説明

通信システム

【課題】火災等の異状の複数住戸間での相互監視を低コストで実現できる通信システムを提供すること。
【解決手段】グループモニタ装置20は、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20と通信を行う通信部22と、無線信号を受信する受信部23と、受信部23が受信した無線信号に含まれる情報に基づき、グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したか否かを判定する異状判定部26aと、異状判定部26aが、グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したと判定した場合、当該住戸3において異状が発生した旨の情報を通信部22から送信させる移報部26bと、通信部22を介して他の住戸3に設置された他のグループモニタ装置20から当該他の住戸3において異状が発生した旨の情報を受信した場合、当該受信した情報に基づく出力を行う出力制御部26cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地域内の防災対策を目的として、グループモニタシステムと呼ばれる相互監視システムが用いられている。例えば、このグループモニタシステムでは、CATV線路を介して接続された複数の住戸でグループを構成し、そのグループの各住戸に、煙、熱、炎等を感知して発報する感知器、感知器による発報を受信して警報を出力する受信機、及び、受信機にて感知器から受信した情報をCATV線路を介して他の住戸に送信すると共に、他の住戸から受信した情報に基づいて警報を出力するグループモニタ装置を設けている。これにより、グループ内の各住戸間で火災等の異状が相互に監視される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−228596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の如き従来のシステムでは、感知器と受信機との間、及び受信機とグループモニタ装置との間を信号線にて接続していたため、住戸内に信号線を配設するための作業コストを要していた。また、住戸内の間取りの変更等に伴って感知器、警報受信機、又はグループモニタ装置の設置位置を変更する場合、信号線の取り回しにも変更の必要が生じ、コストの増大を招いていた。さらに、受信機自体も高額である等、高コストがグループモニタシステムの導入に対する弊害となる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、火災等の異状の複数住戸間での相互監視を低コストで実現できる通信システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の通信システムは、住戸に設置され、無線信号を送信する無線端末と、複数の住戸に設置されるグループモニタ装置と、を備え、前記グループモニタ装置は、他の住戸に設置された前記グループモニタ装置と通信を行う通信手段と、前記無線端末から送信された無線信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した無線信号に含まれる情報に基づき、住戸において異状が発生したか否かを判定する異状判定手段と、前記異状判定手段が、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したと判定した場合、当該住戸において異状が発生した旨の情報を前記通信手段から送信させる移報手段と、前記通信手段を介して他の住戸に設置された前記グループモニタ装置から当該他の住戸において異状が発生した旨の情報を受信した場合、当該受信した情報に基づく出力を行う出力手段と、を備える。
【0007】
また、請求項2に記載の通信システムは、請求項1に記載の通信システムにおいて、前記異状判定手段は、前記受信手段が複数の前記無線端末から受信した無線信号に含まれる情報の組み合わせに基づき、前記グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したか否かを判定する。
【0008】
また、請求項3に記載の通信システムは、請求項1に記載の通信システムにおいて、前記異状判定手段は、前記受信手段が受信した無線信号が自己の住戸の無線端末か他の住戸の無線端末からかを判別し、警報処理を異ならせる。
【0009】
また、請求項4に記載の通信システムは、請求項1に記載の通信システムにおいて、前記グループモニタ装置は、更に、前記無線端末へ無線信号を送信する送信手段を備え、
前記異状判定手段は、前記通信手段にて他の住戸で異状が発生した旨の情報を受信した場合に、前記送信手段にて自己の住戸の前記無線端末に異状発生の無線信号を送信して、前記無線端末で警報を行わせる。
【0010】
また、請求項5に記載の通信システムは、請求項4に記載の通信システムにおいて、前記異状判定手段は、前記受信手段が自己の住戸の無線端末からの無線信号を受信した場合に前記送信手段にて異常内容に応じた無線信号を送信し、他の住戸の無線端末から無線信号を受信した場合は前記送信手段から無線信号を送信しない。
【0011】
また、請求項6に記載のグループモニタ装置は、複数の住戸に設置されるグループモニタ装置であって、他の住戸に設置された他のグループモニタ装置と通信を行う通信手段と、無線信号を受信する受信手段と、前記受信手段が受信した無線信号に含まれる情報に基づき、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したか否かを判定する異状判定手段と、前記異状判定手段が、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したと判定した場合、当該住戸において異状が発生した旨の情報を前記通信手段から送信させる移報手段と、前記通信手段を介して他の住戸に設置された他のグループモニタ装置から当該他の住戸において異状が発生した旨の情報を受信した場合、当該受信した情報に基づく出力を行う出力手段と、を備える。
【0012】
また、請求項7に記載のグループモニタ装置は、請求項6に記載のグループモニタ装置において、前記異状判定手段は、前記受信手段が受信した無線信号が自己の住戸の無線端末か他の住戸の無線端末からかを判別し、警報処理を異ならせる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の通信システム、及び請求項6に記載のグループモニタ装置によれば、住戸に設置されている無線端末から送信された無線信号に含まれる情報に基づき、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したか否かを判定し、異状が発生したと判定した場合、当該住戸において異状が発生した旨の情報を通信手段から送信させ、他の住戸に設置されたるグループモニタ装置にて当該情報に基づく出力を行わせる。従って、無線端末とグループモニタ装置との間で信号線の配設が不要となり、無線端末やの設置後の位置変更も容易であり、さらに高額な受信機を使用する必要がないことから、火災等の異状の複数住戸間での相互監視を行うための通信システムを低コストで実現できる。
【0014】
また、請求項2に記載の通信システムによれば、受信手段が複数の無線端末から受信した無線信号に含まれる情報の組み合わせに基づき、グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したか否かを判定するので、住戸において異状が発生した可能性が高い場合にのみ、その旨の情報を他の住戸のグループモニタ装置に送信することができ、信頼性の高い通信システムを構築することができる。
【0015】
また、請求項3に記載の通信システム、及び請求項7に記載のグループモニタ装置によれば、受信手段が受信した無線信号が自己の住戸の無線端末からの異状信号か他の住戸の無線端末からの異状信号かを判別して警報処理を異ならせるので、無線という回線を利用することで通信手段を介さなくても他の住戸の異状を迅速に把握することができ、異状の発生を予測することでその後の対応を迅速に行うことができる。またもし通信回線が切断された場合でも他の住戸に異状警報を知らせることもできる。
【0016】
また、請求項4に記載の通信システムによれば、グループモニタ装置は、通信手段にて他の住戸で異状が発生した旨の情報を受信した場合に、自己の住戸の無線端末に異状発生の無線信号を送信して警報を行わせることで、住人がグループモニタ装置から離れた位置にいても異常状態を確実に知らせることができる。
【0017】
また、請求項5に記載の通信システムによれば、グループモニタ装置が、受信手段にて自己の住戸の無線端末からの無線信号を受信した場合に異常内容に応じた無線信号を送信し、他の住戸の無線端末から無線信号を受信した場合は無線信号を送信しないことで、異状の緊急性、重要性に併せた警報処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】通信システムの構成を示す概略図である。
【図2】無線端末が送信する無線信号に含まれる電文の構成を例示した図である。
【図3】グループモニタ装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図4】通信処理のフローチャートである。
【図5】出力処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る通信システムの実施の形態を詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0020】
(通信システムの概要)
図1は通信システムの概要を示すシステム図である。図1に示すように、本実施の形態に係る通信システム1は、CATV線路2が引き込まれた複数の住戸3で構成されるグループについて適用される。
【0021】
通信システム1は、無線端末10と、グループモニタ装置20とを備えている。この無線端末10及びグループモニタ装置20は、複数の住戸3の各々に設置されており、各住戸3のグループモニタ装置20はCATV線路2を介して相互に接続されている。より具体的には、CATV局4に接続された幹線同軸ケーブル5上に分配器6が設けられており、この分配器6から各住戸3に対して分配用の同軸ケーブル7が配設される。この同軸ケーブル7は、保安器8を介して各住戸3内に引き込まれている。これにより、各住戸3のグループモニタ装置20は、保安器8、同軸ケーブル7、分配器6、及び幹線同軸ケーブル5を介して、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20と通信を行うことが可能となっている。
【0022】
(構成)
次に、本実施の形態に係る通信システム1の構成について説明する。
【0023】
(構成−無線端末)
無線端末10は、無線信号を送信する無線端末10であり、例えば公知の無線式住宅用警報器や無線式感知器を用いることができる。この無線端末10は、温度や煙濃度等を検出するセンサ部、及び、無線信号を送信する送信部を備えている(いずれも図示省略)。送信部は、センサ部にて検出された温度や煙濃度を示す情報や、当該無線端末10がセンサ部による検出結果に基づき火災等の異状発生の有無を判断した結果を示す情報等を無線信号に含めて送信する。さらに送信部は、無線端末10を一意に識別する第1識別情報を無線信号に含めて送信する。第1識別情報としては、例えば無線端末10のシリアル番号等を符号化して使用する。無線端末10は音声警報部をそなえ、異状発報時に異状の内容に応じた音声警報を出力する。
【0024】
図2は無線端末10が送信する無線信号に含まれる電文の構成を例示した図である。図2に示すように、電文は例えばプリアンブル、スタートコード、通信制御コード、送信元識別コード、データコード、及びエラーチェックコードを含んで構成される。この内、送信元識別コードとして第1識別情報が電文に含まれる。この第1識別情報は、例えば無線端末10が備える公知の記憶手段(図示省略)に予め記憶されており、無線端末10が無線信号を送信する際に当該記憶手段から読み出され、無線信号に付加されて送信される。またセンサ部で検出された温度や煙濃度、火災の有無の判断結果等はデータコードとして電文に付加される。また、通信制御コードにより、データコードに含まれている情報の種類を指定することができる(情報の種類が「登録」あるいは「火災」等で異なる場合、これに伴ってデータコードの内容も異なる。通信制御コードを解読することにより、データコードの内容を判別することができる)。
【0025】
なお、本実施の形態では、無線端末10は無線信号の送受信を行え、他の無線端末10や無線中継器(図示省略)やグループモニタ装置20等からの無線信号を受信して警報等の各種の制御や処理を行うようにしてもよい。自分の無線端末で異状を検出した場合は、自己の無線端末で異状発生した旨の警報をおこない、他の無線端末から異状信号を受けた場合は、他の無線端末で異状が発生した旨の区別した警報を行うことができる。また、他の住戸の無線端末10が異状を検出して、グループモニタ装置20がCATV線路2及び同軸ケーブル7を介して異状信号を受信した場合は、無線端末10はグループモニタ装置20から無線で他住戸の異常発生を受けて、他の住戸で異状が発生した旨の警報を出力することもできる。
【0026】
(構成−グループモニタ装置)
図3は、グループモニタ装置20の電気的要部構成を機能概念的に示したブロック図である。このグループモニタ装置20は、操作部21、通信部22、受信部23、表示部24、スピーカ25、制御部26、及び記憶部27を備えている。
【0027】
(構成−グループモニタ装置−操作部)
操作部21は、グループモニタ装置20に対する操作入力を受け付ける。この操作部21は、例えばスイッチやタッチパネル等の公知の操作手段を用いて構成される。本実施の形態では、グループモニタが設置されている住戸3において異状が発生している旨の操作入力を受け付ける異状スイッチ、及び、異状が解消された場合や誤報であった場合にこれを復旧するための操作入力を受け付ける復旧スイッチ(何れも図示省略)を備えている場合を例として説明する。
【0028】
(構成−グループモニタ装置−通信部)
通信部22は、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20と通信を行う通信手段である。すなわち、通信部22は、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20の通信部22とCATV線路2を介して各種の情報の入出力を行う。
【0029】
(構成−グループモニタ装置−受信部)
受信部23は、グループモニタ装置20と同じ住戸3に設置されている無線端末10から送信された無線信号を受信する受信手段である。この受信部23は、例えば無線信号の受信回路(図示省略)を備え、無線端末10から送信された無線信号を受信回路を介して受信する。無線端末10へ無線信号を送信することもでき、無線送受信部とすることもできる。
【0030】
(構成−グループモニタ装置−表示部)
表示部24は、制御部26による制御に基づき表示出力を行う。この表示部24としては、例えば公知のLED(Light Emitting Diode)や7セグメントディスプレイ、液晶ディスプレイ等を用いることができ、これらを組み合わせて用いることもできる。異常発生時には例えば火災などの異状の種別に応じた警報表示を行う、異状が発生した住戸3や異状を検出した無線端末10を特定して警報表示することで、近隣住戸の異状発生を認識することができる。
【0031】
(構成−グループモニタ装置−スピーカ)
スピーカ25は、制御部26による制御に基づき音声出力を行う。このスピーカ25としては、公知のスピーカを用いることができる。異常時には異状の内容に応じた音声警報を行う。
【0032】
(構成−グループモニタ装置−制御部)
制御部26は、グループモニタ装置20の各部を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0033】
この制御部26は、機能概念的に、異状判定部26a、移報部26b、及び出力制御部26cを備えている。異状判定部26aは、グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したか否かを判定する異状判定手段である。移報部26bは、グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生した旨の情報を通信部22から送信させる移報手段である。出力制御部26cは、通信部22が受信した情報に基づいて表示部24やスピーカ25を制御する出力制御手段であり、表示部24やスピーカ25と共に出力手段を構成する。これら制御部26の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0034】
記憶部27は、グループモニタ装置20と同じ住戸3に設置されている無線端末10を一意に識別する第1識別情報を格納する識別情報格納手段である。また、記憶部27には、グループモニタ装置20自身を一意に識別する第2識別情報も記憶されている。さらに記憶部27には、他の住戸3に設置されているグループモニタ装置20を一意に識別する第2識別情報と、当該他の住戸3に関する情報(例えば「○○さん宅」等の当該他の住戸3の住戸名)とが、相互に関連付けて記憶されている。また、スピーカ25から出力させる音声データも記憶部27に記憶されている。この記憶部27は、書き換え可能な記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を用いることができる。記憶部27に記憶される第2識別情報としては、例えばグループモニタ装置20のシリアル番号やアドレス番号を用いることができる。
【0035】
(処理−通信処理)
次に、このように構成される通信システム1が実行する処理について説明する。まず、各住戸3に設置されたグループモニタ装置20が実行する通信処理について説明する。図4は通信処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この処理は、例えばグループモニタ装置20の各々において、電源が投入された後に起動される。なお、この通信処理の前提として、無線端末10は、センサ部による検出結果に基づき火災等の異状が発生したと判断した場合に、住戸3において火災等の異状が発生した旨を示す情報(異状情報)と自己を一意に識別する第1識別情報とを含む無線信号を送信するものとする。
【0036】
図4に示すように、グループモニタ装置20において通信処理が起動されると、異状判定部26aは異状スイッチがONされたか否かを判定する(SA1)。
【0037】
その結果、異状スイッチがONされた場合(SA1、Yes)、異状判定部26aはグループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したと判定し、移報部26bは当該住戸3において異状が発生した旨の情報を含む信号(異状信号)を通信部22から送信させる(SA2)。なお、移報部26bは、記憶部27に記憶されている第2識別情報を異状信号に含めて通信部22から送信させる。この異状の信号には異状スイッチが押されたことによる異状判定であることを付加しても良い。
【0038】
続いて移報部26bは復旧スイッチがONされるまで待機し(SA3、No)、復旧スイッチがONされた場合(SA3、Yes)、住戸3における異状が無い旨の情報を含む信号(復旧信号)を通信部22から送信させる(SA4)。この時、移報部26bは、記憶部27に記憶されている第2識別情報を復旧信号に含めて通信部22から送信させる。
【0039】
また、SA1において、異状判定部26aが異状スイッチがONされていないと判定した場合(SA1、No)、異状判定部26aは受信部23が無線信号を受信したか否かを判定する(SA5)。具体的な判定方法は任意で、例えば、受信部23の受信回路において一定の強度以上の電波が検出された場合において、無線信号に含まれる電文を解釈することができた場合に、無線信号を受信したと判定する。
【0040】
その結果、受信部23が無線信号を受信したと異状判定部26aが判定した場合(SA5、Yes)、異状判定部26aは、当該受信した無線信号に第1識別情報が含まれているか否かを判定する(SA6)。例えば、受信した無線信号に含まれる電文の送信元識別コードとして第1識別情報が含まれているか否かを判定する。
【0041】
その結果、無線信号に第1識別情報が含まれていない場合(SA6、No)、異状判定部26aは、受信部23が受信した無線信号は通信システム1に属する無線端末10からの無線信号ではないものとし、SA1に戻る。
【0042】
一方、無線信号に第1識別情報が含まれている場合(SA6、Yes)、異状判定部26aは、当該第1識別情報がグループモニタ装置20の記憶部27に格納されているか否かを判定する(SA7)。
【0043】
その結果、受信部23が受信した無線信号に含まれている第1識別情報が記憶部27に格納されていない場合(SA7、No)、異状判定部26aは、受信部23が受信した無線信号は他の住戸3に設置された無線端末10からの無線信号であり、当該無線信号に基づく異状判定を行う必要はないものとし、SA1に戻る。
【0044】
なお、このとき受信した無線信号が他の住戸3からの無線信号である場合に、信号の内容に火災など異状情報が含まれていれば、近隣の住戸で異状が発生した可能性が高いことから、近隣の異状発生情報を記憶し、予告的に注意警報や注意表示を行っても良い。もし受信した無線信号に含まれる内容からでは異状住戸などの特定ができない場合でも、無線信号に含まれる内容に基づき例えば火災表示だけなど簡易的な警報を行っても良い。異常発生時に警報する同一グループ内の住戸であれば、火災が拡大するなどして所定時間経過した後に、異状住戸のグループモニタ装置20から同軸ケーブル7を介して異状場所など詳細な内容が含まれた異状信号が送られてくるので、この場合は住戸名や異常内容を特定した詳細な異状警報を行うことができる。このように無線信号の受信で第1段階の警報を行い、同軸ケーブルからの異状警報の受信で第2段階の警報をおこなうことで、異状内容に応じた段階的な警報を行うことができ、無線システムとケーブルシステムの両方を有効に活用することができる。また、自住戸の無線端末10が発報した場合は、無線端末10同士も異状信号の送受信をおこなって、同一住戸の複数の無線端末が異状警報をおこなうが、他の住戸からの無線信号を受信した場合はグループモニタ装置20のみで警報を行うことで警報方法を異ならせても良い。
【0045】
一方、受信部23が受信した無線信号に含まれている第1識別情報が記憶部27に格納されている場合(SA7、Yes)、異状判定部26aは、受信部23が受信した無線信号のデータコードに含まれている情報が異状情報か否かを判定する(SA8)。異状判定部26aは、例えば無線信号の通信制御コードを解読することにより、データコードに含まれている情報が異状情報か否かを判定する。
【0046】
その結果、受信部23が受信した無線信号のデータコードに含まれている情報が異状情報ではない場合(SA8、No)、例えば、無線信号のデータコードに含まれている情報が、無線端末10の電池の出力電圧が閾値未満となったことを報知するための情報、あるいは無線端末10に何らかの故障が生じたことを報知するための情報等で有る場合、異状判定部26aは、少なくとも他の住戸3に何らかの情報を送信する必要はないものとし、SA1に戻る。このときは住戸内のグループモニタ装置20だけで情報の種類に応じた警報、告知をおこなう。
【0047】
一方、受信部23が受信した無線信号のデータコードに含まれている情報が異状情報である場合(SA8、Yes)、異状判定部26aは、その時点で異状情報を含む無線信号を送信している無線端末10(発報端末)の数が2台以上か否かを判定する(SA9)。例えば異状判定部26aは、受信部23が複数の無線信号を受信し、各無線信号に含まれる第1識別情報が異なっており、且つ、各無線信号のデータコードに含まれている情報が異状情報である場合に、発報端末の数が2台以上であると判定する。
【0048】
その結果、発報端末の数が2台以上である場合(SA9、Yes)、異状判定部26aはグループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したと判定し、移報部26bは異状信号を通信部22から送信させる(SA2)。移報時には発報端末の種別や場所コードを同時に送信して、他住戸で異状の場所や種類を特定して表示させても良い。
【0049】
一方、発報端末の数が2台以上ではない場合(SA9、No)、すなわち発報端末の数が1台である場合、異状判定部26aはグループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生した可能性がある旨を示すプリアラームフラグをONにし、移報部26bは住戸3において異状が発生した可能性がある旨の情報を含む信号(プリアラーム)を通信部22から送信させる(SA10)。なお、移報部26bは、記憶部27に記憶されている第2識別情報をプリアラームに含めて通信部22から送信させる。また、プリアラームフラグは、例えば制御部26のRAMに記憶されているものとする。その後、制御部26はSA1に戻る。なお、プリアラーム時は他住戸に異状を送信せず、自分の住戸のみ異状警報を行うよう設定することもできる。発報端末の数が1台と複数台で無線端末での音声警報のやり方を異ならせても良い。
【0050】
また、SA5において、受信部23が無線信号を受信していないと異状判定部26aが判定した場合(SA5、No)、異状判定部26aは、プリアラームフラグがONか否かを判定する(SA11)。
【0051】
その結果、プリアラームフラグがONである場合(SA11、Yes)、異状判定部26aは、プリアラームフラグをONさせたときから所定時間経過しても、受信部23が無線信号を受信していないことからグループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状は発生していないものとしてプリアラームフラグをOFFにし、移報部26bは住戸3において異状が発生した可能性は解除された旨の情報を含む信号(解除信号)を通信部22から送信させる(SA12)。なお、移報部26bは、記憶部27に記憶されている第2識別情報を解除信号に含めて通信部22から送信させる。その後、制御部26はSA1に戻る。
【0052】
一方、プリアラームフラグがONではない(OFFである)場合(SA11、No)、異状判定部26aは、グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状は発生していないものとし、SA1に戻る。
【0053】
(処理−出力処理)
次に、各住戸3に設置されたグループモニタ装置20が実行する出力処理について説明する。図5は出力処理のフローチャートである。この処理は、例えばグループモニタ装置20の各々において、電源が投入された後に起動され、上述の通信処理と並行して実行される。
【0054】
図5に示すように、グループモニタ装置20において通信処理が起動されると、出力制御部26cは、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20から通信部22を介して異状信号を受信したか否かを判定する(SB1)。
【0055】
その結果、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20から通信部22を介して異状信号を受信した場合(SB1、Yes)、出力制御部26cは表示部24やスピーカ25から警報を出力させる(SB2)。例えば出力制御部26cは、異状信号に含まれている第2識別信号に基づき、記憶部27を参照することにより、当該異状信号の送信元のグループモニタ装置20が設置されている住戸3を特定し、当該住戸3において異状が発生した旨の警報(例えば「○○さん宅で火災が発生しました!」等)を表示部24やスピーカ25から出力させる。異状発報した端末の種別、監視場所等を警報してもよい。
【0056】
続いて出力制御部26cは、SB1で受信した異状信号の送信元の住戸3のグループモニタ装置20から通信部22を介して復旧信号を受信するまで待機し(SB3、No)、復旧信号を受信した場合(SB3、Yes)、表示部24やスピーカ25からの警報の出力を停止させる(SB4)。SB3の判定において出力制御部26cは、例えば復旧信号に含まれている第2識別信号に基づき、SB1で受信した異状信号の送信元の住戸3のグループモニタ装置20から送信された復旧信号か否かを判定する。SB4の後、制御部26はSB1に戻る。
【0057】
また、SB1において、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20から通信部22を介して異状信号を受信していない場合(SB1、No)、出力制御部26cは、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20から通信部22を介してプリアラームを受信したか否かを判定する(SB5)。
【0058】
その結果、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20から通信部22を介してプリアラームを受信していない場合(SB5、No)、出力制御部26cは、他の住戸3で異状は発生しておらず特に出力すべき情報はないものとし、SB1に戻る。
【0059】
一方、他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20から通信部22を介してプリアラームを受信した場合(SB5、Yes)、出力制御部26cは表示部24やスピーカ25からプリアラームを出力させる(SB6)。例えば出力制御部26cは、プリアラームに含まれている第2識別信号に基づき、当該プリアラーム信号の送信元のグループモニタ装置20が設置されている住戸3を特定し、当該住戸3において異状が発生した可能性がある旨の警報(例えば「○○さん宅で火災の可能性があります」等)を表示部24やスピーカ25から出力させる。
【0060】
続いて出力制御部26cは、SB5で受信したプリアラームの送信元の住戸3のグループモニタ装置20から通信部22を介して解除信号を受信するまで待機し(SB7、No)、解除信号を受信した場合(SB7、Yes)、表示部24やスピーカ25からのプリアラームの出力を停止させる(SB8)。SB7の判定において出力制御部26cは、例えば解除信号に含まれている第2識別信号に基づき、SB5で受信したプリアラームの送信元の住戸3のグループモニタ装置20から送信された解除信号か否かを判定する。SB8の後、制御部26はSB1に戻る。
【0061】
(効果)
このように実施の形態によれば、グループモニタ装置20と同じ住戸3に設置されている無線端末10から送信された無線信号に含まれる情報に基づき、当該グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したか否かを判定し、異状が発生したと判定した場合、当該住戸3において異状が発生した旨の情報を通信部22から送信させ、他の住戸3に設置されたるグループモニタ装置20にて当該情報に基づく出力を行わせる。従って、無線端末10とグループモニタ装置20との間で信号線の配設が不要となり、無線端末10やの設置後の位置変更も容易であり、さらに高額な受信機を使用する必要がないことから、火災等の異状の複数住戸間での相互監視を行うための通信システム1を低コストで実現できる。
【0062】
また、受信部23が複数の無線端末10から受信した無線信号に含まれる情報の組み合わせに基づき、グループモニタ装置20が設置されている住戸3において異状が発生したか否かを判定するので、住戸3において異状が発生した可能性が高い場合にのみ、その旨の情報を他の住戸3のグループモニタ装置20に送信することもでき、信頼性の高い通信システム1を構築することができる。
【0063】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0064】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0065】
(無線端末について)
上述した実施の形態では、無線端末10として公知の無線式住宅用警報器や無線式感知器を用いることができると説明したが、他の物を用いてもよい。例えば、ボタンが押下された場合に異状情報と自己を一意に識別する第1識別情報とを含む無線信号を送信する無線式の非常ボタンや、一定期間以上操作が行われなかった場合に異状情報と自己を一意に識別する第1識別情報とを含む無線信号を送信する無線式の湯沸しポット等を無線端末10として用いてもよい。これにより、例えば住戸3の住人が倒れた場合に、その旨を早期に他の住戸3の住人に報知することができる。
【0066】
(通信処理について)
上述した実施の形態では、グループモニタ装置20と同じ住戸3に設置されている無線端末10から送信された無線信号に含まれる情報に基づき、各種情報を通信部22から他の住戸3に設置されたグループモニタ装置20に送信する場合を説明したが、これと共に、無線端末10から送信された無線信号に含まれる情報に基づく情報を表示部24やスピーカ25から出力させるようにしてもよい。例えば、図4のSA2において異状信号を通信部22から送信させると共に、自宅において異状が発生した旨の警報(例えば「この家で火災発生!」等)を表示部24やスピーカ25から出力させるようにしてもよい。また、無線信号のデータコードに含まれている情報が、無線端末10の電池の出力電圧が閾値未満となったことを報知するための情報、あるいは無線端末10に何らかの故障が生じたことを報知するための情報等で有る場合、これらの情報を表示部24やスピーカ25から出力させるようにしてもよい。これらの場合、受信部23が受信した無線信号に含まれている第1識別情報に基づき、当該無線信号を送信した無線端末10を特定し、当該無線端末10の設置位置を表示部24やスピーカ25から出力させるようにしてもよい。
【0067】
また、図4のSA2で移報部26bが異状信号を通信部22から送信させる際、及びSA10で移報部26bがプリアラームを通信部22から送信させる際に、発報端末を識別する第1識別情報を信号に含めて通信部22から送信させるようにしてもよい。この場合、図5のSB2で出力制御部26cが表示部24やスピーカ25から警報を出力させる際やSB6で出力制御部26cが表示部24やスピーカ25からプリアラームを出力させる際に、異状信号やプリアラームに含まれていた第1識別情報に基づく情報(例えば発報端末の位置等)を表示部24やスピーカ25から出力させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0068】
1 通信システム
2 CATV線路
3 住戸
4 CATV局
5 幹線同軸ケーブル
6 分配器
7 同軸ケーブル
8 保安器
10 無線端末
20 グループモニタ装置
21 操作部
22 通信部
23 受信部
24 表示部
25 スピーカ
26 制御部
26a 異状判定部
26b 移報部
26c 出力制御部
27 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住戸に設置され、無線信号を送信する無線端末と、
複数の住戸に設置されるグループモニタ装置と、を備え、
前記グループモニタ装置は、
他の住戸に設置された前記グループモニタ装置と通信を行う通信手段と、
前記無線端末から送信された無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した無線信号に含まれる情報に基づき、住戸における異状が発生したか否かを判定する異状判定手段と、
前記異状判定手段が、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したと判定した場合、当該住戸において異状が発生した旨の情報を前記通信手段から送信させる移報手段と、
前記通信手段を介して他の住戸に設置された前記グループモニタ装置から当該他の住戸において異状が発生した旨の情報を受信した場合、当該受信した情報に基づく出力を行う出力手段と、を備える、
通信システム。
【請求項2】
前記異状判定手段は、前記受信手段が自己の住戸に設置された複数の前記無線端末から受信した無線信号に含まれる情報の組み合わせに基づき、前記グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したか否かを判定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記異状判定手段は、前記受信手段が受信した無線信号が自己の住戸の無線端末か他の住戸の無線端末からかを判別し、警報処理を異ならせる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記グループモニタ装置は、更に、前記無線端末へ無線信号を送信する送信手段を備え、
前記異状判定手段は、前記通信手段にて他の住戸で異状が発生した旨の情報を受信した場合に、前記送信手段にて自己の住戸の前記無線端末に異状発生の無線信号を送信して、前記無線端末で警報を行わせる、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
前記異状判定手段は、前記受信手段が自己の住戸の無線端末からの無線信号を受信した場合に前記送信手段にて異常内容に応じた無線信号を送信し、他の住戸の無線端末から無線信号を受信した場合は前記送信手段から無線信号を送信しない、
請求項4に記載の通信システム。
【請求項6】
複数の住戸に設置されるグループモニタ装置であって、
他の住戸に設置された他のグループモニタ装置と通信を行う通信手段と、
無線信号を受信する受信手段と、
前記受信手段が受信した無線信号に含まれる情報に基づき、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したか否かを判定する異状判定手段と、
前記異状判定手段が、当該グループモニタ装置が設置されている住戸において異状が発生したと判定した場合、当該住戸において異状が発生した旨の情報を前記通信手段から送信させる移報手段と、
前記通信手段を介して他の住戸に設置された他のグループモニタ装置から当該他の住戸において異状が発生した旨の情報を受信した場合、当該受信した情報に基づく出力を行う出力手段と、
を備えるグループモニタ装置。
【請求項7】
前記異状判定手段は、前記受信手段が受信した無線信号が自己の住戸の無線端末か他の住戸の無線端末からかを判別し、警報処理を異ならせる、
請求項6に記載のグループモニタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−178653(P2012−178653A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−39587(P2011−39587)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000003403)ホーチキ株式会社 (792)
【Fターム(参考)】