説明

通信システム

【課題】複数の携帯機から略同時に通信信号が送信されたとしても、それぞれの携帯機を個別に識別できる通信システムを提供する。
【解決手段】それぞれ互いに異なる周波数パターンに従って複数の携帯機から送信される通信信号を、通信機の受信部で受信する。通信機の受信部で受信された複数の携帯機から送信された通信信号は、認識部で略同じ強度毎に受信した順番にグループとして纏められ、グループとして纏めた通信信号の周波数パターンを携帯機の識別子と対応させることにより、複数の携帯機の識別子をそれぞれ個別に識別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関し、より特定的には、車両などの移動体に搭載される通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触の無線通信を用いて、無線信号の送信機に割り当てられたIDを認識するための技術が考案されている。このような技術の一例として、例えば、特許文献1に記載の非接触IDカードシステム及び識別装置(以下、従来技術と称する)が挙げられる。従来技術におけるIDカードには、“1”と“0”とを組み合わせた数列で示されるIDがそれぞれ割り当てられている。従来技術においてIDカードに割り当てられたIDを認識するときには、“1”に対応するサブキャリア周波数f1の通信信号と、“0”に対応するサブキャリア周波数f2の通信信号とを、割り当てられたIDに応じてIDカードから無線送信することにより、ID識別装置にIDを認識させる。尚、従来技術では、“0”に対応する通信信号を送信せずに“1”に対応する通信信号のみを無線送信し、“0”をID識別装置で補完させてIDカードのIDを認識させてもよい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平1−191282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、次に述べるような課題を有する。すなわち、上記従来技術では、例えば、2つのIDカードなどの複数の携帯送信機から通信信号が略同時に無線送信された場合、ID識別装置では、2つのIDカードからそれぞれ送信される通信信号を区別できないため、それぞれのIDカードのIDを認識することができない。
【0005】
それ故に、本発明では、複数の携帯機から略同時に通信信号が送信されたとしても、それぞれの携帯機を個別に識別できる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために以下に示すような特徴を有する。
第1の発明は、2以上の携帯機と、通信機とを備え、携帯機のそれぞれは、互いに異なる識別子と、当該識別子に対応する周波数のパターンとが予め定められ、当該パターンに従って予め定められた時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を送信し、通信機は、時間が経過する度に略同じ強度で受信した通信信号の周波数のパターンを、携帯機にそれぞれ定められているパターンとして予め記憶しているパターンと対応させることによって携帯機をそれぞれ識別する。
【0007】
第2の発明は、上記第1の発明に従属する発明であって、携帯機のそれぞれは、識別子に対応するパターンを記憶する識別子記憶手段と、記憶手段に記憶されているパターンに従って時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を送信する送信手段とを含む。
【0008】
第3の発明は、上記第2の発明に従属する発明であって、通信機は、それぞれの携帯機に予め定められているパターンを記憶する記憶手段と、送信手段によって送信される通信信号を受信する受信手段と、時間が経過する度に受信手段によって略同じ強度で受信したそれぞれの通信信号のパターンと記憶手段に記憶されているパターンとを対応させることによって、携帯機をそれぞれ識別する識別手段とを含む。
【0009】
第4の発明は、上記第3の発明に従属する発明であって、通信機は車両に搭載される。
【0010】
第5の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、通信機は、車両に搭載される車載機器の操作を許可するか否かの判断を要求されたとき、携帯機に対して通信信号を送信させる指示を示す指示信号を送信する指示信号送信手段を含み、携帯機のそれぞれは、指示信号を受信する指示信号受信手段を含み、送信手段は、指示信号受信手段によって指示信号が受信されたとき、識別子記憶手段に記憶されているパターンに従って周波数を変化させながら通信信号を送信する。
【0011】
第6の発明は、上記第4の発明に従属する発明であって、送信手段は、車両に搭載される車載機器を操作するための操作信号を取得したとき、記憶手段に記憶されているパターンに従って時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を送信する。
【0012】
第7の発明は、上記第3の発明に従属する発明であって、通信機は、識別手段によって識別された携帯機の内、受信手段によって受信されたときの強度が最も高く、略同じ強度で受信された通信信号を送信した携帯機とさらに通信をする通信手段をさらに含む。
【0013】
第8の発明は、上記第3の発明に従属する発明であって、通信機は、識別手段によって識別された携帯機の内、受信手段によって受信されたときの強度が最も低く、略同じ強度で受信された通信信号を送信した携帯機とさらに通信をする通信手段をさらに含む。
【0014】
第9の発明は、上記第7乃至第8の発明のいずれか1つに従属する発明であって、送信手段は、通信信号を送信するとき、予め定められた情報量の情報を示す少なくとも2つの信号を、パターンに従って時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号として送信する。
【0015】
第10の発明は、互いに異なる識別子と、当該識別子に対応する周波数のパターンとが予め定められ、当該パターンに従って予め定められた時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を携帯機から送信させる送信ステップと、通信機において、時間が経過する度に略同じ強度で受信した通信信号の周波数のパターンを、携帯機にそれぞれ定められているパターンとして予め記憶しているパターンと対応させることによって携帯機をそれぞれ識別する認識ステップとを備える。
【発明の効果】
【0016】
上記第1の発明によれば、2以上の複数の携帯機から重複するタイミングで通信信号が通信機に送信されたとしても、当該通信機においてそれぞれの通信信号に基づいて、複数の携帯機を個別に識別できる。
【0017】
上記第2の発明によれば、携帯機に記憶させた識別子に対応する周波数のパターンに従って予め定められた時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を送信させることができる。
【0018】
上記第3の発明によれば、それぞれの携帯機から送信される通信信号の周波数のパターンと、予め記憶している周波数のパターンとを通信機で対応させることによって携帯機を個別に識別できる。
【0019】
上記第4の発明によれば、車両に搭載された通信機で携帯機を個別に識別できる。
【0020】
上記第5の発明によれば、車両に搭載される車載機器の操作を許可するか否かを判断するときに、2以上の携帯機が存在したとしても、それぞれの携帯機を個別に識別できる。
【0021】
上記第6の発明によれば、2以上の携帯機から車載機器を操作するための操作信号が通信信号として送信されたとしても、それぞれの通信信号に基づいて、携帯機を個別に識別できる。
【0022】
上記第7の発明によれば、2以上の携帯機から通信信号がそれぞれ送信されたときに、送信されたそれぞれの通信信号に基づき、通信機から最も近い位置に存在する携帯機を選択して、通信を続けることができる。
【0023】
上記第8の発明によれば、2以上の携帯機から通信信号がそれぞれ送信されたときに、送信されたそれぞれの通信信号に基づき、通信機から最も遠い位置に存在する携帯機を選択して、通信を続けることができる。
【0024】
上記第9の発明によれば、少なくとも2つの信号をパターンに従って周波数を変化させながら通信信号として携帯機から送信できる。
【0025】
また、本発明に係る通信方法によれば、上述した通信システムと同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る通信システム1の概略構成を示す図
【図2】本発明に係る携帯機の構成を示す図
【図3】携帯機10から通信信号を送信するタイミングを示す図
【図4】本発明における周波数パターンの組み合わせの一例を示す図
【図5】本発明に係る通信機の構成を示す図
【図6】認識部の認識処理を説明する図
【図7】本発明における許可情報の一例を示す図
【図8】受信部の設置位置の一例を示す図
【図9】本発明に係る通信システムの動作の一例を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0027】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係る通信システム1の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係る通信システム1は、2つの携帯機10と、通信機20とを備える。尚、図2には、一例として、2つの携帯機10を備える通信システム1を示しているが、携帯機10の数は3以上であってもよい。
【0028】
図2は、本実施形態に係る携帯機10のより詳細な構成を示すブロック図である。携帯機10のそれぞれは、図2に示すように、識別子記憶部101と、送信部102とを少なくとも含む。
【0029】
識別子記憶部101は、携帯機10にそれぞれ予め定められた互いに異なる識別子を記憶している。また、識別子記憶部101は、記憶している識別子に対応させて予め定められた周波数パターンも記憶している。周波数パターンについては、後述する。
【0030】
送信部102は、通信信号を送信する指示が与えられたとき、通信信号を送信する送信処理を開始する。本実施形態に係る送信部102は、一例として、予め定められた情報量の情報を示すフレームを通信信号として送信する。フレームを送信する送信処理を開始すると、送信部102は、まず、識別子記憶部101に記憶されている識別子に対応する周波数パターンを読み出す。周波数パターンを読み出すと送信部102は、読み出した周波数パターンに従って、予め定められた時間が経過する度に、周波数を変化させながらフレームを送信する。尚、通信信号を送信する指示が送信部102に与えられるときについては後述する。
【0031】
図3は、本実施形態に係る送信部102の送信処理において送信されるフレームの送信タイミングの一例を示す図である。図3には、一例として、送信部102が、1度の送信処理において、3つのフレームfr1乃至fr3のそれぞれを、最初に送信するフレームfr1の送信を開始する開始時点ts1から、1つのフレームの送信の完了にかかる送信時間tfで、予め定められた時間間隔t1が経過する度に、周波数f1→周波数f1→周波数f2という周波数パターンに従って周波数を変化させながら順番に送信する場合を示している。
【0032】
より具体的には、図3には、一例として、送信部102が、最初の周波数f1のフレームfr1を送信時間tfで開始時点ts1から送信し、最初のフレームfr1の送信を完了してから予め定められた時間間隔t1が経過したときに、2番目の周波数f1のフレームfr2を送信時間tfで送信し、2番目のフレームfr2の送信を完了してから予め定められた時間間隔t1が経過したときに、3番目の周波数f2のフレームfr3を送信時間tfで送信する場合を示している。尚、送信部102は、フレームfr1乃至fr3のそれぞれの送信の開始時点を図示しないタイマを用いて判断するものとする。
【0033】
図4は、本実施形態に係る通信機20と通信可能に製作されている全ての携帯機10の識別子記憶部101にそれぞれ予め記憶させられている識別子と周波数パターンとの一覧の一例を示す表である。図4から明らかなように、一例として、1つの周波数パターンに含まれる周波数の種類の上限が2(周波数f1、及び周波数f2)であり、図3に示すように、1度の送信処理において、3つのフレームfr1乃至fr3を携帯機10の送信部102から順番に送信する場合には、2の3乗の8通りの組み合わせの周波数パターンを定義できる。
【0034】
本実施形態に係る通信システム1では、まず、1つの周波数パターンに含まれる周波数の種類の上限と、1度の送信処理において送信するフレームの数とから定まる組み合わせの数だけ周波数パターンを予め作成する。そして、作成した周波数パターンと、当該周波数パターンに対応する識別子とを、通信機20と通信可能に製作された全ての携帯機10の識別子記憶部101にそれぞれ重複しないように1つずつ予め記憶させることにより、全ての携帯機10の送信部102から互いに異なる周波数パターンでフレームを送信させることができる。図1に示す例では、2つの携帯機10を備えている通信システム1を示しているが、上述で説明したように、1つの周波数パターンに含まれる周波数の種類の上限が2であり、1度の送信処理において3つのフレームを送信する場合には、最大で8つの携帯機10の送信部102から互いに異なる周波数パターンでフレームを送信させることができる。
【0035】
尚、上述の説明では、送信部102から送信される通信信号の様式がフレームである場合を一例として説明したが、送信部102から送信される通信信号は、上述で説明したように通信信号を、周波数パターンに従って、予め定められた時間間隔t1が経過する度に、周波数を変化させながら送信することができるのであれば、フレーム以外の様式であってもよい。
【0036】
また、上述の説明では、図3に示すように、フレームfr1乃至fr3をそれぞれ送信するときの時間間隔が、予め定められた互いに同じ長さの時間間隔t1である場合を一例として説明した。しかしながら、送信部102が、フレームfr1乃至fr3を送信するときの時間間隔は、後述するように通信機20がフレームfr1乃至fr3をそれぞれ認識できるのであれば、互いに異なっていてもよい。
【0037】
また、上述の説明では、図3に示すように、フレームfr1乃至fr3をそれぞれ送信するときの送信時間が、予め定められた互いに同じ長さの送信時間tfである場合を一例として説明した。しかしながら、送信部102が、フレームfr1乃至fr3をそれぞれ送信するときの送信時間は、後述するように通信機20がフレームfr1乃至fr3をそれぞれ認識できるのであれば、互いに異なっていてもよい。
【0038】
また、上述の説明では、1度の送信処理で送信部102から通信信号として送信されるフレームの数がフレームfr1乃至fr3の3つであり、1つの周波数パターンに含まれる周波数の種類の上限が2である場合を一例として説明した。しかしながら、他の一実施形態に係る通信システム1では、通信機20と通信可能に製作する携帯機10の数、すなわち、定義する必要のある周波数パターンの組み合わせの数に応じて、1度の送信処理で送信部102から通信信号として送信されるフレームの数と、1つの周波数パターンに含まれる周波数の種類の上限とをそれぞれ任意の数にしてもよい。
【0039】
また、携帯機10は、それぞれ図2に示すように、受信部103と、操作部104とをさらに含んでいてもよい。受信部103と、操作部104との詳細については、後述する変形例で説明する。
【0040】
また、本実施形態に係る携帯機10は、上述で説明した識別子記憶部101と、送信部102とを少なくとも含んでいれば、その他の構成は互いに異なっていてもよい。
【0041】
また、後述する通信機20と通信可能に製作する携帯機10の数は、予め定められた任意の数でよい。
【0042】
また、本実施形態に係る携帯機10の送信部102から送信されるフレームは、後述するように通信機20の認識部203がフレームの強度と周波数とを認識できればよく、当該フレームに含まれる情報はどのような情報であってもよい。送信部102から送信されるフレームに含まれる情報の一例としては、当該フレームが通信機20を送信先としていることを示す情報などが挙げられる。
【0043】
図5は、本実施形態に係る通信機20のより詳細な構成を示すブロック図である。本実施形態に係る通信機20は、記憶部201と、受信部202と、認識部203とを少なくとも含む。
【0044】
記憶部201には、例えば、通信機20と通信可能に製作された全ての携帯機10の識別子記憶部101にそれぞれ予め記憶させている識別子と、周波数パターンとを全て対応付けて示す周波数パターン情報を予め記憶させるものとする。記憶部201に記憶させる周波数パターン情報は、例えば、図4に一例として示した表のように、識別子と周波数パターンとを対応付けて示すデータテーブルであってもよい。
【0045】
受信部202は、それぞれの携帯機10の送信部102から上述で説明したように送信されるフレームを受信したとき、受信したフレームを認識部203に取得させる。受信部202は、1つの周波数パターンに含まれる周波数の種類の上限の数だけ受信回路を含んでいる。受信部202に含まれる受信回路には、それぞれ1つの周波数パターンに含まれる上限の種類の周波数の中から互いに異なる1つの周波数が受信周波数として予め定められて製作されている。受信部202に含まれる受信回路は、それぞれに予め定められた受信周波数と同じ周波数のフレームを受信したときに、受信したフレームを認識部203に取得させるものとする。
【0046】
認識部203は、上述で説明したように携帯機10の送信部102から受信部202に順番に送信されるフレームを受信部202から順番に取得する。最初のフレームを取得すると、認識部203は、受信したフレームに基づき、フレームを送信した携帯機10の識別子をそれぞれ認識する認識処理を開始する。
【0047】
図6は、本実施形態に係る認識部203の認識処理の一例を具体的に説明するための図である。以下、認識部203の認識処理の一例について説明する。
【0048】
尚、以下に述べる認識部203の認識処理の説明では、一例として、通信機20と通信可能に製作された全ての携帯機10のそれぞれの送信部102が、1度の送信処理において送信するフレームの数を、図3に例として示したように3であるものとする。
【0049】
また、以下に述べる認識部203の認識処理の説明では、一例として、2つの携帯機10が、開始時点ts1で同時に互いに異なる周波数パターンでフレームの送信を開始した場合について説明する。より具体的には、一方の携帯機10が、識別子記憶部101に記憶されている周波数パターンで、開始時点ts1から順番に3つのフレームfr1a乃至fr3aを送信し、他方の携帯機10が、識別子記憶部101に記憶されている周波数パターンで、同一の開始時点ts1から順番に3つのフレームfr1b乃至fr3bを送信する場合について説明する。
【0050】
認識部203には、受信部202から最初のフレームを取得した開始時点ts2から順番に取得するフレームの取得時間が、携帯機10の送信部102の1度の送信処理において送信されるフレームの送信時間に合わせて予め定められている。
【0051】
より具体的には、本実施形態に係る認識部203には、図6に示すように、1度の送信処理において携帯機10の送信部102から送信された最初のフレームを取得する取得時間tr1と、2番目に送信されたフレームを取得する取得時間tr2と、3番目に送信されたフレームを取得する取得時間tr3とが予め定められている。
【0052】
取得時間tr1は、送信時間tfと同じ長さであって、開始時点ts2から最初のフレームfr1a、及びfr1bをそれぞれ取得する時間である。取得時間tr2は、送信時間tfと同じ長さであって、開始時点ts2から取得時間tr1と時間t1とが経過したときに2番目のフレームfr2a、及びfr2bをそれぞれ取得する時間である。取得時間tr3は、送信時間tfと同じ長さであって、開始時点ts2から取得時間tr1、時間t1、取得時間tr2、及び時間t1がそれぞれ経過したときに3番目のフレームfr3a、及びfr3bをそれぞれ取得する時間である。
【0053】
認識部203は、それぞれの取得時間tr1乃至tr3においてフレームを取得すると、取得したフレームの強度と周波数とをそれぞれ取得した順番に認識する。フレームの周波数を認識するとき、認識部203は、上述した受信部202に含まれる受信回路の内、フレームを取得させられた受信回路に予め定められた受信周波数を、取得したフレームの周波数として認識するものとする。また、フレームの強度を認識するとき、認識部203は、上述した受信部202に含まれる受信回路から取得したときのフレームの強度を、受信部202によって受信されたときのフレームの強度として認識するものとする。ここで、フレームの強度とは、送信されたフレームを受信部202で信号として受信したときの信号の強度のことである。
【0054】
取得したフレームの強度と周波数とをそれぞれ取得した順番に認識すると、認識部203は、取得したフレームの中から互いに略同じ強度のフレームを取得した順番に並べてグループに纏める処理をする。図6に示す例では、認識部203によって、互いに略同じ強度のフレームfr1a乃至fr3aと、フレームfr1b乃至fr3bとがそれぞれ取得した順番に並べられてグループ毎に纏められる。
【0055】
互いに略同じ強度のフレームを取得した順番に並べてグループ毎に纏めると、認識部203は、グループ毎に纏められたフレームを受信部202から取得した順番に並べたときのフレームの周波数の変化を、グループ毎の周波数パターンとして生成する処理をする。図6に例として示すフレームを取得した場合、認識部203は、フレームfr1a乃至fr3aのそれぞれの周波数に基づく周波数パターン(周波数f1→周波数f1→周波数f1)と、フレームfr1b乃至fr3bのそれぞれの周波数に基づく周波数パターン(周波数f2→周波数f2→周波数f1)との2つの周波数パターンを生成する。
【0056】
ここで、図6に示す例では、フレームfr3a、及びfr3bは、それぞれ周波数が互いに同じ周波数f1であり、上述した受信部202に含まれる同一の受信回路で受信されるため、それぞれのフレームの周波数を認識することはできるが、それぞれのフレームの強度を認識することができない。したがって、認識部203は、互いに略同じ強度のフレームを取得した順番に並べてグループに纏める処理をするとき、強度をそれぞれ認識できないフレームを処理の対象から除外する。除外したフレームは、認識部203が、グループ毎に周波数パターンを生成する処理をするときに、それぞれのグループに含ませて纏めた後、グループ毎に纏められたフレームを受信部202から取得した順番に並べたときのフレームの周波数の変化を周波数パターンとして生成する。これにより、互いの携帯機10の送信部102から1度の送信処理において送信されるフレームの中で、互いに同じ周波数で略同時に送信されるフレームがあったとしても、認識部203は、それぞれの携帯機10の送信部102から送信されたフレームの周波数パターンを認識できる。
【0057】
取得した周波数パターンに基づいてグループ毎に周波数パターンを生成すると、認識部203は、記憶部201に記憶されている周波数パターンを読み出し、読み出した周波数パターンの中から、生成した周波数パターンとそれぞれ一致する周波数パターンを特定する。生成した周波数パターンと一致する周波数パターンを特定すると、認識部203は、特定した周波数パターンに対応付けて記憶部201に記憶されている識別子を、フレームを送信した携帯機10の識別子としてそれぞれ認識する。
【0058】
以上が、本実施形態に係る通信機20の説明である。本実施形態に係る通信機20によれば、複数の携帯機10の送信部102が略同時に送信処理を開始することによって、それぞれの識別子に対応する周波数パターンで送信されたフレームを略同時に受信したとしても、通信機20の認識部203で上述した認識処理をすることによって、当該通信機20において受信したフレームに基づいて、複数の携帯機10の識別子を個別に識別できる。
【0059】
尚、図6では、一例として、送信部102の1度の送信処理で3つのフレームを送信し、認識部203の1度の認識処理で3つのフレームを取得するようにそれぞれ予め定められている場合を説明したが、送信部102から1度の送信処理で送信するフレームの数と、認識部203の1度の認識処理で取得するフレームの数とは、互いに一致していれば、2であってもよいし、4以上であってもよい。
【0060】
また、本実施形態に係る受信部202は、認識部203が取得したフレーム毎に周波数と強度とをそれぞれ認識できるように、互いに異なる受信周波数を予め定められた複数の受信回路を含むものとして説明した。しかしながら、認識部203が認識処理をするときに、受信部202によって受信されたフレーム毎に周波数と強度とをそれぞれ認識できるのであれば、受信部202はどのような構成であってもよい。
【0061】
また、図5に示す指示信号送信部204については、後述する変形例で説明する。
【0062】
(第1の実施形態の変形例)
次に、本実施形態に係る通信システム1を、車両などの移動体に搭載した変形例について説明する。本実施形態に係る通信システム1は、車両に搭載されている車載機器を離れた位置から操作したり、操作しようとしているときに操作を許可するか否かを判断したりする操作システムに適用することができる。このような操作システムの具体的な一例としては、公知のスマートエントリー&スタートシステムが挙げられる。
【0063】
本変形例では、複数の携帯機10が同一の車両の複数の使用者によってそれぞれ所持され、通信機20が車両に搭載される。ここで、同一の車両の複数の使用者とは、例えば、1世帯の家族を構成する複数の人(父親、母親、長男、及び長女など)などを一例として想定することができる。そして、通信機20の受信部202は、典型的には、車両の左右のいずれか一方のCピラーの内部に設置される。以下、本変形例に係る通信システム1の概略構成について説明する。
【0064】
本変形例に係る通信システム1の携帯機10は、第1の実施形態で説明した構成に加えて、図2に示す指示信号受信部103と、操作部104とをさらに含む。指示信号受信部103は、後述する指示信号送信部204から送信される指示信号を受信したとき、受信した指示信号を送信部102に取得させる。
【0065】
操作部104は、典型的には、携帯機10の表面方向に内部から弾性的に付勢されている押下可能なボタンを備えており、ボタンが押下されたときに、押下されたことを示す押下信号を生成する。
【0066】
また、本変形例に係る携帯機10の送信部102は、指示信号受信部103から指示信号を取得したときを、第1の実施形態で説明した通信信号を送信する指示が与えられたときとして、送信処理を開始する。
【0067】
本変形例に係る通信機20は、第1の実施形態で説明した構成に加えて、図5に示す指示信号送信部204をさらに含む。本変形例に係る認識部203は、第1の実施形態で説明した処理に加えて、車両に搭載されている図示しない処理部によって、車両に搭載されている車載機器の操作を許可してよいか否かの判断の要求を示す要求信号が生成されたとき、生成された要求信号を取得する。要求信号を取得したとき、認識部203は、第1の実施形態で説明した送信処理を携帯機10の送信部102に開始させる指示を示す指示信号を指示信号送信部204に送信させる指示を与える。携帯機10の送信部102に送信処理を開始させる指示が、携帯機10の送信部102に通信信号を送信する第1の実施形態で説明した指示となる。
【0068】
また、本変形例に係る認識部203は、指示信号を指示信号送信部204から送信させた後、後述するように携帯機10の送信部102から送信されるフレームを受信して第1の実施形態で説明した認識処理をし、フレームを送信した携帯機10の識別子をそれぞれ認識する。
【0069】
本変形例に係る記憶部201には、第1の実施形態で説明した周波数パターン情報に加えて、要求信号によって示される車載機器の操作の種類毎に、周波数パターン情報として記憶している全ての識別子と車載機器の操作を許可するか否かとを対応付けて示す許可情報も予め定めて記憶させている。
【0070】
認識部203は、携帯機10の識別子をそれぞれ認識すると、許可情報と認識した識別子とを照合することによって、認識した識別子が、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子か否かを判断する。認識した識別子が、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子であると判断したとき、認識部203は、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる通知を上述した図示しない処理部に与える。一方、認識部203は、認識した識別子が、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子でないと判断したとき、認識部203は、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる通知を上述した図示しない処理部に与えない。
【0071】
ここで、図示しない処理部は、一例として、車両の搭乗者がドアを開けようとしてドアのアウトサイドハンドルに手を触れたことを図示しない検出部(例えば、静電容量式の接触センサ)で検出したとき、車載機器の操作としてドアの解錠を許可するか否かの判断の要求を示す要求信号を生成してもよい。また、図示しない処理部は、一例として、車両の搭乗者が車両のエンジンを始動させようとしてイグニッションスイッチをオンにしたことを図示しない検出部で検出したときに、車載機器の操作としてエンジンの始動を許可するか否かの判断の要求を示す要求信号を生成してもよい。
【0072】
図7は、本変形例に係る許可情報の一例を示す図である。図7に例として示す許可情報は、車両の使用者の一例として上述した4人の人(父親、母親、長男、長女)を想定し、車載機器の操作の種類としてドアの解錠、及びエンジンの始動を一例としてそれぞれ想定した場合に記憶部201に予め定めて記憶させた許可情報である。図7に例として示す許可情報では、識別子1の携帯機10の所持者である父親と、識別子2の携帯機10の所持者である母親とはドアの解錠、及びエンジンの始動を許可するように定められている。また、図7に例として示す許可情報では、識別子3の携帯機10の所持者である長男と、識別子4の携帯機10の所持者である長女とは、ドアの解錠のみを許可するように設定されており、エンジンの始動は許可しないように設定されている。
【0073】
図示しない処理部は、例えば、父親がドアのアウトサイドハンドルに触れたことなどを検出して要求信号を生成した後、認識部203から、生成した要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる通知を与えられたときには、車載機器の操作を許可して、図示しない駆動部でドアのロック機構を駆動して、ドアの解錠をする。一方、図示しない処理部は、要求信号を生成した後、認識部203から、生成した要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる通知を与えられないときには、車載機器の操作を許可せず、ドアの解錠もしない。
【0074】
指示信号送信部204は、指示信号を送信する指示を認識部203から与えられたとき、指示信号を送信する。指示信号送信部204は、複数の信号送信回路からなる。より詳細には、指示信号送信部204は、車室内の予め定められた送信範囲に存在する携帯機10にのみ指示信号が届くように設計された車室内送信回路と、車室外の予め定められた送信範囲に存在する携帯機10にのみ指示信号が届くように設計された車室外送信回路とからなる。指示信号送信部204は、指示信号を送信するとき、後述するように認識部203によって決定された送信範囲に対応する信号送信回路から指示信号を送信する。尚、車室内送信回路と、車室外送信回路とは、それぞれが、信号を空間に放射できるアンテナを複数備えていてもよく、車室内と車室外とのそれぞれにおける任意の送信範囲を形成できるように、これらのアンテナの車両における設置位置やこれらのアンテナから放射される信号の強度などをそれぞれ設計してもよい。
【0075】
以上が、本変形例に係る通信システム1の概略構成の説明である。次に、本変形例に係る通信システム1の動作のより詳細な説明をする。
【0076】
認識部203は、まず、上述した図示しない処理部によって生成された要求信号を取得したとき、指示信号の送信範囲を要求信号によって示される判断の種類に応じて決定する。
【0077】
より具体的には、例えば、認識部203によって取得された要求信号が、ドアの解錠を許可するか否かの判断の要求など、車両の使用者が車室外にいるときに生じると考えられる要求を示す要求信号である場合、認識部203は、上述した車室外の送信範囲に存在する携帯機10の指示信号受信部103に指示信号を送信することを決定する。一方、例えば、認識部203によって取得された要求信号が、エンジンの始動を許可するか否かの判断の要求など、車両の使用者が車室内にいるときに生じると考えられる要求を示す要求信号である場合、認識部203は、上述した車室内の送信範囲に存在する携帯機10の指示信号受信部103に指示信号を送信することを決定する。
【0078】
認識部203は、指示信号の送信範囲を決定すると、上述したように指示信号送信部204に含まれる信号送信回路の内、決定した送信範囲に対応する信号送信回路(車室内送信回路、又は車室外送信回路)から指示信号を送信させる指示を指示信号送信部204に与える。
【0079】
指示信号送信部204は、指示信号を送信させる指示を認識部203から与えられたとき、認識部203によって決定された送信範囲に対応する信号送信回路から指示信号を送信する。
【0080】
指示信号送信部204の信号送信回路から送信された指示信号は、指示信号を送信した信号送信回路に対応する送信範囲に存在する携帯機10の指示信号受信部103によって受信される。
【0081】
携帯機10の指示信号受信部103によって指示信号が受信されたとき、受信された指示信号を取得した送信部102は、第1の実施形態で説明した送信処理を開始して、フレームを通信機20の受信部202へ送信する。尚、本変形例に係る通信システム1では、通信機20の指示信号送信部204が指示信号を送信したときから、携帯機10の送信部102から送信されたフレームを通信機20の受信部202で受信するまでの時間間隔が予め定められた時間間隔となるように送信部102の送信処理の開始タイミングが定められているものとする。そして、指示信号を送信した信号送信回路に対応する送信範囲に存在する携帯機10の送信部102は、指示信号を指示信号受信部103で受信してから、略同時に送信処理を開始してフレームを送信する。
【0082】
指示信号を送信した信号送信回路に対応する送信範囲に存在する携帯機10の送信部102から送信されたフレームは、第1の実施形態で説明したように認識部203によって取得され、認識処理されることによって、当該送信範囲に存在する携帯機10の識別子がそれぞれ認識される。
【0083】
認識部203は、要求信号に応じた送信範囲に存在する携帯機10の識別子をそれぞれ認識すると、上述で説明したように、認識した識別子と許可情報とを照合することによって、認識した識別子の中に要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれるか否かを判断する。認識部203は、認識した識別子の中に、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれると判断したとき、許可できる通知を図示しない処理部に与える。一方、認識部203は、認識した識別子の中に、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれないと判断したとき、許可できる通知を図示しない処理部に与えない。
【0084】
より詳細には、認識部203は、要求信号に応じた送信範囲に存在する携帯機10の識別子をそれぞれ認識し、認識した識別子の中に、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれているとき、当該識別子の携帯機10とさらに通信をする。認識部203は、車載機器の操作を許可できる識別子の携帯機10とさらに通信をすることによって、当該携帯機10が不正に複製されたものであるか否かなどの認証処理をする。認証処理を開始した認識部203は、開始した認証処理を正常に完了することができたとき、認識した識別子が、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子であると判断し、許可できる通知を図示しない処理部に与える。
【0085】
一方、認識部203は、要求信号に応じた送信範囲に存在する携帯機10の識別子を認識し、認識した識別子の中に、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれていないとき、認識した識別子が、要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子でないと判断し、許可できる通知を図示しない処理部に与えない。
【0086】
尚、通信機20と車載機器の操作を許可できると判断した識別子の携帯機10との間で認証処理をするときの通信において、携帯機10から送信される信号は送信部102から通信信号として送信されてもよいし、携帯機10の内部に備えられている図示しない他の送信部から送信されてもよい。また、認証処理をするときに携帯機10から送信される信号は、通信機20の受信部202で受信されてもよいし、通信機20の内部に備えられている図示しない他の受信部で受信されてもよい。また、認証処理をするときに通信機20から送信される信号は、通信機20の指示信号送信部204から送信されてもよいし、通信機20の内部に備えられている図示しない他の送信部から指示信号とは別に送信されてもよい。また、認証処理をするときに通信機20から送信される信号は、携帯機10の指示信号受信部103で受信されてもよいし、携帯機10の内部に備えられている図示しない他の受信部で受信されてもよい。
【0087】
以上が、本変形例に係る通信システム1の説明である。本変形例に係る通信システム1によれば、例えば、上述した車両の近くに位置する父親、母親、長男、及び長女の内、いずれかの人がドアのアウトサイドハンドルに触れて、車両の近くで解錠を待っているときに、車室外の送信範囲に存在する携帯機10の中にドアの解錠を許可できる識別子の携帯機10が存在するため、いずれかの人がドアのアウトサイドハンドルに触れることによりドアの解錠が許可されて実行される。
【0088】
また、例えば、車両の中に長女、又は長男のみが搭乗しているときに、搭乗者がエンジンを始動させようとしたとしても、車室内に存在する携帯機10の識別子は、エンジンの始動を許可できる識別子ではないため、エンジンを始動させることはできない。したがって、長男、又は長女が幼く、車両を運転する資格を有していない、且つ資格を有している人が同一の車両に搭乗していないときは、不用意にエンジンが始動することを防げる。
【0089】
また、本変形例に係る通信システム1では、例えば、通信機20の受信部202を図8に一例として示すように左のCピラーの内部に設け、エンジンの始動を許可するか否かの判断の要求を示す要求信号が生成されたときに、認識部203が、認識した識別子の中で要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子の内、最も強度の低いフレームを送信した携帯機10の識別子のみと許可情報とを照合するようにしてもよい。携帯機10の送信部102からフレームとして送信される通信信号の強度は、空間を伝搬する距離に比例して小さくなる。そして、車室内に着座している人の所持している携帯機10の中で、左のCピラーから最も遠い距離に位置する運転席に着座している人の所持している携帯機10の送信部102から通信機20の受信部202に送信されるフレームの強度が最も低くなる。
【0090】
したがって、エンジンの始動を許可するか否かの判断の要求を示す要求信号が生成されたときに、認識部203が、認識した識別子の中で要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子の内、最も強度の低いフレームを送信した携帯機10の識別子のみと許可情報とを照合するようにすることで、運転席に着座している人の携帯機10の識別子のみと許可情報とを照合することができ、運転の資格を有していないもの(図7に示す例では長男、及び長女)が運転席に着座しているときには、エンジンを不用意に始動させないようにできる。
【0091】
また、上述した本変形例の説明では、要求信号が生成されたときに、認識部203が、指示信号を指示信号送信部204から送信させることによって、車室内、又は車室外のいずれかの送信範囲に存在する携帯機10の送信部102から送信させたフレームを取得して認識処理を開始する場合を一例として説明した。しかしながら、本変形例に係る通信システム1によれば、上述したように携帯機10の操作部104に備えられているボタンが押下されたときに生成される押下信号を送信部102が取得したときに送信処理を開始してもよい。そして、操作部104に備えられているボタンが押下されることによって開始された送信処理で送信されたフレームを受信したときに、認識部203は、第1の実施形態で説明した認識処理して識別した識別子と許可情報とを照合してもよい。
【0092】
ここで、携帯機10の操作部104に備えられているボタンの一例としては、上述で説明したようにドアのアウトサイドハンドルに使用者の手(或いは、指など)が触れたときに解錠するためでなく、車両から離れた位置でドアやトランクを解錠するために押下されるボタンが挙げられる。このようなボタンが複数の携帯機10で略同時に押下されたときにも、本変形例に係る通信システム1によれば、対応する送信範囲(ドア、或いはトランクの解錠の操作の場合は車室外の送信範囲)内に操作を許可できる識別子の携帯機10が存在するか否かを判断することができる。
【0093】
また、本変形例に係る通信システム1では、例えば、通信機20の受信部202を車両の任意の位置に設け、要求信号が生成されたときに、認識部203が、認識した識別子の中で要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子の内、最も強度の高いフレームを送信した携帯機10の識別子と許可情報とを照合するようにしてもよい。これにより、車両の周囲に存在する複数の人が略同時にボタンを押下したときでも、車両に最も接近している人の所持している携帯機10の識別子と許可情報とを照合して、優先的に操作をすることができる。
【0094】
また、本変形例に係る通信システム1では、携帯機10から送信する通信信号の周波数帯域と、通信機20から送信させる信号の周波数帯域を互いに重複しないようにしてもよい。より詳細には、通信機20から送信させる信号の周波数を、携帯機10から送信させる周波数よりも相対的に低くしてもよい。例えば、通信機20から送信される信号の周波数帯域を、数百kHz帯とし、より具体的には、100kHz帯としてもよい。また、携帯機10から送信される信号の周波数帯域を、数百MHz帯とし、より具体的には、100MHz帯としてもよい。また、携帯機10からフレームとして送信される通信信号はRF信号と呼ばれることもあり、通信機20から送信される信号はLF信号と呼ばれることもある。そして、本変形例における周波数パターンに従って変化させられる周波数は、前述の数百MHz帯の周波数帯域の中で予め定められてもよい。
【0095】
以上が、本変形例に係る通信システム1の詳細な動作の説明である。次に、本変形例に係る通信システム1の動作の内、認識部203で要求信号を取得したときに実行される動作を図9に示すフローチャートを参照しながら説明する。尚、図9のフローチャートに示す処理は、例えば、上述したスマートエントリー&スタートシステムの電源がOnになっているときなどに実行されてもよい。
【0096】
ステップS101において、通信システム1は、図示しない処理部によって要求信号が生成されたか否かを認識部203で判断する。通信システム1は、ステップS101において、要求信号が生成されたと認識部203で判断したとき、ステップS102へ処理を進める。一方、通信システム1は、ステップS101において、要求信号が生成されないと認識部203で判断したとき、ステップS101へ処理を戻す。
【0097】
ステップS102において、通信システム1は、ステップS101において生成されたと判断した要求信号の示す要求に応じた送信範囲を上述したように認識部203で決定し、決定した送信範囲に対応する信号送信回路から指示信号を送信させる指示を認識部203から指示信号送信部204に与えて指示信号を携帯機10の指示信号受信部103へ送信する。通信システム1は、ステップS102の処理を完了すると、ステップS103へ処理を進める。
【0098】
ステップS103において、通信システム1は、ステップS102で決定した送信範囲内に存在し、指示信号送信部204から送信された指示信号を指示信号受信部103で受信したそれぞれの携帯機10の送信部102から第1の実施形態で説明したようにフレームを送信させる。通信システム1は、ステップS103の処理を完了すると、ステップS104へ処理を進める。
【0099】
ステップS104において、通信システム1は、ステップS103でそれぞれの携帯機10の送信部102から送信されたフレームを通信機20の受信部202で受信して認識部203で取得し、第1の実施形態で説明した認識処理をする。通信システム1は、ステップS104において、認識処理をして、フレームを送信した携帯機10の識別子をそれぞれ認識すると、ステップS105へ処理を進める。
【0100】
ステップS105において、通信システム1は、上述で説明したように、認識した識別子と許可情報とを認識部203で照合することによって、認識した識別子が要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子か否かを判断する。そして、通信システム1は、認識部203でそれぞれ認識した識別子の中に要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれると判断したとき、ステップS106へ処理を進める。一方、通信システム1は、認識部203でそれぞれ認識した識別子の中に要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる識別子が含まれないと判断したとき、ステップS101へ処理を戻す。
【0101】
ステップS106において、通信システム1は、ステップS105の処理で車載機器の操作を許可できる識別子であると判断した識別子の携帯機10と通信機20との間で通信をして上述した認証処理を開始する。通信システム1は、ステップS106の処理を完了すると、ステップS107へ処理を進める。
【0102】
ステップS107において、通信システム1は、ステップS106の処理で開始した認証処理が正常に完了したか否かを認識部203で判断する。通信システム1は、ステップS107において認証処理が正常に完了したと認識部203で判断すると、ステップS108へ処理を進める。一方、通信システム1は、ステップS107において、ステップS106の処理で開始した認証処理が正常に完了しないと認識部203で判断したとき、ステップS101へ処理を戻す。
【0103】
ステップS108において、通信システム1は、図示しない処理部で生成した要求信号によって示される車載機器の操作を許可できる通知を認識部203から当該処理部に与えて、車載機器の操作を許可して実行する。ステップS108の処理を完了すると、通信システム1は、ステップS101へ処理を戻す。
【0104】
以上が、本変形例に係る通信システム1の動作を示すフローチャートの説明である。尚、図9のフローチャートに示す動作は、認識部203で要求信号を取得したときに実行される動作である。そして、図9のフローチャートに示す動作に加えて、携帯機10の操作部104のボタンが押下されたときに開始された送信処理で送信されたフレームを受信して認識部203で認識処理をする動作もする場合には、図9のフローチャートのステップS101の前段に、押下信号が生成されたか否かを判断する処理を追加してもよい。この場合、追加した処理で押下信号が生成され、送信部102で取得できたと判断したときには、通信システム1は、ステップS103へ処理を進める。一方、通信システム1は、追加した処理で押下信号が生成されておらずに送信部102で取得できないと判断したときは、ステップS101へ処理を進める。これにより、通信機20の図示しない処理部で要求信号が生成されたとき、及び携帯機10の操作部104のボタンが押下されたときに、通信システム1は、車載機器の操作を許可できるか否かを判断して、許可できると判断した場合には、図示しない処理部に通知して、車載機器の操作を許可して実行させることができる。
【0105】
尚、本変形例の説明では、要求信号は、車載機器の操作を許可するか否かの判断を要求するときに生成されるものとして説明した。しかしながら、要求信号は、例えば、複数の携帯機10のいずれかが車室内、或いは車室外のいずれに存在するか否かを検出する目的で、定期的に生成されてもよい。これにより、複数の携帯機10の存在位置(車室内、又は車室外)を定期的にそれぞれ把握することができる。
【0106】
また、上述した本変形例の説明では、1つの通信機20と通信可能に製作された複数の携帯機10を1つの世帯を構成する家族でそれぞれ所持する場合を一例として説明した。しかしながら、1つの通信機20と通信可能に製作された複数の携帯機10を、例えば、ある限定された領域に居住している住民、1つの集合住宅に居住している住民の一部、又は全部など、同一の車両を共有している人同士でそれぞれ所持してもよい。近年、特に都会部では、駐車スペースの減少などにより、車両の利用形態として、複数の人で同一の車両を共有して使用する、所謂カーシェアリングと呼ばれる利用形態が普及している。本変形例に係る通信システム1によれば、典型的にカーシェアリングと呼ばれる利用形態で利用される車両であっても、複数の携帯機10の識別子毎に、操作を許可できる車載機器の種類を定めて利用することができる。
【0107】
また、第1の実施形態では、識別子記憶部101に識別子と、周波数パターンとを記憶させるものとしたが、他の一実施形態に係る識別子記憶部は識別子に対応する周波数パターンのみを記憶していてもよい。
【0108】
また、第1の実施形態では、2つの携帯機10が、開始時点ts1で同時に互いに異なる周波数パターンでフレームの送信を開始した場合について説明した。しかしながら、他の一実施形態に係る通信システム1では、2以上の複数の携帯機20が互いに異なる時点で互いの異なる周波数パターンでフレームの送信を開始してもよい。この場合、認識部203が、それぞれの携帯機20が送信する最初のフレームを識別する手法は任意の周知の手法を用いてよい。
【0109】
また、第1の実施形態、及び第1の実施形態の変形例に通信システム1に係る携帯機10、及び通信機20のそれぞれの構成は、記憶装置(ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクなど)に格納された上述した処理を実施可能な所定のプログラムデータが、無線送信回路、及び無線受信回路を組み合わせたLSI、CPU或いはマイクロコンピュータなどによって解釈実行されることで実現されてもよい。CPUとは、自動車などの移動体に搭載されるECU(Electric Control Unit)を構成するCPUなどであってもよい。また、この場合、プログラムデータは、記憶媒体を介して記憶装置内に導入されてもよいし、記憶媒体上から直接実行されてもよい。尚、記憶媒体とは、ROMやRAMやフラッシュメモリなどの半導体メモリ、フレキシブルディスクやハードディスクなどの磁気ディスクメモリ、CD−ROMやDVDやBDなどの光ディスクメモリ、及びメモリカードなどであってもよい。
【0110】
以上、本発明を詳細に説明してきたが、上述の説明はあらゆる点において本発明の一例にすぎず、その範囲を限定しようとするものではない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、複数の携帯機から略同時に信号が送信されてもそれぞれの携帯機を識別することができ、例えば、車両に搭載される通信システムなどに利用できる。
【符号の説明】
【0112】
1 通信システム
10 携帯機
20 通信機
101 識別子記憶部
102 送信部
103 指示信号受信部
104 操作部
201 記憶部
202 受信部
203 認識部
204 指示信号送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2以上の携帯機と、通信機とを備え、
前記携帯機のそれぞれは、
互いに異なる識別子と、当該識別子に対応する周波数のパターンとが予め定められ、当該パターンに従って予め定められた時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を送信し、
前記通信機は、前記時間が経過する度に略同じ強度で受信した前記通信信号の周波数のパターンを、前記携帯機にそれぞれ定められている前記パターンとして予め記憶しているパターンと対応させることによって前記携帯機をそれぞれ識別する、通信システム。
【請求項2】
前記携帯機のそれぞれは、
前記識別子に対応する前記パターンを記憶する識別子記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記パターンに従って前記時間が経過する度に周波数を変化させながら前記通信信号を送信する送信手段とを含む、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信機は、
それぞれの前記携帯機に予め定められている前記パターンを記憶する記憶手段と、
前記送信手段によって送信される前記通信信号を受信する受信手段と、
前記時間が経過する度に前記受信手段によって略同じ強度で受信したそれぞれの前記通信信号の前記パターンと前記記憶手段に記憶されている前記パターンとを対応させることによって、前記携帯機をそれぞれ識別する識別手段とを含む、請求項2に記載の通信システム。
【請求項4】
前記通信機は車両に搭載される、請求項3に記載の通信システム。
【請求項5】
前記通信機は、前記車両に搭載される車載機器の操作を許可するか否かの判断を要求されたとき、前記携帯機に対して前記通信信号を送信させる指示を示す指示信号を送信する指示信号送信手段を含み、
前記携帯機のそれぞれは、前記指示信号を受信する指示信号受信手段を含み、
前記送信手段は、前記指示信号受信手段によって前記指示信号が受信されたとき、前記識別子記憶手段に記憶されている前記パターンに従って周波数を変化させながら前記通信信号を送信する、請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
前記送信手段は、前記車両に搭載される車載機器を操作するための操作信号を取得したとき、前記記憶手段に記憶されている前記パターンに従って前記時間が経過する度に周波数を変化させながら前記通信信号を送信する、請求項4に記載の通信システム。
【請求項7】
前記通信機は、前記識別手段によって識別された前記携帯機の内、前記受信手段によって受信されたときの強度が最も高く、略同じ強度で受信された前記通信信号を送信した前記携帯機とさらに通信をする通信手段をさらに含む、請求項3に記載の通信システム。
【請求項8】
前記通信機は、前記識別手段によって識別された前記携帯機の内、前記受信手段によって受信されたときの強度が最も低く、略同じ強度で受信された前記通信信号を送信した前記携帯機とさらに通信をする通信手段をさらに含む、請求項3に記載の通信システム。
【請求項9】
前記送信手段は、前記通信信号を送信するとき、予め定められた情報量の情報を示す少なくとも2つの信号を、前記パターンに従って前記時間が経過する度に周波数を変化させながら前記通信信号として送信する、請求項7乃至8のいずれか1つに記載の通信システム。
【請求項10】
互いに異なる識別子と、当該識別子に対応する周波数のパターンとが予め定められ、当該パターンに従って予め定められた時間が経過する度に周波数を変化させながら通信信号を携帯機から送信させる送信ステップと、
通信機において、前記時間が経過する度に略同じ強度で受信した前記通信信号の周波数のパターンを、前記携帯機にそれぞれ定められている前記パターンとして予め記憶しているパターンと対応させることによって前記携帯機をそれぞれ識別する認識ステップとを備える、通信方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−218153(P2010−218153A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63302(P2009−63302)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】