説明

通信システム及び方法、並びに分散制御システム及び方法

【課題】短時間且つ高精度な通信を実現しつつ、コストの低減に貢献する通信システムを提供する。
【解決手段】マスタ局とスレーブ局との間において同一経路による双方向通信を通信周期毎に行う通信システムであって、マスタ局は、通信周期Tcの開始から通信周期Tcより短いインターバル期間Tiが経過するまでに、通信周期Tcに対するパルス幅Tmの比率Rmにて表したマスタデータをスレーブ局へ送信し、スレーブ局は、通信周期Tcにおけるインターバル期間Ti後の残期間Trに、インターバル期間Tiに対するパルス幅Tsの比率Rsにて表したスレーブデータをマスタ局へ送信することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスタ局とスレーブ局との間において同一経路により双方向通信を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、短距離通信技術としてLIN(Local Interconnect Network)が広く用いられている。このLINは、マスタ局とスレーブ局との間における双方向通信を同一経路により実現する通信技術であり、車両に搭載された複数の制御対象を分散制御するために開発されたものである。LINの一特徴は、パルス幅に基づくデータ伝送において各局の通信クロック差に起因する通信エラーを防止すべく、ボーレート調整用のデータをマスタ局からスレーブ局へと送信し、当該データに基づいてスレーブ局のボーレートをマスタ局のボーレートと合致させるところにある。この特徴によれば、高精度な分散制御を実現することができるが、ボーレート調整用データの伝送は通信時間を無駄に長くするものであり、特に分散制御システムの場合には、制御応答性の低下に繋がるため、望ましくない。
【0003】
また従来、マスタ局とスレーブ局との間における双方向通信を同一経路により実現する通信技術として、例えば特許文献1に開示される技術が知られている。この特許文献1に開示の技術は、マスタ局からスレーブ局へはパルスのデューティ比により表したデータを伝送する一方、スレーブ局からマスタ局へはパルスの振幅により表したデータを伝送することで、それら双方向のデータ伝送を通信周期毎に実現するものである。この特徴によれば、通信時間を短くできるので、特許文献1に開示の技術を分散制御システムに適用した場合には、高い制御応答性を確保できると予測される。
【0004】
【特許文献1】特開平8−265308号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
さて、特許文献1に開示の技術においてパルスのデューティ比を変化させることは、例えばLIN用の電気回路を利用することによって容易に実現することができる。しかしながら、特許文献1に開示の技術においてパルスの振幅を変化させる場合、送信パルスの振幅を調整出力するために特別な電気回路をスレーブ局に設け、また受信パルスの振幅を検出するために特別な電気回路をマスタ局に設ける必要がある。そのため、コストの高騰を招いてしまう。
【0006】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、短時間且つ高精度な通信を実現しつつ、コストの低減に貢献する通信システム及び方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、高応答性且つ高精度な制御を実現しつつ、コストの低減に貢献する分散制御システム及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1,13に記載の発明によると、マスタ局からスレーブ局へのマスタデータの送信を通信周期の開始からそれより短いインターバル期間が経過するまでに行う一方、スレーブ局からマスタ局へのスレーブデータの送信を通信周期におけるインターバル期間後の残期間に行う。故に、同一経路によるマスタデータの伝送とスレーブデータの伝送とが各通信周期において重畳することがない。したがって、マスタ局とスレーブ局との間では、同一経路による双方向通信を通信周期毎に実現することができるので、通信時間の短縮が可能となる。
【0008】
さらに請求項1,13に記載の発明によると、通信周期に対するパルス幅の比率にて表したマスタデータと、インターバル期間に対するパルス幅の比率にて表したスレーブデータとを用いる。このようにパルス幅の比率にて表したデータの場合、その送受信のために特別な電気回路をマスタ局やスレーブ局に設ける必要がなくなるので、コストの低減に貢献することができる。しかも、パルス幅の比率にて表したデータは、パルス幅自体にて表したデータと比べて、各局の通信クロックの差やそれら通信クロックの温度特性に起因する誤差が小さくなるので、通信の高精度化にも貢献することができる。
尚、請求項1,13に記載の「パルス幅」については、オンパルスの幅であってもよいし、オフパルスの幅であってもよい。
【0009】
請求項2,14に記載の発明によると、スレーブ局では、マスタデータを表すパルスのエッジを検出することにより通信周期の開始を認識するので、マスタ局とスレーブ局との間において通信周期を正確に且つマスタデータを用いて容易に合致させることができる。したがって、各通信周期においてマスタデータの伝送とスレーブデータの伝送とが重畳する事態を確実に防止できる。
尚、請求項2,14に記載の「パルスのエッジ」については、パルスの立ち上がりエッジであってもよいし、パルスの立ち下がりエッジであってもよい。
【0010】
請求項3,15に記載の発明によると、通信周期及びインターバル期間は固定されるので、各局における処理を簡略化することができる。したがって、各局を構成する電気回路を簡素化してコストの低減化を促進することができる。
尚、「通信周期」については、例えば請求項2,14に記載の発明の如くスレーブ局がマスタデータを表すパルスのエッジを検出することにより通信周期の開始を認識するような場合等には、可変としてもよい。
【0011】
請求項4,16に記載の発明によると、マスタ局からは、複数のマスタデータをインターバル期間においてシリアルにスレーブ局へ送信するので、各通信周期におけるデータの伝送効率を高めることができる。
請求項5,17に記載の発明によると、スレーブ局からは、複数のスレーブデータをインターバル期間後の残期間においてシリアルにマスタ局へ送信するので、各通信周期におけるデータの伝送効率を高めることができる。
【0012】
請求項6,18に記載の発明によると、マスタ局からは、複数のスレーブ局のうち送信先のスレーブ局を特定する送信先特定データを含む複数のマスタデータを、インターバル期間においてシリアルに通信経路へ出力する。これにより各スレーブ局では、自身を特定した送信先特定データと同一のインターバル期間にマスタ局から出力されたマスタデータを受信することで、自身に対するマスタデータのみを選択的に受け取ることができる。したがって、一つのマスタ局から複数のスレーブ局へのデータ伝送を正確に行うことができる。
【0013】
請求項7,19に記載の発明によると、マスタ局からは、送信先特定データの出力後に送信先特定データ以外のマスタデータを出力する。これにより各スレーブ局では、例えば自身を特定した送信先特定データを受信した場合にのみ、送信先特定データ以外のマスタデータを受信して記憶すればよい。したがって、各スレーブ局におけるデータの記憶容量を少なくすることができるので、コストの低減化が促進される。
【0014】
請求項8,20に記載の発明によると、自身を特定した送信先特定データを受信して応答するスレーブ局から、当該応答スレーブ局を特定する送信元特定データを含む複数のスレーブデータをインターバル期間後の残期間においてシリアルにマスタ局へ送信する。これによりマスタ局では、スレーブデータと同一期間に受信する送信元特定データに基づいて、当該スレーブデータの送信元のスレーブ局を正確に把握することができる。
【0015】
請求項9,21に記載の発明によると、上記応答スレーブ局では、送信元特定データの送信後に送信元特定データ以外のスレーブデータを送信する。これによりマスタ局では、送信元特定データに後続するスレーブデータの送信元を当該送信元特定データに基づいて認識した後、後続のスレーブデータを受信することができるので、例えばスレーブデータとその送信元スレーブ局とを関連付ける処理の簡略化が可能となる。
【0016】
請求項10に記載の発明によると、マスタ局及び各スレーブ局が共通バスにより相互接続され、当該共通バスがマスタ局と各スレーブ局との間の通信経路を形成する。したがって、車両等に好適なバス型の通信システムにおいて、短時間且つ高精度な通信を実現しつつ、コストの低減に貢献することができる。
尚、「一つのマスタ局と複数のスレーブ局を備えた通信システム」は、請求項10に記載の発明の如きバス型以外の例えばスター型、リング型であってもよい。
【0017】
請求項11に記載の発明は、請求項1〜10のいずれか一項に記載の通信システムからなり、マスタ局及びスレーブ局が各々の制御対象を分散制御するので、短時間且つ高精度な通信により高応答性且つ高精度な制御を実現しつつ、コストを低減することができる。
請求項22に記載の発明は、マスタ局とスレーブ局との間において請求項13〜21のいずれか一項に記載の通信方法により双方向通信を行いつつ、マスタ局及びスレーブ局の各々の制御対象を分散制御するので、短時間且つ高精度な通信により高応答性且つ高精度な制御を実現しつつ、コストを低減することができる。
尚、請求項11,22に記載の「分散制御におけるマスタ局の制御対象」は、スレーブ局とは異なる要素であってもよいし、スレーブ局であってもよいし、それらの双方であってもよい。
【0018】
請求項12,23に記載の発明によると、マスタ局では、スレーブ局の制御対象の制御状態を指令する指令データをマスタデータとして生成し、またスレーブ局では、自身の制御対象の状態量を表す状態量データをスレーブデータとして生成する。これにより、マスタ局においてスレーブ局の制御対象の状態量を当該制御対象の制御等に反映させることができるので、分散制御の制御精度が向上する。
【0019】
請求項24,30に記載の発明によると、マスタ局では、スレーブ局からのスレーブデータの受信に応答してスレーブ局へのマスタデータの送信が行われ、スレーブ局では、マスタ局からのマスタデータの受信に応答してマスタ局へのスレーブデータの送信が行われるので、マスタデータの伝送とスレーブデータの伝送とが交互に繰り返される。しかもマスタデータの送信は、スレーブデータの受信後、マスタ局が定めたマスタ側アイドル期間が経過すると行われ、スレーブデータの送信は、マスタデータの受信後、スレーブ局が定めたスレーブ側アイドル期間が経過すると行われるので、マスタデータの伝送とスレーブデータの伝送との重畳が確実に防止される。以上より、マスタ局とスレーブ局との間では、同一経路による双方向通信を実現して、その通信時間を短縮することが可能になる。
【0020】
さらに請求項24,30に記載の発明によると、マスタ側アイドル期間に対するパルス幅の比率にて表したマスタデータと、スレーブ側アイドル期間に対するパルス幅の比率にて表したスレーブデータとを用いる。このようにパルス幅の比率にて表したデータの場合、その送受信のために特別な電気回路をマスタ局やスレーブ局に設ける必要がなくなるので、コストの低減に貢献することができる。しかも、パルス幅の比率にて表したデータは、パルス幅自体にて表したデータと比べて、各局の通信クロックの差やそれら通信クロックの温度特性に起因する誤差が小さくなるので、通信の高精度化にも貢献することができる。加えて、データ伝送の重畳防止効果をもたらす各アイドル期間がデータの表現にも利用されるので、データの伝送効率を高めることができる。
尚、請求項24,30に記載の「パルス幅」については、オンパルスの幅であってもよいし、オフパルスの幅であってもよい。
【0021】
請求項25,31に記載の発明によると、マスタ局では、スレーブデータの受信毎にマスタ側アイドル期間を設定し、スレーブ局では、マスタデータの受信毎にスレーブ側アイドル期間を設定するので、それら各アイドル期間が可変となる。したがって、例えば各局における処理負荷に応じて各アイドル期間を調整することで、通信負荷を軽減することが可能となる。
【0022】
請求項26,32に記載の発明によると、マスタ局では、スレーブデータの受信後における今回のマスタデータの送信前に、前回のマスタデータの送信直前のマスタ側アイドル期間に対する今回のマスタ側アイドル期間の比率が今回送信するマスタデータの種類を表す当該今回のマスタ側アイドル期間を設定する。故にスレーブ局では、前回のマスタデータの受信直前のマスタ側アイドル期間に対する今回のマスタデータの受信直前のマスタ側アイドル期間の比率に基づいて、今回のマスタデータの種類を識別することができる。また同様にスレーブ局では、マスタデータの受信後における今回のスレーブデータの送信前に、前回のスレーブデータの送信直前のスレーブ側アイドル期間に対する今回のスレーブ側アイドル期間の比率が今回送信するスレーブデータの種類を表す当該今回のスレーブ側アイドル期間を設定する。故にマスタ局では、前回のスレーブデータの受信直前のスレーブ側アイドル期間に対する今回のスレーブデータの受信直前のスレーブ側アイドル期間の比率に基づいて、今回のスレーブデータの種類を識別することができる。このような請求項26,32に記載の発明によれば、マスタ側アイドル期間及びスレーブ側アイドル期間を有効に利用して複数種類のマスタデータ及びスレーブデータを伝送することができるので、データの伝送効率がより一層高められる。
【0023】
一般に起動直後のマスタ局やスレーブ局では、それらの局が電気的に不安定であること等により、時間を正確に把握することが難しくなる。
請求項27,33に記載の発明では、各局の起動後にマスタデータの伝送をスレーブデータの伝送より先に行うので、マスタ局において起動後一回目のマスタデータの送信前にマスタ側アイドル期間を正確に設定することや、スレーブ局において起動後一回目のマスタデータの受信前にマスタ側アイドル期間を正確に検知することが難しくなる。そのためマスタ局では、起動後一回目のマスタデータの送信後に起動後一回目のスレーブデータを受信した場合、請求項26,32に記載のようにマスタ側アイドル期間を設定すると、その設定精度が悪化するおそれがある。しかし、請求項27,33に記載の発明によるマスタ局では、起動後一回目のマスタデータの送信後に起動後一回目のスレーブデータを受信した場合、当該一回目のマスタデータに対応のパルス幅に対する起動後二回目のマスタ側アイドル期間の比率が起動後二回目に送信のマスタデータの種類を表す当該二回目のマスタ側アイドル期間を設定するので、その設定精度の悪化を回避することが可能になる。
【0024】
請求項28に記載の発明は、請求項24〜27のいずれか一項に記載の通信システムからなり、マスタ局及びスレーブ局が各々の制御対象を分散制御するので、短時間且つ高精度な通信により高応答性且つ高精度な制御を実現しつつコストを低減することができる。
請求項34に記載の発明は、マスタ局とスレーブ局との間において請求項30〜33のいずれか一項に記載の通信方法により双方向通信を行いつつ、マスタ局及びスレーブ局の各々の制御対象を分散制御するので、短時間且つ高精度な通信により高応答性且つ高精度な制御を実現しつつコストを低減することができる。
尚、請求項28,34に記載の「分散制御におけるマスタ局の制御対象」は、スレーブ局とは異なる要素であってもよいし、スレーブ局であってもよいし、それらの双方であってもよい。
【0025】
請求項29,35に記載の発明によると、マスタ局では、スレーブ局の制御対象の制御状態を指令する指令データをマスタデータとして生成し、またスレーブ局では、自身の制御対象の状態量を表す状態量データをスレーブデータとして生成する。これにより、マスタ局においてスレーブ局の制御対象の状態量を当該制御対象の制御等に反映させることができるので、分散制御の制御精度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の複数の実施形態を図面に基づいて説明する。尚、各実施形態において対応する構成要素には同一の符号を付すことにより、重複する説明を省略する。
(第一実施形態)
図2は、本発明の第一実施形態による分散制御システム10を示している。この分散制御システム10は、ケーブル、ワイヤハーネス等の一本の信号線11を介して二つの制御装置20,30を相互接続してなる通信システム12を主体とし、各制御装置20,30に接続された制御対象1,2を分散制御するものである。
【0027】
通信システム12において各制御装置20,30は、CPU21,31、メモリ22,32及び入出力インタフェース(IF)24,34を備えたマイクロコンピュータ等の電気回路で構成されている。ここで各制御装置20,30の入出力IF24,34は、それら装置間通信のために信号線11が接続されるIF回路として、図3に示す如きLIN用のIF回路25,35を有している。したがって、信号線11が形成する通信経路を通じた制御装置20,30間のデータ伝送には、図1(A),(B)に示すように高(H)レベルと低(L)レベルとの間の電圧振幅が略一定のパルス列信号が用いられる。
【0028】
図2に示すようにエンジン制御装置20の入出力IF24には、内燃式エンジン1に設けられたイグナイタ、インジェクタ等のエンジン電装品3と、車両に設けられたアクセルセンサ、水温センサ、速度センサ等の車両センサ4とが接続されている。エンジン制御装置20は、メモリ22に記憶されているプログラムをCPU21により実行することで、内燃式エンジン1を制御するための信号をエンジン電装品3へ与えると共に、車両状態を表す信号を車両センサ4から受け取る。
【0029】
一方、吸気制御装置30の入出力IF34には、吸気系2に設けられたスロットル弁5の駆動装置6が接続されている。ここで本実施形態の吸気系2は、エアクリーナ7を通じて吸入した空気をスロットル弁5により流量調整して内燃式エンジン1の吸気ポート8へと導くものであり、故に当該吸気の流量はスロットル弁5の開度によって決まる。そこで吸気制御装置30は、メモリ32に記憶されているプログラムをCPU31により実行することで、スロットル弁5の目標開度に基づく駆動信号を駆動装置6へ与えると共に、スロットル弁5の実開度を表す信号を駆動装置6から受け取る。
【0030】
このような通信システム12において各制御装置20,30は、メモリ22,32に記憶されているプログラムをCPU21,31により実行することで、それぞれマスタ局及びスレーブ局として機能して双方向通信を実現する。
以下、通信システム12による双方向通信について詳しく説明する。尚、以下の説明では、信号線11の電圧レベルを高(H)レベルから低(L)レベルへ変化させる各制御装置20,30の出力を、「オンパルス」の出力とする。
【0031】
内燃式エンジン1が始動すると、通信周期Tc毎にエンジン制御装置20は、各周期Tcの開始からインターバル期間Tiが経過するまでに、指令データを生成する。ここで通信周期Tcは、固定値に設定されてエンジン制御装置20のメモリ22に記憶されている。また、インターバル期間Tiは、図1に示すように通信周期Tcより短い固定値(例えば周期Tcの半値)に設定される期間である。さらにまた、指令データは、吸気制御装置30によるスロットル弁5の目標開度を指令するものであり、図4に示すように本実施形態では、スロットル弁5の全閉状態を表す「0度」からスロットル弁5の全開状態を表す「90度」の間の開度値とされる。尚、指令データを「0度」と「90度」との間のいずれの開度値とするかは、エンジン制御装置20が吸気制御装置30から受信する状態量データの他、内燃式エンジン1の制御状態や車両状態等に基づいて判断される。また、「0度」と「90度」との間において指令データとして設定される開度値は、連続値であってもよいし、離散値であってもよい。
【0032】
また、エンジン制御装置20は、各通信周期Tcのインターバル期間Tiにおいて指令データの生成後には、当該生成データを周期Tcに対するオンパルス幅Tmの比率Rmへと変換し、入出力IF24から信号線11へ出力する。ここで比率Rmは、図1(A)に示すように通信周期Tcを基準としたときのオンパルス幅Tmの百分率にて表されるものであり、指令データとしての開度値と線形関係を有するように、CPU21の内部クロック等を利用して設定される。図4はその設定例であり、指令データが「0度」であるときには比率Rmが「2.5%」に設定され、指令データが「90度」であるときには比率Rmが「25%」に設定される。尚、本実施形態において比率Rmの上限値は、オンパルス幅Tmがインターバル期間Ti未満となるように設定されてメモリ22に記憶されている。したがって、エンジン制御装置20は、以上のデータ生成並びに出力処理をインターバル期間Ti内に終えることができる。
【0033】
以上の処理によりエンジン制御装置20から信号線11へ通信周期Tc毎に出力される指令データは、各周期Tcのインターバル期間Tiに吸気制御装置30の入出力IF34にて受信される。吸気制御装置30は、この指令データの受信が内燃式エンジン1の始動後、初めての受信であった場合には、応答処理を行わず、初期処理を行って待機する。ここで初期処理とは、受信した指令データを表すオンパルスの立ち上がりエッジを検出し、その検出タイミングをメモリ32に記憶する処理である。
【0034】
一方、指令データの受信が内燃式エンジン1の始動後、二回目以降の受信であった場合に吸気制御装置30は、応答処理を開始する。
具体的に応答処理では、まず、受信した指令データを表すオンパルスの立ち上がりエッジを検出して、その検出タイミングをメモリ32に記憶すると共に、今回の検出タイミングと前回の検出タイミングとの差から通信周期Tcを割り出す。
【0035】
応答処理では次に、割り出した通信周期Tcの開始(ここでは、上記今回の検出タイミングと一致する)から、メモリ32に記憶されているインターバル期間Tiが経過するまでに、スロットル弁5の実開度を表す状態量データを生成する。ここで状態量データは、吸気制御装置30がスロットル弁5の駆動装置6から受ける信号に基づいて生成するものであり、図5に示す「0度」から「90度」の間の開度値とされる。尚、「0度」と「90度」との間において状態量データとして生成される開度値は、連続値であってもよいし、離散値であってもよい。
【0036】
応答処理ではさらに、通信周期Tcの開始からインターバル期間Tiが経過すると、期間Tiに生成の状態量データを期間Tiに対するオンパルス幅Tsの比率Rsへと変換し、入出力IF34から信号線11へ出力する。ここで比率Rsは、図1(B)に示すようにインターバル期間Tiを基準したときのオンパルス幅Tsの百分率にて表されるものであり、状態量データとしての開度値と線形関係を有するように、CPU31の内部クロック等を利用して設定される。図5はその設定例であり、状態量データが「0度」であるときには比率Rsが「6.25%」に設定され、状態量データが「90度」であるときには比率Rsが「62.5%」に設定される。尚、本実施形態において比率Rsの上限値は、オンパルス幅Tsが通信周期Tcにおける期間Ti後の残期間Tr未満となるように設定されてメモリ32に記憶されている。したがって、吸気制御装置30は、以上のデータ出力処理を残期間Tr内に終えることができる。
【0037】
尚、上述した初期処理及び応答処理のいずれにおいても、吸気制御装置30は、受信した指令データをメモリ32に記憶し、当該指令データの目標開度に従う駆動信号をスロットル弁5の駆動装置6に対して与える。
また、上述の応答処理により吸気制御装置30から信号線11へ通信周期Tc毎に出力される状態量データは、各周期Tcの期間Trにエンジン制御装置20の入出力IF24にて受信され、以降の指令データの生成や内燃式エンジン1の制御に反映される。
【0038】
以上説明した第一実施形態によると、マスタ局としてのエンジン制御装置20からスレーブ局としての吸気制御装置30への指令データの送信は、通信周期Tcの開始から通信周期Tcより短いインターバル期間Tiが経過するまでに行われる。その一方、吸気制御装置30からエンジン制御装置20への状態量データの送信は、通信周期Tcにおけるインターバル期間Ti後の残期間Trに行われる。したがって、指令データの伝送と状態量データの伝送とは、単一の信号線11を通じた同一経路によるものであるにも拘らず、図1(C)に示すように各通信周期Tcで重畳することがない。しかも吸気制御装置30では、指令データを表すオンパルスの立ち上がりエッジを検出することにより、別の制御装置20の定めた通信周期Tcを認識して期間Tiの経過判断に利用しているので、各通信周期Tcにおけるデータ重畳を確実に防止することができる。これらのことより第一実施形態では、同一経路による双方向通信を各通信周期Tc毎に実現することができるので、通信時間の短縮が可能となる。
【0039】
さらに第一実施形態によると、指令データは、通信周期Tcに対するオンパルス幅Tmの比率Rmにて表され、また状態量データは、インターバル期間Tiに対するオンパルス幅Tsの比率Rsにて表される。故に、データ送受信のための特別な電気回路を各制御装置20,30に設ける必要がなく、図3に示すようなLIN用のIF回路25,35を利用することも可能となるので、コストが低減する。しかも、オンパルス幅Tm,Tsの比率Rm,Rsにより表されるデータは、パルス幅自体により表されるデータと比べて、各制御装置20,30の通信クロック(ここでは、CPU21,31の内部クロック等)の差やそれら通信クロックの温度特性に起因する誤差が小さくなるので、通信精度が高くなる。
【0040】
したがって、こうした第一実施形態によれば、短時間且つ高精度な通信によって高応答性且つ高精度な分散制御を実現しつつも、コストの低減に貢献することができる。
尚、第一実施形態では、指令データが特許請求の範囲に記載の「マスタデータ」に相当し、状態量データが特許請求の範囲に記載の「スレーブデータ」に相当する。
【0041】
(第二実施形態)
図6に示すように、本発明の第二実施形態は第一実施形態の変形例である。第二実施形態の分散制御システム100は、マスタ局としての一つのエンジン制御装置120とスレーブ局としての二つの吸気制御装置130,140とを組み合わせてなる通信システム102を主体としている。この通信システム102では、一本のケーブルからなる共通バス110に各制御装置120,130,140が個別の信号線112,113,114を介して接続されている。即ち通信システム102は、バス型の通信ネットワークを形成している。
【0042】
通信システム102において各制御装置120,130,140は、第一実施形態と同様、CPU121,131,141、メモリ122,132,142及び入出力IF124,134,144を備えたマイクロコンピュータ等の電気回路で構成されている。そして、第一実施形態と同様に入出力IF124,134,144にはLIN用のIF回路125,135,145が設けられており、それらIF回路125,135,145に上述の信号線112,113,114がそれぞれ接続されている。したがって、信号線112,113及び共通バス110が形成する通信経路を通じた制御装置120,130間のデータ伝送には、図7(A),(B)に示すように高(H)レベルと低(L)レベルとの間の電圧振幅が略一定のパルス列信号が用いられる。また、信号線112,114及び共通バス110が形成する通信経路を通じた制御装置120,140間のデータ伝送には、図7(A),(C)に示すように高(H)レベルと低(L)レベルとの間の電圧振幅が略一定のパルス列信号が用いられる。
【0043】
図6に示すエンジン制御装置120は、メモリ122に記憶されているプログラムの内容を除いて第一実施形態と同様の構成を有している。
各吸気制御装置130,140は、吸気系150における相異なる弁151,152の開度を制御する。
【0044】
具体的に吸気管長切換弁151は、スロットル弁5の下流側において吸気を流す流路を、主流路153と、主流路153よりも長い迂回流路154との間で切り換えるものであり、当該弁151の駆動装置155が第一吸気制御装置130の入出力IF134に接続されている。そこで第一吸気制御装置130は、メモリ132に記憶されているプログラムをCPU131により実行することで、吸気管長切換弁151の目標開度に基づく駆動信号を駆動装置155へ与えると共に、吸気管長切換弁151の実開度を表す信号を駆動装置155から受け取る。尚、本実施形態では、吸気管長切換弁151が全閉、即ち弁開度が「0度」に制御されるとき迂回流路154が吸気流路として選択され、吸気管長切換弁151が全開、即ち弁開度が「90度」に制御されるとき主流路153が吸気流路として選択される。
【0045】
一方、吸気流制御弁152は、流路153,154の下流側において吸気ポート8直前の流路面積を制御するものであり、当該弁152の駆動装置156が第二吸気制御装置140の入出力IF144に接続されている。そこで第二吸気制御装置140は、メモリ142に記憶されているプログラムをCPU141により実行することで、吸気流制御弁152の目標開度に基づく駆動信号を駆動装置156へ与えると共に、吸気流制御弁152の実開度を表す信号を駆動装置156から受け取るようになっている。尚、本実施形態では、吸気流制御弁152が全閉、即ち弁開度が「0度」に制御されるとき流路面積が最小となり、吸気流制御弁152が全開、即ち弁開度が「90度」に制御されるとき流路面積が最大となる。
【0046】
このような通信システム102において各制御装置120,130,140は、メモリ122,132,142に記憶されているプログラムをCPU121,131,141により実行することで、装置120,130間及び装置120,140間の双方向通信を実現する。
以下、通信システム102による双方向通信について詳しく説明する。尚、以下の説明では、信号線112,113,114及び共通バス110の電圧レベルを高(H)レベルから低(L)レベルへ変化させる各制御装置120,130,140の出力を、「オンパルス」の出力とする。
【0047】
内燃式エンジン1が始動すると、メモリ122に記憶の通信周期Tc毎にエンジン制御装置120は、各周期Tcの開始からインターバル期間Tiが経過するまでに、指令対象装置の選定と、対象特定データ及び指令データの生成とを実施する。ここで指令対象装置の選定は、吸気制御装置130,140のうち指令を与える装置を選定するものであり、エンジン制御装置120が各吸気制御装置130,140から受信する状態量データの他、内燃式エンジン1の制御状態や車両状態等に基づいて実施される。また、対象特定データは、指令対象装置を特定するIDであり、図8(A)に示すように本実施形態では、指令対象装置が第一吸気制御装置130のとき「1」、指令対象装置が第二吸気制御装置140のとき「2」とされる。さらにまた、指令データは、吸気系150の弁151,152のうち指令対象装置に接続の弁の目標開度を指令するものであり、本実施形態においても「0度」から「90度」の間の開度値(連続値又は離散値)とされる。尚、指令データを「0度」と「90度」との間のいずれの開度値とするかは、エンジン制御装置120が各吸気制御装置130,140から受信する状態量データの他、内燃式エンジン1の制御状態や車両状態等に基づいて判断される。
【0048】
また、エンジン制御装置120は、各通信周期Tcのインターバル期間Tiにおいて対象特定データ及び指令データの生成後には、それらの生成データを図7(A)に示すように変換して、入出力IF124から信号線112へと出力する。具体的に対象特定データは、通信周期Tcに対するオンパルス幅Tm1の比率Rm1へと変換され、また指令データは、周期Tcに対するオンパルス幅Tm2の比率Rm2へと変換される。ここで比率Rm1は、インターバル期間Tiのうち第一期間Ti1未満のオンパルス幅Tm1を実現する範囲で設定される。図8(A)はその設定例であり、対象特定データが「1」であるときには比率Rm1が「2.5%」に設定され、対象特定データが「2」であるときには比率Rm1が「25%」に設定される。一方、比率Rm2は、指令データとしての開度値と線形関係を有するよう、インターバル期間Tiのうち第二期間Ti2未満のオンパルス幅Tm2を実現する範囲で設定される。図8(B)はその設定例であり、指令データが「0度」であるときには比率Rm2が「2.5%」に設定され、指令データが「90度」であるときには比率Rm2が「25%」に設定される。尚、図7に示すように本実施形態では、第一期間Ti1が、インターバル期間Tiの開始から当該期間Tiの途中まで継続する期間(例えば期間Tiの半値)とされ、また第二期間Ti2が、第一期間Ti1の後に連続しインターバル期間Tiの終わりまで継続する期間とされる。さらに本実施形態では、オンパルス幅Tm1が第一期間Ti1未満となるように比率Rm1の上限値が設定されてメモリ122に記憶されており、またオンパルス幅Tm2が第二期間Ti2未満となるように比率Rm2の上限値が設定されてメモリ122に記憶されている。したがって、エンジン制御装置120は、以上のデータ生成並びに出力処理をインターバル期間Ti内に終えることができ、しかも対象特定データの出力後に指令データを出力することができる。
【0049】
以上の処理によりエンジン制御装置120から信号線112へ通信周期Tc毎に出力される対象特定データ並びに指令データは、各周期Tcのインターバル期間Tiに共通バス110及び信号線113,114へ伝播する。そして、これら伝播データのうち対象特定データは、各吸気制御装置130,140の入出力IF134,144にて受信される。各吸気制御装置130,140は、この対象特定データの受信が内燃式エンジン1の始動後、初めての受信であった場合には、第一実施形態と同様な初期処理を対象特定データを表すオンパルスに関して実施した後、当該対象特定データと同一期間Tiの指令データを無視して待機する。尚、インターバル期間Tiは、各吸気制御装置130,140のメモリ132,142に記憶されて利用されるようになっている。
【0050】
一方、対象特定データの受信が内燃式エンジン1の始動後、二回目以降の受信であった場合に各吸気制御装置130,140は、第一実施形態の応答処理と同様にして対象特定データを表すオンパルスのエッジ検出を行い、通信周期Tcを割り出す。続いて各吸気制御装置130,140は、受信した対象特定データが自身を特定するIDではない場合は、当該対象特定データと同一期間Tiの指令データを無視して待機する一方、受信した対象特定データが自身を特定するIDである場合は、本実施形態の応答処理を実施する。
【0051】
具体的に第一吸気制御装置130の応答処理では、まず、受信した対象特定データと同一期間Tiの指令データを受信してメモリ132に記憶すると共に、当該指令データの目標開度に従う駆動信号を吸気管長切換弁151の駆動装置155に対して与える。
第一吸気制御装置130の応答処理では次に、通信周期Tcの開始からインターバル期間Tiが経過するまでに、吸気管長切換弁151の実開度を表す状態量データを生成する。ここで状態量データは、第一吸気制御装置130が吸気管長切換弁151の駆動装置155から受ける信号に基づいて生成するものであり、図9(B)に示す「0度」から「90度」の間の開度値(連続値又は離散値)とされる。
【0052】
第一吸気制御装置130の応答処理ではさらに、通信周期Tcの開始からインターバル期間Tiが経過すると、メモリ132に記憶の自己特定データと、期間Tiに生成の状態量データとを図7(B)に示すように変換して、入出力IF134から信号線113へと出力する。具体的に自己特定データは、図9(A)に示すように第一吸気制御装置130を特定するID「1」であって、インターバル期間Tiに対するオンパルス幅Ts1の比率Rs1へと変換され、また状態量データは、期間Tiに対するオンパルス幅Ts2の比率Rs2へと変換される。ここで比率Rs1は、通信周期Tcにおけるインターバル期間Ti後の残期間Trのうち第一期間Tr1未満のオンパルス幅Ts1を実現する範囲で設定される。図9(A)はその設定例であり、比率Rs1が自己特定データ「1」に対応して「6.25%」に設定される。一方、比率Rs2は、状態量データとしての開度値と線形関係を有するよう、残期間Trのうち第二期間Tr2未満のオンパルス幅Ts2を実現する範囲で設定される。図9(B)はその設定例であり、状態量データが「0度」であるときには比率Rs2が「6.25%」に設定され、状態量データが「90度」であるときには比率Rs2が「62.5%」に設定される。尚、図7に示すように本実施形態では、第一期間Tr1が、残期間Trの開始から当該期間Trの途中まで継続する期間(例えば期間Trの半値)とされ、また第二期間Tr2が、第一期間Tr1の後に連続し残期間Trの終わりまで継続する期間とされる。さらに本実施形態では、オンパルス幅Ts1が第一期間Tr1未満となるように比率Rs1の上限値が設定されてメモリ132に記憶されており、またオンパルス幅Ts2が第二期間Tr2未満となるように比率Rs2の上限値が設定されてメモリ132に記憶されている。したがって、第一吸気制御装置130は、以上のデータ出力処理を残期間Tr内に終えることができ、しかも自己特定データの出力後に状態量データを出力することができる。
【0053】
以上、第一吸気制御装置130の応答処理について説明した。以下、第二吸気制御装置140の応答処理について、第一吸気制御装置130の応答処理と異なる点を中心に説明する。
第二吸気制御装置140の応答処理では、まず、受信した対象特定データと同一期間Tiの指令データを受信してメモリ142に記憶すると共に、当該指令データの目標開度に従う駆動信号を吸気流制御弁152の駆動装置156に対して与える。
【0054】
第二吸気制御装置140の応答処理では次に、インターバル期間Tiが経過するまでに、吸気流制御弁152の実開度を表す状態量データ、即ち「0度」から「90度」の間の開度値(連続値又は離散値)を生成する。
第二吸気制御装置140の応答処理ではさらに、インターバル期間Tiが経過すると、メモリ142に記憶の自己特定データと、期間Tiに生成の状態量データとをそれぞれ図7(C)に示すように比率Rs1及びRs2へと変換し、入出力IF144から信号線114へ出力する。ここで自己特定データは、図9(A)に示すように第二吸気制御装置140を特定するID「2」であり、当該自己特定データを表す比率Rs1は、通信周期Tcの残期間Trのうち第一期間Tr1未満のオンパルス幅Ts1を実現する範囲で例えば図9(A)の「62.5%」に設定される。一方、状態量データを表す比率Rs2については、図9(B)に示す如く、第一吸気制御装置130の場合と同様に設定される。尚、メモリ142には、第一吸気制御装置130の場合と同様に設定された各比率Rs1,Rs2の上限値が記憶されている。したがって、第二吸気制御装置140は、以上のデータ出力処理を残期間Tr内に終えることができ、しかも自己特定データの出力後に状態量データを出力することができる。
【0055】
さて、通信周期Tc毎に吸気制御装置130,140のいずれかから出力される自己特定データ及び状態量データは、各周期Tcの期間Trにおいて、共通バス110及び信号線112を経由してエンジン制御装置120へ伝播する。これら伝播データのうち自己特定データを入出力IF124にて受信するエンジン制御装置120は、当該自己特定データ及び後続する状態量データの送信元の吸気制御装置を判定する。さらに、自己特定データに続いて状態量データを入出力IF124にて受信するエンジン制御装置120は、当該状態量データを、先に判定された送信元の吸気制御装置と関連付けてメモリ122に記憶し、以降の指令データの生成や内燃式エンジン1の制御に反映させる。
【0056】
以上説明した第二実施形態によると、マスタ局としてのエンジン制御装置120からスレーブ局としての吸気制御装置130,140へのデータ送信は、通信周期Tcの開始から通信周期Tcより短いインターバル期間Tiが経過するまでに行われる。その一方、吸気制御装置130,140からエンジン制御装置120へのデータ送信は、通信周期Tcにおけるインターバル期間Ti後の残期間Trに行われる。しかも吸気制御装置130,140では、指令データを表すオンパルスの立ち上がりエッジを検出することにより、別の制御装置120が定めた通信周期Tcを認識して期間Tiの経過判断に利用している。したがって、第一実施形態と同様の原理により、各通信周期Tcにおけるデータ重畳を図7(D)に示すように確実に防止することができるので、通信時間の短縮が可能となる。
【0057】
さらに第二実施形態によると、エンジン制御装置120から吸気制御装置130,140へ送信される対象特定データ及び指令データは、通信周期Tcに対するオンパルス幅Tm1,Tm2の比率Rm1,Rm2にて表される。また、吸気制御装置130,140からエンジン制御装置120へ送信される自己特定データ及び状態量データは、インターバル期間Tiに対するオンパルス幅Ts1,Ts2の比率Rs1,Rs2にて表される。したがって、第一実施形態と同様の原理により、コストの低減と通信精度の向上とを図ることができる。
【0058】
またさらに第二実施形態によると、各通信周期Tcのインターバル期間Tiにおいてエンジン制御装置120からは、指令対象装置を特定する対象特定データと、指令対象装置に与える指令データとがシリアルに出力される。これにより各吸気制御装置130,140では、自身を特定した対象特定データと同一期間Tiの指令データを受信することで、自身への指令データのみを選択的に受け取ることができる。したがって、エンジン制御装置120から複数の吸気制御装置130,140へのデータ伝送を正確に行うことができる。しかも第二実施形態では、指令データが対象特定データに後続して出力されるので、各吸気制御装置130,140では、自身を特定した対象特定データを受信した場合に限り、指令データを受信してメモリ132,142に記憶すればよい。したがって、メモリ132,142の記憶容量が少なくても済むので、コストの低減に繋がる。
【0059】
加えて第二実施形態によると、各通信周期Tcのインターバル期間Ti後の残期間Trおいて吸気制御装置130,140のいずれかからは、当該装置自身を特定する自己特定データと、当該装置の制御する弁に関する状態量データが、この順でシリアルに出力される。これによりエンジン制御装置120では、先に受信する自己特定データに基づいてその送信元の吸気制御装置を正確に判定し、後に受信する状態量データを送信元の吸気制御装置と関連付けてメモリ122に記憶することができる。したがって、エンジン制御装置120では、受信した状態量データを指令データの生成や内燃式エンジン1の制御に正確に反映させることができ、分散制御の精度が向上する。
【0060】
このように第二実施形態によっても、短時間且つ高精度な通信の下、高応答性且つ高精度な分散制御を実現しつつ、コストの低減に貢献することができる。
尚、第二実施形態では、対象特定データ及び指令データが特許請求の範囲に記載の「マスタデータ」に相当し、対象特定データが特許請求の範囲に記載の「送信先特定データ」に相当する。また、自己特定データ及び状態量データが特許請求の範囲に記載の「スレーブデータ」に相当し、自己特定データが特許請求の範囲に記載の「送信元特定データ」に相当する。
【0061】
(第三実施形態)
図10に示すように、本発明の第三実施形態は第一実施形態の変形例である。第三実施形態による分散制御システム200の通信システム202では、吸気系250に設けられた吸気流制御弁152の駆動装置156が吸気制御装置210の入出力IF34に接続されている。ここで、吸気流制御弁152及び駆動装置156の構成は第二実施形態と実質的に同一である。したがって、吸気制御装置210は、メモリ212に記憶されているプログラムをCPU31により実行することで、吸気流制御弁152の目標開度に基づく駆動信号を駆動装置156へ与えると共に、吸気流制御弁152の実開度を表す信号を駆動装置156から受け取るようになっている。
また、通信システム202においてエンジン制御装置220は、メモリ222に記憶されているプログラムを除いて、第一実施形態のエンジン制御装置20に準ずる構成を有している。
【0062】
このような通信システム202において各制御装置220,210は、内燃式エンジン1の始動に応じて起動し、メモリ222,212に記憶されているプログラムをCPU21,31により実行することで、それぞれマスタ局及びスレーブ局として機能して双方向通信を実現する。
以下、通信システム202による双方向通信について詳しく説明する。尚、以下の説明では、信号線11の電圧レベルを高(H)レベルから低(L)レベルへ変化させる各制御装置220,210の出力を、「オンパルス」の出力とする。
【0063】
図11(A)に示すようにエンジン制御装置220は、起動直後と、吸気制御装置210から状態量データを受信する毎に、マスタ側アイドル期間TMIを設定する。ここで、エンジン制御装置220の起動直後における一回目のマスタ側アイドル期間TMIの設定では、当該起動直後にエンジン制御装置220が電気的に不安定になる時間を考慮して定められた固定値をメモリ222から読み出して、マスタ側アイドル期間TMIとする。一方、エンジン制御装置220の起動後、状態量データの受信毎に行われる二回目以降のマスタ側アイドル期間TMIの設定は、エンジン制御装置220の負荷状態等に基づく。
【0064】
また、エンジン制御装置220は、起動後又は状態量データの受信後、設定したマスタ側アイドル期間TMIが経過するまでに、指令データを生成する。ここで指令データは、吸気流制御弁152の目標開度を指令するものであり、第二実施形態の場合と同様に「0度」から「90度」の間の開度値とされる。尚、指令データを「0度」と「90度」との間のいずれの開度値とするかは、状態量データ、内燃式エンジン1の制御状態、車両状態等に基づいて判断される。
【0065】
さらにエンジン制御装置220は、起動後又は状態量データの受信後、設定したマスタ側アイドル期間TMIが経過すると、その経過の直前に生成した指令データを図11(A)に示すように変換し、入出力IF24から信号線11へ出力する。ここで指令データは、その変換の直前に設定されたマスタ側アイドル期間TMIに対するオンパルス幅TMの比率RMにて表される。特に本実施形態において指令データを表す比率RMは、開度値に対して線形関係を有するように設定される。図12はその設定例を示しており、指令データが「0度」であるとき比率RMが「100%」に設定され、指令データが「45度」であるとき比率RMが「200%」に設定され、指令データが「90度」であるとき比率RMが「300%」に設定される。
【0066】
こうした処理によりエンジン制御装置220から信号線11へ出力された指令データは、吸気制御装置210の入出力IF34にて順次受信される。そして、図11(B)に示すように吸気制御装置210は、エンジン制御装置220から指令データを受信する毎に、装置210自身の負荷状態等に基づいてスレーブ側アイドル期間TSIを設定する。
【0067】
また、吸気制御装置210は、指令データの受信後、設定したスレーブ側アイドル期間TSIが経過するまでに、状態量データを生成する。ここで状態量データは、吸気流制御弁152の実開度を表すものであり、第二実施形態の場合と同様に「0度」から「90度」の間の開度値とされる。
【0068】
さらに吸気制御装置210は、指令データの受信後、設定したスレーブ側アイドル期間TSIが経過すると、その経過の直前に生成した状態量データを図11(B)に示すように変換し、入出力IF34から信号線11へ出力する。ここで状態量データは、その変換の直前に設定されたスレーブ側アイドル期間TSIに対するオンパルス幅TSの比率RSにて表される。特に本実施形態において状態量データを表す比率RSは、開度値に対して線形関係を有するように設定される。図13はその設定例を示しており、状態量データが「0度」であるとき比率RSが「100%」に設定され、状態量データが「45度」であるとき比率RSが「200%」に設定され、状態量データが「90度」であるとき比率RSが「300%」に設定される。
【0069】
こうした処理により吸気制御装置210から信号線11へ出力された状態量データは、エンジン制御装置220の入出力IF24にて順次受信される。故にエンジン制御装置220では、スレーブ側アイドル期間TSIとそれに続くオンパルス幅TSとを検知して、それらの比率RSを算出することで、状態量データの内容を把握し、以降の指令データの生成や内燃式エンジン1の制御に反映させることができる。また、吸気制御装置210では、上述した処理とは別に、エンジン制御装置220から受信した指令データの内容をメモリ212に記憶し、指令データの目標開度に従う駆動信号を吸気流制御弁152の駆動装置156に対して与える処理も行う。このとき指令データの内容の把握は、マスタ側アイドル期間TMIとそれに続くオンパルス幅TMとを検知して、それらの比率RMを算出することにより可能となる。
【0070】
以上説明した第三実施形態によると、エンジン制御装置220は、吸気制御装置210からのデータ受信に応答して当該装置210へのデータ送信を行い、また吸気制御装置210は、エンジン制御装置220からのデータ受信に応答して当該装置220へのデータ送信を行う。故に制御装置220,210間では、図11に示すように、一方向のデータ伝送と他方向のデータ伝送とが同一経路において交互に繰り返される。しかもエンジン制御装置220は、吸気制御装置210からのデータ受信後、マスタ側アイドル期間TMIが経過すると、データ送信を行い、また吸気制御装置210は、エンジン制御装置220からのデータ受信後、スレーブ側アイドル期間TSIが経過すると、データ送信を行う。故に制御装置220,210間では、図11(C)に示すように、一方向のデータ伝送と他方向のデータ伝送とが同時に行われることがなく、重畳しない。これらのことより第三実施形態では、同一経路による双方向通信を実現して、その通信時間を短縮することが可能になる。
【0071】
さらに第三実施形態によると、制御装置220,210間において伝送される指令データ及び状態量データは、アイドル期間TMI,TSIに対するオンパルス幅TM,TSの比率RM,RSにて表される。故に、第一実施形態と同様の原理によってコストの低減と通信精度の向上とが図られるのみならず、データ伝送の重畳防止効果をもたらす各アイドル期間TMI,TSIが各データの表現にも利用されることによってデータの伝送効率が高められる。また、第三実施形態のオンパルス幅TM,TSや比率RM,RSは、第一実施形態のオンパルス幅Tm,Tsや比率Rm,Rsに比べて設定自由度が高いので、双方向通信を実現するプログラムを簡素化してコストを低減することができる。
【0072】
またさらに第三実施形態によると、各制御装置220,210では、負荷状態に応じて各アイドル期間TMI,TSIを逐次調整することができる。故に、例えば内燃式エンジン1の高速回転時等、内燃式エンジン1の制御によってエンジン制御装置220の制御処理負荷が大きくなるときには、図14に示すようにマスタ側アイドル期間TMIを延長してエンジン制御装置220の通信負荷を軽減することができる。また、内燃式エンジン1の高速回転時等、エンジン制御装置220の制御処理負荷が大きく且つ吸気流制御弁152の開度を保持しておくだけでよいときには、図15に示すようにスレーブ側アイドル期間TSIを延長してエンジン制御装置220の通信負荷を軽減することができる。尚、勿論、内燃式エンジン1の高速回転時等にアイドル期間TMI,TSIの双方を延長してエンジン制御装置220の通信負荷を大幅に軽減することも可能である。
【0073】
このように第三実施形態によっても、短時間且つ高精度な通信の下、高応答性且つ高精度な分散制御を実現しつつ、コストの低減に貢献することができる。
尚、第三実施形態では、指令データが特許請求の範囲に記載の「マスタデータ」に相当し、状態量データが特許請求の範囲に記載の「スレーブデータ」に相当する。
【0074】
(第四実施形態)
図16に示すように、本発明の第四実施形態は第三実施形態の変形例である。第四実施形態による分散制御システム300の通信システム302では、吸気系350の吸気流制御弁152の実開度を表す信号に加え、診断結果を表す信号を吸気制御装置310が吸気流制御弁152の駆動装置352から受け取るようになっている。ここで診断結果とは、駆動装置352が自身の異常と吸気流制御弁152の実開度の検出異常とを診断した結果である。尚、以下の説明では、駆動装置352と実開度検出との双方に異常が認められないときの診断結果を「正常」、駆動装置352に異常が認められたときの診断結果を「装置異常」、実開度検出に異常が認められたときの診断結果を「検出異常」という。
また、通信システム302では、吸気流制御弁152の駆動装置352等の車両電装品に電力を供給する車両の電源306がエンジン制御装置320の入出力IF24に接続されており、エンジン制御装置320は当該電源306の電圧値を監視する。
【0075】
このような通信システム302において各制御装置320,310は、内燃式エンジン1の始動に応じて起動し、メモリ322,312に記憶されているプログラムをCPU21,31により実行することで、それぞれマスタ局及びスレーブ局として機能して双方向通信を実現する。
以下、通信システム302による双方向通信について詳しく説明する。尚、以下の説明では、信号線11の電圧レベルを高(H)レベルから低(L)レベルへ変化させる各制御装置320,310の出力を、「オンパルス」の出力とする。
【0076】
図17(A)に示すようにエンジン制御装置320は、起動直後と、吸気制御装置310からスレーブデータを受信する毎に、マスタ側アイドル期間TMIを設定する。ここでエンジン制御装置320の起動直後における一回目のマスタ側アイドル期間TMIの設定は、第三実施形態の場合と同様である。
【0077】
一方、エンジン制御装置320の起動後に一回目のスレーブデータを受信して行われる二回目のマスタ側アイドル期間TMIの設定では、後に出力するマスタデータの種類を選択し、その選択した種類に応じてマスタ側アイドル期間TMIを変化させる。ここでマスタデータは、吸気流制御弁152の目標開度を指令する指令データと、電源306の電圧値を表す監視データの二種類である。また、エンジン制御装置320が起動後一回目のスレーブデータを受信する前に出力する一回目のマスタデータを初期マスタデータとすると、二回目のマスタ側アイドル期間TMIは、初期マスタデータを表すオンパルス幅TM0に対する比率PM0がマスタデータの種類を表すものとされる。図18(A)は、二回目のマスタ側アイドル期間TMIを表す比率PM0の設定例を示しており、選択したマスタデータが指令データであるとき比率PM0が「100%以下」の値(例えば50%)に設定され、選択したマスタデータが監視データであるとき比率PM0が「100%超」の値(例えば200%)に設定される。
【0078】
また一方、エンジン制御装置320の起動後、二回目以降のスレーブデータの受信毎に行われる三回目以降のマスタ側アイドル期間TMIの設定では、マスタデータの種類の選択後、マスタ側アイドル期間TMIを変化させる方法が二回目のマスタ側アイドル期間TMIの場合と異なっている。具体的に三回目以降のマスタ側アイドル期間TMIは、その前の回に設定のマスタ側アイドル期間TMIに対する比率PMがマスタデータの種類を表すものとされる。図18(B)は、三回目以降のマスタ側アイドル期間TMIを表す比率PMの設定例を示しており、選択したマスタデータが指令データであるとき比率PMが「100%以下」の値(例えば50%)に設定され、選択したマスタデータが監視データであるとき比率PMが「100%超」の値(例えば200%)に設定される。
【0079】
このようなマスタ側アイドル期間TMIの設定(以下、単にTMI設定という)に続いてエンジン制御装置320は、起動後又はスレーブデータの受信から当該設定期間TMIが経過するまでに、指令データ又は監視データをマスタデータとして生成する。ここで一回目のTMI設定に続く場合と、マスタデータとして指令データが選択された二回目及び三回目以降のTMI設定に続く場合は、第三実施形態と同様な指令データが生成される。一方、マスタデータとして監視データが選択された二回目及び三回目以降のTMI設定に続く場合、電源306の電圧値の監視結果に基づいて「8V」から「16V」の間の監視データが生成される。
【0080】
エンジン制御装置320はさらに、起動後又はスレーブデータの受信後、設定したマスタ側アイドル期間TMIが経過すると、その経過直前にマスタデータとして生成した指令データ又は監視データを図17(A)に示すように変換し、入出力IF24から信号線11へ出力する。ここで指令データ及び監視データは、その変換直前に設定したマスタ側アイドル期間TMIに対するオンパルス幅TM(TM0を含む)の比率rMにて表される。特に本実施形態において指令データを表す比率rMは、開度値に対して線形関係を有するように設定される。図19(A)はその設定例を示しており、指令データが「0度」であるとき比率rMが「100%」に設定され、指令データが「45度」であるとき比率rMが「200%」に設定され、指令データが「90度」であるとき比率rMが「300%」に設定される。また、本実施形態において監視データを表す比率rMは、電圧値に対して線形関係を有するように設定される。図19(B)はその設定例を示しており、監視データが「8V」であるとき比率rMが「100%」に設定され、監視データが「12V」であるとき比率rMが「200%」に設定され、監視データが「16V」であるとき比率rMが「300%」に設定される。
【0081】
こうした処理によりエンジン制御装置320から信号線11へ出力されたマスタデータは、吸気制御装置310の入出力IF34にて順次受信される。そして、図17(B)に示すように吸気制御装置310は、エンジン制御装置320からマスタデータを受信する毎に、スレーブ側アイドル期間TSIを設定する。ここで、吸気制御装置310の起動後に一回目のマスタデータを受信して行われる一回目のスレーブ側アイドル期間TSIの設定では、予め定めたれた固定値をメモリ222から読み出してスレーブ側アイドル期間TSIとする。
【0082】
一方、吸気制御装置310の起動後に二回目のマスタデータを受信して行われる二回目のスレーブ側アイドル期間TSIの設定では、後に出力するスレーブデータの種類を選択し、その選択した種類に応じてスレーブ側アイドル期間TSIを変化させる。ここでスレーブデータは、吸気流制御弁152の実開度を表す状態量データと、駆動装置352による診断結果を表す診断データの二種類である。また、吸気制御装置310が起動後二回目のマスタデータを受信する前に出力する一回目のスレーブデータを初期スレーブデータとすると、二回目のスレーブ側アイドル期間TSIは、初期スレーブデータを表すオンパルス幅TS0に対する比率PS0がスレーブデータの種類を表すものとされる。図20(A)は、二回目のスレーブ側アイドル期間TSIを表す比率PS0の設定例を示しており、選択したスレーブデータが状態量データであるとき比率PS0が「100%以下」の値(例えば50%)に設定され、選択したスレーブデータが診断データであるとき比率PS0が「100%超」の値(例えば200%)に設定される。
【0083】
また一方、吸気制御装置310の起動後、三回目以降のマスタデータの受信毎に行われる三回目以降のスレーブ側アイドル期間TSIの設定では、スレーブデータの種類の選択後、スレーブ側アイドル期間TSIを変化させる方法が二回目のスレーブ側アイドル期間TSIの場合と異なっている。具体的に三回目以降のスレーブ側アイドル期間TSIは、その前の回に設定のスレーブ側アイドル期間TSIに対する比率PSがスレーブデータの種類を表すものとされる。図20(B)は、三回目以降のスレーブ側アイドル期間TSIを表す比率PSの設定例を示しており、選択したスレーブデータが状態量データであるとき比率PSが「100%以下」の値(例えば50%)に設定され、選択したスレーブデータが診断データであるとき比率PSが「100%超」の値(例えば200%)に設定される。
【0084】
このようなスレーブ側アイドル期間TSIの設定(以下、単にTSI設定という)に続いて吸気制御装置310は、マスタデータの受信から当該設定期間TSIが経過するまでに、状態量データ又は診断データをスレーブデータとして生成する。ここで一回目のTSI設定に続く場合と、スレーブデータとして状態量データが選択された二回目及び三回目以降のTSI設定に続く場合は、第三実施形態と同様な状態量データが生成される。一方、スレーブデータとして診断データが選択された二回目及び三回目以降のTSI設定に続く場合、「正常」、「装置異常」、「検出異常」のいずれかの診断結果を表す診断データが生成される。
【0085】
吸気制御装置310はさらに、マスタデータの受信後、設定したスレーブ側アイドル期間TSIが経過すると、その経過直前にスレーブデータとして生成した状態量データ又は診断データを図17(B)に示すように変換し、入出力IF24から信号線11へ出力する。ここで状態量データ及び診断データは、その変換直前に設定したスレーブ側アイドル期間TSIに対するオンパルス幅TS(TS0を含む)の比率rSにて表される。特に本実施形態において状態量データを表す比率rSは、開度値に対して線形関係を有するように設定される。図21(A)はその設定例を示しており、状態量データが「0度」であるとき比率rSが「100%」に設定され、状態量データが「45度」であるとき比率rSが「200%」に設定され、状態量データが「90度」であるとき比率rSが「300%」に設定される。また、本実施形態において診断データを表す比率rSは、各診断結果に対して離散値をとるように設定される。図21(B)はその設定例を示しており、診断結果が「正常」であるとき比率rSが「100%」に設定され、診断結果が「装置異常」であるとき比率rSが「200%」に設定され、診断結果が「検出異常」であるとき比率rSが「300%」に設定される。
【0086】
こうした処理により吸気制御装置310から信号線11へ出力されたスレーブデータは、エンジン制御装置320の入出力IF24にて順次受信される。故にエンジン制御装置320では、スレーブ側アイドル期間TSIとそれに続くオンパルス幅TSとを検知して、それらの比率rSを算出することで、スレーブデータの内容を把握し、以降の指令データの生成や内燃式エンジン1の制御に反映させることができる。また、吸気制御装置310では、上述した処理とは別に、エンジン制御装置320から受信した指令データ及び監視データの内容をメモリ312に記憶し、指令データの目標開度に従う駆動信号を監視データに応じて補正しつつ当該駆動信号を駆動装置352に対して与える処理も行う。このとき指令データ及び監視データの内容の把握は、マスタ側アイドル期間TMIとそれに続くオンパルス幅TMとを検知して、それらの比率rMを算出することにより可能となる。
【0087】
以上説明した第四実施形態によると、エンジン制御装置320は、吸気制御装置310からのデータ受信後マスタ側アイドル期間TMIが経過すると、吸気制御装置310へのデータ送信を行う。また、吸気制御装置310は、エンジン制御装置320からのデータ受信後スレーブ側アイドル期間TSIが経過すると、エンジン制御装置320へのデータ送信を行う。したがって、制御装置320,310間では、図17に示すように一方向のデータ伝送と他方向のデータ伝送とが交互に実現されて、重畳しないので、同一経路による双方向通信の通信時間の短縮が可能になる。
【0088】
さらに第四実施形態によると、制御装置320,310間において伝送されるマスタデータ及びスレーブデータは、それらデータの重畳防止効果をもたらすアイドル期間TMI,TSIに対するオンパルス幅TM,TSの比率rM,rSにて表され、しかも当該比率rM,rSは設定自由度が高い。したがって、コストの低減と通信精度の向上とを図ることができるのみならず、データの伝送効率を高めることができる。
【0089】
またさらに第四実施形態によると、エンジン制御装置320が起動して二回目以降のスレーブデータを受信した後、三回目以降のマスタデータを出力する前には、三回目以降のマスタ側アイドル期間TMIの設定が行われる。この設定によれば、三回目以降のマスタ側アイドル期間TMIとその前の回のマスタ側アイドル期間TMIとの比率PMにて三回目以降のマスタデータの種類が表される。故に吸気制御装置310では、起動後三回目以降のマスタ側アイドル期間TMIとその前の回のマスタ側アイドル期間TMIを検知して、それらの比率PMを算出することで、起動後三回目以降に受信するマスタデータの種類を識別することができる。また同様に第四実施形態によると、吸気制御装置310が起動して三回目以降のマスタデータを受信した後、三回目以降のスレーブデータを出力する前には、三回目以降のスレーブ側アイドル期間TSIの設定が行われる。この設定によれば、三回目以降のスレーブ側アイドル期間TSIとその前の回のスレーブ側アイドル期間TSIとの比率PSにて三回目以降のスレーブデータの種類が表される。故にエンジン制御装置320では、起動後三回目以降のスレーブ側アイドル期間TSIとその前の回のスレーブ側アイドル期間TSIとを検知して、それらの比率PSを算出することで、起動後三回目以降に受信するスレーブデータの種類を識別することができる。これらのことより第四実施形態では、アイドル期間TMI,TSIを有効利用して複数種類のマスタデータ及びスレーブデータを伝送することができるので、データの伝送効率がより一層高められる。
【0090】
加えて第四実施形態によると、エンジン制御装置320が起動後に一回目のスレーブデータを受信した後、二回目のマスタデータを出力する前には、二回目のマスタ側アイドル期間TMIの設定が行われる。この設定によれば、二回目のマスタ側アイドル期間TMIとその前の回となる起動直後のマスタ側アイドル期間TMIとの比率ではなく、二回目のマスタ側アイドル期間TMIと初期マスタデータに対応するオンパルス幅TM0との比率PM0にて、二回目のマスタデータの種類が表される。ここで幅TM0を持つオンパルスは、電気的に不安定な起動直後のマスタ側アイドル期間TMIを過ぎてから出力されるものである。故に吸気制御装置310では、起動後二回目のマスタ側アイドル期間TMIと初期マスタデータに対応のオンパルス幅TM0とを検知して、それらの比率PMを算出することで、起動後二回目に受信するマスタデータの種類を識別することができる。
【0091】
さらに加えて第四実施形態によると、吸気制御装置310が起動後に二回目のマスタデータを受信した後、二回目のスレーブデータを出力する前には、二回目のスレーブ側アイドル期間TSIの設定が行われる。この設定によれば、二回目のスレーブ側アイドル期間TSIと初期スレーブデータに対応するオンパルス幅TS0との比率PS0にて、二回目のスレーブデータの種類が表される。故にエンジン制御装置320では、起動後二回目のスレーブ側アイドル期間TSIと初期スレーブデータに対応のオンパルス幅TS0とを検知して、それらの比率PSを算出することで、起動後二回目に受信するスレーブデータの種類を識別することができる。したがって、この場合にも、スレーブ側アイドル期間TSIを複数種類のデータ伝送に有効利用することができるので、データの伝送効率がより一層高められる。
このように第四実施形態によっても、短時間且つ高精度な通信の下、高応答性且つ高精度な分散制御を実現しつつ、コストの低減に貢献することができる。
【0092】
ここまで、本発明の複数の実施形態について説明してきたが、本発明はそれらの実施形態に限定して解釈されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において種々の実施形態に適用可能である。
例えば第一及び第二実施形態では、エンジン制御装置20,120における通信周期Tcを可変としてもよい。尚、この場合においても吸気制御装置30,130,140は、パルスのエッジ検出によって通信周期Tcを正確に把握することができる。また、この場合には、各制御装置20,30,120,130,140におけるインターバル期間Tiを通信周期Tcに応じて可変とする。
【0093】
さらに第一実施形態では、吸気制御装置30の初期処理において、受信した指令データに従う弁開度の指令を実施しないようにしてもよい。また、第二実施形態では、吸気制御装置130,140による対象特定データの受信が内燃式エンジン1の始動後、初めてであった場合に、当該対象特定データが吸気制御装置130,140自身を特定しているときには、後続する指令データを受信してそれに従う弁開度を与える処理を実施してもよい。
【0094】
またさらに第一及び第二実施形態では、伝送データを、通信周期Tc又はインターバル期間Tiに対するオンパルス幅Tm,Ts,Tm1,Tm2,Ts1,Ts2の比率Rm,Rs,Rm1,Rm2,Rs1,Rs2にて表す代わりに、通信周期Tc又はインターバル期間Tiに対するオフパルス幅の比率にて表してもよい。また、第一及び第二実施形態において通信周期Tcを割り出すためのエッジ検出は、オンパルスの立ち上がりエッジ(オフパルスの立ち下がりエッジ)について実施する代わりに、オンパルスの立ち下がりエッジ(オフパルスの立ち上がりエッジ)について実施してもよいし、それらの両方について実施してもよい。尚、これらの変形例では、「オフパルス」の出力は、信号線や共通バスの電圧レベルを低レベルから高レベルへ変化させる各制御装置の出力を意味する。
加えて第一及び第二実施形態では、制御データ及び状態量データをそれぞれ期間Ti,Trに二つ以上伝送するようにしてもよい。
【0095】
また加えて第二実施形態では、エンジン制御装置120と吸気制御装置130,140との接続トポロジーをスター型あるいはリング型としてもよい。また、第二実施形態では、スレーブ局としての吸気制御装置を三つ以上、共通バス110に接続してもよく、例えば吸気制御装置130,140に加えて第一実施形態の吸気制御装置30を共通バス110に接続する。さらにまた、第二実施形態では、期間Tiにおける対象特定データと指令データの出力順序を逆にしてもよいし、期間Trにおける自己特定データと状態量データの出力順序を逆にしてもよい。
【0096】
さらに加えて第三及び第四実施形態では、伝送データを、アイドル期間TMI,TSIに対するオンパルス幅TM,TSの比率RM,RS,rM,rSにて表す代わりに、アイドル期間TMI,TSIに対するオフパルス幅の比率にて表してもよい。また、第四実施形態においてオフパルス幅の比率を伝送データの表現に利用する場合には、二回目のマスタ側アイドル期間TMI及び二回目のスレーブ側アイドル期間TSIと、初期マスタデータ及び初期スレーブデータに対応のオフパルス幅との比率にて、二回目のマスタデータ及び二回目のスレーブデータの種類を表すようにしてもよい。尚、これらの変形例では、「オフパルス」の出力は、信号線の電圧レベルを低レベルから高レベルへ変化させる各制御装置の出力を意味する。この他、第四実施形態では、二回目のスレーブ側アイドル期間TSIの設定により、二回目のスレーブ側アイドル期間TSIとその前の回となる一回目のスレーブ側アイドル期間TSIとの比率にて二回目のスレーブデータの種類を表すようにしてもよい。
【0097】
またさらに加えて第一〜第四実施形態では、車両用の分散制御システム10,100,200,300におけるエンジン制御装置20,120,220,320と吸気制御装置30,130,140,210,310との間の双方向通信に本発明を適用した例について説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。即ち車両用の分散制御システムにおいて、マスタ局としての制御装置と、スレーブ局としての少なくとも一つの制御装置との間の双方向通信であれば、本発明を適用することができる。またその他、車両用以外の分散制御システムにおける制御装置間の双方向通信や、分散制御システムを構成しない通信システムにおける二局間の双方向通信に本発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】第一実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図2】第一実施形態による分散制御システムを示す構成図である。
【図3】図2のIF回路を示す回路図である。
【図4】第一実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図5】第一実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図6】第二実施形態による分散制御システムを示す構成図である。
【図7】第二実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図8】第二実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図9】第二実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図10】第三実施形態による分散制御システムを示す構成図である。
【図11】第三実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図12】第三実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図13】第三実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図14】第三実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図15】第三実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図16】第四実施形態による分散制御システムを示す構成図である。
【図17】第四実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図18】第四実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図19】第四実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図20】第四実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【図21】第四実施形態による通信方法を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0099】
1 内燃式エンジン(制御対象)、2,150,250,350 吸気系(制御対象)、3 エンジン電装品、4 車両センサ、5 スロットル弁、6 駆動装置、10,100,200,300 分散制御システム、11,112,113,114 信号線、12,102,202,302 通信システム、20,120,220,320 エンジン制御装置(マスタ局)、22,32,122,132,142,212,222,312,322 メモリ、25,35,125,135,145 IF回路、30,210,310 吸気制御装置(スレーブ局)、110 共通バス、130 第一吸気制御装置(スレーブ局)、140 第二吸気制御装置(スレーブ局)、151 吸気管長切換弁、152 吸気流制御弁、155,156,352 駆動装置、306 電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスタ局とスレーブ局との間において同一経路による双方向通信を通信周期毎に行う通信システムであって、
前記マスタ局は、前記通信周期の開始から前記通信周期より短いインターバル期間が経過するまでに、前記通信周期に対するパルス幅の比率にて表したマスタデータを前記スレーブ局へ送信し、
前記スレーブ局は、前記通信周期における前記インターバル期間後の残期間に、前記インターバル期間に対するパルス幅の比率にて表したスレーブデータを前記マスタ局へ送信することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記スレーブ局は、前記マスタデータを表すパルスのエッジを検出することにより前記通信周期の開始を認識することを特徴とする請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信周期及び前記インターバル期間は固定されることを特徴とする請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記マスタ局は、複数の前記マスタデータを前記インターバル期間においてシリアルに前記スレーブ局へ送信することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記スレーブ局は、複数の前記スレーブデータを前記残期間においてシリアルに前記マスタ局へ送信することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
一つの前記マスタ局及び複数の前記スレーブ局を備え、
前記マスタ局は、送信先の前記スレーブ局を特定する送信先特定データを含む複数の前記マスタデータを前記インターバル期間においてシリアルに前記通信経路へ出力し、
各前記スレーブ局は、自身を特定した前記送信先特定データと同一の前記インターバル期間に前記マスタ局から出力された前記マスタデータを受信することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項7】
前記マスタ局は、前記送信先特定データの出力後に前記送信先特定データ以外の前記マスタデータを出力することを特徴とする請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
各前記スレーブ局は、自身を特定した前記送信先特定データを受信した場合に応答し、自身を特定する送信元特定データを含む複数の前記スレーブデータを前記残期間においてシリアルに前記マスタ局へ送信することを特徴とする請求項6又は7に記載の通信システム。
【請求項9】
各前記スレーブ局は、前記送信元特定データの送信後に前記送信元特定データ以外の前記スレーブデータを送信することを特徴とする請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記マスタ局及び各前記スレーブ局が共通バスにより相互接続され、当該共通バスが前記マスタ局と各前記スレーブ局との間の通信経路を形成することを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の通信システムからなり、前記マスタ局及び前記スレーブ局が各々の制御対象を分散制御することを特徴とする分散制御システム。
【請求項12】
前記マスタ局は、前記スレーブ局の制御対象の制御状態を指令する指令データを前記マスタデータとして生成し、
前記スレーブ局は、自身の制御対象の状態量を表す状態量データを前記スレーブデータとして生成することを特徴とする請求項11に記載の分散制御システム。
【請求項13】
マスタ局とスレーブ局との間において同一経路による双方向通信を通信周期毎に行う通信方法であって、
前記通信周期の開始から前記通信周期より短いインターバル期間が経過するまでに、前記通信周期に対するパルス幅の比率にて表したマスタデータを前記マスタ局から前記スレーブ局へ送信し、
前記通信周期における前記インターバル期間後の残期間に、前記インターバル期間に対するパルス幅の比率にて表したスレーブデータを前記スレーブ局から前記マスタ局へ送信することを特徴とする通信方法。
【請求項14】
前記スレーブ局において、前記マスタデータを表すパルスのエッジを検出することにより前記通信周期の開始を認識することを特徴とする請求項13に記載の通信方法。
【請求項15】
前記通信周期及び前記インターバル期間は固定されることを特徴とする請求項13又は14に記載の通信方法。
【請求項16】
複数の前記マスタデータを前記インターバル期間においてシリアルに前記マスタ局から前記スレーブ局へ送信することを特徴とする請求項13〜15のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項17】
複数の前記スレーブデータを前記残期間においてシリアルに前記スレーブ局から前記マスタ局へ送信することを特徴とする請求項13〜16のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項18】
一つの前記マスタ局と複数の前記スレーブ局との間における通信方法であって、
送信先の前記スレーブ局を特定する送信先特定データを含む複数の前記マスタデータを前記インターバル期間においてシリアルに前記マスタ局から前記通信経路へ出力し、
各前記スレーブ局において、自身を特定した前記送信先特定データと同一の前記インターバル期間に前記マスタ局から出力された前記マスタデータを受信することを特徴とする請求項13〜17のいずれか一項に記載の通信方法。
【請求項19】
前記送信先特定データの出力後に前記送信先特定データ以外の前記マスタデータを前記マスタ局から出力することを特徴とする請求項18に記載の通信方法。
【請求項20】
自身を特定した前記送信先特定データを受信した前記スレーブ局を応答スレーブ局として、前記応答スレーブ局を特定する送信元特定データを含む複数の前記スレーブデータを前記残期間おいてシリアルに前記応答スレーブ局から前記マスタ局へ送信することを特徴とする請求項18又は19に記載の通信方法。
【請求項21】
前記応答スレーブ局において、前記送信元特定データの送信後に前記送信元特定データ以外の前記スレーブデータを送信することを特徴とする請求項20に記載の通信方法。
【請求項22】
前記マスタ局と前記スレーブ局との間において請求項13〜21のいずれか一項に記載の通信方法により双方向通信を行いつつ、前記マスタ局及び前記スレーブ局の各々の制御対象を分散制御することを特徴とする分散制御方法。
【請求項23】
前記マスタ局において、前記スレーブ局の制御対象の制御状態を指令する指令データを前記マスタデータとして生成し、
前記スレーブ局において、自身の制御対象の状態量を表す状態量データを前記スレーブデータとして生成することを特徴とする請求項22に記載の分散制御方法。
【請求項24】
マスタ局とスレーブ局との間において同一経路による双方向通信を行う通信システムであって、
前記マスタ局は、前記スレーブ局からスレーブデータを受信した後、自身で定めたマスタ側アイドル期間が経過すると、当該マスタ側アイドル期間に対するパルス幅の比率にて表したマスタデータを前記スレーブ局へ送信し、
前記スレーブ局は、前記マスタ局からマスタデータを受信した後、自身で定めたスレーブ側アイドル期間が経過すると、当該スレーブ側アイドル期間に対するパルス幅の比率にて表したスレーブデータを前記マスタ局へ送信することを特徴とする通信システム。
【請求項25】
前記マスタ局は、スレーブデータの受信毎にマスタ側アイドル期間を設定し、
前記スレーブ局は、マスタデータの受信毎にスレーブ側アイドル期間を設定することを特徴とする請求項24に記載の通信システム。
【請求項26】
前記マスタ局は、スレーブデータの受信後における今回のマスタデータの送信前に、前回のマスタデータの送信直前のマスタ側アイドル期間に対する今回のマスタ側アイドル期間の比率が今回送信するマスタデータの種類を表す当該今回のマスタ側アイドル期間を設定し、
前記スレーブ局は、マスタデータの受信後における今回のスレーブデータの送信前に、前回のスレーブデータの送信直前のスレーブ側アイドル期間に対する今回のスレーブ側アイドル期間の比率が今回送信するスレーブデータの種類を表す当該今回のスレーブ側アイドル期間を設定することを特徴とする請求項25に記載の通信システム。
【請求項27】
前記マスタ局及び前記スレーブ局の起動後にマスタデータの伝送をスレーブデータの伝送より先に行う通信システムであって、
前記マスタ局は、起動後一回目のマスタデータの送信後に起動後一回目のスレーブデータを受信した場合、当該一回目のマスタデータに対応のパルス幅に対する起動後二回目のマスタ側アイドル期間の比率が起動後二回目に送信のマスタデータの種類を表す当該二回目のマスタ側アイドル期間を設定することを特徴とする請求項26に記載の通信システム。
【請求項28】
請求項24〜27のいずれか一項に記載の通信システムからなり、前記マスタ局及び前記スレーブ局が各々の制御対象を分散制御することを特徴とする分散制御システム。
【請求項29】
前記マスタ局は、前記スレーブ局の制御対象の制御状態を指令する指令データをマスタデータとして生成し、
前記スレーブ局は、自身の制御対象の状態量を表す状態量データをスレーブデータとして生成することを特徴とする請求項28に記載の分散制御システム。
【請求項30】
マスタ局とスレーブ局との間において同一経路による双方向通信を行う通信方法であって、
前記マスタ局が前記スレーブ局からスレーブデータを受信した後、前記マスタ局が定めたマスタ側アイドル期間が経過すると、当該マスタ側アイドル期間に対するパルス幅の比率にて表したマスタデータを前記マスタ局から前記スレーブ局へ送信し、
前記スレーブ局が前記マスタ局からマスタデータを受信した後、前記スレーブ局が定めたスレーブ側アイドル期間が経過すると、当該スレーブ側アイドル期間に対するパルス幅の比率にて表したスレーブデータを前記スレーブ局から前記マスタ局へ送信することを特徴とする通信方法。
【請求項31】
前記マスタ局において、スレーブデータの受信毎にマスタ側アイドル期間を設定し、
前記スレーブ局において、マスタデータの受信毎にスレーブ側アイドル期間を設定することを特徴とする請求項30に記載の通信方法。
【請求項32】
前記マスタ局において、スレーブデータの受信後における今回のマスタデータの送信前に、前回のマスタデータの送信直前のマスタ側アイドル期間に対する今回のマスタ側アイドル期間の比率が今回送信するマスタデータの種類を表す当該今回のマスタ側アイドル期間を設定し、
前記スレーブ局において、マスタデータの受信後における今回のスレーブデータの送信前に、前回のスレーブデータの送信直前のスレーブ側アイドル期間に対する今回のスレーブ側アイドル期間の比率が今回送信するスレーブデータの種類を表す当該今回のスレーブ側アイドル期間を設定することを特徴とする請求項31に記載の通信方法。
【請求項33】
前記マスタ局及び前記スレーブ局の起動後にマスタデータの伝送をスレーブデータの伝送より先に行う通信方法であって、
前記マスタ局において、起動後一回目のマスタデータの送信後に起動後一回目のスレーブデータを受信した場合、当該一回目のマスタデータに対応のパルス幅に対する起動後二回目のマスタ側アイドル期間の比率が起動後二回目に送信のマスタデータの種類を表す当該二回目のマスタ側アイドル期間を設定することを特徴とする請求項32に記載の通信方法。
【請求項34】
前記マスタ局と前記スレーブ局との間において請求項30〜33のいずれか一項に記載の通信方法により双方向通信を行いつつ、前記マスタ局及び前記スレーブ局の各々の制御対象を分散制御することを特徴とする分散制御方法。
【請求項35】
前記マスタ局において、前記スレーブ局の制御対象の制御状態を指令する指令データをマスタデータとして生成し、
前記スレーブ局において、自身の制御対象の状態量を表す状態量データをスレーブデータとして生成することを特徴とする請求項34に記載の分散制御方法。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−135163(P2007−135163A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338825(P2005−338825)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】