説明

通信システム

【課題】 複数のLANネットワーク間を無線回線又は迂回回路で接続する通信システムにおいて、無線回線の障害発生時にリンクダウン転送が行われた場合に、保守端末からの遠隔保守を可能として利便性を向上させ、迅速な障害復帰を図る通信システムを提供する。
【解決手段】 無線回線装置22が、無線回線における障害を検出すると、切替装置24に対するリンク信号の出力を停止し、一定時間が経過するとリンク信号の出力を再開し、切替装置24が、リンク信号の停止を検出するとLANネットワークの接続先を迂回回路42に切り替え、リンク信号の受信を検出するとLANネットワークの接続先を無線回線装置22に切り替え、保守端末23が、切替装置22によって切り替えられた無線回線装置23の保守を行う通信システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のLANネットワークを無線回線で接続する通信システムに係り、特に障害発生時の復旧保守を容易にすることができる通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
近年、LANインタフェースを備えた機器は増加しており、それらをつなぐLANネットワークは広範囲に広がっている。
LANネットワークを拡大する上で、敷設に制限がある場合には、種々の物理レイヤを利用する必要がある。例えば、メタルワイヤの回線、光ファイバ回線、無線回線等である。
【0003】
そして、2つのLANネットワークを無線回線で接続する場合、無線回線に障害が発生すると、LANインタフェースに対するリンク信号の出力を停止して、リンクダウンするようになっている(リンクダウン転送)。
【0004】
ここで、2つのLANネットワーク回線を無線回線で接続した通信システムについて図4を用いて説明する。図4は、2つのLANネットワーク回線を無線回線で接続した通信システムの構成例を示す説明図である。
図4に示す通信システムは、LANネットワーク1と、LANネットワーク2とを備え、LANネットワーク1には、端末11及び無線回線装置12が設けられ、LANネットワーク2には、端末21と、無線回線装置22と、保守端末23と、切替装置24とが設けられている。
尚、図では無線回線装置12と無線回線装置22とを線で接続しているが、この線は無線回線を示している。
【0005】
無線回線装置22は、LAN信号と無線信号とを相互に変換する装置であり、無線回線装置21と無線による通信を行う。
特に、上述したように、無線回線装置22は、無線回線の障害を検出すると、LANインタフェースをリンクダウンする。
【0006】
また、保守端末23は、無線回線装置22の保守を行う端末であり、無線回線装置22の状態を読み出し、動作を指定するパラメータを設定することができ、また、無線回線装置22の動作停止/開始の指示を行う。
【0007】
切替装置24は、LANネットワーク2と無線通信回路22又は迂回回線42とを切り替えて接続する切替スイッチを備えたものである。
切替装置24は、無線回線装置22からのLANリンク信号を受信して、正常に受信していることを検出した場合には、切替スイッチをLANネットワーク2と無線回線装置22とを接続する側に切り替え、無線回線装置22からリンク信号を受信しない、つまりリンクダウンを検出すると、LANネットワーク2と迂回回線42とを接続するよう切り替える。無線回線が正常な場合には、切替スイッチはLANネットワーク2と無線回線装置22とを接続する側に切り替えられている。
また、迂回回線42は有線回線又は無線回線である。
【0008】
[従来の通信システムにおける障害発生時の動作:図5、図6、図7]
従来の通信システムにおいて、無線回線に障害が発生した場合の動作について図5,6,7を用いて説明する。図5,6,7は、従来の通信システムにおける障害発生時の動作を示す模式説明図である。
図5に示すように、LANネットワーク1の端末11と、LANネットワーク2の端末21とが通信を行っている。ここでは、Ethernet(登録商標)を用いたIP通信を行っているものとする。
通常、端末21から端末11へのデータは、LANネットワーク2を介して、切替装置24及び無線回線装置22、無線回線41、無線回線装置12、LANネットワーク1を介して端末11に到達する。
【0009】
ここで、図5に示すように、無線回線41が、遮蔽、降雨等の障害により通信が行えない状態((1)無線回線切断)になったものとする。
すると、図6に示すように、無線回線装置22は、切替装置24に接続しているLANインタフェースへのリンク信号を停止する((2)リンクダウン転送)。
【0010】
そして、図7に示すように、切替装置24は、リンクダウンを検出すると、通信経路を迂回回路42側に切り替え、端末21から端末11へのデータを迂回回線42に転送する。
【0011】
この状態において、無線回線装置22と切替装置24との間は通信不能の状態となっているため、保守端末23から無線回線装置22の障害内容を参照したり、機器の動作条件を変更する等の保守制御を行うことはできず、障害が復旧してから切替装置24を無線回線装置22側に切り替えて、保守端末23からの遠隔保守を行うようになっていた。
【0012】
尚、LANを用いた通信システムの保守に関する技術としては、特開2008−11004号公報「無線LAN機器及び無線LAN機器の保守システム」(出願人:株式会社日立国際電気、特許文献1)がある。
特許文献1には、無線LAN機器の制御部が、接続されたパーソナルコンピュータから電源投入後一定時間以内に初期化専用画面へのアクセスがあり、ログイン用の情報を認証すると、パーソナルコンピュータに初期化画面を表示させ、初期化の指示が入力されると、無線LAN機器の初期化を実行することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開2008−11004号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の通信システムでは、無線回線で障害が発生してリンクダウン転送が行われた場合には、LAN回線側の保守端末から無線回線装置にアクセスして障害状況の確認や復旧の遠隔操作を行うことができず、不便であるという問題点があった。
【0015】
本発明は、上記実状に鑑みて為されたもので、無線回の障害発生時にリンクダウン転送が行われた場合に、保守端末からの遠隔保守を可能として利便性を向上させ、迅速な障害復帰を可能とすることができる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、複数のLANネットワーク間を無線回線又は迂回回路で接続する通信システムであって、無線信号とLAN信号の変換を行う無線回線装置と、LANネットワークの一つに接続すると共に、当該LANネットワークの接続先を無線回線装置又は迂回回線に切り替える切替装置と、LANネットワークを介して無線回線装置の保守を行う保守端末とを備え、無線回線装置が、無線回線における障害を検出すると、切替装置に対するリンク信号の出力を停止し、一定時間が経過するとリンク信号の出力を再開し、切替装置が、リンク信号の停止を検出するとLANネットワークの接続先を迂回回路に切り替え、リンク信号の受信を検出するとLANネットワークの接続先を無線回線装置に切り替え、保守端末が、切替装置によって切り替えられた無線回線装置の保守を行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数のLANネットワーク間を無線回線又は迂回回路で接続する通信システムであって、無線信号とLAN信号の変換を行う無線回線装置と、LANネットワークの一つに接続すると共に、当該LANネットワークの接続先を無線回線装置又は迂回回線に切り替える切替装置と、LANネットワークを介して無線回線装置の保守を行う保守端末とを備え、無線回線装置が、無線回線における障害を検出すると、切替装置に対するリンク信号の出力を停止し、一定時間が経過するとリンク信号の出力を再開し、切替装置が、リンク信号の停止を検出するとLANネットワークの接続先を迂回回路に切り替え、リンク信号の受信を検出するとLANネットワークの接続先を無線回線装置に切り替え、保守端末が、切替装置によって切り替えられた無線回線装置の保守を行う通信システムとしているので、リンクダウン転送後、一定時間経過すれば保守端末から無線回線装置にアクセスして、障害状況の確認や復旧のための設定等の保守制御を行うことができ、利便性を向上させ、障害から迅速に復帰させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施の形態に係る通信システムで用いられる無線回線装置の構成ブロック図である。
【図2】本システムにおける障害発生時の動作を示す説明図である。
【図3】無線回線装置における処理を示すフローチャートである。
【図4】2つのLANネットワーク回線を無線回線で接続した通信システムの構成例を示す説明図である。
【図5】従来の通信システムにおける障害発生時の動作を示す模式説明図(1)である。
【図6】従来の通信システムにおける障害発生時の動作を示す模式説明図(2)である。
【図7】従来の通信システムにおける障害発生時の動作を示す模式説明図(3)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
本発明の実施の形態に係る通信システムは、無線回線とLAN回線のインタフェースを備えた無線回線装置が、無線回線における障害を検出した場合に、LANインタフェースのリンクダウン転送によりリンク信号の発生を一旦停止し、一定時間経過後にリンク信号の発生を再開させ、切替装置が、リンクダウンを検出すると迂回回路側に通信経路を切り替え、リンクアップを検出すると無線回線装置側に通信経路を切り替え、保守端末がLAN回線を介して無線回線装置の保守を可能とする通信システムとしているので、障害発生後、一定時間後に無線回線装置とLAN回線との接続を復帰させて、保守端末から無線回線装置に対する情報取得や設定操作を行うことができ、保守作業を容易にすることができるものである。
【0020】
本発明の実施の形態に係る通信システムの構成は、図4に示したものと同じであるため図示は省略し、図4と同様の符号を用いて説明する。但し、無線回線装置22の構成及び動作が、図4の無線回線装置とは一部異なっている。
そして、本システムは、図4に示すように、2つのLANネットワークを備え、LANネットワーク間は、無線回線装置12,22を介した無線回線41又は迂回回線42によって接続されている。
【0021】
[無線回線装置22の構成:図1]
無線回線装置22の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態に係る通信システムで用いられる無線回線装置の構成ブロック図である。
図1に示すように、本通信システムの無線回線装置22は、リンクダウン転送の機能を備えたものであり、LAN/無線変換回路2と、LANリンク信号発生部4と、リンクダウン転送制御部5と、無線障害検出部6と、タイマー7と、記憶装置8とを備えている。
【0022】
LAN通信回路1は、LAN信号を送受信するインタフェースである。
無線通信回路3は、無線信号を送受信するインタフェースである。
LAN/無線変換回路2は、LAN信号を無線信号に変換し、無線信号をLAN信号に変換するデータ変換を行う。
LANリンク信号発生部4は、LAN通信回路1にリンク信号を出力する。本システムのLANリンク信号発生部4は、リンクダウン転送制御部5の指示に従ってリンク信号の出力/停止を行う。尚、リンク信号が出力されている状態をリンクアップ、停止されている状態をリンクダウンと記載する。
【0023】
リンクダウン転送制御部5は、LANリンク信号発生部4に対してリンク信号の出力/停止の指示を行う。
特に、リンクダウン無線障害検出部6で無線回線に障害が発生したことが検出されると、LANリンク信号発生部4にリンク信号の停止を指示する。そして、本システムの特徴として、一定時間経過後にリンク信号の出力を再開させるものである。
【0024】
無線障害検出部6は、無線通信回路3の回線状態を監視し、無線回線に障害が発生した場合に、リンクダウン転送制御部5に障害発生を通知する。尚、無線障害検出部6は、例えば受信電界強度を検出し、検出値がしきい値よりも低い場合に無線回線の障害発生を検出する。
【0025】
タイマー7は、一定時間を計時するものであり、本無線回線装置では、リンクダウン転送制御部5によって起動され、タイムアップすると、リンクダウン転送制御部5にタイムアップを報知する。
記憶装置8は、リンクダウン転送制御部5における処理プログラムや、タイマー7の計時時間を記憶している。
【0026】
[本無線回線装置の動作:図1]
本通信システムにおいて用いられる上記無線回線装置の動作について図1を用いて説明する。
無線回線装置22では、通常、LAN通信と無線通信とを行っており、LAN/無線変換回路2において、LAN通信回線1から入力されたデータを無線送信用に変換して無線通信回線3に出力するとともに、無線通信回線3から受信したデータを復調してLAN回線1に出力する。
【0027】
そして、無線障害検出部6が、障害が発生したことを検出すると、リンクダウン転送制御部5にその旨報知し、リンクダウン転送制御部5は、LANリンク信号発生部4に対してリンク信号の停止を指示する。リンク信号発生部4は、リンク信号停止の指示に基づいてLAN回線1に対するリンク信号の出力を停止する。
【0028】
それと共に、リンクダウン転送制御部5は、タイマー7を起動する。タイマー7には予め記憶装置8から読み出された一定時間が設定されている。
そして、タイマー7がタイムアップすると、リンクダウン転送制御部5は、LANリンク信号発生部4に対してリンク信号の出力を指示する。
これにより、本無線回線装置においては、リンクダウン転送から一定時間経過すると、LAN回線との接続を復帰可能とするものである。
【0029】
[本システムにおける障害発生時の動作:図2]
次に、本システムにおける障害発生時の動作について、図2を用いて説明する。図2は、本システムにおける障害発生時の動作を示す説明図である。
障害発生からリンクダウン転送及び経路切替までの動作は図5〜図7を用いて説明した動作と同じであるため、ここでは説明を省略する。
そして、図2に示すように、本システムでは、無線回線装置22が、リンクダウン転送から一定時間経過後にリンク信号の送信を再開する((4)リンク自動復旧)。
これに伴い、切替装置24は、リンクアップを検出して、通信経路を迂回回線42から無線通信回路22に切り替える。
【0030】
これにより、無線回線装置22とLANネットワーク2とが接続され、保守端末23は切替装置24を介して無線回線装置22と接続が可能となり、保守端末23から無線通信回路22にアクセスして障害内容を参照したり、機器の動作条件を変更する等の保守制御を行うことができるようになる。
そして、保守端末23からの操作によって迅速に障害の状態を解析して対処することができ、短時間で障害からの復帰を可能とするものである。
【0031】
[無線通信装置22の処理:図3]
次に、本システムで用いられる無線回線装置22における処理について図3を用いて説明する。図3は、無線回線装置における処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、無線回線装置22は、無線障害検出部6で無線回線の障害発生を検出すると(100)、LAN通信回路に対するリンク信号の出力を停止するリンクダウン転送制御を行う(102)。
【0032】
そして、無線回線装置22は、タイマーをスタートして計時を開始し(104)、タイムアップを監視して(106)、タイムアップした場合には(Yesの場合)、LAN通信回路に対するリンク信号の送信を再開する。
このようにして、無線回線装置22の処理が行われるものである。
【0033】
[実施の形態の効果]
本発明の実施の形態に係る通信システムによれば、LANネットワークと無線回線とを接続し、LAN信号と無線信号との相互変換を行う無線回線装置22と、LANネットワークの接続先を無線回線装置22又は迂回回線41に切り替える切替装置24と、LANネットワークを介して無線回線装置22の保守を行う保守端末23を備え、無線回線装置22が、無線回線41の障害を検出するとLAN回線に対するリンク信号の出力を停止し、切替装置24が、リンクダウンを検出するとLANネットワークの接続先を迂回回線42側に切り替えるリンクダウン転送を行う通信システムであって、無線回線装置22が、リンクダウンから一定時間が経過するとリンク信号の出力を再開し、切替装置24が、リンクダウン検出後、リンク信号を正常に受信すると通信経路を無線回線装置22側に切り替え、保守端末23が、切り替えられた無線回線装置23の保守を行うようにしているので、無線回線の障害発生後、一定時間経過すればLANネットワークと無線回線装置22との接続を復帰させて、LANネットワークに接続された保守端末23から無線回線装置24へのアクセスを可能として、障害の情報収集や設定等の保守制御を遠隔操作で行うことができ、利便性を向上させると共に、迅速に障害復帰させることができる効果がある。
【0034】
尚、本実施の形態では、複数のLANネットワークを無線回線によって接続する通信システムについて説明したが、無線回線に限るものではなく、有線回線や光回線であっても当該回線の障害検出時の制御として、同様に実現することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、複数のLANネットワークを無線回線で接続し、障害発生時の復旧保守を容易にすることができる通信システムに適している。
【符号の説明】
【0036】
1…LAN通信回路、 2…LAN/無線変換回路、 3…無線通信回路、 4…LANリンク信号発生部、 5…リンクダウン転送制御部、 6…無線障害検出部、 7…タイマー、 8…記憶装置、 11,21…端末、 12,22…無線回線装置、 23…保守端末、 24…切替装置、 41…無線回線、 42…迂回回線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のLANネットワーク間を無線回線又は迂回回路で接続する通信システムであって、
無線信号とLAN信号の変換を行う無線回線装置と、
前記LANネットワークの一つに接続すると共に、当該LANネットワークの接続先を前記無線回線装置又は前記迂回回線に切り替える切替装置と、
前記LANネットワークを介して前記無線回線装置の保守を行う保守端末とを備え、
前記無線回線装置が、前記無線回線における障害を検出すると、前記切替装置に対するリンク信号の出力を停止し、一定時間が経過すると前記リンク信号の出力を再開し、
前記切替装置が、前記リンク信号の停止を検出すると前記LANネットワークの接続先を前記迂回回路に切り替え、前記リンク信号の受信を検出すると前記LANネットワークの接続先を前記無線回線装置に切り替え、
前記保守端末が、前記切替装置によって切り替えられた前記無線回線装置の保守を行うことを特徴とする通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−142490(P2011−142490A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−1791(P2010−1791)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】