されている全ての下位重畳装置4に対して、情報要求とは別に予備要求を出すように構成され、情報取得部402が予備要求を受けたタイミングで下位端末機器6から端末情報を取得するように構成されていてもよい。ここでいう予備要求は、情報要求に先立って下位端末機器6から端末情報の取得のみを求める信号であって、全ての下位重畳装置4にブロードキャストで送信される。この構成では、情報取得部402は、トリガとしての予備要求を受けたタイミングで取得する端末情報を一旦バッファ部407に蓄積し、その後の情報要求に応答してバッファ部407内の端末情報を通信部403から返信させる。
【0073】
さらにまた、情報取得部402は、伝送路2に接続された他装置からのトリガを受けて端末情報を取得する構成に限らず、たとえば下位重畳装置4に時計を内蔵し、時計の示す時刻が所定の時刻になると端末情報を取得する構成であってもよい。この場合、複数台の下位重畳装置4の時計の同期をとるべく、たとえば上位端末機器5から定期的に同期信号が送出されるようにしてもよい。
【0074】
この場合において、上記所定の時刻に上位重畳装置3から情報要求を出すようにすることにより、下位重畳装置4は図4のフローチャートに従って動作する。
【0075】
すなわち、下位重畳装置4は、上位端末機器5から自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受信すると(S11:Yes)、取得済みの端末情報が既にバッファ部407に保持されているか否かを判断する(S12)。バッファ部407に端末情報が保持されていなければ(S12:No)、情報取得部402は、接続されている下位端末機器6から端末情報を取得し(S13)、この端末情報を情報要求への応答として通信部403から上位端末機器5に返信する(S14)。
【0076】
一方、下位重畳装置4は、自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受信していない間(S11:No)、上記所定の時刻になると(S15:Yes)、下位端末機器6から端末情報を取得して(S16)、端末情報をバッファ部407に蓄積する(S17)。バッファ部407に端末情報を蓄積した下位重畳装置4は、次に自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受信したときに(S11:Yes)、バッファ部407内の端末情報を情報要求への応答として通信部403から上位端末機器5に返信する(S18)。
【0077】
この構成であっても、上記実施形態と同様に、複数台の下位重畳装置4は、下位端末機器6の端末情報を指定されたタイミング(上記所定の時刻)で一斉に取得することにより、端末情報間に生じるタイムラグを小さく抑えることができる。
【0078】
(実施形態2)
本実施形態の通信システムは、図5に示すように下位端末機器6が1台の下位重畳装置4につき複数台ずつ接続されている点が、実施形態1の通信システムと相違する。
【0079】
図5の例では、下位重畳装置41には下位端末機器611,612,・・・が接続され、下位重畳装置42には下位端末機器621,622,・・・が接続され、下位重畳装置43には下位端末機器631,632,・・・が接続されている。同一の下位重畳装置4に接続される複数台の下位端末機器6は、端末接続部401に並列に接続されるように送り配線によって接続されている。
【0080】
本実施形態においては、情報取得部402は、トリガとしての上位重畳装置3からの情報要求を受けたタイミングで、端末接続部401に接続されている全ての下位端末機器6から端末情報を取得し、取得した端末情報をバッファ部407に一旦蓄積する。このとき、情報取得部402は、同一タイミングで取得された端末情報の返信を求める一連の情報要求のうち最初の1回の情報要求にのみ応じて端末情報を取得するので、一連の情報要求によって同一の下位端末機器6から重複して端末情報を取得することはない。
【0081】
下位重畳装置4は、上位端末機器5から出力された情報要求にて要求されている端末情報がバッファ部407に蓄積されていれば、改めて下位端末機器6から取得することなく、この端末情報を情報要求への返信として通信部403から上位重畳装置3に返信する。
【0082】
ここで、各下位重畳装置4の情報取得部402は、端末接続部401に接続された複数台の下位端末機器6に対して1台ずつ、情報要求を出力し、その返信として端末情報を取得する。ただし、下位重畳装置4と下位端末機器6との間の通信は、第2プロトコルの通信のように所定の重畳可能期間のみに制限されることはないので、情報取得部402が複数台の下位端末機器6から端末情報を取得する時間差は無視できる程度である。つまり、情報取得部402が複数台の下位端末機器6から取得する端末情報に大きなタイムラグは生じない。
【0083】
また、本実施形態では下位重畳装置4は、上位重畳装置3から自身に接続されている下位端末機器6宛ての情報要求を受けて端末情報を返信する際、バッファ部407に予め蓄積した全ての下位端末機器6分の端末情報を通信部403から上位重畳装置3に返信する。
【0084】
上位重畳装置3は、端末情報を蓄積する蓄積部(図示せず)を有しており、下位重畳装置4からまとめて返信された複数台の下位端末機器6分の端末情報を蓄積部に一旦蓄積する。このとき、上位重畳装置3は、上位端末機器5が出力した情報要求の送信先の下位端末機器6の端末情報のみを上位端末機器5に返信する。
【0085】
その後、上位重畳装置3は、上位端末機器5から出力された情報要求にて要求されている端末情報が蓄積部に蓄積されていれば、改めて下位重畳装置4と通信することなく、この端末情報を情報要求への返信として蓄積部から上位端末機器5に出力する。蓄積部に蓄積された端末情報は、上位端末機器5に返信された時点で蓄積部から消去される。
【0086】
以下に、本実施形態の下位重畳装置4の動作について、図6のフローチャートを参照して説明する。
【0087】
ここで、図6のフローチャートのうちS21〜S30の処理は、図3のフローチャートにおけるS1〜S10の処理に対応している。ただし、図3の「S6」では、同じタイミングの端末情報を既に下位端末機器6から取得済みか否かを判断しているのに対し、図6の「S26」では、同じタイミングの端末情報を全ての下位端末機器6から取得済みか否かを判断している。また、図3の「S7」では、情報取得部402は情報要求の送信先を自身に接続されている下位端末機器6に変更するのに対し、図6の「S27」では、情報取得部402は情報要求の送信先を複数台のうち端末情報を未取得の下位端末機器6に変更している。さらに、図6の「S25」および「S30」においては、通信部403より返信される端末情報は、端末接続部401に接続された複数台の下位端末機器6分の端末情報である。
【0088】
図6の例では、通信部403より端末情報が返信される(S25,S30)か、あるいは情報取得部402が取得した端末情報をバッファ部407に蓄積する(S29)と、同じタイミングの端末情報を全ての下位端末機器6から取得済みか否かを判断する(S31)。このとき、全ての下位端末機器6から端末情報を取得済みであれば(S31:Yes)、下位重畳装置4は処理を終了する。
【0089】
一方、下位重畳装置4は、全ての下位端末機器6から端末情報を取得済みでなければ(S31:No)、全て取得済みになるまで、端末情報を未取得の下位端末機器6から取得し(S32)、この端末情報をバッファ部407に蓄積する(S33)処理を繰り返す。
【0090】
次に、本実施形態の通信システムの具体的な動作例について、図7のシーケンス図を参照して説明する。図7では、上位端末機器5と、上位重畳装置3と、下位重畳装置41と、この下位重畳装置41に接続されている下位端末機器611,612,・・・との間の情報のやり取りを示している。
【0091】
上位端末機器5から、下位重畳装置43に接続されている下位端末機器631に対して情報要求(S41)が出力されると、上位重畳装置3は、重畳信号により下位重畳装置41に対しても情報要求(S42)を送信する。下位端末機器631宛ての情報要求を受けた下位重畳装置41は、この情報要求をトリガとして、自身に接続されている下位端末機器611,612,・・・に情報要求を出力し、端末情報の取得を開始する(S43〜S46)。ただし、下位重畳装置41は、このとき取得した端末情報を直ちに上位重畳装置3に返信するのではなく、バッファ部407に一旦蓄積する。
【0092】
その後、上位端末機器5から、下位端末機器611に対して情報要求(S47)が出力されると、上位重畳装置3は、重畳信号により下位重畳装置41に情報要求(S48)を送信する。下位端末機器611宛ての情報要求を受けた下位重畳装置41は、この情報要求に応答して、バッファ部407に蓄積されている端末情報を全て上位重畳装置3に返信する(S49)。
【0093】
下位重畳装置41からの端末情報を受信した上位重畳装置3は、情報要求の送信先である下位端末機器611の端末情報のみを上位端末機器5に出力し(S50)、残りの端末情報については蓄積部に蓄積する。一方、情報要求(S48)を受けた下位重畳装置41は、この情報要求をトリガとして、自身に接続されている下位端末機器611,612,・・・に情報要求を出力し、端末情報の取得を開始する(S51,S52)。
【0094】
その後、上位端末機器5から、下位端末機器612に対して情報要求(S53)が出力されると、上位重畳装置3は、改めて通信を行うことなく、蓄積部に蓄積されている下位端末機器612の端末情報を上位端末機器5に返信する(S54)。
【0095】
以上説明した本実施形態の通信システムによれば、端末接続部401に接続されている複数台の下位端末機器6についても、情報取得部402は、指定されたタイミングで全ての下位端末機器6から端末情報を取得してバッファ部407に蓄積する。したがって、下位重畳装置4が、端末接続部401に接続されている複数台の下位端末機器6の各々に対する情報要求を受ける度に1台ずつ端末情報を取得する場合に比べて、これら複数台の下位端末機器6の端末情報に生じるタイムラグを小さくすることができる。
【0096】
また、下位重畳装置4は、上位重畳装置3からの情報要求に応答して、端末接続部401に接続されている複数台の下位端末機器6の端末情報をまとめて返信する。下位重畳装置4からまとめて端末情報を受け取った上位重畳装置3は、その後、取得済みの端末情報を要求する情報要求を受けても、改めて下位重畳装置4と通信することなく、端末情報を上位端末機器5に返信することができる。これにより、上位重畳装置3−下位重畳装置4間の通信回数が少なくなり、また、上位重畳装置3が情報要求を出してから端末情報が返信されるまでの応答時間も短くなるという利点がある。
【0097】
その他の構成および機能は実施形態1と同様である。
【0098】
なお、上記各実施形態では、上位重畳装置3と下位重畳装置4とを別々の装置として説明したが、下位重畳装置4として用いられる重畳装置は上位重畳装置3としても使用できる構成であってもよい。この場合、重畳装置は、上位重畳装置3としての機能と、下位重畳装置4としての機能とがディップスイッチ等を用いて任意に切替可能に構成される。
【符号の説明】
【0099】
2 伝送路
3 上位重畳装置
4,41,42,43 下位重畳装置(重畳装置)
5 上位端末機器
6,61,62,63,611,612,621,622,631,632 下位端末機器
401 端末接続部
402 情報取得部
403 通信部
407 バッファ部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の端末機器を備え、繰り返し伝送される伝送信号を用いた第1プロトコルの通信と伝送路を共用し、前記伝送信号のうち所定の重畳可能期間に重畳される重畳信号を伝送する第2プロトコルの通信を用いて前記端末機器同士が端末情報を授受する通信システムであって、
前記端末情報の送信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記端末機器が出力する前記端末情報を前記重畳信号に変換して前記伝送路に送出する下位重畳装置と、前記端末情報の受信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記伝送路から受信した前記重畳信号を前記端末情報に変換して前記端末機器に出力する上位重畳装置とを備え、
前記下位重畳装置は、前記端末機器に接続される端末接続部と、当該端末接続部に接続された前記端末機器から前記端末情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部で取得した前記端末情報を蓄積するバッファ部と、前記上位重畳装置からの情報要求に応じて前記端末情報を前記重畳信号により返信する通信部とを備え、前記情報取得部は、指定されたタイミングで前記端末情報を取得し、前記端末接続部に接続されている前記端末機器に対する前記情報要求があるまでは取得した前記端末情報を前記バッファ部に一旦蓄積することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記情報取得部は、前記伝送路に接続された他装置からのトリガによって指定されるタイミングで前記端末情報を取得することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記トリガは、前記上位重畳装置からの前記情報要求であることを特徴とする請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記伝送路には複数台の前記下位重畳装置が接続されており、前記情報取得部は、他の前記下位重畳装置に接続されている前記端末機器に対する前記情報要求を受けると、前記端末接続部に接続された前記端末機器から前記端末情報を取得して前記バッファ部に蓄積し、前記通信部は、前記端末接続部に接続された前記端末機器に対する前記情報要求を受けると、前記バッファ部に蓄積されている前記端末情報を返信することを特徴とする請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記情報取得部は、同一タイミングで取得された前記端末情報の返信を求めて複数台の前記下位重畳装置に対して順次送信される一連の前記情報要求につき、1回のみ前記端末機器から前記端末情報を取得することを特徴とする請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記端末機器は1台の前記下位重畳装置に複数台接続されており、前記情報取得部は、指定されたタイミングで、前記端末接続部に接続されている全ての前記端末機器から前記端末情報を取得し前記バッファ部に蓄積することを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記下位重畳装置は、前記上位重畳装置からの前記情報要求を受けると、前記端末接続部に接続されている全ての前記端末機器から取得した前記端末情報を前記通信部から返信し、前記上位重畳装置は、前記下位重畳装置から返信された前記端末情報を蓄積する蓄積部を備え、前記端末情報の受信側になる前記端末機器に対して前記情報要求の送信先の前記端末機器の前記端末情報のみを前記蓄積部から出力することを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
複数台の端末機器を備え、繰り返し伝送される伝送信号を用いた第1プロトコルの通信と伝送路を共用し、前記伝送信号のうち所定の重畳可能期間に重畳される重畳信号を伝送する第2プロトコルの通信を用いて前記端末機器同士が端末情報を授受し、
前記端末情報の送信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記端末機器が出力する前記端末情報を前記重畳信号に変換して前記伝送路に送出する下位重畳装置と、前記端末情報の受信側になる前記端末機器と前記伝送路との間に挿入され、前記伝送路から受信した前記重畳信号を前記端末情報に変換して前記端末機器に出力する上位重畳装置とを備えた通信システムに前記下位重畳装置として用いられ、
前記端末機器に接続される端末接続部と、当該端末接続部に接続された前記端末機器から前記端末情報を取得する情報取得部と、前記情報取得部で取得した前記端末情報を蓄積するバッファ部と、前記上位重畳装置からの情報要求に応じて前記端末情報を前記重畳信号により返信する通信部とを備え、前記情報取得部は、指定されたタイミングで前記端末情報を取得し、前記端末接続部に接続されている前記端末機器に対する前記情報要求があるまでは取得した前記端末情報を前記バッファ部に一旦蓄積することを特徴とする重畳装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−95008(P2012−95008A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−239004(P2010−239004)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】